説明

階段昇降機

その発明は、階段昇降機の椅子を水平にするモータの角度運動とこのモータによって水平にされる椅子の角度位置とを別々にモニターすることによって階段昇降機の安全装置の改良を提供するものである。これらの角度位置を比較することによって、水平維持系統における事故を容易に判断し、それに応答する座席ロック装置を配備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段昇降機に関し、特に、階段昇降機の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
曲がりを有する階段昇降機では、階段昇降機のレールの角度は、水平面に対して変化する。階段昇降機のキャリッジが移行の曲がり(垂直面の曲がり)を移動する際に、そのキャリッジ上に搭載された椅子は、水平に保たれなければならない。欧州特許第0738232号に記載された階段昇降機の実施例では、椅子は、キャリッジに枢支され、椅子水平維持用のモータは、レールの角度が変化するにつれて、椅子を水平に維持するように動作する。
【0003】
欧州特許第0738232号に示されるタイプの装置は、キャリッジ水平維持用モータが故障した場合やキャリッジ水平維持用モータと椅子との間の接続が損なわれた場合に、椅子がキャリッジに対して無制御に回転する懸念を生じさせる。明らかなことであるが、これらの事故のうちのいずれか一方の事故でも生ずると、椅子に座っていた人は負傷することがある。このような事故の可能性に留意して、欧州特許第0738232号は、椅子の角度が中央水平位置のいずれかの側で所定の水平はずれ上限値に達すると、1対の水銀スイッチがロックピンの解放を起動する安全装置の使用を開示している。一方、ロックピンは、椅子の位置をキャリッジに対してロックするように椅子の仲介物に設けられた位置決め孔内に入り込む。このロック機構は、キャリッジを停止させる主の安全回路を起動する。
【0004】
欧州特許第0738232号の出願以降、水銀スイッチの代わりに単一のアナログ傾斜センサを用いることは普通になってきているが、水銀スイッチと共通していることであるが、傾斜センサは、水平はずれの限度に達した時に、出力信号を与えるにすぎない。この水平はずれの限度は、典型的には、5°であり、±5°の範囲で事故が生じると、この事故が検知され、ロッキング機構が起動され、このロッキング機構が噛み合う前に、椅子は相当な勢いを増したかもしれない。その結果、椅子は、意図した5°の水平はずれの限度を常に越え、不快な及び/又は危険な程度までになる。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題に少なくともある程度取り組み、又は新規で有益な選択を少なくとも付与する階段昇降機用の安全方法および装置を提供することにある。
【発明の要約】
【0006】
従って、第1の態様では、本発明は、レールを有する階段昇降機用安全装置を提供する方法であって、前記レールに沿って移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに搭載された椅子であって前記レールの角度が水平面に対して変化する際に前記椅子が水平に維持されるように前記椅子の位置が位置調節される椅子と、前記レールの角度変化に応じて前記椅子の位置を調節するように付与される出力を有する水平維持用モータと、前記椅子の位置をロックするロック機構とから成り、前記方法は、前記出力の回転から第1のカウントを発生し、前記椅子の位置から第2のカウントを発生し、前記第1と第2のカウントを比較し、前記第1と第2のカウントが所定量異なる時、前記ロック機構を起動する階段昇降機用安全設備を提供する方法を提供する。
【0007】
好ましくは、前記方法は、2つのロータリー・エンコーダを使用して、前記カウントを発生することを含んでいる。
【0008】
好ましくは、前記椅子は、前記キャリッジに対して枢支され、前記方法は、前記キャリッジに対して前記椅子の回転運動を緩衝することを更に含んでいる。
【0009】
本発明の他の態様では、本発明は、レールを有する階段昇降機であって、前記レールに沿って移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに搭載された椅子であって前記レールの角度が水平面に対して変化する際に前記椅子が水平に維持されるように前記椅子の位置が調整可能である椅子と、前記レールの角度変化に応じて前記椅子の位置を調節するように付与される出力を有する水平維持用モータと、前記椅子の位置をロックするロック機構とから成り、前記モータの出力の回転から第1のカウントを発生するように動作する第1のカウント発生器と、前記椅子の位置から第2のカウントを発生するように動作する第2のカウント発生器と、第1と第2のカウントを比較して前記第1と第2のカウントが所定量異なる時に前記ロック機構を起動するように動作するプロセッサーとを備えている階段昇降機を提供する。
【0010】
好ましくは、前記椅子は、前記キャリッジに枢支されている。
【0011】
好ましくは、前記第1と第2のカウント発生器は、ディジタル処理に適した形態の出力を供給するように構成される。
【0012】
好ましくは、前記第1と第2のカウント発生器は、ロータリー・エンコーダから成っている。好ましくは、前記ロータリー・エンコーダは、移動の程度に複数のパルスを出力する。
【0013】
階段昇降機は、前記椅子の移動を緩衝するダンピング手段を更に含むことができる。このダンピング手段は、伸縮式ダンパー、回転ダンパー又は摩擦ダンパーとすることができる。
【0014】
本発明を実施する方法の多くのヴァリエーションは、当業者に自明である。以下の記載は、本発明を実施する1つの手段のみを説明するが、種々の変形や等価物の記載がないとしてもこの1つの手段に限定されるべきではない。できれば、特定のエレメントの記載は、現存し又は将来あるかもしれないいずれのすべての等価物を含むものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の1つの実施例は、以下の添付の図面を参照して述べる。
【図1】本発明による階段昇降機の概要の背面図を示す。
【図2】本発明を組込んだ階段昇降機キャリッジの部分等角投影図を示す。
【図3】図2と同様であるが、追加の部品を取り付けた図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1を参照すると、本発明は、ローラー8によってレール7上に支持されたキャリッジ6を含んでいる階段昇降機5を提供するものである。出力部に駆動ピニオン10を取り付けた主駆動モータ9がキャリッジ6内に搭載されている。駆動モータが回転すると、キャリッジ6はレール7に沿って駆動されるように、駆動ピニオン10はラック11に係合している。
【0017】
レール7の角度が水平面に対して変化すると、椅子12が水平に維持されるように、椅子12は、キャリッジ6に搭載されている。図面で示される特定の実施例では、椅子12は、キャリッジ6に枢支され、キャリッジが水平面に対して異なる角度でレールの一部を横切り始めると、椅子12は、キャリッジ6に対してピボット運動する。椅子は、椅子仲介物14に取り付けられているのが好ましく、この仲介物は、キャリッジに直接枢支されている。
【0018】
ピニオン16が出力部に取り付けられた椅子水平維持用モータ15もキャリッジに搭載されている。このピニオン16は、椅子仲介物14に固定された他のギヤ17と噛み合っている。従って、ピニオン16が回転すると、椅子12は、キャリッジに対してピボット運動される。私共のヨーロッパ特許第0738232号では、レール7の角度が水平面に対して変動すると、椅子が水平に維持されるのを確保するために、モータ15の動作を制御する方法が記載されている。水平維持の他の形態も可能であり、本発明は、欧州特許第0738232号に記載されている水平維持装置への適用に限定されない。
【0019】
本発明は、椅子水平維持用モータ15の内部故障やピニオン16とギヤ17との間の駆動の故障があっても安全性が維持されるのを確保するように開発されている。適切な安全機構がないと、いずれかのタイプの故障があると、椅子12の回転が制御できなかったり、椅子に座っていた人に怪我を起こしたりすることになる。
【0020】
次に、図2及び図3を参照すると、椅子水平維持用のモータ/ギアーケース・ユニット15は、階段昇降機キャリッジ6の上方部に取り付けられているのが示されている。図2に示すように、ピニオン16は、モータ/ギアーケース・ユニット15の出力部に取り付けられ、このピニオンは、キャリッジ6の後面の孔を貫通して突出してキャリッジ6に回転自在に取り付けられたギヤ17に噛み合っている。椅子仲介物(図示せず)は、ねじ20によってギヤ17にボルト止めされる。
【0021】
本発明によれば、モータ15の回転出力がモニターされ、椅子の回転位置もモニターされる。これらの2つの要素は、常に比較され、もし、これらの2つの要素が任意の予期しない方法で異なると、ロック機構が起動されてキャリッジに対して椅子をロックする。
【0022】
ディジタル・エレクトロニクスを用いてこのモニタリングと比較とを行うことが便宜であり、このため、ロータリー・エンコーダ22をモータ15の出力部に固定し、他のエンコーダ23は、ギヤ17に噛み合うが駆動ピニオン16とは独立しているピニオン25に接続されている。
【0023】
これらのエンコーダ22及び23は、アップ・ダウンカウンタであるのが好ましく、各カウンタは、椅子が一方の方向にピボット運動(枢動)しているときは、増加カウントを付与し、椅子が反対方向で回転しているときは、減少カウントを付与する。これらのエンコーダは、椅子の回転運動の度合い毎に、多数のパルスを供給するように選択されている。
【0024】
エンコーダ22及び23のパルス出力を常に比較することによって、水平維持用駆動機構のいずれかのタイプの故障で生じるかもしれない予期しない変動が直ちに検出される。
【0025】
これらのエンコーダの出力は、比較が行われる階段昇降機の電子制御装置(ECU)に供給される。ECUがECUへプログラムされた許容範囲外の出力変動を検知すると、ECUは、キャリッジに対して椅子をロックするロック機構を起動する。
【0026】
図示の形態では、ロック機構は、通常動作中、後退位置に保持されるソレノイド駆動式プランジャー28から成っている。ECUが水平駆動の故障を検知すると、ソレノイドは、プランジャーを解放し、従って、プランジャーは、ばね付勢によってインデックス・プレート30(図3)の孔31のうちの1つの孔に係入するように駆動される。図から解るように、インデックス・プレート30は、ギヤ17に固定され、孔31がプランジャー28と同じピッチ円径上にあるように構成される。
【0027】
椅子回転と水平維持用モータ回転との両方を正確にモニタリングし、ロック機構を迅速に駆動すると、水平維持駆動機構内に事故があった場合、椅子はキャリッジに対してロックすることができ、椅子が危険な程度まで水平から外れる前に、キャリッジは停止する。
【0028】
上記の安全装置を更に一層良好にするために、階段昇降機は、図1に符号35で概略的に示されるダンパーを備えてもよい。このダンパーは、伸縮式、ロータリー式又は摩擦式を含むいずれのタイプのものでもよく、上記のいずれかのタイプの事故があった場合、キャリッジに対する椅子の加速を緩衝する働きをする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールを有する階段昇降機用安全装置を提供する方法であって、前記レールに沿って移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに搭載された椅子であって前記レールの角度が水平面に対して変化する際に前記椅子が水平に維持されるように前記椅子の位置が位置調節される椅子と、前記レールの角度変化に応じて前記椅子の位置を調節するように付与される出力を有する水平維持用モータと、前記椅子の位置をロックするロック機構とから成り、前記方法は、前記出力部の回転から第1のカウントを発生し、前記椅子の位置から第2のカウントを発生し、前記第1と第2のカウントを比較し、前記第1と第2のカウントが所定量異なる時、前記ロック機構を起動する階段昇降機用安全装置。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、2つのロータリー・エンコーダを使用して、前記カウントを発生することを含む方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記椅子は、前記キャリッジに対して枢支され、前記方法は、前記キャリッジに対して前記椅子の回転運動を緩衝することを更に含む方法。
【請求項4】
レールを有する階段昇降機であって、前記レールに沿って移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに搭載された椅子であって前記レールの角度が水平面に対して変化する際に前記椅子が実質的に維持されるように前記椅子の位置が調整可能である椅子と、前記レールの角度変化に応じて前記椅子の位置を調節するように付与される出力を有する水平維持用モータと、前記椅子の位置をロックするロック機構とから成り、前記モータの出力の回転から第1のカウントを発生するように動作する第1のカウント発生器と、前記椅子の位置から第2のカウントを発生するように動作する第2のカウント発生器と、第1と第2のカウントを比較して前記第1と第2のカウントが所定量異なる時に前記ロック機構を起動するように動作するプロセッサーとを備えていることを特徴とする階段昇降機。
【請求項5】
請求項4に記載の階段昇降機であって、前記椅子は、前記キャリッジに枢支されている階段昇降機。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の階段昇降機であって、前記第1と第2のカウント発生器は、ディジタル処理に適した形態の出力を供給するように構成されている階段昇降機。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の階段昇降機であって、前記第1と第2のカウント発生器は、ロータリー・エンコーダから成っている階段昇降機。
【請求項8】
請求項7に記載の階段昇降機であって、前記ロータリー・エンコーダは、移動の度合い毎に複数のパルスを出力する階段昇降機。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれかに記載の階段昇降機であって、前記椅子の移動を緩衝するダンピング手段を更に含んでいる階段昇降機。
【請求項10】
請求項9に記載の階段昇降機であって、前記ダンピング手段は、伸縮式ダンパー、回転ダンパー又は摩擦ダンパーから成っている階段昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−527314(P2010−527314A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507973(P2010−507973)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001665
【国際公開番号】WO2008/142372
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(501154220)スタナー ステアリフツ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】