説明

防音カバー及びその製造方法

【課題】防音性能により優れ、軽量の防音カバーを提供する。
【解決手段】音源に対向して配置される吸音材と、吸音材に積層され、JIS L1018で測定した通気率が10cc/cm・sec以下である軟質遮音層と、軟質遮音層との間で空気層を形成し、JIS K7127で測定したヤング率が0.2〜1.5GPaである軟質カバーとを備え、空気層が密封されていることを特徴とする防音カバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンやトランスミッション、駆動系に装着される防音カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内には多くの音源があり、車内、車外騒音により静粛性が要求される観点から様々な防音対策が取られており、特にエンジン、トランスミッション、駆動系のような大きな音を発生する部分(固有音源)については、発生源に近い位置で防音対策が必要なため、吸遮音性能に優れる専用の防音カバーが使用されている。自動車における低騒音化部品の要求は、相次ぐ法改正での車外騒音レベル規制の強化及び、車内騒音の静粛化が車の価値(高級感)に直結する点も相まって非常に高く、特に2013年度に欧州連合で導入される予定の車外騒音規制は、最終的に従来規制値に対し-3dB(音圧エネルギーとして1/2に低減が必要)と厳しいものとなっている。これにはエンジンルーム内の主騒音発生源としてのエンジン本体及びトランスミッション等固有音源への騒音低減対策が不可欠であり、従来からエンジン上面側のエンジントップカバー等の様々な防音部品が使用されているが、更なる性能の向上と低燃費化の観点からの軽量化が求められてきている。
【0003】
従来の防音カバーは、固有音源から放射される直接騒音を遮音することに主眼をおいて設計されており、金属又はポリアミド、ポリプロピレン等の樹脂を成形した剛体カバーの固有音源側、またはその一部に吸音材を後貼り施工した構造となっている(特許文献1参照)。しかし、このような防音カバーの遮音性能は質量則に従っており、剛体カバーの重量に依存しており、軽量化のニーズに対応できるものではない。また、固有音源が振動を伴う場合には、防音カバーをエンジン等に取り付けるための固定点等から振動が伝達しても、剛体カバーが振動変形しにくく運動エネルギーとして減衰させる効果が得られないため、剛性遮音層から2次放射が起こり、かえって騒音レベルを悪化させるケースもある。
【0004】
また、自動車の車内外の騒音の評価には、騒音自体が人間の感覚量であることから、音の大きさを人が音を感じる量に近い基準として、観測された音圧を対数圧縮した音圧レベル(dB)が使用されている。しかし、総合的な防音効果(音圧レベルの増減)を評価する場合に一般的に用いられる4(多)方向平均(合音)をとった場合、dB和計算の性格上、測定された一番大きな音の影響を大きく受ける。そのため、防音対策を取った1方向のみでレベルが低くても全体として防音効果が得られず、人間の感覚量である音圧レベルが下がらないケースがあり、各方向の音圧レベルを揃えてまんべんなく低減することが必要である。
【0005】
しかし、特許文献1に記載された剛体カバーに吸音材を貼り付けた構造の防音カバーでは、固有音源が振動を伴う場合には振動伝達(個体伝搬音)により、剛体カバーが共鳴しそれ自体が騒音を発生する、所謂「2次放射」を起こすため、通常はゴムブッシュ等の振動絶縁材を介して固有音源に固定する必要がある。そのため、必然的に防音カバー周縁端部と固有音源の間に隙間が生じ、この部分から内面反響音(定在波)が漏洩して騒音レベル低減が達成できない場合がある。
【0006】
このような背景から本出願人は先に、固有音源が振動を伴う場合の固体伝搬音や防音カバーの内面反響音(定在波)対策の目的で、剛体カバーの代わりに、制振性を持った樹脂をコーティングした不織布からなる軟質遮音層を、吸音材の固有音源とは反対側の面に設けた防音カバー(特許文献2参照)を提案している。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された防音カバーでは、軟質遮音層の製造上の問題からその質量に限界があり、高質量の剛体カバーと比較して4kHz以上の高周波数域の遮音性能が劣る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−205352号公報
【特許文献2】特開2006−98966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、これまでよりも防音性能に優れ、軽量の防音カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明は、下記の防音カバー及びその製造方法を提供する。
(1)音源に対向して配置される吸音材と、吸音材に積層され、JIS L1018で測定した通気率が10cc/cm・sec以下である軟質遮音層と、軟質遮音層との間で空気層を形成し、JIS K7127で測定したヤング率が0.2〜1.5GPaである軟質カバーとを備え、空気層が密封されていることを特徴とする防音カバー。
(2)上記(1)に記載の防音カバーにおいて、前記軟質遮音層のJIS K7127で測定したヤング率が、前記軟質カバーの1/5以下であることを特徴とする防音カバー
(3)上記(1)または(2)に記載の防音カバーにおいて、前記軟質カバーと前記軟質遮音層とが接触する周縁端部を備え、周縁端部は圧着されていることを特徴とする防音カバー。
(4)上記(1)または(2)に記載の防音カバーにおいて、前記軟質カバーの周縁端部と前記軟質遮音層の周縁端部とが直接、またはシール部材で連結されていることを特徴とする防音カバー。
(5)JIS K7127で測定したヤング率が0.2〜1.5GPaである軟質カバーを成形する工程と、
吸音材と、JIS L1018で測定した通気率が10cc/cm・sec以下である軟質遮音層との積層体を成形する工程と、
軟質遮音層が軟質カバーと対向するように重ね合わせて該軟質遮音層と該軟質カバーとの間に空気層を形成する工程と、
軟質カバーの周縁端部と、軟質遮音層の周縁端部とを連結する工程とを備えることを特徴とする防音カバーの製造方法。
(6)自動車のエンジンルーム内において、上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の防音カバーを、前記吸音材がエンジンに接触して配置することを特徴とする防音方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防音カバーは、音源と対向配置された吸音材に入射する音の振動を、ヤング率が低く振動変形を受け易い軟質遮音層により減衰させ、その後空気層を透過する際に更に減衰させ、最終的に最表層となる軟質カバーで遮音する。しかも、空気層は密封されており、空気層からの音の漏洩もない。また、従来の剛体カバーに代えて軟質カバーを用いるため、2次放射がなく、軽量にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の防音カバーの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の防音カバーの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の防音カバーの更に他の例を示す断面図である。
【図4】実施例1及び比較例1の防音カバーの防音特性を示すグラフである。
【図5】実施例2及び比較例2の防音カバーの防音特性を示すグラフである。
【図6】実施例3及び比較例3の防音カバーの防音特性を示すグラフである。
【図7】実施例4及び実施例5の防音カバーの防音特性を示すグラフである。
【図8】比較例4及び比較例5の防音カバーの防音特性を示すグラフである。
【図9】実施例6及び比較例6の防音カバーの防音特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の防音カバーの一例を示す断面図である。図示されるように、音源(図中下側)と対向して吸音材が配置され、音源とは反対側の面に軟質遮音層が接合されている。また、軟質遮音層と所定間隔で、軟質カバーが重ねられており、軟質遮音層と軟質カバーとの間に空気層が形成される。そして、軟質遮音層の周縁端部と軟質カバーの周縁端部とはシール部材で連結されており、それにより空気層が密封される。ここで、音源としては、自動車のエンジンルーム内に設置されるエンジンやトランスミッション、駆動系、モーター、コンプレッサー、発電機が挙げられる。また、本発明の防音カバーは特に強い振動を伴うエンジンに対して好適に適用できる。
【0015】
吸音材には制限はなく、目付量100〜5000g/mである多孔質材料を使用できる。こうした多孔質材料としては、例えば、グラスウール、ロックウール、岩綿長繊維(中部工業株式会社製「パサルトファイバー」等)、ボリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォーム、メラミンフォーム、ニトリルブタジエンラバー、クロログレンラパー、スチレンラバー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM等の連通気泡状に発泡させたもの、あるいはこれらを発泡後にクラッシング加工等を施しフォ−ムセルに孔を明けて連通気泡化したもの、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維フェルト、ナイロン繊維フェルト、ポリエチレン繊維フェルト、ポリプロピレン繊維フェルト、アクリル繊維フェルト、シリカ−アルミナセラミックスファイバーフェルト、シリカ繊維フェルト(ニチアス株式会社製「シルテックス」等)、綿、羊毛、木毛、クズ繊維等を熱硬化性樹脂でフェルト状に加エしたもの(一般名:レジンフェルト)等の一般的な多孔質吸音材が挙げられる。
【0016】
また、こうした吸音材には、繊維類の飛散防止や製品外観向上の目的で、ポリエチレン長繊維、ポリプロピレン長繊維、ナイロン長繊維、テトロン長繊維、アクリル長繊維、レーヨン長繊維、ビニロン長繊維、ポリフッ化ピニリデン長繊維、ポリテトラフルオロエチレン長繊維等のフッ素樹脂長繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル長繊維、ポリエステル長繊維にポリエチレン樹脂をコーティングした2層構造長繊維等の熟可塑性樹脂長繊維単体及びこれらを混抄したものをスバンボンドエ法で薄いシート状に成型した目付量15〜150g/mの薄く、柔軟性を持った不織布を音源側の面(図中下面)に貼りつけることもできる。
【0017】
軟質カバーは、ヤング率が0.2〜1.5GPa、好ましくは0.5〜1.2GPaの範囲に限定される。ヤング率は、JIS K7127に準拠して測定した値である。ヤング率が0.2GPa未満では軟質遮音層との柔軟性の差が小さく、十分な空気バネの効果が得られない。一方、ヤング率が1.5GPa超では、ヤング率(弾性率)の逆数で表される柔性(H)が小さくなりすぎ、防音カバーをエンジン等に取り付けるための固定点等を介して音源からの振動が伝達するため、固体伝搬音(振動)を軟質カバーが力学的エネルギー(1/2・Hf2;fは軟質カバーの振動を力として表した値)として十分吸収することができず、表面からの2次放射が生じる。尚、固体伝播音の吸収については、「エネルギー原理による粘性の発生メカニズム」(自動車技術 Vol.63、2009、55〜61頁)等を参照することができる。
【0018】
また、軟質カバーは非通気性であることが好ましく、通気率が10cc/cm・sec以下、0.001〜10cc/cm・sec、好ましくは0.01〜1cc/cm・secである必要がある。尚、通気率は、JIS L1018で測定した値である。
【0019】
軟質カバーは、上記のヤング率、通気率を満足する限り、その材質に制限はないが、不織布、クロス、ラミネートフィルム、ゴムシート、樹脂フィルム、制振樹脂、制振ゴム、またはこれらを適宜組み合わせた積層体や、制振樹脂をコーティングした不織布またはクロスを使用することができ、具体的には、下記A〜Hに記載の材料を挙げることができる。そして、これらの材料を所定の形状に成形して軟質カバーとなる。また、軟質カバーは、不織布やクロスを用いた場合、不織布やクロスが最外層表面となるように配置される。
【0020】
A.ポリエチレン長繊維、ポリプロピレン長繊維、ナイロン長繊維、テトロン長繊維、アクリル長繊維、レーヨン長繊維、ビニロン長繊維、ポリフッ化ビニリデン長繊維,ポリテトラフルオロエチレン長繊維等のフッ素樹脂長繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル長繊維、ポリエステル長繊維にポリエチレン樹脂をコーティングした2層構造長繊維等の熱可塑性樹脂長繊維単体、もしくはこれらを混抄したものをスパンボンド工法でシート状に成型した不織布の片面又は両面にポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂エマルジョン、湿気硬化型ウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フロロシリコーンゴム等の常温(20℃)〜150℃の温度領域に損失正接のピークがあり、制振性を持つ樹脂またはゴムをスプレー又はローラーコーティングし、不織布表面に選択的に制振性樹脂皮膜または制振性ゴム皮膜を形成したもの。
【0021】
B.ポリエチレン短繊維、ポリプロピレン短繊維、ナイロン短繊維、テトロン短繊維、アクリル短繊維、レーヨン短繊維、ビニロン短繊維、ポリフッ化ビニリデン短繊維,ポリテトラフルオロエチレン短繊維等のフッ素樹脂短繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル短繊維、ポリエステル短繊維にポリエチレン樹脂をコーティングした2層構造短繊維等の熱可塑性樹脂短繊維、羊毛、綿、木毛、ケナフ繊維等天然素材から作られる短繊維単体、もしくはこれらを混抄したものをケミカルボンド、サーマルボンド、ステッチボンド、ニードルパンチ等の工法で成型した不織布の片面又は両面にポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂エマルジョン、湿気硬化型ウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フロロシリコーンゴム等の常温(20℃)〜150℃の温度領域に損失正接のピークがあり、制振性を持つ樹脂またはゴムをスプレー又はローラーコーティングし、不織布表面に選択的に制振性樹脂皮膜または制振性ゴム皮膜を形成したもの。
【0022】
C.ガラス繊維、ロックウール繊維、岩綿長繊維(中部工業株式会社製「バサルトファイバー」等)、シリカ繊維(ニチアス株式会社製「シルテックス」等)、シリカーアルミナセラミックファイバー、アルミナファイバー、炭化ケイ素ウィスカー等のウィスカー類単体、もしくはこれらを混抄したものを、重量比10%以下バインダー(例えば尿素変性フェノール樹脂等)でケミカルボンドして作製した不織布の片面又は両面にポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂エマルジョン、湿気硬化型ウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フロロシリコーンゴム等の常温(20℃)〜150℃の温度領域に損失正接のピークがあり、制振性を持つ樹脂またはゴムをスプレー又はローラーコーティングし、不織布表面に選択的に制振性樹脂皮膜または制振性ゴム皮膜を形成したもの。
【0023】
D.上記Aのポリエチレン長繊維、ポリプロピレン長繊維、ナイロン長繊維、テトロン長繊維、アクリル長繊維、レーヨン長繊維、ビニロン長繊維、ポリフッ化ビニリデン長繊維,ポリテトラフルオロエチレン長繊維等のフッ素樹脂長繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル長繊維、ポリエステル長繊維にポリエチレン樹脂をコーティングした2層構造長繊維等の熱可塑性樹脂長繊維単体、もしくはこれらを混抄したものをスパンボンド工法で薄いシート状に成型した不織布又は、上記Cのガラス繊維、ロックウール繊維、シリカ繊維(ニチアス株式会社製「シルテックス」等)、シリカーアルミナセラミックファイバー、アルミナセラミックファイバー、炭化ケイ素ウィスカー等のウィスカー類単体、もしくはこれらを混抄したものを、重量比10%以下バインダー(例えば尿素変性フェノール樹脂等)でケミカルボンドして作製した不織布と、上記Bのポリエチレン短繊維、ポリプロピレン短繊維、ナイロン短繊維、テトロン短繊維、アクリル短繊維、レーヨン短繊維、ビニロン短繊維、ポリフッ化ビニリデン短繊維、ポリテトラフルオロエチレン短繊維等のフッ素樹脂短繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル短繊維、ポリエステル短繊維にポリエチレン樹脂をコーティングした2層構造短繊維等の熱可塑性樹脂短繊維、羊毛、綿、木毛、ケナフ繊維等天然素材から作られる短繊維単体、もしくはこれらを混抄したものをケミカルボンド、サーマルボンド、ステッチボンド、ニードルパンチ等の工法で成型した不織布を積層し、その不織布積層体の片面又は両面にポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂エマルジョン、湿気硬化型ウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フロロシリコーンゴム等の常温(20℃)〜150℃の温度領域に損失正接のピークがあり、制振性を持つ樹脂またはゴムをスプレー又はローラーコーティングし、不織布積層体表面に選択的に制振性樹脂皮膜または制振性ゴム皮膜を形成したもの。
【0024】
E.ポリエチレン長繊維、ポリプロピレン長繊維、ナイロン長繊維、テトロン長繊維、アクリル長繊維、レーヨン長繊維、ビニロン長繊維、ポリフッ化ビニリデン長繊維,ポリテトラフルオロエチレン長繊維等のフッ素樹脂長繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル長繊維、ポリエステル長繊維にポリエチレン樹脂をコーティングした2層構造長繊維等の熱可塑性樹脂長繊維、フェノール樹脂繊維(日本カイノール株式会社製「Kynol」等)等の熱硬化性樹脂長繊維単体、もしくはこれらを混抄したものを平織り、綾織り等の方法で編み上げたクロスの片面又は両面にポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂エマルジョン、湿気硬化型ウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フロロシリコーンゴム等の常温(20℃)〜150℃の温度領域に損失正接のピークがあり、制振性を持つ樹脂またはゴムをスプレー又はローラーコーティングし、クロス表面に選択的に制振性樹脂皮膜または制振性ゴム皮膜を形成したもの。
【0025】
F.ガラス長繊維、岩綿長繊維(中部工業株式会社製「バサルトファイバー」等)、シリカ繊維(ニチアス株式会社製「シルテックス」等)、シリカーアルミナセラミックファイバー、アルミナファイバー単体、もしくはこれらを混抄したものを平織り、綾織り等の方法で編み上げたクロスの片面又は両面にポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂エマルジョン、湿気硬化型ウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フロロシリコーンゴム等の常温(20℃)〜150℃の温度領域に損失正接のピークがあり、制振性を持つ樹脂またはゴムをスプレー又はローラーコーティングし、クロス表面に選択的に制振性樹脂皮膜または制振性ゴム皮膜を形成したもの。
【0026】
G.上記Eのポリエチレン長繊維、ポリプロピレン長繊維、ナイロン長繊維、テトロン長繊維、アクリル長繊維、レーヨン長繊維、ビニロン長繊維、ポリフッ化ビニリデン長繊維,ポリテトラフルオロエチレン長繊維等のフッ素樹脂長繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル長繊維、ポリエステル長繊維にポリエチレン樹脂をコーティングした2層構造長繊維等の熱可塑性樹脂長繊維、フェノール樹脂繊維(日本カイノール株式会社製「Kynol」等)等の熱硬化性樹脂長繊維といった有機系長繊維と、上記Fのガラス長繊維、岩綿長繊維(中部工業株式会社製「バサルトファイバー」等)、シリカ繊維(ニチアス株式会社製「シルテックス」等)、シリカーアルミナセラミックファイバー、アルミナファイバーといった無機系長繊維とを混抄したものを平織り、綾織り等の方法で編み上げたクロスの片面又は両面にポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂エマルジョン、湿気硬化型ウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フロロシリコーンゴム等の常温(20℃)〜150℃の温度領域に損失正接のピークがあり、制振性を持つ樹脂またはゴムをスプレー又はローラーコーティングし、クロス表面に選択的に制振性樹脂皮膜または制振性ゴム皮膜を形成したもの。
【0027】
H.ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド樹脂、アクリル樹脂、レーヨン樹脂、ビニロン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂,ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂といった樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フロロシリコーンゴムといったゴム等を加工したもの。
【0028】
軟質カバーの質量には特に制限はないが、200〜5000g/m、好ましくは400〜1500g/mであればよい。また、軟質カバーの厚さには特に制限はないが、0.5〜5mm、好ましくは1〜3mmであればよい。
【0029】
軟質遮音層は、非通気性であることが好ましく、通気率が10cc/cm・sec以下、0.001〜10cc/cm・sec、好ましくは0.01〜1cc/cm・secの層である。また、軟質遮音層は、自身が変形して吸音材を透過した音の振動を減衰させるため、より柔軟であることが必要であり、ヤング率として軟質カバーの1/5以下、好ましくは1/10以下であればよく、具体的には、ヤング率が0.01〜0.5GPa、好ましくは0.02〜0.12GPaであればよい。
【0030】
また、軟質遮音層は、上記の通気率、ヤング率を満足する限り、その材質には制限はなく、不織布、クロス、ラミネートフィルム、ゴムシート、樹脂フィルム、制振樹脂、制振ゴム、またはこれらを適宜組み合わせた積層体や、制振樹脂をコーティングした不織布またはクロスを使用することができる。軟質カバーで挙げたA〜Hからなる薄いシートやフィルムとすることもできるが、その場合は厚さを薄くしてヤング率が上記の範囲となるようにすればよい。具体的には、軟質カバーが厚さ0.5〜5mmである場合には、軟質遮音層を25〜100μmに設定すればよい。
【0031】
シール部材は、非通気性の軟質材料からなるシートやフィルムであり、例えば、ヤング率0.1〜0.5GPaのアクリルゴム、天然ゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、フッ素ゴム等のエラストマー、ポリプロピレン−EPDMブレンドポリマー(TPO)、ポリスチレン−ポリブタジェン共重合体(SBC)、ポリエーテルウレタン−ポリエステルウレタン共重合体(TPU)等の熱可塑性エラストマー等の常温(20℃)〜150℃付近の領域に損失正接のピークを持つ弾性材料、あるいは低分子量のポリアミド12樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル樹脂等をフィルム化した柔軟性を持ったホットメルトフィルム等を使用することができる。
【0032】
空気層は、軟質カバーと軟質遮音層との間に規定され、密閉されていればよい。また、図2に示すように、空気層に通気性材料を充填してもよい。空気層に通気性材料を充填しても軟質カバーによる遮音性能には殆ど差がなく、防音カバー全体としての保形性が高まる等の利点が得られる。
【0033】
こうした通気性材料の材料は、振動を直接伝達するほど硬いものでなければ特に制限はなく、目付量50〜500g/mである多孔質材料を使用できる。こうした多孔質材料としては、例えば、グラスウール、ロックウール、岩綿長繊維(中部工業株式会社製「パサルトファイバー」等)、ボリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォーム、メラミンフォーム、ニトリルブタジエンラバー、クロログレンラパー、スチレンラバー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM等の連通気泡状に発泡させたもの、あるいはこれらを発泡後にクラッシング加工等を施しフォ−ムセルに孔を明けて連通気泡化したもの、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維フェルト、ナイロン繊維フェルト、ポリエチレン繊維フェルト、ポリプロピレン繊維フェルト、アクリル繊維フェルト、シリカ−アルミナセラミックスファイバーフェルト、シリカ繊維フェルト(ニチアス株式会社製「シルテックス」等)、綿、羊毛、木毛、クズ繊維等を熱硬化性樹脂でフェルト状に加エしたもの(一般名:レジンフェルト)が挙げられる。
【0034】
本発明の防音カバーは、上述した構成により、800〜2000g/m、好ましくは1000〜1500g/mといった具合に軽量化を図ることができる。ちなみに、従来の剛体カバーを備える防音カバーの質量は5000g/mを超えることを考えると、従来品に比べてその質量を1/2以下とすることができる。こうした軽量化は燃費向上に寄与する。
【0035】
本発明の防音カバーを製造するには、先ず、吸音材と軟質遮音層とを接合したものを作製する。軟質遮音層がホットメルトフィルムの場合には熱圧着で接合でき、製造工程が簡便になる。ホットメルトフィルム以外の軟質遮音層は、適当な接着剤を用いて接合する。
【0036】
そして、所定形状に成形した軟質カバーを、軟質遮音層の上に所定間隔で重ねて保持し、軟質カバーの周縁端部と軟質遮音層の周縁端部との隙間を閉塞するようにシール材で包囲し、熱圧着して連結する。これにより、空気層が形成される。
【0037】
また、空気層が通気性材料で充填されている場合には、吸音材と軟質遮音層とを接合した後、軟質遮音層の上に通気性材料を載置し、通気性材料の上に軟質カバーを載置してシール部材を熱圧着すればよい。
【0038】
本発明は種々の変更が可能であり、例えば、軟質カバーと軟質遮音層とをシール部材を用いることなく直接連結することができる。その場合、図3に示すように、軟質カバーの周縁端部と軟質遮音層の周縁端部とを当接し、当接部分を熱圧着(熱プレス溶着)する。また、空気層を通気性材料で充填する場合は、吸音材と軟質遮音層とを接合した後、軟質遮音層の上に通気性材料及び軟質カバーを順次載置して積層体とし、積層体全体をその周縁端部に沿って熱圧着すればよい。
【0039】
また、軟質カバーには、エンジン等の音源に固定するために、吸音材まで到達する貫通孔が設けられることがある。その場合は、軟質カバー及び軟質遮音層にも貫通孔と同径の穴を開け、円形に連結して貫通孔を形成する。
【0040】
本発明の防音カバーは、吸音材を音源から離して配置してもよく、吸音材を音源に接して配置することもできる。例えば、エンジンの装着する場合、エンジンの振動が防音カバーに伝達する。従来の剛体カバーを備える防音カバーでは剛体カバーが変形しないため、エンジンの振動を吸収することはできず、防音カバーとエンジンとの間には5〜20mm程度の隙間が必要になる。それに対して、本発明の防音カバーでは軟質カバーが変形して振動を吸収できるため、このように音源と接して配置できる。その結果、省スペース化を図ることができたり、あるいは、同じスペースの場合、吸音材を厚くすることができるようになり、防音特性を高めることが可能になる。さらに、エンジンとの隙間を無くすことにより定在波が干渉により増幅される現象を抑制することもでき、さらなる防音効果を期待できる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。尚、通気率はJIS L1018に準拠し、ヤング率はJIS K7127に準拠して測定した。また、目付け量は1m×1m当たりの質量である。
【0042】
(比較例1)
目付量150g/mのPET短繊維を酢酸ビニル樹脂エマルジョン(固形分30g/m)でケミカルボンドさせて作製した基材と、スパンボンド工法により作成したポリプロピレン長繊維製の表皮材とを積層した目付量220g/mの不織布の表皮材側に、湿気硬化型ポリウレタン樹脂250g/mをローラーコートし、ヤング率1.2GPa、通気率0.01cc/cm・sec、目付量500g/mのシート材を作製した。このシート材を軟質カバーとし、空気層としての通気性材料として目付量250g/mのPETフェルト、軟質遮音層として低分子量ポリウレタンをフィルム化したホットメルトフィルム(厚さ30μm、ヤング率0.08GPa、通気率0.01cc/cm・sec)、吸音材として目付量500g/mのPETフェルトを積層し、170℃の熱プレスにて厚さ20mmに成形して防音カバーを得た。
【0043】
(比較例2)
目付量150g/mのPET短繊維を酢酸ビニル樹脂エマルジョン(固形分30g/m)でケミカルボンドさせて作製した基材と、スパンボンド工法により作成したポリプロピレン長繊維製の表皮材とを積層した目付量220g/mの不織布の表皮材側に、低分子量ポリウレタンをフィルム化した厚さ60μmのホットメルトフィルムを積層し、ヤング率1.0GPa、通気率0.01cc/cm・sec、目付量300g/m2のシート材を作製した。このシート材を軟質カバーとしてホットメルトフィルムが内側になるように配置し、空気層としての通気性材料として目付量250g/mのPETフェルト、軟質遮音層として低分子量ポリウレタンをフィルム化したホットメルトフィルム(厚さ30μm、ヤング率0.08GPa、通気率0.01cc/cm・sec)、吸音材として目付量500g/m2のPETフェルトを積層し、170℃の熱プレスにて厚さ20mmに成形して防音カバーを得た。
【0044】
(比較例3)
目付量150g/mのPET短繊維を酢酸ビニル樹脂エマルジョン(固形分30g/m)でケミカルボンドさせて作製した基材と、スパンボンド工法により作成したポリプロピレン長繊維製の表皮材とを積層した目付量220g/mの不織布の表皮材側に、低分子量ポリウレタンをフィルム化した厚さ30μmのホットメルトフィルムを積層し、ヤング率0.6GPa、通気率0.01cc/cm・sec、目付量260g/mのシート材を作製した。このシート材を軟質カバーとしてホットメルトフィルムが内側になるように配置し、空気層としての通気性材料として目付量250g/mのPETフェルト、軟質遮音層として低分子量ポリウレタンをフィルム化したホットメルトフィルム厚さ(30μm、ヤング率0.08GPa、通気率0.01cc/cm・sec)、吸音材として目付量500g/mのPETフェルトを積層し、170℃の熱プレスにて厚さ20mmに成形して防音カバーを得た。
【0045】
(実施例1)
比較例1の防音カバーの周縁端部を、シール部材としての低分子量ポリウレタンをフィルム化したホットメルトフィルム(厚さ30μm)でシールして空気層を密封した防音カバーを得た。
【0046】
(実施例2)
比較例2の防音カバーの周縁端部を、シール部材としての低分子量ポリウレタンをフィルム化したホットメルトフィルム(厚さ30μmで)シールして空気層を密封した防音カバーを得た。
【0047】
(実施例3)
比較例3の防音カバーの周縁端部を、シール部材としての低分子量ポリウレタンをフィルム化したホットメルトフィルム(厚さ30μmで)シールして空気層を密封した防音カバーを得た。
【0048】
(実施例4)
比較例1で得た防音カバーとしての成形体(厚さ20mm)の周縁端部を熱プレス成形により1.5mmに圧縮して空気層を密封した防音カバーを得た。
【0049】
(実施例5)
空気層としての通気性材料としてのPETフェルト(目付量250g/m)を使用せず、軟質カバーと軟質遮音層との間に10mmの隙間を形成したまま、防音カバーの周縁端部を、シール部材としての低分子量ポリウレタンをフィルム化したホットメルトフィルム(厚さ30μmで)シールして空気層を密封した以外は、実施例1と同様の材料、製造方法にて作成し、空気層を密封した防音カバーを得た。
【0050】
(比較例4)
軟質遮音層として不織布(目付量220g/m、ヤング率0.08GPa、通気率12.5cc/cm・sec)を使用した以外は、実施例1と同様の材料、製造方法にて作成し、空気層を密封した防音カバーを得た。
【0051】
(比較例5)
空気層としての通気性材料としてのPETフェルト(目付量250g/m)を使用せず、軟質カバーと軟質遮音層とを密着させ、吸音材の厚さを20mmとした以外は、実施例1と同様の材料、製造方法にて作成し、空気層を密封した防音カバーを得た。
【0052】
(比較例6)
軟質カバー層として厚さ2mmのポリプロピレン(PP)製板(目付量2400g/m、ヤング率2.0GPa、通気率0cc/cm・sec)を使用した以外は、実施例1と同様の材料、製造方法にて作成し、空気層を密封した防音カバーを得た。
【0053】
(実施例6)
目付量150g/mのPET短繊維を酢酸ビニル樹脂エマルジョン(固形分30g/m)でケミカルボンドさせて作製した基材と、スパンボンド工法により作成したポリプロピレン長繊維製の表皮材とを積層した目付量220g/mの不織布の表皮材側に、湿気硬化型ポリウレタン樹脂130g/mをローラーコートして得たシート材(目付量350g/m、ヤング率0.3GPa、通気率0.5cc/cm・sec)を軟質遮音層として使用した以外は、実施例1と同様の材料、製造方法にて作成し、空気層を密封した防音カバーを得た。
【0054】
上記の比較例及び実施例の各防音カバーの構成を表1、表2、表3に示す。また、各防音カバーについて、下記の音響特性の測定と軟質カバーの2次放射の確認を行った。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
(音響特性の測定)
小型残響箱(拡散音場)・無響室(自由音場)・音響インテンシティー法で、実施例及び比較例の各防音カバーの音響透過損失を測定した。結果を図4〜図9に示す。
【0059】
(軟質カバーの2次放射の確認)
音響特性の測定時に軟質カバーに留め点を介しシェーカーより振動(ホワイトノイズ)を入力し、軟質カバーの2次放射を確認した。振動入力の有/無間で透過音の音圧レベル変化が1dB未満のものを◎、1dB以上3dB未満のものを△、3dB以上増加したものを×として評価した。結果を図4〜図9に示す。
【0060】
表1に示されるように、比較例1〜3の防音カバーに対し、周縁端部をシールして空気層を密封した実施例1〜3の防音カバーは、非常に高い音響透過損失(遮音性能)を示していることがわかる。これは、軟質カバーと軟質遮音層との間をシール部材で塞いで形成された閉空間において、吸音材を透過して入力した音波(粗密波)が、空気ばねの効果でより圧力変動で変形され易い軟質遮音層を選択的に振動変形させることに消費され、結果的に軟質カバーへの入力が低減されるためであると考えられる。また、プレス成形により周縁端部を圧縮しシールして空気層を密封した実施例4の防音カバーは、実施例1〜3の防音カバーと同程度の遮音性能が得られた。
【0061】
表2に示されるように、軟質遮音層の通気率が高く、通気量が大きい比較例4の防音カバーでは、吸音材を透過して入力した音波が、軟質遮音層を振動変形させることなしに透過するため減衰効果が得られず、高い遮音性能が得られない。また、空気層のない比較例5の防音カバーでは、軟質遮音層の振動が直接軟質カバーに伝達するため高い遮音効果が得られない。さらに、比較例6の防音カバーは高い遮音性能は得られるが、留め点(固定点)から伝達した振動により剛体カバーから2次放射を生じた。
【0062】
表3に示されるように、軟質カバーと軟質遮音層とのヤング率の比が1/4の実施例6の防音カバーでは、比較例1〜6の防音カバーと実施例1〜5の防音カバーとの中間的な遮音性能を示すが、実施例1〜5の防音カバーが2kHz以上の周波数域で音響透過損失が質量則の近似曲線(3dB/1オクターブの割合で周波数の増加に伴い増加する)を超えた増加を見せるのに対し、この効果が得られていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源に対向して配置される吸音材と、吸音材に積層され、JIS L1018で測定した通気率が10cc/cm・sec以下である軟質遮音層と、軟質遮音層との間で空気層を形成し、JIS K7127で測定したヤング率が0.2〜1.5GPaである軟質カバーとを備え、空気層が密封されていることを特徴とする防音カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の防音カバーにおいて、前記軟質遮音層のJIS K7127で測定したヤング率が、前記軟質カバーの1/5以下であることを特徴とする防音カバー
【請求項3】
請求項1または2に記載の防音カバーにおいて、前記軟質カバーと前記軟質遮音層とが接触する周縁端部を備え、周縁端部は圧着されていることを特徴とする防音カバー。
【請求項4】
請求項1または2に記載の防音カバーにおいて、前記軟質カバーの周縁端部と前記軟質遮音層の周縁端部とが直接、またはシール部材で連結されていることを特徴とする防音カバー。
【請求項5】
JIS K7127で測定したヤング率が0.2〜1.5GPaである軟質カバーを成形する工程と、
吸音材と、JIS L1018で測定した通気率が10cc/cm・sec以下である軟質遮音層との積層体を成形する工程と、
軟質遮音層が軟質カバーと対向するように重ね合わせて該軟質遮音層と該軟質カバーとの間に空気層を形成する工程と、
軟質カバーの周縁端部と、軟質遮音層の周縁端部とを連結する工程とを備えることを特徴とする防音カバーの製造方法。
【請求項6】
自動車のエンジンルーム内において、請求項1〜4の何れか1項に記載の防音カバーを、前記吸音材がエンジンに接触して配置することを特徴とする防音方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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