防護装置
【課題】メタルジェットを生成する飛翔弾から有効に防護可能な防護装置を提供する。
【解決手段】メタルジェットを生成する飛翔弾から防護対象物を防護するための防護装置1であって、一方向に延出する複数の板12若しくは複数のロッドを、上記飛翔弾の通過を阻止可能な間隔で枠体11内に備える柵状体10と、その柵状体10の一部と固定し、防護対象物と上記柵状体10との間をつなぐ、1若しくは2以上のアーム20とを備える。
【解決手段】メタルジェットを生成する飛翔弾から防護対象物を防護するための防護装置1であって、一方向に延出する複数の板12若しくは複数のロッドを、上記飛翔弾の通過を阻止可能な間隔で枠体11内に備える柵状体10と、その柵状体10の一部と固定し、防護対象物と上記柵状体10との間をつなぐ、1若しくは2以上のアーム20とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔弾の破壊力を抑制するための防護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
戦争やテロの無い平和な社会が理想的ではあるが、現実には、地球上のどこかで、宗教上、民族上、経済上などの様々な理由から争いが起こっている。このため、各国は、戦争やテロが起こったときの装備を十分に行っておく必要がある。例えば、要人が乗車する車両の多くには、防弾ガラス、防弾ボディおよびノーパンクタイヤを備えた特殊な車両が使われている。また、戦争や治安維持に用いられることがある装甲車両には、そのボディに、銃弾が容易に貫通しないような厚い装甲板を用いたものが多い。
【0003】
例えば、装甲車両本体に、着脱型装甲材を取り付け、そのバックプレートとしてのハニカム材を装甲車両本体と着脱型装甲材との間の介在させたものが、知られている(特許文献1を参照)。着脱型装甲材は、それを貫通しようとする弾体に被弾して変形しようとする。しかし、その変形は、ハニカム材が押しつぶされて体積が減ることにより、ハニカム材に吸収される。この結果、当該弾体は、装甲車両本体に到達する前にその運動エネルギーを消耗するため、装甲車両本体を有効に防護することができる。
【0004】
上記のような防護技術の開発に併行し、兵器の開発も一進一退で行われており、厚い装甲板の装備や、着脱型装甲材とハニカム材の装備の程度では防ぎきれないような高い破壊力をもった兵器も開発されてきている。
【0005】
図13は、対戦車ロケット推進てい弾あるいは成形炸薬弾(以後、代表して、「成形炸薬弾」という)の一例の内部を概略的に示す図である。成形炸薬弾200は、その先端方向から順に、ヘッド部201、モータ搭載部202、ブースター部203という3つの領域から成る。ヘッド部201は、その内部の先端部分にヒューズ210を備え、当該先端部分から後方に向かって大径になるように膨らみ、途中から後方に向かって小径になり、モータ搭載部202に連接する構造を有する。ヘッド部201の内部には、前方に開口する漏斗形状の金属製の内張り(ライナー)220が備えられている。ライナー220の周囲には、略円柱形状であってライナー220側をへこませた炸薬230が配置され、ライナー220の後方には起爆薬240が配置されている。ここで、ライナー220は、擬似液体金属としての挙動を示すメタルジェットの基になる部分である。かかる構造の成形炸薬弾200が装甲車両本体に衝突すると、ヒューズ210への衝撃に起因して起爆薬240が起爆し、炸薬230の爆轟波の進行に伴い、ライナー220が動的超高圧になり、メタルジェットが発生する。当該メタルジェットは、細長く伸び、装甲車両本体の側壁にあけられた穴から内部へと噴き込む。この結果、成形炸薬弾200が物理的に装甲車両本体を貫徹するというよりも、成形炸薬弾200からのメタルジェットが装甲車両本体の側壁から内部に噴き込み、内部にダメージを与える効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−294393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように、装甲板を強化しあるいはハニカム材を装備することにより、上記の成形炸薬弾200に代表される兵器の破壊力を、ある程度抑制することは可能である。しかし、装甲板の直接的な破壊ではなく、メタルジェットの噴入により、装甲車両本体内部を破壊するような兵器に対しては、十分な防護が困難である。これは、装甲車両の防護に限られたことではなく、建造物の防護であっても同様である。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、メタルジェットを生成する飛翔弾から有効に防護可能な防護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するための本発明の一形態は、飛翔弾から防護対象物を防護するための防護装置であって、一方向に延出する複数の板若しくは複数のロッドを、飛翔弾の通過を阻止可能な間隔で枠体内に備える柵状体と、その柵状体の一部と固定し、防護対象物と柵状体との間をつなぐ1若しくは2以上のアームとを備える防護装置である。
【0010】
また、本発明の別の形態は、複数の板の一部若しくは全部が、平板部とその平板部から鋭角に曲る傾斜部とを備える防護装置である。
【0011】
また、本発明の別の形態は、複数の板若しくは複数のロッドの間隔を、35〜85mmの範囲内とする防護装置である。
【0012】
また、本発明の別の形態は、アームに、屈曲可能な関節部を1若しくは2以上備える防護装置である。
【0013】
また、本発明の別の形態は、関節部を、使用時のアームの状態から片側に回動できない構造とする防護装置である。
【0014】
また、本発明の別の形態は、関節部を2つ備え、互いに逆側に回動できない構造を有する防護装置である。
【0015】
また、本発明の別の形態は、アームの柵状体を固定するための固定部に、柵状体の枠体の一部と、当該枠体の一部につながる板若しくはロッドの一部とを把持する把持部を備える防護装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メタルジェットを生成する飛翔弾から有効に防護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る防護装置の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す防護装置の一部を構成する柵状体の正面図である。
【図3】図3は、図2に示す柵状体の左側面図であり、柵状体の正面に向かって飛翔してくる飛翔弾が柵状体に当たった状態を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す柵状体とアームとの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【図5】図5は、図1に示すアームの取付部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図6】図6は、図1に示すアームの側面図である。
【図7】図7は、図6に示すアームを折りたたんだ状態を示す側面図である。
【図8】図8は、本発明の第二の実施の形態に係る防護装置の一構成部である柵状体の斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す柵状体の左側面図である。
【図10】図10は、本発明の第三の実施の形態に係る防護装置の一構成部である柵状体の斜視図である。
【図11】図11は、図10に示す柵状体のA−A線断面図および当該断面図における一部Xの拡大図である。
【図12】図12は、本発明の第三の実施の形態に係る防護装置における柵状体とアームとの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【図13】図13は、ロケット推進てい弾あるいは成形炸薬弾の一例の内部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の防護装置の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
1.第一の実施の形態
【0020】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る防護装置の斜視図である。図2は、図1に示す防護装置の一部を構成する柵状体の正面図である。図3は、図2に示す柵状体の左側面図であり、柵状体の正面に向かって飛翔してくる飛翔弾が柵状体に当たった状態を示す図である。
【0021】
第一の実施の形態に係る防護装置1は、飛翔弾から防護対象物(ここでは、「車両」)Cを防護するための防護装置であって、1つの柵状体10と、車両Cと柵状体10との間を連結する2本のアーム20とを備える。
【0022】
柵状体10は、矩形の枠体11の枠内に、一方向(図1および図2では、略水平方向)に延出する15枚の板12を備える。柵状体10は金属製であり、鉄、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金製であるのが、より好ましい。板12も金属製であり、鉄、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金製であるのが好ましい。枠体11と板12をそれぞれ構成する材料は、同一であっても異なっていても良い。枠体11は、好ましくは、厚さ(T1,T2)5〜15mm、幅(W1)35mm以上の板から構成される。この実施の形態では、枠体11の正面視の形状は、長方形あるいは正方形であるが、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形としても良い。
【0023】
板12は、好ましくは、厚さ(t1)3〜12mm、長さが枠体11の枠内の一辺にほぼ等しい平板である。板12の幅は、好ましくは、枠体11の幅(W1)と略等しい。板12の長さ方向の両端と枠体11の枠内の内壁とは、板12の幅方向を正面とするように(すなわち、板厚の面を正面にするように)、溶接(TIG溶接が特に好ましい)若しくははめ込み、あるいはその両方の組み合わせにて接合するのが好ましい。板12を枠体11の枠内の内壁と溶接する場合には、板12の両端を開先加工してから溶接するのが好ましい。図1および図2において上下方向に隣接して配置される板12同士の間隔(S1)は、飛翔弾の通過を阻止可能な間隔であり、阻止対象となる飛翔弾の大きさおよび形状に応じて適正な間隔に設計可能であるが、好ましくは35〜85mmである。また、間隔(S1)は、枠体11と板12との間と、上下方向に隣接する板12の間を全て等間隔にすることもできるが、例えば、枠体11の枠内略中央近傍にある板12同士の間隔を、他の板12同士の間隔や枠体11と板12との間隔より狭くすることもできる。
【0024】
図3に示すように、柵状体10の板12同士の間に、その正面に向かって矢印方向から飛翔してきた飛翔弾Bが衝突すると、飛翔弾Bのヘッド部(通常、直径85mm以上)の内部にある金属製のライナーb部分が板12同士の間に挟まれて破壊される。この結果、メタルジェットの形成を阻止し、飛翔弾Bの威力を大きく低減させることができる。
【0025】
2本のアーム20は、図1に示すように、柵状体10の対向辺の略中央近傍と、車両Cの側壁との間を連結する部材である。ただし、アーム20を柵状体10に取り付ける位置およびアーム20の数は、種々変更することができ、例えば、柵状体10の対向辺の一辺に対して2本ずつ取り付け、あるいは柵状体10の上下左右の合計4辺に1本ずつ若しくは2本ずつ取り付けても良い。
【0026】
アーム20は、柵状体10の枠体11の対向両辺と固定する固定部30と、その固定部30から車両C方向に延びるアーム本体部50と、アーム20を車両Cに取り付ける取付部60とを備える。固定部30とアーム本体部50との間、およびアーム本体部50と取付部60との間には、それぞれ関節部55および関節部56が形成されており、当該関節部55,56で屈曲可能になっている。アーム20の詳細な構造は、後述する。
【0027】
図4は、図1に示す柵状体とアームとの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【0028】
固定部30は、アーム本体部50側から順に、2枚のジョイント板31と、柵状体10を把持する把持部33と、柵状体10を把持部33に把持した状態で把持部33と結合可能な蓋部40とを備える。2枚のジョイント板31は、互いに所定の隙間を持って形成されている。図4では、紙面表方向の1枚のジョイント板31しか見えていないが、紙面裏方向にも同一のジョイント板31が設けられている。ジョイント板31は、その先端を丸くした細長い半円形の形状を有する。一方、アーム本体部50の固定部30に近い端面には、ジョイント板31と略同じ形状の1枚のジョイント板51が設けられている。ジョイント板51の厚さは、2枚のジョイント板31間の隙間よりわずかに小さい。また、1枚のジョイント板51および2枚のジョイント板31には、それぞれ、各板面に略垂直に貫通可能な穴が形成されており、かつ3つの穴は、2枚のジョイント板31の間にジョイント板51を入れたときに、重なる位置に形成されている。上記3つの穴には、ピン32が挿入されている、1枚のジョイント板51、2枚のジョイント板31およびピン32は、関節部55を構成する。ピン32とジョイント板31,51の穴の隙間は極めて小さく設計されている。このため、関節部55は、適度な屈曲抵抗をもって屈曲できるようになっている。なお、固定部30側に1枚のジョイント板を、アーム本体部50側に2枚のジョイント板を形成して、関節部55を構成しても良い。
【0029】
2枚のジョイント板31の先端に略直角方向の片側の略水平部分には、一枚の板状のストッパー34が取り付けられている。2枚のジョイント板31の上記略水平部分とアーム本体部50の側壁とは、ほぼ面一となっている。ストッパー34は、ジョイント板31からアーム本体部50の方向に延出し、アーム本体部50の側壁上に重なる形状である。ストッパー34は、アーム本体部50(ジョイント板51も含め)とは固定されておらず、固定部30の2枚のジョイント板31とのみ固定されている。関節部55は、ストッパー34が無ければ、図4において左右いずれの方向にも回動可能な構造である。しかし、ストッパー34が設けられているため、固定部30は、アーム本体部50に対して略水平の位置から矢印Rに向かって回動することができるのみであり、その略水平方向の位置から矢印Rと反対方向には回動できないようになっている。
【0030】
把持部33のジョイント板31と反対側には、把持部33の内方にへこむように、柵状体10側から見て十字形状の溝35が形成されている。溝35は、図4における上下方向の溝幅を柵状体10の枠体11の厚さよりわずかに広くなるように、また、左右方向の溝幅を板12の厚さよりわずかに広くなるように形成されている。溝35は、把持部33の先端面より柵状体10が突出しないような奥行きで把持部33に形成されるのが好ましい。把持部33の溝35周辺には、4本の脚部36が形成されている。少なくとも、溝35の十字交差点近傍の脚部36の角は、面取りされている。柵状体10の枠体11と板12との接合部分が、溶接によって丸みを帯びた角になっていても、溝35内にスムーズに柵状体10を挿入できるようにするためである。なお、この実施の形態では、アーム20を柵状体10の両端部固定用に共通の形状とする目的から、溝35を十字形状としているが、柵状体10の図1に示す左右両端に固有のアーム20を製造することもでき、その場合には、十字形状の溝35ではなく、T字形状の溝を把持部33に形成し、柵状体10を溝にはめ込んだ際には余分な方向の溝空間が無いようにすることもできる。
【0031】
脚部36の先端面は、略平面形状であり、その先端面にそれぞれ1個のねじ穴38が形成されている。また、柵状体10の正面側から把持部33に被せる蓋40の4つの角に近い部分には、蓋40の厚さ方向に貫通する穴41が設けられている。これら4つの穴41は、把持部33側の4つのねじ穴38と合わせることのできる位置に形成されている。このため、把持部33側の溝35内に柵状体10を挿入し、蓋40を被せて、ねじ42を穴41、ねじ穴38を通して締めることにより、固定部30への柵状体10の固定ができる。なお、この実施の形態では、蓋40の裏側に十字形状あるいはT字形状の溝を形成していないが、かかる溝を形成することもできる。その場合には、把持部33先端側に形成される溝35の深さを柵状体10の枠体11の幅よりも小さく形成し、溝35の深さと蓋40の裏面に形成される溝の深さとの総距離を、枠体11の幅にほぼ等しくするのが好ましい。さらに、当該総距離が枠体11の幅よりも小さくても良い。その場合には、固定部30に柵状体10を固定した状態で、蓋40と各脚部36の先端面とは接触しないが、ねじ42で蓋40と各脚部36とを結合することで、把持部33への柵状体10の固定が可能となる。
【0032】
図5は、図1に示すアームの取付部を拡大して示す拡大斜視図である。
【0033】
取付部60は、アーム本体部50側から順に、2枚のジョイント板61と、車両Cにアーム20を固定するためのフランジ65とを備える。2枚のジョイント板61は、互いに所定の隙間を持って形成されている。ジョイント板61は、その先端を丸くした細長い半円形の形状を有する。一方、アーム本体部50の取付部60に近い端面には、ジョイント板61と略同じ形状の1枚のジョイント板52が設けられている。ジョイント板52の厚さは、2枚のジョイント板61間の隙間よりわずかに小さい。また、1枚のジョイント板52および2枚のジョイント板61には、それぞれ、各板面に略垂直に貫通可能な穴が形成されており、かつ3つの穴は、2枚のジョイント板61の間にジョイント板52を入れたときに、重なる位置に形成されている。上記3つの穴には、ピン62が挿入されている、1枚のジョイント板52、2枚のジョイント板61およびピン62は、関節部56を構成する。ピン62とジョイント板61,52の穴の隙間は極めて小さく設計されている。このため、関節部56は、適度な屈曲抵抗をもって屈曲できるようになっている。なお、取付部60側に1枚のジョイント板を、アーム本体部50側に2枚のジョイント板を形成して、関節部56を構成しても良い。
【0034】
2枚のジョイント板61の先端と略直角方向の片側の略水平部分には、一枚の板状のストッパー64が取り付けられている。2枚のジョイント板61の上記略水平部分とアーム本体部50の側壁とは、ほぼ面一となっている。ストッパー64は、ジョイント板61からアーム本体部50の方向に延出し、アーム本体部50の側壁上に重なる形状である。ストッパー64は、アーム本体部50(ジョイント板52も含め)とは固定されておらず、取付部60の2枚のジョイント板61とのみ固定されている。関節部56は、ストッパー64が無ければ、図5において左右いずれの方向にも回動可能な構造である。しかし、ストッパー64が設けられているため、アーム本体部50は、ジョイント板61に対して略水平の位置から矢印Lに向かって回動することができるのみであり、その略水平方向の位置から矢印Lと反対方向には回動できないようになっている。
【0035】
フランジ65は、略円板形状を有し、その板面には、互いに120度の中心角の間隔で穴を有する。各穴には、ねじ66が挿通可能である。3本のねじ66をフランジ65の穴を通して車両Cの側壁にねじ止めすることにより、アーム20を車両Cに取り付けることができる。
【0036】
図6は、図1に示すアームの側面図である。図7は、図6に示すアームを折りたたんだ状態を示す側面図である。
【0037】
アーム本体部50は、関節部56において、ストッパー64がアーム本体部50に接した状態から矢印Lの方向に屈曲可能である。また、固定部30は、関節部55において、ストッパー34がアーム本体部50に接した状態から矢印Rの方向に屈曲可能である。このため、アーム本体部50を関節部56で矢印Lの方向に曲げ、かつ固定部30を関節部55で矢印Rの方向に曲げると、図7に示すように、アーム20を折りたたむことが可能である。車両Cを狭いスペースに駐車するようなとき、アーム20を折りたたむことにより、駐車スペースを少なくすることができる。
【0038】
なお、ストッパー34およびストッパー64を、図6におけるアーム20の上下方向逆側に取り付け、アーム本体部50を関節部56で矢印Lと逆方向に、固定部30を関節部55で矢印Rと反対方向にそれぞれ曲げて、アーム20を折りたたむようにしても良い。また、ストッパー34のみを図6におけるアーム20の上下方向逆側に取り付け、固定部30を関節部55で矢印Rと反対方向に曲げて、アーム20を折りたたむようにしても良い。さらに、ストッパー64のみを図6におけるアーム20の上下方向逆側に取り付け、アーム本体部50を関節部56で矢印Lと反対方向に曲げて、アーム20を折りたたむようにしても良い。
【0039】
2.第二の実施の形態
【0040】
図8は、本発明の第二の実施の形態に係る防護装置の一構成部である柵状体の斜視図である。図9は、図8に示す柵状体の左側面図である。
【0041】
第二の実施の形態に係る防護装置は、柵状体の形状を除き、第一の実施の形態に係る防護装置1と同じ構造を有する。このため、第二の実施の形態に係る防護装置にも、第一の実施の形態に係る防護装置と同じ符号「1」を付し、さらに各形態で共通する構造部材には同じ符号を付す。また、第二の実施の形態に係る防護装置を構成するアームは、第一の実施の形態に係る防護装置1を構成するアーム20と同じ構造であるため、その重複する説明を省略し、第一の実施の形態で説明した内容で代用する。
【0042】
図8および図9に示すように、第二の実施の形態に係る防護装置1を構成する柵状体80は、矩形の枠体81の枠内に、一方向(図8および図9では、略水平方向)に延出する15本の角型のロッド82を備える。柵状体80は金属製であり、鉄、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金製であるのが、より好ましい。ロッド82も金属製であるのが好ましい。枠体81の枠内に配置する部材をアルミニウム若しくはアルミニウム合金製の部材とする場合には、特に、この実施の形態で示すように、ロッド82の形態にするのが好ましい。板の形状よりも、ロッドの形状とする方が変形しにくく、飛翔弾のヘッド部の通過を効果的に阻止できることが期待できるからである。なお、枠体81とロッド82をそれぞれ構成する材料は、同一であっても異なっていても良い。枠体81は、好ましくは、厚さ(T1,T2)5〜15mm、幅(W1)35mm以上の板から構成される。この実施の形態では、枠体81の正面視の形状は、長方形あるいは正方形であるが、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形としても良い。
【0043】
ロッド82は、好ましくは、一辺(t2)9〜20mmの底面形状が正方形の角棒である。ただし、底面形状が長方形の角棒としても良い。ロッド82は、枠体81の対向する両側板を貫通させ、その貫通部分を溶接(TIG溶接が特に好ましい)して枠体81に接合するのが好ましい。ただし、溶接せずに、ロッド82を枠体81の対向する両側板を貫通させるだけで固定しても良い。図8および図9において上下方向に隣接して配置されロッド82同士の間隔(S2)は、飛翔弾の通過を阻止可能な間隔であり、阻止対象となる飛翔弾の大きさおよび形状に応じて適正な間隔に設計可能であるが、好ましくは35〜85mmである。また、間隔(S2)は、枠体81とロッド82との間と、上下方向に隣接するロッド82の間を全て等間隔にすることもできるが、例えば、枠体81の枠内略中央近傍にあるロッド82同士の間隔を、他のロッド82同士の間隔や枠体81とロッド82との間隔より狭くすることもできる。
【0044】
3.第三の実施の形態
【0045】
図10は、本発明の第三の実施の形態に係る防護装置の一構成部である柵状体の斜視図である。図11は、図10に示す柵状体のA−A線断面図および当該断面図における一部Xの拡大図である。
【0046】
第三の実施の形態に係る防護装置は、柵状体の形状およびアームの固定部の構造を除き、第一の実施の形態に係る防護装置1と同じ構造を有する。このため、第三の実施の形態に係る防護装置にも、第一の実施の形態に係る防護装置と同じ符号「1」を付し、さらに各形態で共通する構造部材には同じ符号を付す。また、第三の実施の形態に係る防護装置を構成するアームのアーム本体部および取付部は、第一の実施の形態に係る防護装置1を構成するアーム20のアーム本体部50および取付部60とそれぞれ同じ構造であるため、その重複する説明を省略し、第一の実施の形態で説明した内容で代用する。
【0047】
図10および図11に示すように、第三の実施の形態に係る防護装置1を構成する柵状体90は、矩形の枠体91の枠内に、一方向(図10および図11では、略水平方向)に延出する15枚の板92を備える。柵状体90は金属製であり、鉄、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金製であるのが、より好ましい。板92も金属製であり、鉄あるいはステンレススチール製であるのが好ましい。枠体91と板92をそれぞれ構成する材料は、同一であっても異なっていても良い。枠体91は、好ましくは、厚さ(T1,T2)5〜15mm、幅(W1)35mm以上の板から構成される。この実施の形態では、枠体91の正面視の形状は、長方形あるいは正方形であるが、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形としても良い。
【0048】
板92は、好ましくは、厚さ(t3)3〜12mm、長さが枠体91の枠内の一辺にほぼ等しい。また、板92は、図11に示すように、その幅方向の途中から鋭角(θ)に曲がっており、平板部93と、当該平板部93に対して鋭角(0度<θ<90度)に傾斜する傾斜部94とを連接した形状を持つ。板92の長さ方向の両端と枠体91の枠内の内壁とは、板92の幅方向を正面とするように(すなわち、板厚の面を正面にするように)、溶接(TIG溶接が特に好ましい)若しくははめ込み、あるいはその両方の組み合わせにて接合するのが好ましい。板92を枠体91の枠内の内壁と溶接する場合には、板92の両端を開先加工してから溶接するのが好ましい。図10および図11において上下方向に隣接して配置される板92同士の間隔(S3)は、飛翔弾の通過を阻止可能な間隔であり、阻止対象となる飛翔弾の大きさおよび形状に応じて適正な間隔に設計可能であるが、好ましくは35〜85mmである。また、間隔(S3)は、枠体91と板92との間と、上下方向に隣接する板92の間を全て等間隔にすることもできるが、例えば、枠体91の枠内略中央近傍にある板92同士の間隔を、他の板92同士の間隔や枠体91と板92との間隔より狭くすることもできる。
【0049】
隣接する板92同士の隙間によって形成される経路が板92の幅方向途中から曲がっているので、柵状体90の正面から進行してきた飛翔弾の内部のライナーが十分に破壊できずにメタルジェットが生成したとしても、メタルジェットの射出方向を飛翔弾の直進方向からそらし、車両Cをより効果的に防護することができる。
【0050】
図12は、本発明の第三の実施の形態に係る防護装置における柵状体とアームとの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【0051】
第三の実施の形態に係る防護装置1を構成するアーム20において、固定部30のジョイント板31を含む関節部55は、第一の実施の形態と同じ構造である。ジョイント板31と接合する把持部100は、第一の実施の形態にて説明した把持部33と異なり、3分割可能な構造を有する。把持部100は、図12に示すように、L字体101と、半割り体102,103とから主に構成される。L字体101は、アーム20をストッパー34の上面方向から見てL字形をなす部材であり、ジョイント板31と反対側の端面側に、図12の上下方向に2個並んで、ねじ穴120が形成されている。半割り体102,103では、L字体101に取り付ける際に互いに対向する面が、柵状体90の板92の厚さ方向の両面に接する若しくは接するに近い状態になるように屈曲した面となっている。
【0052】
また、半割り体102,103のL字体101との接合部分には、半割り体102,103の板を貫通する穴110,110が形成されている。また、それら穴110,110に対応するL字体101の所定箇所には、ねじ穴(図12では不図示)が形成されている。半割り体102,103をL字体101に結合して1つの把持部100にする場合、ねじ115,115を、それぞれ半割り体102,103の穴110,110を挿通させて、L字体101のねじ穴にねじ止めする。また、半割り体102,103のジョイント板31と反対側の端面側には、図12の上下方向に2個並んで、ねじ穴120が形成されている。
【0053】
柵状体90の正面側から把持部100に被せる蓋40の4つの角に近い部分には、蓋40の厚さ方向に貫通する穴41が設けられている。これら4つの穴41は、把持部100側の4つのねじ穴120と合わせることのできる位置に形成されている。
【0054】
上記のように、把持部100を、L字体101、半割り体102,103から構成するようにしたのは、把持部100を完成した状態のままでは、一方向から柵状体90をはめ込むことができないからである。把持部100に柵状体90を固定する場合、L字体101の内面側に柵状体90を配置し、そこに、柵状体90の内側から半割り体102,103をL字体101に固定する。この状態で、柵状体90が、L字体101、半割り体102,103にて挟まれた状態になる。最後に、蓋40を被せて、ねじ42を穴41、ねじ穴120を通して締めることにより、固定部30への柵状体90の固定が完了する。
【0055】
なお、この実施の形態では、蓋40の裏側にT字形状の溝を形成していないが、かかる溝を形成することもできる。その場合には、把持部100先端側に形成される溝の深さを柵状体90の枠体91の幅よりも小さく形成し、当該溝の深さと蓋40の裏面に形成される溝の深さとの総距離を、枠体91の幅にほぼ等しくするのが好ましい。さらに、当該総距離が枠体91の幅よりも小さくても良い。その場合には、固定部30に柵状体90を固定した状態で、蓋40とL字体101および半割り体102,103の各先端面とが接触しないが、ねじ42にてねじ止めすることで、把持部100への柵状体90の固定が可能となる。
【0056】
半割り体102,103は、L字体101に取り付けた状態にて互いに対向する面を屈曲させず、平面にすることもできる。ただし、その場合、半割り体102,103を、柵状体90の板92の平面部93の上面と傾斜部94の下端部とを挟むように互いの間隔を大きくしてL字体101に固定できるようにする必要がある。また、そのような固定方法にすると、半割り体102,103の互いに対向する面が、板92の平板部93と傾斜部94に面接触した状態にならない。したがって、柵状体90と把持部100とをより強く固定するためには、先に説明したように、半割り体102,103の形状およびL字体101との結合を、柵状体90の板92の厚さ方向の上下両面側から面接触できるようなものにする方が好ましい。
【0057】
4.その他の実施の形態
【0058】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されず、次に例示的に説明するように、種々の変形を施して実施することができる。
【0059】
例えば、第三の実施の形態に係る防護装置1において、板92の傾斜部94を下方ではなく、上、左あるいは右方向に向けるように、柵状体90をアーム20に固定しても良い。また、15枚の板92の傾斜部94が全て同じ方向に向くようにせず、例えば、上半分にある7枚の板92の傾斜部94を上方に、残り8枚の板92の傾斜部94を下方に向けて、板92を枠体91に固定しても良い。板12、ロッド82あるいは板92の数は、15に限定されず、枠体11,81,91の大きさと隙間の大きさに応じて如何なる数であっても良い。板12,92同士あるいはロッド82同士の隙間は、35〜85mm以外の大きさでも良く、飛翔弾の種類に応じて変えることができる。
【0060】
アーム20は、固定部30とアーム本体部50との間の関節部55およびアーム本体部50と取付部60との間の関節部56の合計2箇所で屈曲可能であるが、関節部の数を変え、1箇所のみ、あるいは3箇所以上で屈曲可能としても良い。また、ストッパー34,64は、必須ではなく、全く設けないようにしても良い。また、アーム本体部50の両端に、固定部30および取付部60側まで延出する形状の板を固定し、関節部55,56の回動を規制しても良い。アーム20に一切の関節部を設けず、屈曲できない構造のアームとしても良い。把持部33,100にて柵状体10,80,90を把持するのではなく、固定部30の一端と柵状体10,80,90とをねじ、ボルト、フランジ等にて固定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、飛翔弾から車両、船舶、飛行体、建物等を防護するために利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 防護装置
10 柵状体
11 枠体
12 板
20 アーム
30 固定部
33 把持部
50 アーム本体部
55 関節部
56 関節部
60 取付部
80 柵状体
81 枠体
82 ロッド
90 柵状体
91 枠体
92 板
93 平板部
94 傾斜部
100 把持部
B 飛翔弾
C 車両(防護対象物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔弾の破壊力を抑制するための防護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
戦争やテロの無い平和な社会が理想的ではあるが、現実には、地球上のどこかで、宗教上、民族上、経済上などの様々な理由から争いが起こっている。このため、各国は、戦争やテロが起こったときの装備を十分に行っておく必要がある。例えば、要人が乗車する車両の多くには、防弾ガラス、防弾ボディおよびノーパンクタイヤを備えた特殊な車両が使われている。また、戦争や治安維持に用いられることがある装甲車両には、そのボディに、銃弾が容易に貫通しないような厚い装甲板を用いたものが多い。
【0003】
例えば、装甲車両本体に、着脱型装甲材を取り付け、そのバックプレートとしてのハニカム材を装甲車両本体と着脱型装甲材との間の介在させたものが、知られている(特許文献1を参照)。着脱型装甲材は、それを貫通しようとする弾体に被弾して変形しようとする。しかし、その変形は、ハニカム材が押しつぶされて体積が減ることにより、ハニカム材に吸収される。この結果、当該弾体は、装甲車両本体に到達する前にその運動エネルギーを消耗するため、装甲車両本体を有効に防護することができる。
【0004】
上記のような防護技術の開発に併行し、兵器の開発も一進一退で行われており、厚い装甲板の装備や、着脱型装甲材とハニカム材の装備の程度では防ぎきれないような高い破壊力をもった兵器も開発されてきている。
【0005】
図13は、対戦車ロケット推進てい弾あるいは成形炸薬弾(以後、代表して、「成形炸薬弾」という)の一例の内部を概略的に示す図である。成形炸薬弾200は、その先端方向から順に、ヘッド部201、モータ搭載部202、ブースター部203という3つの領域から成る。ヘッド部201は、その内部の先端部分にヒューズ210を備え、当該先端部分から後方に向かって大径になるように膨らみ、途中から後方に向かって小径になり、モータ搭載部202に連接する構造を有する。ヘッド部201の内部には、前方に開口する漏斗形状の金属製の内張り(ライナー)220が備えられている。ライナー220の周囲には、略円柱形状であってライナー220側をへこませた炸薬230が配置され、ライナー220の後方には起爆薬240が配置されている。ここで、ライナー220は、擬似液体金属としての挙動を示すメタルジェットの基になる部分である。かかる構造の成形炸薬弾200が装甲車両本体に衝突すると、ヒューズ210への衝撃に起因して起爆薬240が起爆し、炸薬230の爆轟波の進行に伴い、ライナー220が動的超高圧になり、メタルジェットが発生する。当該メタルジェットは、細長く伸び、装甲車両本体の側壁にあけられた穴から内部へと噴き込む。この結果、成形炸薬弾200が物理的に装甲車両本体を貫徹するというよりも、成形炸薬弾200からのメタルジェットが装甲車両本体の側壁から内部に噴き込み、内部にダメージを与える効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−294393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように、装甲板を強化しあるいはハニカム材を装備することにより、上記の成形炸薬弾200に代表される兵器の破壊力を、ある程度抑制することは可能である。しかし、装甲板の直接的な破壊ではなく、メタルジェットの噴入により、装甲車両本体内部を破壊するような兵器に対しては、十分な防護が困難である。これは、装甲車両の防護に限られたことではなく、建造物の防護であっても同様である。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、メタルジェットを生成する飛翔弾から有効に防護可能な防護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するための本発明の一形態は、飛翔弾から防護対象物を防護するための防護装置であって、一方向に延出する複数の板若しくは複数のロッドを、飛翔弾の通過を阻止可能な間隔で枠体内に備える柵状体と、その柵状体の一部と固定し、防護対象物と柵状体との間をつなぐ1若しくは2以上のアームとを備える防護装置である。
【0010】
また、本発明の別の形態は、複数の板の一部若しくは全部が、平板部とその平板部から鋭角に曲る傾斜部とを備える防護装置である。
【0011】
また、本発明の別の形態は、複数の板若しくは複数のロッドの間隔を、35〜85mmの範囲内とする防護装置である。
【0012】
また、本発明の別の形態は、アームに、屈曲可能な関節部を1若しくは2以上備える防護装置である。
【0013】
また、本発明の別の形態は、関節部を、使用時のアームの状態から片側に回動できない構造とする防護装置である。
【0014】
また、本発明の別の形態は、関節部を2つ備え、互いに逆側に回動できない構造を有する防護装置である。
【0015】
また、本発明の別の形態は、アームの柵状体を固定するための固定部に、柵状体の枠体の一部と、当該枠体の一部につながる板若しくはロッドの一部とを把持する把持部を備える防護装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メタルジェットを生成する飛翔弾から有効に防護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る防護装置の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す防護装置の一部を構成する柵状体の正面図である。
【図3】図3は、図2に示す柵状体の左側面図であり、柵状体の正面に向かって飛翔してくる飛翔弾が柵状体に当たった状態を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す柵状体とアームとの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【図5】図5は、図1に示すアームの取付部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図6】図6は、図1に示すアームの側面図である。
【図7】図7は、図6に示すアームを折りたたんだ状態を示す側面図である。
【図8】図8は、本発明の第二の実施の形態に係る防護装置の一構成部である柵状体の斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す柵状体の左側面図である。
【図10】図10は、本発明の第三の実施の形態に係る防護装置の一構成部である柵状体の斜視図である。
【図11】図11は、図10に示す柵状体のA−A線断面図および当該断面図における一部Xの拡大図である。
【図12】図12は、本発明の第三の実施の形態に係る防護装置における柵状体とアームとの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【図13】図13は、ロケット推進てい弾あるいは成形炸薬弾の一例の内部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の防護装置の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
1.第一の実施の形態
【0020】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る防護装置の斜視図である。図2は、図1に示す防護装置の一部を構成する柵状体の正面図である。図3は、図2に示す柵状体の左側面図であり、柵状体の正面に向かって飛翔してくる飛翔弾が柵状体に当たった状態を示す図である。
【0021】
第一の実施の形態に係る防護装置1は、飛翔弾から防護対象物(ここでは、「車両」)Cを防護するための防護装置であって、1つの柵状体10と、車両Cと柵状体10との間を連結する2本のアーム20とを備える。
【0022】
柵状体10は、矩形の枠体11の枠内に、一方向(図1および図2では、略水平方向)に延出する15枚の板12を備える。柵状体10は金属製であり、鉄、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金製であるのが、より好ましい。板12も金属製であり、鉄、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金製であるのが好ましい。枠体11と板12をそれぞれ構成する材料は、同一であっても異なっていても良い。枠体11は、好ましくは、厚さ(T1,T2)5〜15mm、幅(W1)35mm以上の板から構成される。この実施の形態では、枠体11の正面視の形状は、長方形あるいは正方形であるが、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形としても良い。
【0023】
板12は、好ましくは、厚さ(t1)3〜12mm、長さが枠体11の枠内の一辺にほぼ等しい平板である。板12の幅は、好ましくは、枠体11の幅(W1)と略等しい。板12の長さ方向の両端と枠体11の枠内の内壁とは、板12の幅方向を正面とするように(すなわち、板厚の面を正面にするように)、溶接(TIG溶接が特に好ましい)若しくははめ込み、あるいはその両方の組み合わせにて接合するのが好ましい。板12を枠体11の枠内の内壁と溶接する場合には、板12の両端を開先加工してから溶接するのが好ましい。図1および図2において上下方向に隣接して配置される板12同士の間隔(S1)は、飛翔弾の通過を阻止可能な間隔であり、阻止対象となる飛翔弾の大きさおよび形状に応じて適正な間隔に設計可能であるが、好ましくは35〜85mmである。また、間隔(S1)は、枠体11と板12との間と、上下方向に隣接する板12の間を全て等間隔にすることもできるが、例えば、枠体11の枠内略中央近傍にある板12同士の間隔を、他の板12同士の間隔や枠体11と板12との間隔より狭くすることもできる。
【0024】
図3に示すように、柵状体10の板12同士の間に、その正面に向かって矢印方向から飛翔してきた飛翔弾Bが衝突すると、飛翔弾Bのヘッド部(通常、直径85mm以上)の内部にある金属製のライナーb部分が板12同士の間に挟まれて破壊される。この結果、メタルジェットの形成を阻止し、飛翔弾Bの威力を大きく低減させることができる。
【0025】
2本のアーム20は、図1に示すように、柵状体10の対向辺の略中央近傍と、車両Cの側壁との間を連結する部材である。ただし、アーム20を柵状体10に取り付ける位置およびアーム20の数は、種々変更することができ、例えば、柵状体10の対向辺の一辺に対して2本ずつ取り付け、あるいは柵状体10の上下左右の合計4辺に1本ずつ若しくは2本ずつ取り付けても良い。
【0026】
アーム20は、柵状体10の枠体11の対向両辺と固定する固定部30と、その固定部30から車両C方向に延びるアーム本体部50と、アーム20を車両Cに取り付ける取付部60とを備える。固定部30とアーム本体部50との間、およびアーム本体部50と取付部60との間には、それぞれ関節部55および関節部56が形成されており、当該関節部55,56で屈曲可能になっている。アーム20の詳細な構造は、後述する。
【0027】
図4は、図1に示す柵状体とアームとの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【0028】
固定部30は、アーム本体部50側から順に、2枚のジョイント板31と、柵状体10を把持する把持部33と、柵状体10を把持部33に把持した状態で把持部33と結合可能な蓋部40とを備える。2枚のジョイント板31は、互いに所定の隙間を持って形成されている。図4では、紙面表方向の1枚のジョイント板31しか見えていないが、紙面裏方向にも同一のジョイント板31が設けられている。ジョイント板31は、その先端を丸くした細長い半円形の形状を有する。一方、アーム本体部50の固定部30に近い端面には、ジョイント板31と略同じ形状の1枚のジョイント板51が設けられている。ジョイント板51の厚さは、2枚のジョイント板31間の隙間よりわずかに小さい。また、1枚のジョイント板51および2枚のジョイント板31には、それぞれ、各板面に略垂直に貫通可能な穴が形成されており、かつ3つの穴は、2枚のジョイント板31の間にジョイント板51を入れたときに、重なる位置に形成されている。上記3つの穴には、ピン32が挿入されている、1枚のジョイント板51、2枚のジョイント板31およびピン32は、関節部55を構成する。ピン32とジョイント板31,51の穴の隙間は極めて小さく設計されている。このため、関節部55は、適度な屈曲抵抗をもって屈曲できるようになっている。なお、固定部30側に1枚のジョイント板を、アーム本体部50側に2枚のジョイント板を形成して、関節部55を構成しても良い。
【0029】
2枚のジョイント板31の先端に略直角方向の片側の略水平部分には、一枚の板状のストッパー34が取り付けられている。2枚のジョイント板31の上記略水平部分とアーム本体部50の側壁とは、ほぼ面一となっている。ストッパー34は、ジョイント板31からアーム本体部50の方向に延出し、アーム本体部50の側壁上に重なる形状である。ストッパー34は、アーム本体部50(ジョイント板51も含め)とは固定されておらず、固定部30の2枚のジョイント板31とのみ固定されている。関節部55は、ストッパー34が無ければ、図4において左右いずれの方向にも回動可能な構造である。しかし、ストッパー34が設けられているため、固定部30は、アーム本体部50に対して略水平の位置から矢印Rに向かって回動することができるのみであり、その略水平方向の位置から矢印Rと反対方向には回動できないようになっている。
【0030】
把持部33のジョイント板31と反対側には、把持部33の内方にへこむように、柵状体10側から見て十字形状の溝35が形成されている。溝35は、図4における上下方向の溝幅を柵状体10の枠体11の厚さよりわずかに広くなるように、また、左右方向の溝幅を板12の厚さよりわずかに広くなるように形成されている。溝35は、把持部33の先端面より柵状体10が突出しないような奥行きで把持部33に形成されるのが好ましい。把持部33の溝35周辺には、4本の脚部36が形成されている。少なくとも、溝35の十字交差点近傍の脚部36の角は、面取りされている。柵状体10の枠体11と板12との接合部分が、溶接によって丸みを帯びた角になっていても、溝35内にスムーズに柵状体10を挿入できるようにするためである。なお、この実施の形態では、アーム20を柵状体10の両端部固定用に共通の形状とする目的から、溝35を十字形状としているが、柵状体10の図1に示す左右両端に固有のアーム20を製造することもでき、その場合には、十字形状の溝35ではなく、T字形状の溝を把持部33に形成し、柵状体10を溝にはめ込んだ際には余分な方向の溝空間が無いようにすることもできる。
【0031】
脚部36の先端面は、略平面形状であり、その先端面にそれぞれ1個のねじ穴38が形成されている。また、柵状体10の正面側から把持部33に被せる蓋40の4つの角に近い部分には、蓋40の厚さ方向に貫通する穴41が設けられている。これら4つの穴41は、把持部33側の4つのねじ穴38と合わせることのできる位置に形成されている。このため、把持部33側の溝35内に柵状体10を挿入し、蓋40を被せて、ねじ42を穴41、ねじ穴38を通して締めることにより、固定部30への柵状体10の固定ができる。なお、この実施の形態では、蓋40の裏側に十字形状あるいはT字形状の溝を形成していないが、かかる溝を形成することもできる。その場合には、把持部33先端側に形成される溝35の深さを柵状体10の枠体11の幅よりも小さく形成し、溝35の深さと蓋40の裏面に形成される溝の深さとの総距離を、枠体11の幅にほぼ等しくするのが好ましい。さらに、当該総距離が枠体11の幅よりも小さくても良い。その場合には、固定部30に柵状体10を固定した状態で、蓋40と各脚部36の先端面とは接触しないが、ねじ42で蓋40と各脚部36とを結合することで、把持部33への柵状体10の固定が可能となる。
【0032】
図5は、図1に示すアームの取付部を拡大して示す拡大斜視図である。
【0033】
取付部60は、アーム本体部50側から順に、2枚のジョイント板61と、車両Cにアーム20を固定するためのフランジ65とを備える。2枚のジョイント板61は、互いに所定の隙間を持って形成されている。ジョイント板61は、その先端を丸くした細長い半円形の形状を有する。一方、アーム本体部50の取付部60に近い端面には、ジョイント板61と略同じ形状の1枚のジョイント板52が設けられている。ジョイント板52の厚さは、2枚のジョイント板61間の隙間よりわずかに小さい。また、1枚のジョイント板52および2枚のジョイント板61には、それぞれ、各板面に略垂直に貫通可能な穴が形成されており、かつ3つの穴は、2枚のジョイント板61の間にジョイント板52を入れたときに、重なる位置に形成されている。上記3つの穴には、ピン62が挿入されている、1枚のジョイント板52、2枚のジョイント板61およびピン62は、関節部56を構成する。ピン62とジョイント板61,52の穴の隙間は極めて小さく設計されている。このため、関節部56は、適度な屈曲抵抗をもって屈曲できるようになっている。なお、取付部60側に1枚のジョイント板を、アーム本体部50側に2枚のジョイント板を形成して、関節部56を構成しても良い。
【0034】
2枚のジョイント板61の先端と略直角方向の片側の略水平部分には、一枚の板状のストッパー64が取り付けられている。2枚のジョイント板61の上記略水平部分とアーム本体部50の側壁とは、ほぼ面一となっている。ストッパー64は、ジョイント板61からアーム本体部50の方向に延出し、アーム本体部50の側壁上に重なる形状である。ストッパー64は、アーム本体部50(ジョイント板52も含め)とは固定されておらず、取付部60の2枚のジョイント板61とのみ固定されている。関節部56は、ストッパー64が無ければ、図5において左右いずれの方向にも回動可能な構造である。しかし、ストッパー64が設けられているため、アーム本体部50は、ジョイント板61に対して略水平の位置から矢印Lに向かって回動することができるのみであり、その略水平方向の位置から矢印Lと反対方向には回動できないようになっている。
【0035】
フランジ65は、略円板形状を有し、その板面には、互いに120度の中心角の間隔で穴を有する。各穴には、ねじ66が挿通可能である。3本のねじ66をフランジ65の穴を通して車両Cの側壁にねじ止めすることにより、アーム20を車両Cに取り付けることができる。
【0036】
図6は、図1に示すアームの側面図である。図7は、図6に示すアームを折りたたんだ状態を示す側面図である。
【0037】
アーム本体部50は、関節部56において、ストッパー64がアーム本体部50に接した状態から矢印Lの方向に屈曲可能である。また、固定部30は、関節部55において、ストッパー34がアーム本体部50に接した状態から矢印Rの方向に屈曲可能である。このため、アーム本体部50を関節部56で矢印Lの方向に曲げ、かつ固定部30を関節部55で矢印Rの方向に曲げると、図7に示すように、アーム20を折りたたむことが可能である。車両Cを狭いスペースに駐車するようなとき、アーム20を折りたたむことにより、駐車スペースを少なくすることができる。
【0038】
なお、ストッパー34およびストッパー64を、図6におけるアーム20の上下方向逆側に取り付け、アーム本体部50を関節部56で矢印Lと逆方向に、固定部30を関節部55で矢印Rと反対方向にそれぞれ曲げて、アーム20を折りたたむようにしても良い。また、ストッパー34のみを図6におけるアーム20の上下方向逆側に取り付け、固定部30を関節部55で矢印Rと反対方向に曲げて、アーム20を折りたたむようにしても良い。さらに、ストッパー64のみを図6におけるアーム20の上下方向逆側に取り付け、アーム本体部50を関節部56で矢印Lと反対方向に曲げて、アーム20を折りたたむようにしても良い。
【0039】
2.第二の実施の形態
【0040】
図8は、本発明の第二の実施の形態に係る防護装置の一構成部である柵状体の斜視図である。図9は、図8に示す柵状体の左側面図である。
【0041】
第二の実施の形態に係る防護装置は、柵状体の形状を除き、第一の実施の形態に係る防護装置1と同じ構造を有する。このため、第二の実施の形態に係る防護装置にも、第一の実施の形態に係る防護装置と同じ符号「1」を付し、さらに各形態で共通する構造部材には同じ符号を付す。また、第二の実施の形態に係る防護装置を構成するアームは、第一の実施の形態に係る防護装置1を構成するアーム20と同じ構造であるため、その重複する説明を省略し、第一の実施の形態で説明した内容で代用する。
【0042】
図8および図9に示すように、第二の実施の形態に係る防護装置1を構成する柵状体80は、矩形の枠体81の枠内に、一方向(図8および図9では、略水平方向)に延出する15本の角型のロッド82を備える。柵状体80は金属製であり、鉄、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金製であるのが、より好ましい。ロッド82も金属製であるのが好ましい。枠体81の枠内に配置する部材をアルミニウム若しくはアルミニウム合金製の部材とする場合には、特に、この実施の形態で示すように、ロッド82の形態にするのが好ましい。板の形状よりも、ロッドの形状とする方が変形しにくく、飛翔弾のヘッド部の通過を効果的に阻止できることが期待できるからである。なお、枠体81とロッド82をそれぞれ構成する材料は、同一であっても異なっていても良い。枠体81は、好ましくは、厚さ(T1,T2)5〜15mm、幅(W1)35mm以上の板から構成される。この実施の形態では、枠体81の正面視の形状は、長方形あるいは正方形であるが、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形としても良い。
【0043】
ロッド82は、好ましくは、一辺(t2)9〜20mmの底面形状が正方形の角棒である。ただし、底面形状が長方形の角棒としても良い。ロッド82は、枠体81の対向する両側板を貫通させ、その貫通部分を溶接(TIG溶接が特に好ましい)して枠体81に接合するのが好ましい。ただし、溶接せずに、ロッド82を枠体81の対向する両側板を貫通させるだけで固定しても良い。図8および図9において上下方向に隣接して配置されロッド82同士の間隔(S2)は、飛翔弾の通過を阻止可能な間隔であり、阻止対象となる飛翔弾の大きさおよび形状に応じて適正な間隔に設計可能であるが、好ましくは35〜85mmである。また、間隔(S2)は、枠体81とロッド82との間と、上下方向に隣接するロッド82の間を全て等間隔にすることもできるが、例えば、枠体81の枠内略中央近傍にあるロッド82同士の間隔を、他のロッド82同士の間隔や枠体81とロッド82との間隔より狭くすることもできる。
【0044】
3.第三の実施の形態
【0045】
図10は、本発明の第三の実施の形態に係る防護装置の一構成部である柵状体の斜視図である。図11は、図10に示す柵状体のA−A線断面図および当該断面図における一部Xの拡大図である。
【0046】
第三の実施の形態に係る防護装置は、柵状体の形状およびアームの固定部の構造を除き、第一の実施の形態に係る防護装置1と同じ構造を有する。このため、第三の実施の形態に係る防護装置にも、第一の実施の形態に係る防護装置と同じ符号「1」を付し、さらに各形態で共通する構造部材には同じ符号を付す。また、第三の実施の形態に係る防護装置を構成するアームのアーム本体部および取付部は、第一の実施の形態に係る防護装置1を構成するアーム20のアーム本体部50および取付部60とそれぞれ同じ構造であるため、その重複する説明を省略し、第一の実施の形態で説明した内容で代用する。
【0047】
図10および図11に示すように、第三の実施の形態に係る防護装置1を構成する柵状体90は、矩形の枠体91の枠内に、一方向(図10および図11では、略水平方向)に延出する15枚の板92を備える。柵状体90は金属製であり、鉄、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金製であるのが、より好ましい。板92も金属製であり、鉄あるいはステンレススチール製であるのが好ましい。枠体91と板92をそれぞれ構成する材料は、同一であっても異なっていても良い。枠体91は、好ましくは、厚さ(T1,T2)5〜15mm、幅(W1)35mm以上の板から構成される。この実施の形態では、枠体91の正面視の形状は、長方形あるいは正方形であるが、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形としても良い。
【0048】
板92は、好ましくは、厚さ(t3)3〜12mm、長さが枠体91の枠内の一辺にほぼ等しい。また、板92は、図11に示すように、その幅方向の途中から鋭角(θ)に曲がっており、平板部93と、当該平板部93に対して鋭角(0度<θ<90度)に傾斜する傾斜部94とを連接した形状を持つ。板92の長さ方向の両端と枠体91の枠内の内壁とは、板92の幅方向を正面とするように(すなわち、板厚の面を正面にするように)、溶接(TIG溶接が特に好ましい)若しくははめ込み、あるいはその両方の組み合わせにて接合するのが好ましい。板92を枠体91の枠内の内壁と溶接する場合には、板92の両端を開先加工してから溶接するのが好ましい。図10および図11において上下方向に隣接して配置される板92同士の間隔(S3)は、飛翔弾の通過を阻止可能な間隔であり、阻止対象となる飛翔弾の大きさおよび形状に応じて適正な間隔に設計可能であるが、好ましくは35〜85mmである。また、間隔(S3)は、枠体91と板92との間と、上下方向に隣接する板92の間を全て等間隔にすることもできるが、例えば、枠体91の枠内略中央近傍にある板92同士の間隔を、他の板92同士の間隔や枠体91と板92との間隔より狭くすることもできる。
【0049】
隣接する板92同士の隙間によって形成される経路が板92の幅方向途中から曲がっているので、柵状体90の正面から進行してきた飛翔弾の内部のライナーが十分に破壊できずにメタルジェットが生成したとしても、メタルジェットの射出方向を飛翔弾の直進方向からそらし、車両Cをより効果的に防護することができる。
【0050】
図12は、本発明の第三の実施の形態に係る防護装置における柵状体とアームとの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【0051】
第三の実施の形態に係る防護装置1を構成するアーム20において、固定部30のジョイント板31を含む関節部55は、第一の実施の形態と同じ構造である。ジョイント板31と接合する把持部100は、第一の実施の形態にて説明した把持部33と異なり、3分割可能な構造を有する。把持部100は、図12に示すように、L字体101と、半割り体102,103とから主に構成される。L字体101は、アーム20をストッパー34の上面方向から見てL字形をなす部材であり、ジョイント板31と反対側の端面側に、図12の上下方向に2個並んで、ねじ穴120が形成されている。半割り体102,103では、L字体101に取り付ける際に互いに対向する面が、柵状体90の板92の厚さ方向の両面に接する若しくは接するに近い状態になるように屈曲した面となっている。
【0052】
また、半割り体102,103のL字体101との接合部分には、半割り体102,103の板を貫通する穴110,110が形成されている。また、それら穴110,110に対応するL字体101の所定箇所には、ねじ穴(図12では不図示)が形成されている。半割り体102,103をL字体101に結合して1つの把持部100にする場合、ねじ115,115を、それぞれ半割り体102,103の穴110,110を挿通させて、L字体101のねじ穴にねじ止めする。また、半割り体102,103のジョイント板31と反対側の端面側には、図12の上下方向に2個並んで、ねじ穴120が形成されている。
【0053】
柵状体90の正面側から把持部100に被せる蓋40の4つの角に近い部分には、蓋40の厚さ方向に貫通する穴41が設けられている。これら4つの穴41は、把持部100側の4つのねじ穴120と合わせることのできる位置に形成されている。
【0054】
上記のように、把持部100を、L字体101、半割り体102,103から構成するようにしたのは、把持部100を完成した状態のままでは、一方向から柵状体90をはめ込むことができないからである。把持部100に柵状体90を固定する場合、L字体101の内面側に柵状体90を配置し、そこに、柵状体90の内側から半割り体102,103をL字体101に固定する。この状態で、柵状体90が、L字体101、半割り体102,103にて挟まれた状態になる。最後に、蓋40を被せて、ねじ42を穴41、ねじ穴120を通して締めることにより、固定部30への柵状体90の固定が完了する。
【0055】
なお、この実施の形態では、蓋40の裏側にT字形状の溝を形成していないが、かかる溝を形成することもできる。その場合には、把持部100先端側に形成される溝の深さを柵状体90の枠体91の幅よりも小さく形成し、当該溝の深さと蓋40の裏面に形成される溝の深さとの総距離を、枠体91の幅にほぼ等しくするのが好ましい。さらに、当該総距離が枠体91の幅よりも小さくても良い。その場合には、固定部30に柵状体90を固定した状態で、蓋40とL字体101および半割り体102,103の各先端面とが接触しないが、ねじ42にてねじ止めすることで、把持部100への柵状体90の固定が可能となる。
【0056】
半割り体102,103は、L字体101に取り付けた状態にて互いに対向する面を屈曲させず、平面にすることもできる。ただし、その場合、半割り体102,103を、柵状体90の板92の平面部93の上面と傾斜部94の下端部とを挟むように互いの間隔を大きくしてL字体101に固定できるようにする必要がある。また、そのような固定方法にすると、半割り体102,103の互いに対向する面が、板92の平板部93と傾斜部94に面接触した状態にならない。したがって、柵状体90と把持部100とをより強く固定するためには、先に説明したように、半割り体102,103の形状およびL字体101との結合を、柵状体90の板92の厚さ方向の上下両面側から面接触できるようなものにする方が好ましい。
【0057】
4.その他の実施の形態
【0058】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されず、次に例示的に説明するように、種々の変形を施して実施することができる。
【0059】
例えば、第三の実施の形態に係る防護装置1において、板92の傾斜部94を下方ではなく、上、左あるいは右方向に向けるように、柵状体90をアーム20に固定しても良い。また、15枚の板92の傾斜部94が全て同じ方向に向くようにせず、例えば、上半分にある7枚の板92の傾斜部94を上方に、残り8枚の板92の傾斜部94を下方に向けて、板92を枠体91に固定しても良い。板12、ロッド82あるいは板92の数は、15に限定されず、枠体11,81,91の大きさと隙間の大きさに応じて如何なる数であっても良い。板12,92同士あるいはロッド82同士の隙間は、35〜85mm以外の大きさでも良く、飛翔弾の種類に応じて変えることができる。
【0060】
アーム20は、固定部30とアーム本体部50との間の関節部55およびアーム本体部50と取付部60との間の関節部56の合計2箇所で屈曲可能であるが、関節部の数を変え、1箇所のみ、あるいは3箇所以上で屈曲可能としても良い。また、ストッパー34,64は、必須ではなく、全く設けないようにしても良い。また、アーム本体部50の両端に、固定部30および取付部60側まで延出する形状の板を固定し、関節部55,56の回動を規制しても良い。アーム20に一切の関節部を設けず、屈曲できない構造のアームとしても良い。把持部33,100にて柵状体10,80,90を把持するのではなく、固定部30の一端と柵状体10,80,90とをねじ、ボルト、フランジ等にて固定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、飛翔弾から車両、船舶、飛行体、建物等を防護するために利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 防護装置
10 柵状体
11 枠体
12 板
20 アーム
30 固定部
33 把持部
50 アーム本体部
55 関節部
56 関節部
60 取付部
80 柵状体
81 枠体
82 ロッド
90 柵状体
91 枠体
92 板
93 平板部
94 傾斜部
100 把持部
B 飛翔弾
C 車両(防護対象物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔弾から防護対象物を防護するための防護装置であって、
一方向に延出する複数の板若しくは複数のロッドを、上記飛翔弾の通過を阻止可能な間隔で枠体内に備える柵状体と、
その柵状体の一部と固定し、防護対象物と上記柵状体との間をつなぐ1若しくは2以上のアームと、
を備える防護装置。
【請求項2】
前記複数の板の一部若しくは全部は、平板部と、その平板部から鋭角に曲る傾斜部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の防護装置。
【請求項3】
前記間隔は、35〜85mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防護装置。
【請求項4】
前記アームは、屈曲可能な関節部を1若しくは2以上備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防護装置。
【請求項5】
前記関節部は、使用時の前記アームの状態から片側に回動できない構造を有することを特徴とする請求項4に記載の防護装置。
【請求項6】
前記関節部を2つ備え、互いに逆側に回動できない構造を有することを特徴とする請求項5に記載の防護装置。
【請求項7】
前記アームの前記柵状体を固定するための固定部は、前記柵状体の前記枠体の一部と、当該枠体の一部につながる前記板若しくは前記ロッドの一部とを把持する把持部を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の防護装置。
【請求項1】
飛翔弾から防護対象物を防護するための防護装置であって、
一方向に延出する複数の板若しくは複数のロッドを、上記飛翔弾の通過を阻止可能な間隔で枠体内に備える柵状体と、
その柵状体の一部と固定し、防護対象物と上記柵状体との間をつなぐ1若しくは2以上のアームと、
を備える防護装置。
【請求項2】
前記複数の板の一部若しくは全部は、平板部と、その平板部から鋭角に曲る傾斜部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の防護装置。
【請求項3】
前記間隔は、35〜85mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防護装置。
【請求項4】
前記アームは、屈曲可能な関節部を1若しくは2以上備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防護装置。
【請求項5】
前記関節部は、使用時の前記アームの状態から片側に回動できない構造を有することを特徴とする請求項4に記載の防護装置。
【請求項6】
前記関節部を2つ備え、互いに逆側に回動できない構造を有することを特徴とする請求項5に記載の防護装置。
【請求項7】
前記アームの前記柵状体を固定するための固定部は、前記柵状体の前記枠体の一部と、当該枠体の一部につながる前記板若しくは前記ロッドの一部とを把持する把持部を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の防護装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−145036(P2011−145036A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7983(P2010−7983)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(505015934)株式会社ケィズ・アロー (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(505015934)株式会社ケィズ・アロー (5)
【Fターム(参考)】
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