説明

防音床材

【課題】低硬度・低比重の材料を木質基材として使用することができ、製造の手間が少なく、かつ、防音性能と歩行感とを両立させた防音床材を提供する。
【解決手段】防音床材10を、0.2以上0.4以下の比重を有する板状の木質基材12と、木質基材12の上面に設けられた、木質基材12よりも硬度が高い表面強化層13と、木質基材12の下面に取り付けられた緩衝材14とで構成することにより、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音性能と歩行感とを両立させた防音床材に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行時等の振動音がスラブに伝達するのを防止する防音床材として、木質基材の下面(防音床材が設置されたときに下側に向く面)に弾力性のある緩衝材を貼着したものが知られている。
【0003】
このような防音床材において、その厚さが一定の場合、緩衝材の厚さを増して防音床材全体としての硬度を低くすると防音性能は向上するが、その反面、歩行者が防音床材に体重をかけたときにおける当該防音床材の撓みが大きくなり歩行感が悪化してしまう。
【0004】
このように「防音性能」および「歩行感」という、相反する要求を両立させることを目的とした防音床材1が特許文献1に開示されている。この防音床材1は、図3に示すように、木質基材2と、木質基材2の下面に貼着された第1緩衝材3と、第1緩衝材3の裏面に貼着された、第1緩衝材3よりも硬度の低い第2緩衝材4とで構成されている。
【0005】
この防音床材1によれば、第1緩衝材3だけでなく、当該第1緩衝材3よりも硬度の低い第2緩衝材4を併用することにより、防音性能を向上させることができ、かつ、硬度の低い第2緩衝材4のみで振動を緩衝させる場合に比べ、防音床材1全体としての硬度が過度に低くなって歩行感が悪化するのを避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−13930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した防音床材1では、2種類の緩衝材(第1緩衝材3および第2緩衝材4)を木質基材2に貼着一体化させなければならないことから製造に手間がかかっていた。また、硬度の低い第2緩衝材4を使用していることから、木質基材2には高硬度・高比重の材料を用いて防音床材1全体としての硬度を高める必要があり、当該木質基材2に軽量で加工性の良い低硬度・低比重の材料を使用できないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、低硬度・低比重の材料を木質基材として使用することができ、製造の手間が少なく、かつ、防音性能と歩行感とを両立させた防音床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、「0.2以上0.4以下の比重を有する板状の木質基材12と、
前記木質基材12の上面に設けられた、前記木質基材12よりも硬度が高い表面強化層13と、
前記木質基材12の下面に取り付けられた緩衝材14とを備えていることを特徴とする防音床材10」である。
【0010】
本発明の防音床材10によれば、木質基材12の上面(防音床材10が設置されたときに上側に向く面)に当該木質基材12よりも硬度が高い表面強化層13が設けられていることから、低硬度・低比重(0.2以上0.4以下)の材料を木質基材12に使用して防音床材10を軽量化しつつ、防音床材10全体の硬度が過度に低下して良好な歩行感が阻害されるのを回避することができる。
【0011】
また、低硬度・低比重の材料を使用することによって木質基材12の振動吸収能力を高めることができることから、上述した従来の防音床材1のように2種類の緩衝材を貼着する必要がなくなり、製造の手間を少なくすることができる。
【0012】
また、木質基材12について上記範囲の比重が最適である理由は以下の通りである。すなわち、比重が0.2より小さい場合、木質基材12はさらに軽くなって取扱いが容易になる反面、床材として要求される基材強度が得られなくなり、逆に比重が0.4を超えると硬度が大きくなりすぎて可撓性に乏しくなり、防音床材10をスラブに載置したときに木質基材12がスラブ表面の起伏に対応することができずに馴染みが悪くなって歩行感が悪くなるとともに防音性能も低下するからである。さらに、表面強化層13が設けられていることにより、木質基材12の表面に傷や凹みが生じ難いという効果もある。
【0013】
請求項2に記載した発明は、請求項1の防音床材10に関し、「前記木質基材12の下面には溝20が形成されている」ことを特徴とする。
【0014】
木質基材12の下面に溝20を設けることにより、当該溝20と直交する方向に木質基材12の可撓性が大きくなり、緩衝材14とともにスラブ表面の起伏への馴染みが良くなるので施工性が向上するだけでなく、緩衝材14とスラブ表面との間において、歩いたときに不快感を与える原因となる隙間が不所望に生じないことから歩行感を向上させることができる。
【0015】
請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2の防音床材10に関し、「前記木質基材12における1の側面木口12aには、雄実22が設けられており、前記木質基材12における前記1の側面木口12aとは反対側の側面木口12bには、雌実24が設けられている」ことを特徴とする。
【0016】
木質基材12の側面木口12a、12bに雄実22および雌実24を設けることにより、複数の防音床材10を互いに隣接させて配置したとき、隣接する防音床材10同士を雄実22および雌実24で接合させることができる。これにより、防音床材10同士の接合部付近を踏みつけたときに、踏みつけられた防音床材10だけでなくこれに隣接する防音床材10も一緒に沈み込むことから、当該接合部に段差が発生して人がつまずいたり、見栄えが悪くなるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防音床材によれば、低硬度・低比重の材料を木質基材として使用することができ、製造の手間が少なく、かつ、防音性能と歩行感とを両立させた防音床材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の防音床材を示す斜視図である。
【図2】本発明の防音床材を示す断面図である。
【図3】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明が適用された防音床材10について、図1(斜視図)および図2(断面図)を用いて詳細に説明する。
【0020】
防音床材10は、木質基材12と、表面強化層13と、緩衝材14と、必要に応じて取り付けられる表面化粧材16とを備えている。
【0021】
木質基材12は、比重が0.2以上0.4以下といった低比重の木質材で形成されており、このような木質材としては、ファルカタやアカシアマンギューム等の低硬度の植林木合板基材を挙げることができる。
【0022】
木質基材12の比重が上記範囲である理由は、比重が0.2より小さい場合、木質基材12はさらに軽くなって取扱いが容易になる反面、床材として要求される硬度が得られないからであり、逆に、比重が0.4を超えると硬度が大きくなりすぎて可撓性に乏しくなり、防音床材10をスラブに載置したときに木質基材12がスラブ表面の起伏に対応することができずに馴染みが悪くなって歩行感が悪くなるとともに防音性能も低下するからである。木質基材12の厚さは特に限定されるものではないが、生産性に鑑みると9〜15mm程度の厚さが好適である。
【0023】
表面強化層13は、木質基材12の表面に形成された、木質基材12よりも高い硬度を有する層であり、例えば、熱硬化性樹脂含浸紙を木質基材12の表面に貼着硬化して形成したり、あるいは、木質基材12の表面に合成樹脂液を塗布した後、当該表面に0.1mm以上の厚さを有する繊維質シートを載置して当該繊維質シートに前記合成樹脂液を含浸させ、然る後、合成樹脂液が含浸された繊維質シートを木質基材12の上面(防音床材10が設置されたときに上側に向く面)側から加熱加圧することにより、合成樹脂液を硬化させるとともに木質基材12の表面に接着させて形成することができる。もちろん、木質基材12の表面に上記繊維質シートを載置した後でこの繊維質シートの表面に合成樹脂液を塗布して繊維質シートに合成樹脂液を含浸させ、然る後、上述の加熱加圧を行う等、別の方法で表面強化層13を形成してもよい。
【0024】
なお、木質基材12の下面(防音床材10が設置されたときに下側に向く面)に、当該木質基材12の幅方向に延びる複数の溝20を設けてもよい(もちろん、溝20を長手方向に形成してもよいし、幅方向および長手方向の両方に形成してもよい。)。このような溝20を設けることにより、当該溝20と直交する方向に木質基材12の可撓性が大きくなり、緩衝材14とともにスラブ表面の起伏への馴染みが良くなるので施工性が向上するだけでなく、緩衝材14とスラブ表面との間において、歩いたときに不快感を与える原因となる隙間が不所望に生じないことから歩行感が向上する。
【0025】
もちろん、溝20の本数や幅、深さ等は特に限定されるものではなく、要求される防音性能、木質基材12の比重等の要素に応じて設定されるものであるが、一例を挙げると、900mm長さの木質基材12であれば、10mmピッチで40〜70本の溝20が設けられる。
【0026】
また、木質基材12における1の側面木口12aに雄実22(おさね)を設け、1の側面木口12aとは反対側の側面木口12bに雌実24(めさね)を設けてもよい(あるいは、1の側面木口12aおよびこれに隣接する側面木口に雄実22を設け、雄実22を設けた側面木口とは反対側の側面木口にそれぞれ雌実24を設けてもよい。)。このように雄実22および雌実24を設けることにより、複数の防音床材10を互いに隣接させて配置したとき、隣接する防音床材10同士を雄実22および雌実24で接合させることができる。これにより、特に雌実24の下側(雌下)を木質基材12内に設けることで(すなわち、雌実24を木質基材12内に形成することで)、防音床材10同士の接合部付近を踏みつけたとしても、踏みつけられた防音床材10だけでなく、これに隣接する防音床材10も一緒に沈み込むことから、当該接合部に段差が発生して人がつまずいたり、見栄えが悪くなるのを回避することができる。
【0027】
緩衝材14は、木質基材12の下面に取り付けられた、弾力性と衝撃吸収性とを有する板状材であり、その材質として、発泡ウレタンフォーム、発泡スチレン、発泡フェノール等の合成樹脂、不織布、ゴム等を挙げることができる。本実施例では、後述のように、発泡ウレタンフォームが緩衝材14として、木質基材12の下面に接着剤や両面テープ等で貼着されている。
【0028】
表面化粧材16は、木質基材12の上面に対して、接着剤や両面テープ等で一体的に貼着された化粧シートあるいは突き板等の板材であり、防音床材10の見栄えを向上させるとともに、当該防音床材10の反りを軽減する役割を有する。木質基材12の上面には、上述のように、合成樹脂を含浸することによって表面強化層13が形成されているので、木質基材12に直接貼着される場合に比べて上記接着剤等との親和性が良くなり、表面化粧材16は、当該表面強化層13に対して高い密着性をもって強固に貼着される。
【0029】
本実施例の防音床材10によれば、木質基材12の上面に当該木質基材12よりも硬度が高い表面強化層13が設けられていることから、低硬度・低比重の材料を木質基材12に使用して防音床材10を軽量化しつつ、防音床材10全体の硬度が過度に低下して当該防音床材10全体がフワフワと撓り、良好な歩行感が阻害されるのを回避することができる。
【0030】
また、低硬度・低比重の材料を使用することによって木質基材12の振動吸収能力を高めることができることから、上述した従来の防音床材1のように2種類の緩衝材を貼着する必要がなくなり、製造の手間を少なくすることができる。さらに、表面強化層13が設けられていることにより、木質基材12の表面に傷や凹みが生じ難く、かつ、木質基材12の上面に突板等の表面化粧材16を貼る場合に当該突板等や接着剤からの水分が低硬度・低比重の木質基材12に浸透し、防音床材10の製造工程において加熱圧縮を受けたときに当該水分が蒸発膨張して木質基材12がパンクするのを回避できるという効果もある。
【実施例】
【0031】
比重0.33、厚さ9mmのファルカタ合板を木質基材12として使用し、当該木質基材12の表面に、メラミンを主成分とする水性合成樹脂液を固形分で237g/m2塗布した後、密度0.5g/cm3(秤量115g/m2)、厚さ0.22mmの樹脂含浸用紙(=繊維質シート)を木質基材12の表面に載置した。然る後、当該木質基材12の表面を、ホットプレスを用いて130℃、3kgf/cm2の条件下で40秒間加熱加圧し、引き続いて130℃、10kgf/cm2の条件下で80秒間加熱加圧することにより、水性合成樹脂液を含浸させた樹脂含浸用紙を硬化させるとともに、木質基板12の表面に接着させて木質基材12の表面に表面強化層13を形成した。
【0032】
また、木質基材12の下面には、切削加工により、10mmピッチで幅1.2mm深さ6mmの溝20を44本設けるとともに、木質基材12の側面木口12a、12bには、雄実22および雌実24を形成した。次いで、厚さ4.5mmの発泡ウレタンフォームの板材を緩衝材として用意し、木質基材12の下面に接着剤で貼着することにより、実施例試材を得た。
【比較例】
【0033】
比重0.60、厚さ9mmのカポール合板を木質基材とし、上記実施例と同様、表面に表面強化層を設けた。また、木質基材の側面木口には、雄実および雌実を形成した。また、厚さ5mmの不織布を緩衝材14として木質基材12の下面に接着剤で貼着し、比較例試材を得た。
【0034】
上記実施例および比較例の試材について、JIS A 1440に準じて軽量床衝撃音レベル(低減量)を測定した結果を表1に示す。このように、比重の低い木質基材12を使用した実施例試材であっても、比較例試材のように高比重の木質基材を使用したものと同程度の防音性能を有していることがわかる。
【0035】
【表1】

【符号の説明】
【0036】
10…防音床材
12…木質基材
13…表面強化層
14…緩衝材
16…表面化粧材
20…溝
22…雄実
24…雌実


【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.2以上0.4以下の比重を有する板状の木質基材と、
前記木質基材の上面に設けられた、前記木質基材よりも硬度が高い表面強化層と、
前記木質基材の下面に取り付けられた緩衝材とを備えていることを特徴とする防音床材。
【請求項2】
前記木質基材の下面には溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防音床材。
【請求項3】
前記木質基材における1の側面木口には、雄実が設けられており、前記木質基材における前記1の側面木口とは反対側の側面木口には、雌実が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の防音床材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−74609(P2011−74609A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224749(P2009−224749)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】