説明

陰極線管装置

【課題】新たな部品を追加することなく、トロイダル型垂直偏向コイルの巻線の位置ずれを防止する。
【解決手段】フェライトコア63は、垂直方向軸Yが交差する位置に、垂直偏向コイル62の巻線が実質的に配置されていない巻線不在領域65を有する。フェライトコアの小径側端面63S及び大径側端面63Lの少なくとも一方の巻線不在領域に対応する領域内に管軸Z方向に突出した凸部631,632が設けられている。巻線不在領域を通過する垂直偏向コイルの巻線66が凸部に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトロイダル型垂直偏向コイルを備えた偏向ヨークが搭載された陰極線管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インライン型カラー陰極線管装置では、電子銃から発射された水平方向に一列配置された3電子ビームを水平方向及び垂直方向に偏向するために偏向ヨークが搭載される。3電子ビームを垂直方向に偏向する垂直偏向コイルとしては、図8に示すように、略漏斗形状のフェライトコア(以下、単に「コア」という)63にトロイダル巻きされた垂直偏向コイル62が知られている。図8において、Z軸はコア63の中心軸(これはカラー陰極線管の管軸に一致する)、X軸はZ軸に直交する水平方向軸、Y軸はZ軸及びX軸に直交する垂直方向軸である。一般に、コア63はXZ面(水平方向面)に対して上側の上側コア半体63aと下側の下側コア半体63bとからなる。上側コア半体63a及び下側コア半体63bのそれぞれに対して、垂直偏向コイル62の巻線がトロイダル巻きされる。バレル型の垂直偏向磁界を発生させて、蛍光体スクリーン上で3電子ビームを良好にコンバーゼンスさせるために、Y軸が交差する位置に垂直偏向コイル62の巻線が実質的に配置されていない巻線不在領域65が形成されている。従って、垂直偏向コイル62は、上側コア半体63aに、巻線不在領域65を挟んでその両側に巻装されたコイル片62aa,62abと、下側コア半体63bに、巻線不在領域65を挟んでその両側に巻装されたコイル片62ba,62bbとからなる。
【0003】
上側コア半体63a及び下側コア半体63bに巻線をそれぞれトロイダル巻きする場合、巻線はYZ面(垂直方向面)に対して一方の側から他方の側へと連続して巻回される。従って、図9に示すように、巻線不在領域65を巻線66が斜めに通過する。この巻線66に印加された張力によって、コイル片62baの大径側部分が矢印67aの向きに位置ずれし、また、コイル片62bbの小径側部分が矢印67bの向きに位置ずれする。従って、図10に示すように、下側コア半体63bの内周側(電子ビーム側)においても、コイル片62baの大径側部分が矢印67aの向きに位置ずれし、コイル片62bbの小径側部分が矢印67bの向きに位置ずれする。二点鎖線68aはコイル片62baの位置ずれ後の巻線不在領域65側の端縁の位置を示し、二点鎖線68bはコイル片62bbの位置ずれ後の巻線不在領域65側の端縁の位置を示す。このように、位置ずれ後のコイル片62baとコイル片62bbとはYZ面に対して非対称となる。図9及び図10では、下側コア半体63bに巻装されるコイル片62ba,62bbの位置ずれについて説明したが、上側コア半体63aに巻装されるコイル片62aa,62abもこれと同様に位置ずれする。
【0004】
コイル片62aa,62ab,62ba,62bbの上記のような位置ずれは、Y軸と平行な方向から見たときの巻線不在領域65を通過する巻線66のZ軸に対する傾斜角度θ(図9参照)が大きくなるに従い大きくなる。傾斜角度θは、巻線不在領域65のYZ面に対して一方の側の部分がZ軸に対してなす角度α(図8参照)が大きくなるにしたがって大きくなる。一般に、角度αは、偏向ヨークが搭載される陰極線管のサイズや偏向角度により異なるが、コア63の小径側及び大径側ともに5〜15度である。コイル片62aa,62ab,62ba,62bbの上記の位置ずれは、角度αが2度程度であればほとんど発生しないが、これより大きくなると問題となる。
【0005】
一般にコア63の内周側(電子ビーム側)での垂直偏向コイル62の巻線の配置は垂直偏向磁界の分布に対する影響が大きい。コイル片62aa,62ab,62ba,62bbのコア63の内周側の部分が上記のように非対称に位置ずれすることにより、垂直偏向磁界分布も非対称となる。この結果、図11に示すように、画面上において、赤(R)の横線(ラスタ)と青(B)の横線(ラスタ)とのミスコンバーゼンスが、X軸及びY軸で分割された4つの象限で異なる、非対称なミスコンバーゼンスパターンが発生することがある。あるいは、図12に示すように、画面上において、画像が矢印方向に回転する回転歪みが生じることがある。あるいは、図13に示すように、電子ビームのランディング位置が画面中央を中心として同一方向に回転するように矢印方向に位置ずれすることがある。
【0006】
上記のコイル片62aa,62ab,62ba,62bbの非対称な位置ずれを防止するために、特許文献1では、図14に示すように、コア半体80の小径側端及び大径側端に、ガイド突起83が設けられた樹脂製のガイド部材81,82を取り付けることが提案されている。ガイド部材81,82のそれぞれに設けられた複数のガイド突起83の間に垂直偏向コイルの巻線を案内することで、垂直偏向コイルの巻線の位置ずれを防止することができる。
【特許文献1】特公平7−66753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図14の方法は、コア80に別部材としてガイド部材81,82を取り付ける必要があり、コストを増加させるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の従来の問題を解決し、新たな部品を追加することなく、垂直偏向コイルの巻線の位置ずれを防止して、良好な画像を表示することができる陰極線管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の陰極線管装置は、内面に略矩形状の蛍光体スクリーンが形成されたパネルと、前記パネルに接合されたファンネルと、前記ファンネルのネック部内に収納され、電子ビームを放出する電子銃と、前記蛍光体スクリーンに対向し、前記電子ビームが通過する多数の開口が形成されたシャドウマスクと、前記ファンネルの外周面上に搭載された偏向ヨークと、前記ファンネルのネック部の外周面上に搭載され、前記蛍光体スクリーンの中央での色純度と色ずれを調整するCPUとを備える。
【0010】
前記偏向ヨークは、略漏斗形状を有するフェライトコアと、前記電子ビームを水平方向に偏向するサドル型の水平偏向コイルと、前記電子ビームを垂直方向に偏向する、前記フェライトコアに巻装されたトロイダル型の垂直偏向コイルと、管軸方向には前記フェライトコアの小径側端近傍であって前記フェライトコアに対して前記ファンネル側に上下に配された一対の磁性体とを備える。
【0011】
前記フェライトコアは、垂直方向軸が交差する位置に、前記垂直偏向コイルの巻線が実質的に配置されていない巻線不在領域を有し、前記フェライトコアの小径側端面及び大径側端面の少なくとも一方の前記巻線不在領域に対応する領域内に管軸方向に突出した凸部が設けられており、前記巻線不在領域を通過する前記垂直偏向コイルの巻線が前記凸部に当接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新たな部品を追加することなく、フェライトコアの基本的な形状を保ちながら、垂直偏向コイルの巻線の位置ずれを防止することができる。その結果、非対称なミスコンバーゼンスパターン、画像の回転歪み、電子ビームのランディング位置の位置ずれが発生せず、良好な画像を表示することができる陰極線管装置を提供することができる。また、装置ごとの特性のばらつきを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図を参照して詳しく説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態にかかる陰極線管装置1の概略構成図である。以下の説明の便宜のために、管軸をZ軸、水平方向(蛍光体スクリーンの長辺方向)軸をX軸、垂直方向(蛍光体スクリーンの短辺方向)軸をY軸とする。X軸とY軸とはZ軸上にて交差する。図1では、Z軸より上側に断面図を、下側に外観図をそれぞれ示している。
【0015】
陰極線管は、略矩形状のパネル2及び略漏斗形状のファンネル3とからなる外囲器と、ファンネル3のネック部3a内に設けられたインライン型の電子銃4とを備える。陰極線管装置1は、この陰極線管と、ファンネル3の外周面に装着された偏向ヨーク6及びCPU(Convergence and Purity Unit)10とを備える。パネル2の内面には、青(B)、緑(G)、赤(R)の各蛍光体ドット(又は蛍光体ストライプ)が配列されてなる略矩形状の蛍光体スクリーン2aが形成されている。蛍光体スクリーン2aが形成されたパネル2の領域の内面は所定の曲面に形成されており、その外面はほぼ平坦又は所定の曲率を有する曲面である。色選別用のシャドウマスク5が、蛍光体スクリーン2aに対向して、パネル2の内壁面に保持機構(図示せず)を介して取り付けられている。シャドウマスク5は、電子ビーム通過孔である略スロット形の開孔(電子ビーム通過孔)がエッチングにより多数形成された金属板からなる。電子銃4は、中央電子ビームとこの両側の一対のサイド電子ビームとからなる、X軸と平行な一直線上に並んだ3本の電子ビーム7(3本の電子ビームはX軸と平行な一直線上に配列されるため、図では手前の1本の電子ビームのみが示されている。)を蛍光体スクリーン2aに向かって出射する。電子銃4から出射された3本の電子ビーム7はシャドウマスク5に形成された開孔を通過して所定の蛍光体に射突する。
【0016】
偏向ヨーク6は、電子銃4から出射される3本の電子ビーム7を水平方向及び垂直方向に偏向し、蛍光体スクリーン2a上を走査させる。偏向ヨーク6は、サドル型の水平偏向コイル61とトロイダル型の垂直偏向コイル62とフェライトコア(以下、単に「コア」という)63とを備えている。水平偏向コイル61と垂直偏向コイル62との間には、樹脂製の絶縁枠64が設けられている。絶縁枠64は、水平偏向コイル61と垂直偏向コイル62との間の電気的な絶縁状態を維持する役割を果たしている。絶縁枠64の外周面(コア63側の面)には、偏向磁界(特に垂直偏向磁界)の分布を調整してコンバーゼンスを最適化するための一対の磁性体69が設けられている。一対の磁性体69は、ファンネル3をY軸方向に挟むようにYZ面と交差して配置され、Z軸方向にはコア63の小径側端近傍に位置している。
【0017】
ネック部3aの外周面上には、画面(即ち、蛍光体スクリーン2a)中央における色純度(ピュリティ)及び色ずれ(コンバーゼンス)を調整するためのCPU10が搭載されている。CPU10は、2極マグネットリング11、4極マグネットリング12、及び6極マグネットリング13よりなる。2極、4極、6極の各マグネットリング11,12,13は、いずれも円環状の2枚の磁石を重ね合わせて構成されている。
【0018】
図2はコア63にトロイダル巻きされた本実施形態の垂直偏向コイル62の斜視図、図3はその下面図、図4は小径側から見た背面図である。図5はコア63の斜視図である。従来と同様に、コア63は全体として略漏斗形状を有し、XZ面に対して上側の上側コア半体63aと下側の下側コア半体63bとからなる。上側コア半体63a及び下側コア半体63bのそれぞれに対して、垂直偏向コイル62の巻線がトロイダル巻きされる。垂直偏向コイル62は、上側コア半体63aに、巻線不在領域65を挟んでその両側に巻装されたコイル片62aa,62abと、下側コア半体63bに、巻線不在領域65を挟んでその両側に巻装されたコイル片62ba,62bbとからなる。上側コア半体63a及び下側コア半体63bのそれぞれの巻線不在領域65は、Y軸が交差する位置に設けられている。
【0019】
本実施形態では、コア63(即ち上側コア半体63a及び下側コア半体63b)の小径側端面63S及び大径側端面63Lの巻線不在領域65に対応する領域内にZ軸方向に突出した凸部631及び凸部632が形成されている。ここで、小径側端面63S及び大径側端面63Lは、コア63のZ軸方向における端面である。図4に示すように、本実施形態の凸部631は底面がYZ面に対して対称な略二等辺三角形である略三角柱形状を有している。
【0020】
一般に、垂直偏向コイル62の巻線は上側コア半体63a及び下側コア半体63bのそれぞれの外周に4〜7層にトロイダル巻きされる。巻線不在領域65に対して一方の側の巻線領域(例えばコイル片62aa,62bbが巻装される領域)から他方の側の巻線領域(例えばコイル片62ab,62baが巻装される領域)へ巻線の巻回位置を変える場合には、巻線不在領域65内に巻線66を斜めに通過させる。このとき、巻線不在領域65内を通過する巻線66は、コア63の小径側端面63Sに設けられた凸部631の側壁の一部631aと、大径側端面63Lに設けられた凸部632の側壁の一部632aとに当接して、Z軸を中心とする回転方向の位置が規制される。凸部631,632のうち巻線66が当接する部分631a,632aのZ軸を中心とする半径方向の位置は、コア63の内周側端縁近傍に位置している。
【0021】
本実施形態では、このように巻線66が凸部631,632に当接するので、上側コア半体63a及び下側コア半体63bのそれぞれにおいて、巻線66に印加された張力によって、一方のコイル片の大径側部分が矢印67aの向きに位置ずれし、また、他方のコイル片の小径側部分が矢印67bの向きに位置ずれするという図9を用いて説明した問題が発生しない。この結果、コイル片62aa,62ab,62ba,62bbが設計位置に対して非対称に位置ずれすることにより、非対称なミスコンバーゼンスパターン(図11参照)、画像の回転歪み(図12参照)、電子ビームのランディング位置の位置ずれ(図13参照)等が発生することがなく、良好な画像を表示することができる。
【0022】
図3において、コアの小径側端面63Sに形成された凸部631のZ軸方向の高さは、この小径側端面63Sでの垂直偏向コイル63の凸部631の近傍部分の厚み以上であることが好ましい。同様に、コアの大径側端面63Lに形成された凸部632のZ軸方向の高さは、この大径側端面63Lでの垂直偏向コイル63の凸部632の近傍部分の厚み以上であることが好ましい。これにより、巻線66が当接する凸部631,632の部分近傍の垂直偏向コイル63を構成する全ての巻線が凸部631,632で位置規制されるので、垂直偏向コイル63が非対称に位置ずれするのを防止することができる。
【0023】
図4において、巻線66が当接する凸部631の部分631aのZ軸を中心とする半径方向の寸法は、凸部631が形成された小径側端面63Sの半径方向の厚みよりも小さいことが好ましい。図示を省略するが、同様に、巻線66が当接する凸部632の部分632aのZ軸を中心とする半径方向の寸法は、凸部632が形成された大側端面63Lの半径方向の厚みよりも小さいことが好ましい。これにより、巻線66が当接する凸部631,632の部分631a,632aを小さくすることができるので、巻線66及びコイル片62aa,62ab,62ba,62bbをより正確に位置規制することができる。
【0024】
また、図6に示すように、凸部631のZ軸を中心とする半径方向の寸法を、凸部631が形成された小径側端面63Sの半径方向の厚みよりも小さくしても良い。図示を省略するが、同様に、凸部632のZ軸を中心とする半径方向の寸法を、凸部632が形成された大側端面63Lの半径方向の厚みよりも小さくしても良い。特に、一般に相対的に大きな厚みを有する小径側端面63Sにおいては、凸部631の半径方向の寸法が、小径側端面63Sの半径方向の厚みの1/2以下、更には1/3以下であることが好ましい。これにより、巻線66と凸部631,632とが接する範囲を小さくすることができるので、巻線66及びコイル片62aa,62ab,62ba,62bbをより正確に位置規制することができる。
【0025】
上記において、巻線66が当接する凸部631,632の部分631a,632aは、Z軸を中心とする半径方向において、小径側端面63S及び大径側端面63LのZ軸側端縁近傍に位置していることが好ましい。このように、巻線66がZ軸により近い位置で位置規制されることにより、コイル片62aa,62ab,62ba,62bbのコア63の内周側の部分の位置ずれを一層防止することができる。
【0026】
また、図7に示すように、コア63の小径側端面63Sの巻線不在領域65に対応する1つの領域内に複数の凸部631を設けても良い。図示を省略するが、同様に、コア63の大径側端面63Lの巻線不在領域65に対応する1つの領域内に複数の凸部632を設けても良い。このとき巻線66は複数の凸部631のうちの少なくとも1つ及び複数の凸部632のうちの少なくとも1つと当接する。これによっても、コイル片62aa,62ab,62ba,62bbが設計位置に対して非対称に位置ずれするのを防止できる。
【0027】
コア63の小径側端面63Sに形成された凸部631はYZ面に対して対称であることが好ましい。同様に、コア63の大径側端面63Lに形成された凸部632はYZ面に対して対称であることが好ましい。これにより、巻線不在領域65における巻線66の配置がYZ面に対して対称に変わっても、共通するコアを使用することができる。
【0028】
Z軸と平行な方向から見た凸部631,632の形状は、図4に示すような略三角形に限定されず、四角形などの各種多角形、円形、楕円形などであっても良い。
【0029】
上記の実施形態では、コア63の小径側端面63Sに凸部631が形成され、且つ大径側端面63Lに凸部632が形成されていたが本発明はこれに限定されない。両端面63S,63Lに凸部を形成する場合に比べるとコイル片62aa,62ab,62ba,62bbの位置ずれ防止効果はやや低下するものの、小径側端面63S及び大径側端面63Lのうちのいずれか一方のみに凸部を設けることもできる。
【実施例】
【0030】
画面対角サイズが29インチ、画面アスペクト比が4:3、偏向角が104°、ネック部3aの外径がφ29.1mmのインライン型カラー陰極線管装置の実施例を示す。
【0031】
本実施例に係るカラー陰極線管装置の概略構成は図1に示した通りであり、垂直偏向コイル62及びコア63の概略構成は図2〜図5に示したとおりであった。
【0032】
コア63の小径側端面63Sの内半径及び外半径はそれぞれ25mm、33mm、大径側端面63Lの内半径及び外半径はそれぞれ52mm、54mm、Z軸方向寸法(凸部631,632を含まず)は38mmであった。
【0033】
コア63に垂直偏向コイル63の巻線を7層にトロイダル巻きした。
【0034】
巻線不在領域65のYZ面に対して一方の側の部分がZ軸に対してなす角度α(図8参照)は、コア63の小径側端及び大径側端でともに12度であった。
【0035】
コア63(即ち上側コア半体63a及び下側コア半体63b)の小径側端面63S及び大径側端面63Lの巻線不在領域65に対応する部分に設けた凸部631及び凸部632の高さ(Z軸方向寸法)はそれぞれ2.5mm、1.5mmであった。この凸部631及び凸部632の高さは、小径側端面63S及び大径側端面63Lでの垂直偏向コイル62の凸部631及び凸部632の近傍部分の厚みとほぼ一致していた。
【0036】
図4に示すように、Z軸と平行な方向から見たとき、小径側端面63Sの凸部631はY軸上に頂角を有する略二等辺三角形を有していた。巻線66は、この略二等辺三角形の2つの底角のうちの一方を含む部分631aのみに接触していた。
【0037】
図示を省略するが、大径側端面63Lの凸部632のZ軸と平行な方向から見た形状は、巻線不在領域65の周方向の両端とZ軸とを結ぶ2直線に沿った2辺を有する略台形状とした。本実施例では大径側端面63Lの半径方向の厚みが2mmと小さかったので、巻線66がこの略台形状の辺に接する範囲はごく僅かであり、巻線66及びコイル片62aa,62ab,62ba,62bbが位置ずれすることはなかった。もちろん、大径側端面63Lの凸部632を、小径側端面63Sの凸部631と同様に、底面が略二等辺三角形である略三角柱形状にしても良い。
【0038】
上記の実施例では、コイル片62aa,62ab,62ba,62bbがコア63に対してその設計位置から位置ずれすることがなく、得られた陰極線管装置は良好な画像を表示することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、垂直偏向コイルの位置ずれを防止することで良好な画像を表示することができる陰極線管装置として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る陰極線管装置の概略構成を示した半断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る陰極線管装置に搭載される、フェライトコアにトロイダル巻きされた垂直偏向コイルの一実施形態の斜視図である。
【図3】図3は、本発明に係る陰極線管装置に搭載される、フェライトコアにトロイダル巻きされた垂直偏向コイルの一実施形態の下面図である。
【図4】図4は、本発明に係る陰極線管装置に搭載される、フェライトコアにトロイダル巻きされた垂直偏向コイルの一実施形態の小径側から見た背面図である。
【図5】図5は、本発明に係る陰極線管装置に搭載されるフェライトコアの一実施形態の斜視図である。
【図6】図6は、本発明に係る陰極線管装置に搭載される、フェライトコアにトロイダル巻きされた垂直偏向コイルの別の実施形態の小径側から見た背面図である。
【図7】図7は、本発明に係る陰極線管装置に搭載される、フェライトコアにトロイダル巻きされた垂直偏向コイルの更に別の実施形態の小径側から見た背面図である。
【図8】図8は、フェライトコアにトロイダル巻きされた従来の垂直偏向コイルの小径側から見た背面図である。
【図9】図9は、フェライトコアにトロイダル巻きされた従来の垂直偏向コイルの下面図である。
【図10】図10は、従来の垂直偏向コイルのフェライトコアに対して内周側の部分が位置ずれする様子を示した水平方向面に沿った断面図である。
【図11】図11は、従来の陰極線管装置において、垂直偏向コイルの非対称な位置ずれにより生じる非対称なミスコンバーゼンスパターンの一例を示した図である。
【図12】図12は、従来の陰極線管装置において、垂直偏向コイルの非対称な位置ずれにより生じる画像の回転歪みの一例を示した図である。
【図13】図13は、従来の陰極線管装置において、垂直偏向コイルの非対称な位置ずれにより生じる電子ビームのランディング位置の非対称な位置ずれの一例を示した図である。
【図14】図14は、従来の陰極線管装置において、トロイダル型垂直偏向コイルのコアに対する位置ずれを防止するために、係止突起付きガイド部材が設けられたコア半体を示した側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 陰極線管装置
2 パネル
2a 蛍光体スクリーン
3 ファンネル
3a ネック部
4 電子銃
5 シャドウマスク
6 偏向ヨーク
7 電子ビーム
10 CPU
11 2極マグネットリング
12 4極マグネットリング
13 6極マグネットリング
61 水平偏向コイル
62 垂直偏向コイル
62aa,62ab,62ba,62bb コイル片
63 フェライトコア
63a 上側コア半体
63b 下側コア半体
63S 小径側端面
63L 大径側端面
631,632 凸部
64 絶縁枠
65 巻線不在領域
66 巻線
69 磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に略矩形状の蛍光体スクリーンが形成されたパネルと、前記パネルに接合されたファンネルと、前記ファンネルのネック部内に収納され、電子ビームを放出する電子銃と、前記蛍光体スクリーンに対向し、前記電子ビームが通過する多数の開口が形成されたシャドウマスクと、前記ファンネルの外周面上に搭載された偏向ヨークと、前記ファンネルのネック部の外周面上に搭載され、前記蛍光体スクリーンの中央での色純度と色ずれを調整するCPUとを備えた陰極線管装置であって、
前記偏向ヨークは、略漏斗形状を有するフェライトコアと、前記電子ビームを水平方向に偏向するサドル型の水平偏向コイルと、前記電子ビームを垂直方向に偏向する、前記フェライトコアに巻装されたトロイダル型の垂直偏向コイルと、管軸方向には前記フェライトコアの小径側端近傍であって前記フェライトコアに対して前記ファンネル側に上下に配された一対の磁性体とを備え、
前記フェライトコアは、垂直方向軸が交差する位置に、前記垂直偏向コイルの巻線が実質的に配置されていない巻線不在領域を有し、前記フェライトコアの小径側端面及び大径側端面の少なくとも一方の前記巻線不在領域に対応する領域内に管軸方向に突出した凸部が設けられており、前記巻線不在領域を通過する前記垂直偏向コイルの巻線が前記凸部に当接していることを特徴とする陰極線管装置。
【請求項2】
前記凸部の管軸方向の高さは、前記凸部が形成された前記小径側端面又は前記大径側端面での前記垂直偏向コイルの前記凸部の近傍部分の厚み以上である請求項1に記載の陰極線管装置。
【請求項3】
前記巻線不在領域を通過する前記巻線が当接する前記凸部の部分の管軸を中心とする半径方向の寸法は、前記凸部が形成された前記小径側端面又は前記大径側端面の前記半径方向の厚みよりも小さい請求項1に記載の陰極線管装置。
【請求項4】
前記凸部の管軸を中心とする半径方向の寸法は、前記凸部が形成された前記小径側端面又は前記大径側端面の前記半径方向の厚みよりも小さい請求項1に記載の陰極線管装置。
【請求項5】
前記フェライトコアの前記小径側端面又は前記大径側端面の前記巻線不在領域に対応する1つの領域内に設けられた前記凸部の数が複数である請求項1に記載の陰極線管装置。
【請求項6】
前記凸部は、管軸を含む垂直方向面に対して対称である請求項1に記載の陰極線管装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−32562(P2009−32562A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196075(P2007−196075)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(503217783)MT映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】