説明

階層型需給制御装置および電力系統制御システム

【課題】物理的な階層構造によって制限されることなく、多数の分散型電源を含む電力系統全体の制御を容易に行うことができる階層型需給制御装置およびそれを備える電力系統制御システムを提供する。
【解決手段】電力系統制御システム100に、PV集約処理部11およびPV制御処理部12を備える階層型需給制御装置1を設ける。PV集約処理部11では、PV装置3の性能を示す指標、たとえば定格出力に基づいて、PV装置3を集約する。そして、集約されたPV装置3の集合毎に、PV制御処理部12によってPV装置3を制御する。PV装置3に代えて、またはPV装置3に加えて、蓄電池が設けられる場合には、蓄電池の性能を示す指標、たとえば充電効率または残容量に基づいて蓄電池を集約し、集約した蓄電池の集合毎に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の需給制御を行う階層型需給制御装置およびそれを備える電力系統制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統を制御するシステムまたは装置は、たとえば特許文献1,2に開示されている。特許文献1には、電力系統に接続された複数台の蓄電装置と、系統周波数とエリア内の電力系統状態を検出する検出部と、複数台の蓄電装置のそれぞれと電力系統との間の電力送電効率に関する所定のパラメータに基づいて決定された、電力系統に接続される蓄電装置の制御順位に従って、検出部によって検出された電力系統状態に基づいて該複数台の蓄電装置を制御する第一制御部とを備えて構成される電力供給システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、管轄の電力系統内において、需要家の受電電力を自発的に制御させることによって、管轄の電力系統内に面的に広がった需要家および需要家の設置した分散電源を、連系点電圧の如何に関わらず、需給調整に活用する電力系統制御装置が開示されている。
【0004】
特許文献2に開示される技術では、管轄の電力系統内に設定したブロック内の発電電力または負荷などを需給調整する給電条件を、給電条件指令としてインターネットなどの公共の電子情報処理組織に提示する。需要家は、インターネットなどを介して給電条件指令を受信し、前記給電条件を認識する。
【0005】
需要家は、提示された給電条件に基づいて、需要家の設置した分散電源および負荷設備の運転状況に応じて、発電電力あるいは受電電力を自発的に制御し、同時に自発的な制御による電力調整量を時間帯別に計測する。給電指令所は、需給調整量に応じ、管轄内需要家の過去の自発的な制御の選択特性を考慮して需給調整対象のブロック範囲を改定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−233353号公報
【特許文献2】特開2001−177990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1に開示される技術では、変電所にある制御装置によって、エリア内の電力系統状態に応じて蓄電池を制御する。しかし、特許文献1に開示される技術では、異なる地域に存在する蓄電池までは考慮されておらず、制御部が行う制御は、各地域内での制御となる。
【0008】
実際の運用では、ある地域(以下「A地域」という)にある蓄電池は充電されており、放電可能であるが、A地域とは異なる地域(以下「B地域」という)では、蓄電池が空であるので放電できず、代わりに発電コストの高い火力発電機が発電するような状態が生じる。この場合、経済性を考えれば、A地域の蓄電池が放電してB地域へ供給し、B地域の火力発電機を停止するような制御を行うことによって、発電に必要なコストを減少させることができると考えられる。
【0009】
しかし、特許文献1に開示される技術では、前述のように異なる地域に存在する蓄電池までは考慮されていない。したがって、A地域の蓄電池が放電可能であるときにはB地域の火力発電機を停止する、というような制御を行うことは難しいという問題がある。
【0010】
前述の特許文献2には、中央給電指令所あるいは地方給電指令所による需給運用について開示されている。特許文献2に開示される技術では、管理下の需要家または需要家の設置した分散型電源に対して、個別に監視を行い、価格情報による間接制御を行っている。
【0011】
このように特許文献2に開示される技術では、個別に監視を行う必要があるので、管理下に存在する需要家および分散型電源が増加した場合、監視制御対象が増加することとなる。たとえば、分散型電源である太陽光発電(PV)装置および蓄電池が大幅に増加した場合、監視制御対象が大幅に増加するので、給電指令所の監視制御にかかる負担が増加し、現実的な時間での監視制御作業ができなくなるおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、物理的な階層構造によって制限されることなく、多数の分散型電源を含む電力系統全体の制御を容易に行うことができる階層型需給制御装置およびそれを備える電力系統制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の階層型需給制御装置は、電力系統に接続される複数の分散型電源を階層的に集約して制御する階層型需給制御装置であって、予め定められる指標に基づいて、分散型電源を集約する集約処理部と、前記集約処理部によって集約された分散型電源の集合毎に、前記分散型電源を制御する制御処理部とを備え、前記指標は、前記分散型電源の性能を示す指標であることを特徴とする。
【0014】
本発明の電力系統制御システムは、前記本発明の階層型需給制御装置と、電力系統に接続され、前記階層型需給制御装置によって制御される複数の分散型電源と、前記階層型需給制御装置の集約処理部によって集約された分散型電源に関する情報に基づいて、前記分散型電源を制御するための制御情報を前記階層型需給制御装置に与えることによって、前記分散型電源を含む電力系統全体を制御する中央給電指令装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の階層型需給制御装置によれば、電力系統に接続される複数の分散型電源は、集約処理部によって、分散型電源の性能を示す指標に基づいて集約され、集約された分散型電源の集合毎に、制御処理部によって制御される。分散型電源は、その分散型電源の性能を示す指標に基づいて集約されるので、分散型電源の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく制御することができる。また分散型電源は、集約された分散型電源の集合毎に制御されるので、分散型電源の個数が増加して、多数の分散型電源が設置された場合でも、容易に制御することができる。したがって、分散型電源の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、多数の分散型電源を含む電力系統全体の制御を容易に行うことができる。
【0016】
本発明の電力系統制御システムによれば、前述の本発明の階層型需給制御装置を備えるので、分散型電源の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、多数の分散型電源を含む電力系統全体の制御を容易に行うことができる電力系統制御システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態である階層型需給制御装置1を備える電力系統制御システム100の構成を示す図である。
【図2】図1のPV装置3を定格出力に基づいて集約した場合の中給2から見た構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態である階層型需給制御装置6を備える電力系統制御システム101の構成を示す図である。
【図4】図3に示す蓄電池5を充電効率に基づいて集約した場合の中給2から見た構成を示す図である。
【図5】図3に示す蓄電池5を残容量に基づいて集約した場合の中給2から見た構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態である階層型需給制御装置8を備える電力系統制御システム102の構成を示す図である。
【図7】図6に示す蓄電池5を充電効率に基づいて集約し、PV装置3を定格出力に基づいて集約した場合の中給2から見た構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
電力系統の運用においては、その電圧および周波数などを安定した状態に保たなければならない。電圧および周波数などを安定した状態に保つための基本条件として、工場および一般家庭などの需要と、発電装置(以下「発電機」という場合がある)などからの供給力とを一致させる必要がある。この基本条件を、以下の説明では「需給バランス」という場合がある。需給バランスを満足できない状態が発生すると、電圧および周波数が変動し、電力の安定供給に影響を及ぼすおそれがある。日本の場合、各電力会社が、各種機器を設置することによって、電力系統を安定化させるための対策をとっている。
【0019】
電力会社は、中央給電指令所に設置される中央給電指令装置(以下「中給」という場合がある)によって、火力発電所および水力発電所などの制御を行い、電力系統の安定性を維持するようにしている。しかし、電力系統に接続される発電装置が増加した場合には、電力系統の安定性を維持することができなくなるおそれがあるという問題がある。
【0020】
たとえば、電力系統に接続される太陽光発電(Photovoltaic power generation;略称:PV)装置が増加した場合、日射の影響によって供給力が変動する。PV装置は、太陽がPV装置を照らしている時間に発電し、照らさない時間は発電しない。PV装置の多い地域において、太陽が急にPV装置を照らしたり、需要が小さくなったりした場合には、供給力が過剰となり、電力系統の安定性が崩れるおそれがある。
【0021】
このように、電力系統に接続されるPV装置などの発電装置が増加した場合には、電力系統の安定性を維持することができなくなるおそれがあるという問題がある。そこで、本実施の形態では、以下に示す構成を採用している。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態である階層型需給制御装置1を備える電力系統制御システム100の構成を示す図である。電力系統制御システム100は、階層型需給制御装置1、中央給電指令装置(中給)2、太陽光発電(PV)装置3および発電機4を備えて構成される。発電機4は、PV装置3以外の発電手段を意味し、たとえば風力発電機、火力発電機、水力発電機などである。PV装置3は、分散型電源に相当する。階層型需給制御装置1は、電力系統に接続される複数の分散型電源、本実施の形態ではPV装置3を階層的に集約して制御する。
【0023】
分散型電源とは、需要地近傍に分散して配置される電源をいう。分散型電源は、電力会社によって設置される火力発電機などの電源と比較して、比較的小規模な電源である。分散型電源の具体例としては、太陽光発電(PV)装置、風力発電装置などの自然エネルギーを利用した発電装置、燃料電池、マイクロガスタービンなどのコージェネレーション(熱電併給)システム、蓄電池が挙げられる。
【0024】
階層型需給制御装置1は、複数、具体的には3つが備えられる。3つの階層型需給制御装置1を区別して示す場合には、参照符「1A」〜「1C」を用いて、第1階層型需給制御装置1A、第2階層型需給制御装置1Bおよび第3階層型需給制御装置1Cとして示す。PV装置3は、複数、具体的には6つが備えられる。6つのPV装置3を区別して示す場合には、参照符「3A」〜「3F」を用いて、第1PV装置3A、第2PV装置3B、第3PV装置3C、第4PV装置3D、第5PV装置3Eおよび第6PV装置3Fとして示す。発電機4は、複数、具体的には2つが備えられる。2つの発電機4を区別して示す場合には、参照符「4A」,「4B」を用いて、第1発電機4Aおよび第2発電機4Bとして示す。
【0025】
電力系統制御システム100では、中給2の下位層に、第1階層型需給制御装置1Aと、第1および第2発電機4A,4Bとが接続されている。また、第1階層型需給制御装置1Aの下位層に、第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cが接続されている。また、第2階層型需給制御装置1Bの下位層に、第1〜第3PV装置3A〜3Cが接続されている。また、第3階層型需給制御装置1Cの下位層に、第4〜第6PV装置3D〜3Fが接続されている。
【0026】
第1階層型需給制御装置1Aは、PV集約処理部11、PV制御処理部12、上位層インタフェース13および下位層インタフェース14を備えて構成される。第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cは、第1階層型需給制御装置1Aと同様の構成であり、図1では図示を省略しているが、PV集約処理部11、PV制御処理部12、上位層インタフェース13および下位層インタフェース14を備えて構成される。
【0027】
PV集約処理部11は、予め定められる1つまたは複数の指標に基づいて、下位層のPV装置3を集約する。PV制御処理部12は、管理下にあるPV装置3を制御するために、上位層から送信される制御情報に基づいて、PV装置3の出力抑制量を計算する。「出力抑制量」とは、PV装置3から電力系統に出力する電力を、どの程度抑制するかを示す量である。
【0028】
上位層インタフェース13は、上位層との間で、情報を送受信する。本実施の形態では、上位層インタフェース13は、PV集約処理部11で集約された各PV装置3の情報(以下「PV情報」という場合がある)を、上位層へ送信する。第1階層型需給制御装置1Aの場合、直接接続された上位層は中給2であるので、上位層インタフェース13は、PV情報を中給2へ送信する。第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cの場合、直接接続された上位層は第1階層型需給制御装置1Aであるので、上位層インタフェース13は、PV情報を第1階層型需給制御装置1Aへ送信する。PV情報は、たとえば定格出力などである。以下の説明では、集約されたPV装置3の集合を「集約PV装置」という場合がある。
【0029】
また上位層インタフェース13は、上位層から送信される制御情報を受信する。第1階層型需給制御装置1Aの場合、上位層インタフェース13は、上位層である中給2から送信される制御情報を受信する。第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cの場合、上位層インタフェース13は、上位層である第1階層型需給制御装置1Aから送信される制御情報を受信する。上位層から送信される制御情報は、PV集約処理部11におけるPV装置3の集約に使用する指標を含む。
【0030】
下位層インタフェース14は、下位層との間で、情報を送受信する。具体的には、下位層インタフェース14は、下位層へ制御情報を送信する。第1階層型需給制御装置1Aの場合、直接接続された下位層は第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cであるので、下位層インタフェース14は、第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cへ制御情報を送信する。第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cの場合、直接接続された下位層はPV装置3であるので、下位層インタフェース14は、PV装置3へ制御情報を送信する。
【0031】
また下位層インタフェース14は、下位層から送信される定格出力などのPV情報を受信する。第1階層型需給制御装置1Aの場合、下位層インタフェース14は、下位層である第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cから送信されるPV情報を受信する。第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cの場合、下位層インタフェース14は、下位層であるPV装置3から送信されるPV情報を受信する。
【0032】
中給2は、中給通信インタフェース21および中給制御処理部22を備えて構成される。中給通信インタフェース21は、下位層から送信される下位層の情報を受信する。具体的には、中給通信インタフェース21は、第1階層型需給制御装置1Aから送信される集約PV装置の情報(以下「集約PV情報」という場合がある)を受信するとともに、発電機4から送信される発電機4の情報(以下「発電機情報」という場合がある)を受信する。中給通信インタフェース21は、受信した下位層の情報、具体的には集約PV情報および発電機情報を中給制御処理部22に与える。また中給通信インタフェース21は、後述する中給制御処理部22で用いられる指標と設定値とを含む制御情報を、下位層、具体的には第1階層型需給制御装置1A、ならびに第1および第2発電機4A,4Bへ送信する。
【0033】
中給制御処理部22は、中給通信インタフェース21から与えられた集約PV情報および発電機情報などの下位層の情報と、運用者が選択する指標とに基づいて、電力系統を制御するための演算を行う。
【0034】
前述のように、階層型需給制御装置1のPV集約処理部11では、予め定められる1つまたは複数の指標に基づいて、下位層のPV装置3を集約する。集約方法は、指標によって変化する。指標が複数ある場合、PV集約処理部11は、それぞれの指標に基づいてPV装置3を集約する。指標は、たとえばPV装置3の定格出力である。指標がPV装置3の定格出力である場合、PV集約処理部11は、たとえば以下の式(1)に示すように、予め定められるPV集約閾値と比較して、その大小関係によってPV装置3を分類して集約する。PV集約閾値は、PV装置3を集約するときの閾値として、運用者が与える設定値である。
【0035】
具体的には、PV集約処理部11は、式(1)に示すように、PViの定格出力がPV集約閾値よりも大きいときには、PViを高出力グループに集約し、PViの定格出力がPV集約閾値以下であるときには、PViを低出力グループに集約する。式(1)において、PViは、複数のPV装置3のうちの第iPV装置を示す。たとえば、PV1は、第1PV装置3Aを示す。また、変数iは1〜mの整数を示し、変数mはPV装置3の個数を示す。本実施の形態では、変数mは6であるので、変数iは1〜6の整数を示す。
【0036】
【数1】

【0037】
PV装置3の集約に用いられる指標は、PV装置3の定格出力に限定されるものではなく、たとえばPV装置3の発電効率でもよい。複数の指標が定められている場合は、PV集約処理部11は、それぞれの指標に基づいてグループを作成するので、複数のグループ(以下「集約グループ」という場合がある)ができる。また、PV集約閾値を変更することによって、階層型需給制御装置1毎のPV装置3のばらつきも分かる。実際の運用では、たとえば、PV集約閾値を500kWと設定し、定格出力が500kWよりも大きいPV装置3を中給2の制御対象とし、定格出力が500kW以下のPV装置3を中給2の制御対象外とすることもできる。
【0038】
表1に、図1に示す第1〜第6PV装置3A〜3FのPV情報を示す。表1では、PV情報として、PV装置3の定格出力を示す。また表1では、PV装置3が設置される地域(以下「設置地域」という場合がある)を併せて示す。ここでは、第1〜第3PV装置3A〜3Cの設置地域を「A地域」として示し、第4〜第6PV装置3D〜3Fの設置地域を「B地域」として示し、A地域とB地域とは異なるものとする。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、定格出力は、第1PV装置3Aが、他のPV装置である第2〜第6PV装置3B〜3Fよりも大きくなっている。また第1〜第3PV装置3A〜3Cは、A地域に設置され、第4〜第6PV装置3D〜3Fは、A地域とは異なるB地域に設置されている。
【0041】
表2に、第1〜第6PV装置3A〜3Fに対して、第1階層型需給制御装置1AのPV集約処理部11によって、定格出力を指標として集約処理を行った結果を示す。表2は、定格出力を指標としてPV装置3を集約した場合の集約PV情報であるPV定格出力集約情報を示している。表2に示す集約PV情報は、前述の式(1)に従って集約処理した場合の集約PV情報である。
【0042】
【表2】

【0043】
表2に示すように、第1PV装置3Aは、高出力グループに集約され、第2〜第6PV装置3B〜3Fは、低出力グループに集約される。これによって、たとえば、高出力グループに集約された集約PV装置(以下「高出力集約PV装置」という場合がある)を中給2による制御対象とし、低出力グループに集約された集約PV装置(以下「低出力集約PV装置」という場合がある)を制御対象外とするなどの制御を行うことができる。
【0044】
表3に、設置地域を指標としてPV装置3を集約した場合の集約PV情報であるPV地域集約情報を示す。
【0045】
【表3】

【0046】
従来の技術では、表3に示すように、設置地域を指標とした集約が行われる。この場合、第1〜第3PV装置3A〜3Cは、A地域のグループに集約され、第4〜第6PV装置3D〜3Fは、B地域のグループに集約される。第1PV装置3Aと、第2および第3PV装置3B,3Cとは、同じA地域のグループに集約されるが、前述の表1に示すように、定格出力は異なっている。このように従来の技術では、異なる定格出力のPV装置3が1つのグループに集約されてしまい、表2に示すような、運用者の目的に沿った集約を行うことができない。
【0047】
これに対し、本実施の形態では、定格出力などのPV装置3の性能を示す指標に基づいてPV装置3を集約するので、表2に示すような、運用者の目的に沿った集約を行うことが可能である。
【0048】
PV集約処理部11で集約したPV装置3の情報である集約PV情報は、上位層インタフェース13によって、上位層の中給2または階層型需給制御装置1へ送信される。第1階層型需給制御装置1Aの場合は、直接接続される下位層として第2および第3階層型需給制御装置1B,1Cが接続され、その下の下位層としてPV装置3が接続されるので、PV集約処理部11は、PV装置3と受信した集約PV情報とを合わせて集約する。
【0049】
各階層型需給制御装置1は、上位層への通信を繰り返し、集約処理を行う。最終的には中給2へと全てのPV装置3の情報が集約される。このとき、中給2は、各PV装置3が、どの階層型需給制御装置1に接続されているのかを個別に把握する必要はない。中給2は、中給2に直接接続されているPV装置3のPV情報、および中給2に直接接続されている階層型需給制御装置1が集約した集約PV情報のみを把握すればよい。中給2は、運用者が選択する指標に基づいて、集約PV情報を利用する。
【0050】
図2は、図1のPV装置3を定格出力に基づいて集約した場合の中給2から見た構成を示す図である。図2は、図1に示す電力系統制御システム1において、集約処理に用いる指標として定格出力が選択された場合に中給2が把握する情報を表したものである。中給2は、第1および第2発電機4A,4Bと、高出力集約PV装置31と、低出力集約PV装置32とが接続しているように扱うことができる。
【0051】
中給2は、発電機4または階層型需給制御装置1から送信される情報を、中給通信インタフェース21によって受信する。中給制御処理部22は、中給通信インタフェース21によって受信した情報に基づいて、以下の式(2)および式(3)を用いて運用上の制約条件と評価式とを考慮して、たとえば二次計画法を用いて電力系統全体の制御のための演算を行う。
【0052】
【数2】

【0053】
式(2)は、需給バランスの制約条件を表しており、各時刻の需要に対して発電機4の発電電力とPV装置3の発電電力とが一致することを示す。式(2)において、「Demand」は需要を表し、「P」は発電機4による発電電力を表し、「PP」はPV装置3による発電電力を表し、「GEN」は発電機4の集合を表し、「PV」はPV装置3の集合を表し、「t」は時刻を表す。
【0054】
【数3】

【0055】
式(3)は、中給2で制御を行う場合の評価式の一例を表している。式(3)によって、発電機4に対する評価値、たとえば燃料コストの合計と、PV装置3に対する評価値の合計とを求める。PV装置3は、燃料を消費しないので、PV装置3に対する評価値は、たとえば0である。式(3)において、「V」は全体評価値を表し、「Cost」は発電機4に対する評価値、具体的には発電機4による発電電力の評価値を表し、「EVAP」はPV装置3に対する評価値を表し、「TIME」は制御の期間を表す。式(3)において、「P」、「PP」、「GEN」、「PV」および「t」は、式(2)と同様である。
【0056】
中給2のPV装置3に対する制御内容として、出力抑制が挙げられる。これは、供給力が過剰となる時刻に、PV装置3の出力を抑制させることによって、需給バランスを満足させる方法である。中給2は、出力抑制を実施するために、PV装置3に対して、制御情報として、前述の出力抑制量を送信する。
【0057】
中給2は、中給通信インタフェース21から、直接接続する発電機4またはPV装置3に対して、それぞれの制御情報を送信する。また中給2は、階層型需給制御装置1に対して、選択した指標の情報と、各装置以下に接続する発電機4、高出力集約PV装置31および低出力集約PV装置32のそれぞれに対する制御情報とを送信する。
【0058】
上位層インタフェース13によって制御情報を受信した階層型需給制御装置1は、中給2と同様に、自装置の下位層の発電機4、高出力集約PV装置および低出力集約PV装置に対して、PV制御処理部11で制御するための演算を行う。PV制御処理部11によって演算された制御情報は、下位層インタフェース14によって、下位層へと送信される。
【0059】
PV装置3が下位層に直接接続されている階層型需給制御装置1の場合、発電機4、高出力集約PV装置および低出力集約PV装置に加えて、それらに直接接続されるPV装置も含めて制御を行う。
【0060】
以上のように本実施の形態によれば、階層型需給制御装置1は、PV装置3の定格出力のような性能を示す指標に基づいてPV装置3を集約する。これによって、PV装置3の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、PV装置3を制御することができる。またPV装置3は、集約PV装置毎に、すなわち集約されたPV装置3の集合毎に制御されるので、PV装置3の個数が増加して、多数のPV装置3が設置された場合でも、容易に制御することができる。
【0061】
したがって、中給2および階層型需給制御装置1は、PV装置3の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、多数のPV装置3を含めた電力系統全体の制御を容易に行うことができる。また、このような階層型需給制御装置1を中給2とともに備えることによって、PV装置3の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、多数のPV装置3を含めた電力系統全体の制御を容易に行うことができる電力系統制御システム100を実現することができる。
【0062】
<第2の実施の形態>
電力系統に接続されるPV装置が増加した場合の対策として、電力系統に蓄電池を設置する方法がある。本実施の形態では、蓄電池が設置された電力系統において、中給から電力系統全体を制御する構成について説明する。
【0063】
図3は、本発明の第2の実施の形態である階層型需給制御装置6を備える電力系統制御システム101の構成を示す図である。本発明の第2の実施の形態の電力系統制御システム101は、前述の図1に示す第1の実施の形態の電力系統制御システム100と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して、共通する説明を省略する。
【0064】
本実施の形態の電力系統制御システム101は、中給2、発電機4、蓄電池5および階層型需給制御装置6を備えて構成される。電力系統制御システム101は、第1の実施の形態の電力系統制御システム100において、PV装置3に代えて、蓄電池5を設けた構成に相当する。蓄電池5は、分散型電源に相当する。本実施の形態では、階層型需給制御装置6は、電力系統に接続される複数の分散型電源である蓄電池5を階層的に集約して制御する。
【0065】
発電機4は、複数、具体的には2つが備えられる。2つの発電機4を区別して示す場合には、参照符「4A」,「4B」を用いて、第1発電機4Aおよび第2発電機4Bとして示す。階層型需給制御装置6は、複数、具体的には3つが備えられる。3つの階層型需給制御装置6を区別して示す場合には、参照符「6A」〜「6C」を用いて、第1階層型需給制御装置6A、第2階層型需給制御装置6Bおよび第3階層型需給制御装置6Cとして示す。蓄電池5は、複数、具体的には6つが備えられる。6つの蓄電池5を区別して示す場合には、参照符「5A」〜「5F」を用いて、第1蓄電池5A、第2蓄電池5B、第3蓄電池5C、第4蓄電池5D、第5蓄電池5Eおよび第6蓄電池5Fとして示す。
【0066】
電力系統制御システム101では、第1の実施の形態の電力系統制御システム100と同様に、中給2の下位層に、第1および第2発電機4A,4Bと、第1階層型需給制御装置6Aとが接続されている。また、第1階層型需給制御装置6Aの下位層に、第2および第3階層型需給制御装置6B,6Cが接続されている。本実施の形態では、第2階層型需給制御装置6Bの下位層に、第1〜第3蓄電池5A〜5Cが接続されている。また、第3階層型需給制御装置6Cの下位層に、第4〜第6蓄電池5D〜5Fが接続されている。
【0067】
第1階層型需給制御装置6Aは、上位層インタフェース13、下位層インタフェース14、蓄電池集約処理部61および蓄電池制御処理部62を備えて構成される。第2および第3階層型需給制御装置6B,6Cは、第1階層型需給制御装置6Aと同様の構成であり、図3では図示を省略しているが、上位層インタフェース13、下位層インタフェース14、蓄電池集約処理部61および蓄電池制御処理部62を備えて構成される。
【0068】
蓄電池集約処理部61は、予め定められる1つまたは複数の指標に基づいて、下位層の蓄電池5を集約する。蓄電池制御処理部62は、管理下にある蓄電池5を制御するために、上位層から送信される制御情報に基づいて、蓄電池5の充放電電力を計算する。
【0069】
上位層インタフェース13は、本実施の形態では、蓄電池集約処理部61で集約された各蓄電池5の情報(以下「蓄電池情報」という場合がある)を、上位層へ送信する。また上位層インタフェース13は、上位層から送信される制御情報を受信する。上位層インタフェース13が蓄電池情報および制御情報を送受信する上位層は、第1階層型需給制御装置6Aの場合は中給2であり、第2および第3階層型需給制御装置6B,6Cの場合は第1階層型需給制御装置6Aである。蓄電池情報は、たとえば充電効率などである。以下の説明では、集約された蓄電池5の集合を「集約蓄電池」という場合がある。
【0070】
下位層インタフェース14は、下位層へ制御情報を送信する。また下位層インタフェース14は、本実施の形態では、下位層から送信される充電効率などの蓄電池情報を受信する。下位層インタフェース14が制御情報および蓄電池情報を送受信する下位層は、第1階層型需給制御装置6Aの場合は第2および第3階層型需給制御装置6B,6Cであり、第2および第3階層型需給制御装置6B,6Cの場合は蓄電池5である。
【0071】
中給2は、第1の実施の形態と同様に、中給通信インタフェース21および中給制御処理部22を備えて構成される。本実施の形態では、中給通信インタフェース21は、階層型需給制御装置6から送信される集約蓄電池の情報(以下「集約蓄電池情報」という場合がある)を受信するとともに、発電機4から送信される発電機情報を受信する。中給通信インタフェース21は、受信した集約蓄電池情報および発電機情報を中給制御処理部22に与える。また中給通信インタフェース21は、後述する中給制御処理部22で用いられる指標と設定値とを含む制御情報を、下位層の第1階層型需給制御装置6A、ならびに第1および第2発電機4A,4Bへ送信する。
【0072】
中給制御処理部22は、中給通信インタフェース21から与えられた集約蓄電池情報および発電機情報などの下位層の情報と、運用者が選択する指標とに基づいて、電力系統を制御するための演算を行う。
【0073】
前述のように、階層型需給制御装置6の蓄電池集約処理部61では、予め定められる1つまたは複数の指標に基づいて、下位層の蓄電池5を集約する。集約方法は、指標によって変化する。指標が複数ある場合、蓄電池集約処理部61は、それぞれの指標に基づいて蓄電池5を集約する。指標は、たとえば蓄電池5の充電効率である。指標が蓄電池5の充電効率である場合、蓄電池集約処理部61は、たとえば以下の式(4)に示すように、予め定められる蓄電池集約閾値と比較して、その大小関係によって蓄電池5を分類して集約する。蓄電池集約閾値は、蓄電池5を集約するときの閾値として、運用者が与える設定値である。
【0074】
具体的には、蓄電池集約処理部61は、式(4)に示すように、蓄電池iの充電効率が蓄電池集約閾値よりも大きいときには、蓄電池iを高効率グループに集約し、蓄電池iの充電効率が蓄電池集約閾値以下であるときには、蓄電池iを低効率グループに集約する。式(4)において、蓄電池iは、複数の蓄電池5のうちの第i蓄電池を示す。たとえば、蓄電池1は、第1蓄電池5Aを示す。また、変数iは1〜kの整数を示し、変数kは蓄電池5の個数を示す。本実施の形態では、変数kは6であるので、変数iは1〜6の整数を示す。
【0075】
【数4】

【0076】
式(4)における充電効率に対する蓄電池集約閾値を、たとえば75%とした場合、充電効率が80%の蓄電池5は高効率グループに集約され、充電効率が70%の蓄電池5は低効率グループに集約される。
【0077】
蓄電池5の集約に用いられる指標は、蓄電池5の充電効率に限定されるものではなく、他のものでもよく、たとえば蓄電池5の残容量または最大発電電力でもよい。複数の指標が定められている場合は、蓄電池集約処理部61は、それぞれの指標に基づいてグループを作成するので、複数の集約グループができる。また、蓄電池集約閾値を変更することによって、階層型需給制御装置6毎の蓄電池5のばらつきも分かる。
【0078】
蓄電池集約処理部61による集約処理によって作成される集約グループは、2つに限らず、以下の式(5)に示すように3つ以上でもよい。式(5)に従う場合、蓄電池集約処理部61は、蓄電池iの残容量が第1閾値よりも大きいときには、蓄電池iを残容量大グループに集約し、蓄電池iの残容量が第1閾値以下であり、かつ第2閾値よりも大きいときには、蓄電池iを残容量中グループに集約し、蓄電池iの残容量が第2閾値以下であるときには、蓄電池iを残容量小グループに集約する。式(5)において、変数iは、式(4)と同様である。また第1閾値は第2閾値よりも大きい(第1閾値>第2閾値)とする。
【0079】
【数5】

【0080】
式(5)では、蓄電池5の残容量に対する前述の蓄電池集約閾値として、2つの閾値、すなわち第1閾値および第2閾値を設定している。残容量に対する蓄電池集約閾値の例としては、第1閾値が90%、第2閾値が10%などとなる。
【0081】
表4に、図3に示す第1〜第6蓄電池5A〜5Fの蓄電池情報を示す。表4では、蓄電池情報として、蓄電池5の充電効率および残容量を示す。また表4では、蓄電池5の設置地域を併せて示す。表4では、第1〜第3蓄電池5A〜5Cの設置地域を「A地域」として示し、第4〜第6蓄電池5D〜5Fの設置地域を「B地域」として示し、A地域とB地域とは異なるものとする。
【0082】
【表4】

【0083】
表4に示すように、充電効率は、第3蓄電池5Cおよび第6蓄電池5Fが最も大きく、残容量は、第1蓄電池5Aが最も大きくなっている。また第1〜第3蓄電池5A〜5Cは、A地域に設置され、第4〜第6蓄電池5D〜5Fは、A地域とは異なるB地域に設置されている。
【0084】
表5および表6に、第1〜第6蓄電池5A〜5Fに対して、第1階層型需給制御装置6Aの蓄電池集約処理部61によって集約処理を行った結果を示す。表5は、前述の式(4)に従って、充電効率を指標として蓄電池5を集約した場合の集約蓄電池情報である蓄電池充電効率集約情報を示している。表6は、前述の式(5)に従って、残容量を指標として蓄電池5を集約した場合の集約蓄電池情報である蓄電池残容量集約情報を示している。
【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
表5に示すように、式(4)に従って、充電効率を指標として蓄電池5を集約した場合、高効率の第3および第6蓄電池5C,5Fを集約した蓄電池(以下「高効率集約蓄電池」という場合がある)のグループと、低効率の第1,第2,第4,第5蓄電池5A,5B,5D,5Eを集約した蓄電池(以下「低効率集約蓄電池」という場合がある)のグループとに分かれる。
【0088】
また表6に示すように、式(5)に従って、残容量を指標として蓄電池5を集約した場合、残容量大の第1蓄電池5Aを集約した蓄電池(以下「残容量大集約蓄電池」という場合がある)のグループと、残容量中の第2〜第4蓄電池5B〜5Dを集約した蓄電池(以下「残容量中集約蓄電池」という場合がある)のグループと、残容量小の第5および第6蓄電池5E,5Fを集約した蓄電池(以下「残容量小集約蓄電池」という場合がある)のグループとに分かれる。
【0089】
表7に、設置地域を指標として蓄電池5を集約した場合の集約蓄電池情報である蓄電池地域集約情報を示す。
【0090】
【表7】

【0091】
従来の技術では、表7に示すように設置地域を指標とした集約が行われる。この場合、第1〜第3蓄電池5A〜5Cは、A地域のグループに集約され、第4〜第6蓄電池5D〜5Fは、B地域のグループに集約される。
【0092】
第1〜第3蓄電池5A〜5Cは、同じA地域のグループに集約されるが、前述の表4に示すように、充電効率または残容量が異なっている。同様に、第4〜第6蓄電池5D〜5Fは、同じB地域のグループに集約されるが、前述の表4に示すように、充電効率または残容量が異なっている。
【0093】
このように従来の技術では、充電効率または残容量が異なる蓄電池5が1つのグループに集約されてしまい、表5または表6に示すような、運用者の目的に沿った集約を行うことができない。
【0094】
これに対し、本実施の形態では、充電効率または残容量などの蓄電池5の性能を示す指標に基づいて蓄電池5を集約するので、表5または表6に示すような、運用者の目的に沿った集約を行うことが可能である。
【0095】
蓄電池集約処理部61で集約した蓄電池5の情報である集約蓄電池情報は、上位層インタフェース13によって、上位層の中給2または階層型需給制御装置6へ送信される。第1階層型需給制御装置6Aの場合は、直接接続される下位層に第2および第3階層型需給制御装置6B,6Cが接続され、その下の下位層として蓄電池5が接続されるので、蓄電池集約処理部61は、蓄電池5と受信した集約蓄電池情報とを合わせて集約する。
【0096】
各階層型需給制御装置6は、上位層への通信を繰り返し、集約処理を行う。最終的には、中給2へと全ての蓄電池5の情報が集約されて通信される。このとき、中給2は、各蓄電池5がどの階層型需給制御装置6に接続されているのかを個別に区別する必要はない。中給2は、中給2に直接接続されている蓄電池5の蓄電池情報、および中給2に直接接続されている階層型需給制御装置6が集約した集約蓄電池情報のみを把握すればよい。中給2は、運用者が選択する指標に基づいて、集約蓄電池情報を利用する。
【0097】
図4は、図3に示す蓄電池5を充電効率に基づいて集約した場合の中給2から見た構成を示す図である。図4は、図3に示す電力系統制御システム101において、集約処理に用いる指標として充電効率が選択された場合に中給2が把握する情報を表したものである。中給2は、第1および第2発電機4A,4Bと、高効率集約蓄電池51と、低効率集約蓄電池52とが接続しているように扱うことができる。
【0098】
図5は、図3に示す蓄電池5を残容量に基づいて集約した場合の中給2から見た構成を示す図である。表6に示すように、残容量を指標として選択してもよい。図5は、残容量を指標として選択した場合に中給2が把握する情報を表したものである。中給2は、第1および第2発電機4A,4Bと、残容量大集約蓄電池53と、残容量中集約蓄電池54と、残容量小集約蓄電池55とが接続しているように扱うことができる。
【0099】
中給2は、発電機4または階層型需給制御装置6から送信される情報を、中給通信インタフェース21によって受信する。中給制御処理部22は、中給通信インタフェース21によって受信した情報に基づいて、以下の式(6)〜式(9)を用いて運用上の制約条件と評価式とを考慮して、たとえば二次計画法を用いて電力系統全体の制御のための演算を行う。
【0100】
【数6】

【0101】
式(6)は、需給バランスの制約条件を表しており、各時刻の需要に対して発電機4の発電電力と蓄電池5の充放電電力とが一致することを示す。式(6)において、「D」は蓄電池5による放電電力を表し、「C」は蓄電池5による充電電力を表し、「BT」は蓄電池5の集合を表す。式(6)において、「Demand」、「P」、「GEN」および「t」は、式(2)と同様である。
【0102】
【数7】

【0103】
式(7)は、蓄電池5の残容量の時系列による変化を表し、前時間の残容量から単位時間分の放電電力を減少させ、単位時間分の充電電力に充電効率を乗じたものを増加させる。式(7)において、「S」は残容量を表し、「R」は充電効率を表す。式(7)において、「t」は式(2)と同様であり、「D」および「C」は式(6)と同様である。
【0104】
【数8】

【0105】
式(8)は、蓄電池5の残容量の上下限制約(以下「残容量制約」という場合がある)を表す。式(8)において、「Smin」は最小容量を表し、「Smax」は最大容量を表す。式(8)において、「t」は式(2)と同様であり、「S」は式(7)と同様である。
【0106】
【数9】

【0107】
式(9)は、中給2で制御を行う場合の評価式の例を表している。式(9)によって、発電機4に対する評価値の合計と、蓄電池5に対する評価値、たとえば残容量から求める価値の合計とを求める。式(9)において、「EVAB」は蓄電池5に対する評価値を表す。式(9)において、「P」、「GEN」および「t」は式(2)と同様であり、「V」、「Cost」および「TIME」は式(3)と同様であり、「D」、「C」および「BT」は式(6)と同様であり、「S」は式(7)と同様である。
【0108】
蓄電池5を充電効率で集約した場合、集約蓄電池では、残容量は、たとえば容量比に応じた平均値とする。満充電および空の状態の蓄電池5がない場合は、残容量制約に影響を受けないので、集約蓄電池は、前述の充電効率による集約によって制御可能である。他方、満充電または空の蓄電池5がある場合は、残容量制約に影響を受けるので、充放電できない蓄電池5が含まれる。このような場合は、残容量を指標として集約することによって、満充電および空の蓄電池5を優先的に使用したり、それ以外の蓄電池5で充放電したりすることができる。これによって、適切な制御が可能となる。
【0109】
中給2は、中給通信インタフェース21から直接接続する発電機4および蓄電池5に対して、それぞれの制御情報を送信する。また中給2は、階層型需給制御装置6に対して、選択した指標の情報と、各装置の下位層に接続される発電機4、高効率集約蓄電池51および低効率集約蓄電池52のそれぞれに対する制御情報とを送信する。
【0110】
上位層インタフェース13によって制御情報を受信した階層型需給制御装置6は、中給2と同様に、自装置の下位層の発電機4、高効率集約蓄電池51および低効率集約蓄電池52に対して蓄電池制御処理部62で制御を行うための演算を行う。蓄電池制御処理部62によって演算された制御情報は、下位層インタフェース14によって、下位層へと送信される。このとき、下位層の蓄電池5に満充電の蓄電池または空の蓄電池がある場合は、蓄電池制御処理部62で集約方法を変更し、残容量を指標として集約した集約蓄電池に対する制御のための演算を行ってもよい。
【0111】
蓄電池5が下位層に直接接続されている階層型需給制御装置6の場合、発電機4、高効率集約蓄電池51および低効率集約蓄電池52に加えて、それらに直接接続される蓄電池5も含めて制御を行う。
【0112】
以上のように本実施の形態によれば、階層型需給制御装置6は、蓄電池5の充電効率または残容量のような性能を示す指標に基づいて蓄電池5を集約する。これによって、蓄電池5の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、蓄電池5を制御することができる。また蓄電池5は、集約蓄電池毎に、すなわち集約された蓄電池5の集合毎に制御されるので、蓄電池5の個数が増加して、多数の蓄電池5が設置された場合でも、容易に制御することができる。
【0113】
したがって、中給2および階層型需給制御装置6は、蓄電池5の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、多数の蓄電池5を含めた電力系統全体の制御を容易に行うことができる。また、このような階層型需給制御装置6を中給2とともに備えることによって、蓄電池5の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、多数の蓄電池5を含めた電力系統全体の制御を容易に行うことができる電力系統制御システム101を実現することができる。
【0114】
<第3の実施の形態>
前述の第1および第2の実施の形態で示した階層型需給制御装置1,6は、蓄電池5およびPV装置3のいずれかを集約対象としているが、階層型需給制御装置は、蓄電池5とPV装置3とを同時に集約対象とすることもできる。たとえば、階層型需給制御装置は、電力系統に蓄電池5とPV装置3とが接続している場合に、蓄電池5およびPV装置3をそれぞれ集約して制御する階層型需給制御装置であってもよい。本実施の形態では、蓄電池5とPV装置3とを同時に集約対象とする階層型需給制御装置として、蓄電池5およびPV装置3をそれぞれ集約して制御する階層型需給制御装置について説明する。
【0115】
図6は、本発明の第3の実施の形態である階層型需給制御装置8を備える電力系統制御システム102の構成を示す図である。本発明の第3の実施の形態の電力系統制御システム102は、前述の図1に示す第1の実施の形態の電力系統制御システム100および図3に示す第2の実施の形態の電力系統制御システム101と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して、共通する説明を省略する。
【0116】
本実施の形態の電力系統制御システム102は、中給2、PV装置3、発電機4、蓄電池5および階層型需給制御装置8を備えて構成される。本実施の形態では、階層型需給制御装置8は、電力系統に接続される複数の分散型電源である蓄電池5およびPV装置3をそれぞれ階層的に集約して制御する。
【0117】
PV装置3は、複数、具体的には4つが備えられる。発電機4は、複数、具体的には2つが備えられる。2つの発電機4を区別して示す場合には、参照符「4A」,「4B」を用いて、第1発電機4Aおよび第2発電機4Bとして示す。蓄電池5は、複数、具体的には5つが備えられる。階層型需給制御装置8は、複数、具体的には3つが備えられる。3つの階層型需給制御装置8を区別して示す場合には、参照符「8A」〜「8C」を用いて、第1階層型需給制御装置8A、第2階層型需給制御装置8Bおよび第3階層型需給制御装置8Cとして示す。
【0118】
電力系統制御システム102では、第1および第2の実施の形態の電力系統制御システム100,101と同様に、中給2の下位層に、第1および第2発電機4A,4Bと、第1階層型需給制御装置8Aとが接続されている。本実施の形態では、第1階層型需給制御装置8Aの下位層に、第2および第3階層型需給制御装置8B,8Cと、2つのPV装置3とが接続されている。また、第2階層型需給制御装置8Bの下位層に、3つの蓄電池5が接続されている。また、第3階層型需給制御装置8Cの下位層に、2つの蓄電池5と、2つのPV装置3とが接続されている。
【0119】
第1階層型需給制御装置8Aは、上位層インタフェース13、下位層インタフェース14、蓄電池・PV集約処理部81および蓄電池・PV制御処理部82を備えて構成される。第2および第3階層型需給制御装置8B,8Cは、第1階層型需給制御装置8Aと同様の構成であり、図6では図示を省略しているが、上位層インタフェース13、下位層インタフェース14、蓄電池・PV集約処理部81および蓄電池・PV制御処理部82を備えて構成される。
【0120】
蓄電池・PV集約処理部81は、予め定められる1つまたは複数の指標に基づいて、蓄電池5およびPV装置3をそれぞれ集約する。蓄電池・PV制御処理部82は、下位層にある蓄電池5およびPV装置3を制御するために、上位層から送信される制御情報に基づいて、蓄電池5の充放電電力およびPV装置3の出力抑制量を計算する。
【0121】
上位層インタフェース13は、本実施の形態では、集約蓄電池情報と集約PV情報とを、上位層である中給2または階層型需給制御装置8へ送信する。また上位層インタフェース13は、上位層の中給2または階層型需給制御装置8から送信される制御情報を受信する。上位層インタフェース13が蓄電池情報、集約PV情報および制御情報を送受信する上位層は、第1階層型需給制御装置8Aの場合は中給2であり、第2および第3階層型需給制御装置8B,8Cの場合は第1階層型需給制御装置8Aである。
【0122】
下位層インタフェース14は、下位層へ制御情報を送信する。第1階層型需給制御装置8Aの場合、下位層インタフェース14は、下位層のPV装置3、ならびに第2および第3階層型需給制御装置8B,8Cへ制御情報を送信する。第2階層型需給制御装置8Bの場合、下位層インタフェース14は、下位層の蓄電池5へ制御情報を送信する。第3階層型需給制御装置8Cの場合、下位層インタフェース14は、下位層の蓄電池5およびPV装置3へ制御情報を送信する。
【0123】
また下位層インタフェース14は、下位層から送信される情報を受信する。第1階層型需給制御装置8Aの場合、下位層インタフェース14は、下位層のPV装置3、ならびに第2および第3階層型需給制御装置8B,8Cから送信される情報を受信する。第2階層型需給制御装置8Bの場合、下位層インタフェース14は、下位層の蓄電池5から送信される情報を受信する。第3階層型需給制御装置8Cの場合、下位層インタフェース14は、下位層の蓄電池5およびPV装置3から送信される情報を受信する。
【0124】
中給2は、第1および第2の実施の形態と同様に、中給通信インタフェース21および中給制御処理部22を備えて構成される。本実施の形態では、中給通信インタフェース21は、階層型需給制御装置8から送信される集約蓄電池情報および集約PV情報を受信するとともに、発電機4から送信される発電機情報を受信する。中給通信インタフェース21は、受信した集約蓄電池情報、集約PV情報および発電機情報を中給制御処理部22に与える。また中給通信インタフェース21は、後述する中給制御処理部22で用いられる指標と設定値とを含む制御情報を、下位層の発電機4および第1階層型需給制御装置8Aへ送信する。
【0125】
中給制御処理部22は、中給通信インタフェース21から与えられた集約蓄電池情報、集約PV情報および発電機情報などの下位層の情報と、運用者が選択する指標とに基づいて、電力系統を制御するための演算を行う。
【0126】
階層型需給制御装置8の蓄電池・PV集約処理部81では、前述の式(1)または式(4)に示すように、予め定められる1つまたは複数の指標、ならびにPV集約閾値および蓄電池集約閾値などの設定値に基づいて、蓄電池5およびPV装置3をそれぞれ集約すればよい。集約処理に用いる指標および設定値は、蓄電池5とPV装置3とでそれぞれ異なるものに指定されてもよい。
【0127】
蓄電池・PV集約処理部81で集約された蓄電池5およびPV装置3の情報、すなわち集約蓄電池情報および集約PV情報は、上位層インタフェース13によって、上位層へ送信される。第1階層型需給制御装置8Aの場合は、下位層にPV装置3と第2および第3階層型需給制御装置8B,8Cとが接続され、さらに第2および第3階層型需給制御装置8B,8Cの下位層に蓄電池5およびPV装置3が接続されるので、蓄電池・PV集約処理部81は、蓄電池5およびPV装置3と、受信した集約蓄電池情報および集約PV情報とを合わせて集約する。
【0128】
第1階層型需給制御装置8Aの蓄電池・PV集約処理部81で集約された蓄電池5およびPV装置3の情報、すなわち集約蓄電池情報および集約PV情報は、上位層インタフェース13によって、上位層の中給2へ送信される。第2階層型需給制御装置8Bの場合は、蓄電池・PV集約処理部81では蓄電池5が集約されるので、集約蓄電池情報が、上位層インタフェース13によって、上位層の第1階層型需給制御装置8Aへ送信される。第3階層型需給制御装置8Cの場合は、蓄電池・PV集約処理部81では蓄電池5およびPV装置3が集約されるので、集約蓄電池情報および集約PV情報が、上位層インタフェース13によって、上位層の第1階層型需給制御装置8Aへ送信される。
【0129】
各階層型需給制御装置8は、上位層への通信を繰り返し、集約処理を行う。最終的には、中給2へと全ての蓄電池5およびPV装置3の情報が集約される。このとき、中給2は、各蓄電池5および各PV装置3がどの階層型需給制御装置8に接続されているのかを個別に区別する必要はない。中給2は、中給2に直接接続されている階層型需給制御装置8が集約した集約蓄電池情報および集約PV情報のみを把握すればよい。中給2は、運用者が選択する指標に基づいて、集約蓄電池情報および集約PV情報を利用する。
【0130】
本実施の形態とは異なるが、中給2には、直接、蓄電池5およびPV装置3が下位層として接続されていてもよい。この場合、中給2は、中給2に直接接続されている蓄電池5の蓄電池情報と、中給2に直接接続されているPV装置3のPV情報と、中給2に直接接続されている第1階層型需給制御装置8Aが集約した集約蓄電池情報および集約PV情報のみを把握すればよい。
【0131】
図7は、図6に示す蓄電池5を充電効率に基づいて集約し、PV装置3を定格出力に基づいて集約した場合の中給2から見た構成を示す図である。図7は、図6に示す電力系統制御システム102において、中給2が把握する情報を表したものである。中給2は、2つの発電機4と、高効率集約蓄電池51と、低効率集約蓄電池52と、高出力集約PV装置31と、低出力集約PV装置32とが接続しているように扱うことができる。
【0132】
中給2は、発電機4または階層型需給制御装置8から送信される情報を、中給通信インタフェース21によって受信する。中給制御処理部22は、中給通信インタフェース21によって受信した情報に基づいて、前述の式(7)および式(8)、ならびに以下の式(10)および式(11)を用いて運用上の制約条件と評価式とを考慮して、たとえば二次計画法を用いて電力系統全体の制御のための演算を行う。
【0133】
【数10】

【0134】
式(10)は、需給バランスの制約条件を表しており、各時刻の需要に対して発電機4の発電電力と、蓄電池5の充放電電力と、PV装置3の発電電力とが一致することを示す。式(10)において、「Demand」、「P」、「PP」、「GEN」、「PV」および「t」は式(2)と同様であり、「D」、「C」および「BT」は式(6)と同様である。
【0135】
式(7)および式(8)に示される蓄電池5の残容量に関する制約条件も満足する必要がある。
【0136】
【数11】

【0137】
式(11)は、中給2で制御を行う場合の評価式の一例を表している。式(11)によって、発電機4に対する評価値の合計と、蓄電池5に対する評価値およびPV装置3に対する評価値の合計とを求める。式(11)において、「P」、「PP」、「GEN」、「PV」および「t」は式(2)と同様であり、「V」、「Cost」、「EVAP」および「TIME」は式(3)と同様であり、「D」、「C」および「BT」は式(6)と同様であり、「S」は式(7)と同様であり、「EVAB」は式(9)と同様である。
【0138】
中給2のPV装置3に対する制御内容としては、出力抑制が挙げられるが、蓄電池5も制御対象となるので、これらを協調させることで、PV装置3の出力抑制を不要とすることができる場合がある。たとえば、評価値によっては、PV装置3の出力抑制を、蓄電池5による充電で代替することもできる。換言すれば、PV装置3の出力を抑制することに代えて、蓄電池5に充電するようにすることができる。
【0139】
前述の第1および第2の実施の形態と比較した場合、本実施の形態では、計画上の選択肢が増え、蓄電池5とPV装置3とを考慮した制御を行うことによって、より良い評価値を得ることができる可能性がある。
【0140】
中給2は、中給通信インタフェース21によって、直接接続される分散型電源に対して、その分散型電源の制御情報を送信する。本実施の形態では、中給2には、分散型電源として発電機4が直接接続されているので、中給2は、中給通信インタフェース21によって、発電機4に対して、発電機4の制御情報を送信する。本実施の形態とは異なるが、中給2に発電機4に加えて、蓄電池5およびPV装置3が直接接続される場合には、中給2は、中給通信インタフェース21によって、発電機4、蓄電池5およびPV装置3に対して、それぞれの制御情報を送信する。
【0141】
また中給2は、直接接続される階層型需給制御装置8、すなわち第1階層型需給制御装置8Aに対して、選択した指標の情報と、高効率集約蓄電池51、低効率集約蓄電池52、高出力集約PV装置31および低出力集約PV装置32のそれぞれに対する制御情報とを送信する。
【0142】
上位層インタフェース13によって制御情報を受信した階層型需給制御装置8は、中給2と同様に、自装置の下位層の分散型電源に対して蓄電池・PV制御処理部82で制御を行うための演算を行う。たとえば、階層型需給制御装置8の下位層に分散型電源として、発電機4、高効率集約蓄電池51、低効率集約蓄電池52、高出力集約PV装置31および低出力集約PV装置32が接続されている場合には、階層型需給制御装置8は、それらに対して蓄電池・PV制御処理部82で制御を行うための演算を行う。
【0143】
具体的には、第1階層型需給制御装置8Aでは、下位層の高効率集約蓄電池51、低効率集約蓄電池52、高出力集約PV装置31および低出力集約PV装置32に対して蓄電池・PV制御処理部82で制御を行うための演算が行われる。
【0144】
蓄電池・PV制御処理部82によって演算された制御情報は、下位層インタフェース14によって、再び下位層へと送信される。蓄電池・PV制御処理部82によって制御情報を演算するとき、下位層の蓄電池5に満充電の蓄電池または空の蓄電池がある場合は、蓄電池・PV制御処理部82で集約方法を変更し、残容量を指標として集約した集約蓄電池に対する制御のための演算を行ってもよい。
【0145】
蓄電池5およびPV装置3が下位層に直接接続されている階層型需給制御装置8の場合、発電機4、高効率集約蓄電池51、低効率集約蓄電池52、高出力集約PV装置31、低出力集約PV装置32に加えて、それらに直接接続される蓄電池5およびPV装置3も含めて制御を行う。
【0146】
具体的には、第2階層型需給制御装置8Bでは、下位層の高効率集約蓄電池51および低効率集約蓄電池52に対して蓄電池・PV制御処理部82で制御を行うための演算が行われる。第3階層型需給制御装置8Cでは、下位層の高効率集約蓄電池51、低効率集約蓄電池52、高出力集約PV装置31および低出力集約PV装置32に対して蓄電池・PV制御処理部82で制御を行うための演算が行われる。
【0147】
以上のように本実施の形態によれば、階層型需給制御装置8は、蓄電池5の充電効率もしくは残容量、またはPV装置3の定格出力のような、分散型電源の性能を示す指標に基づいて、分散型電源である蓄電池5およびPV装置3を集約する。したがって、前述の第1および第2の実施の形態と同様に、中給2および階層型需給制御装置8は、蓄電池5およびPV装置3の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、多数の蓄電池5およびPV装置3を含む電力系統全体の制御を容易に行うことができる。
【0148】
また、このような階層型需給制御装置8を中給2とともに備えることによって、蓄電池5およびPV装置3の設置位置などの物理的な階層構造によって制限されることなく、多数の蓄電池5およびPV装置3を含む電力系統全体の制御を容易に行うことができる電力系統制御システム102を実現することができる。
【0149】
また本実施の形態によれば、蓄電池5とPV装置3とをともに集約して制御することが可能である。したがって、前述の第1および第2の実施の形態と同様の効果に加えて、蓄電池5とPV装置3とを協調させて評価値を向上させるような電力系統全体の制御を行うことができるという効果が得られる。
【0150】
<第4の実施の形態>
前述の第1〜第3の実施の形態に示した中給2の中給制御処理部22は、蓄電池5およびPV装置3の集約に使用する指標を運用者が選択するように構成されているが、運用者が選択せずに、自装置で判断するように構成されてもよい。本発明の第4の実施の形態の電力系統制御システムは、図6に示す前述の第3の実施の形態の電力系統制御システム102と構成が同一であるので、同一の構成については同一の参照符を付して、図示および共通する説明を省略する。
【0151】
本実施の形態では、中給制御処理部22は、予め設定された指標および設定値を用いて、蓄電池5およびPV装置3を集約する。中給制御処理部22で用いられる指標および設定値は、運用者によって選択されるのではなく、中給制御処理部22に予め定められた判断基準に基づいて、中給制御処理部22によって選択される。このようにして選択された指標および設定値を用いて、蓄電池5およびPV装置3が集約される。
【0152】
たとえば、蓄電池5を集約する場合、中給制御処理部22は、通常は、充電効率を集約の指標として用い、充電効率によって集約された集約蓄電池の情報、すなわち蓄電池充電効率集約情報を制御の指標として使用する。いずれかの蓄電池5の残容量が満充電または空の状態に近づいた場合には、中給制御処理部22は、集約に用いる指標を残容量に変更し、制御に使用する指標を、残容量によって集約された集約蓄電池の情報、すなわち蓄電池残容量集約情報に変更する。そして、満充電または空の状態の蓄電池5がなくなった場合には、中給制御処理部22は、集約に用いる指標を再び充電効率に戻し、制御に使用する指標を、再び、充電効率によって集約された集約蓄電池の情報である蓄電池充電効率集約情報に戻す。
【0153】
満充電または空の状態の蓄電池5がない場合は、残容量の制約に影響を受けないので、集約蓄電池は、充電効率を用いた集約によって制御可能である。他方、満充電または空に近い蓄電池5がある場合は、残容量の制約に影響を受けるので、充放電できない蓄電池5が生じることになる。このような場合は、残容量を指標として集約することによって、満充電または空の蓄電池5と、それ以外の蓄電池5とを区別して使用する。これによって、適切な制御が可能となる。
【0154】
このように、中給制御処理部22で用いる指標を、中給制御処理部22の判断で変更して、満充電の蓄電池5を優先的に放電したり、あるいは空の蓄電池5を優先的に充電させたりすることによって、残容量の制約に影響を受ける状態の解消を図ることができる。
【0155】
以上のように本実施の形態によれば、蓄電池5の集約に用いられる指標は、蓄電池5の残容量に応じて変更されるので、残容量の影響を抑えて、適切な制御を行うことができる。また蓄電池5の集約に用いられる指標は、運用者によって選択されて変更されるのではなく、たとえば中給制御処理部22によって、蓄電池5の残容量に応じて変更される。これによって、前述の第1〜第3の実施の形態の効果に加えて、運用者が指標を選択する作業をすることなく、電力系統全体の制御を行うことができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0156】
1,6,8 階層型需給制御装置、2 中央給電指令装置(中給)、3 太陽光発電(PV)装置、4 発電機、5 蓄電池、11 PV集約処理部、12 PV制御処理部、13 上位層インタフェース、14 下位層インタフェース、21 中給通信インタフェース、22 中給制御処理部、31 高出力集約PV装置、32 低出力集約PV装置、51 高効率集約蓄電池、52 低効率集約蓄電池、53 残容量大集約蓄電池、54 残容量中集約蓄電池、55 残容量小集約蓄電池、61 蓄電池集約処理部、62 蓄電池制御処理部、81 蓄電池・PV集約処理部、82 蓄電池・PV制御処理部、100,101,102 電力系統制御システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される複数の分散型電源を階層的に集約して制御する階層型需給制御装置であって、
予め定められる指標に基づいて、分散型電源を集約する集約処理部と、
前記集約処理部によって集約された分散型電源の集合毎に、前記分散型電源を制御する制御処理部とを備え、
前記指標は、前記分散型電源の性能を示す指標であることを特徴とする階層型需給制御装置。
【請求項2】
前記複数の分散型電源は、太陽光発電装置を含み、
前記指標は、前記太陽光発電装置の定格出力を含むことを特徴とする請求項1に記載の階層型需給制御装置。
【請求項3】
前記複数の分散型電源は、蓄電池を含み、
前記指標は、前記蓄電池の充電効率および残容量の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の階層型需給制御装置。
【請求項4】
前記複数の分散型電源は、太陽光発電装置および蓄電池を含み、
前記指標は、前記太陽光発電装置の定格出力と、前記蓄電池の充電効率および残容量の少なくとも一方とを含むことを特徴とする請求項1に記載の階層型需給制御装置。
【請求項5】
前記指標は、前記蓄電池の残容量に応じて変更されることを特徴とする請求項3または4に記載の階層型需給制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の階層型需給制御装置と、
電力系統に接続され、前記階層型需給制御装置によって制御される複数の分散型電源と、
前記階層型需給制御装置の集約処理部によって集約された分散型電源に関する情報に基づいて、前記分散型電源を制御するための制御情報を前記階層型需給制御装置に与えることによって、前記分散型電源を含む電力系統全体を制御する中央給電指令装置とを備えることを特徴とする電力系統制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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