説明

除雪機

【課題】安全且つ簡単な構造であって、水分の多い雪でもしっかりと掻き取って飛ばすことのできる除雪機を提供する。
【解決手段】駆動部であるモータ2によって駆動されて水平方向の軸線回りに回転して除雪する回転体3を備えた除雪機であって、回転体3の回転方向はその前側において上から下へと向かう方向であり、該回転体3で掻かれた雪を回転体3の回転に沿って回転体3の後方から上方へと案内するフード20が設けられ、回転体3の外周面には、その軸線回りに螺旋を描くようにブラシ50が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転によって除雪する除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の除雪機としては、下記特許文献1〜3のように、螺旋状の刃を左右一対備えたオーガを回転させることで雪を幅方向中央に掻き集め、その掻き集めた雪をオーガの後側に位置するブロアによってシュートから上方に放出する構造のものが公知である。このオーガ式の除雪機は、硬い刃の回転によって雪を切り崩していくことができるので、水分が多くて固まった雪を除去することに適している。
【0003】
しかしながら、雪を掻き集めるためのオーガの他に集めた雪を飛ばすためのブロアも必要になるので、装置が大がかりで複雑なものとなる。また、硬い刃を回転させる構造であるので、怪我をしないように十分に注意しながら作業を行う必要がある。
【0004】
その一方、下記特許文献4のように、オーガを用いるのではなく、回転ブラシを用いた除雪機もある。該回転ブラシは線材が回転軸全体に放射状に植設されたものであって、該回転ブラシを用いた除雪機では、線材の先端部の集合により構成される回転ブラシの外周面で雪を後方に掻き寄せて、オーガ式と同様にブロアとシュートによって上方に飛ばす構成となっている。しかしながら、水分が多くて重い雪や固まった雪の場合、線材が放射状に植設された回転ブラシではその回転ブラシの外周面が雪の表面を滑ってしまって雪をしっかりと掻き取ることができないという問題があり、特に、一般家庭で使用されるような比較的小型の除雪機を想定した場合には出力が小さいこともあって雪をしっかりと掻き取ることが難しい。また、オーガ式と同様にブロアとシュートによって雪を飛ばす構造であるので、やはり装置が複雑大型化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−119743号公報
【特許文献2】特開2006−257836号公報
【特許文献3】特開2008−196240号公報
【特許文献4】特開平6−88316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、安全且つ簡単な構造であって、水分の多い雪でもしっかりと掻き取って飛ばすことのできる除雪機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る除雪機は、駆動部によって駆動されて水平方向の軸線回りに回転して除雪する回転体を備えた除雪機であって、回転体の回転方向はその前側において上から下へと向かう方向であり、該回転体で掻かれた雪を回転体の回転に沿って回転体の後方から上方へと案内するフードが設けられ、回転体の外周面には、その軸線回りに螺旋を描くようにブラシが配置されていることを特徴とする。
【0008】
該構成の除雪機にあっては、水平方向の軸線回りに回転する回転体が雪を上から下へと掻き取っていく。その際、回転体の外周面にブラシが螺旋状に配置されているので、ブラシが雪を順次捉えて掻き取っていく。順次掻き取られた雪は、ブラシの回転とフードによって、回転体の下方から後方を介して上方へと送られていくが、それと同時に、回転体の軸線方向にも寄せられていく。そして、ブラシの回転によって軸線方向に寄せられつつ上方に送られた雪は、遠心力とブラシの保有弾性によって勢い良く前方に飛ばされる。また、ブラシが螺旋状に配置されているので、例えばブラシを軸線方向に一直線に配置した場合に比して、除雪時において回転体の回転に伴う駆動部の負荷変動が小さくなり、駆動部の駆動力を効率良く利用することができる。
【0009】
特に、ブラシが周方向に間隔をあけて複数列配置されていることが好ましい。ブラシを一列のみ配置してもよいが、周方向に間隔をあけてブラシを複数列配置することにより効率良く除雪することができる。
【0010】
その場合、ブラシが180度対向して二列配置されていることが好ましい。ブラシの列数を増加すると除雪効率がアップする反面、駆動部の負荷が増加する。従って、駆動部ひいては除雪機の小型化と除雪効率の観点から180度対向してブラシを二列配置することが好ましい。
【0011】
また、雪が回転体の一端側から他端側に向かうように、ブラシが回転体の略全長に配置されていることが好ましい。ブラシを軸線方向の左右対称に配置して雪が中央に向かうようにしたり逆に中央から両端に向かうようにすることもできるが、雪が回転体の一端側から他端側に向かうようにブラシを回転体の略全長に配置することにより、除雪機の右側あるいは左側に雪を寄せて飛ばすことができ、効率的な除雪作業を行うことができる。
【0012】
その場合、特にブラシの螺旋配置が回転体の軸線回りを略一回転していることが好ましく、雪をスムーズに一端側から他端側まで寄せて飛ばすことができる。
【0013】
そして更に、フードの上部内面に、回転体の回転に沿って上方に送られて来た雪を回転体の他端側斜め前方に誘導する誘導ガイド壁が設けられていることが好ましい。ブラシによって雪が他端側に寄せられつつ飛ばされるので、誘導ガイド壁をフードの上部内面に設けることにより、雪を斜め前方に確実に飛ばすことができる。
【0014】
しかも、誘導ガイド壁は、フードとは別体に形成されて、誘導の向きを調節できるようにフードに取り付けられていることが好ましい。積雪量や除雪スピードあるいは除雪作業の場所に応じて、投雪角度を調節できる。
【0015】
一方、ブラシが交換可能に構成されていることが好ましい。ブラシが摩耗した際にそれを交換することで除雪能力を復活させることができる。
【0016】
また、駆動部がアウターロータ型のモータであってそのアウターロータが回転体として構成されていることが好ましく、装置をコンパクトにすることができる。
【0017】
また、回転体の回転数を無負荷時において500rpm〜2000rpmに調節できるように構成されていることが好ましい。回転数をこの範囲にすることで除雪作業を効率良く行うことができると共に、回転数を変えることで雪を飛ばす距離を変えることができる。回転数が500rpm未満では雪を掻き取ることはできても勢い良く飛ばすことが困難となる。また、回転数が2000rpmを超えると、除雪機が前進するスピードに対して回転数が上がり過ぎの状態となって無駄が多くなり、特に歩行式(手押し型)の除雪機において顕著となる。従って、回転数を500rpm〜2000rpmの範囲とすることにより効率良く除雪作業を行うことができる。なお、回転数を低速にすれば、落ち葉の除去作業にも使用でき、高速にすれば草刈り作業にも使用できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る除雪機にあっては、螺旋状のブラシが雪を徐々に掻き取りつつ集めながらその弾性を活かして雪を前方に飛ばすので、水分の多い雪であっても確実に除雪できる。また、硬い刃のオーガではなくブラシであるので安全に除雪作業を行うことができ、更に、ブロアやシュートが不要となって装置を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における除雪機を示す斜視図。
【図2】同実施形態における除雪機を示す正面図。
【図3】同実施形態における除雪機を示す側面図。
【図4】同実施形態における除雪機の要部を示す正面図。
【図5】同実施形態における除雪機の要部断面図であって、(a)は図4のA−A断面図、(b)は図4のB−B断面図。
【図6】同実施形態における除雪機のブラシの製造工程を示す正面図。
【図7】同実施形態における除雪機のブラシの要部斜視図。
【図8】本発明の他の実施形態における除雪機の要部を示す正面図。
【図9】本発明の他の実施形態における除雪機の要部を示す側面図。
【図10】本発明の他の実施形態における除雪機の要部を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかる除雪機について図1〜図7を参酌しつつ説明する。本実施形態における除雪機は、図1乃至図3に示すように、基台1に取り付けられた駆動部としてのモータ2によって、前部に位置する回転体3を回転駆動して除雪する、一般家庭用として適した小型の電動除雪機である。具体的には、基台1の上面の左右方向(幅方向)の一方側、本実施形態では正面(前から)から見て右側にモータ2が取り付けられている。該モータ2は、DCモータであって、その中でも特にインナーロータ型のDCモータであり、その軸線が左右方向を向くように、より詳細にはモータ2の駆動軸が右側に位置するように基台1に取り付けられている。そして、モータ2の左側にはモータ2に電力を供給するためのバッテリー4と、モータ2を駆動制御するための制御ボックス5(制御部)が、同じく基台1の上面に取り付けられている。また、これらモータ2、バッテリー4、制御ボックス5を上方からまとめて覆うように、二点鎖線で示すカバー6が基台1に着脱可能に取り付けられている。尚、図示しない電源コードによりバッテリー4を充電することができる。
【0021】
かかる基台1の下面にはソリ7とキャスター8が取り付けられており、雪上ではソリ7で移動でき、雪のないところではキャスター8で移動できる。また、基台1の後部には、基台1から斜め上方に伸びるようにハンドル9が設けられており、作業者は、このハンドル9を押して除雪機を移動させて除雪作業を行う。即ち、本実施形態の除雪機は自走型のものではなく手押し型のものである。このハンドル9は、基台1の後部の左右両側から一対伸びた棒状体90を備えた、いわゆる一輪車タイプのものであって、高さ調節も可能である。両棒状体90の上部は、斜め上方から斜め下方に折れ曲がっていて、上方から見るとハの字状に後方に開いている。該上部が把持部90aとなっていて、両手でそれぞれの把持部90aを把持して操作する構造となっている。また、両把持部90aにはそれぞれ電気的スイッチである起動スイッチ(図示省略)が設けられていて、両手で左右の起動スイッチをONすることでモータ2が起動する。更に、両棒状体90の上側の位置には、両棒状体90を左右に架橋するようにして操作ボックス10が取り付けられている。該操作ボックス10は棒状体90よりも前方に突出するように取り付けられており、その上面が操作パネル11となっている。該操作パネル11には、バッテリー4の残量を示すバッテリー残量ランプ12や、バッテリー4に充填する際の充電スイッチ13、電源スイッチ14、作業灯スイッチ15が設けられている。尚、作業灯は図示しないが例えば操作ボックス10の前面に設けられる。また、回転体3の回転数を調整することが可能となっており、そのための回転数調整用操作部も操作パネル11に設けられている。具体的には、回転数調整用操作部として、回転体3の回転数を複数段階(例えば高速、中速、低速)に切り替えるための回転数切替スイッチ16が設けられており、該回転数切替スイッチ16から制御ボックス5へと信号が送られてモータ2の回転速度が制御される。回転体3の回転数は、除雪しない無負荷時において、例えば高速中速低速の三段階切替の場合、低速では500rpm、中速では1000rpm、高速では2000rpmに設定できる。尚、回転数調整用操作部として、回転数をリニアに調整できる調整ダイヤル等を設けてもよい。
【0022】
一方、基台1の前側には、水平方向の軸線回りに回転する回転体3と、該回転体3を後側から覆うように設けられた前方に開口するフード20とが設けられている。回転体3の軸線は左右方向であって、図1に矢印Pでその回転方向を示しているように、前側において上から下へと向かうように回転する。即ち、回転体3は雪を掻き上げるのではなく掻き落とす方向に回転する。モータ2の駆動力を回転体3に伝達する伝達手段には図示しないタイミングベルトが使用されており、モータ2の駆動軸のプーリー17と、回転体3の回転軸30のプーリー18との間に掛け渡されている。タイミングベルトは、ベルトカバー60によって覆われている。尚、図1及び図3において符号19はタイミングベルトのテンションを調節するためのテンショナーである。
【0023】
回転体3は、フード20の左右両側壁21,22に回転可能に支持されている。具体的には、図4及び図5に示すように、回転体3は、中空とされた円柱状の胴部31と、該胴部31を貫通して胴部31と一体となって回転する回転軸30とを備えており、該回転軸30がフード20の左右両側壁21,22に軸受け23を介して支持されている。回転軸30の両端部はフード20の左右両側壁21,22から外側に突出しており、右側の端部にプーリー18がネジにより取り付けられて回転軸30と一体に回転する。
【0024】
また、回転体3の外周面には、ブラシ50が回転体3の軸線回りに螺旋を描くようにして配置されている。具体的には、回転体3の胴部31の外周面に所定幅の帯状に連続してブラシ50が取り付けられている。該ブラシ50の線材52(図7参照)はナイロン等の合成樹脂が好ましく、該線材52を複数本まとめて所定幅を有する帯状に配置している。このブラシ50の幅と胴部31の外周面からの長さはそれぞれ任意であるが、例えば、幅は5mm〜30mm、長さは30mm〜100mmとし、線材52の線径は例えば0.5mm〜1.5mmのものが好適であり、適度なコシと弾力が得られて雪の掻き取り力と投雪距離に優れている。本実施形態では、線径が1.0mmの線材52であって、長さが80mm、幅が10mmとなっている。そして、この帯状のブラシ50が螺旋状に配置されて胴部31の一端から他端まで略全長に亘って連続しているのであるが、その一端から他端までの間に回転体3の軸線回りを略一回転するように配置されている。螺旋の方向は、回転体3を軸線方向に見て反時計回りであって、上述したように回転体3が矢印Pの方向に回転することによって、雪を回転体3の軸線方向の左側から右側へと向かう方向である。かかる螺旋状のブラシ50が、回転体3の胴部31に周方向に間隔をあけて一対、具体的には、180度対向して二列配置されている。
【0025】
ここでブラシ50の製造方法と回転体3への装着方法について説明すると、本実施形態では、まず帯状のブラシ50を製造したうえで、その帯状のブラシ50を回転体3の胴部31の外周面(表面)に装着するようにしている。具体的には、所定幅を有する金属製の帯状の固定板51の上に、所定長さの線材52を固定板51の幅方向に向けて並べる。即ち、固定板51の長手方向に対して直交するように線材52を固定板51の上に並列に並べる。また、線材52は一本ずつ並べていくのではなく、図6に示すように固定板51の上に複数本、具体的には5本積み重ねるようにして並べていき、その上に芯棒53を置く。そして、固定板51の中心線Cを折り曲げラインとして芯棒53を線材52で挟み込むようにして線材52と固定板51を図6の矢印のように上方に二つ折りにすると共に、図7のように二つ折りに折り曲げた線材52の束をU字状となった固定板51で狭持して固定する。このように芯棒53を挟み込むようにすることで、線材52をしっかりと固定板51で固定することができ、その抜けを防止できる。尚、固定板51による線材52の狭持は、例えば固定板51をかしめることで行う。このようにして所定幅W(図7参照)を有するブラシ50が形成されるのであるが、固定板51の上に5本積み重ねていたので、二つ折りにしたことで合計10本の線材52が幅方向に並ぶことになり、線材52の線径が例えば1.0mmであればブラシ50の幅Wは約10mmとなる。そして、この固定板51を回転体3の胴部31の外周面に溶接等により固定する。
【0026】
尚、回転体3の長さは例えば500mmであり、フード20の両側壁21,22間はそれよりも若干広いので、除雪できる幅である除雪幅としては550mmとなる。除雪幅としては、500mm〜600mmが好ましく、除雪によって大人が通れる幅が確保できる。
【0027】
次にフード20について説明する。フード20は、回転体3で掻き取られた雪を回転体3の回転に沿って回転体3の後方から上方へと案内するためのもので、回転体3の軸線方向の両側即ち左右方向の両側を覆う左右一対の側壁21,22と、両側壁21,22を連結すると共に回転体3の主として後側から上側にかけて覆う主壁24とを備えている。両側壁21,22は互いに平行関係にあり、その上部前側部分は斜めに切り欠かれている。主壁24は、図1及び図3のように、回転体3の後方においては回転体3のブラシ50の軌跡に沿った円弧状に形成されていて、その上部は前方に向けて斜め上方に傾斜し、その上端部24aは回転体3の回転軸30の略直上に位置している。
【0028】
そして、主壁24の上部内面には、図4にも示しているように、L字状ガイド25がネジ(図示省略)により着脱可能に取り付けられている。該L字状ガイド25は、フード20の主壁24への取付板部25aと、該取付板部25aの側端から直角に折れ曲がったガイド壁部25bとから横断面視L字状に形成され、取付板部25aが主壁24の下側に重なり合い、ガイド壁部25bは取付板部25aの右端に位置していて下側に伸びている。かかるL字状ガイド25は、回転体3の軸線方向に間隔をあけて複数(三個)取り付けられ、全体として右側斜め前方に傾斜していると共に、その上端部はフード20の主壁24から所定量突出している。かかるL字状ガイド25のガイド壁部25bに雪が当たることで雪は右斜め前方(作業者即ち除雪機の後側から見れば左斜め前方)に誘導される。即ち、L字状ガイド25のガイド壁部25bが、回転体3の回転に沿って上方に送られて来た雪を回転体3の右側斜め前方に誘導する誘導ガイド壁として構成されている。また、L字状ガイド25の取付板部25aには円弧状の長孔26が一対形成されていて図示しないネジを緩めることでL字状ガイド25を左右に向き調節可能であり、この角度調節によって雪を誘導する向き(投雪角度)を調節できる。
【0029】
以上のように構成された除雪機の使用方法について説明すると、まず電源スイッチ14をONにし、作業灯スイッチ15をONにし、回転数切替スイッチ16を操作して回転数を設定し、その後、ハンドル9の両把持部90aを両手で把持して両起動スイッチを共にONとしてモータ2並びに回転体3を回転させ、ハンドル9を前側に押すようにしながら除雪機を移動させて除雪作業を行う。除雪機の前部に位置している回転体3が回転することで螺旋状に配置されたブラシ50も回転して雪を徐々に掻き取っていく。掻き取った雪を後方から上方に送りつつ左側から右側へと送っていき、遠心力とブラシ50の弾性復元力によってフード20の上端部から右斜め前方に飛ばしていく。
【0030】
このように、フード20の上部が前方を向いていると共にブラシ50がしなることで、雪を勢い良く雪を前方に飛ばすことができる。また、ブラシ50が帯状であって螺旋状に配置されているので、柔軟性のあるブラシ50であっても、水分が多い雪を確実に掻き取ることができ、しかも、軸線方向の一方に集めて投雪することができる。特に、フード20にL字状ガイド25を取り付けているので、効果的に雪を斜め前方に誘導でき、雪の飛散を抑制できる。更に、ブラシ50が螺旋状であるので、例えば軸線方向に沿った配置の場合に比してモータ2に対する負荷の変動が小さく、比較的小さい出力のモータ2であっても十分な除雪能力を確保することができる。特に、螺旋配置が略一回転であるので、除雪時の回転がスムーズであり、雪の軸線方向への送り動作もスムーズになる。また、180度対向してブラシ50を二列配置しているので、ブラシ50が一列の場合よりも除雪能力を向上させることができ、モータ2への負荷も少なくて済む。
【0031】
更に、硬い刃ではなくブラシ50であって特に柔軟性のある合成樹脂から構成されているので、万一、手や足をフード20内に入れたとしても大怪我をする可能性が低く、安全性にも優れている。
【0032】
また、L字状ガイド25の角度を調節することにより、積雪量や除雪スピードあるいは除雪作業の場所に応じて投雪角度を調節することも可能である。また、回転体3の回転数を高速、中速、低速と切り替えることもできるので、雪の質や積雪量、除雪場所、求める投雪距離等に応じて回転数を切り替えて使用することができる。回転体3を低速にすれば雪のない時期に落ち葉を集めるなどの清掃作業にも使用することができ、また回転体3を高速にすれば草刈り作業にも使用することができる。
【0033】
尚、ブラシ50の長さを短くするとコシが強くなって特に掻き取り能力が向上する。ブラシ50の長さを短くする場合、例えば図4に示したものと同じ直径の胴部31に短いブラシ50を配置することもできるが、図8のように胴部31を大径化してブラシ50の先端の軌跡円を図4と同じにすることもできる。例えば、図4に示したブラシ50の長さが80mmの場合、図8ではブラシ50の長さが50mmとなる。図8のように胴部31を大径化すれば、回転体3のみの変更で済み、除雪機本体側の変更が不要になる。また、ユーザー側で二種類以上の回転体3を準備すれば、雪の状況等に応じて回転体3を選択し取り付けて使用することもできる。
【0034】
また、除雪機を前側から見て左側に雪を投雪したい場合にはブラシ50の螺旋の方向を逆向きにすればよく、螺旋の向きが異なる二種類の回転体3を準備しておけば、適宜交換して使用することもできる。その場合、L字状ガイド25の向きも調節すればよい。
【0035】
更に、ブラシ50が摩耗や経時劣化した場合の交換も種々の方法がある。即ち、回転体3をその回転軸30も含めて一体的にフード20から分離して、回転体3の全体を一括交換してもよいが、回転体3の胴部31を回転軸30から分離できる構造として、回転軸30はフード20に残したままで胴部31のみを取り外して交換するようにしてもよい。このように胴部31のみを取り外して交換する場合、回転軸30のプーリー18がない側の端部から胴部31を抜き差しできるように、そちら側のフード20の側壁21を主壁24に対して着脱可能に構成すれば、該側壁21を取り外すことによって容易に胴部31を取り外すことができる。また、胴部31を取り外すことなくブラシ50のみを交換できるようにしてもよい。例えば、図9のように胴部31に螺旋状の溝32を形成し、該溝32に帯状のブラシ50を挿入して取り付けるようにすれば、溝32の端部開口から帯状のブラシ50をその長手方向に沿って挿脱して交換できる。尚、胴部31に形成する螺旋状の溝32を図9のように底に向かって幅広となる断面形状を有する、いわゆる蟻溝形状とすればブラシ50を固定するための別途の固定手段が不要になり、交換も容易となる。その場合にはブラシ50の基端部に位置する固定板51も蟻溝形状に合った形状として径方向外側への抜けを防止する。また更に、ブラシ50を連続した帯状とするのではなく複数に分割し、分割したブラシ50をそれぞれ胴部31に着脱可能に取り付けるようにしてもよい。例えば、図10に示すように、薄板状の取付板33にブラシ50を植設し、該取付板33をネジによって胴部31の外周面に取り付けるようにしてもよい。取付板33の形状は矩形であっても楕円形や円形であってもよく、また、植設したブラシ50の平面形状も矩形に限らず楕円形や円形等、種々の形状にすることができる。更に、取付板33を例えば図10のように平面視長方形状に形成した場合に、その長手方向が螺旋の方向に沿うようにしてもよいが同図のように回転体3の軸線方向に沿うようにしてもよい。何れにしても、ブラシ50が全体として螺旋を描くように回転体3の外周面に配置されるようにすればよい。
【0036】
尚、上記実施形態では、駆動部としてインナーロータ型のモータ2を用いる構成について説明したがアウターロータ型のモータを用いる構成としてもよい。即ち、アウターロータ型のモータを前部に配置して、そのアウターロータを回転体3として構成する。その場合、アウターロータの外周面を回転体3の外周面としてそこにブラシ50を直接配置してもよいが、アウターロータの外周側に別途の筒状体を装着し、その筒状体の外周面にブラシ50を配置してもよい。別途の筒状体を装着する場合、アウターロータと筒状体が回転体3を構成することになるが、筒状体にブラシ50を配置するとアウターロータに直接ブラシ50を配置する構成に比してブラシ50の配置が容易になる。また、アウターロータの外周側に筒状体をネジ等によって着脱可能に取り付ける構成にすると、ブラシ50の交換が容易となる。何れにしても、アウターロータ型のモータを用いてそのアウターロータを回転体3として使用することにより、除雪機がコンパクトになるうえに、部品点数も大幅に削減される。
【0037】
また、ブラシ50の螺旋配置についても種々の配置態様が可能である。即ち、ブラシ50が螺旋の方向に連続せずに不連続であってもよい。例えば、部分的にブラシ50が欠如している部分があってもよく、また、螺旋の方向の長さが短いドット状のブラシ50を螺旋の方向に間隔を空けながら破線や一点鎖線のように配置してもよい。更に、島状のブラシ50を同様に螺旋の方向に間隔を空けながら配置してもよく、例えば、図10のように配置することができる。
【0038】
更に、上述したようにブラシ50を180度対向して二列配置するのではなく、三列以上配置してもよく、また一列のみ配置してもよい。また、回転体3の軸線方向の略全長に亘ってブラシ50を配置したが、軸線方向の中途部から配置したり、部分的に配置してもよい。更に、螺旋配置を略一回転としたが、一回転を超えても、また、3/4回転や半回転などとしてもよい。
【0039】
また更に、駆動部としてモータ2を用いたがエンジンを用いることも可能である。但し、モータ2を用いることにより、騒音や振動が小さく、二酸化炭素の排出もなく、制御も容易であるというメリットがある。
【符号の説明】
【0040】
1 基台
2 モータ(駆動部)
3 回転体
4 バッテリー
5 制御ボックス
6 カバー
7 ソリ
8 キャスター
9 ハンドル
10 操作ボックス
11 操作パネル
12 バッテリー残量ランプ
13 充電スイッチ
14 電源スイッチ
15 作業灯スイッチ
16 回転数切替スイッチ
17 プーリー
18 プーリー
19 テンショナー
20 フード
21 側壁
22 側壁
23 軸受け
24 主壁
24a 上端部
25 L字状ガイド
25a 取付板部
25b ガイド壁部(誘導ガイド壁)
26 長孔
30 回転軸
31 胴部
32 溝
33 取付板
50 ブラシ
51 固定板
52 線材
53 芯棒
60 ベルトカバー
90 棒状体
90a 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部によって駆動されて水平方向の軸線回りに回転して除雪する回転体を備えた除雪機であって、
回転体の回転方向はその前側において上から下へと向かう方向であり、
該回転体で掻かれた雪を回転体の回転に沿って回転体の後方から上方へと案内するフードが設けられ、
回転体の外周面には、その軸線回りに螺旋を描くようにブラシが配置されていることを特徴とする除雪機。
【請求項2】
ブラシが周方向に間隔をあけて複数列配置されている請求項1記載の除雪機。
【請求項3】
ブラシが180度対向して二列配置されている請求項2記載の除雪機。
【請求項4】
雪が回転体の一端側から他端側に向かうように、ブラシが回転体の略全長に配置されている請求項1乃至3の何れかに記載の除雪機。
【請求項5】
ブラシの螺旋配置が回転体の軸線回りを略一回転している請求項4記載の除雪機。
【請求項6】
フードの上部内面に、回転体の回転に沿って上方に送られて来た雪を回転体の他端側斜め前方に誘導する誘導ガイド壁が設けられている請求項4記載の除雪機。
【請求項7】
誘導ガイド壁は、フードとは別体に形成されて、誘導の向きを調節できるようにフードに取り付けられている請求項6記載の除雪機。
【請求項8】
ブラシが交換可能に構成されている請求項1記載の除雪機。
【請求項9】
駆動部がアウターロータ型のモータであってそのアウターロータが回転体として構成されている請求項1記載の除雪機。
【請求項10】
回転体の回転数を無負荷時において500rpm〜2000rpmに調節できるように構成されている請求項1記載の除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−57382(P2012−57382A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202908(P2010−202908)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(390003665)株式会社日進製作所 (32)
【Fターム(参考)】