説明

除細動器

【課題】多重経路の経胸腔式除細動器を提供すること。
【解決手段】患者の体内を横断して少なくとも2本の電気的経路を確立するために患者の体外に装着される3個以上の電極を備える。体内を横断するインピーダンス分布を表すインピーダンス情報が決定され、少なくとも2本の電気的経路の各々を横断する電磁波形が発生し、その波形の少なくとも1つのパラメータが、体内の1箇所または複数箇所の位置において選択された電流密度分布を発生するようにインピーダンス情報を用いて選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経胸腔式除細動(デフィブリレーション(defibrillation)およびカーディオバージョン(cardioversion))(すなわち胸腔の外部の電極を用いて行われるデフィブリレーションまたはカーディオバージョン)に関する。
【背景技術】
【0002】
通例、人体の心臓内での電気化学的活動によって器官の心筋繊維が同期して収縮したり緩和したりする。この心臓筋系の同期した活動によって、心室から生体器官に血液が実効的にポンプ輸送される。しかしながら、心室細動(VF)の場合には、心臓内での異常な電気的活動によって個々の筋肉繊維が非同期的かつカオス的に収縮する。このように同期を失う結果として、心臓は血液を実効的にポンプ輸送する能力を失う。除細動器は、心室細動に関連する心臓のカオス的電気的活動を中断させる大電流パルスを発生して、心臓の電気化学的系に対し自律的に同期を回復する機会を提供する。一旦、組織化された電気的活動が復元したら、同期した筋肉収縮が通例では追随して、実効的な心臓のポンプ作用を復元する。
【0003】
人体については1956年に最初の記載があるように、経胸腔式除細動が心停止、心室頻脈(VT)および心房細動(AF)の主な治療法となっている。1996年までは単相波形が主流であったが、この年に最初の二相波形が臨床用途で利用可能になった。また、除細動の実効性を高める多数電極系を用いる試みが行われてきた。二相波形および多数電極系は単相除細動に比べて実効性の向上を示したが、依然として大きな改良の余地がある。すなわち、最新の二相技術でも心室細動(VF)についてのショック成功率は70%に満たない。
【0004】
心臓の細動および除細動は依然として解明が進んでおらず、除細動の機構を説明する幾つかの仮説が広く用いられている。臨界量仮説と呼ばれる概念の仮定によれば、除細動ショックが成功する理由は、除細動ショックは臨界量の範囲内で不応性でない全ての組織を脱分極することにより筋肉の臨界量の範囲内で活動前面を消滅させるからである。受攻上限(upper limit of vulnerability、ULV)理論の仮定によれば、ショックは、波面の前方の心筋における不応期を延長することにより心室細動(VF)波面を停止させると成功するが、このことに加え、ショックもまた、ショック脱分極領域の境界で新たな細動を招く波面を開始させてはならない。ショックは、心筋を脱分極させるのに十分な強度を有するが新たな活動前面を防ぐほど十分な強さを有せず、このため除細動の試みが失敗に帰する場合がある。ULV理論に関連する臨界点仮説によれば、ショックは臨界電圧勾配が不応性の臨界点と交差するような臨界点を生成してはならない。これらの臨界点が細動の再開点になる。また、「不応期の延長(extension of refractoriness)」理論によれば、細動している心組織に対するショック誘導脱分極によって、新しく来るVF波面に対する不応期が延長し、結果としてVFが停止する。ULV仮説に関連する他の理論としては、「進行型脱分極(progressive depolarization)」および「伝播移行型(進行型)応答細胞脱分極仮説(propagated graded(progressive)response cellular depolarization)」がある。
【0005】
仮想的電極分極(Virtual Electrode Polarization、VEP)理論は、部分的に伝導性である媒体(各心空間の血液、肺、間質液、および胸腔内のその他器官)の内部に含まれている別の部分的に伝導性である媒体(心筋)内の電流に起因して、正分極域および負分極域が互いに隣接して同時に存在することにより除細動時の心筋の分極が特徴付けられるような現象を記述する。VEPの関連で定義される「相特異点(Phase Singularity)」とは、正分極(従来の電気生理学の用語で「脱分極」と同義)域と、非分極域と、負分極(「過分極」と同義)域とによって包囲されている臨界点である。これらの相特異点が細動の再開の起源となる。ショック後興奮は、「開放興奮(break excitation)」と呼ばれる過程を通じて正分極域と負分極域との間の非分極部位で開始する。開放興奮は、「興奮間隙(excitable gaps)」と呼ばれるショックに誘発された非分極部位を介して伝播し、正分極部位が興奮性を回復すると、細動を開始し得る興奮旋回路が形成される。興奮間隙の面積範囲が十分に最小化したときか、またはショックに誘発された電圧勾配が興奮間隙において興奮の速やかな伝播を招くのに十分になったときか、または受攻期の延長が、開放興奮の脱分極した組織内へのさらなる前進を防ぐのに十分になったときに、受攻上限(ULV)が達成される。二相除細動の場合には、ショックの第2相が、負分極組織を脱分極することによりVEP効果を無化するのに役立つ。再分極した組織を脱分極するためには、既に脱分極していた組織をさらに脱分極する場合よりも少ないエネルギーしか必要でないので、実効的な二相除細動によって正分極を保ちながら負分極を反転させることにより心筋の略完全な脱分極を達成する。但し、二相波形での興奮間隙は、単相波形に対して相対的に見ると縮小はしているが依然存在する。
【0006】
従来、多数電流源の電流加算を用いた刺激に対する理論的アプローチを用いて、重なり領域において、特異電流ベクトルでは生じなかったような刺激または除細動をもたらすのに十分な加算電流または積算された心筋応答を発生している。しかしながら、このアプローチは、不十分な刺激を受けた組織が、細動再開を招き得る興奮間隙内に留まり得る問題点を扱っていない。
【0007】
刺激を理解する手段として、電流等化の概念が広く用いられている。一般的なアプローチは、心臓全体にわたって電流分布を等化して、心臓の筋肉域に電流を集中させるものである。このアプローチは、依然存在する興奮間隙の発生を扱っていない。VEP効果の関連で理解されるように、電流分布が一様であると、依然として興奮間隙を生ずる。実際には、一様な電流分布は、人体の胸郭でのように器官、筋肉、体液および骨のコンダクタンスが100倍もの倍数でばらつき得る場合には生理学系の関連では特に適切な概念ではない。かかる系では、電流分布は一様にはならない。単純化された2コンダクタンス系であっても、印加される一様な電場によって、コンダクタンス差に起因する非一様の電流分布が生ずる。
【0008】
1948年には早くも、ネメク(Nemec)による(特許文献1)に開示されているように、重ね合わせ型多重ベクトルによる生理学的組織刺激の手法が用いられており、該特許には2個の刺激波形発生器を多数の組の電極と共に用いた神経または筋肉刺激器が記載されている。各々の波形は交流電流電気信号であり、2つの周波数の間の差は1Hz〜100Hzに設定されている。両方の電流源すなわち電流重ね合わせの領域からの電流に晒される組織域では、生理学的組織を刺激することが可能な周波数差に等しい搏動周波数が発生する。(特許文献2)は、小さい値だけ互いに異なっておりそれら自体では刺激効果を有しない2種以上のAC電流を、治療域において最適な干渉を有するように重ね合わせる概念を加えている。類似の方法が、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)および(特許文献5)にも採用されている。これらの技術および以降の技術の殆どで、関心領域は、多数の発生源からの電流が重なり合う区域とされていた。重なり領域での和電流によって、搏動周波数または加算電流が生じ、特異電流ベクトルでは生じない刺激をもたらすのに十分なものとなる。
【0009】
最初期の除細動器(カーディオバータおよびデフィブリレータ)は、単一バーストの交流電流または単一パルスのいずれかを発生して心臓に印加し、除細動(カーディオバージョンまたはデフィブリレーション)を生じさせていた。しかしながら、除細動(カーディオバージョンまたはデフィブリレーション)を達成するための多数パルスの利用も広く研究されている。(特許文献6)は、単一対の電極の間で逐次的に放電される2個のキャパシタを用いた初期型の二重パルス心臓除細動器を開示している。植え込み型ペースメーカおよび除細動器では、多数電極系が採用されている。例えば、逐次パルス型多数電極系が(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)および(特許文献12)に開示されている。逐次パルス系は、心臓組織の非線形の活動電位応答に起因して、異なる電極対の間で発生する連続した除細動パルスは積算効果を有するとの仮定に基づき、除細動を達成するための全エネルギー要件が単一対の電極を用いて除細動を達成するのに必要なエネルギー・レベルよりも小さくなるようにして動作する。多数電極式逐次パルス除細動への代替的なアプローチが(特許文献8)に開示されている。1対の電極対が右心室電極と冠状静脈洞電極とを含み、第2の電極対は右心室電極と皮下パッチ電極とを含んで、右心室電極が両方の電極対の共通電極としての役割を果たし得る。右心室電極と上大静脈電極と皮下パッチ電極とを用いた代替的な多数電極式同時パルス系が(特許文献13)に開示されている。この(特許文献13)は、上大静脈と右心室との間、および右心室と皮下電極との間でのパルスの同時発生を開示している。(特許文献14)では、異なる電極対の間で同時に充電されて、次いで逐次的にまたは同時に放電される2個のキャパシタ・バンクが設けられている。
【0010】
(特許文献15)は、心臓およびその周囲に配置されている多数の電極を採用した逐次パルス除細動器を開示している。この開示では、逐次作動される各々の電極対がパルス・ベクトルを画定し、かつこれらのパルス・ベクトルが心臓組織全体にわたって回転式で走査するように、交流電流(AC)除細動パルスが逐次的に発生する。パルスは互いに直ちに続いて発生され、または何らかの特に指定しない時間にわたって互いに重なり合っていてもよい。(特許文献16)は、重なり合った二重路パルスを記載しており、ここでは重なり時間に中間的な電流ベクトルが存在している。(特許文献17)は、中間的電流ベクトルが方向を変えて、ショック・パルスの間に循環的に往復するようにした類似構成を記載している。(特許文献18)にも類似構成が記載されている。(特許文献19)は、個々の経路の各々は閾値下刺激であるが重ね合わせ領域の電流レベルは閾値を上回る多重路ペーシング方法を記載している。重ね合わせ領域の電流ベクトルは、個々のパルス開始のタイミングを変化させることにより方向制御することが可能である。(特許文献20)は、パルス・トレインを間に挟んだ多数電極による集束波形を記載している。これらの手法は電流の重なりによって発生する回転ベクトルを介して興奮間隙を幾分か減少させることが可能であるが、依然として細動再開のきっかけとなり得る興奮間隙の領域が残っているという点で同様な欠点を有する。
【0011】
(特許文献21)は、各々除細動には小さ過ぎる寸法の多数の小作用域で構成される多数節点電極を記載している。各々の作用域が同じ電源に接続されている。電極を複数の作用域に分割することにより、電極の長期にわたる装着による皮膚の感作を抑える手段を設けるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第2,622,601号
【特許文献2】米国特許第3,774,620号
【特許文献3】米国特許第3,895,639号
【特許文献4】米国特許第4,023,574号
【特許文献5】米国特許第4,440,121号
【特許文献6】米国特許第3,605,754号
【特許文献7】米国特許第4,291,699号
【特許文献8】米国特許第4,641,656号
【特許文献9】米国特許第4,708,145号
【特許文献10】米国特許第4,727,877号
【特許文献11】米国特許第4,932,407号
【特許文献12】米国特許第5,107,834号
【特許文献13】米国特許第4,953,551号
【特許文献14】米国特許第5,163,427号
【特許文献15】仏国特許第2,257,312号
【特許文献16】米国特許第5,324,309号
【特許文献17】米国特許第5,766,226号
【特許文献18】米国特許第5,800,465号
【特許文献19】米国特許第5,330,506号
【特許文献20】米国特許第5,431,688号
【特許文献21】米国特許第6,148,233号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は背景技術に存在する問題を解決しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様では、本発明は、体内への体外からの電磁的刺激を行う除細動器に関するものであり、この除細動器は、患者の体内を横断して少なくとも2本の電気的経路を確立するために患者の体外に装着される3個以上の電極を備え、体内を横断するインピーダンス分布を表すインピーダンス情報を決定し、少なくとも2本の電気的経路の各々を横断する電磁波形を発生し、波形の少なくとも1つのパラメータは、体内の1箇所または複数箇所の位置において選択された電流密度分布を発生するようにインピーダンス情報を用いて選択される。
【0015】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、以下の1または複数を組み入れていてよい。すなわち、電磁的刺激は心臓の除細動(デフィブリレーションまたはカーディオバージョン)のためのものであってよく、インピーダンス分布は胸郭を横断するものであってよく、電流密度分布は心臓でのものであってよい。インピーダンス情報を決定するには、電気インピーダンス法(EIT)が利用可能である。インピーダンス情報を決定する際には、組織部位の位置を決定するために身体を撮像し、組織部位の位置および組織の抵抗率から経胸腔インピーダンス分布を算出してもよい。撮像には超音波撮像が利用可能である。選択される電流密度は、除細動ショックから不十分な心筋の刺激を受けると予期される選択された心筋の部位に付加的な電流密度を発生するように構成されていてよい。選択された心筋の部位は興奮間隙部位を含んでいてよい。電流密度分布は、不十分な心筋の刺激を受けると予期される領域を予測するモデル(例えば双領域(bidomain)モデル)を用いて選択されてよい。選択された心筋の部位に対して不十分な心筋刺激を発生すると予期される除細動パルスに続いて、選択された電流分布を与える電磁的波形が発生されてよい。ECG(心電図)信号が、複数の電極から検出されてよく、検出されたECG信号から心外膜電圧が推定されてよい。選択された電流密度分布が生成される1箇所または複数箇所の位置は心臓の区域であってよく、心外膜電圧を用いて心臓の各区域を決定してよい。心臓の各区域において選択された電流密度分布を発生するために電磁的波形について複数の波形態(morphology)を選択してよい。心臓の区域は、前進する活動波面の前方の区域であってよく、選択された電流密度分布は波面を消滅させるのに十分なものであってよい。
【0016】
第2の態様では、本発明は、経胸腔式の除細動器に関するものであり、この除細動器は、患者の胸腔を横断して心臓を通る複数の電気的経路を確立するために患者の胸郭に装着される3個以上の電極を備え、電気的経路の少なくとも2本の各々を横断して除細動波形を発生し、波形が発生するときに通過する電極の各々の面積は心臓の投影面積の70%未満であり、胸腔の同じ側の電極の面積和は心臓の投影面積の80%よりも大きい。
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、以下の1または複数を組み入れていてよい。すなわち、本発明はさらに、患者の電気的パラメータ、心電図パラメータ、生理学的パラメータまたは解剖学的パラメータを測定することと、少なくとも幾つかの状況下では異なる電気的経路毎に異なっていてよい除細動波形を発生することと、を備え、各々の波形の少なくとも1つのパラメータは測定されたパラメータに依存している。測定する際には、経胸腔インピーダンス分布を決定してもよい。波形が生成されるときに通過する電極の各々の面積は、心臓の投影面積の60%未満であってよい。波形が生成されるときに通過する電極の各々の面積は、心臓の投影面積の50%未満であってもよい。胸腔の同じ側の電極の面積和は心臓の投影面積の90%よりも大きくてよい。胸腔の同じ側の電極の面積和は心臓の投影面積100%よりも大きくてよい。電極は、電気的経路が患者の胸郭の体前部と体後部との間に延在するように体前部位置および体後部位置に配置されていてよい。電極は、電気的経路が患者の胸郭の左側と右側との間に延在するように体側位置に配置されていてもよい。波形は多相であってよい。波形は単相であってもよい。電極の少なくとも2個を組み合わせて、1つのユニットとして患者に装着されかつ患者から取り外される1個の単一体電極パッドとしてもよい。電極が支持されているパッドの区域の間に継目線が存在していて、継目線が、電極が支持されている区域に皺を形成せずにパッドを折り畳み得るように構成されていてよい。多数の電極が単一体電極パッド上に配置されていてもよい。多数の電極は充填密度を高めるように配置されていてよい。電極は、多角形充填形(テセレーション、tessellation)の形態で配置されていてよい。充填形は、平面を対称にタイリング(敷き詰め)する正多面体からなる正充填形であってよい。多面体は、三角形、正方形または六角形のいずれか1つであってよい。
【0017】
第3の態様では、本発明は、経胸腔式除細動を実行する方法に関するものであり、この方法は、患者の胸腔を横断して心臓を通る少なくとも2本の電気的経路を確立するために患者の胸郭に3個以上の電極を装着する工程と、少なくとも2本の電気的経路の各々を横断して二相または多相の除細動波形を発生する工程とからなり、少なくとも幾つかの状況下では、生成される多相波形は少なくとも2本の電気的経路毎に異なっている。
【0018】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、以下の1または複数を組み入れていてよい。すなわち、本発明はさらに、少なくとも2本の電気的経路を横断する経胸腔インピーダンス分布を決定する工程と、二相波形または多相波形を発生する工程と、を備え、各々の多相波形の少なくとも1つのパラメータは経胸腔インピーダンス分布に依存している。2対の電極が存在していてよく、各々の対の一方の電極が、胸郭の全体的に対向する両面に配置されている。各々の対の一方の電極は、胸郭の体前部面および体後部面に位置していてよい。本発明はさらに、1つのブリッジ回路が二相波形または多相波形の各々を発生する1対のブリッジ回路を備える。二相波形または多相波形は時間的に重なり合うように発生されてよい。二相波形または多相波形は同時であってもよい。二相波形または多相波形は逐次的であってもよい。
【0019】
第4の態様では、本発明は、電極へまたは電極から除細動パルスを伝達する第1の電気的ワイヤと、電気ケーブルに接続されている金属層と、金属層から皮膚へパルスを伝達する伝導性皮膚接触層と、超音波センサと、超音波センサを超音波撮像回路に接続する第2の電気的ワイヤとを備えた除細動電極に関するものである。
【0020】
第5の態様では、本発明は、経胸腔式除細動を実行する方法に関するものであり、この方法は、患者の胸腔を横断して心臓を通る複数の電気的経路を確立するために患者の胸郭に3個以上の電極を装着する工程と、少なくとも2種の全体的に異なる除細動波形を発生する少なくとも2個の異なる除細動回路を用いる工程と、少なくとも2本の電気的経路の各々を横断して少なくとも2種の異なる除細動波形の一方ずつを発生する工程と、少なくとも2個の異なる除細動回路の間の通信によって少なくとも2種の除細動波形の発生を同期させる工程と、からなっている。
【0021】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、以下の1または複数を組み入れていてよい。すなわち、除細動回路は各々、プロセッサと、エネルギー発生回路と、切換回路とからなっていてよい。各除細動回路は別個の外被に収容されていてよく、通信は外被の間で生ずる。切換回路は、二相除細動波形または多相除細動波形を発生することが可能であってよい。発生を同期させる工程は、除細動回路同士の間のアナログ通信を含んでいてよい。発生を同期させる工程は、除細動回路同士の間のディジタル通信を含んでいてよい。各除細動回路は別個の外被に収容されていてよい。除細動波形は、主に電流を発生してよい。除細動波形は主に磁場を発生してもよい。1個または複数個のキャパシタと、1個または複数個のキャパシタを充電する充電回路と、1個または複数個のキャパシタに結合されている切換回路と、からなるエネルギー発生回路が存在していてよい。波形の発生の前に充電回路からキャパシタを結合分離する追加のスイッチが設けられていてよい。切換回路はクラスD増幅器として構成されていてよい。切換回路はクラスB増幅器として構成されていてもよい。切換回路はクラスAB増幅器として構成されていてもよい。本発明はさらに、横隔膜刺激を発生する工程からなる。横隔膜刺激を発生する少なくとも1個の横隔膜電極が設けられていてよい。除細動電極の少なくとも2個と少なくとも1個の横隔膜電極とを組み合わせて、1つのユニットとして患者に接着され患者から取り外される1個の単一体電極パッドとしてもよい。胸郭圧迫を発生する装置が設けられていてもよい。胸郭圧迫を発生する装置は、胸郭を包囲する圧迫帯からなっていてよい。胸郭圧迫を発生する装置は、ピストン駆動式装置からなっていてもよい。生理学的パラメータを測定し、測定された生理学的パラメータの解析に基づいて除細動成功の予測を立てて、この予測に基づいて除細動および胸郭圧迫の協働式発生を行ってよい。除細動および胸郭圧迫の協働式発生は、手動式、助言支援式、半自動式または完全自動式のいずれであってもよい。支援呼吸のための横隔膜刺激を行ってもよい。心臓ペーシングを行ってもよい。第1の波形の発生の開始に続いて一定の遅延時間の後に、第2の除細動波形の発生を開始してよい。遅延が15ミリ秒間〜40ミリ秒間の範囲であると、細動再開の可能性を高めることが判明した。遅延時間は15ミリ秒間よりも短くてもよい。代替的には、遅延時間は40ミリ秒間よりも長くてもよいが、200ミリ秒間よりも短くする。
【0022】
本発明の多くの利点(うち幾つかの利点は、様々な態様および実施形態の幾つかのものでのみ達成され得る)の中でも、本発明は、従来技術に対して、除細動時の興奮間隙の面積範囲を縮小すると共に影響を抑え、かつ実効性の向上を提供する経胸腔除細動(カーディオバージョン/デフィブリレーション)系を提供し得る。幾つかの実施形態では、興奮間隙の面積範囲は、胸郭の各々の側での電極の合計面積を拡大することにより縮小される(例えば電極に投影した心臓面積と近似的に等しくするかまたはこれよりも大きい合計面積にする)。経胸腔インピーダンスは、骨、骨格筋、胸骨の軟骨、肋骨、ならびに心筋、血液および肺の本質的に異なるコンダクタンスの影響を受けて胸郭の表面にわたって著しくばらつくため、本発明の幾つかの実施形態は、経胸腔インピーダンス分布の決定に基づいて持続時間、波形または振幅のような波形のパラメータの少なくとも1つを調節することが可能である。経胸腔インピーダンス分布の決定は、電極対の電極同士の間のインピーダンス測定と同程度に単純なものであってもよいが、心臓、肺および骨格のさらに正確な位置を決定するためには電気インピーダンス法、超音波撮像または他の撮像方法を含み得る。幾つかの実施形態では、経胸腔インピーダンスのばらつきに対処するために、一定範囲の生理学的インピーダンスにわたって電流を所望の値に設定した独立した電流源として波形発生用電源を構成する。
【0023】
体表面でのコンダクタンスは、体内器官、体液、筋肉および骨のコンダクタンスと殆ど同じだけ大きく変動する訳ではない。このため、典型的な従来技術の単一点インピーダンス測定(例えば、除細動電流を発生する同じ電極を用いて体表面で行う)では胸腔内でのインピーダンス分布を推定し得ない。波形、振幅または持続時間は、かかる単一点インピーダンス測定に応じて従来変化させられており、このアプローチは除細動パルスの実効性に影響を及ぼし得るが、この影響は、心臓および心臓周囲での電流分布を変化させる役には立たないという事実によって限定される。好ましい実施形態では、本発明は、胸郭のインピーダンス(抵抗率)分布を少なくとも2次元で決定し、このインピーダンス分布を用いて各々の電気的経路(電流ベクトル)について波形パラメータを決定する。例えば、除細動パルスの振幅を各々の電極対毎に独立に調節して、心筋および心筋周囲で所望の電流分布を達成することが可能である。本発明のかかる実施形態を用いると、器官自体に実際に送り届けられる電流を、体表面に位置する電極の数、位置および寸法によって決定される詳細のレベルに到るまで細かく体表面で制御することが可能である。
【0024】
具体的な実施形態に応じて、本発明は、公知の形式の除細動波形すなわち単相波形、二相波形または多相波形のいずれの性能を改善することも可能である。好ましくは、個々のベクトルの波形を同期させるが、本発明はまた、逐次パルス式多数電極除細動系の性能を改善することも可能である。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態は、除細動時にまたは除細動の直前に電極対の軸に実質的に類似した軸に沿って患者の電気的パラメータ、心電図パラメータ、生理学的パラメータまたは解剖学的パラメータを測定し、これらの測定を用いて、実効性を高めるように波形パラメータを制御する。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態は、独立に測定可能でかつ制御可能な電流路を有しているが、他のより単純な実施形態では、電流路の少なくとも1本の波形パラメータを患者の電気的パラメータ、心電図パラメータ、生理学的パラメータまたは解剖学的パラメータの関数として制御する。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態は、標準的な単相または二相除細動器として個々に作用し得る多数の除細動器をマスタ/スレーブ方式で同期させることを可能にする。
多数の電極を、単一のパッドとして一体化した複数の電極作用域として具現化してもよく、この場合には胸郭の各々の側に1枚ずつパッドを装着し、これにより2部パッド式の使い易い系を達成する。一体型パッドは、胸骨、胸骨上端または乳頭の正確な配置図のような解剖学的標認点を含んで、患者に電極をさらに正確に配置する能力を医師に提供し得る。電極は、超音波撮像、インピーダンス、パルス酸素測定法、呼気終末二酸化炭素、血圧、速度検知、加速センサのようなセンサを含んでいてよい。
【0028】
一体型パッドの電極作用域は、稠密に充填した六角形、矩形もしくは同心円構成で、または他の充填形で配置することにより最適な間隔を設けるように構成され得る。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】二相除細動器の実施形態のサーキットリの模式図。
【図2】図1の実施形態のブロック図。
【図3】図1の実施形態によって生成される二相波形のプロット図。
【図4】有限要素モデリングにおいて用いられ有限要素メッシュ分解を示す心臓の高さでの胸郭の断面図。
【図5(A)】電極位置、座標軸および座標平面を示した図4を単純化した図。
【図5(B)】好ましい1組の電極位置を示す図4を単純化した図。
【図5(C)】代替的な1組の電極位置を示す図4を単純化した図。
【図5(D)】さらに代替的な1組の電極位置を示す図4を単純化した図。
【図6】体前部胸郭の等コンダクタンス・プロット図。
【図7】図5(B)の体前部電極の心臓に対する配置図。
【図8(A)】図5(B)の電極の配置図。
【図8(B)】図5(B)の電極の配置図。
【図9】円環状電極構成例の図。
【図10】正充填形で配置された電極例の図。
【図11】半正充填形で配置された電極例の図。
【図12】部分的正充填形で配置された電極例の図。
【図13】仮想的電極理論を用いてモデル化された単相除細動パルスによる心臓に対する影響のシミュレーションの図。
【図14(A)】電極面積が変化したときに起こる事象の模式図。
【図14(B)】電極面積が変化したときに起こる事象の模式図。
【図15】Hブリッジ・クラスD構成回路の電気的模式図。
【図16】Hブリッジ・クラスD構成の回路を駆動するサーキットリの電気的模式図。
【図17】Hブリッジ・クラスD構成の回路によって生成される波形の図。
【図18】超音波プローブの応用での超音波ゲル・ウィンドウを含む一体型除細動パッドの平面図。
【図19】二重除細動器の実施形態のブロック図。
【図20】二重除細動器系の共通コネクタに電気的に接続された2個の一体型除細動電極パッドの平面図。
【図21】解剖学的標認点を付した一体型除細動パッドを装着した患者の遠近図。
【図22】統合型蘇生システムの実施形態のブロック図。
【図23】統合型蘇生システムの判定流れ図。
【図24(A)】除細動ショックの直後の心臓の部位を横断する心外膜電圧の空間分布の1例を示す図。灰色の濃淡で異なる電圧レベルを表しており、最大の脱分極の領域を示す図面の最も左側の最も濃い領域は−90mVであり、最大の過分極の領域を示す最も右側の最も濃い領域は0mVである。白い領域および直に隣接する帯状領域は興奮間隙である。等電位線は正常な休息時電位が285mVであり活動時振幅が100mVであるとの仮定に基づいて5mV間隔で描かれている。
【図24(B)】除細動ショックの直後の心臓の部位を横断する心外膜相の空間分布の1例を示す図。灰色の濃淡で異なる等時領域(すなわち近似的に同じ心臓相にある領域)を表している。各領域は10ミリ秒間隔であり、白い領域は除細動ショックの直後の時刻(0ミリ秒)を表し、最も濃い灰色はショックの120ミリ秒後を表している。
【図24(C)】除細動パルスの直後の可能な挙動を表すECG信号の図であって、頻脈の開始を示す図。
【図25(A)】除細動ショックの直後の心臓の部位を横断する心外膜電圧の空間分布の図24(A)とは異なる1例を示す図。灰色の濃淡で異なる電圧レベルを表しており、最大の脱分極の領域を示す図面の最も左側の最も濃い領域は−50mVであり、最大の過分極の領域を示す最も右側の最も濃い領域は+10mVである。白い領域および直に隣接する帯状領域は興奮間隙である。等電位線は正常な休息時電位が285mVであり活動時振幅が100mVであるとの仮定に基づいて5mV間隔で描かれている。
【図25(B)】除細動ショックの直後の心臓の部位を横断する心外膜相の空間分布の図24(B)とは異なる1例を示す図。灰色の濃淡で異なる等時領域(すなわち近似的に同じ心臓相にある領域)を表している。各領域は10ミリ秒間隔であり、白い領域は除細動ショックの直後の時刻(0ミリ秒)を表し、最も濃い灰色はショックの120ミリ秒後を表している。
【図25(C)】除細動パルスの直後の可能な挙動を表すECG信号の図であって、頻脈の開始を示す図。
【図25(D)】図25(A)と同じ図であるが、興奮間隙部位を影付き区域で示す図。
【図25(E)】図25(B)と同じ図であるが、適用される刺激消失の区域を影付き区域で表した図。
【図26】筋肉繊維の全体的に渦巻き型の配向を示す心室の単純化した遠近図。
【図27】可能な2本の電流ベクトル(2ベクトル・アプローチの場合)が筋肉繊維と全体的に整列していることを示す心室の単純化した遠近図。
【図28(A)】各ベクトルが筋肉繊維と整列した2ベクトル・アプローチの別の実施形態を提供する植え込み型除細動器および電極の図。
【図28(B)】各ベクトルが筋肉繊維と整列した2ベクトル・アプローチの別の実施形態を提供する植え込み型除細動器および電極の図。
【図29】図28(B)の実施形態の電気的模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の極めて多くの可能な実施形態が存在するが、あまりに多く本書には記載し切れない。現状で好ましい幾つかの可能な実施形態を以下に記載する。但し、幾ら強調してもし過ぎることはないが、以下は本発明の実施形態の説明であって、本発明の説明ではなく、本発明は、以下に記載される詳細な実施形態に限定されず、特許請求の範囲でさらに広範に記載されている。
【0031】
図1に本発明の一実施形態を示す。患者に対して生成される除細動波形は、米国特許第6,096,063号明細書に記載されている二相波形または多相波形である。この特許に記載されているように、電磁(EM)エネルギー発生回路または手段1は、継電器6、7、8および9ならびにブリッジ回路としてのHブリッジ10および11が開いているときに処理手段5の制御下で充電回路4によって治療に実効的な電圧を充電される蓄電キャパシタ2および3で構成されている。寸法および経費の両方を抑える手段として、充電回路4を用いて蓄電キャパシタ2および3の両方を同時に充電する。第1の電極対1および第2の電極対2はSTAT−PADZ(米国マサチューセッツ州ChelmsfordのZOLL Medical製)のような粘着パッドであり、図1に断面図で示す患者の胸郭3に接着されている。
【0032】
当業者に公知の任意の既存の方法を用いて除細動エネルギーを患者に対して発生する適当な時刻を処理手段5によって決定したら、継電スイッチ12,13、14および15を開いて、継電スイッチ6、7、8および9を閉じる。すると、Hブリッジ10の電子スイッチ16、17、18および19ならびにHブリッジ11の電子スイッチ24、25、26、および27が閉じて、患者の体内で一方向に電流を流すことが可能になり、この後に、Hブリッジ10の電子スイッチ16、17、18および19ならびにHブリッジ11の電子スイッチ24、25、26および27が開いて、Hブリッジ10の電子スイッチ20、21、22および23ならびにHブリッジ11の電子スイッチ28、29、30および31が閉じると、患者の体内で他方向に電流を流すことが可能になる。継電スイッチ12、13、14および15は、双極双投構成(DPDT)で結合されて、寸法および経費を抑えている。DPDT継電器12および13は、放電中に電極対用の電流源を切り離す目的を果たす。電子スイッチ16〜31は、それぞれの光アイソレータからの信号によって制御され、光アイソレータは処理手段5からの信号によって制御されている。図2に示すように、処理手段5は好ましくは、読み出し専用メモリ素子(ROM)41、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)42、クロック43、実時間クロック44、アナログからディジタルへの(アナログ−ディジタル、A/D)変換器45およびディジタルからアナログへの(ディジタル−アナログ、D/A)変換器46、電源47、リセット回路48、汎用入力/出力49、表示器49や入力キー50の形態のユーザ・インタフェイス、ならびに当業者に公知の他のサーキットリに結合されている日立製SH−3のようなマイクロプロセッサ40である。患者の電気的パラメータ、心電図パラメータ、生理学的パラメータまたは解剖学的パラメータの測定のために測定手段52が設けられており、この測定に基づいて処理手段5は放電路の少なくとも1本の波形パラメータを制御する。やはり処理手段5によって制御される継電スイッチ6、7、8、および9は、Hブリッジのスイッチ16〜31による約500マイクロアンペアであり得る漏洩電流から患者3を切り離す。
【0033】
電流経路には直列接続された抵抗器57、58および59ならびに抵抗器60、61、62をそれぞれ含む抵抗回路55および56が設けられており、抵抗器の各々が、処理手段5によって制御される短絡スイッチ63〜68に並列接続されている。抵抗器は好ましくは、不等の値を有しており直列抵抗値の様々な組合せによって2n種の異なる組合せが得られるように2値数列型の段階的な値を有する。尚、nは抵抗器の数である。治療用除細動エネルギーを発生する直前に、Hブリッジのスイッチ16〜19および24〜27を閉じることにより比較的小振幅の「検知」パルスを発生し、電流が抵抗器に直列で流れるように抵抗器短絡スイッチ63〜68を全て開く。電流検知変圧器69および70がそれぞれの電極対1a、1b、2aおよび2bを介して患者に流れる電流を検知して、ここから処理手段5が患者3の抵抗を決定する。
【0034】
最初の検知パルスは二相除細動波形と一体化しているすなわち二相除細動波形の直後に続いており、最初の検知パルスと二相除細動波形との間には蓄電キャパシタの再充電は起こらない。最初の検知パルスで検知される患者抵抗が小さい場合には、検知パルスの終了時に抵抗器短絡スイッチ63〜68の全てを開いたままにして、抵抗器57〜62の全てが電流経路に存在するようにする(次いで、抵抗器は、矩形の正相を近似するために後述する態様で二相除細動波形の正相の間に逐次的に短絡される)。このように、二相除細動波形の正の第1相の開始時での電流は、検知パルス時の電流と同じになる。検知パルス時に検知される患者抵抗が大きい場合には、検知パルスの終了時に抵抗器短絡スイッチ63〜68の幾つかまたは全てを閉じて、これにより、抵抗器の幾つかまたは全てを短絡させる。
【0035】
このように、検知パルスの直後に、二相除細動波形は、電流検知変圧器69および70によって検知される患者インピーダンスに基づいて、マイクロプロセッサ46によって制御される初期放電電流を有する。検知パルスの電流レベルは常に、正の第1相の開始時の電流レベルの少なくとも50%にあり、検知パルスは除細動パルスと同様に、直流電流パルスであることは言うまでもない。
【0036】
電流経路に存在する抵抗器の数を適当に選択することにより、処理手段は、蓄電装置によって蓄電される所与の電荷量についてピーク放電電流の患者インピーダンスに対する依存性を低減する(但し解消はしない)。患者インピーダンスが15Ωである場合にはピーク電流は約25アンペアであり、患者インピーダンスが125Ωである場合にはピーク電流は約12.5アンペアである(典型的な患者は約75Ωである)。
【0037】
二相波形の正相の間には、患者3と直列に存在する抵抗器57〜62の幾つかまたは全てが逐次的に短絡される。抵抗器の1つが短絡される度毎に、波形に電流の急上昇が起こって、これにより、図3の波形に示す鋸波状のリプルが生ずる。減衰の時定数(RC)は相の終了時の方が相の開始時よりも短いので、リプルは、矩形相の終了時に最大となる傾向にある。言うまでもなく、検知パルスの終了直後に抵抗器の全てが既に短絡されている場合には、二相波形の正相は単に、波形が負相に切り換わるまで指数関数的に減衰する。
【0038】
図3に示すように、正相の終了時には、電流波形は正相の終了時から負相の開始時まで一連の急段階で減少し、段階の1つがゼロ交差となる。処理手段5は以下によってこのことを達成する。すなわち(1)抵抗回路55および56の抵抗を、抵抗器短絡スイッチ57〜62の操作を通じて固定された増分で逐次的に増大させ、次いで(2)Hブリッジ10〜11のスイッチの全てを開いて、電流波形をゼロ交差まで低下させ、次いで(3)電流波形の正相時には予め開かれていたHブリッジのスイッチを閉じることにより電流波形の極性を反転させ、次いで(4)抵抗回路55および56の抵抗を、抵抗回路55および56の抵抗が正相の終了時と同じになるまで、抵抗器短絡スイッチ57〜62の操作を通じて固定された増分で逐次的に減少させる。
【0039】
1実施形態では、鋸波状のリプルを低減するために、可変抵抗器71および72を他の抵抗器57〜62と直列に設ける。固定値の抵抗器57〜62の1つが短絡される度毎に、可変抵抗器71および72の抵抗は自動的に高い値に急上昇し、次いで次の固定値抵抗器が短絡されるまで低下する。このことは、鋸波状リプルの高さを約3アンペアから約0.1アンペア〜0.2アンペアまで平滑化し、固定値の増分を小さくする必要性を減じる(すなわち固定値抵抗器段階を追加で設ける必要性を減じる)のにある程度まで役立つ。
【0040】
図4に人体の胸郭の断面図を示す。構成組織の各々が、除細動パルスによって生成される電場および電流の有限要素シミュレーションに用いられるセルに小分割されている。電極対1a、1b、2aおよび2bも図示されている。図5(A)〜図5(D)は、図4の断面の単純化した図を示す。同図では、線すなわち心臓重心(CCOM)線75が画定されており、線75はCCOM点76を通り、患者の背に平行である。好ましい実施形態では、少なくとも1個の電極、好ましくは2個の電極をCCOM線の体後部側に配置する。加えて、中点/COM(MCOM)線77は、体後部電極(1または複数)78および79の体側範囲の中点(MLE)と、CCOM点76とによって画定される線である。電極平面81は、MLE78に対して末梢側に位置する電極84の重心82までの最小平均自乗誤差距離を結果として与える平面によって画定される。さらに、心臓投影面積(PCA)が画定されており、PCAは、電極平面81と、MCOM線77に平行で心臓83の表面に接する線80の軌跡との交点によって形成される形状の電極平面81における面積である。電極の面積、形状および位置は、個々の電極の各々の面積がPCAの70%よりも小さく、MLE78に対して末梢側に位置する電極84の面積和がPCAの80%よりも大きく、好ましくはPCAの100%よりも大きくなるようにする。
【0041】
好ましい実施形態では、電極は図5(B)、図7、図8(A)および図8(B)に示すように配置される。図7は電極1aおよび2a、胸郭ならびに心臓4の相対的な位置を示す。図8(A)および8(B)は典型的な患者での電極配置を示す。図5(C)は、電極対の体側配置を示す。別の実施形態では、電極は、図9に示すように同心状に構成されてもよい。電極はまた、図5(D)に示すように電流路が本質的に平行になるように配置されてもよい(図5(D)では電極1bおよび2bの位置が図5(B)と反転している)。
【0042】
図4に示すような様々な組織のコンダクタンスは近似的に次のようになる。
【0043】
【表1】

様々な組織の伝導度は100倍もの倍数でばらつき得る。このばらつきを収容するために、放電路の各々に生成されるエネルギーの波形パラメータを独立に制御可能とする。例えば、このことは直前に述べた実施形態では、2個の高電圧キャパシタ2および3を設けて、患者3に対して直列に存在する抵抗器57〜62を適当に切り換えることにより達成され得る。電流経路に存在する抵抗器の数を適当に選択することにより、蓄電装置によって蓄積される電荷の所与の量についてピーク放電電流の患者インピーダンスに対する依存性を低減し得る(但し解消はしない)。例えば、患者インピーダンスが15Ωである場合にはピーク電流は約25アンペアとなり、患者インピーダンスが125Ωである場合にはピーク電流は約12.5アンペアとなる(典型的な患者は約75Ωである)。
【0044】
代替的には、電極対のうち1対よりも多い電極対について1個のみの高電圧キャパシタを設け、各々の電流路毎に別個の抵抗器ネットワーク57〜59および60〜62を今まで通り設けることにより、独立制御を達成してもよい。調節され得る別の波形パラメータは波形持続時間であり、このパラメータはスイッチ・ネットワーク10および11によって制御可能である。平均第1相電流も、例えば1個または複数のキャパシタからなる第2の群を1個または複数のキャパシタからなる第1の群とは独立の電圧まで充電する第2の充電回路4を設けることにより、独立に調節可能である。独立調節のための波形パラメータとしては、限定しないが傾斜角、持続時間、第1相持続時間、第2相持続時間、電流、電圧および第1相平均電流がある。
【0045】
図6に示す等アドミタンス曲線から分かるように、体内器官、筋肉および骨のコンダクタンスは著しくばらついており、体表面でのコンダクタンスよりも遥かにばらついている。好ましい実施形態では、電気インピーダンス法(EIT)を用いて、これらの体内コンダクタンスまたはインピーダンスを決定する。電気インピーダンス法を用いて少なくとも2次元で胸郭の抵抗率分布を決定し、次いで算出された抵抗率分布を用いて各々の電流ベクトルの波形パラメータを決定する。例えば、各々の電極対毎に除細動パルスの振幅を独立に調節して、心筋および心筋周囲での最適な電流分布を達成することが可能である。かかる方法を用いると、器官自体に実際に送り届けられる電流を、体表面に位置する電極の数、位置および寸法によって決定される詳細のレベルに到るまで細かく体表面で制御することが可能である。
【0046】
最も基本的な実施形態では、EIT方法を用いて波形パラメータを決定するためには、3対の可能な電極対による3個のみの電極で十分である。図5(B)に示す好ましい実施形態では、総計で6対の[(n−1)!]の可能な電極対について4個の電極を用いる。この数は具現化のし易さおよび経費に鑑みて選択されるが、さらに多数の電極対による実施形態も可能である。
【0047】
EIT系は、ポアソンの式、
∇・ρ-1∇V=I
によって支配されており、式中、Vは電圧であり、ρは抵抗率分布であり、Iは被検領域内での印加電流源分布であり、境界条件はV0およびJ0である。EITの場合には、高周波で低振幅の信号、例えばそれぞれ60kHzで約1マイクロアンペアが用いられる。この周波数の電流源は体内には存在しないのでρ=0となり、ポアソンの式はラプラスの式となる。
【0048】
∇・ρ-1∇V=0
EITの分野では幾つかの形式の問題が研究されている。
1.「順問題」。ρ、V0およびJ0が与えられており、目標は電圧分布Vおよび電流分布Jを決定することにある。
2.「逆問題」。VおよびJが与えられており、目標はρを決定することにある。
3.「境界値」問題。V0およびJ0が与えられており、目標はρ、VおよびJを決定することにある。
【0049】
好ましい実施形態では、ρ、VおよびJは境界値問題の方法を用いて決定され、次いで、一旦ρが決定されたら、修正型逆問題を用いて最適なV0およびJ0を決定すると、心筋および心筋の近くでの所望のVおよびJが与えられて、電極対の各々について除細動波形が生成される。
【0050】
一般的な原則としては、EITの工程は、電極によって電流を注入するものであり、誘導された電圧が体表面の多数の点で測定される。好ましい実施形態では、所謂「多点参照法」を用いて電流電圧対を構成する(フアP(Hua P)、ウェブスターJG(Webster JG)、トンプキンスWJ(Tompkins WJ)、1987年、Effect of the Measurement Method on Noise Handling and Image Quality of EIT Imaging、Proc.Annu.Int.Conf.IEEE Engineering in Medicine and Biology Society、第9号、第1429頁〜第1430頁)。多点参照方法では、1個の電極を参照電極として用い、残りの電極を電流源として、電流が発生されている間に誘導電圧を各々の電極で同時に測定する。電流源の振幅は個々に変動し、各々の電極は順に参照リードとして扱われる。次いで、有限要素法を用いて微積分問題(∇・ρ-1∇V=0)をYV=Cの形態の線形代数問題に変換する。ここで、Y、VおよびCはそれぞれコンダクタンス行列、電圧行列および電流行列である。Y、VおよびCはまた、それぞれマスタ行列、節点電圧ベクトルおよび節点電流ベクトルとしても知られている。2次元問題の場合には三角形または四角形の要素によって、また3次元問題の場合には六面体によって、2次元または3次元の物理的モデルに対してメッシュ生成を行う。次いで、ディリクレの境界条件(既知の表面電圧)またはノイマンの境界条件(既知の表面電流)について参照節点または駆動電極のような位置での境界条件を設定する。マスタ行列を算出するためにはガウスの消去法またはコレスキー因子分解のような多くの方法が用いられている。
【0051】
抵抗率分布の再構成にニュートン−ラフソン(Newton−Raphson)のアルゴリズムを用いてもよい。このアルゴリズムは繰り返しアルゴリズムであり非線形問題に特に好適である。ニュートン−ラフソン法は、「目的関数」と呼ばれる誤差を最小化する。ここでは、この誤差は測定された電圧応答と推定された電圧応答との間の等加重付き平均自乗差として定義される。
Φ(ρ)=(1/2)(Ve(ρ)−V0T(Ve(ρ)−V0
当業者に公知の方法を用いて、分布を最初に推定し、次いで所与の電流入力に対する理論的な電圧応答を有限要素法を用いて算出するアルゴリズムを用いる。推定された電圧を測定された電圧から減算して目的関数を求める。目的関数が誤差閾値よりも小さい場合には、推定された分布は許容可能な推定値になったと見做される。そうでない場合には、以下の方程式を用いて抵抗率分布を更新する。
Δρk=−[Ve’(ρkTVe’(ρk)]-1{Ve’(ρkT[Ve’(ρk)−V0]}
この系列を許容可能な推定値が達成されるまで繰り返す。
【0052】
好ましい実施形態では、推定電圧行列Ve(ρ)を決定するためにテーブル・ルックアップ方法を提供する。テーブル値は、平均患者抵抗率分布に基づいて電極の正しい配置を仮定している。図21に示すように電極パッド上に解剖学的標認点126を設けることによりさらに高い精度が達成され得る。
【0053】
また、超音波のような2次的な撮像方法を提供してその相対的に高い撮像分解能を利用して電極に対する体内器官の相対値を算出することにより精度を高めてもよい。超音波のような2次的な撮像方法を用いて体内組織の位置を決定する場合には、各々の組織種別の抵抗率を決定するのにEITを用い得る。
【0054】
他の実施形態では、2次的な撮像方法によって画定される組織部位についての平均抵抗率値を決定する。このことは、標準的な画像処理方法によって肺または心筋のような組織部位を先ず画定することにより達成される。次に、算出された抵抗率分布を2次的な画像に重ね合わせる。特定の組織部位に含まれる抵抗率分布の全ての節点を共に結合して当該組織部位についての単一の抵抗率測定値とする。この結合方法は、平均、メジアンまたは他の統計学的方法もしくは画像処理方法であってよい。
【0055】
修正型逆問題を用いて最適なV0およびJ0を決定すると、心筋および心筋の近くでの所望のVおよびJが与えられて、電極対の各々について除細動波形が生成される。
多数の電極を密に充填することにより、電流発生(およびインピーダンス測定)を改善し得る。電極の多くの構成が可能である。好ましい実施形態では、電極の構成は充填形の理論を援用して決定される。多角形(2次元の場合)、多面体(3次元の場合)またはポリトープ(polytope)(n次元の場合)による規則的なタイリングを充填形と呼ぶ。充填形は、シュレーフリ(Schlaefli)の記号を用いて指定することが可能である。自己交差型多角形を単純な多角形に分解することも充填形と呼ばれ、またはさらに適切には多角形充填形と呼ばれる。図10に示すように、平面を対称にタイリングする正多面体で構成される丁度3種の正充填形が存在する。2種以上の凸正多角形による平面の充填形であって同じ多角形が同じ状態で各々の多角形の頂点を包囲しているような充填形は半正充填形と呼ばれ、またはアルキメデス型充填形とも呼ばれる。図11に示すように、平面においては8種のかかる充填形が存在する。また、3種の正充填形と8種の半正充填形との規則的な混成体である14種の部分的正(demi−regular)(または多形)充填形が存在する。これらの多面体を図12に示す。他の部分的正充填形はペンローズ・タイリングである。3次元では、空間を充填することが可能な多面体を空間充填型多面体と呼ぶ。例としては、立方体、菱形十二面体および切隅八面体がある。また、16面の空間充填体、および空間を非周期的にのみ充填するシュミット−コンウェイ(Schmitt−Conway)多面体として知られる凸多面体もある。空間充填形多面体を用いると、電極を人体の胸郭の3次元性にさらによく適合させることが可能である。好ましい実施形態では、電極充填形・パターンは立方体または六角形の正充填形である。
【0056】
別の実施形態では、前述のEIT法を用いて、胸郭上の電極の数および寸法によってのみ限定して、心臓に対して複雑な空間的分布および時間的分布の電流を任意に発生することが可能である。除細動時には、ショック前またはショック後のいずれにおいても活動波面の方向はまちまちであり予測不能であって、これは正常な洞調律の場合でも同じである。図24(B)では、ショック後波面は反時計回りに走行しているが、図25(B)では回転は時計回りである。図の矢印は波面の移動方向を表し、領域の影は、該領域での心臓サイクルの相を表す(例えば白はサイクルの0ミリ秒を表し、最も濃い灰色は110ミリ秒を表す)。波動は、僅かな百分率の細胞しか脱分極し得ず実効的な筋肉収縮を妨げているが波動が続行することを許すような心臓の部位に近付き得る。実際に、波動は続行し、波動が心臓の周囲を完全に走行する時刻までには、さらに多くの細胞が再分極しており、波動が続行することが可能になる。波動は実際に続行し、また血液はポンプ輸送されないので、除細動器による介入が存在しなければ通常は致命的な状態になる。心臓は、様々な方向に走行する多数のかかるインコヒーレントな波動を支持することが可能であり、このため、これら様々な波動にウェーブレットという用語を当てはめる。ウェーブレットが心臓の周囲を走行するときに、ウェーブレットが「回路」を完成する速度をVFサイクル速度と呼ぶ。ウェーブレットが特定の点を通過して細胞を脱分極させると、細胞はウェーブレットが戻る前に回復すなわち再分極する。
【0057】
興奮間隙部位92(図25(D))の範囲を縮小するかまたはショック前もしくはショック後ウェーブレットを停止させるかのいずれかを行うように、電流を心筋の特定の部位に送り届けることが可能であると望ましい。興奮間隙部位92の範囲は、除細動ショックの前に興奮間隙に位置していた心筋の部位を脱分極させるのに十分な電流を発生することにより、縮小するかまたは消滅する。直前で述べたEITの方法を用いて、抵抗率分布が算出される。次いで、双領域モデル、例えば(IEEE Trans.Biomed.Eng.第46号、第260頁〜第270頁(1999年)、エントシェヴァ(Entcheva))に記載されているようなモデルを用いて、装置による電気的刺激に対する心筋の予測応答を算出することが可能である。双領域モデルは、細胞内空間についての式と、膜貫通電流によって結合されている細胞外空間についての式との2つの反応拡散方程式からなる系であり得る。このモデルは、計算の複雑さを最小限にするために抵抗器とキャパシタとの並列結合としてモデル化した受動的膜挙動を仮定して、筋繊維鞘イオン・チャネルの複雑な非線形挙動を単純化している。このモデルは、一定抵抗の膜Rmによる2つの微分式からなる系である。
【0058】
【数1】

【0059】
【数2】

式中、VmおよびRmはそれぞれ膜貫通電圧および膜抵抗であり、giおよびgeは心筋の繊維構造をモデル化する細胞内伝導度テンソルおよび細胞外伝導度テンソルであり、βは細胞の表面対容積比である。興奮間隙部位92は双領域計算に基づいて位置決定され、これを影付き領域として図25(D)に示している。
【0060】
前述のEIT方法を用いて、双領域モデルが興奮間隙(図25(D)の影付き領域)を占めるものとして予測した心筋の部位に集中させられた電流による除細動ショックの前に、1または複数のパルスによって相次いで心臓を刺激する。除細動ショックによる適当な影響を蒙っていない部位に対してショック前電流を発生すると、除細動前刺激および除細動ショックの合計エネルギーに必要とされるよりも少ない合計エネルギーが得られる。例えば体前部および体後部の各電極パッド・アセンブリに16個の電極を組み入れた充填形の電極パターンを用いてよい。
【0061】
別の実施形態では、刺激用電極の少なくとも幾分かの部分を個々の心電図(ECG)監視チャネルの濾波および増幅にも接続した電極構成を提供する。好ましい実施形態では、装置内で、体前部パッドの1個の電極と体後部パッドの1個の電極との間で入力を多重化した少なくとも16個のECGチャネルが利用可能である。ECG解析のサンプリング・レートは好ましくは250Hzであり、従ってA/Dは、体前部電極および体後部電極からの交互のサンプルがあるので、500Hzでサンプリングする。EITを用いて、前述のような順問題を解くと、心外膜での活動波面の分布を算出することが可能である。例えば図24(B)および図25(B)において活動波面の経路を算出することも可能であり、同図では矢印が活動波面の経路を示している。前述のEIT方法を用いて、活動波面の経路(例えば図25(E)の影付き領域)に位置する心筋の部位に集中させられた電流による除細動ショックに続いて、1または複数のパルスによって相次いで心臓を刺激する。活動波面の前方で組織を脱分極すると、催不整脈性の活動波面が不応性の最近に刺激された部位に到達するとき、該活動波面が消滅する。
【0062】
図1を参照して述べると、可変抵抗器71および72を高電圧トランジスタ・スイッチで置き換えて、16個の電極の各々に設ける。16個の体前部電極のうち8個は一方のHブリッジ10に接続され、残りの8個は他方のHブリッジ11に接続される。代替的には、全16個が一方のHブリッジに接続されてもよい。トランジスタ・スイッチ71および72をHブリッジよりも著しく高速で、好ましくは50倍を上回る高速で切り換えることにより、各々の高電圧トランジスタ71および72の切り換えをパルス幅変調させて各々の電極に平均電流を発生することが可能である。切り換えの持続時間が約200マイクロ秒間よりも短い限りでは、心筋はパルス幅変調された(PWM)電流の平均に対して応答する。結果として、ブリッジの正相および負相の持続時間を55マイクロ秒間とし、相間遅延を10マイクロ秒間として、Hブリッジを120マイクロ秒間の周期で切り換えることも可能になる。個々の高電圧トランジスタは、ブリッジの正相および負相の両方でのパルス持続時間を5マイクロ秒間〜10マイクロ秒間としてパルス幅変調され、完全機能のEIT系に必要とされる電極の任意のものにおいて潜在的に双極性の電圧を発生することが可能になるようにする。
【0063】
本発明の幾つかの実施形態が除細動の実効性において達成し得る改善を説明する1つの可能な理論(言うまでもなく本発明はこの理論に限定されないことを理解した上で)は、次のようなものである。前述のように、仮想的電極分極(VEP)の理論は、部分的に伝導性である媒体(各心空間の血液、肺、間質液、および胸腔内のその他器官)内に含まれている別の部分的に伝導性である媒体(心筋)内の電流に起因して、正分極域および負分極域が互いに隣接して同時に存在することにより除細動時の心筋の分極が特徴付けられるような現象を記述する。VEPの関連で定義される「相特異点」とは、正分極(従来の電気生理学の用語で「脱分極」と同義)域と、非分極域と、負分極(「過分極」と同義)域によって包囲されている臨界点である。これらの相特異点が除細動の再開の起源となる。ショック後興奮は、「開放興奮」と呼ばれる過程を通じて正分極域と負分極域との間の非分極部位で開始する。開放興奮は、「興奮間隙」と呼ばれるショックに誘発された非分極部位を介して伝播し、正分極部位が興奮性を回復すると、除細動を開始し得る興奮旋回路が形成される。二相除細動の場合には、ショックの第2相が、負分極組織を脱分極することによりVEP効果を無化する。再分極した組織を脱分極するためには、既に脱分極していた組織をさらに脱分極する場合よりも少ないエネルギーしか必要でないので、実効的な二相除細動によって正分極を保ちながら負分極を反転させることにより心筋の略完全な脱分極を達成する。但し、二相波形および多相波形での興奮間隙であっても、単相波形に対して相対的に見ると縮小はしているが依然存在しており、二相除細動波形の実効性の大幅な改善の可能性は依然として残されている。
【0064】
図13は、エフィモフ(Efimov)による研究でのシミュレーションの結果を示す(Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.、2000年、第279号、第H1055頁〜1070頁)、エフィモフ(Efimov))。淡い灰色の領域90は正分極部位であり、黒い領域91は負分極部位である。白い領域92は興奮間隙部位である。図14(A)および図14(B)は、電極面積が変化したときに起こる事象を模式図として示している。同図から分かるように、電極の寸法を増すことにより、電界線の接触角φ93が興奮間隙の領域において増大して、これにより興奮間隙の面積範囲を縮小する。興奮間隙の面積範囲が縮小すると、除細動の成功率が改善されて除細動閾値が低下する。
【0065】
他の実施形態では、波形が各々一連のパルス系列で構成されていてもよい。パルス系列が個々のパルスを重ね合わせずに挿入し合うように電流ベクトルの相対的なタイミングを設計してよい。
【0066】
図26および図27を参照して述べると、別の実施形態では、心臓において、一方の対の電流ベクトル205が心臓の体前部部分202の心外膜200の心筋繊維配向と実質的に整列し(例えば心筋繊維配向の長軸に平行となる)、他方の対の電極の電流ベクトル206が心臓の体後部部分203の心外膜201の繊維配向と実質的に整列するように電極対を構成し得る。3次元伝導性媒体では電流分布も3次元となり、空間内の各々の点が、電流密度を特定する3空間ベクトル値で最もよく記述される。従って、「電流ベクトル」という用語は、このさらに一般的な概念の単純化であり、空間内での電流の流れの平均的な方向を記述するベクトルを与えるように正規化された電流密度の空間平均を記述する。心筋は異方的伝導性を有し、繊維配向に沿った長軸が相対的に高い伝導性を有することが判明している。従って、この方法は、心筋内での電流の流れを強化する(心筋を通る経路に沿ってインピーダンスを低下させ、心筋を流れる電流をさらに多くすることから)。この方法はまた、2対よりも多い電極を含む実施形態にも適用可能である。例えば、4対の電極を、各々の電流ベクトルを心臓の一部の繊維配向と整列させた状態で用いてよい。一実施形態では、心臓の4つの部分は左体前部、右体前部、右体後部、および、左体後部である。
【0067】
図28(A)および図28(B)を参照して述べると、上の段落で説明した方法はまた、全ての刺激電極および植え込み型心臓刺激装置の装置外被が胸郭外に位置しているが皮下に植え込まれている「リードレス(leadless)」の植え込み型除細動器システムを提供するように適用することも可能である。所謂植え込み型除細動器(ICD)では、除細動に必要とされるエネルギーを低減するために、装置は刺激電極の少なくとも1個を心臓の内部、典型的には右心室および上大静脈に配置されているカテーテルに配置することを必要としており、このようにして植え込み型装置の寸法を最小にしている。
【0068】
図28(A)を参照して述べると、2個の別個の除細動器外被207および208が、刺激電極209、210および212と共に設けられている。右心室外被207について対応する刺激電極209および210、ならびに左心室外被208について対応する刺激電極212が、それぞれ心臓の体後部部分および体前部部分の心筋の繊維配向に実質的に整列した電流ベクトル205および206を生ずる。右心房刺激電極209および210(電気的には1つの電極として作用する)が肋間腔の上に配置されて除細動インピーダンスを低減し、また隣接する肋骨にはステンレス鋼合金(例えば316L)、コバルト合金F90もしくはチタンのような適当な材質の装着用金属部品が装着されているか、または所定位置に縫合されている。2対の刺激電極を用いると、心臓のさらに広い領域にわたってさらに一様な電流分布が与えられる。人体の心臓の胸郭に対する角度配向のため、肋間腔は心臓の投影周に対して垂直に配向する。このため、単一の刺激電極を肋間腔に整列させると、インピーダンスを低減して治療用電流レベルを高め得るが、結果として心筋の電流分布は相対的に非一様となる。この電流密度の集中化は、少なくとも2個の共通に接続されている刺激電極209および210を異なる肋間腔に配置することにより解消する。具体的な肋間腔同士は隣接していてもよいし、または非刺激性肋間腔を介在させていてもよい。
【0069】
図29を参照して述べると、その全てまたは幾分かの部分が刺激電極に刺激を与える「アクティブ」・キャン(active can)として構成された外被207および208が、シリコーン−ポリウレタン共重合体のような生体適合性材料で構成された共通のシース211に収容された導体に接続されている。左心房外被208に対応する刺激電極212は、剣状突起の直下に位置している。好ましくは、この電極は、よりよい電流分布を与えるように胸郭に対する心臓の投影周に平行に配向される。マイクロプロセッサ213および214は導体215および216を介して通信して、除細動時のステータス情報および除細動パルスの同期を提供する。好ましくは、マイクロプロセッサの1つが1次プロセッサとして作用する。1次プロセッサは、自己試験および体外装置との通信のように、分散方式よりも集中方式での方がよりよく実行される作用を受け持つ。ECG信号処理も1次プロセッサに局限されていてよく、2次プロセッサは、導体215および216を介してそのとき通信している1次プロセッサによって適当と見做された時刻に除細動パルスを供給する単一作用を果たし得る。好ましくは、1本のワイヤ215が、各プロセッサの間で多様なステータスおよびデータを供給する単一ワイヤのシリアル・インタフェイスとなり、第2のワイヤ216がハードウェア・レベルの割り込みを掛けて、2次的な除細動パルスのタイミングのマイクロ秒レベルでの制御を行う。図28(B)に示す関連の実施形態では、患者の体内でのワイヤの本数を最小にする代替的な構成を提供するために、外被207に収容されている除細動回路の一部である電極209および210の導体が左心房外被208を通り、導体212が外被207を通っている。
【0070】
別の実施形態では、心外膜の繊維配向とよりよく整列した電流ベクトル205および206を発生する改善された配置を得るように、超音波撮像または磁気共鳴撮像(MRI)のような撮像方法を用いて、装置の植え込みの前に胸腔内での心臓の正確な位置および角度配向を決定してもよい。除細動器外被207および208ならびに刺激電極209、210および212は、繊維配向200および201に対して予測される電流ベクトル205および206の整列をより近接させるように配置される。MRIを用いる実施形態では、MRIを行う工程の前に、体外式経胸腔ペーシング電極を図8(A)または図8(B)に示すような配置で患者に装着してよい。次いで、外被207および208、ならびに刺激電極209、210および212の配置を決定するのに用いられる心筋繊維の配向を示す電流ベクトル空間の3次元表現を形成するように、MRI励起パルスと同期した試験的ペーシング・パルス(1または複数)を、患者に対して発生してよい。
【0071】
別の実施形態では、抵抗回路55および56を除去して、波形を、従ってまた第1相平均電流を、Hブリッジ10および11のスイッチをパルス幅変調させることにより調節する。この構成は、増幅器設計業者には公知のクラスD増幅器構成となる。最も単純な形態では、図15に示すように、モード切換増幅器がHブリッジと負荷とからなっている。増幅器は典型的には、出力段によって分類される。一般的な出力段トポロジー(クラスA、B、ABおよびD)のうち、クラスD増幅器が最大効率を示す。線形出力段(クラスA、BまたはAB)は、スピーカに対して電流ソースおよび電流シンクを行いながらかなりのバイアス電流を引き出すため、高電圧設計に特に好適という訳ではない。非線形(クラスD)出力段はこのバイアス電流を解消している。好ましい実施形態では、図16に示すように、クラスD増幅器が、処理手段5からの制御電圧の孤立化、濾波およびレベル移動を行う入力前置増幅器95と、鋸波発振器96と、コンパレータ97と、2個のMOSFETドライバ98および99と、Hブリッジ・スイッチ100〜103とからなっている。コンパレータは、サンプリング期間の持続時間を決定する発振周波数で入力信号をサンプリングする。このように、発振器周波数は、クラスD増幅器の全体性能の重要な因子となっている。図17に示すように、コンパレータ出力104はHブリッジを駆動するパルス幅変調型(PWM)の矩形波である。PWM矩形波104は、入力が鋸波(VRAMP)105および制御信号(VIN)106であるようなコンパレータによって形成される。次いで、Hブリッジは異なる形式で矩形波を出力する。所与の入力レベルについて、コンパレータ出力は、鋸波周波数によって決定される周期のデューティ・サイクル変調型矩形波である。PWM矩形波はHブリッジ・ドライバ100〜103を制御し、MOSFETの対向対をオフおよびオンにし、これにより単一周期内で負荷に対する電流を反転させる。出力は、Hブリッジ矩形波出力からの高周波数内容を除去するキャパシタ濾波器、またはインダクタ/キャパシタ濾波器の組合せによって濾波され得る。
【0072】
代替的には、胸腔の測定を、心臓および周囲組織の撮像が可能な超音波トランスデューサを用いて行ってもよい。図18に示すように、超音波トランスデューサを一体型除細動パッドに組み入れてよい。好ましい実施形態では、電極の中心に超音波伝導性ゲル107で覆われる開口を設ける。ゲルは2層構造であって、利用前に超音波プローブを取り付けるために患者に対面する面にさらに強力な接着剤を設ける。
【0073】
他の実施形態では、図19に示すように2個以上の別個の除細動器が存在していてもよい。第1の除細動器110がマスタ除細動器として作用し、付加的な除細動器111がマスタ除細動器110と同期してエネルギーを発生するスレーブ除細動器として作用する。同期は通信手段114によって行われる。好ましくは、通信手段114は単純なスイッチとして具現化される。従来の除細動器では、エネルギーの発生は、前部パネルまたは1組の除細動パドルに位置する放電スイッチ112を閉じることにより開始される。スイッチを閉じると、処理手段5の制御下で除細動系列が開始する。充電制御利用者入力115を介して、両方の除細動器110および111の高電圧キャパシタの充電が開始する。適当な時刻に医師が放電ボタン112を押す。これにより、第1の除細動器110の処理手段5がスレーブの放電スイッチを閉じて第2の除細動器111で放電系列を開始し、このとき、第1の除細動器110もまた放電系列を開始する。通信手段114の結線は好ましくは、エネルギー発生ワイヤと同じケーブル内にワイヤが位置するように構成され、これにより追加のケーブル配線を減少させる。通信手段114はまた、除細動器ステータスについての付加的情報を与えるディジタル通信方法を組み入れていてもよい。
【0074】
除細動器パッド123は、図20に示すように、全ての接続を単一のコネクタ120に一括し得る。除細動器パッドは、パッド123の作用域122の間に継目線121が位置するように構成してよく、継目線121は、保管時に作用域に皺を形成せずにパッド123を折り畳むことが可能であるように、作用域よりも高いコンプライアンスを有するものとする。
【0075】
別の実施形態では、生理学的パラメータ、例えば心電図(ECG)をEIT画像と共に測定し、ECGデータの解析に基づいて除細動ショックの成功の推定を当該装置によって行う。ショック成功率の推定値に応じて、除細動と胸郭圧迫との両方を含む協働式蘇生の試みにおいて患者に適正な処置が提供されているか否かの判定を行う。かかる処置は、入力促進に応答して手動で、または半自動化方式もしくは完全自動化方式のいずれかで提供することが可能である。かかるシステムのブロック図および流れ図を図22および図23に示す。
【0076】
図21に示すように、横隔膜刺激(DS)用に1個または複数の付加的電極125を設けてよく、DS電極(DSE)が患者の横隔膜の上に配置されるように付加的電極125を体前部電極に組み入れてよい。横隔膜刺激は、心肺蘇生(CPR)時に酸素供給の改善のための肺の空気交換を引き起こす。DSEからの刺激電流の戻り経路は、既存の電極の1つを通過する。EIT撮像法または他の撮像法を用いて、本特許で前述されているように、電流分布を調節して最適の刺激を達成することが可能である。DSEは除細動および心臓ペーシングと統合されて、自動方式または半自動方式での協働式蘇生の試みを可能にする。統合型蘇生は、Michigan Instruments(米国ミシガン州)製のピストン式システムまたはRevivant Corp.(米国カリフォルニア州)製の圧迫帯システムのような胸郭圧迫を提供する手段を組み入れていてもよい。図23は、1つの可能な統合型蘇生プロトコルの判定流れ図を示す。
【0077】
以上に記載した以外の本発明のその他多くの実施形態が、特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲内にある。本発明は、デフィブリレーションおよびカーディオバージョンの両方に適用されるものであり、請求項における除細動(デフィブリレーション)に対する参照はカーディオバージョンも包含するものと解釈されたい。本発明の幾つかの実施形態は、デフィブリレーションおよびカーディオバージョンよりも広範にわたる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内を横断して少なくとも2本の電気的経路を確立するために該患者の体外に装着される3個以上の電極を備え、
該体内を横断するインピーダンス分布を表すインピーダンス情報を決定し、該少なくとも2本の電気的経路の各々を横断する電磁波形を発生し、該波形の少なくとも1つのパラメータが、該体内の1箇所または複数箇所の位置において選択された電流密度分布を発生するように該インピーダンス情報を用いて選択される、体内への体外からの電磁的刺激を行うための除細動器。
【請求項2】
前記電磁的刺激は心臓の除細動(デフィブリレーションまたはカーディオバージョン)のためのものであり、前記インピーダンス分布は胸郭を横断するものであり、前記電流密度分布は該心臓でのものである、請求項1に記載の除細動器。
【請求項3】
前記インピーダンス情報を決定する際には、電気インピーダンス法(EIT)が用いられる請求項1または請求項2に記載の除細動器。
【請求項4】
前記インピーダンス情報を決定する際には、組織部位の位置を決定するために身体を撮像し、該組織部位の位置および該組織の抵抗率から経胸腔インピーダンス分布が算出される請求項1または請求項2に記載の除細動器。
【請求項5】
前記撮像は超音波撮像からなる、請求項4に記載の除細動器。
【請求項6】
患者の胸腔を横断して心臓を通る複数の電気的経路を確立するために該患者の胸郭に装着される3個以上の電極を備え、
該電気的経路の少なくとも2本の各々を横断して除細動波形を発生させ、該波形が発生するときに通過する該電極の各々の面積は該心臓の投影面積の70%未満であり、該胸腔の同じ側の該電極の面積和は該心臓の投影面積の80%よりも大きい、除細動器。
【請求項7】
前記患者の電気的パラメータ、心電図パラメータ、生理学的パラメータまたは解剖学的パラメータを測定し、少なくとも幾つかの状況下では異なる電気的経路毎に異なっている除細動波形を発生し、各々の波形の少なくとも1つのパラメータは該測定されたパラメータに依存している、請求項6に記載の除細動器。
【請求項8】
前記患者の電気的パラメータ、心電図パラメータ、生理学的パラメータまたは解剖学的パラメータの測定により、経胸腔インピーダンス分布が決定される請求項7に記載の除細動器。
【請求項9】
前記波形が発生するときに通過する前記電極の各々の面積は、前記心臓の投影面積の60%未満である、請求項6に記載の除細動器。
【請求項10】
前記波形が発生するときに通る前記電極の各々の前記面積は、前記心臓の投影面積の50%未満である、請求項6に記載の除細動器。
【請求項11】
前記胸腔の同じ側の前記電極の面積和は、前記心臓の投影面積の90%よりも大きい、請求項6に記載の除細動器。
【請求項12】
前記胸腔の同じ側の前記電極の面積和は、前記心臓の投影面積の100%よりも大きい、請求項6に記載の除細動器。
【請求項13】
前記電極は、前記電気的経路が前記患者の胸郭の体前部と体後部との間に延在するように、体前部位置および体後部位置に配置されている、請求項6に記載の除細動器。
【請求項14】
前記電極は、前記電気的経路が前記患者の胸郭の左側と右側との間に延在するように体側位置に配置されている、請求項6に記載の除細動器。
【請求項15】
前記波形は多相である、請求項6に記載の除細動器。
【請求項16】
前記波形は単相である、請求項6に記載の除細動器。
【請求項17】
前記電極の少なくとも2個を組み合わせて、1つのユニットとして患者に装着されかつ該患者から取り外される1個の単一体電極パッドとする、請求項6に記載の除細動器。
【請求項18】
前記電極が支持されている前記パッドの区域の間に継目線が存在していて、該継目線が、前記電極が支持されている該区域に皺を形成せずに前記パッドを折り畳み得るように構成されている、請求項17に記載の除細動器。
【請求項19】
多数の電極が前記単一体電極パッド上に配置されている、請求項17に記載の除細動器。
【請求項20】
前記多数の電極は充填密度を高めるように配置されている、請求項19に記載の除細動器。
【請求項21】
前記電極は多角形充填形の形態で配置されている、請求項20に記載の除細動器。
【請求項22】
前記充填形は、平面を対称にタイリングする正多面体からなる正充填形である、請求項21に記載の除細動器。
【請求項23】
前記多面体は三角形、正方形または六角形のいずれか1つである、請求項22に記載の除細動器。
【請求項24】
患者の胸腔を横断して心臓を通る少なくとも2本の電気的経路を確立するために該患者の胸郭に装着される3個以上の電極を備え、該少なくとも2本の電気的経路の各々を横断して二相または多相の除細動波形を発生し、少なくとも幾つかの状況下では、該発生する多相波形は該少なくとも2本の電気的経路毎に異なっている除細動器。
【請求項25】
前記少なくとも2本の電気的経路を横断する経胸腔インピーダンス分布を決定し、各々の多相波形の少なくとも1つのパラメータが該経胸腔インピーダンス分布に依存している前記二相または多相の除細動波形を発生する請求項24に記載の除細動器。
【請求項26】
2対の電極が存在しており、各々の対の一方の電極が、前記胸郭の全体的に対向する両面に配置されている、請求項24に記載の除細動器。
【請求項27】
各々の対の一方の電極が、前記胸郭の体前部面および体後部面に位置している、請求項25に記載の除細動器。
【請求項28】
1つのブリッジ回路が前記二相または多相の除細動波形の各々を発生する1対のブリッジ回路を更に備える請求項24に記載の除細動器。
【請求項29】
前記二相または多相の除細動波形は時間的に重なるように発生する、請求項24に記載の除細動器。
【請求項30】
前記二相または多相の除細動波形は同時である、請求項29に記載の除細動器。
【請求項31】
前記二相または多相の除細動波形は逐次的である、請求項24に記載の除細動器。
【請求項32】
電極へまたは電極から除細動パルスを伝達する第1の電気的ワイヤと、
電気ケーブルに接続されている金属層と、
該金属層から皮膚へ前記パルスを伝達する伝導性皮膚接触層と、
超音波センサと、
該超音波センサを超音波撮像回路に接続する第2の電気的ワイヤと
からなる除細動電極。
【請求項33】
患者の胸腔を横断して心臓を通る複数の電気的経路を確立するために該患者の胸郭に装着される3個以上の電極と、
少なくとも2種の全体的に異なる除細動波形を発生する少なくとも2個の異なる除細動回路と
を備え、該少なくとも2本の電気的経路の各々を横断して該少なくとも2種の異なる除細動波形の一方ずつを発生し、該少なくとも2個の異なる除細動回路の間の通信により該少なくとも2種の除細動波形の発生を同期させる経胸腔式の除細動器。
【請求項34】
前記除細動回路は各々、プロセッサと、エネルギー発生回路と、切換回路とからなる、請求項33に記載の除細動器。
【請求項35】
前記各除細動回路は別個の外被に収容されており、前記通信は該外被の間で生ずる、請求項34に記載の除細動器。
【請求項36】
前記切換回路は、二相除細動波形または多相除細動波形を発生することが可能である、請求項34に記載の除細動器。
【請求項37】
前記発生を同期させるため、前記除細動回路同士の間のアナログ通信を含んでいる、請求項33に記載の除細動器。
【請求項38】
前記発生を同期させるため、前記除細動回路同士の間のディジタル通信を含んでいる、請求項33に記載の除細動器。
【請求項39】
前記各除細動回路は別個の外被に収容されている、請求項33に記載の除細動器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(A)】
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【図5(B)】
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【図5(C)】
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【図5(D)】
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【図6】
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【図7】
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【図8(A)】
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【図8(B)】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14(A)】
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【図14(B)】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24(A)】
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【図24(B)】
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【図24(C)】
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【図25(A)】
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【図25(B)】
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【図25(C)】
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【図25(D)】
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【図25(E)】
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【図26】
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【図27】
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【図28(A)】
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【図28(B)】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−56287(P2011−56287A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257829(P2010−257829)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【分割の表示】特願2004−320875(P2004−320875)の分割
【原出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(504242032)ゾール メディカル コーポレイション (42)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Medical Corporation
【Fターム(参考)】