説明

陽イオンナノ粒子ゾル、及び製紙の生産過程に陽イオンナノ粒子によりコロイドと可溶性物質を除去する方法

【課題】陽イオンナノ粒子ゾル、及びそれによる製紙方法を提供する。
【解決手段】陽イオンナノ粒子ゾルにより、製紙過程において水中のコロイドと可溶性汚染物質が除去され、しかも製紙過程において紙に残こさせて、紙製品と共に水中から除去される。そこで、陽イオンナノ粒子の比表面積が200m/gよりも大きく、5000m/gまでであり、陽イオン多価金属/表面シリコンのモル比が1:8〜30:1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽イオンナノ粒子ゾル、及びそれによる製紙方法に関し、具体的に、陽イオンナノ粒子ゾルにより、製紙過程において水中のコロイドと可溶性汚染物質が除去され、しかも製紙過程に紙に残させ、紙製品と共に水中なら除去される製紙方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙分野において、1トンの紙毎に使用される水量の減少に従って、水中の陰イオンコロイドと可溶性物質は白水の循環過程において蓄積される。これらの汚染物は製紙過程、製紙製品に対して非常に大きな悪影響を与え、処理、即ち排出しなければ、環境に対する汚染が起こる。
【0003】
今、製紙過程において、幅広く応用されているのは化学除去法であり、即ち陰イオン汚染物の捕捉剤である陽イオンポリ電解質によって水中の陰イオンコロイドと可溶性物質を除去する。陽イオンポリ電解質は、例えば陽イオン改質したポリアミド、ポリエチレンイミド(PEI)、poly−DADMAC、PAM、ポリエチレンオキシド(PEO)などの低分子量、高電荷密度の陽イオン有機重合体であればよい。また、明礬、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ポリアルミニウム化合物、及びこれらの混合物である陽イオンアルミニウム化合物を入れてもよい。ポリアルミニウム化合物において、他の陰イオン、例えば塩素イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、有機酸イオンなどを含めてもよい。例えばタルク、カオリン、CaCOなどの無機充填剤を使用する提案もあります。しかし、前記方法はまだ効果的に白水を浄化することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明にかかる方法において、陽イオンナノ粒子ゾルが採用され、特に陽イオンナノ粒子二酸化珪素ゾルによって繊維パルプから陰イオンコロイドと可溶性物質が効果的に除去され、しかも製紙過程において紙に残させて白水を浄化するのが望ましい。
【0005】
理論に拘らず、発明者は本発明の主な原理が以下の通りだと思っている。即ち、陽イオンナノ粒子は電気的中和、粒子架橋凝絮、静電気吸着、及び前記三者の綜合作用によって水中の陰イオンコロイドと可溶性汚染物とを除去するのである。
【0006】
本発明の1つの方面によって、陽イオンナノ粒子ゾルが提供され、陽イオンナノ粒子二酸化珪素ゾルが望ましく、その中に前記粒子の比表面積は500m/gよりも大きく、5000m/gまでであり、600m/g〜5000m2/gが望ましく、800m/g〜5000m/gがさらに望ましく、もっとも望ましいのは1000m/g〜5000m/gである。更に、その陽イオン多価金属/表面シリコンのモル比は1:8〜30:1であり、1:1〜30:1が望ましく、5:1〜30:1がさらに望ましく、もっとも望ましいのは10:1〜30:1である。
【0007】
本発明のもう1つの方面によって、陽イオンナノ粒子ゾルが提供され、陽イオンナノ粒子二酸化珪素ゾルが望ましく、その中に前記粒子の比表面積は200m/gよりも大きく、5000m/gまでであり、500m/g〜5000m/gが望ましく、800m/g〜5000m/gがさらに望ましく、もっとも望ましいのは1000m/g〜5000m/gである。更に、その陽イオン多価金属/表面シリコンのモル比は1:1〜30:1であり、3:1〜30:1が望ましく、5:1〜30:1がさらに望ましく、もっとも望ましいのは10:1〜30:1である。
【0008】
例えば金属イオンのような陽イオン化学成分で粒子の表面を処理することによって、粒子表面の正電荷を生じさせることができる。処理法については、例えばアメリカ特許No.3007878、3719607における説明を参照すればわかる。塩基性金属塩で改質する場合、通常、ナノ粒子と多価(本文に使われた技術用語「多価」とは3〜4価を指す)金属塩とを反応させることにより、粒子の表面に正電荷を生じさせる。そこで使用される安定剤としては、硼酸、りん酸、炭酸、重炭酸などのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム塩であってよい。塩基性金属塩で改質する場合、使用される多価金属は、例えばAl、Cr、Ga、In、Tlから選んだ3価金属であってもよく、例えばTi、Ge、Zr、Sn、Ce、Hf、Thから選んだ4価金属あってもよい。塩基性金属塩の陰イオンは強酸の陰イオン酸基が望ましく、例えば、塩酸、硝酸、塩化臭素酸、酢酸などである。アルミニウム塩のコストが安いため、望ましい。
【0009】
本発明にかかる陽イオンナノ粒子ゾルのPH値は酸性であり、即ち7よりも小さい。
【0010】
本発明方法にかかる陽イオンナノ粒子ゾルについて、使用前に0.1〜2.0重量%まで希釈したほうがよく、0.5〜1.5重量%が望ましく、0.5〜1.0重量%がさらに望ましく、使用可能の希釈剤は水である。陽イオンナノ二酸化珪素粒子と繊維パルプの総乾燥重量で計算すれば、陽イオンナノ二酸化珪素粒子の用量は0.1〜20kg/tonであってよい。1〜6kg/tonとの用量が望ましく、優れた汚染物の除去効果を収めるために、1〜3kg/ton又はそれ以下の用量がさらに望ましい。
【0011】
具体的に言えば、本発明にかかる陽イオンナノ粒子ゾルの製造方法は以下のステップを備えてもよい。即ち、市場で販売されているコロイド二酸化珪素ゾル、又は酸性化脱イオンの二酸化珪素ゾル、或いは密集重合珪酸を、塩基性水溶金属アルミニウム塩と混合して反応させる。塩基性金属アルミニウム塩と二酸化珪素ゾルとのモル比は2×10−5A:1〜2×10−3A:1、或いはそれ以上である。ここで、Aはゾル粒子の比表面積である。反応は昇温の状態において、ゾルのPH値が変化しないまで行われる。その後、所定量の安定剤を入れて、陽イオンナノ粒子ゾルを得る。
【0012】
本発明にかかる方法は異なるパルプ繊維組成を有する製紙パネルに適用できる。ここでいうパルプ繊維は、針葉木、広葉木の化学パルプ、又は機械パルプであってもよく、例えば硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプ、熱砕機械パルプ、石研ぎパルプ、木研ぎパルプ、化学機械パルプなどである。また、回収繊維及び非木材繊維パルプにも使える。製紙パルプに、例えばカオリン、チタン白、滑石粉、石膏、炭酸カルシウムなどのような伝統的な鉱物充填剤が含まれてもよい。また、例えばドライ強化剤、ウェット強化剤、染料などの伝統的な製紙過程における添加剤が含まれてもよい。陽イオンナノ粒子は充填剤を混合する前にパルプ繊維の懸濁液に入れられるべきであり、そのPH値は4〜9であり、パルプ濃度は0.2〜3.5重量%であってよい。この除去された陰イオンコロイドと汚染物は、製紙過程において紙に残る。本発明にかかる方法において、製紙分野で如何なる常用の他の有機陽イオン助剤と添加剤を使用してもよい。
【0013】
本発明にかかる方法によって水中の陰イオンコロイドと可溶性物質を除去でき、且つ紙の質に対して何の悪影響もない。本発明にかかる方法を採用すれば、化学酸素要求量(COD)の約50%を減少できる。70〜80重量%の陽イオンナノ粒子が紙に残られるので、繊維パルプの残留率及び製紙過程の運行性も向上され、用量が少なく、効率がよく、操作が簡単である。本発明にかかる方法は各種の製紙条件の紙と板紙製品の生産に幅広く適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施例1〜4
以下の通り準備する。即ち、実施例1に用いられる繊維パルプは100%Spruce熱砕機械パルプであり、水酸化ナトリウムと塩酸でpH値を6.5まで調整する。ナノ粒子は、5.9重量%のAl及び9.9重量%のSiOが含まれた陽イオンナノ粒子ゾル(A)と、25.9重量%のAl及び3.9重量%のSiOが含まれた陽イオンナノ粒子ゾル(B)とである。この用量は陽イオンナノ粒子ゾルと繊維パルプとの乾燥重量で計算される。下出口が閉められたBritt動態脱水瓶に、1000回転/分のスピードで陽イオンナノ粒子ゾルを入れる。3分間攪拌した後、最初の100秒内の流出液を取る。遠心分離法でコロイドと可溶性物質とが含まれた上サンプルを得て、SCAN−CM45:91標準に基づいてCODを検知する。陽イオンナノ粒子ゾル(A)と(B)の用量及び実験の結果は下記表1の通りである。
【0015】
【表1】

【0016】
実施例2に用いられるナノ粒子は陽イオンナノ粒子ゾル(A)であり、繊維パルプは100%Spruce熱砕機械パルプであり、水酸化ナトリウムと塩酸でpH値を6.5まで調整する。その他のステップは実施例1と同じであり、その結果は下記表2の通りである。
【0017】
【表2】

【0018】
実施例3に用いられるナノ粒子は陽イオンナノ粒子ゾル(A)であり、繊維パルプは100%Spruce熱砕機械パルプであり、パルプ濃度は2〜10g/lであり、pH値は4〜9である。その他のステップは実施例1と同じであり、結果によれば、除去率は10〜26%向上された。
【0019】
実施例4において、陽イオンナノ粒子ゾル(A)が入れられた繊維パルプを均一に混合し、濃度が1.63g/lである状態で実験室の抄紙機で紙を作製し、SCAN−Pの標準に基づいて、紙の物理指標と二酸化珪素の残留率を検知する。繊維パルプはSpruce熱砕機械パルプ、松の硫酸塩パルプ、及びこれらの混合パルプである。陽イオンナノ粒子ゾル(A)の用量は0.5〜3kg/tonである。結果によれば、約70〜85重量%の二酸化珪素が紙に残れ、且つ紙の強度に顕著な変化がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

陽イオンナノ粒子ゾル、特に陽イオンナノ粒子二酸化珪素ゾルであって、
前記粒子の比表面積は500m/gよりも大きく、5000m/gまでであり、陽イオン多価金属/表面シリコンのモル比は1:8〜30:1であることを特徴とする陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項2】
前記粒子の比表面積は600m/g〜5000m/gであり、800m/g〜5000m/gが望ましく、1000m/g〜5000m/gがさらに望ましい請求項1に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項3】
前記陽イオン多価金属/表面シリコンのモル比は1:1〜30:1であり、5:1〜30:1が望ましく、10:1〜30:1がさらに望ましい請求項1に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項4】
陽イオンナノ粒子ゾル、特に陽イオンナノ粒子二酸化珪素ゾルであって、
前記粒子の比表面積は200m/gよりも大きく、5000m/gまでであり、陽イオン多価金属/表面シリコンのモル比は1:1〜30:1であることを特徴とする陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項5】
前記粒子の比表面積は500m/g〜5000m/gであり、800m/g〜5000m/gが望ましく、1000m/g〜5000m/gがさらに望ましい請求項4に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項6】
前記陽イオン多価金属/表面シリコンのモル比は3:1〜30:1であり、5:1〜30:1が望ましく、10:1〜30:1がさらに望ましい請求項4に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項7】
陽イオン化学成分、例えば金属イオンで粒子の表面を処理することによって、粒子表面の正電荷を生じさせる請求項1〜6の何れか一項に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項8】
前記金属イオンは塩基性多価金属塩である請求項7に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項9】
前記多価金属は、Al、Cr、Ga、In、Tlから選んだ3価金属と、Ti、Ge、Zr、Sn、Ce、Hf、Thから選んだ4価金属とを含む請求項8に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項10】
前記多価金属はAlである請求項9に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項11】
前記塩基性多価金属塩は、塩酸、硝酸、塩化臭素酸、酢酸から選んだ強酸の陰イオン酸基を含む請求項8に記載の陽イオンナノ粒子ゾル。
【請求項12】
製紙過程において、水中から陰イオンコロイドと可溶性物質を除去する方法であって、
請求項1〜6の何れか一項に記載の陽イオンナノ粒子ゾルを繊維パルプに入れるステップを含むことを特徴とする、製紙過程において水中から陰イオンコロイドと可溶性物質を除去する方法。
【請求項13】
前記繊維パルプは針葉木、広葉木の機械パルプ、化学パルプ、化学機械パルプ、及び回収繊維と非木材繊維パルプを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維パルプのPH値は4〜9であり、パルプ濃度は0.2〜3.5重量%である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
陽イオンナノ二酸化珪素粒子と繊維パルプの総乾燥重量で計算する場合、前記陽イオンナノ二酸化珪素粒子の用量は0.1〜20kg/tonであり、1〜6kg/tonが望ましく、1〜3kg/ton又はそれ以下の用量がさらに望ましい請求項12に記載の方法。
【請求項16】
製紙過程において、水中から陰イオンコロイドと可溶性物質を除去する方法であって、
陽イオンナノ粒子ゾルを繊維パルプに入れるステップを含め、前記陽イオンナノ粒子の比表面積は220m/g〜500m/gであり、陽イオン多価金属/表面シリコンのモル比は1:1であることを特徴とする、製紙過程において水中から陰イオンコロイドと可溶性物質を除去する方法。



【公表番号】特表2009−510271(P2009−510271A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531514(P2008−531514)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002484
【国際公開番号】WO2007/033601
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508088959)
【Fターム(参考)】