説明

防透性に優れた仮撚加工糸及びその製造方法

【課題】優れた防透性、高ドレープ性、ドライタッチを呈するポリエステル仮撚加工糸を提供する。
【解決手段】二酸化チタンを、重量基準で4.0〜12.0重量%含有するポリエステルマルチフィラメントからなる仮撚加工糸であって、該仮撚加工糸の防透度(△L)が10〜16、捲縮率が10〜26%である。仮撚加工糸を製造する方法としては、3軸フリクションディスクの直径及び硬度、解撚部側最下段のディスクをセラッミクとし走行糸条との接触長、更に仮撚数などを特定の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル仮撚加工糸及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、特に優れた防透性を有し、且つ、ドライタッチを呈するポリエステル仮撚加工糸を、高品質で更に加工毛羽の発生がなく高速で安定して得られる製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
仮撚加工により得られるポリエステル加工糸は、嵩高性に富み、強伸度特性も良好なので、そのイージーケア性やドライ感などから衣料用途に好んで用いられてきた。
従来、差別化素材としての高ドレープ性、ドライタッチを呈するポリエステル仮撚加工糸の製造方法は、種々の方法が提案されている(例えば、特開昭57−19335号公報、特開平3−161533号公報など)。
【0003】
一方、近年生産性の一層の向上を図ることを目的として、高速で安定してポリエステル加工糸を製造できる方法が提案されている(特許第3098340号公報)。
しかし、最近になって、チタン触媒量が多くなると、摩擦係数が高くなり、紡糸捲取りを行った後、これを仮撚すると端面の耳部の部分が筋斑(染斑不良)となり、加工毛羽が多発する傾向が出易いことが判明した。従って、従来のポリエステル加工糸の製造方法では、高速でしかも、毛羽を抑制しつつ、染斑が良好で、高ドレープ性、ドライタッチ、優れた防透性を有するポリエステル仮撚加工糸を得ることは困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開昭57−19335号公報
【特許文献2】特開平3−161533号公報
【特許文献3】特許第3098340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は優れた防透性、高ドレープ性、ドライタッチを呈するポリエステル仮撚加工糸を毛羽、断糸の発生がなく、しかも、高速で安定して得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、(イ)二酸化チタンを、重量基準で4.0〜12.0重量%含有するポリエステルマルチフィラメントからなる仮撚加工糸であって、該仮撚加工糸の防透度(△L)が10〜16、捲縮率が10〜26%であることを特徴とする防透性に優れた仮撚加工糸、及び(ロ)二酸化チタンを、重量基準で4.0〜12.0重量%含有するポリエステル未延伸糸を延伸同時仮撚加工するに際し、下記(イ)〜(ハ)を同時に満足する条件で延伸同時仮撚加工することを特徴とする防透性に優れた仮撚加工糸の製造方法が提供される。
(イ)仮撚具が3軸フリクションディスクで、仮撚デイスクの直径D(mm)が50≦D≦70、仮撚デイスクの硬度G(°)が80≦G≦90。
(ロ)3軸フリクションディスクの解撚部に位置する最下段のディスク材質がセラミックであり、走行糸条とディスクとの接触長を2.5〜0.5mm、且つ、ディスク径を直上のディスク径の90〜98%とする。
(ハ)仮撚数(T/m)を15000/(仮撚糸総繊度)1/2≦T≦35000/(仮撚糸総繊度)1/2とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた防透性、高ドレープ性、ドライタッチを呈するポリエステル仮撚加工糸が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明で使用するポリエステルは、全繰り返し単位の85モル%以上、好ましくは95モル%以上がエチレンテレフタレートからなるポリエステルである。テレフタル酸成分およびエチレングリコール成分以外の成分を少量(通常は、テレフタル酸成分に対して15モル%以下)共重合したものであってもよい。
【0009】
本発明に用いるポリエステルの固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)は、通常衣料用布帛素材として使用されるポリエステルと同じ範疇の固有粘度0.7以下のものが好ましい。また、これらのポリエステルは、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤を含んでもよい。
【0010】
本発明におけるポリエステル未延伸糸は複屈折率が0.02以上で、且つ、防透性を発現する為、二酸化チタンを4.0〜12.0重量%含有するポリエステルから構成されることが、肝要である。ポリエステル仮撚加工糸に含まれる酸化チタン量が4.0重量%未満の場合は、防透性が不十分である。一方、酸化チタン量が12.0重量%を越える場合は、二酸化チタン粒子の凝集が起こり、フィルターの目詰まりが生じ、操業性が低下する、又、仮撚加工糸の物性が低下する。
【0011】
一方、本発明におけるポリエステル未延伸糸の複屈折率は0.02〜0.06の範囲が好ましく、特に、複屈折率が0.02未満の場合は、糸揺れ、サージングが起こり易く、張力把持を保ち、加工中の糸切れを防止し、捲縮へたりを防ぐために、延伸倍率を高くしなくてはならない。その結果、ポリエステル仮撚加工糸としての十分な強度を得ることが難しく、又、加工毛羽が発生しやすく、加工性(断糸)が不安定で風合いも損なわれる。更には、未延伸糸条の内部構造が不安定である為、経時による、染色性、物性面で問題がある。
尚、加工毛羽が多量に発生すると、透け性、防透度に影響して、本願の効果が半減する。
【0012】
本発明においては、仮撚加工糸の捲縮率は10〜26%の範囲にあることが必要であり、特に12〜24%の範囲が好ましい。捲縮率をこの範囲とすることにより、ソフト風合に優れた織編物が得られる。該捲縮率が10.0%未満の場合には、織編物とした際の糸条間空隙が多くなり、染料が入りやすくなり、染斑が発現されやすくなるので好ましくない。一方、該捲縮率が26.0%を超える場合には、得られる織編物の表面の杢が白けた色調となり、好ましくない。
【0013】
次に、本発明の特殊仮撚加工糸を筒編みし、防透度を測定した際、△L値が10〜16の範囲が適正域である。△L値が低い方が、防透性に優れていることになる。△L値がこの範囲を外れる場合は、透け性が不十分な織編物となる。
【0014】
本発明のポリエステル仮撚加工糸は以下の方法で製造することができる。つまり、酸化チタンを4.0〜12.0重量%含有するポリエステルを常法にて乾燥し、通常のクロスフロー型紡糸筒からの冷却風で冷却・固化し、紡糸油剤を付与し、2500〜4000m/min、より好ましくは3000〜3500m/minの紡糸速度で同時にポリエステル未延伸糸として引き取る。
【0015】
紡糸速度が2500m/min未満で引き取られたポリエステル未延伸糸は延伸仮撚工程で走行中にヒーターへの熱融着が起こったり、仮撚ディスクあるいは冷却プレートからの糸外れが起こりやすくなるので好ましくない。紡糸速度が4000m/minを超える条件では、紡糸工程での断糸が頻発するようになるので好ましくない。
【0016】
次に得られたポリエステル未延伸糸を、2段式ヒーターを備えた延伸仮撚機に掛けて微細で強固な捲縮を有するポリエステル仮撚加工糸とする。図1は、本発明で使用できる延伸仮撚工程の一実施態様を示す模式図である。
【0017】
ポリエステル未延伸糸(1)は、糸ガイド(2)を経て、2対のフィードローラー(3、3’)の間に設置されたインターレースノズル(4)により空気交絡され、延伸仮撚域に供給される。次いで、フィードローラー(3’)と第1デリベリーローラー(8)との間で延伸されながら、回転している仮撚ディスク(7)との摩擦により加撚される。引き続き、第1ヒーター(5)で熱処理され、冷却プレート(6)で冷却され、仮撚ディスク(7)を通過し解撚される。さらに、走行糸条は第1デリベリーローラー(8)と第2デリベリーローラー(10)との間に設置された第2ヒーター(9)で再熱処理され、巻取ローラー(11)でパッケージ(12)として巻き取られ、ポリエステル仮撚加工糸が製造される。高速での延伸仮撚加工を考慮し、第1ヒーター(5)および第2ヒーター(9)は非接触式とするのが好ましい。
【0018】
上記ポリエステルマルチフィラメントを延伸仮撚加工するに際しては、下記(イ)〜(ハ)を同時に満足する条件で延伸同時仮撚加工することが肝要である。
(イ)仮撚具が3軸フリクションディスクで、仮撚ディスクの直径D(mm)が50≦D≦70、仮撚ディスクの硬度G(°)が80≦G≦90。
(ロ)3軸フリクションディスクの解撚部に位置する最下段のディスク材質がセラミックであり、走行糸条とディスクとの接触長を2.5〜0.5mm、且つ、ディスク径を直上のディスク径の90〜98%とする。
(ハ)仮撚数(T/m)を15000/(仮撚糸総繊度)1/2≦T≦35000/(仮撚糸総繊度)1/2とする。
【0019】
本発明において使用する仮撚具の模式図を図2に示す。ここで、仮撚具は3軸フリクションディスクであり、仮撚ディスクの直径D(mm)が50mm未満の場合は、仮撚ディスクによる糸条への摩擦損傷が急激に増加し、断糸および毛羽の発生が多くなる。一方、仮撚ディスク直径が70mmを超える場合は、仮撚ディスクによる撚掛け力が低下し、微細で強固な捲縮が得られない場合が多く好ましくない。また、加撚張力が上昇し毛羽の発生が多くなる。さらに、走行糸条を仮撚ディスクに導く作業(スレッディング)が極めてむずかしくなる。
【0020】
上記仮撚ディスクの硬度G(°)は80≦G≦90である。Gの値が80°未満の場合、加撚・解撚のバランスが崩れ、スポット、未解撚が発生し易くなり、一方、Gが90°を超える場合は、高速加工ができず、毛羽、断糸が発生する上、工程不調となる。
【0021】
また、最下段のディスク材質はセラミックであることが耐摩耗性の上で必要である。走行糸条とディスクとの接触長を2.5〜0.5mmとする意味合いは、加撚が終了して、捲縮状態の糸条が最後の解撚部に入り、接触面積を極力少なく、抵抗を少なくすることが、毛羽を著しく減少することを見出したものである。同様に、ディスク径を直上のディスク径の90〜98%とすることが、糸導をスムースに次のステップに移動する際の抵抗値が少なくなる、適正ゾーンであることを見出したものである。
【0022】
本発明においては、上記の条件を採用することにより、加工毛羽の低減が可能であり、この範囲を外れると、加工毛羽が発生して、市場での、製織性、解舒性、織物製品での品質に悪影響を及ぼす要因となる。
特に、走行糸条とディスクとの接触長を2.5〜0.5mmとすることが、本仮撚加工においては、各種、検討を重ねた結果、加工毛羽を著しく減少することが判明した。
【0023】
次に、仮撚温度はガラス転移点Tg+100℃〜Tg+300℃とすることが好ましい。Tg+100℃℃(約170℃)未満では、捲縮性能が低く、風合いが硬くなることがある。一方、Tg+300℃(約300℃)を超える場合は、極端に、加工糸の扁平が進み、加工毛羽が発生するようになるので、好ましくない。
【0024】
更に、加工倍率についても同様に、1.4〜1.7が最適ゾーンであり、この領域をはずれると、低倍率ゾーンでは、サージング、糸揺れによる熱セット斑、高倍率ゾーンでは、加工糸の扁平が進み、加工毛羽が発生するようになるので、好ましくない。
【0025】
なお、第1段目非接触式のヒーターの温度は170〜400℃として熱処理するのが好ましい。なお、ここでいう適正ヒーター温度は、現在市販されている仮撚機(帝人製機製216錘建HTS−15V)によるもので、非接触式の1.0〜1.5m長のもの、糸速として800m/min〜などの仕様によるものを想定しており、従って、特殊なヒーターを用いたり、超高速度で加工する場合などはこの限りでないことはもちろんのことである。
【0026】
次に、仮撚数は、(15000〜35000)/(仮撚糸総繊度(dtex))1/2回/mであることが必要であり、(20000〜30000)/(仮撚糸総繊度(dtex))1/2回/mの範囲に設定することが好ましい。仮撚数が15000/(仮撚糸総繊度(dtex))1/2回/m未満の場合には、微細で強固な捲縮を付与するのが難しくなる。一方、仮撚数が35000/(仮撚糸総繊度(dtex))1/2回/mを超える場合は、断糸および毛羽の発生が多くなる。
【0027】
本発明では、延伸仮撚装置に供給されるポリエステル未延伸糸に予め空気交絡を施すことが好ましい。空気交絡は延伸仮撚処理とは別個に行ってもよいが、図1のように延伸仮撚装置にインターレースノズルを設置して延伸仮撚直前に空気交絡処理をする方法が好ましい。空気交絡の度合いはポリエステル仮撚加工糸で測定した交絡度が30ケ/m、より好ましくは50ケ/mとなるように施す。交絡度が30/m未満の場合はポリエステル未延伸糸を構成する糸条同士の混ざりが悪く、延伸仮撚工程での解舒不良による断糸および加撚・解撚時の単糸切れ発生が多くなり好ましくない。一方、交絡度が80ケ/mを超える場合はポリエステル仮撚加工糸を構成する単糸同士の絡み合いが強くなり過ぎて、糸が固まった状態となり好ましくない。
【0028】
次に、上記の仮撚ディスクを使用して加撚・解撚を行う。該仮撚ディスクは、例えば図2に示すように3軸に配置した仮撚ユニットとして組み立てて使用する。
さらに、上記未延伸ポリエステル繊維の表面には、プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)との共重合体で、その平均分子量が7000〜20000、且つPO/EO共重合重量比が20/80〜80/20であるポリオキシアルキレングリコール共重合体を2〜20重量%含む処理剤が、マルチフィラメント重量を基準として0.2〜1.0重量%付着していることが好ましい。
【0029】
このようなポリオキシアルキレングリコール共重合体を含有させた処理剤は、糸・糸間の静摩擦を下げると共に、油膜強度も向上するために糸表面を極圧下での保護機能も増大するため、糸同士の摩擦によるくびれ部を有する横断面形状の潰れを防止することができ、さらには毛羽発生を抑制しながら延伸仮撚加工速度を増大させることができる。なお、該共重合体の平均分子量はあまりに小さいと油膜強化機能が低下し、一方、あまりに大きいと粘性アップにより平滑性が低下するので7000〜20000の範囲が適当であり、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合重量比は、前者の割合が多すぎると粘性がアップし、逆に少なすぎると油膜強化機能が低下するのでEO/POは20/80〜80/20の範囲が適当である。また、該共重合体の処理剤中の含有量は、少なすぎると仮撚加工時の断面形状のつぶれ抑制や毛羽発生抑制の効果が低下し、一方、多すぎると粘性アップにより平滑性が低下するので2〜20重量%の範囲が適当である。
【0030】
上記で用いられるポリオキシアルキレングリコール共重合体は、ランダム型共重合体であっても、ブロック型であってもよい。さらには、これらのポリオキシアルキレングリコール共重合体の片末端または両末端はアルキル基などでエーテル、エステル、チオエーテル、アミノエーテルなどの結合を介して封鎖されていてもよい。
【0031】
このようなポリオキシアルキレングリコール共重合体は、従来公知の方法でプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを共重合することにより得られるが、通常はアルキレンオキサイドと反応できるような活性水素を少なくとも1ケもつ化合物を用い、これにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを共重合することにより製造される。ここで活性水素を有する化合物としては、活性水素を有する基が水酸基ならば1価以上のアルコール類、カルボキシル基ならば1価以上の塩基酸類、そしてアミノ基であれば1価以上のアミノ化合物などを挙げることができる。なかでもアルコール類を用いたものは加熱残査が少なくなるので好ましい。
【0032】
なお、上記処理剤には、通常の油剤中に含まれている平滑剤、乳化剤、制電剤等が含まれていることが好ましく、特に平滑剤として平均分子量が5000未満のポリエーテル系平滑剤が含まれていることが好ましい。かかる処理剤は、ポリエステルを2500〜4000m/分で溶融紡糸して未延伸繊維を得る際に紡糸油剤として付与すると、該未延伸繊維を巻き取る際の綾落ち等を抑制することができる。
【0033】
処理剤の付着量は、あまりに少なすぎると仮撚加工時の毛羽発生や断面形状のつぶれを抑制することが難しくなり、逆に多すぎるとヒータースカムが発生しやすくなるので繊維重量を基準として0.2〜1.0重量%の範囲が適当である。
このようにして得られた本発明のポリエステル仮撚加工糸は、無撚または追撚してそのまま、製織または製編したのち、染色され、織編物となる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0035】
(1)固有粘度
オルソ−クロルフェノールに溶解し、ウベローデ粘度管を用い、35℃で測定した。
【0036】
(2)紡糸断糸
複合紡糸設備で1週間溶融紡糸を行い断糸した回数を記録し、1日1錘当りの紡糸断糸回数を紡糸断糸とした。ただし、人為的あるいは機械的要因による断糸は断糸回数から除外した。
【0037】
(3)処理剤付着量(OPU)
未延伸ポリエステル繊維約3gを、105℃×2時間乾燥後に重量Wを測定する。次いで、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダを主成分とする洗浄用水溶液300cc中に浸漬し、40℃にて超音波を少なくとも10分かける。洗浄液を廃棄し、40℃の温水により30分流水洗浄後、室温にて風乾する。その後、105℃×2時間乾燥後に重量Wを測定し、下記式より算出する。
【数1】

【0038】
(4)走行角
仮撚ディスク上を走行している糸条を写真撮影し、各仮撚ディスク円盤上の糸条の走行角度θを写真の上で実測して、それらの測定値の平均値を走行角とした。
【0039】
(5)交絡度
約1.2mのポリエステル複合仮撚加工糸の糸端に0.2cN/dtexの荷重をかけて、衝立上部に取り付けられた固定点から垂直にたらし、0.1cN/dtexの荷重に相当する重量の釣り針型のフックを用い、上部固定点より、該釣り針型フックを挿入し、フックが自然落下し止まるのを待って取り外す。次いで、停止点から2mm下の位置にフックを再び挿入する。この繰り返しを糸長1mにわたって行い、その間でフックの止まった回数を交絡度(個/m)とした。
【0040】
(6)延伸仮撚断糸
帝人製機製216錘建HTS−15V(2ヒーター仮撚加工機で非接触式ヒーター仕様)にて、延伸仮撚加工を1週間連続実施し、延伸仮撚機1台・1日当たりの断糸回数を延伸仮撚断糸とした。ただし、糸繋ぎ前後による断糸(ノット断糸)あるいは自動切替え時の断糸等、人為的あるいは機械的要因による断糸は断糸回数から除外した。
【0041】
(7)捲縮率
ポリエステル複合仮撚加工糸サンプルに0.044cN/dtexの張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作成した。該カセの一端に、0.0177cN/dtexおよび0.177cN/dtexの2個の荷重を負荷し、1分間経過後の長さS0(cm)を測定した。次いで、0.177cN/dtexの荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理した。沸水処理後0.0177cN/dtexの荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥し、再び0.0177cN/dtexおよび0.177cN/dtexの荷重を負荷し、1分間経過後の長さを測定しS1(cm)とした。次いで、0.177cN/dtexの荷重を除去し、1分間経過後の長さを測定しS2とし、次の算式で捲縮率を算出し、10回の測定値の平均値で表した。
【数2】

【0042】
(8)仮撚加工糸の強度、伸度
JIS L―1013―75に準じて測定した。
【0043】
(9)毛羽個数
東レ(株)製DT−104型毛羽カウンター装置を用いて、ポリエステル仮撚加工糸サンプルを500m/minの速度で20分間連続測定して発生毛羽数を計測し、サンプル長1万m当たりの個数で表した。
【0044】
(10)防透度
背景に白板を使用した際のL値と黒板を使用した際のL値を測定し、防透度(△L)=白板を使用した際のL値−黒板を使用した際のL値を算出した。この数値の低いもの程、防透性に優れていると判断した。
【0045】
(11)風合い
下記の基準により官能評価した。
(ソフト感)
レベル1:ソフトでしなやかな感触がある
レベル2:ややソフト感が乏しいが反撥性は感じられる
レベル3:カサカサした触感あるいは硬い触感である。
(ドライ感)
レベル1:極めてドライタッチな感触がある
レベル2:ややドライ感が乏しいが反撥性は感じられる
レベル3:ドライ触感がなくぬめり感の触感である。
(スパン感)
レベル1:極めてバルキーでスパン感に富んでいる。
レベル2:ややスパン感が乏しい。
レベル3:フラットヤーンライクの触感あるいは硬い触感である。
【0046】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
固有粘度が0.64で、酸化チタンを表1に示す量含有したポリエチレンテレフタレートを常法で乾燥した後、孔径0.15mm、ランド長0.8mmの吐出孔を72個穿設した紡糸口金より42g/minの流量で吐出した。
引き続き、吐出されたポリマー流を、通常のクロスフロー型紡糸筒からの冷却風で冷却・固化し、紡糸油剤を付与しつつ、3200m/minの速度で引き取り140dtex/36フィラメントのポリエステル未延伸糸を得た。
【0047】
該ポリエステル未延伸糸を、帝人製機製216錘建HTS−15Vに掛け、孔径1.8mmの圧空吹き出し孔を有するインターレースノズルを通過させつつ60nL/minの流量で交絡度51ケ/mの空気交絡を施し、延伸倍率1.60、第1ヒーター温度275℃、で、直径60mm、厚み9mmのウレタンディスクを仮撚ディスクとして、走行角43度で仮撚数×仮撚糸繊度(dtex)1/2が26000近傍となるように延伸仮撚を行い、速度800m/minでチーズ形状に巻き取り、84dtex/36フィラメント、捲縮率18%のポリエステル仮撚加工糸を得た。このポリエステル仮撚加工糸の単糸繊度は2.3dtexであった。得られた仮撚加工糸の物性を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例4〜5、比較例3〜5]
実施例1において、走行糸条と最下段のディスクとの接触長、及び最下段のディスクの直上のディスク径に対する比率を表2の如く変更した以外は実施例1と同様に実施した。得られた仮撚加工糸の物性を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
[実施例6〜9、比較例6〜8]
実施例1において、仮撚数×(仮撚糸繊度(dtex))1/2および仮撚温度を表3に示す条件とする以外は、実施例1と同じ延伸仮撚条件で延伸仮撚加工を実施した。得られた仮撚加工糸の物性を表1に示す。
【0052】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、優れた防透性、高ドレープ性、ドライタッチを呈するポリエステル仮撚加工糸が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明で使用する、仮撚加工糸を製造する装置の一実施態様を示す概略図。
【図2】本発明で使用する、仮撚ディスクユニットの一実施態様を示す正面図。
【符号の説明】
【0055】
1 :ポリエステル未延伸糸
2 :糸ガイド
3、3’:フィードローラー
4、4’:インターレースノズル
5 :第1ヒーター
6 :冷却プレート
7 :仮撚ディスクユニット
8 :第1デリベリーローラー
9 :第2ヒーター
10 :第2デリベリーローラー
11 :巻取ローラー
12 :ポリエステル仮撚加工糸チーズ
13 :仮撚ディスク
14 :ガイドディスク
15 :回転軸
16 :タイミングベルト
17 :駆動ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンを、重量基準で4.0〜12.0重量%含有するポリエステルマルチフィラメントからなる仮撚加工糸であって、該仮撚加工糸の防透度(△L)が10〜16、捲縮率が10〜26%であることを特徴とする防透性に優れた仮撚加工糸。
【請求項2】
二酸化チタンを、重量基準で4.0〜12.0重量%含有するポリエステル未延伸糸を延伸同時仮撚加工するに際し、下記(イ)〜(ハ)を同時に満足する条件で延伸同時仮撚加工することを特徴とする防透性に優れた仮撚加工糸の製造方法。
(イ)仮撚具が3軸フリクションディスクで、仮撚デイスクの直径D(mm)が50≦D≦70、仮撚デイスクの硬度G(°)が80≦G≦90。
(ロ)3軸フリクションディスクの解撚部に位置する最下段のディスク材質がセラミックであり、走行糸条とディスクとの接触長を2.5〜0.5mm、且つ、ディスク径を直上のディスク径の90〜98%とする。
(ハ)仮撚数(T/m)を15000/(仮撚糸総繊度)1/2≦T≦35000/(仮撚糸総繊度)1/2とする。
【請求項3】
未延伸糸の複屈折率が0.02〜0.06の範囲にあり、仮撚直前に、該未延伸糸に30個/m以上の交絡を付与する請求項2記載の仮撚加工糸の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate