説明

除塵機

【課題】大雨等の非常増水時に、し渣をスクリーンで捕捉することなく下流に流すことができる除塵機を提供する。
【解決手段】除塵機1は、粗目スクリーン2と、粗目スクリーン2の下流側に粗目スクリーン2と平行に設置され、上端が粗目スクリーン2の上端よりも低位に位置する細目スクリーン3と、粗目スクリーン2および細目スクリーン3に沿ってトラック状に配設される無端チェーン7と、粗目スクリーン2の前面を上方向に掻き揚げる粗目レーキ(レーキ5)と、細目スクリーン3の前面を下方向に掻き寄せる細目レーキ(レーキ5)とを備え、非常増水時に水位が細目スクリーン3の上端よりも上昇したとき、粗目スクリーン2を通過したし渣が細目スクリーン3の上方スペースからそのまま下流に流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設等に設置され、水路中の塵(以降、し渣という)を除去する除塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下端が水路の底部から離間して設置される前スクリーンと、この前スクリーンの下流側に設置される後スクリーンと、を備えた背面降下前面掻揚式除塵機として特許文献1に記載のものが挙げられる。前スクリーンの下端はレーキ通過用の空間を確保するために水路の底部から離間している。前スクリーンの下端と水路の底部との間を通過したし渣は後スクリーンにより捕捉される。
【0003】
特許文献1は、前スクリーンと後スクリーンとの間に案内板と中間スクリーンを設け、いずれかのレーキを案内板と中間スクリーンの上端との間に必ず位置させることにより、し渣をいずれかのレーキによって捕捉する技術に関する。
【0004】
また、特許文献2には、主スクリーンの下端と水路の底部との間に可動式の補助スクリーンを設け、この補助スクリーンによりし渣の通過を阻止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−887号公報
【特許文献2】特開2002−167735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の技術は、いずれもし渣の大きさを問わずし渣の通過を阻止する技術であるため、細目用のスクリーンが設けられており、大雨等により下水の流入量が非常に多くなると、スクリーンに捕捉されたし渣の掻揚げが間に合わず細かいし渣により目詰まりを生じさせ、上流側の水位が下流側より上昇して下水が溢れるおそれがある。そのため、大雨等の非常時には、上流側の下水を下流側に流すという処理を求められる場合がある。
しかし、特許文献1、2の技術は、増水時に目詰まりの原因となる細かいし渣をスクリーンで捕捉することなく下流に流す機能は何ら備えていない。
【0007】
また、し渣を捕捉する技術の問題として、特許文献1の技術は、いずれかのレーキを案内板と中間スクリーンの上端との間に必ず位置させる構造であることから、レーキの取り付けピッチの制約を受けるという問題がある。特許文献2の技術では、補助スクリーンが水路の底部周りに配設されることから、水路の底部に溜まる砂泥状のし渣に補助スクリーンが埋まってしまい、そのままし渣が補助スクリーンに付着して固化し、補助スクリーンのスムースな可動を維持できないおそれがある。また、特許文献2の技術では、補助スクリーンの歯の間にレーキの歯が通過する構造であるため、補助スクリーンに汚泥が固化していると、レーキの歯が噛み込んで損傷するおそれもある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために創作されたものであり、大雨等の非常増水時に、細かいし渣をスクリーンで捕捉することなく下流に流すことができる除塵機を提供することを目的とする。さらに、例えば通常水位時にスクリーンでし渣を捕捉するにあたり、レーキの取り付けピッチの制約を受けず、かつ水路の底部に溜まる砂泥状のし渣の影響を受けにくい除塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る除塵機は、下端が水路の底部から離間して設置される粗目スクリーンと、前記粗目スクリーンの下流側に粗目スクリーンと平行に設置され、上端が粗目スクリーンの上端よりも低位に位置する細目スクリーンと、前記粗目スクリーンおよび前記細目スクリーンに沿ってトラック状に配設される無端チェーンと、前記無端チェーンに取り付けられ、前記粗目スクリーンの前面を上方向に掻き揚げる粗目レーキと、前記無端チェーンに取り付けられ、前記細目スクリーンの前面を下方向に掻き寄せる細目レーキと、を備え、非常増水時に水位が前記細目スクリーンの上端よりも上昇したとき、前記粗目スクリーンを通過したし渣が前記細目スクリーンの上方スペースからそのまま下流に流れることを特徴とする。
【0010】
この除塵機によれば、大雨等による非常増水時に、粗目スクリーンを通過したし渣が細目スクリーンの上方スペースからそのまま下流に流れる。粗目スクリーンは粗目に形成されていることから、スクリーンの目詰まりが生じにくくなり、これにより水路内の下水の流れが確保される。
【0011】
また、本発明に係る除塵機は、前記粗目スクリーンと前記細目スクリーンとの間に設けられ、前記粗目スクリーンとの間でし渣を遮蔽し、前記細目スクリーンとの間で前記粗目レーキおよび細目レーキの通過が可能なし渣捕捉路を形成する中間遮蔽体と、前記し渣捕捉路における前記粗目レーキおよび前記細目レーキの通過時には前記細目スクリーンの後方に退避し、前記粗目レーキおよび前記細目レーキの通過後には前記細目スクリーンの目開部から前記し渣捕捉路に突出してし渣捕捉路を閉じる蓋スクリーンと、を備えることを特徴とする。
【0012】
この除塵機によれば、粗目スクリーンの下方を通過したし渣の流出を防ぐにあたり、レーキがし渣捕捉路に位置していないときでも蓋スクリーンによってし渣の流出を防止できる。したがって、し渣捕捉路に必ずレーキを位置させる必要がなくなり、無端チェーンにおけるレーキの取り付けピッチの制約を受けることなく、例えば従来に比してレーキの取り付けピッチを大きく設定できる。
また、蓋スクリーンは、レーキの通過時には細目スクリーンの後方に退避し、レーキの通過後には細目スクリーンの目開部からし渣捕捉路に突出する構造であるため、水路の底部に溜まった砂泥の影響を受けない。したがって、蓋スクリーンのスムースな可動が長期にわたり維持され、汚泥に起因する歯の噛み込みによってレーキが損傷することもない。
【0013】
また、本発明に係る除塵機は、前記蓋スクリーンの可動機構は、前記無端チェーンに取り付けた第1カム部材と、前記蓋スクリーンに一体に取り付けられ、前記第1カム部材との接離により作動する第2カム部材とからなるカム機構を含むことを特徴とする。
【0014】
この除塵機によれば、レーキの移動に対して蓋スクリーンを簡単な構造で連動開閉させることができる。
【0015】
また、本発明に係る除塵機は、前記蓋スクリーンは、前記第1カム部材が前記第2カム部材を押圧することにより前記細目スクリーンの後方に退避し、前記第1カム部材が前記第2カム部材から離脱したときには重力により前記し渣捕捉路に突出することを特徴とする。
【0016】
この除塵機によれば、より一層、レーキの移動に対して蓋スクリーンを簡単な構造で連動開閉させることができる。
【0017】
また、本発明に係る除塵機は、前記粗目レーキと前記細目レーキとが一体成形品からなることを特徴とする。
【0018】
この除塵機によれば、粗目レーキと細目レーキとを一体成形品とすることにより、部品点数の低減および組み付け作業の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大雨等による非常増水時に、細かいし渣をスクリーンで捕捉することなく下流に流すことができる。これにより、スクリーンの目詰まりが生じることがなくなり、非常増水時における水路内の下水の流れが確保される。
また、例えば通常水位時において粗目スクリーンの下方を通過したし渣の流出を防ぐにあたり、レーキがし渣捕捉路に位置していないときでも蓋スクリーンによってし渣の流出を防止できるため、無端チェーンにおけるレーキの取り付けピッチの制約を受けることがない。また、水路の底部に溜まった砂泥の影響を受けることなく、蓋スクリーンのスムースな可動が長期にわたり維持され、汚泥に起因する歯の噛み込みによってレーキが損傷することもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る除塵機の全体説明図であり、(a)、(b)はそれぞれ側面図、正面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る除塵機の全体説明図であり、(a)、(b)はそれぞれ側面図、正面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の図面であり、蓋スクリーン周りの部分側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の図面であり、蓋スクリーン周りの正面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の図面であり、(a)、(b)は除塵機の側面作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
「第1実施形態」
図1(a)、(b)において、除塵機1は矩形断面を呈する水路に設置されている。除塵機1は、後記するレーキ9を通過させるべく下端が水路の底部から離間して設置される粗目スクリーン2と、粗目スクリーン2の下流側に粗目スクリーン2と平行に水路の底部に設置され、上端が粗目スクリーン2の上端よりも低位に位置する細目スクリーン3とを有する。粗目スクリーン2は複数の縦引きのスクリーンバー2Aを水路幅方向に粗目の間隔で並設した構成からなり、同様に細目スクリーン3も複数の縦引きのスクリーンバー3Aを水路幅方向に細目の間隔で並設した構成からなる。
【0022】
水路の天井には開口部4が設けられ、粗目スクリーン2の上部は開口部4を貫通して天井上の区画まで延設されている。天井上の区画に設置された水路幅方向を軸方向とする駆動スプロケット5と、粗目スクリーン2の下方に設置された水路幅方向を軸方向とする従動スプロケット6との間には、側面視して粗目スクリーン2の前面および細目スクリーン3の前面に沿う一対の直線軌道を有するように無端チェーン7がトラック状に掛け回される。無端チェーン7は図1(a)における時計回りに循環移動する。駆動スプロケット5と従動スプロケット6と無端チェーン7とは、粗目スクリーン2の両脇に一対として配設されている。なお、無端チェーン7には間隔を空けてガイドローラ(図示せず)が取り付けられており、このガイドローラが図示しないガイドレールに案内されることで、無端チェーン7の移動軌跡が保持される。
【0023】
細目スクリーン3は、その下端周りが従動スプロケット6上の無端チェーン7の円弧軌跡に合わせて円弧状に形成されている。細目スクリーン3の上端の位置は通常水位L1よりも若干突出する程度の位置である。
【0024】
無端チェーン7にはブラケット8を介してレーキ9が所定のピッチ(後記するように少なくとも一つのレーキが必ずし渣捕捉路12に位置するピッチ)で取り付けられている。ブラケット8は例えば側断面コ字形を呈する溝形鋼であり、レーキ9はこの溝形鋼の一方のフランジに固設される。レーキ9は略矩形の平板部材からなり、図2に示すように、水路方向の一端側、他端側に櫛状の歯9A,9Bが形成されている。歯9Aは、粗目スクリーン2の粗目の目開部に挿入される歯であり、歯幅が大きく形成されている。歯9Bは、細目スクリーン3の細目の目開部に挿入される歯であり、歯幅が小さく形成されている。
【0025】
無端チェーン7(図1)の循環移動により、レーキ9は、歯9Aが粗目スクリーン2の目開部に挿入した状態で上方に移動することで粗目スクリーン2の前面のし渣を掻き揚げる。掻き揚げられたし渣は天井上の区画に配されたホッパ10(図1)に投入される。また、レーキ9は、歯9Bが細目スクリーン3の目開部に挿入した状態で下方に移動することで細目スクリーン3の前面のし渣を掻き下げる。掻き下げられたし渣はそのままレーキ9に捕捉された状態で粗目スクリーン2の前面を通ってホッパ10(図1)に投入される。以上から判るように、レーキ9は、歯9Aにより粗目スクリーン2の前面を上方向に掻き揚げる粗目レーキとしての機能と、歯9Bにより細目スクリーン3の前面を下方向に掻き寄せる細目レーキとしての機能とを有する。つまり、本実施形態において粗目レーキと細目レーキとは一体成形品から構成される。
【0026】
図1に示すように、粗目スクリーン2と細目スクリーン3との間には中間遮蔽体11が設けられる。中間遮蔽体11は、粗目スクリーン2との間においてはし渣を遮蔽し、細目スクリーン3との間においては、レーキ9の通過が可能であって、粗目スクリーン2の下方を通過するし渣を捕捉するためのし渣捕捉路12を形成する。
【0027】
中間遮蔽体11は、蓋板13と中間スクリーン14とから構成される。中間スクリーン14は、複数の縦引きのスクリーンバー14Aを水路幅方向に並設した構成からなり、粗目スクリーン2および細目スクリーン3に対して平行に設けられている。スクリーンバー14Aは粗目スクリーン2のスクリーンバー2Aの目開部の間隔と同じ、つまり粗目の間隔で並設されている。中間スクリーン14の目開部にはレーキ9の歯9Aが挿通する。中間スクリーン14は、その下端は粗目スクリーン2の下端と略同じ高さに位置しており、その上端は通常水位L1よりも若干突出する程度であって、細目スクリーン3の上端よりも若干高い位置にある。そして、中間スクリーン14の上端と粗目スクリーン2との間に、ほぼ水路幅全体にわたる矩形平板状の蓋板13が取り付けられている。以上により、粗目スクリーン2の下方を通過したし渣は、蓋板13に遮られて粗目スクリーン2と中間スクリーン14との間から流出することなく、し渣捕捉路12に流れ込む。複数のレーキ9の内の少なくとも一つは必ずし渣捕捉路12に位置するようになっているので、し渣捕捉路12に流れ込んだし渣はレーキ9によって確実に捕捉される。
【0028】
「作用」
図1に示すように、通常水位L1においては、細目スクリーン3の上端が通常水位L1よりも上方に位置しているため、全てのし渣は細目スクリーン3により捕捉される。
細目スクリーン3により捕捉されたし渣は、レーキ9の移動の間に大きくなり、上流側の粗目スクリーン2に捕捉され、ホッパ10に排出されることになる。
そして、大雨等による非常増水時の増水水位L2においては、粗目スクリーン2を通過したし渣が細目スクリーン3の上方スペースからそのまま下流に流れる。
【0029】
従来の除塵機は、上流側のスクリーンと下流側のスクリーンとは同じ目開部に設定されており、し渣の捕捉という機能上、いわば上流側のスクリーンと下流側のスクリーンとの両方に本発明の「細目スクリーン」を配した構造といえる。これに対し本発明によれば、上流側の粗目スクリーン2は粗目に形成されていることから、非常増水時においてスクリーンの目詰まりが低減され、水路内の下水の流れが確保される。粗目スクリーン2の目開き寸法は、非常増水時にそのまま流したいし渣の大きさを考慮して水路毎に適宜に設定されるものである。
【0030】
「第2実施形態」
図3〜図6を参照して第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。第2実施形態の除塵機1は、し渣捕捉路12におけるレーキ9の通過時には細目スクリーン3の後方に退避し、レーキ9の通過後には細目スクリーン3の目開部からし渣捕捉路12に突出してし渣捕捉路12を閉じる蓋スクリーン15を備えることを特徴とする。本実施形態の蓋スクリーン15の可動機構はカム機構を含む。このカム機構は、無端チェーン7に取り付けられた第1カム部材と、蓋スクリーン15に一体に取り付けられ、第1カム部材との接離により作動する第2カム部材とから構成される。この第2実施形態では、レーキ9を必ずし渣捕捉路12に位置させる必要はなく、第1実施形態よりも大きな取付ピッチにすることが可能である。
【0031】
具体的に説明すると、蓋スクリーン15は、図4、図5に示すように、複数の円弧状のスクリーンバー15Aを水路幅方向に並設した構成からなる。スクリーンバー15Aはその凸形状側が水路底部側に臨むように位置しており、下流側の各端部が水路幅方向に延設した連結部材16により連結されることで一体化されている。蓋スクリーン15は、水路幅方向を軸方向とする回転軸17回りに回転する。回転軸17は、細目スクリーン3の上端よりも上方かつ下流側に位置している。スクリーンバー15Aは、回転軸17からの曲率半径が一定となるように形成されている。
【0032】
前記カム機構として、無端チェーン7にはアタッチメント18を介して第1カム部材としてのカムストライカ19が取り付けられ、前記連結部材16の両端には第2カム部材としてのカム板20が取り付けられている。カムストライカ19は各レーキ9の横に位置している。カム板20の上端は、水路側壁に設けた前記回転軸17回りに回転自在に取り付けられる。カム板20は側面視略三角形状を呈した平板部材であり、その一辺は凹状の曲線からなるカム面20Aを形成している。蓋スクリーン15とカム板20とは連結部材16により一体となって回転軸17回りに回転する。
【0033】
また、カム板20にはウェイト21が一体に取り付けられている。このウェイト21は蓋スクリーン15を常にし渣捕捉路12に突出させる方向に付勢する。なお、図5に示すように、カム板20とウェイト21は、片側に設けられているが、両側に設けてもよい。
【0034】
「作用」
非常増水時におけるスクリーンの目詰まり抑制の作用は第1実施形態と同じである。すなわち、増水水位L2においては、粗目スクリーン2を通過したし渣が細目スクリーン3の上方スペースからそのまま下流に流れる。
【0035】
し渣捕捉路12におけるし渣の捕捉の作用は次の通りである。図4に示すように、レーキ9がし渣捕捉路12に位置していないとき、カム板20はカムストライカ19と接触していないため、ウェイト21の重力作用によって蓋スクリーン15が図4に示すように細目スクリーン3の目開部からし渣捕捉路12に突出する。蓋スクリーン15の先端周りは中間スクリーン14の目開部に挿入される。
これにより、し渣捕捉路12は中間スクリーン14と細目スクリーン3と蓋スクリーン15とによって囲まれて袋小路となり、粗目スクリーン2の下方を通過してきたし渣は、中間スクリーン14、細目スクリーン3、蓋スクリーン15のいずれかにより捕捉されることになり、下流へのし渣の流出が防止される。
【0036】
次いで、レーキ9がし渣捕捉路12に進入すると、図6(a)に示すようにカムストライカ19がウェイト21の付勢力に抗してカム板20のカム面20Aを押圧することにより、蓋スクリーン15が回転軸17を中心として反時計回りに回転し、図6(b)に示すようにレーキ9の通過時には蓋スクリーン15はレーキ9との干渉を避けるために細目スクリーン3の後方に退避する。そして、中間スクリーン14、細目スクリーン3、蓋スクリーン15のいずれかにより捕捉されていたし渣はレーキ9によって掻き下げられる。具体的には、蓋スクリーン15に捕捉されていたし渣は、蓋スクリーン15が後退することにより細目スクリーン3側に移されるか、し渣捕捉路12内に浮遊する状態となる。レーキ9は、し渣捕捉路12内に浮遊したし渣を捕捉するとともに、歯9A、9Bがそれぞれ中間スクリーン14、細目スクリーン3の目開部に挿入することで、し渣を掻き下げる。掻き下げられたし渣はそのままレーキ9に捕捉された状態で粗目スクリーン2の前面を通ってホッパ10(図3(a))に投入される。レーキ9の通過後には、カムストライカ19がカム板20から離れ、ウェイト21の重力作用によって蓋スクリーン15が再び図4に示すように細目スクリーン3の目開部からし渣捕捉路12に突出する。
【0037】
以上のように、粗目スクリーン2と細目スクリーン3との間に設けられ、粗目スクリーン2との間でし渣を遮蔽し、細目スクリーン3との間でレーキ9の通過が可能なし渣捕捉路12を形成する中間遮蔽体11(蓋板13、中間スクリーン14)と、し渣捕捉路12におけるレーキ9の通過時には細目スクリーン3の後方に退避し、レーキ9の通過後には細目スクリーン3の目開部からし渣捕捉路12に突出してし渣捕捉路12を閉じる蓋スクリーン15と、を備えた除塵機1とすることにより、粗目スクリーン2の下方を通過したし渣の流出を防ぐにあたり、レーキ9がし渣捕捉路12に位置していないときでも蓋スクリーン15によってし渣の流出を防止できる。したがって、し渣捕捉路12に必ずレーキ9を位置させる必要がなくなり、無端チェーン7におけるレーキ9の取り付けピッチの制約を受けることなく、例えば従来に比してレーキ9の取り付けピッチを大きく設定できる。
【0038】
また、蓋スクリーン15は、レーキ9の通過時には細目スクリーン3の後方に退避し、レーキ9の通過後には細目スクリーン3の目開部からし渣捕捉路12に突出する構造であり、水路の底部に溜まった砂泥の影響を受けない。したがって、蓋スクリーン15のスムースな可動が長期にわたり維持され、汚泥に起因する歯の噛み込みによってレーキ9が損傷することもない。
【0039】
さらに、蓋スクリーン15の可動機構として、無端チェーン7に取り付けた第1カム部材(カムストライカ19)と、蓋スクリーン15に一体に取り付けられ、第1カム部材(カムストライカ19)との接離により作動する第2カム部材(カム板20)とからなるカム機構を含む構成とすれば、レーキ9の移動に対して蓋スクリーン15を簡単な構造で連動開閉させることができる。
【0040】
本実施形態のように、蓋スクリーン15は、第1カム部材が第2カム部材を押圧することにより、細目スクリーン3の後方に退避し、第1カム部材が第2カム部材から離脱したときには重力によりし渣捕捉路12に突出する構造とすれば、より一層、レーキ9の移動に対して蓋スクリーン15を簡単な構造で連動開閉させることができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は図面に記載したものに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能である。
説明した実施形態では、粗目スクリーン2の前面を上方向に掻き揚げる粗目レーキと、細目スクリーン3の前面を下方向に掻き寄せる細目レーキとを一体成形品のレーキ9から構成したが、粗目レーキと細目レーキとをそれぞれ別の部材から構成してもよい。
【0042】
また、説明したカム機構では、第1カム部材が第2カム部材から離脱したとき、蓋スクリーン15がウェイト21を利用した重力によりし渣捕捉路12に突出する構造としたが、ウェイト21に代えて、蓋スクリーン15を常にし渣捕捉路12に突出させる方向に付勢するばね部材を設ける構造にしてもよい。
また、説明したカム機構では、第1カム部材をカムストライカ19とし、第2カム部材をカム板20としたが、逆に第1カム部材をカム板20とし、第2カム部材をカムストライカ19にしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 除塵機
2 粗目スクリーン
3 細目スクリーン
7 無端チェーン
9 レーキ
10 ホッパ
11 中間遮蔽体
12 し渣捕捉路
13 蓋体
14 中間スクリーン
15 蓋スクリーン
19 カムストライカ
20 カム板
21 ウェイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が水路の底部から離間して設置される粗目スクリーンと、
前記粗目スクリーンの下流側に粗目スクリーンと平行に設置され、上端が粗目スクリーンの上端よりも低位に位置する細目スクリーンと、
前記粗目スクリーンおよび前記細目スクリーンに沿ってトラック状に配設される無端チェーンと、
前記無端チェーンに取り付けられ、前記粗目スクリーンの前面を上方向に掻き揚げる粗目レーキと、
前記無端チェーンに取り付けられ、前記細目スクリーンの前面を下方向に掻き寄せる細目レーキと、
を備え、
非常増水時に水位が前記細目スクリーンの上端よりも上昇したとき、前記粗目スクリーンを通過したし渣が前記細目スクリーンの上方スペースからそのまま下流に流れることを特徴とする除塵機。
【請求項2】
前記粗目スクリーンと前記細目スクリーンとの間に設けられ、前記粗目スクリーンとの間でし渣を遮蔽し、前記細目スクリーンとの間で前記粗目レーキおよび細目レーキの通過が可能なし渣捕捉路を形成する中間遮蔽体と、
前記し渣捕捉路における前記粗目レーキおよび前記細目レーキの通過時には前記細目スクリーンの後方に退避し、前記粗目レーキおよび前記細目レーキの通過後には前記細目スクリーンの目開部から前記し渣捕捉路に突出してし渣捕捉路を閉じる蓋スクリーンと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の除塵機。
【請求項3】
前記蓋スクリーンの可動機構は、前記無端チェーンに取り付けた第1カム部材と、前記蓋スクリーンに一体に取り付けられ、前記第1カム部材との接離により作動する第2カム部材とからなるカム機構を含むことを特徴とする請求項2に記載の除塵機。
【請求項4】
前記蓋スクリーンは、前記第1カム部材が前記第2カム部材を押圧することにより前記細目スクリーンの後方に退避し、前記第1カム部材が前記第2カム部材から離脱したときには重力により前記し渣捕捉路に突出することを特徴とする請求項3に記載の除塵機。
【請求項5】
前記粗目レーキと前記細目レーキとが一体成形品からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の除塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96204(P2013−96204A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243005(P2011−243005)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【出願人】(397052642)株式会社前澤エンジニアリングサービス (3)