説明

除電器

【課題】 ビーカーやフラスコの周囲から内部に不純物を混入したり、ビーカーやフラスコ内のサンプルを飛散させたりすることなく、ビーカーやフラスコの内部の側壁の静電気を低減することができる除電器を提供する。
【解決手段】 電圧発生器1と、電圧発生器1で電圧が印加されることにより、イオンを生成するイオン生成用電極2と、空気を送風するファン7と、イオン含有空気を一方向に放出するための放出口6dとを備える除電器6であって、放出口6dの前方に装着され、放出口6dから放出されるイオン含有空気を除電対象の容器内に導くとともに、イオン含有空気の進行方向を調整するノズル10を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを備える除電器に関し、特にビーカーやフラスコ等の容器の側壁に帯電した静電気を除電するための除電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物の静電気を低減するために、種々の除電器が開発されてきた。例えば、コロナ放電式除電器では、針状のイオン生成用電極に電圧を印加することにより、イオン生成用電極の先端に電界が集中して、先端にコロナ放電を発生する。その結果、イオン生成用電極からイオンが生成する。このようにして生成したイオンを、対象物に吹き付けることで、対象物の静電気を中和して低減させることが行われてきた。
【0003】
さらに、除電器は、イオン含有空気の対象物への送風の仕方によって、エアー型除電器、バー型除電器、ファン型除電器に大別されて、それぞれの特性を生かしながら利用されてきた。エアー型除電器では、圧縮空気を用いて小面積の1つの放出口から送風することにより、小面積の静電気を低減させることができる。一方、バー型除電器では、複数のイオン発生部を有し広範囲の静電気を低減させることができる。最後に、ファン型除電器では、ファンを用いて窓状の放出口から空気を送風することにより、対象物の広範囲での静電気を一度に低減させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−332723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重量計測において、粉末状のサンプルを取り扱う場合、容器に帯電する静電気が問題になることがある。例えば、粉末状のサンプルを小型ビーカーに投入したときに、小型ビーカーの内部の側壁にサンプルが付着する。しかしながら、小型ビーカーの内部の側壁に帯電した静電気を低減するために、エアー型除電器を用いると、小面積の1つの放出口から圧縮空気を送風するので、空気の送風の力が強すぎて、小型ビーカー内のサンプルを飛散させてしまったり、周囲の埃等を舞い上げて小型ビーカーの外部から内部に不純物を混入してしまったりすることがあった。この結果、分析天秤等でサンプルを計量したときに、サンプルの重量に誤差を生じることになった。また、エアー型除電器を用いた場合、エアー源のコンプレッサの振動が、分析天秤等に悪影響を与えるため、分析天秤等の傍でエアー型除電器を使用することにも問題があった。
【0005】
一方、図7に示すように、ファン型除電器56を用いると、正方形状の放出口56dからイオン含有空気を送風するので、ファン型除電器56を傾けて用いても小型ビーカー40の内部の側壁の上部にしか空気(イオン)を充分に吹き付けることができず、小型ビーカー40の内部の側壁の下部の静電気を充分に低減することが困難で、小型ビーカー40の内部の側壁にサンプルSが付着したままであることもあった。
【0006】
そこで、本発明は、ビーカーやフラスコの外部から内部に不純物を混入したり、ビーカーやフラスコ内のサンプルを飛散させたりすることなく、ビーカーやフラスコの内部の側壁での静電気を低減することができる除電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の除電器は、電圧発生器と、前記電圧発生器により電圧が印加されることにより、イオンを生成するイオン生成用電極と、前記イオン生成用電極に向けて、空気を送風するファンと、生成されたイオンを含むイオン含有空気を一方向に放出するための放出口とを備える除電器であって、前記放出口の前方に装着され、前記放出口から放出されるイオン含有空気を除電対象の容器内に導くとともに、当該イオン含有空気の進行方向を調整するノズルを備えるようにしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の除電器によれば、除電器の放出口の前方に、例えば、イオン含有空気の進行方向を調整するためのノズルを装着することにより、小型ビーカー内にノズルが挿入されて、小型ビーカーの内部の側壁の上部にも下部にも空気を吹き付けることができるので、小型ビーカーの内部の側壁の全面の静電気を低減することできる。このとき、ファンを用いて空気を送風する除電器を使用するので、空気の送風の力が強すぎて、小型ビーカー内のサンプルを飛散させてしまったり、小型ビーカーの周囲から内部に不純物を混入してしまったりすることもない。
【0009】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記ノズルは、前記イオン含有空気の進行方向を、前記容器の側壁に向かうように形成されるようにしてもよい。
また、上記の発明において、前記ノズルの先端部は、前記容器に挿入可能な大きさであり、かつ、有底の筒形状であり、 前記筒形状面にイオン含有空気を吹き出す開口部が形成されるようにしてもよい。
【0010】
また、上記の発明において、前記イオン生成用電極は、正イオンと負イオンとが別々の放電電極で生じるDC方式、正イオンと負イオンとを同じ電極から生成するAC方式のどちらでもよい。
本実施例の除電器によれば、正イオンと負イオンと含むイオン含有空気を放出することができるので、イオンバランスがよく、例えば、正イオンに帯電した小型ビーカーの内部の側壁の静電気を低減するのに、負イオンが不足してほとんど低減できなかったり、一方、負イオンが多くて負イオンに逆に帯電させてしまったりすることもなく、小型ビーカーの内部の側壁の静電気を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である除電器を示す平面図であり、図2は、図1に示す除電器のA−A線の断面図であり、図3は、図2に示す除電器のB−B線の単面図(B−B線で切断した面のみ)である。
除電器6は、電圧発生器1と、電圧が印加されることによりイオンを生成するイオン生成用電極2と、空気を送風するファン7と、吸気口6cと、イオン含有空気を放出するための放出口6dと、放出口6dから放出されるイオン含有空気の進行方向(風軸)を当該進行方向(風軸)と垂直な方向に調整するノズル10とを備える。
【0013】
ファン7は、空気の流れを作るためのものであり、例えば、風量が0.04m/分程度である小型ファンが挙げられる。これにより、ファン7が回転すると、吸気口6cから放出口6dへ空気の流れが生じることになる。
【0014】
吸気口6cは、除電器6の上面に配置され、例えば、平面視すると、30mm×30mmの正方形状の開口であり、開口にはメッシュサイズが1.5mm角程度である埃除去用のフィルタ(図示せず)が設置されている。
放出口6dは、除電器6の下面に配置され、例えば、平面視すると、30mm×30mmの正方形状の開口であり、正イオン及び負イオンを含むイオン含有空気を一方向(開口面に垂直な方向)に放出するためのものである。
【0015】
高電圧発生器1は、+入力リード線(図示せず)と−入力リード線(図示せず)との間に印加された入力電圧を、圧電トランス(図示せず)で昇圧し、交流化して出力する。
なお、高電圧発生器1は、出力電圧調整部(図示せず)を有し、イオン生成用電極2への印加する出力電圧を制御することにより、生成されるイオンの量は10万個/cm〜100万個/cmの範囲で変動させることができる。
【0016】
イオン生成用電極2は、例えば、厚さ0.1mm程度の金属板を加工して、針端を形成し、これを放出口6dに向けた針状電極としてある。これにより、高電圧出力線5で交流電圧が印加されることにより、負イオンと正イオンとが交互に生成される。
アース用電極3についても、例えば、厚さ0.1mm程度の金属板を加工して、針端を形成し、これらを放出口6dに向けてある。
なお、イオン生成用電極2及びアース用電極3とは、吸気口6cと放出口6dとの間に配置され、かつ、ファン7の下流に配置されているので、ファン7からの送風により、放出口6dからイオン含有空気が放出されていくことになる。
上記イオン生成用電極及びアース用電極を形成する金属としては、例えば、ステンレス(SUS)、タングステン等が挙げられる。
【0017】
ノズル10は、放出口6dから放出される空気の進行方向(風軸)を当該進行方向(風軸)と垂直な方向に調整するものである。図4は、ノズルの斜視図である。ノズル10の上部10aは、上が正方形状の開口、下が円形状の開口と変化するものであり、ノズル10の下部10bは、側面となる円筒形状面と底面とを有し、かつ、円筒形状面に4つの正方形状の開口部10cが四方に向けて配置されている。
また、ノズル10は、フランジ部10dによって放出口6dの前方に装着可能とされている。なお、ノズル10は、ねじ止めによって放出口6dの前方に装着可能とされてもよい。
上記ノズルの材質としては、例えば、紙等の絶縁物や、アルミニウム等の導電物等が挙げられる。なお、上記ノズルの開口部の形状及び数は、上述した構造以外で構成されてもよい。
【0018】
以上のように、除電器6によれば、図5に示すように、除電器6の放出口6dの前方に、円筒形状面と底面とを有し、かつ、円筒形状面に4つの正方形状の開口部10cを有するノズル10を装着することにより、ノズル10を小型ビーカー40内の上部まで挿入して、小型ビーカー40の内部の側壁の上部に空気を吹き付けることができ、さらに、ノズル10を小型ビーカー40内の下部まで挿入して、小型ビーカー40の内部の側壁の下部に空気を吹き付けることができるので、小型ビーカー40の内部の側壁の静電気を低減することできる。よって、小型ビーカー40の内部の側壁にサンプルSが付着することをなくすことができる。このとき、ファン7を用いて空気を送風する除電器6を使用するので、空気の送風の力が強すぎて、小型ビーカー40内のサンプルSを飛散させてしまったり、小型ビーカー40の周囲から内部に不純物を混入してしまったりすることもない。
なお、ノズル10が放出口6dの前方から外されることにより、除電器6は一方向に空気を吹き付けることもできる。
【0019】
以下、本発明について、実施例を挙げて、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらにより、何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
実施例1に係るノズルを、上部を、30mm×30mmの正方形状の開口から直径15mmの円形状の開口へと上下方向の20mmの間で変化させたものとし、下部を、直径15mmの円筒形状面と底面とを有し、かつ、底面から上方向に27mmの位置の円周方向で合計4つの12mm×12mmの正方形状の開口部を有するものとして、紙で作製した(図6参照)。
【実施例2】
【0021】
紙をアルミニウムに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るノズルを作製した。
【0022】
(評価方法)
(1)+1000Vから+100Vにしたときの除電時間の測定
図1〜3に示すような除電器の放出口6dに、実施例1及び実施例2に係るノズルを装着した。さらに、開口部10c面から垂直方向に20mmの位置に+1000Vに帯電した対象物を配置した。そして、イオン生成用電極に8kVppの電圧を印加して、対象物が+1000Vから+100Vになるまでの時間を測定した。その結果を表1に示す。
なお、気温は23℃であり、湿度は45%RHであった。
【0023】
(2)−1000Vから−100Vにしたときの除電時間の測定
図1〜3に示すような除電器の放出口6dに、実施例1及び実施例2に係るノズルをテープで装着した。さらに、開口部10c面から垂直方向に20mmの位置に−1000Vに帯電した対象物を配置した。そして、イオン生成用電極へ8kVppの電圧を印加して、対象物が−1000Vから−100Vになるまでの時間を測定した。その結果を表1に示す。
なお、気温は23℃であり、湿度は45%RHであった。
【0024】
【表1】

【0025】
(結果)
表1から明らかなように、実施例1及び実施例2に係るノズルを装着した除電器6を用いると、ノズル10の開口部10cの正面に配置された対象物を約30秒で除電できた。よって、ノズル10を小型ビーカー等の内部に挿入して、小型ビーカー等の内部の側壁に空気を吹き付けることができるので、小型ビーカー等の内部の側壁の静電気を低減することできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の除電器は、例えば、ビーカーやフラスコ等の容器の側壁に帯電した静電気を除電するために、利用される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態である除電器を示す平面図である。
【図2】図1に示す除電器のA−A線の断面図である。
【図3】図2に示す除電器のB−B線の単面図である。
【図4】ノズルの斜視図である。
【図5】小型ビーカーにおいて、本発明の除電器を使用したときの図である。
【図6】本発明の一実施形態であるノズルを示す側面図である。
【図7】小型ビーカーにおいて、従来の除電器を使用したときの図である。
【符号の説明】
【0028】
1 電圧発生器
2 イオン生成用電極
6 除電器
6d 放出口
7 ファン
10 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧発生器と、
前記電圧発生器により電圧が印加されることにより、イオンを生成するイオン生成用電極と、
前記イオン生成用電極に向けて、空気を送風するファンと、
生成されたイオンを含むイオン含有空気を一方向に放出するための放出口とを備える除電器であって、
前記放出口の前方に装着され、前記放出口から放出されるイオン含有空気を除電対象の容器内に導くとともに、当該イオン含有空気の進行方向を調整するノズルを備えることを特徴とする除電器。
【請求項2】
前記ノズルは、前記イオン含有空気の進行方向を、前記容器の側壁に向かうように形成されることを特徴とする請求項1に記載の除電器。
【請求項3】
前記ノズルの先端部は、前記容器に挿入可能な大きさであり、かつ、有底の筒形状であり、
前記筒形状面にイオン含有空気を吹き出す開口部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の除電器。
【請求項4】
前記イオン生成用電極は、正イオンと、負イオンとを生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の除電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−277127(P2008−277127A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119382(P2007−119382)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】