説明

防食塗料組成物およびこれを用いた複層塗膜、ならびに、複層塗膜を備える船舶および海洋構造物

【課題】低温硬化性に優れるとともに、防食性および耐電気防食性に優れ、さらには、上塗り塗料に対して良好な密着性を示す非タール系の防食塗料組成物、当該防食塗料組成物を用いてなる塗膜、ならびに該塗膜を備える船舶および海洋構造物を提供する。
【解決手段】ノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むエポキシ樹脂(a)と、不飽和置換基含有フェノール類と、アルデヒド類と、アミン化合物とのマンニッヒ縮合反応物であるマンニッヒ型硬化剤(b)と、アルコキシシラン化合物であるシランカップリング剤(c)と、水酸基含有石油樹脂(d)と、3官能以上のアクリレート化合物(e)と、を含む防食塗料組成物当該防食塗料組成物を用いてなる塗膜、ならびに該塗膜を備える船舶および海洋構造物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食塗料組成物に関し、より詳しくは、船舶、海洋構造物などに適用される防食用塗料として有用な非タール系防食塗料組成物に関する。また、本発明は、当該防食塗料組成物を用いた複合塗膜、ならびに、当該複合塗膜を備える船舶および海洋構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、橋梁等の海洋構造物、プラントなどの鋼製構造物には、防食を目的として、その表面に防食塗料を塗装することが一般的に行なわれている。かかる防食塗料には、その目的上、良好な防食性を示すことが求められるのは勿論のこと、防食塗料からなる防食塗膜上には、他の塗料が上塗りされることが多いことから、当該上塗り塗料との密着性に優れることが要求される。
【0003】
また、船舶等においては、バラストタンク内表面、船底部および外板部などの海水に接触する表面または海水雰囲気に晒される表面上に、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)などの鉄(Fe)よりもイオン化傾向の大きい金属またはその合金からなる金属板を配置し、該表面(陰極)と該金属板(陽極)とを電気的に接続することにより電位差を生じさせ、該表面の電気防食を行なう、いわゆる犠牲陽極法がしばしば施される。かかる電気防食を行なう場合、電気防食により供給される電子と海水中の陽イオンとの反応により、海水はアルカリ性を呈する。したがって、電気防食と防食塗膜とを併用する場合、防食塗料は、かかるアルカリ環境下によっても、ふくれや剥がれなどが生じない防食塗膜を形成できる、優れた耐電気防食性を備えることが望まれる。
【0004】
さらに、防食塗料が塗装される作業環境などによっては、たとえば−10℃程度の極低温環境下においても、比較的短時間で硬化し、良好な防食塗膜を形成できることが求められる。したがって、低温硬化性に優れることも防食塗料に求められる要求特性の1つである。
【0005】
特許文献1には、低温硬化性を改善することを目的として、エポキシ樹脂および一分子中にアクリロイル基を三つ以上有するアクリレート化合物からなる主剤、ならびに、エポキシ樹脂硬化剤とから構成されてなる二液型エポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、このエポキシ樹脂組成物は、コンクリート構造体の補修・補強のために用いられるものであり、たとえば鋼製構造物に適用される際の防食性、密着性、耐電気防食性などについてはなんら考慮されていない。
【0006】
ところで、近年、安全衛生上などの観点から、タール系エポキシ樹脂防食塗料のタールの代わりに石油樹脂を用いた非タール系エポキシ樹脂防食塗料が開発されているが、エポキシ樹脂およびアミン硬化剤からなる硬化樹脂と石油樹脂との相溶性が十分でなく、たとえば、船舶のバラストタンク内などに適用するには、防食性および耐水性等が不十分であるという問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、たとえば特許文献2および3には、上記石油樹脂として、水酸基含有石油樹脂や水酸基とカルボキシル基とを有する変性炭化水素樹脂を用いることが開示されている。しかし、これらの文献に開示される塗料組成物についても、被塗物(たとえば、ブラスト鋼板、ショップ塗装鋼板、有機ジンク塗装鋼板など)に対する密着性や、耐膨れ性等を含む防食性、耐電気防食性は十分であるとはいえず、改善の余地があった。また、低温硬化性については何ら考慮されていない。
【0008】
また、特許文献4には、超低温時における高接着強度と防食性能を有する塗膜を得ることができる防錆顔料含有多官能性エポキシ樹脂系塗料組成物が開示されている。しかし、この塗料組成物は、基本的には、一次防錆プライマーとして使用されるものであり、バラストタンク内など、高度な防食性、耐電気防食性などが要求される表面に適用することは困難である。
【特許文献1】特開2002−256139号公報
【特許文献2】特開平9−263713号公報
【特許文献3】特開2005−113103号公報
【特許文献4】国際公開第2007/046301号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、低温硬化性に優れるとともに、防食性および耐電気防食性に優れ、さらには、被塗物(基材)や上塗り塗料に対して良好な密着性を示す非タール系の防食塗料組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、当該防食塗料組成物を用いてなる塗膜、ならびに該塗膜を備える船舶および海洋構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むエポキシ樹脂(a)と、不飽和置換基含有フェノール類と、アルデヒド類と、アミン化合物とのマンニッヒ縮合反応物であるマンニッヒ型硬化剤(b)と、アルコキシシラン化合物であるシランカップリング剤(c)と、水酸基含有石油樹脂(d)と、3官能以上のアクリレート化合物(e)と、を含む防食塗料組成物を提供する。
【0011】
本発明の防食塗料組成物において、シランカップリング剤(c)は、エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、1.0〜7.0重量部含有されることが好ましい。水酸基含有石油樹脂(d)は、エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、10〜100重量部含有されることが好ましい。また、3官能以上のアクリレート化合物(e)は、エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、2.0〜22重量部含有されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の防食塗料組成物は、防食塗料組成物の固形分に対して着色顔料を0.01〜3容量%の範囲内で含有していてもよく、さらに、白色度が85以上の体質顔料を含有していてもよい。
【0013】
本発明の防食塗料組成物は、少なくともエポキシ樹脂(a)および3官能以上のアクリレート化合物(e)を含有する主剤と、少なくともマンニッヒ型硬化剤(b)を含む硬化剤とからなる2液型の塗料組成物であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記いずれかに記載の防食塗料組成物からなる防食塗膜と、該防食塗膜上に積層された上塗り塗料または防汚塗料からなる塗膜とを備える複層塗膜を提供する。本発明はさらに、複層塗膜を備える船舶または海洋構造物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防食塗料組成物は、−10℃程度の極低温環境下においても良好な硬化性を示す(良好な低温硬化性を示す)とともに、耐電気防食性に優れる。また、本発明の防食塗料組成物は、たとえば、ブラスト鋼板、ショップ塗装鋼板、有機ジンク塗装鋼板などの基材に対する密着性や耐膨れ性等の防食性能に優れているとともに、上塗り塗料に対する密着性も良好である。かかる本発明の防食塗料組成物は、たとえば船舶、海洋構造物、プラント等の鋼製構造物などに適用される防食用塗料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の防食塗料組成物は、ノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むエポキシ樹脂(a)と、不飽和置換基含有フェノール類と、アルデヒド類と、アミン化合物とのマンニッヒ縮合反応物であるマンニッヒ型硬化剤(b)と、アルコキシシラン化合物であるシランカップリング剤(c)と、水酸基含有石油樹脂(d)と、3官能以上のアクリレート化合物(e)と、を含む。以下、各成分について詳細に説明する。
【0017】
<エポキシ樹脂(a)>
本発明の防食塗料組成物は、エポキシ樹脂(a)として、ノボラック型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方を含む。これらの両方が含まれていてもよい。かかるタイプのエポキシ樹脂を用いることにより、防食塗料組成物の低温硬化性を向上させることができるとともに、ブラスト鋼板、ショップ塗装鋼板、有機ジンク塗装鋼板などの基材に対する密着性を改善することができる。エポキシ樹脂(a)(固形分)は、防食塗料組成物の固形分中に10〜60重量%含まれることが好ましい。10重量%未満であると、得られる塗膜の防食性に劣る場合があり、60重量%を超えると、塗膜が硬くなりすぎてクラック等が発生したり、基材に対する密着性が低下する場合がある。エポキシ樹脂(a)の含有量は、防食塗料組成物の固形分中、15〜55重量%であることがより好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂は、それぞれ1種のエポキシ樹脂が用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0018】
本発明において、エポキシ樹脂(a)は、上記ノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂を含有していてもよく、このような他のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。かかる他のエポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上併用されてもよい。
【0019】
エポキシ樹脂(a)全量に占めるノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂の合計量は、10〜100重量%とすることが好ましく、より好ましくは20重量%以上である。10重量%未満であると、十分な低温硬化性および/または基材との密着性が得られない傾向がある。また、より優れた低温硬化性を得るためには、少なくともノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。この場合、エポキシ樹脂(a)全量に占めるノボラック型エポキシ樹脂量は、10〜100重量%とすることが好ましく、より好ましくは20重量%以上である。エポキシ樹脂(a)全量に占めるノボラック型エポキシ樹脂量が10重量%未満であると、十分な低温硬化性および/または基材との密着性が得られない傾向がある。
【0020】
用いられるノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および他のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、100〜1000であることが好ましく、150〜1000であることがより好ましい。エポキシ当量が100未満であると、良好な低温硬化性が得られない傾向があり、また、得られる塗膜の強靭性に劣る場合がある。エポキシ当量が1000を超えると、低温硬化性が劣る可能性があり好ましくない。
【0021】
また、用いられるノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および他のエポキシ樹脂の数平均分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算値で、200〜3000であることが好ましく、300〜2000であることがより好ましい。数平均分子量がかかる数値範囲内であると、塗膜物性および塗装作業性に優れる防食塗料組成物が得られやすい。
【0022】
本発明において使用できるノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、たとえば、いずれも商品名で、「EPICLON 5250−80IX」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜250、数平均分子量約470、大日本インキ化学社製)、「EPICLON 5270−80IX」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量245〜270、数平均分子量約540、大日本インキ化学社製)、「エピコート #154」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量176〜180、数平均分子量約540、油化シェル社製)などを挙げることができる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、たとえば、いずれも商品名で、「エピコート #828」(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量184〜194、数平均分子量約380、油化シェル社製)、「エピコート #834−90X」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜270、数平均分子量約470、油化シェル社製)、「エピコート #1001」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量450〜500、数平均分子量約900、油化シェル社製)、「エピコート #1004」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量875〜975、数平均分子量約1600、油化シェル社製)、「エピコート #1007」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量1750〜2200、数平均分子量約2900、油化シェル社製)などを挙げることができる。
【0023】
上記他のエポキシ樹脂の市販品としては、たとえば、いずれも商品名で、「エピコート #807」(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量160〜175、数平均分子量約330、油化シェル社製)、「YR−450」(ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ当量400〜500、数平均分子量約800〜1000、東都化成社製)などが挙げられる。本発明に用いられるエポキシ樹脂は、上記例示されたエポキシ樹脂に限定されるものではなく、一般に市販されている、その他のエポキシ樹脂も使用することができる。
【0024】
<マンニッヒ型硬化剤(b)>
本発明の防食塗料組成物は、エポキシ樹脂用硬化剤として、不飽和置換基含有フェノール類と、アルデヒド類と、アミン化合物とのマンニッヒ縮合反応物であるマンニッヒ型硬化剤(b)を含む。かかるマンニッヒ縮合反応物を硬化剤とすることにより、防食塗料組成物の低温硬化性(低温乾燥性)を向上させることが可能となる。
【0025】
上記不飽和置換基含有フェノール類における不飽和置換基は、好ましくは不飽和炭化水素基であり、たとえば、炭素数2〜10程度のアルケニル基、炭素数2〜10程度のアルケニル基で置換されたフェニル基などを挙げることができる。
【0026】
本発明において好ましく用いられる不飽和置換基含有フェノール類の具体例を挙げれば、特に限定されるものではないが、たとえば、カルダノール(cardanol)、イソプロペニルフェノール、ジイソプロペニルフェノール、ブテニルフェノール、イソブテニルフェノール、シクロヘキセニルフェノール、モノスチレン化フェノール(C65−CH=CH−C64−OH)、ジモノスチレン化フェノール((C65−CH=CH)2−C63−OH)などである。これらのなかでも、カルダノールは、マンニッヒ型硬化剤(b)とエポキシ樹脂(a)との相溶性および低温硬化性(低温乾燥性)の点から、より好ましく使用される。不飽和置換基含有フェノール類は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
カルダノールは、カシューナッツオイルに含まれる成分であり、たとえばm−C1527−C64OHに代表されるような、側鎖に炭素−炭素二重結合を0〜3個有し、その平均値が1.8個程度であるフェノール成分を75〜80重量%含む不飽和炭化水素基含有フェノール類である。カルダノールの市販品としては、「カードライト NC−700」、「カードライト NC−4708」(いずれも商品名、CARDOLITE社製)などがある。
【0028】
上記アルデヒド類としては、炭素数が1〜10のアルデヒド類が好ましく用いられ、より好ましくは炭素数1〜5のアルデヒド類である。このようなアルデヒド類の具体例を挙げれば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、クロトンアルデヒド、フルフリルアルデヒド、コハク酸アルデヒド、プロピオアルデヒドなどである。これらのなかでも、マンニッヒ型硬化剤(b)とエポキシ樹脂(a)との相溶性および低温硬化性(低温乾燥性)の点から、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドが好ましい。アルデヒド類は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記アミン化合物は、脂肪族系アミン、脂環式アミン、芳香族系アミン、複素環系アミンなどから選択されるいずれのアミン化合物であってもよい。脂肪族系アミンとしては、たとえば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、および、その他の脂肪族系アミンなどが挙げられる。アルキレンポリアミンとしては、たとえば、H2N−R1−NH2(式中、R1は、1個以上の炭素数1〜10の炭化水素基で置換されていてもよい炭素数1〜12の二価の炭化水素基である。)で表されるポリアミン化合物を挙げることができ、より具体的には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン等である。
【0030】
ポリアルキレンポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンテトラミンなどを挙げることができる。
【0031】
その他の脂肪族系アミンとしては、たとえば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2−アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3−ビス(2’−アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン−ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3−アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミン[H2N(CH26NH(CH26NH2]などが挙げられる。
【0032】
上記脂環式アミンとしては、たとえば、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)などが挙げられる。
【0033】
上記芳香族系アミンとしては、たとえば、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物、およびその他の芳香族系ポリアミン化合物などが挙げられる。芳香族系アミンのより具体的な例を挙げれば、特に限定されるものではないが、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン(MXDA)、p−キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレンなどが挙げられる。
【0034】
上記複素環系アミンとしては、たとえば、N−メチルピペラジン[CH3−N(CH2CH22NH]、モルホリン[HN(CH2CH22O]、1,4−ビス−(8−アミノプロピル)−ピペラジン、ピペラジン−1,4−ジアザシクロヘプタン、1−(2’−アミノエチルピペラジン)、1−[2’−(2’’−アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11−ジアザシクロエイコサン、1,15−ジアザシクロオクタコサンなどが挙げられる。
【0035】
本発明において、これらのアミン化合物は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。上記のアミン化合物のなかでは、マンニッヒ型硬化剤(b)とエポキシ樹脂(a)との相溶性および低温硬化性(低温乾燥性)の点から、脂肪族系アミンに属するアルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミンが好ましく用いられ、なかでも、エチレンジアミンおよび、ジエチレントリアミン等のジエチレンポリアミンがより好ましい。
【0036】
本発明において用いられるマンニッヒ型硬化剤(b)は、上記不飽和置換基含有フェノール類と、アルデヒド類と、アミン化合物とをマンニッヒ脱水縮合させることにより得ることができる。マンニッヒ脱水縮合反応は、通常採用される条件を採用することができる。マンニッヒ脱水縮合反応において、不飽和置換基含有フェノール類(たとえばカルダノール)、アルデヒド類(たとえばホルムアルデヒド)およびアミン化合物(たとえばキシリレンジアミン)は、理論的には1:1:1のモル比で用いればよいが、通常、不飽和置換基含有フェノール類1モルに対して、アルデヒド類を0.5〜2.5モル程度、アミン化合物を0.5〜2.5モル程度使用される。反応温度および反応時間は、使用する反応試剤の種類に応じて適宜の条件を採用することができる。
【0037】
本発明におけるマンニッヒ型硬化剤(b)に相当する市販品としては、たとえば、いずれも商品名で、「SUNMIDE CX−1151」(マンニッヒ変性ポリアミン、アミン価180、活性水素当量250、エアープロダクツ社製)、「CARDLITE LX−5406」(マンニッヒ変性ポリアミン、アミン価202、活性水素当量300、CARDOLITE社製)、「ダイラクトール X−9479」(マンニッヒ変性ポリアミン、アミン価275、活性水素当量177、大都産業社製)などを挙げることができる。なお、本発明において、マンニッヒ型硬化剤(b)は、1種または2種以上用いられてもよい。
【0038】
本発明においては、エポキシ樹脂用硬化剤として、上記マンニッヒ型硬化剤(b)に加えて、他の硬化剤が用いられてもよい。他の硬化剤としては、従来公知のものを使用することができ、たとえば、上記したアミン化合物、当該アミン化合物を変性した変性ポリアミン等を挙げることができる。変性ポリアミンとしては、ダイマー酸変性(ポリアミド化)ポリアミン(たとえば、いずれも商品名で、「SUNMIDE 150−65」、「SUNMIDE 153−60S」(エアープロダクツ社製));エポキサイド付加ポリアミン(たとえば、「SUNMIDE X−2015」(商品名、三和化学社製));マイケル付加変性ポリアミン(たとえば、いずれも商品名で、「SUNMIDE X−10AC」、「SUNMIDE X−13A」(エアープロダクツ社製));ケチミン化ポリアミン等が挙げられる。
【0039】
ただし、低温硬化性(低温乾燥性)の観点からは、用いられるエポキシ用硬化剤の合計100重量%中に、マンニッヒ型硬化剤(b)が50重量%以上含まれることが好ましく、75重量%以上含まれることがより好ましく、100重量%含まれることが最も好ましい。
【0040】
エポキシ樹脂用硬化剤は、防食塗料組成物の固形分中に8〜26重量%含まれることが好ましい。また、防食塗料組成物の硬化性、ならびに、得られる防食塗膜の基材との密着性などの防食性および耐電気防食性の点から、エポキシ樹脂用硬化剤は、上記エポキシ樹脂(a)(固形分)100重量部に対して、45〜120重量部含まれることが好ましく、64〜103重量部含まれることがより好ましい。
【0041】
本発明の防食塗料組成物の硬化は、エポキシ樹脂(a)中のオキシラン環(エポキシ基)に、エポキシ樹脂用硬化剤の1級または2級アミノ基(マンニッヒ型硬化剤(b)においては、当該硬化剤を構成するアミノ化合物の1級または2級アミノ基)が付加反応することにより生じる。したがって、防食塗料組成物中に含まれるエポキシ基の活性水素当量Aに対するエポキシ樹脂用硬化剤の1級または2級アミノ基の活性水素当量Bの比(B/A)が0.5/1〜1.2/1の範囲内となるように、エポキシ樹脂(a)およびエポキシ樹脂用硬化剤の配合量を調整することが好ましい。この範囲内に調整することにより、防食塗料組成物の硬化性、ならびに、得られる防食塗膜の防食性および耐電気防食性を良好なものとすることができる。防食塗料組成物中に含まれるエポキシ基の活性水素当量Aに対するエポキシ樹脂用硬化剤の1級または2級アミノ基の活性水素当量Bの比(B/A)が上記の好ましい範囲を下回る場合や上回る場合は、得られる塗膜の防食性および/または耐電気防食性が悪化する可能性があり好ましくない。また、当該分子量は、GPC測定におけるポリスチレン換算値である。
【0042】
<シランカップリング剤(c)>
本発明の防食塗料組成物は、シランカップリング剤(c)を含有する。本発明において用いられるシランカップリング剤(シランカップリング剤(c))は、有機ポリマー(硬化樹脂など)に対して反応性および/または親和性を示す有機官能基と、無機系材料(防食塗料組成物に含有される顔料など)に対して反応性および/または親和性を示す有機官能基とを併せ持つ化合物であり、かかるシランカップリング剤(c)を用いることにより、有機ポリマーと無機系材料とが接する界面の接着性等を向上させることが可能となり、塗膜の防食性および耐電気防食性を高めることができる。有機ポリマーに対して反応性および/または親和性を示す有機官能基としては、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。また、無機系材料に対して反応性および/または親和性を示す有機官能基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの加水分解可能なアルコキシ基を挙げることができる。
【0043】
本発明においては、このようなシランカップリング剤(c)として、アルコキシシラン化合物を用いる。アルコキシシラン化合物を用いることにより、特に、耐電気防食性を良好なものとすることができる。
【0044】
本発明において好ましく用いられるアルコキシシラン化合物としては、たとえば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロポキシトリメトキシシラン等のγ−グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン等のγ−アミノアルキルトリアルコキシシラン;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン等のN−フェニル−γ−アミノアルキルトリアルコキシシランなどが挙げられる。これらのなかでも、より優れた耐電気防食性を有する塗料組成物が得られることから、γ−グリシドキシアルキルトリアルコキシシランおよびγ−アミノアルキルトリアルコキシシランがより好ましく用いられ、γ−グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが特に好ましい。
【0045】
本発明においては、シランカップリング剤(c)として、1種または2種以上のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤(c)の添加量は、上記エポキシ樹脂(a)(固形分)100重量部に対して、1〜7重量部とすることが好ましく、2〜5重量部とすることがより好ましい。シランカップリング剤(c)の添加量をこの範囲内に調整することにより、得られる防食塗膜と基材との密着性や防食塗膜の耐膨れ性をより優れたものとすることができ、防食性能により優れるとともに、耐電気防食性に優れた防食塗料組成物を得ることができる。シランカップリング剤(c)の使用量が上記の好ましい範囲を上回ると、得られる防食塗膜と該防食塗膜の上に形成される上塗り塗膜との層間密着性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0046】
また、シランカップリング剤(c)は、硬化樹脂の固形分100重量部に対して、0.5〜10重量部の割合で用いられることが好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。かかる割合でシランカップリング剤(c)を用いることにより、得られる防食塗膜と基材との密着性や防食塗膜の耐膨れ性をより優れたものとすることができ、防食性能により優れた防食塗料組成物を得ることができる。なお、「硬化樹脂」の重量(固形分)は、エポキシ樹脂(a)、マンニッヒ型硬化剤(b)を含むエポキシ樹脂用硬化剤および後述するアクリレート化合物(e)の合計量(固形分)を意味する。
【0047】
<水酸基含有石油樹脂(d)>
本発明の防食塗料組成物は、水酸基含有石油樹脂(d)を含有する。水酸基含有石油樹脂(d)の添加により、防食塗膜と基材との密着性や防食塗膜の耐膨れ性を向上させることができ、防食性能に優れた防食塗料組成物を得ることができる。また、かかる水酸基含有石油樹脂(d)は、従来の防食塗料組成物で用いられてきたタールの代替物としても機能し、したがって、水酸基含有石油樹脂(d)を用いることにより、非タール系防食塗料組成物を提供することが可能となる。水酸基含有石油樹脂(d)としては、たとえば以下のものを好ましく用いることができる。
(d−1)フェノール類と、石油の熱分解で得られるC9留分(スチレン、αまたはβ−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデン等を含有する。)とを重合させた水酸基含有石油樹脂、
(d−2)フェノール類と、石油の熱分解で得られるC9留分(スチレン、αまたはβ−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデン等を含有する。)と、さらに、共役二重結合を含むC5留分(イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン等を含有する。)とを重合させた水酸基および不飽和基を有する石油樹脂、
(d−3)上記水酸基および不飽和基を有する石油樹脂(d−2)の不飽和基に有機不飽和酸を付加させて得られる水酸基およびカルボキシル基を有する石油樹脂。
【0048】
上記石油樹脂(d−1)および(d−2)の調製に用いる重合用触媒としては、たとえば三フッ化ホウ素錯体などの従来公知のフリーデルクラフト触媒を用いることができる。また、上記石油樹脂(d−3)に用いる有機不飽和酸としては、無水マレイン酸、フマル酸などのα,β不飽和酸が挙げられる。これらの有機不飽和酸は、熱付加などの従来公知の方法により付加させることができる。
【0049】
水酸基含有石油樹脂(d)は、1分子中にフェノール性水酸基を0.1〜2.0個有することが好ましく、0.2〜1.0個有することがより好ましい。フェノール性水酸基の数が2.0個を越える場合、得られる塗膜の親水性が増し、基材と塗膜との界面に水分が滞留することなどの理由により、防食性が低下する傾向にある。また、フェノール性水酸基の数が0.1個未満であると、硬化樹脂との相溶性が十分でなく、防食性および耐水性に劣る傾向にある。
【0050】
また、水酸基含有石油樹脂(d)の酸価は、2〜50(KOHmg/g)であることが好ましい。酸価が2未満であると、基材との密着性が十分でない場合があり、防食性に劣る場合がある。また、防食塗料組成物中に含有され得る顔料との濡れ性に劣る傾向にある。酸価が50を越える場合、耐水性および防食性に劣る場合がある。かかる点に鑑み、水酸基含有石油樹脂(d)としては、上記(d−1)〜(d−3)のなかでも、カルボキシル基が導入された(d−3)を用いることがより好ましい。
【0051】
水酸基含有石油樹脂(d)の数平均分子量は、特に限定されないが、GPC測定におけるポリスチレン換算値で、400〜2500であることが好ましい。また、軟化点は、40〜150℃の範囲であることが好ましい。軟化点が40℃未満である場合には、得られる塗膜の強度が不足することがあり、軟化点が150℃を超えると、防食塗料組成物の粘度が高くなり過ぎて、塗装可能粘度に調整するために多量の溶剤添加が必要になったり、得られる塗膜が硬くなり過ぎて物性が低下して塗膜の密着性が低下する可能性があるためである。
【0052】
水酸基含有石油樹脂(d)の添加量は、上記エポキシ樹脂(a)(固形分)100重量部に対して、10〜100重量部とすることが好ましく、25〜45重量部とすることがより好ましい。水酸基含有石油樹脂(d)の添加量が10重量部未満では、防食性の向上効果が十分でない。また、塗膜が硬くなり過ぎて、耐衝撃性に劣る傾向にある。また、水酸基含有石油樹脂(d)の添加量が100重量部を超える場合も、防食性に劣る傾向にあり、また、耐水性にも劣る。
【0053】
<アクリレート化合物(e)>
本発明の防食塗料組成物は、一分子中にアクリロイル基を3つ以上有する(3官能以上の)アクリレート化合物(e)をさらに含有する。上記硬化剤に対するアクリレート化合物(e)の反応性は、一般にエポキシ樹脂より優れるため、アクリレート化合物(e)の添加により、より低温硬化性に優れる防食塗料組成物を得ることができる。
【0054】
本発明において好ましく用いられるアクリレート化合物(e)としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物トリアクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソジアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートとトリレンジイソシアネートとの2:1付加物、3官能以上のエポキシ化合物(たとえば、フェノールノボラックのグリシジルエーテルなど)にアクリル酸を付加させたエポキシアクリレート化合物などが挙げられる。アクリレート化合物は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
アクリレート化合物(e)の添加量(固形分)は、上記エポキシ樹脂(a)(固形分)100重量部に対して、2〜22重量部とすることが好ましく、5〜12重量部とすることがより好ましい。アクリレート化合物(e)の添加量が2重量部未満では、低温硬化性の向上効果が十分でない。また、塗膜造膜時においてチヂミなどが生じる場合がある。また、アクリレート化合物(e)の添加量が22重量部を超える場合、塗膜の耐水性に劣る傾向にある。
【0056】
<その他の添加剤>
本発明の防食塗料組成物は、必要に応じて、上記以外のその他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、併用樹脂、溶剤、タレ止め・沈降防止剤、色分れ防止剤、消泡・ワキ防止剤、レベリング剤、ツヤ消し剤、顔料などを挙げることができる。併用樹脂としては、たとえば石油系樹脂(キシレン樹脂など)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの併用樹脂を用いることにより、塗膜物性を改善することができる。
【0057】
上記溶剤としては、当該分野において通常用いられるものを用いることができ、たとえば、トルエン、キシレン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、およびこれらの2種以上の混合溶剤などが挙げられる。溶剤の使用量は特に制限されないが、近年、環境に鑑みた規制強化や環境保護に対する意識向上等に伴って、揮発性有機物質含有量の低減化が図られたハイソリッド型防食塗料組成物とすることが好ましいことから、溶剤の防食塗料組成物中における含有量は、12重量%以下とすることが好ましい。
【0058】
上記タレ止め・沈降防止剤としては、たとえば「ディスパロン 6700」(商品名、脂肪族ビスアマイド揺変剤、楠本化成社製)などを好ましく用いることができる。上記色分れ防止剤としては、たとえば「ディスパロン 2100」(商品名、シリコン添加脂肪族系多価カルボン酸、楠本化成社製)などを好ましく用いることができる。上記消泡・ワキ防止剤としては、たとえば「ディスパロン 1950」(商品名、特殊ビニル系重合物、楠本化成社製)などを好ましく用いることができる。
【0059】
上記顔料としては、たとえば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム、石膏、雲母状酸化鉄(MIO)、ガラスフレーク、スゾライト・マイカ、クラライト・マイカ等の体質顔料;酸化チタン、カーボンブラック、鉛白、黒鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化クロム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ウルトラマリンブルー、キナクリドン類、アゾ系赤・黄色顔料等の着色顔料;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、亜鉛末(Zn)、リン酸亜鉛、アルミ粉(Al)等の防錆顔料が挙げられる。これらの体質顔料、着色顔料および防錆顔料は、それぞれ1種のみが用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
体質顔料として、石膏のなかでも、焼石膏(CaSO4・1/2H2O)を含有させると、塗膜の耐水性、耐塩水性等の防食性および耐電気防食性をより向上させることができる場合がある。焼石膏としては、「焼石膏 PH−200」(商品名、丸石石膏社製)などを用いることができる。焼石膏を使用する場合、その添加量は、防食塗料組成物の固形分中、2〜30重量%とすることが好ましい。2重量%未満であると、効果が認められず、30重量%を越えると、塗膜表面への析出、白化現象が生じ、塗膜外観に支障をきたす。
【0061】
ここで、特開平10−216621号公報に示されるように、防食塗料組成物の固形分に対して着色顔料の含有量を0.01〜3容量%とし、かつ、下記条件:
(i)防食塗料組成物と被塗物との色差が20以上、
(ii)目標乾燥膜厚の塗膜と(目標乾燥膜厚−50)μm未満の乾燥膜厚の塗膜との色差が2以上、および、
(iii)目標乾燥膜厚の塗膜と(目標乾燥膜厚+50)μm超の乾燥膜厚の塗膜との色差が1未満、
を満たすように、防食塗料組成物中の着色顔料の含有量を調整することにより、塗膜の乾燥膜厚を簡単(典型的には目視で)かつ正確に目標値にコントロールできる防食塗料組成物を得ることができる。この場合、着色顔料として、少なくとも酸化チタンを用いることが好ましい。
【0062】
また、特開2002−66445号公報に示されるように、防食塗料組成物の固形分に対して着色顔料の含有量を0.01〜3容量%とし、かつ、白色度85以上の体質顔料を含有させ、さらに、下記条件:
(i’)防食塗料組成物と被塗物との色差が20以上、
(ii’)目標乾燥膜厚の塗膜と(目標乾燥膜厚−50)μm未満の乾燥膜厚の塗膜との色差が2以上、および、
(iii’)目標乾燥膜厚の塗膜と(目標乾燥膜厚+50)μm超の乾燥膜厚の塗膜との色差が1未満、
を満たすように、防食塗料組成物中の着色顔料および体質顔料の含有量を調整することにより、塗装領域によって要求される膜厚が異なる被塗物に対しても、各目標乾燥塗膜に応じて、塗膜の乾燥膜厚を簡単(典型的には目視で)かつ正確に目標値にコントロールできる防食塗料組成物を得ることができる。また、異なる膜厚においても色相に差のない塗膜を形成することが可能となる。この場合、着色顔料としては、少なくとも酸化チタンを用いることが好ましく、また、白色度85以上の体質顔料としては、たとえば白色度85以上のタルクなどを用いることができる。白色度85以上の体質顔料の含有量は、防食塗料組成物の固形分に対して、10〜60容量%とすることが好ましい。なお、体質顔料の白色度は、JIS Z 8722に準拠して測定され、該測定には、たとえば粉体用白度計C−100[フィルター;ブルー](ケット(株)製)を用いることができる。
【0063】
本発明の防食塗料組成物は、通常、2液型の塗料組成物とされる。具体的には、たとえば、エポキシ樹脂(a)、3官能以上のアクリレート化合物(e)、シランカップリング剤(c)および水酸基含有石油樹脂(d)を含む第1液(主剤)と、マンニッヒ型硬化剤(b)を含む硬化剤と、からなる2液型の塗料組成物とされる。2液型の塗料組成物においては、使用する直前に主剤と硬化剤とを混合して使用に供される。ここで、必要に応じて添加されるその他の添加剤は、主剤に配合されてもよいし、硬化剤に配合されてもよいし、またはその両者に配合されてもよい。シランカップリング剤(c)は、貯蔵安定性の観点から、主剤に配合されることが好ましい。
【0064】
本発明の防食塗料組成物の塗装は、刷毛、ローラー、スプレー等の一般的な方法により行なうことができる。2液型の塗料組成物である場合には、使用する直前に主剤と硬化剤とを混合することにより得られる塗料を、上記方法を用いて塗布する。かかる主剤と硬化剤とを混合することにより得られる塗料の塗装は、主剤と硬化剤との混合後、可使時間内に行なう。本発明の防食塗料組成物は、典型的には、30分〜8時間程度の可使時間を示す。溶剤を含む場合には、2〜8時間程度である。塗装を行なった後は、エポキシ基−アミノ基間の硬化反応やシランカップリング剤によるカップリング反応などが進行することによって硬化反応が進行することにより、強靱な防食塗膜が形成される。本発明の防食塗料組成物は低温硬化性に優れており、乾燥塗膜厚200〜320μmとなるように塗装し、−10℃の極低温環境下で乾燥させた場合であっても、24時間またはそれ以下の乾燥時間で、乾燥硬化させることが可能である。
【0065】
被塗物(本発明の防食塗料組成物が塗装される対象物)としては、防食を必要とするものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、船舶、橋梁等の海洋構造物、石油プラント等のプラントなどの鋼板または鋼製構造物、建築物の鋼性部分などに対して好適に適用することができる。また、旧塗膜の残る構造物や、コンクリート、非鉄金属表面を有する構造物に対して適用された場合にも、良好な防食性および耐電気防食性を示し得る。
【0066】
上記被塗物表面は、あらかじめ、ブラスト処理されたものであってもよく、さび止め塗装、ショップ塗装、有機または無機ジンクプライマー塗装が施されたものであってもよい。かかる表面に対しても、本発明の防食塗料組成物から形成される防食塗膜は、優れた密着性および耐膨れ性を示し、優れた防食性能を発揮する。また、本発明の防食塗料組成物は、特に高度な防食性、耐電気防食性が要求される船舶のバラストタンク内表面や、船底部、外板部の塗装にも好適に適用することができる。
【0067】
本発明の防食塗料組成物の塗布により形成される防食塗膜の膜厚は、被塗物の種類、用途等に応じて適宜のものとすることができるが、通常、乾燥膜厚で10〜500μm程度である。また、本発明の防食塗料組成物の塗布により形成される防食塗膜は、該組成物を複数回にわたって塗布することにより、積層構造とすることも可能である。その際の1回の塗布量は特に制限されるものではなく、通常、それぞれの塗膜の乾燥膜厚が10〜500μmとなるように塗布される。
【0068】
上記のようにして形成された防食塗膜(下塗り層)上には、上塗り層として、上塗り塗料や機能性塗料を塗装してもよい。本発明の防食塗料組成物の塗布により形成される防食塗膜は、このような上塗り塗料や機能性塗料からなる塗膜に対しても優れた密着性を示す。上塗り塗料の具体例を挙げれば、たとえば、油性系塗料、長油性フタル酸樹脂塗料、シリコンアルキッド樹脂塗料、フェノール樹脂塗料、塩化ゴム系樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、タールエポキシ樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、シリコン変性樹脂塗料などである。また、機能性塗料としては、生物付着を防止するアクリル樹脂系防汚塗料、ビニル樹脂系防汚塗料などが挙げられる。これらのなかでも、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、アクリル樹脂系防汚塗料、ビニル樹脂系防汚塗料などが好ましく用いられる。本発明の防食塗料組成物から形成される防食塗膜は、同系のエポキシ樹脂系塗料に対しても、また、異系の塗料に対しても優れた密着性を示すことができる。なお、本発明の防食塗料組成物は、上塗り層の形成のために用いられてもよい。この場合、上塗り層の乾燥膜厚は、通常、10〜300μm程度とされる。
【0069】
本発明の防食塗料組成物は、旧塗膜に対して塗装しても優れた密着性を発揮することができる。その理由は明確ではないが、シランカップリング剤(c)のシラノール基が旧塗膜との付着を良好にするものと推定される。したがって、本発明の防食塗料組成物は、新設の被塗物に対しては勿論のこと、船舶や各種構造物が有する塗膜の補修用塗料としても好適に用いることができる。
【0070】
従来、たとえば船舶塗装においては、各塗装区画(バラストタンク、船底部、水線部、外舷部、デッキ、ホールド、居住区等)ごとにそれぞれ異なった防食塗料が用いられてきたが、本発明の防食塗料組成物によれば、高い防食性能を示し、各塗装区画に対して塗装される各種上塗り塗料に対して良好な密着性を示すことから、各塗装区画に適用される防食塗料の統一化を図ることができ、このことは、塗料の塗装回数および塗装作業時間の短縮をもたらす。また、本発明の防食塗料組成物は低温硬化性に優れるが、これにより、塗装作業時間の短縮を図ることが可能になるとともに、塗装時の温度環境(塗装される場所など)の制限を緩和することができる。
【0071】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
<実施例1〜10、比較例1〜3>
表1に示される配合処方に従い、配合成分を混合し、エポキシ樹脂を含む主剤および硬化剤をそれぞれ調製し、2液型防食塗料組成物を得た。表1に示される各配合成分の詳細は次のとおりである。
(1)ノボラック型エポキシ樹脂:「EPICLON 5270−80IX」(エポキシ当量260、大日本インキ化学工業社製)
(2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂:「エポトート YD 134X90」(エポキシ当量250、東都化成社製)
(3)シランカップリング剤(c):アルコキシシラン「DYNASYLAN GLYMO」(化学名:3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、EVONIK DEGUSSA社製)
(4)水酸基含有石油樹脂(d):水酸基含有石油樹脂「PM−100M」(1分子中の水酸基含有量0.1〜2.0、酸価2〜50(KOHmg/g)、軟化点100℃、東邦化学社製)
(5)アクリレート化合物(e):「アロニックス M−305」(化学名:ペンタエリスリトールトリアクリレート、東亜合成社製)
(6)タルク:「タルク DS34−N」(富士タルク工業(株)製)
(7)バリタ:「簸性硫酸バリウム BA」(堺化学工業(株)製)
(8)チタン白:「チタンR−820」(堺化学工業(株)製)
(9)オーカー:「TAROX 合成酸化鉄 LL−XLO」(森下産業(株)製)
(10)カーボンブラック:「カーボン MA100」(三菱化成製)
(11)タレ止め剤:「ディスパロン6700:アマイドワックス」(楠本化成(株)製)
(12)マンニッヒ型硬化剤(b−1):「SUNMIDE CX−1151」(マンニッヒ変性ポリアミン、アミン価180、活性水素当量250、エアープロダクツ社製)
(13)マンニッヒ型硬化剤(b−2):「LX−5406」(マンニッヒ変性ポリアミン、アミン価202、活性水素当量300、CARDOLITE社製)
上記実施例および比較例で得られた2液型防食塗料組成物の主剤と硬化剤とを表1に示される割合で混合し、十分に攪拌、均一化させることにより、防食塗料組成物を得た。得られた各実施例および比較例の防食塗料組成物について、以下の評価試験を行なった。試験結果を表2に示す。
【0073】
[1]乾燥性(硬化性)評価試験
まず、グリッドブラスト鋼板(7cm×15cm×3.2mm)に、日本ペイントマリン(株)製の無機ジンクショッププライマー(商品名「セラモ」)を、その乾燥塗膜厚が約15μmとなるように塗装し、7日間乾燥させることにより、プライマー処理鋼板を複数作製した。次に、当該プライマー処理鋼板に、乾燥塗膜厚が約250μmとなるように、調製直後の上記防食塗料組成物を、エアスプレーを用いて塗装した。塗装後ただちに、プライマー処理鋼板を、それぞれ5℃、−10℃に設定された室内に放置して乾燥を開始した。一定時間経過後、塗膜表面を靴のカカトで踏み、全体重を約3秒間かけた。塗膜表面に靴跡が残らず、塗膜の移動および歪み等がなくなるまでの時間を乾燥時間とした。
【0074】
[2]ポットライフ
JIS K 5600−2−6に準拠し、15℃における防食塗料組成物のポットライフを測定した。
【0075】
[3]防食性評価試験
(a)40℃耐水性試験
まず、グリッドブラスト鋼板(7cm×15cm×3.2mm)に、日本ペイントマリン(株)製の無機ジンクショッププライマー(商品名「セラモ」)を、その乾燥塗膜厚が約15μmとなるように塗装し、7日間乾燥させることにより、プライマー処理鋼板を作製した。ついで、当該プライマー処理鋼板に、乾燥塗膜厚が約250μmとなるように、調製直後の上記防食塗料組成物を、エアスプレーを用いて塗装し、20℃×65%RHの雰囲気下で7日間乾燥させることにより各試験塗板を得た。次に、この各試験塗板を、40℃の水中に6ヶ月浸漬し、その後、塗膜のワレ・ハガレ、フクレの状態を目視で判定した。判定基準は、ワレ・ハガレ、フクレが全くない場合のワレ・ハガレ、フクレの発生面積を0%として、日本塗料検査協会「塗膜の評価基準」(1970)に準じて次のように設定した。また、6ヶ月浸漬後の塗膜のプライマー処理鋼板への付着力(MPa)をエルコメーター社製アドヒージョンテスターで測定した。
A:ワレ・ハガレ、フクレの発生面積が0%以上3%未満、
B:ワレ・ハガレ、フクレの発生面積が3%以上6%未満、
C:ワレ・ハガレ、フクレの発生面積が6%以上11%未満、
D:ワレ・ハガレ、フクレの発生面積が11%以上31%未満、
E:ワレ・ハガレ、フクレの発生面積が31%以上。
【0076】
(b)40℃耐塩水性試験
水の代わりに、3%食塩水を用いたこと以外は、上記40℃耐水性試験と同様にして試験を行ない、上記40℃耐水性試験と同じ判定基準にて塗膜のワレ・ハガレ、およびフクレの状態を目視で判定し、付着力(MPa)を測定した。
【0077】
(c)温度勾配試験
上記40℃耐水性試験と同様にして得られた試験塗板を、当該試験塗板の塗装面が40℃の温水に、裏面が20℃の水に接するように、浸漬槽中に14日間浸漬した後、上記40℃耐水性試験と同じ判定基準にて塗膜のワレ・ハガレ、およびフクレの状態を目視で判定した。
【0078】
[4]耐電気防食性評価試験(陰極防食試験)
まず、グリッドブラスト鋼板(7cm×15cm×3.2mm)に、日本ペイントマリン(株)製の無機ジンクショッププライマー(商品名「セラモ」)を、その乾燥塗膜厚が約15μmとなるように塗装し、7日間乾燥させることにより、プライマー処理鋼板を作製した。ついで、当該プライマー処理鋼板に、乾燥塗膜厚が約250μmとなるように、調製直後の上記防食塗料組成物を、エアスプレーを用いて塗装し、23℃×65%RHの雰囲気下で7日間乾燥させることにより各試験塗板を得た。この試験塗板を用いて、ASTM G8−90に準じて試験を行ない、評価した。すなわち、まず当該試験塗板の試験面(塗装面)の浸漬部分の中央に6.3mmφのドリルの刃を用いて6.3mmφ大の素地露出部を形成した板を作製した。ついで、この板を、NaCl、Na2SO4およびNa2CO3をそれぞれ1重量%含む水溶液に常温で浸漬し、1.5Vの電位をかけ、3ヶ月後の素地露出部周辺のフクレの状態を目視で判定し、また、素地露出部からの塗膜の剥離部の長さ(mm)を測定した。フクレの状態の判定基準は、フクレが全くない場合のフクレの発生面積を0%として、日本塗料検査協会「塗膜の評価基準」(1970)に準じて次のように設定した。
A:フクレの発生面積が0%以上3%未満、
B:フクレの発生面積が3%以上6%未満、
C:フクレの発生面積が6%以上11%未満、
D:フクレの発生面積が11%以上31%未満、
E:フクレの発生面積が31%以上。
【0079】
[5]上塗り密着性評価試験
まず、グリッドブラスト鋼板(7cm×15cm×3.2mm)に、日本ペイントマリン(株)製の無機ジンクショッププライマー(商品名「ニッペセラモ」)を、その乾燥塗膜厚が約15μmとなるように塗装し、7日間乾燥させることにより、プライマー処理鋼板を作製した。ついで、当該プライマー処理鋼板に、乾燥塗膜厚が約250μmとなるように、調製直後の上記防食塗料組成物を、エアスプレーを用いて塗装し、20℃×65%RHの雰囲気下で7日間乾燥させることにより試験塗板を得た。試験塗板は、各実施例および各比較例につき、5枚用意した。ついで、これらの試験塗板を屋外暴露させ、一定期間のインターバルを設けた後、5枚の試験塗板のそれぞれに、上塗り塗料として、(a)同種塗料(防食塗料組成物と同一の塗料)(乾燥塗膜厚125μm)、(b)エポキシ樹脂塗料「ニッペエポキシM上塗り(日本ペイント社製)」(乾燥塗膜厚80μm)、(c)塩化ゴム樹脂塗料「ラバコート上塗り(日本ペイント社製)」(乾燥塗膜厚30μm)、(d)ウレタン樹脂塗料「ポリウレマイティーラックM上塗り(日本ペイント社製)」(乾燥塗膜厚30μm)、および(e)アクリル樹脂防汚塗料「エコロフレックスSPC 200(日本ペイント社製)」(乾燥塗膜厚100〜150μm)をスプレーにより塗布した。
【0080】
次に、上塗り塗料(a)〜(d)を塗装した塗板を、室内にて7日間乾燥させた。ついで、JIS K 5400耐湿性試験に準じて、24時間恒湿乾燥下に放置した後、取り出し5分後に、JIS K 5400碁盤目法を、隙間間隔5mm、マス目数9にて行ない、上塗り密着性を評価した。評価基準は、次のとおりである(10点満点)。
A:8点以上、B:5〜7点、C:2〜4点、D:1点以下。
【0081】
また、上塗り塗料(e)を塗装した塗板を、室内にて24時間乾燥させた。ついで、この塗板を実海水に6ヶ月浸漬し、取り出し直後に、JIS K 5400碁盤目法を、隙間間隔5mm、マス目数9にて行ない、上塗り密着性を評価した。評価基準は、上記と同じである。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むエポキシ樹脂(a)と、
不飽和置換基含有フェノール類と、アルデヒド類と、アミン化合物とのマンニッヒ縮合反応物であるマンニッヒ型硬化剤(b)と、
アルコキシシラン化合物であるシランカップリング剤(c)と、
水酸基含有石油樹脂(d)と、
3官能以上のアクリレート化合物(e)と、
を含む防食塗料組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、1.0〜7.0重量部の前記シランカップリング剤(c)を含有する請求項1に記載の防食塗料組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、10〜100重量部の前記水酸基含有石油樹脂(d)を含有する請求項1または2に記載の防食塗料組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、2.0〜22重量部の前記3官能以上のアクリレート化合物(e)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の防食塗料組成物。
【請求項5】
防食塗料組成物の固形分に対して着色顔料を0.01〜3容量%含有する請求項1〜4のいずれかに記載の防食塗料組成物。
【請求項6】
白色度が85以上の体質顔料をさらに含有する請求項5に記載の防食塗料組成物。
【請求項7】
少なくとも前記エポキシ樹脂(a)および前記3官能以上のアクリレート化合物(e)を含有する主剤と、少なくとも前記マンニッヒ型硬化剤(b)を含む硬化剤とからなる2液型の塗料組成物である請求項1〜6のいずれかに記載の防食塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の防食塗料組成物からなる防食塗膜と、前記防食塗膜上に積層された上塗り塗料または防汚塗料からなる塗膜とを備える複層塗膜。
【請求項9】
請求項8に記載の複層塗膜を備える船舶または海洋構造物。

【公開番号】特開2010−24408(P2010−24408A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190719(P2008−190719)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(597091890)日本ペイントマリン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】