説明

除草剤組成物

【課題】 新規除草剤の提供
【解決手段】エスプロカルブおよびジフルフェニカンを有効成分として含有することを特徴とする除草剤組成物および該除草剤組成物を使用する除草方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2種類の公知の除草活性成分を混合することにより、各種の有害な雑草を効率的に防除する除草剤組成物、並びにムギ用除草剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスプロカルブは水稲用除草剤として既に実用化されている化合物である。また、ジフルフェニカンはムギ用除草剤として既に実用化されている化合物である。しかし、それらの混合剤が実際に試験された例は知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、ムギ用除草剤として数多くの化合物が実用化されているが、既存の薬剤はムギ類に薬害を及ぼすことなく、対象雑草のみを選択的に防除するという要求を必ずしも完全に満たすものではない。
【0004】
エスプロカルブ〔一般名はEsprocarb。以下、化合物(A)と記載する。〕は水稲用除草剤として既に実用化されている化合物である。また、ムギ用除草剤としても開発中の化合物であるが、ムギ栽培上問題となる一部の雑草に対して効果が低い。
【0005】
また、ジフルフェニカン〔一般名はDiflufenican。以下、化合物(B)と記載する。〕はムギ用除草剤として既に実用化されている化合物であるが、ムギ栽培上問題となる一部の雑草に対して効果が低い。
【0006】
これらの化合物はムギ類に対して高い安全性が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、化合物(A)と化合物(B)を有効成分として含有することを特徴とする除草剤(以下、本発明組成物と称する)が、これら化合物を単独として用いた場合の欠点が補われるだけでなく、優れた相乗作用を奏することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
〔1〕 化合物(A)および化合物(B)を有効成分として含有することを特徴とする除草剤組成物。
【0008】
〔2〕 〔1〕記載の除草剤組成物を使用する除草方法。
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明組成物の除草効果は化合物(A)と化合物(B)とを混合した場合のそれぞれの合計にとどまらず相乗的除草効果を有し、更に低薬量で対象雑草を防除することができる。また、本発明組成物はコムギに対して何ら影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明組成物中の化合物(B)の代わりに、下記の化合物の一種以上を加えて混合することもできる。
例えば、トリアレート(triallate/一般名)、クロルトルロン(chlortoluron/一般名)、ビフェノックス(bifenox/一般名)、イソキサベン(isoxaben/一般名)、トリフルラリン(trifluraline/一般名)、リニュロン(linuron/一般名)、プロメトリン(prometryn/一般名)、メタベンズチアズロン(methabenzthiazuron/一般名)、トリアスルフロン(triasulfuron/一般名)、ペンディメタリン(pendimethaline/一般名)、ネビュロン(neburon/一般名)、フルロクロリドン(flurochloridone/一般名)、フェノキサプロップーPエチル(fenoxaprop-p-ethyl/一般名)、イマザメタベンズーメチル(imazamethabenz-methyl/一般名)、R-フランプロップイソプロピル(R-flamprop-isopropyl/一般名)、サルコトリオン(sulcotrione/一般名)、クロディナフォップープロパルギル+クロキントセットーメキシル(clodinafop-propargyl +cloquintcet-mexyl/一般名)、ジクロフォップーメチル(diclofop-methyl/一般名)、メコプロップ(mecoprop/一般名)、メコプロップーP(mecoprop-p/一般名)、アイオキシニル(ioxynil/一般名)、アイソプロチュロン(isoproturon/一般名)、アミドスルフロン(amidosulfuron/一般名)、プロスルフォカルブ(prosulfocarb/一般名)、ダイカンバ(dicamba/一般名)、フルオログリコフェンーエチル(fluoroglycofene-ethyl/一般名)、メトスルフロンーメチル(metsulfuron-methyl/一般名)、フルロキシピル(fluroxypyr/一般名)、メトシュラム(metosulam/一般名)、フロラシュラム(florasulam/一般名)、ブロモキシニル(bromoxynil/一般名)、クロピラリド(clopyralid/一般名)、2,4-D、MCPA、MCPB、ベンタゾン(bentazone/一般名)、ジクロルプロップーP(dichlorprop-p/一般名)、トリベニュロンーメチル(tribenuron-methyl/一般名)、DNOC、シアナジン(cyanazine/一般名)、チフェンスルフロンーメチル(thifensulfuron-methyl/一般名)、ピクロラム(picloram/一般名)、プロスルフロン(prosulfuron/一般名)、クロルスルフロン(chlorsulfuron/一般名)、トリトスルフロン(tritosulfuron/一般名)、イマザモックス(imazamox/一般名)、シマジン(simazine/一般名)、カルフェントラゾンーエチル(carfentrazone-ethyl/一般名)、グリフォサート(glyphosate/一般名)、グルフォシネートーアンモニューム(glufosinate-ammonium/一般名)、アクロニフェン(aclonifen/一般名)、ラクトフェン(lactofen/一般名)、オルベンカーブ(orbencarb/一般名)、フルポキサム(flupoxam/一般名)、メトクスロン(metoxuron/一般名)、ターブトリン(terbutryn/一般名)、トラルコキシジム(tralkoxydim/一般名)、ピコリナフェン(picolinafen/一般名)、IPC(chlorpropham/一般名)、ピラスルフォトール(pyrasulfotole/一般名)、イオドスルフロン(iodosulfuron/一般名)、フルカルバゾン(flucarbazone/一般名)、フラータモン(flurtamone/一般名)およびフルフェナセット(flufenacet/一般名)等があげられる。
【0011】
化合物(A)と上記化合物を混合して使用することにより、殺草スペクトラムの拡大、施用薬量の低減、除草効果の持続等が期待できる。
【0012】
本発明組成物は、化合物(A)1重量部当たり化合物(B)0.01〜1重量部、好ましくは化合物(A)1重量部当たり化合物(B)0.01〜0.1重量部を含む。
【0013】
本発明組成物の処理薬量は、生育を阻止すべき特定の対象植物の種類などにより左右されるが、有効成分として化合物(A)が1〜1000g/a、好ましくは5〜100g/aであり、化合物(B)が0.01〜10g/a、好ましくは0.1〜5g/aである。
【0014】
本発明組成物は、本発明組成物中に含まれる化合物(A)と化合物(B)のそれぞれの除草効果が単に相加的に得られるだけでなく、相乗的な作用を有し、それぞれの使用薬量を低減できる。
【0015】
本発明組成物は特にムギ類栽培において有用であり、土壌処理や茎葉処理で薬害を与えることなく多くの雑草を防除する。
【0016】
また、上記以外の各種作物に対しても有用であり、その他の果樹園などの農園芸分野及び運動場、空き地、林地、タンクヤード、線路端などの非農耕地における各種雑草の防除にも適用でき、雑草防除にあたって大きな経済的効果を示す。
【0017】
本発明組成物は、通常固体又は液体希釈液からなる担体と混合した製剤の形態で使用するが、界面活性剤を更に混合した製剤の形態での使用が好ましい。
【0018】
担体として、例えば、クレー、タルク、ベントナイト、珪藻土、ホワイトカーボン等の固体担体、及び水、アルコール類(イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、塩素化炭化水素類(クロロベンゼン等)、エーテル類(アニソール等)、ケトン類(シクロヘキサノン、イソホロン等)、エステル類(酢酸ブチル等)、酸アミド類(N−メチルピロリドン等)等の液体担体があげられる。
【0019】
界面活性剤として、例えば、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキル琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、アルキル型燐酸エステル、アルキルフェノール型燐酸エステル等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン(プロピレン)脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような植物誘導体があげられる。
【0020】
本発明組成物は、所望により乳化剤、湿潤剤、分散剤、結合剤、浸透剤、展着剤、安定剤などを添加し、乳剤剤、液剤、水和剤、粉剤、粒剤、顆粒剤、懸濁剤等任意の剤型にて実用に供することができる。
【0021】
この際、同時に複数の公知農薬との混合使用も可能である。
【0022】
次に本発明化合物を用いる場合の製剤の配合例を示す。但し本発明の配合例は、これらのみに限定されるものではない。なお、以下の配合例において「部」は重量部を意味する。
【0023】

〔水和剤〕
化合物(A)+化合物(B) 5〜80部
固体担体 10〜85部
界面活性剤 1〜10部
その他 1〜5 部
その他として、例えば固結防止剤などがあげられる。
【0024】
〔乳剤〕
化合物(A)+化合物(B) 1〜80部
液体担体 30〜95部
界面活性剤 5〜15部
〔フロアブル剤〕
化合物(A)+化合物(B) 5〜70部
液体担体 15〜65部
界面活性剤 5〜12部
その他 5〜30部
その他として、例えば凍結防止剤、増粘剤等があげられる。
【0025】
〔顆粒水和剤(ドライフロアブル剤)〕
化合物(A)+化合物(B) 0.1〜90部
固体担体 0〜98.9部
界面活性剤 1〜20部
その他 0〜10部
その他として、例えば結合剤、分解防止剤等があげられる。
【0026】
〔粒剤〕
化合物(A)+化合物(B) 1〜20部
固体担体 80〜99部
その他 0〜19部
その他として、例えば結合剤、分解防止剤等があげられる。
【実施例】
【0027】
以下本発明組成物を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明における化合物、製造量、剤型等は実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」は全て重量部を意味する。
【0028】
〔配合実施例1〕 フロアブル
化合物(A) 30部
化合物(B) 0.75部
アグリゾール S−711 8部
(非イオン性界面活性剤:花王(株)商品名)
ルノックス 1000C 1.25部
(アニオン性界面活性剤:東邦化学工業(株)商品名)
1%ロドポール水 20部
(増粘剤:ローンプーラン社商品名)
エチレングリコール 8部
(凍結防止剤)
水 32部
以上を均一に混合した後、湿式粉砕してフロアブル剤とする。
【0029】
〔配合実施例2〕 粒剤
化合物(A) 20部
化合物(B) 0.5部
ベントナイト 55部
タルク 24.5部
以上を均一に混合粉砕した後、少量の水を加えて攪拌混合捏和し、押出式造粒機で造粒し、乾燥して粒剤とする。
【0030】
〔配合実施例3〕 乳剤
化合物(A) 60部
化合物(B) 1.5部
キシレン 30部
イソホロン 7部
ソルポール3005X 1.5部
(非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との混合物:東邦化学工業(株)商品名)
以上を均一に混合して乳剤とする。
【0031】

〔配合実施例4〕 水和剤
化合物(A) 40部
化合物(B) 1部
ジークライトPFP 49部
(カオリン系クレー:ジークライト工業(株)商品名)
ソルポール5050 3部
(アニオン性界面活性剤:東邦化学工業(株)商品名)
ルノックス1000C 5部
(アニオン性界面活性剤:東邦化学工業(株)商品名)
カープレックス#80 (固結防止剤) 2部
(ホワイトカーボン:塩野義製薬(株)商品名)
以上を均一に混合粉砕して水和剤とする。
【0032】
次に、化合物(A)と化合物(B)を混合した場合に、単剤どうしの効果から期待される効果を上回る効果を示すことを試験例で示す。
【0033】
除草剤混合物の相乗的除草効果については、次のように説明することができる。即ち、個々の活性化合物は、その除草活性にそれぞれ欠点を示す場合が多くあるが、その場合2種の活性化合物を組み合わせた除草活性が、その2種の化合物の各々の活性の単純な合計(期待される活性)よりも大きくなる場合にこれを相乗作用という。2種の除草剤の特定組み合わせにより期待される活性は、次のように計算することができる。(コルビー(Colby S.R.)、除草剤の組み合わせの相乗及び拮抗作用反応の計算、ウィード(Weed)、第15巻、20〜22巻(1967年)を参照)
C=α+β−(α・β/100)
α:除草剤Aをakg/haの量で処理した時の抑制率
β:除草剤Bをbkg/haの量で処理した時の抑制率
C:除草剤Aをakg/ha、除草剤Bをbkg/haの量で処理した場合に期待される抑制率
即ち、実際の抑制率が上記計算より大きいならば組み合わせによる活性は相乗効果を示すということができる。
【0034】
〔試験例1〕 土壌処理による除草効果試験
内径11.5cmのプラスチック製ポットに殺菌した畑地土壌を入れ、カズノコグサとコムギ(品種:農林61号)種子をスポット状に播き、0.5cm覆土した。播種当日に5リットル/aの散布水量で土壌処理を行った。散布の際の薬液は、前記配合例に準じて適宜調整された水和剤を水で希釈して小型スプレーにて散布した。薬液散布68日後に、地上部生体重を測定し、次の式で抑制率(%)を求めた。
【0035】
抑制率(%)=(1−処理区の生体重/無処理区の生体重)×100
第1表に化合物(A)と化合物(B)の単剤の除草効果を示した。
【0036】
第2表に化合物(A)と化合物(B)の混合した場合の除草効果を示した。
表中、Eは実測値、Cは期待値を表し、期待値は前期コルビーの式より求めた値を示す。
【0037】
第1表 単剤の除草効果(抑制率%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
有効成分
化合物 の処理薬量 カズノコグサ コムギ
(g/a)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
15 9 0
(A)
30 35 0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
0.375 3 0
(B)
0.75 7 0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

第2表 混合剤の除草効果(抑制率%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
各有効成分 カズノコグサ コムギ
の処理薬量
(g/a) (E) (C) (E) (C)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(A) + (B)
100 12 0 0
15 + 0.375
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(A) + (B)
100 40 0 0
30 + 0.75
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上の結果から明らかな様に、本発明組成物の除草効果は化合物(A)と化合物(B)とを混合した場合のそれぞれの合計にとどまらず相乗的除草効果を有し、更に低薬量で対象雑草を防除することができる。また、本発明組成物はコムギに対して何ら影響を及ぼすことがなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明組成物は、除草剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスプロカルブおよびジフルフェニカンを有効成分として含有することを特徴とする除草剤組成物。
【請求項2】
請求項1の除草剤組成物を使用する除草方法。

【公開番号】特開2007−238513(P2007−238513A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63949(P2006−63949)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】