降下物検出装置
【課題】簡易な構造で降下物の存在を検出することの可能な降下物検出装置を実現する。
【解決手段】本発明の降下物検出装置は、カメラ1と、該カメラに対向配置される無地の表面を備えた背景板2と、カメラ側から前記背景板2の前記表面を照明する光源3と、前記カメラ1の出力信号を処理する信号処理部と、を備え、該信号処理部は、前記カメラの出力信号に含まれる降下物からの反射信号成分を浮動2値化によりパルス化する浮動2値化回路4を有することを特徴とする。
【解決手段】本発明の降下物検出装置は、カメラ1と、該カメラに対向配置される無地の表面を備えた背景板2と、カメラ側から前記背景板2の前記表面を照明する光源3と、前記カメラ1の出力信号を処理する信号処理部と、を備え、該信号処理部は、前記カメラの出力信号に含まれる降下物からの反射信号成分を浮動2値化によりパルス化する浮動2値化回路4を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雪等の降下物を検知する装置に係り、特に、降雪を検知して屋根に設置されたヒータにより受雪面を加熱することにより融雪するシステムに用いる場合に好適な降下物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の降雪センサの構成を図10に示す(特許文献1参照)。この動作原理を同図を用いて説明する。図10においてアーム端面には投光のための投光ファイバー端が配置されており同時に受光のための受光ファイバー端が設置されている。投光ファイバーから出た光は、投光ファイバ及び受光ファイバ端面の高さまで下方から積雪があると雪中での透過、散乱を繰返しながら受光ファイバーに届く。受光ファイバに到達した光量があれば降雪により積雪ありとして検知するものである。また別の従来技術として図11に示すようなテレビカメラを用いビデオ信号処理により画像信号から雪片信号のみを検知する方法が知られている(特許文献2参照)。なおビデオ信号の2値化回路としては浮動閾値2値化回路(以下浮動2値化回路と記す)が知られている(特許文献3参照)。この浮動2値化回路は錠剤の表面に含まれる僅かな傷・しみ検出、換言すればビデオ信号中に含まれる高周波信号を高感度に検出するのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−10240号公報
【特許文献2】特開2001−13265号公報
【特許文献3】特公平1−24372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の降雪センサの1つの技術(特許文献1)である投光ファイバと受光ファイバを組み合わせ積雪により投光ファイバから出射された光が受光ファイバに到達したか否かで積雪を検知する方式は図10からも分かるように少なくもこれらファイバを納める腕(アーム)まで積雪がないと積雪を検知できなかった。すなわち積雪のない雪の降りはじめを検知できない換言すればセンサとしての感度が悪いという欠点があった。
【0005】
一方、別の従来技術であるテレビカメラを用いる方法(特許文献2)は図11に示すように回路が大変複雑である。テレビカメラ、テレビカメラ制御回路、フレーム差分画像作成回路、2値化回路、領域作成回路、形状特徴抽出回路、雪片候補抽出回路、重心算出回路、時空間距離計算回路、雪片抽出回路、雪片分布状態判定回路、降雪判定回路などのブロックに分かれておりいわゆる高度なパタン認識システムとなっている。そのためコストが高くなるという欠点があった。同時に部品点数も多くそのため信頼性に課題があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、簡易な構造で降下物の存在を検出することの可能な降下物検出装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の降下物検出装置は、カメラと、該カメラに対向配置される無地の表面を備えた背景板と、前記カメラ側から前記背景板の前記表面を照明する光源と、前記カメラの出力信号を処理する信号処理部と、を備え、前記信号処理部は、前記カメラの前記出力信号に含まれる降下物からの反射信号成分を浮動2値化によりパルス化する浮動2値化回路を有することを特徴とする。
【0008】
この場合に、前記信号処理部は、前記浮動2値化回路の出力のパルス数を一定期間積算するカウンタと、該カウンタの出力する積算値若しくはその平均値を所定の閾値と比較する判定手段と、をさらに有することが好ましい。
【0009】
また、前記信号処理部は、前記浮動2値化回路の出力のパルス数を一定期間積算するカウンタと、前記光源から照射された光の有無による前記カウンタの出力する積算値若しくはその平均値の差を所定の閾値と比較する判定手段と、をさらに有することが好ましい。照明光の有無による出力差が小さい場合には降下物に起因しない原因、例えば、背景板の汚れや外光のゆらぎ等で検出出力が得られているとすることで、降下物の有無や融雪用ヒータの駆動の有無等の判断をより確実に行うことができる。
【0010】
さらに、前記背景板の表面は屏風状に屈折して構成され、前記光源から照射された光の前記背景板の表面による正反射光が直接前記カメラへ向かう方向から逸れるように構成されることが好ましい。
【0011】
この場合において、前記背景板の表面において前記屏風状の稜線ラインあるいは谷底ラインの線幅を前記カメラの該ラインと交差する方向の分解能以下の線幅に構成することが望ましい。
【0012】
また、前記カメラの少なくとも撮影方向前面が透明ヒータ付きガラスで構成された窓部で覆われることが好ましい。
【0013】
この場合に、前記窓部は前記透明ヒータ付きガラスに光触媒作用のあるガラスを重ねて構成され、該光触媒ガラスが外側へ露出する態様で設置されることが望ましい。
【0014】
さらに、前記カメラの焦点位置を前記背景板の表面よりもカメラ側にセットすることが好ましい。
【0015】
また、前記背景板は無地黒色の前記表面を備えるとともに、複数の前記光源が分散配置されることが好ましい。黒色の背景を用いることで降下物特に降雪をより検出しやすくなるとともに、背景板の表面を複数の分散配置された光源により照明することで前記背景板からの反射光量分布がより均一になるので、降下物特に降雪を安定かつ確実に検知することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来技術による場合に比べて低コストであり高信頼性を備えかつ高感度な降下物検出装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の降下物検出装置を使用した融雪システムの構成を示す図。
【図2】本発明の降下物検出装置の浮動2値化回路のブロック図。
【図3】本発明の降下物検出装置の浮動2値化回路。
【図4】本発明の2値化回路の動作を示す図。
【図5】本発明の信号処理の動作を示す図。
【図6】背景板の第2の実施例。
【図7】背景板を第2の実施例テレビカメラとともに示した平面図。
【図8】背景板の第2の実施例の動作を説明するための図。
【図9】本発明の降雪の判断のためのCPUのフローチャート。
【図10】投受光ファイバを用いた従来の降下物検出装置を用いた融雪システムを示す図。
【図11】画像処理技術を用いた従来の降下物検出装置のシステム回路ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。本実施形態は、図1に示すように、撮像手段を構成するカメラ1と、このカメラ1の撮影範囲内に少なくとも一部が対向配置された背景板2と、カメラ1による撮影画像を処理する信号処理部とを備えている。
【0019】
本実施形態は、雪片を検出するための撮像手段であるカメラ1(例えば、モノクロテレビカメラ、ビデオカメラなど)と、カメラ1の画像信号の雪片以外の画像信号をほぼ一定レベルにするための無地黒色の背景板2と、背景板2に向かって投光し降雪があれば雪片からの反射信号をカメラに入射させるための近赤外光源で構成される投光器(光源)3と、投光器3(近赤外光源)を駆動するための駆動回路と、カメラ1の出力のビデオ信号に含まれる雪片信号を2値化(1または0のデジタル信号化)するための2値化回路であって該2値化回路は投光器の光源の経時変化などを考慮し所謂固定閾値ではなく浮動点である浮動2値化回路4と、この浮動2値化回路4の出力パルス信号PFを積算計数するための第1積算カウンタ5及び第2積算カウンタ6と、カメラ1から出力されるビデオ信号より垂直同期信号を分離検出するための同期信号分離回路7と、該同期信号分離検出回路7から得られる垂直同期信号を1/2の周波数に分周するものであって、Q出力とQバー出力が前記それぞれ第1積算カウンタ5及び第2積算カウンタ6の積算時間を決定しかつQ出力の立ち上がりとQバー出力の立ち上がりがそれぞれ第1積算カウンタ5及び第2積算カウンタ6をリセットするように作用する1/2分周回路8と、該1/2分周回路8のQ出力とパルス信号PFと後述の第1NAND回路9の出力とのアンドを取りその出力を第1積算カウンタ5に入力させるための第1アンド回路11と、Qバー出力パルス信号PFと後述の第2NAND回路10の出力とのアンドを取りその出力を第2積算カウンタ6に入力させるための第2アンド回路12と、第1積算カウンタ5の出力に接続されカウンタが最大計数値以上のパルスが入力されても計数値が変化しないようにするための第1NAND回路9と、第2積算カウンタ6の出力に接続されカウンタが最大計数値以上のパルスが入力されても計数値が変化しないようにするための第2NAND回路10と、これら積算カウンタの積算データ及び後述する操作スイッチ14のデータを後述する演算手段15(CPU)に入力するとともに、検出出力をヒータ駆動回路に出力する入出力回路(I/O)13と、これらの1垂直期間内に積算されたパルス数を更に所定のNA垂直期間だけ積算するためのNA値を人間が設定できるようにし、降雪の有無を決定するためのパルス数の閾値を人間が設定できるようにする閾値(デジタル値)設定用の操作スイッチ14と、上記NA値に基づき前記積算をNA垂直期間積算し該積算値が降雪の有無の判定基準NSとの比較により判断する演算手段(CPU)15と、上記検出出力によって制御され、融雪用ヒータを駆動するヒータ駆動回路と、を備えている。
【0020】
図9は降雪の有無判断のためのフローチャートである。図9に示すように、まず初期設定としてデータを平均するための平均化回数NAと降雪有無判断閾値NSを図1に示す操作スイッチ14(DIPコードスイッチ)により設定する。図1に示す同期信号分離検出回路7により垂直同期信号が分離出力されこの信号が同図の分周回路8により垂直同期信号の周波数の1/2の周波数であってかつHigh及びLowの時間が同一の矩形信号に変換される。浮動2値化回路から得られるパルス信号PFは分周回路8の出力Q、Qバーそれぞれと同図に示す第1AND回路11及び第2AND回路12によりANDをとって第1積算カウンタ5及び第2積算カウンタ6に入力され、これらのカウンタにより積算計数される。なおこれらのAND回路11,12の入力にはAND条件として積算カウンタが計数可能な最大値になったことを積算カウンタの出力に接続されている第1NAND回路9及び第2NAND回路10によりチェックされ、それ以上はカウントアップされないようになっている。QとQバーはそれぞれ第2積算カウンタ6及び第1積算カウンタ6のデータである積算計数値SUM1、SUM2がCPU15が読取可能なE1及びE2信号として入出力回路(I/O)13に入力されると、前記積算計数値SUM1、SUM2はCPU15で読み取られメモリに記憶される。積算計数値SUM1、SUM2をNA回測定しその和の平均値SUMAが初期設定値の降雪有無判断閾値NSと比較し大きければ降雪有、小さければ降雪なしと判断し降雪有/無信号を出力する。なお第1及び第2積算カウンタ5,6はQとQバーの立ち上がりのタイミングでリセットされる。図9に示すようにこの一連のフローは繰り返し電源が切断されるまで続けられる。図5はこれをタイムチャートで示したものである。
【0021】
外乱光の影響を避けるため近赤外光源を消灯させた状態で降雪有/無信号は出力せずにNA回、上述のフローを繰り返し実行しここで得られる平均値SUMADと、近赤外光源を点灯させた状態で降雪有/無信号は出力せずにNA回、上述のフローを繰り返し実行しここで得られる平均値SUMAHとの差が一定値以上で降雪有、一定値以下で降雪無と判断するようにCPUのソフトを構成してもよいことは明らかである。
【0022】
非降雪時には背景板2の表面に対応するビデオ信号が2値化される。この背景板2の表面に対応するビデオ信号は背景板2の色調に濃淡の変化が無いために近赤外光源からの照射光の強度変化に対応した変化があるだけである。すなわち背景板2上の照射強度分布は略一定になるように投光器3(近赤外光源)には分散配置された複数の発光ダイオードが用いられておりビデオ信号にはほとんど変化がなく、したがって、背景板2が無い場合に生じる背景の画像の影響を受けない。
【0023】
ビデオ信号から雪片だけの反射光がえられれば雪片に対応するパルス数がより正確にカウントできるため背景板2からの反射光は少ないほど良い。このため投光器3からの光が背景板2で正反射しカメラ1に入射しないように背景板2をつや消し黒色の仕上げにするか、あるいは図6、図7、図8に示すように背景板を屏風のようにジグザグに折り曲げて投光器からの光が正反射光として入射しないようにする。図6は屏風構造の背景板とカメラ及び赤外光源と雪片を合わせて示した斜視図であり、図7は雪片は示していないがその平面図である。図8は図7の屏風構造の背景板付近の光線の様子を示した図であって光線が屏風構造の背景板で反射されるたびに拡散しテレビカメラに光線が戻ってくるときには近赤外光源からの直接生反射光は無いことを示す図である。屏風状に折れ曲がっている稜線ライン(図8のaに相当するライン)あるいは谷の底に当たるライン(図8のbに相当するライン)の線幅は可能な限り狭くすることが望ましい。正確にはこの線幅はテレビカメラの水平方向の分解能以下にすればこの線幅から反射してくる光は無視することができる。一般に水平方向のカメラの分解能は視野の1/500程度であるので水平方向の視野が例えば35cmの場合は700μm(=35cm/500)以下の線幅に製作すればよいことが分かる。この値は屏風型の背景板を製作する上でそれほど困難な数字ではない。また更に背景板の汚れがカメラのビデオ信号として観測された際、雪片の信号と紛らわしいいのでカメラのピントを背景板とカメラのレンズの中間に合わせるようにする。これにより多少の背景板の汚れは無視される。
【0024】
次に、本実施形態の光学系について述べる。降雪センサは夜間でも動作する必要があるため夜間にも光源は点灯していなければならない。しかし人間の目に見えると不自然であり環境に調和しない。このため光源には人間の目に見えない近赤外光(波長0.7〜2.5μm)を使用することが好ましい。ここで、撮像手段であるカメラ1にはCCD(チャージカップルドデバイス)を用いる。CCDはシリコンから成り立っており近赤外光に高い感度を持っている。この意味からも近赤外光の光源を用いるのは充分に妥当である。ちなみに本実施例では降雪センサの光源には980nmの中心波長をもつ発光ダイオード(香港Optosupply社のOSIR5113A)を用いた。またカメラ1には被写体までの最短撮像距離(ピントを合わすことのできるカメラレンズから被写体までの距離)約4cmのレンズを備えた1/3インチ27万画素CCD(台湾MINTRON社のMK-0323E)を用いた。このCCDを搭載するプリント板にはレンズ周辺に前記発光ダイオードが6個配置されている。これらは直流を供給することにより点灯させた。
【0025】
カメラレンズと背景板2までの距離は約20cmとした。このとき背景板2上でのカメラ1の視野は横35cm縦25cmである。このカメラ1は外部同期型ではなく内部同期型のカメラでありカメラを動作させるための駆動回路は不要である。またカメラ1はオートゲイン機能付きである。カメラ1から出力されるビデオ信号には同期信号と画像信号がミックスされている。背景板2にはつや消し黒の屏風状ではなく平面のダンボールを用いた。カメラ1から浮動2値化回路までの信号伝送ラインには特性インピーダンス75Ωの同軸ケーブルを用いた。なお本実施例に用いたカメラレンズの被写体深度は深いこともありピントは前述したようなレンズから背景板2までの距離20cmの中間に合わせるのではなく最短撮像距離の4cmの位置に合わせた。
【0026】
図1に示すように、上記信号処理部は、上記カメラ1による撮影画像を2値化する浮動2値化回路4を備えている。以下に試作した浮動2値化回路について述べる。この浮動2値化回路は雪片を検知するために重要な作用をする。一般にビデオ信号の2値化回路には固定閾値をもった固定閾値2値化回路と、原信号を遅延させグランドに対して減衰させた信号を閾値とする浮動2値化回路とが知られている(特許文献3)。固定閾値2値化回路は簡単であるが電源変動あるいは経年による光源の光量変化に敏感であり安定した2値化信号を得るには適していない。一方浮動2値化回路は多少複雑になるがこれらの光量変化に対しては鈍感で安定した2値化信号を得るのに適している。その上で浮動2値化回路はビデオ信号の中に含まれる比較的高周波の信号を高感度に検出できる特性があることはよく知られている(特許文献3)。本発明では雪片がテレビカメラの視野の中では数多く写ることからビデオ信号としては比較的高周波のビデオ信号になることを考慮してこの浮動2値化回路を2値化回路に選んだ。
【0027】
図2は本発明に用いた浮動2値化回路4のブロック図である。回路は図2に示すようにテレビカメラからの信号を同軸ケーブル経由演算増幅器(アナログデバイセズ社AD818AN)で受信する。同軸ケーブルの特性インピーダンスZ1(75Ω)と浮動2値化のための遅延素子(JPC社VCD150NP)の特性インピーダンスZ2(500Ω)は異なるためインピーダンス変換が必要である。このインピーダンス変換のためと信号増幅のために上記演算増幅器を用いた。演算増幅器の入力インピーダンスは近似的に無限大と見なしえるので同軸ケーブルの終端を該同軸ケーブルの特性インピーダンスZ1(75Ω)で終端しインピーダンス整合をとる。この終端インピーダンスの両端に現れるビデオ信号VSは前記演算増幅器で増幅されたのち次段に伝送される。該演算増幅器の出力インピーダンスは近似的に零とみなせるため演算増幅器の出力に上記遅延素子の特性インピーダンスのZ2(500Ω)を接続し該インピーダンスの他端を遅延素子に接続した。遅延素子の出力端子はアースとの間に遅延素子の特性インピーダンスZ2(500Ω)をもつポテンショメータで終端した。このポテンショメータの中間タップのアース電位に対する信号V1はビデオ信号VSが前記演算増幅器により増幅された後、遅延されアースに対して減衰された信号であって遅延減衰信号と呼ぶ。更にビデオ信号VSが演算増幅器により増幅された後その出力はアースに対して1/2に減衰されるよう1/2減衰器が接続される。1/2減衰器の出力V2を減衰信号と呼ぶ。なおポテンショメータの両端の信号は遅延線でインピーダンスマッチングが取られているため演算増幅器の出力電圧の半分の値になっていることは言うまでもない。
【0028】
信号V1とV2はシュミット回路(アナログデバイセズ社AD8561)で比較される。雪片が画像信号として捕らえられるとシュミット回路からは浮動2値化パルスPFが出力される。図4はその様子を示すタイムチャートである。同図において信号V1とV2の大小関係が雪片部分で 逆転するためにPF信号が出力されているのが分かる。また同期信号によってもV1とV2の大小関係が逆転するためにPF信号が出力される。実際の浮動2値化回路を図3に示す。
【0029】
浮動2値化パルスPFを用い降雪と降雪でない場合をどのように判定するかについては図1、図5及び図9を用いてすでに述べたとおりである。ここではカメラ1、投光器(赤外光源)の駆動回路、及び浮動2値化回路4を除くデジタル信号処理系について記載する。同期信号分離検出回路7には新日本無線株式会社製NJM2229を、1/2分周回路8にはテキサスインスツルメンツ社製デュアル4ビットバイナリカウンタSN74LV393A-Q1を、積算カウンタ5,6にはテキサスインスツルメンツ社製4ビットシンクロナスバイナリカウンタSN74LV163Aを、操作スイッチ14(DIPコードスイッチ)にはKEL社製KDS16-112-Fを、演算手段であるCPU(ワンチップマイクロコンピュ−タ)には株式会社ルネサステクノロジー製8ビットワンチップマイコンH8/300を用いることができる。ここで後述するように積算カウンタ5,6のパルス計数値は僅かな小雪の降雪で1分間約200万パルス程度である。従って1垂直期間では3万3千パルスとなる。余裕をみて200万パルス程度が1垂直期間の最高パルス数とすればこのSN74LV163Aを5個カスケードに接続し使用する形の 20ビット構成とすればよい。なおこの数以上のパルスが入力した場合は前記したように、積算カウンタ出力の全てのNAND条件をとりこれを図1に示すように該カウンタの入力側のAND回路の1つの入力とすることで積算カウンタはカウントアップしないようにする。図示はしていないが降雪センサの信号処理部は勿論、電源投入時に回路リセットが行われるようになっている。
【0030】
直径約7mmの紙で作成した模擬雪片をカメラ視野内に約40個均等になるよう透明なプラスチック板に張り付けこの透明プラスチック板を背景板2とカメラ1の中間に配置し45cm/秒の速度でリニアモータにより往復運動させ、模擬的に雪片検出実験を行った。その結果降雪無しでかつ昼の明るさに対応するよう室内の蛍光灯を点灯させた場合は185万パルス/分(513パルス/1垂直期間)、蛍光灯を消灯した夜間二対応した実験の場合には150万パルス/分(416パルス/1垂直期間)のデータが得られた。これに対し上記模擬雪片をリニアモータで動かし降雪時を模擬した昼相当の実験では313万パルス/分(869パルス/1垂直期間)、夜間相当の実験では317万パルス/分(880パルス/1垂直期間)のデータを得ることができた。カッコ内は積算計数値の1垂直期間の平均値SUMAである。実験確認により降雪有と降雪無でこのように明らかな差が得られた。従って例えば降雪有無判断閾値NSを600パルス/1垂直期間程度に設定すれば降雪有無を判定できることが分かる。なおこのように1垂直期間に相当する平均パルス数を求めず所定のNA垂直期間の総合計パルス数で降雪の有無を判定しても良いことは自明である。
【0031】
実際にはカメラ1は図1には示していないが箱にいれて屋外2に背景板とともに設置することになる。カメラ1の前面は勿論ガラスで覆い直接レンズにゴミ、雪などが付着しないようにする。特に雪が箱前面のガラスに付着すると降雪センサとしては正常な動作をしないことになる。カメラ1自身の消費電力は2.1Wであるため箱の内部の温度はある程度外気温よりも高くなる。これによりガラス前面に付着した雪は融雪する可能性もあるが、更にこれを確実にするためガラス板付近に別途ヒータを置くかあるいは透明ヒータと一体に成った透明ガラスヒータ(栄光電器株式会社製 Warm Glass)を用いても良いことは明らかである。背景板2の裏面にもヒータを配置し背景板2に雪が付着しないようにすれば降雪時の降雪検知の精度を劣化させずにすむことは言うまでも無い。更に前記Warm Glassと光触媒クリーニングガラス(日本板硝子株式会社製クリアテクト)を張り合わせ光触媒クリーニングガラスを外気に触れるように配置すれば光触媒の作用により外気に触れるガラス面は汚れにくく降雪検知の精度維持に効果がある。
【0032】
本実施形態では、以上説明したように、背景板を用い背景を単純化することにより従来術(特許文献2)のように複雑な画像処理回路を用いないので部品点数も少なく従って高い信頼性と低コスト性を兼ね備えた降下物検出装置を実現できる。例えば積算カウンタ2個を用いたため17ミリ秒の1垂直期間で積算カウンタの積算データをCPU は読み込めばよく高価な高速CPUではなく安価なワンチップマイコンでも平均化処理ができることからも特許文献2よりも低コストに降下物検出装置を実現できることは明らかである。また特許文献1のように一定の積雪がなければ検知できないものではなく降雪の開始を検知できる。すなわち特許文献1に示す方法よりも高感度な降下物検出装置を実現できる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、その技術思想の範囲内で種々変更することが可能である。たとえば、上記実施形態ではビデオカメラを用い、ビデオカメラが出力するビデオ信号を処理するようにしているが、静止画を撮影して静止画像データを出力するスチルカメラであっても同様の処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は降雪を検知する場合の他に、降雨の観測や、火山灰の検出による活火山の活動の監視などへの利用も可能と考えられる。黄砂、花粉の監視への適用の可能性、さらには雨は雪より速く落下することから雨と雪の区分けの可能性も秘めている。いずれにしても種々の降下物を容易かつ確実に検知することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 (内部同期型)カメラ
2 背景板
3 投光器(近赤外光源)
4 浮動2値化回路
5 第1積算カウンタ(積算カウンタ1)
6 第2積算カウンタ(積算カウンタ2)
7 同期信号分離検出回路
8 1/2分周回路
9 第1NAND回路(NAND回路1)
10 第2NAND回路(NAND回路2)
11 第1AND回路(AND回路1)
12 第2AND回路(AND回路2)
13 入出力回路(I/O)
14 操作スイッチ(デジタル値設定用スイッチ)
15 演算手段(CPU)
NS 降雪の有無の判定基準パルス数
NA 浮動2値化回路の出力パルス数を平均化するための1垂直期間の数
PF 浮動2値化回路の出力パルス信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雪等の降下物を検知する装置に係り、特に、降雪を検知して屋根に設置されたヒータにより受雪面を加熱することにより融雪するシステムに用いる場合に好適な降下物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の降雪センサの構成を図10に示す(特許文献1参照)。この動作原理を同図を用いて説明する。図10においてアーム端面には投光のための投光ファイバー端が配置されており同時に受光のための受光ファイバー端が設置されている。投光ファイバーから出た光は、投光ファイバ及び受光ファイバ端面の高さまで下方から積雪があると雪中での透過、散乱を繰返しながら受光ファイバーに届く。受光ファイバに到達した光量があれば降雪により積雪ありとして検知するものである。また別の従来技術として図11に示すようなテレビカメラを用いビデオ信号処理により画像信号から雪片信号のみを検知する方法が知られている(特許文献2参照)。なおビデオ信号の2値化回路としては浮動閾値2値化回路(以下浮動2値化回路と記す)が知られている(特許文献3参照)。この浮動2値化回路は錠剤の表面に含まれる僅かな傷・しみ検出、換言すればビデオ信号中に含まれる高周波信号を高感度に検出するのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−10240号公報
【特許文献2】特開2001−13265号公報
【特許文献3】特公平1−24372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の降雪センサの1つの技術(特許文献1)である投光ファイバと受光ファイバを組み合わせ積雪により投光ファイバから出射された光が受光ファイバに到達したか否かで積雪を検知する方式は図10からも分かるように少なくもこれらファイバを納める腕(アーム)まで積雪がないと積雪を検知できなかった。すなわち積雪のない雪の降りはじめを検知できない換言すればセンサとしての感度が悪いという欠点があった。
【0005】
一方、別の従来技術であるテレビカメラを用いる方法(特許文献2)は図11に示すように回路が大変複雑である。テレビカメラ、テレビカメラ制御回路、フレーム差分画像作成回路、2値化回路、領域作成回路、形状特徴抽出回路、雪片候補抽出回路、重心算出回路、時空間距離計算回路、雪片抽出回路、雪片分布状態判定回路、降雪判定回路などのブロックに分かれておりいわゆる高度なパタン認識システムとなっている。そのためコストが高くなるという欠点があった。同時に部品点数も多くそのため信頼性に課題があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、簡易な構造で降下物の存在を検出することの可能な降下物検出装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の降下物検出装置は、カメラと、該カメラに対向配置される無地の表面を備えた背景板と、前記カメラ側から前記背景板の前記表面を照明する光源と、前記カメラの出力信号を処理する信号処理部と、を備え、前記信号処理部は、前記カメラの前記出力信号に含まれる降下物からの反射信号成分を浮動2値化によりパルス化する浮動2値化回路を有することを特徴とする。
【0008】
この場合に、前記信号処理部は、前記浮動2値化回路の出力のパルス数を一定期間積算するカウンタと、該カウンタの出力する積算値若しくはその平均値を所定の閾値と比較する判定手段と、をさらに有することが好ましい。
【0009】
また、前記信号処理部は、前記浮動2値化回路の出力のパルス数を一定期間積算するカウンタと、前記光源から照射された光の有無による前記カウンタの出力する積算値若しくはその平均値の差を所定の閾値と比較する判定手段と、をさらに有することが好ましい。照明光の有無による出力差が小さい場合には降下物に起因しない原因、例えば、背景板の汚れや外光のゆらぎ等で検出出力が得られているとすることで、降下物の有無や融雪用ヒータの駆動の有無等の判断をより確実に行うことができる。
【0010】
さらに、前記背景板の表面は屏風状に屈折して構成され、前記光源から照射された光の前記背景板の表面による正反射光が直接前記カメラへ向かう方向から逸れるように構成されることが好ましい。
【0011】
この場合において、前記背景板の表面において前記屏風状の稜線ラインあるいは谷底ラインの線幅を前記カメラの該ラインと交差する方向の分解能以下の線幅に構成することが望ましい。
【0012】
また、前記カメラの少なくとも撮影方向前面が透明ヒータ付きガラスで構成された窓部で覆われることが好ましい。
【0013】
この場合に、前記窓部は前記透明ヒータ付きガラスに光触媒作用のあるガラスを重ねて構成され、該光触媒ガラスが外側へ露出する態様で設置されることが望ましい。
【0014】
さらに、前記カメラの焦点位置を前記背景板の表面よりもカメラ側にセットすることが好ましい。
【0015】
また、前記背景板は無地黒色の前記表面を備えるとともに、複数の前記光源が分散配置されることが好ましい。黒色の背景を用いることで降下物特に降雪をより検出しやすくなるとともに、背景板の表面を複数の分散配置された光源により照明することで前記背景板からの反射光量分布がより均一になるので、降下物特に降雪を安定かつ確実に検知することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来技術による場合に比べて低コストであり高信頼性を備えかつ高感度な降下物検出装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の降下物検出装置を使用した融雪システムの構成を示す図。
【図2】本発明の降下物検出装置の浮動2値化回路のブロック図。
【図3】本発明の降下物検出装置の浮動2値化回路。
【図4】本発明の2値化回路の動作を示す図。
【図5】本発明の信号処理の動作を示す図。
【図6】背景板の第2の実施例。
【図7】背景板を第2の実施例テレビカメラとともに示した平面図。
【図8】背景板の第2の実施例の動作を説明するための図。
【図9】本発明の降雪の判断のためのCPUのフローチャート。
【図10】投受光ファイバを用いた従来の降下物検出装置を用いた融雪システムを示す図。
【図11】画像処理技術を用いた従来の降下物検出装置のシステム回路ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。本実施形態は、図1に示すように、撮像手段を構成するカメラ1と、このカメラ1の撮影範囲内に少なくとも一部が対向配置された背景板2と、カメラ1による撮影画像を処理する信号処理部とを備えている。
【0019】
本実施形態は、雪片を検出するための撮像手段であるカメラ1(例えば、モノクロテレビカメラ、ビデオカメラなど)と、カメラ1の画像信号の雪片以外の画像信号をほぼ一定レベルにするための無地黒色の背景板2と、背景板2に向かって投光し降雪があれば雪片からの反射信号をカメラに入射させるための近赤外光源で構成される投光器(光源)3と、投光器3(近赤外光源)を駆動するための駆動回路と、カメラ1の出力のビデオ信号に含まれる雪片信号を2値化(1または0のデジタル信号化)するための2値化回路であって該2値化回路は投光器の光源の経時変化などを考慮し所謂固定閾値ではなく浮動点である浮動2値化回路4と、この浮動2値化回路4の出力パルス信号PFを積算計数するための第1積算カウンタ5及び第2積算カウンタ6と、カメラ1から出力されるビデオ信号より垂直同期信号を分離検出するための同期信号分離回路7と、該同期信号分離検出回路7から得られる垂直同期信号を1/2の周波数に分周するものであって、Q出力とQバー出力が前記それぞれ第1積算カウンタ5及び第2積算カウンタ6の積算時間を決定しかつQ出力の立ち上がりとQバー出力の立ち上がりがそれぞれ第1積算カウンタ5及び第2積算カウンタ6をリセットするように作用する1/2分周回路8と、該1/2分周回路8のQ出力とパルス信号PFと後述の第1NAND回路9の出力とのアンドを取りその出力を第1積算カウンタ5に入力させるための第1アンド回路11と、Qバー出力パルス信号PFと後述の第2NAND回路10の出力とのアンドを取りその出力を第2積算カウンタ6に入力させるための第2アンド回路12と、第1積算カウンタ5の出力に接続されカウンタが最大計数値以上のパルスが入力されても計数値が変化しないようにするための第1NAND回路9と、第2積算カウンタ6の出力に接続されカウンタが最大計数値以上のパルスが入力されても計数値が変化しないようにするための第2NAND回路10と、これら積算カウンタの積算データ及び後述する操作スイッチ14のデータを後述する演算手段15(CPU)に入力するとともに、検出出力をヒータ駆動回路に出力する入出力回路(I/O)13と、これらの1垂直期間内に積算されたパルス数を更に所定のNA垂直期間だけ積算するためのNA値を人間が設定できるようにし、降雪の有無を決定するためのパルス数の閾値を人間が設定できるようにする閾値(デジタル値)設定用の操作スイッチ14と、上記NA値に基づき前記積算をNA垂直期間積算し該積算値が降雪の有無の判定基準NSとの比較により判断する演算手段(CPU)15と、上記検出出力によって制御され、融雪用ヒータを駆動するヒータ駆動回路と、を備えている。
【0020】
図9は降雪の有無判断のためのフローチャートである。図9に示すように、まず初期設定としてデータを平均するための平均化回数NAと降雪有無判断閾値NSを図1に示す操作スイッチ14(DIPコードスイッチ)により設定する。図1に示す同期信号分離検出回路7により垂直同期信号が分離出力されこの信号が同図の分周回路8により垂直同期信号の周波数の1/2の周波数であってかつHigh及びLowの時間が同一の矩形信号に変換される。浮動2値化回路から得られるパルス信号PFは分周回路8の出力Q、Qバーそれぞれと同図に示す第1AND回路11及び第2AND回路12によりANDをとって第1積算カウンタ5及び第2積算カウンタ6に入力され、これらのカウンタにより積算計数される。なおこれらのAND回路11,12の入力にはAND条件として積算カウンタが計数可能な最大値になったことを積算カウンタの出力に接続されている第1NAND回路9及び第2NAND回路10によりチェックされ、それ以上はカウントアップされないようになっている。QとQバーはそれぞれ第2積算カウンタ6及び第1積算カウンタ6のデータである積算計数値SUM1、SUM2がCPU15が読取可能なE1及びE2信号として入出力回路(I/O)13に入力されると、前記積算計数値SUM1、SUM2はCPU15で読み取られメモリに記憶される。積算計数値SUM1、SUM2をNA回測定しその和の平均値SUMAが初期設定値の降雪有無判断閾値NSと比較し大きければ降雪有、小さければ降雪なしと判断し降雪有/無信号を出力する。なお第1及び第2積算カウンタ5,6はQとQバーの立ち上がりのタイミングでリセットされる。図9に示すようにこの一連のフローは繰り返し電源が切断されるまで続けられる。図5はこれをタイムチャートで示したものである。
【0021】
外乱光の影響を避けるため近赤外光源を消灯させた状態で降雪有/無信号は出力せずにNA回、上述のフローを繰り返し実行しここで得られる平均値SUMADと、近赤外光源を点灯させた状態で降雪有/無信号は出力せずにNA回、上述のフローを繰り返し実行しここで得られる平均値SUMAHとの差が一定値以上で降雪有、一定値以下で降雪無と判断するようにCPUのソフトを構成してもよいことは明らかである。
【0022】
非降雪時には背景板2の表面に対応するビデオ信号が2値化される。この背景板2の表面に対応するビデオ信号は背景板2の色調に濃淡の変化が無いために近赤外光源からの照射光の強度変化に対応した変化があるだけである。すなわち背景板2上の照射強度分布は略一定になるように投光器3(近赤外光源)には分散配置された複数の発光ダイオードが用いられておりビデオ信号にはほとんど変化がなく、したがって、背景板2が無い場合に生じる背景の画像の影響を受けない。
【0023】
ビデオ信号から雪片だけの反射光がえられれば雪片に対応するパルス数がより正確にカウントできるため背景板2からの反射光は少ないほど良い。このため投光器3からの光が背景板2で正反射しカメラ1に入射しないように背景板2をつや消し黒色の仕上げにするか、あるいは図6、図7、図8に示すように背景板を屏風のようにジグザグに折り曲げて投光器からの光が正反射光として入射しないようにする。図6は屏風構造の背景板とカメラ及び赤外光源と雪片を合わせて示した斜視図であり、図7は雪片は示していないがその平面図である。図8は図7の屏風構造の背景板付近の光線の様子を示した図であって光線が屏風構造の背景板で反射されるたびに拡散しテレビカメラに光線が戻ってくるときには近赤外光源からの直接生反射光は無いことを示す図である。屏風状に折れ曲がっている稜線ライン(図8のaに相当するライン)あるいは谷の底に当たるライン(図8のbに相当するライン)の線幅は可能な限り狭くすることが望ましい。正確にはこの線幅はテレビカメラの水平方向の分解能以下にすればこの線幅から反射してくる光は無視することができる。一般に水平方向のカメラの分解能は視野の1/500程度であるので水平方向の視野が例えば35cmの場合は700μm(=35cm/500)以下の線幅に製作すればよいことが分かる。この値は屏風型の背景板を製作する上でそれほど困難な数字ではない。また更に背景板の汚れがカメラのビデオ信号として観測された際、雪片の信号と紛らわしいいのでカメラのピントを背景板とカメラのレンズの中間に合わせるようにする。これにより多少の背景板の汚れは無視される。
【0024】
次に、本実施形態の光学系について述べる。降雪センサは夜間でも動作する必要があるため夜間にも光源は点灯していなければならない。しかし人間の目に見えると不自然であり環境に調和しない。このため光源には人間の目に見えない近赤外光(波長0.7〜2.5μm)を使用することが好ましい。ここで、撮像手段であるカメラ1にはCCD(チャージカップルドデバイス)を用いる。CCDはシリコンから成り立っており近赤外光に高い感度を持っている。この意味からも近赤外光の光源を用いるのは充分に妥当である。ちなみに本実施例では降雪センサの光源には980nmの中心波長をもつ発光ダイオード(香港Optosupply社のOSIR5113A)を用いた。またカメラ1には被写体までの最短撮像距離(ピントを合わすことのできるカメラレンズから被写体までの距離)約4cmのレンズを備えた1/3インチ27万画素CCD(台湾MINTRON社のMK-0323E)を用いた。このCCDを搭載するプリント板にはレンズ周辺に前記発光ダイオードが6個配置されている。これらは直流を供給することにより点灯させた。
【0025】
カメラレンズと背景板2までの距離は約20cmとした。このとき背景板2上でのカメラ1の視野は横35cm縦25cmである。このカメラ1は外部同期型ではなく内部同期型のカメラでありカメラを動作させるための駆動回路は不要である。またカメラ1はオートゲイン機能付きである。カメラ1から出力されるビデオ信号には同期信号と画像信号がミックスされている。背景板2にはつや消し黒の屏風状ではなく平面のダンボールを用いた。カメラ1から浮動2値化回路までの信号伝送ラインには特性インピーダンス75Ωの同軸ケーブルを用いた。なお本実施例に用いたカメラレンズの被写体深度は深いこともありピントは前述したようなレンズから背景板2までの距離20cmの中間に合わせるのではなく最短撮像距離の4cmの位置に合わせた。
【0026】
図1に示すように、上記信号処理部は、上記カメラ1による撮影画像を2値化する浮動2値化回路4を備えている。以下に試作した浮動2値化回路について述べる。この浮動2値化回路は雪片を検知するために重要な作用をする。一般にビデオ信号の2値化回路には固定閾値をもった固定閾値2値化回路と、原信号を遅延させグランドに対して減衰させた信号を閾値とする浮動2値化回路とが知られている(特許文献3)。固定閾値2値化回路は簡単であるが電源変動あるいは経年による光源の光量変化に敏感であり安定した2値化信号を得るには適していない。一方浮動2値化回路は多少複雑になるがこれらの光量変化に対しては鈍感で安定した2値化信号を得るのに適している。その上で浮動2値化回路はビデオ信号の中に含まれる比較的高周波の信号を高感度に検出できる特性があることはよく知られている(特許文献3)。本発明では雪片がテレビカメラの視野の中では数多く写ることからビデオ信号としては比較的高周波のビデオ信号になることを考慮してこの浮動2値化回路を2値化回路に選んだ。
【0027】
図2は本発明に用いた浮動2値化回路4のブロック図である。回路は図2に示すようにテレビカメラからの信号を同軸ケーブル経由演算増幅器(アナログデバイセズ社AD818AN)で受信する。同軸ケーブルの特性インピーダンスZ1(75Ω)と浮動2値化のための遅延素子(JPC社VCD150NP)の特性インピーダンスZ2(500Ω)は異なるためインピーダンス変換が必要である。このインピーダンス変換のためと信号増幅のために上記演算増幅器を用いた。演算増幅器の入力インピーダンスは近似的に無限大と見なしえるので同軸ケーブルの終端を該同軸ケーブルの特性インピーダンスZ1(75Ω)で終端しインピーダンス整合をとる。この終端インピーダンスの両端に現れるビデオ信号VSは前記演算増幅器で増幅されたのち次段に伝送される。該演算増幅器の出力インピーダンスは近似的に零とみなせるため演算増幅器の出力に上記遅延素子の特性インピーダンスのZ2(500Ω)を接続し該インピーダンスの他端を遅延素子に接続した。遅延素子の出力端子はアースとの間に遅延素子の特性インピーダンスZ2(500Ω)をもつポテンショメータで終端した。このポテンショメータの中間タップのアース電位に対する信号V1はビデオ信号VSが前記演算増幅器により増幅された後、遅延されアースに対して減衰された信号であって遅延減衰信号と呼ぶ。更にビデオ信号VSが演算増幅器により増幅された後その出力はアースに対して1/2に減衰されるよう1/2減衰器が接続される。1/2減衰器の出力V2を減衰信号と呼ぶ。なおポテンショメータの両端の信号は遅延線でインピーダンスマッチングが取られているため演算増幅器の出力電圧の半分の値になっていることは言うまでもない。
【0028】
信号V1とV2はシュミット回路(アナログデバイセズ社AD8561)で比較される。雪片が画像信号として捕らえられるとシュミット回路からは浮動2値化パルスPFが出力される。図4はその様子を示すタイムチャートである。同図において信号V1とV2の大小関係が雪片部分で 逆転するためにPF信号が出力されているのが分かる。また同期信号によってもV1とV2の大小関係が逆転するためにPF信号が出力される。実際の浮動2値化回路を図3に示す。
【0029】
浮動2値化パルスPFを用い降雪と降雪でない場合をどのように判定するかについては図1、図5及び図9を用いてすでに述べたとおりである。ここではカメラ1、投光器(赤外光源)の駆動回路、及び浮動2値化回路4を除くデジタル信号処理系について記載する。同期信号分離検出回路7には新日本無線株式会社製NJM2229を、1/2分周回路8にはテキサスインスツルメンツ社製デュアル4ビットバイナリカウンタSN74LV393A-Q1を、積算カウンタ5,6にはテキサスインスツルメンツ社製4ビットシンクロナスバイナリカウンタSN74LV163Aを、操作スイッチ14(DIPコードスイッチ)にはKEL社製KDS16-112-Fを、演算手段であるCPU(ワンチップマイクロコンピュ−タ)には株式会社ルネサステクノロジー製8ビットワンチップマイコンH8/300を用いることができる。ここで後述するように積算カウンタ5,6のパルス計数値は僅かな小雪の降雪で1分間約200万パルス程度である。従って1垂直期間では3万3千パルスとなる。余裕をみて200万パルス程度が1垂直期間の最高パルス数とすればこのSN74LV163Aを5個カスケードに接続し使用する形の 20ビット構成とすればよい。なおこの数以上のパルスが入力した場合は前記したように、積算カウンタ出力の全てのNAND条件をとりこれを図1に示すように該カウンタの入力側のAND回路の1つの入力とすることで積算カウンタはカウントアップしないようにする。図示はしていないが降雪センサの信号処理部は勿論、電源投入時に回路リセットが行われるようになっている。
【0030】
直径約7mmの紙で作成した模擬雪片をカメラ視野内に約40個均等になるよう透明なプラスチック板に張り付けこの透明プラスチック板を背景板2とカメラ1の中間に配置し45cm/秒の速度でリニアモータにより往復運動させ、模擬的に雪片検出実験を行った。その結果降雪無しでかつ昼の明るさに対応するよう室内の蛍光灯を点灯させた場合は185万パルス/分(513パルス/1垂直期間)、蛍光灯を消灯した夜間二対応した実験の場合には150万パルス/分(416パルス/1垂直期間)のデータが得られた。これに対し上記模擬雪片をリニアモータで動かし降雪時を模擬した昼相当の実験では313万パルス/分(869パルス/1垂直期間)、夜間相当の実験では317万パルス/分(880パルス/1垂直期間)のデータを得ることができた。カッコ内は積算計数値の1垂直期間の平均値SUMAである。実験確認により降雪有と降雪無でこのように明らかな差が得られた。従って例えば降雪有無判断閾値NSを600パルス/1垂直期間程度に設定すれば降雪有無を判定できることが分かる。なおこのように1垂直期間に相当する平均パルス数を求めず所定のNA垂直期間の総合計パルス数で降雪の有無を判定しても良いことは自明である。
【0031】
実際にはカメラ1は図1には示していないが箱にいれて屋外2に背景板とともに設置することになる。カメラ1の前面は勿論ガラスで覆い直接レンズにゴミ、雪などが付着しないようにする。特に雪が箱前面のガラスに付着すると降雪センサとしては正常な動作をしないことになる。カメラ1自身の消費電力は2.1Wであるため箱の内部の温度はある程度外気温よりも高くなる。これによりガラス前面に付着した雪は融雪する可能性もあるが、更にこれを確実にするためガラス板付近に別途ヒータを置くかあるいは透明ヒータと一体に成った透明ガラスヒータ(栄光電器株式会社製 Warm Glass)を用いても良いことは明らかである。背景板2の裏面にもヒータを配置し背景板2に雪が付着しないようにすれば降雪時の降雪検知の精度を劣化させずにすむことは言うまでも無い。更に前記Warm Glassと光触媒クリーニングガラス(日本板硝子株式会社製クリアテクト)を張り合わせ光触媒クリーニングガラスを外気に触れるように配置すれば光触媒の作用により外気に触れるガラス面は汚れにくく降雪検知の精度維持に効果がある。
【0032】
本実施形態では、以上説明したように、背景板を用い背景を単純化することにより従来術(特許文献2)のように複雑な画像処理回路を用いないので部品点数も少なく従って高い信頼性と低コスト性を兼ね備えた降下物検出装置を実現できる。例えば積算カウンタ2個を用いたため17ミリ秒の1垂直期間で積算カウンタの積算データをCPU は読み込めばよく高価な高速CPUではなく安価なワンチップマイコンでも平均化処理ができることからも特許文献2よりも低コストに降下物検出装置を実現できることは明らかである。また特許文献1のように一定の積雪がなければ検知できないものではなく降雪の開始を検知できる。すなわち特許文献1に示す方法よりも高感度な降下物検出装置を実現できる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、その技術思想の範囲内で種々変更することが可能である。たとえば、上記実施形態ではビデオカメラを用い、ビデオカメラが出力するビデオ信号を処理するようにしているが、静止画を撮影して静止画像データを出力するスチルカメラであっても同様の処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は降雪を検知する場合の他に、降雨の観測や、火山灰の検出による活火山の活動の監視などへの利用も可能と考えられる。黄砂、花粉の監視への適用の可能性、さらには雨は雪より速く落下することから雨と雪の区分けの可能性も秘めている。いずれにしても種々の降下物を容易かつ確実に検知することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 (内部同期型)カメラ
2 背景板
3 投光器(近赤外光源)
4 浮動2値化回路
5 第1積算カウンタ(積算カウンタ1)
6 第2積算カウンタ(積算カウンタ2)
7 同期信号分離検出回路
8 1/2分周回路
9 第1NAND回路(NAND回路1)
10 第2NAND回路(NAND回路2)
11 第1AND回路(AND回路1)
12 第2AND回路(AND回路2)
13 入出力回路(I/O)
14 操作スイッチ(デジタル値設定用スイッチ)
15 演算手段(CPU)
NS 降雪の有無の判定基準パルス数
NA 浮動2値化回路の出力パルス数を平均化するための1垂直期間の数
PF 浮動2値化回路の出力パルス信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラと、該カメラに対向配置される無地の表面を備えた背景板と、前記カメラ側から前記背景板の前記表面を照明する光源と、前記カメラの出力信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、前記カメラの前記出力信号に含まれる降下物からの反射信号成分を浮動2値化によりパルス化する浮動2値化回路を有することを特徴とする降下物検出装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記浮動2値化回路の出力のパルス数を一定期間積算するカウンタと、該カウンタの出力する積算値若しくはその平均値を所定の閾値と比較する判定手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の降下物検出装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記浮動2値化回路の出力のパルス数を一定期間積算するカウンタと、前記光源から照射された光の有無による前記カウンタの出力する積算値若しくはその平均値の差を所定の閾値と比較する判定手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の降下物検出装置。
【請求項4】
前記背景板の表面は屏風状に屈折して構成され、前記光源から照射された光の前記背景板の表面による正反射光が直接前記カメラへ向かう方向から逸れるように構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の降下物検出装置。
【請求項5】
前記背景板の表面において前記屏風状の稜線ラインあるいは谷底ラインの線幅を前記カメラの該ラインと交差する方向の分解能以下の線幅に構成することを特徴とする請求項4に記載の降下物検出装置。
【請求項6】
前記カメラの少なくとも撮影方向前面は透明ヒータ付きガラスで構成された窓部で覆われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の降下物検出装置。
【請求項7】
前記窓部は前記透明ヒータ付きガラスに光触媒作用のあるガラスを重ねて構成され、該光触媒ガラスが外側へ露出する態様で設置されることを特徴とする請求項6に記載の降下物検出装置。
【請求項8】
前記カメラの焦点位置を前記背景板の表面よりもカメラ側にセットしたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の降下物検出装置。
【請求項9】
前記背景板は無地黒色の前記表面を備えるとともに、前記背景板からの反射光量分布がより均一になるよう複数の前記光源が分散配置されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の降下物検出装置。
【請求項1】
カメラと、該カメラに対向配置される無地の表面を備えた背景板と、前記カメラ側から前記背景板の前記表面を照明する光源と、前記カメラの出力信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、前記カメラの前記出力信号に含まれる降下物からの反射信号成分を浮動2値化によりパルス化する浮動2値化回路を有することを特徴とする降下物検出装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記浮動2値化回路の出力のパルス数を一定期間積算するカウンタと、該カウンタの出力する積算値若しくはその平均値を所定の閾値と比較する判定手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の降下物検出装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記浮動2値化回路の出力のパルス数を一定期間積算するカウンタと、前記光源から照射された光の有無による前記カウンタの出力する積算値若しくはその平均値の差を所定の閾値と比較する判定手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の降下物検出装置。
【請求項4】
前記背景板の表面は屏風状に屈折して構成され、前記光源から照射された光の前記背景板の表面による正反射光が直接前記カメラへ向かう方向から逸れるように構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の降下物検出装置。
【請求項5】
前記背景板の表面において前記屏風状の稜線ラインあるいは谷底ラインの線幅を前記カメラの該ラインと交差する方向の分解能以下の線幅に構成することを特徴とする請求項4に記載の降下物検出装置。
【請求項6】
前記カメラの少なくとも撮影方向前面は透明ヒータ付きガラスで構成された窓部で覆われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の降下物検出装置。
【請求項7】
前記窓部は前記透明ヒータ付きガラスに光触媒作用のあるガラスを重ねて構成され、該光触媒ガラスが外側へ露出する態様で設置されることを特徴とする請求項6に記載の降下物検出装置。
【請求項8】
前記カメラの焦点位置を前記背景板の表面よりもカメラ側にセットしたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の降下物検出装置。
【請求項9】
前記背景板は無地黒色の前記表面を備えるとともに、前記背景板からの反射光量分布がより均一になるよう複数の前記光源が分散配置されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の降下物検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−236932(P2010−236932A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83206(P2009−83206)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(390008497)日本電熱株式会社 (32)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(390008497)日本電熱株式会社 (32)
[ Back to top ]