説明

階段昇降機の改良

本発明は、ユーザーやその他の物体の階段昇降機運搬台(20)への接近を感知する近接センサー(40,42)を提供し、遠隔コール制御部(22,24)を操作不能にすることで、階段昇降機の安全性を向上させる。ユーザーが階段昇降機の椅子部へ乗ろうとしている時、又は椅子部から降りようとしている時に、主ユーザー制御部(38)をうっかり操作することを防止するための使用者センサーを提供することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は階段昇降機に関し、特に、階段昇降機設置の安全性を高める方法及び/又は装置に関する。本発明は特に曲線状階段昇降機用に開発されたものであるが、直線状階段昇降機にも利用可能である。
【背景技術】
【0002】
階段昇降機の多くは、階段昇降機レールの上下に遠隔コールスイッチを含んでおり、階段昇降機の運搬台が階段の反対側縁部に停められている場合、ユーザーは階段昇降機にコール信号を送ることができる。このような場合、遠隔地点でコールスイッチを操作するユーザーは、階段昇降機に乗ろう、又は降りようとしている第2のユーザーに気付いていない可能性がある。曲線状階段昇降機の場合、例えば階段の一端にいる人は、階段の反対端部を見ることができない可能性がある。
【0003】
現在の階段昇降機設計は、典型的には椅子部の肘掛けに取り付けられた運搬台保持スイッチを含んでいる。スイッチが「オフ」状態の時、階段昇降機は操作不能であり、ユーザーが昇降機に乗っている間、又は昇降機から降りている間は、遠隔コールスイッチの一方から呼び出されても、階段昇降機が作動しないようになっている。
【0004】
従来の階段昇降機の運搬台保持スイッチは不便である。階段昇降機から降りる時はその都度、運搬台が動かないようスイッチを「オフ」状態にしなければならない。さらに使用後は、空になった椅子部が遠隔コールスイッチで動くよう、スイッチを「オン」状態にしなければならない。その後乗る時は、スイッチを再度「オフ」状態にしなければならない。階段昇降機の典型的な利用者はある程度身体能力が衰えた高齢者であるため、混乱することが多く、運搬台保持スイッチを常に元の状態に戻しておくことができない。時には、椅子部から降りる時に運搬台保持スイッチを切り忘れる。これはユーザーにとって危険である。また時には、椅子部が空の時にスイッチが「オフ」状態になっており、遠隔コールスイッチで運搬台を呼ぼうとしている次のユーザーにとって不便である。従来の運搬台保持スイッチのさらに別の問題点としては、運搬台保持スイッチがうっかり「オフ」状態のままになっている時、階段昇降機が故障していると思うユーザーがいることである。よってサービスセンターへ不要な電話をかけることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、前述の問題点の少なくとも1部を解決し、新しく便利な階段昇降機操作制御のための方法及び/又は手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、階段昇降機構造体の安全性を向上させる方法を提供する。この構造体は、
階段の上縁部と下縁部との間に延設されたレールと、
レールに沿って可動な運搬台と、
運搬台から離れて提供された運搬台操作制御部と、
を含んでおり、
この方法は、運搬台の近辺の人物を感知し、運搬台操作制御部を操作不能にするよう近接センサーが提供されていることを特徴としている。
【0007】
好適にはこの方法は、近接センサーを運搬台の上又は周囲に提供するステップを含んでいる。
【0008】
好適には、運搬台上には椅子部が取り付けられており、この方法は、ユーザーが椅子部に着席した状態を感知する使用者センサーを提供するステップをさらに含んでいる。
【0009】
好適には椅子部は折りたたみ可能であり、この方法はさらに、椅子部が折りたたみ状態であることを感知するセンサーを含んでいる。
【0010】
本発明はさらに階段昇降機を提供し、この階段昇降機は、
階段の上縁部と下縁部との間に延接されたレールと、
レールに沿って可動な運搬台と、
運搬台から離れて提供された運搬台操作制御部と、
を含んでおり、この装置には近接センサーが提供されており、近接センサーは運搬台近辺の人物を感知するように操作可能であり、さらに人物を感知した時には運搬台操作制御部を操作不能にできることを特徴としている。
【0011】
好適には近接センサーは、運搬台の上又は周囲に取り付けられている。
【0012】
好適にはこの階段昇降機は、運搬台に取り付けられた椅子部と、椅子部に取り付けられた近接センサーの一部を含んでいる。
【0013】
好適には近接センサーはキャパシタンスタイプである。
【0014】
好適には階段昇降機は、椅子部に着席したユーザーの存在を感知するよう操作可能なロードセンサーをさらに含んでいる。
【0015】
好適には椅子部は折りたたみ可能であり、階段昇降機は椅子部が折りたたみ状態であることを感知するよう操作可能な位置センサーをさらに含んでいる。
【0016】
本発明はさらに、階段昇降機構造体を提供する。この構造体は、
レールと、
レール上に取り付けられ、レールに沿って可動な運搬台と、
運搬台をレールに沿って動かすための少なくとも1つのユーザー操作制御部と、
を含んでおり、階段昇降機には使用センサーが提供されており、椅子部に着席したユーザーの存在を感知し、ユーザーが椅子部に着席している時のみユーザー操作制御部を作動させることを特徴としている。
【0017】
好適には使用センサーは、椅子部及び/又は運搬台に組み込まれたロードセンサーを含んでいる。
【0018】
当業者にとって、本発明の変更は可能である。後述の説明は本発明の1例であり、本発明はこれに限定されない。可能な限り、それぞれの要素にはあらゆる均等物が含まれるものとする。本発明の範囲は、請求の範囲によってのみ定義される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の1好適実施例を、添付の図面と共に説明する。
【0020】
図1で、階段10に取り付けられた階段昇降機の安全性を向上させる方法及び/又は手段を提供する。図で、階段は、上縁部12、下縁部14及び中間踊り場16を含んでいる。従来、階段昇降機レール18は階段の片側に取り付けられ、上縁部12と下縁部14との間に延設されている。階段昇降機運搬台と椅子部構造体20はレール18上に取り付けられており、上縁部12と下縁部14との間をレールに沿って動くことができる。
【0021】
従来、降機制御部又はコールスイッチ22と24は、階段の上縁部12と下縁部14のそれぞれの、又はこれらそれぞれの付近の階段壁に提供されている。これらの降機スイッチは携帯式であってもよく、運搬台/椅子部20が、スイッチを作動させる場所から離れて停められている時、このスイッチで階段昇降機へコール信号を送信できる。図1の如く、制御部24を操作して、運搬台と椅子部を階段の下縁部14へ呼び寄せることができるであろう。
【0022】
図1の如く、階段の下縁部14にいる人物又はユーザーは、運搬台と椅子部20を見ることができないであろう。椅子部20の運搬台保持スイッチが「オン」状態で、ユーザーが椅子部20に乗ろうとしている時、又は椅子部から降りようとしている時、運搬台がスイッチ24の操作で動くのは望ましくないであろう。
【0023】
本発明では、運搬台近辺のユーザーを感知するよう、近接センサーが提供されている。ユーザーが近辺にいることを感知すると、制御部22と24は操作不能となる。
【0024】
近接センサーは好適には運搬台/椅子部20に含まれているが、階段の他の場所に取り付けることもでき、運搬台近辺の人物を感知するよう設計されている。実施例では、近接センサーは好適にはキャパシタンスタイプであり、キャパシタンスの変化を感知するようアンテナ/電極を利用する。このようなシステムがアンテナとユーザーとの間のキャパシタンスの差を検知することは知られている。標準のシステムはアンテナと制御回路を含んでおり、制御回路はアンテナと、近辺の物体との間のキャパシタンスの差を検知する。制御回路は典型的には、アンテナに接続された感度キャパシタと、キャパシタの値を調節することでセンサーの感度を変化させる制御ボードをさらに含んでいる。望むならば、主階段昇降機制御システムで装置の状態をモニターするための「鼓動」信号を送信するよう制御回路を設計できる。
【0025】
近接センサーの明確な形態は本発明の範囲ではない。ここで述べているキャパシタンスタイプセンサーは、超音波及び赤外線ベース装置等、他のタイプのものでも同様の効果を発揮できる。
【0026】
図2で、階段昇降機運搬台/椅子部20はレール18上に取り付けられている。この構造体は、背もたれ30と、運搬台シャシー34に取り付けられた座部32を含んでいる。この椅子部は肘掛け36aと36bをさらに含んでいる。従来の手動制御部38が肘掛け36aの外側端部に取り付けられており、これは、椅子部に着席したユーザーに、レール18に沿った運搬台/椅子部20の動きを制御させる手段である。
【0027】
前述の近接センサーのアンテナ40が座部32の前方部に取り付けられており、アンテナ40からの信号は近接センサー回路42へ送信され、運搬台に取り付けられた主階段昇降機制御ユニット44へ送信される。
【0028】
さらに、一対のセンサー46と47が座部32の付近に取り付けられている。センサー46は、椅子部に着席した人物の存在を、好適には座部32上に着席するユーザーが提供するであろう座部32上の負荷を検知して感知するようになっている。椅子部が折りたたまれた時に切替機能を実行する折りたたみ機構内に1以上の接触部を提供することで、座部32が、図5に概略的に示す位置に折りたたまれた時、センサー47が感知するようになっている。
【0029】
センサーと制御ユニットは以下のように作動するよう設計されている。
前述の如く、アンテナ40を主部分とする近接センサーは、図3に示すように、運搬台椅子部構造体の付近に立っている、あるいは図4に示すように、椅子部に乗ろうとしている、又は椅子部から降りようとしている人物を感知するようになっている。どちらの場合も、近接センサー回路42によって、階段昇降機の主操作制御ユニット44へ信号が提供され、降機制御部22と24は分離されている。このように、例えば運搬台/椅子部20を見ることができない第2のユーザーによる運搬台/椅子部構造体20の操作を防止する。
【0030】
類似の方法で、ユーザーが椅子部に着席しているか否かをセンサー46が感知し、椅子部にユーザーが着席していない時は、手動制御部38を操作不能にする。これは、ユーザーが椅子部に乗り降りする際、うっかり制御部38に接触または寄りかかった時、運搬台/椅子部20の作動を防止する。
【0031】
センサー40と46との組み合わせによっては、ユーザーが着席している時、別のユーザーが階段昇降機を遠隔制御することもでき、これはアテンダントコントロールと呼ばれることがある。この場合、ユーザーの着席をセンサー46が感知すると、近接センサーによって適用される分離状態が無効化され、再度、コールスイッチ22と24で運搬台/椅子部20を制御できるようになる。
【0032】
椅子部が図5に示す位置へ折りたたまれると、センサー47が感知するようになっている。椅子部が図5に示す如く折りたたまれた時は、前述の近接センサーを所望の状態に操作できないであろう。椅子部が折りたたまれると、アンテナは、背もたれ30の存在によって信号の変化(椅子部内のセンサーの位置による)を感知し、コールスイッチ22と24を分離させるであろう。しかし実際は、椅子部が折りたたまれた状態の時、運搬台を降機制御部22と24で制御できることが望ましい。このように、椅子部が折りたたまれた状態となったときを感知するようセンサー47を設計して、近接センサーで提供される分離状態を無効化することができ、運搬台と椅子部構造体20を再度、降機制御部22と24で制御することができるであろう。
【0033】
本発明は、少なくとも前述の実施例に含まれるように、階段昇降機の安全性を向上させ、現在の階段昇降機運搬台に提供されている従来の運搬台保持スイッチの使用又は誤使用から生じる不便性を排除する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、典型的な曲線状階段昇降機を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明に必要な要素を含む運搬台と椅子部を示す斜視図である。
【図3】図3は、ユーザーが椅子部と運搬台の前方に立っている状態の、本発明による階段昇降機の操作状態を示す概略図である。
【図4】図4は、図3と類似しており、ユーザーが階段昇降機の椅子部へ腰掛ける、又は椅子部から降りる状態を示す図である。
【図5】図5は、図3と図4に類似しており、ユーザーが椅子部を引き上げる、又は椅子部を引き下ろす状態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段昇降機の安全性を向上させる方法であって、
階段の上縁部と下縁部との間に延設されたレールを提供するステップと、
該レールに沿って可動な運搬台を提供するステップと、
該運搬台から離れて提供された運搬台操作制御部を提供するステップと、
を含んでおり、
前記運搬台付近の人物を感知し、前記運搬台操作制御部を操作不能にするよう近接センサーをさらに提供するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
近接センサーを運搬台上又は運搬台周囲に取り付けるステップを含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
椅子部を運搬台に取り付けるステップを含み、前記椅子部に負荷が適用された時に感知する使用者センサーを提供するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
椅子部は折りたたみ可能であり、前記椅子部が折りたたまれた状態を感知するセンサーを提供するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
階段昇降機構造体であって、
階段の上縁部と下縁部の間に延接されたレールと、
該レールに沿って可動な運搬台と、
該運搬台から離れて提供された運搬台操作制御部と、
を含んでおり、
近接センサーがさらに提供されており、該近接センサーは、前記運搬台付近の人物を感知するよう操作可能であり、さらに人物を感知した時、前記運搬台操作制御部を操作不能にできることを特徴とする構造体。
【請求項6】
近接センサーは運搬台上又は運搬台周囲に取り付けられていることを特徴とする請求項5記載の構造体。
【請求項7】
運搬台に取り付けられた椅子部をさらに含んでおり、近接センサーの少なくとも1部は前記椅子部に取り付けられていることを特徴とする請求項5又は6記載の構造体。
【請求項8】
近接センサーはキャパシタンスタイプであることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の構造体。
【請求項9】
椅子部に着席したユーザーの存在を感知するよう操作可能な使用者センサーをさらに含んでいることを特徴とする請求項7又は8記載の構造体。
【請求項10】
使用者センサーは、椅子部の負荷を感知するよう操作可能なロードセンサーを含んでいることを特徴とする請求項9記載の構造体。
【請求項11】
椅子部は折りたたみ可能であり、該椅子部が折りたたまれた状態であることを感知するよう操作可能な位置センサーをさらに含んでいることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の構造体。
【請求項12】
階段昇降機構造体であって、本構造体は、
レールと、
該レールに取り付けられ、該レールに沿って可動な運搬台と、
該運搬台を前記レールに沿って動かすための少なくとも1つのユーザー操作制御部と、
を含んでおり、
椅子部に着席したユーザーの存在を感知するための使用者センサーがさらに提供されており、ユーザーが前記椅子部に着席している時のみ前記ユーザー操作制御部を作動させることを特徴とする構造体。
【請求項13】
使用者センサーは、椅子部及び/又は運搬台に組み込まれたロードセンサーを含んでおり、前記椅子部及び/又は運搬台に着席したユーザーにる負荷を感知するよう操作可能であることを特徴とする請求項12記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−500113(P2007−500113A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521658(P2006−521658)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003249
【国際公開番号】WO2005/012153
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(501154220)スタナー ステアリフツ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】