説明

隔膜式コンサベータおよび油入変圧器

【課題】耐油性隔膜の空気と接する面にガス遮断膜を設けることによって、耐油性、耐寒性を低下させることなくガス遮断性能を向上させること。
【解決手段】隔膜式コンサベータにおいて、隔膜4を2重構造4−1、4−2にしてコンサベータ2にそれぞれ気密に取り付けるように構成するとともに、絶縁油に接する隔膜4−1を耐油性を有する材質で形成し、外気に接する隔膜4−2をガス遮断性能を有する材質で形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔膜を改良した隔膜式コンサベータ、および隔膜式コンサベータを有する油入変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器は、鉄心および巻線からなる変圧器本体の絶縁耐力および冷却性能の向上を図るために、変圧器本体を密閉された変圧器タンク内で絶縁油に浸すように構成されている。この絶縁油の油温は、外気温度の変動および変圧器本体の損失(主に負荷損が占める)に基づく発熱のために絶えず変化する。変圧器タンク内の油温が上昇すると絶縁油の体積が増加するため、変圧器タンクが完全に密封されていると油体積の増加により変圧器タンク内の圧力が上昇し、変圧器タンクを破損させる危険性がある。
【0003】
このため油入変圧器では、変圧器タンクに開口部を設けて外気の圧力(大気圧)とタンク内圧を平衡させている。しかしながら、空気中に含まれる酸素や水分が絶縁油に触れるとスラッジ等の劣化生成物が発生し、絶縁油の絶縁性能や冷却性能を低下させる。
【0004】
大型の油入変圧器では、絶縁油が外界の空気や水分と接触するのを防ぎ、かつ、変動する変圧器タンク内の絶縁油の膨脹油量を吸収するために変圧器タンクの上部にコンサベータと呼ばれる容器を取り付けている。
【0005】
コンサベータには、浮動タンク式、窒素ガス密封式、3室式など様々な方式があるが、特に電力用の大容量油入変圧器においては、コンサベータ内に絶縁油と空気とを遮断する耐油性材による隔膜を設置した隔膜式コンサベータが保守の容易さから広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
隔膜式コンサベータには、非特許文献1に紹介されているように隔膜の形状により2種類に分類され、一つは隔膜を平面的に裁断して形成したものであり、もう一つは、立体的に裁断して袋状に形成したものである。
【0007】
図4は袋状の隔膜式コンサベータを備えた油入変圧器の概略図を示す。
【0008】
図示しない変圧器本体を密閉して収容する変圧器タンク1は、その上部に設置されたコンサベータ2との間を配管3によって連通され、コンサベータ2と共に内部は絶縁油で満たされた状態になっている。
【0009】
コンサベータ2の内部にはニトリルゴム等の耐油性ゴムを袋状に形成した隔膜(以下、単に隔膜という)4を収容し、その袋の開口部周りの鍔部をフランジ5によって気密に固定している。
【0010】
隔膜4は、袋の内部をブリーザ接続管6を介してブリーザ7に連通することによって、袋の内部に自由に外気を出入りできるようにしているが、袋の開口部周りの鍔部をフランジ5によって気密に固定されているため、隔膜4自体によって絶縁油と空気との接触は遮断されている。なお、ブリーザ7内には、外気中の湿気が空気袋4内に侵入することを防ぐため、通常シリカゲル等の乾燥剤が装填されている。
【0011】
ここで、隔膜式コンサベータ2の機能について以下説明する。
油入変圧器タンク1内の絶縁油の温度は、変圧器巻線の負荷損による発熱や外気温によって絶えず変化している。油温が上昇すると絶縁油の体積が膨張し、油温が低下すると逆に収縮する。油入変圧器タンク1内部は、配管3によってコンサベータ2内部と連通しているので、変圧器タンク1に充満した絶縁油の体積が増減すると、コンサベータ2内部に収容した隔膜4の袋内部にはブリーザ接続管6およびブリーザ7を介して外気が出入りして袋の体積が逆に増減する。
【0012】
すなわち、コンサベータ2は絶縁油の体積変化を隔膜4による袋の体積変化に変換することによって、絶縁油の表面が空気に接触することなく変圧器タンク1内の圧力を一定に保って変圧器タンク自体を保護するとともに、絶縁油が変圧器タンク1から外部に溢れ出ることを防いでいる。
【0013】
隔膜4は、一方の表面で絶縁油に接するとともに他方の表面で空気に接していることから、その材質としては耐油性に優れ、空気を透過し難い性能が求められるとともに、長期間絶えず行われる膨張・収縮に伴う屈曲や引っ張りに対する柔軟性や機械的強さが求められる。
【0014】
現状では、これらの性能を満たすものとして、ナイロン布の両面に耐油性ゴムであるニトリルゴムを貼り合わせて積層構造としたものとか、特許文献1に記載のように、ナイロン布の両面に耐油性・耐寒性の熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン層を貼り合わせて積層構造としたもの等が採用されている。
【特許文献1】特開2001−297920号公報、
【非特許文献1】電気学会編、電気工学ハンドブック、p823〜p824、電気学会1978
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、前述のニトリルゴム製の隔膜は、空気中のガスの透過を完全に遮断できるわけではない。例え隔膜に穴等の欠陥部位がなくても、外気側の気体分子は隔膜のゴム材に溶解して内部に拡散し、拡散した気体分子が絶縁油側に到達して放出される。その結果、空気中のガスが絶縁油中に侵入する。
【0016】
一般的に、コンサベータに使用される耐油性ニトリルゴム製の隔膜の空気透過率は、ASTM D1434に記載される方法で測定を行うと10-6cm3/cm2・min・atmオーダの値である。
【0017】
電力用の油入変圧器には、20年以上の機器としての寿命が期待される。長期間の使用においては、耐油性隔膜の空気透過率が微少であっても、その運転期間中の侵入量を積算すると、その量は無視できる量ではなく、透過する空気中の酸素ガスは絶縁油の劣化、更に変圧器の寿命に大きく影響を及ぼす。そのため、コンサベータには、常に高い空気遮断性能が求められており、その中でも酸素ガスの遮断性能は特に重要である。
【0018】
従来、コンサベータにおける空気の遮断は、隔膜4に使用される耐油性ゴムが担っていた。耐油性ゴムとして一般的に用いられるニトリルゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、アクリロニトリルの含有比率を高めることによって、耐油性・ガス遮断性能が向上する。
【0019】
しかしながら、アクリロニトリルの含有比率を高める場合、ゴム材の耐寒性は逆に低下する。耐寒性が低下すると、ゴム材が低温下で硬化し、その長所である柔軟性が失われてしまう。そのため、コンサベータの隔膜に適用されるニトリルゴムの高アクリロニトリル化には制限が生じ、コンサベータのガス遮断性能の向上が妨げられていた。
【0020】
また、特許文献1に記載の熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタンの隔膜についても、ニトリルゴム製の隔膜と同様に、空気中のガスの透過を完全に遮断できるわけではなく、例え隔膜に穴等の欠陥部位がなくても、外気側の気体分子は隔膜のゴム材に溶解して内部に拡散し、拡散した気体分子が絶縁油側に到達して放出される。その結果、空気中のガスが絶縁油中に侵入するという課題がある。
【0021】
本発明の目的は、耐油性隔膜の空気と接する面にガス遮断膜を設けることによって、耐油性、耐寒性を低下させることなくガス遮断性能を向上させることのできる隔膜式コンサベータ、および隔膜式コンサベータを有する油入変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、変圧器タンク内に密封した絶縁油と外気との接触を防ぐとともに、前記絶縁油の膨脹油量を吸収するために設置された隔膜式コンサベータにおいて、隔膜を2重構造にしてコンサベータに気密に取り付けるように構成するとともに、絶縁油に接する隔膜を耐油性を有する材質で形成し、外気に接する隔膜をガス遮断性能を有する材質で形成したことを特徴とする。
【0023】
また、請求項7に係る発明は、変圧器タンク内に密封した絶縁油と外気との接触を防ぐとともに、前記絶縁油の膨脹油量を吸収するために設置された隔膜式コンサベータにおいて、耐油性を有する材質で形成した耐油性隔膜の両側の面のうち、少なくとも外気に接触する側の面に対して貼り合わせあるいはコーティングによりガス遮断膜を形成することを特徴とする。
【0024】
さらに、請求項9に係る発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の隔膜式コンサベータを有することを特徴とする油入変圧器である。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明に係る隔膜式コンサベータによれば、コンサベータに高いガス遮断性能を有するガス遮断膜を設けることによって、絶縁油への空気の侵入を防いで変圧器絶縁油の劣化を防ぐことができる。
【0026】
また、第1の発明に係る隔膜式コンサベータによれば、耐油性隔膜とガス遮断膜の独立化によって、コンサベータ隔膜のガス遮断性能に対する信頼性の維持と経済的な交換・保守を行うことができる。
【0027】
さらに、第2の発明に係る隔膜式コンサベータによれば、耐油性隔膜とガス遮断膜とを一体化したことにより、隔膜自体をコンパクトにすることができ、既存の隔膜式コンサベータに対して構造の変更を行わず、耐油性隔膜の交換のみでガス遮断性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1を参照して本発明の第1の実施の形態に係る隔膜式コンサベータについて説明する。
【0029】
本実施の形態1で採用する隔膜式コンサベータは、図1のように、2重にした袋状の隔膜4を備え、このうち、外側の袋状隔膜すなわち絶縁油に接する側の隔膜を耐油性を有する材質で袋状に形成して耐油性隔膜4−1とし、内側の袋状隔膜すなわち空気と接する側の隔膜をガス遮断性能を有する材質で袋状に形成してガス遮断隔膜4−2としたものである。
【0030】
そして、これら袋状に形成された隔膜4−1および4−2の開口部周りの鍔部をコンサベータ2の上部に開けた通気穴8とほぼ同心状に設けられたフランジ5によってそれぞれ別々に固定するようにしたものである。なお、耐油性隔膜4−1およびガス遮断隔膜4−2の詳細については後述する。
【0031】
ところで、フランジ5はコンサベータ2の通気穴8に対して同心状に固定された通気フランジ5−1と、前述のブリーザ接続配管6の端部に固定されたブリーザ接続配管フランジ5−2との組合せで構成されている。
【0032】
通気フランジ5−1は通気穴8と同心状の陥没部5−1aを設けており、この陥没部5−1a内で、耐油性隔膜4−1の開口部周りの鍔部4−1aをリング状金具9で押えた状態で複数の固定ネジ10によって気密に固定する。なお、陥没部5−1aの深さは、後で述べるガス遮断隔膜4−2の開口部周りの鍔部を傷つけないために、耐油性隔膜4−1の開口部周りの鍔部4−1aが固定された状態において、固定ネジ10の頭が陥没部5−1aから突出しないような寸法に選定されている。
【0033】
そして、通気フランジ5−1は、陥没部5−1aを除いた部分すなわち、環状の鍔部によって前記ブリーザ接続配管フランジ5−2と面接触するようになっている。
【0034】
前記通気フランジ5−1とブリーザ接続配管フランジ5−2とは、両者の接触面間にガス遮断隔膜4−2の開口部周りの鍔部4−2aを広げ、かつその鍔部4−2aの外周に環状のガスケット11を配置したうえで、通しボルト12によって結合されている。これによって、ガス遮断隔膜4−2は、ブリーザ接続配管フランジ5−2に気密に固定される。
【0035】
このように、耐油性隔膜4−1と、ガス遮断隔膜4−2とは、通気フランジ5−1とブリーザ接続配管フランジ5−2とにそれぞれ独立して気密に固定されるようになっている。この結果、例えば、耐油性隔膜4−1によってコンサベータ2内の絶縁油と空気とを遮断している状態で、ガス遮断隔膜4−2の取り外して交換作業ができるようになっている。
【0036】
ところで、前記耐油性隔膜4−1は、従来から採用されているものと同じであり、ナイロン布の両面に耐油性ゴムであるニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体)を貼り合わせて3層の積層構造(ラミネート構造)としたものである。
【0037】
一方、前記ガス遮断隔膜4−2は、絶縁油と接することはないので耐油性は必ずしも必要としない。そのため、隔膜4の耐油性隔膜4−1に使用するニトリルゴムよりもガス遮断性能能に優れている材料が適用できる。
【0038】
図2はガス遮断隔膜4−2の断面構成を示す。
ガス遮断隔膜4−2は、酸素ガス吸収物15と、その酸素ガス吸収物15の両側表面にそれぞれ貼り合わされたガス遮断膜16および17との3層ラミネート構造になっている。
【0039】
ガス遮断膜16および17は、例えば、ナイロンやポリエチレンテレフタレートあるいは2軸延伸ポリプロピレン等で構成された図示しないフィルム状の基体に、ポリ塩化ビニリデンやダイヤモンドライクカーボンあるいはアルミ等のガスバリヤー性に優れた材質をコーティングして形成したものが適用可能である。
なお、ガス遮断膜16および17は、前述したナイロンやポリエチレンテレフタレートあるいは2軸延伸ポリプロピレン等で構成されたフィルム状の基体を使用せずに、直接耐油性隔膜であるニトリルゴムの表面にポリ塩化ビニリデン、ダイヤモンドライクカーボンあるいはアルミ等の材質のうちのいずれか1つをコーティングして形成してもよい。
【0040】
一方、ガス遮断膜16および17の間に位置する酸素ガス吸収物15は、ガス遮断膜16で遮断しきれずに、極微量透過する空気から絶縁油の劣化に影響させる酸素ガスを除去するものである。酸素ガス吸収物15による酸素ガス吸収量は有限であるが、酸素ガス吸収物15はガス遮断膜16、17の間に密閉されているため、ガス遮断膜を透過する極微量の酸素のみを吸収すればよく、その材質については、鉄系や有機系を問わず現在商用化されている脱酸素剤が適用可能である。このため、酸素ガス吸収物15の酸素ガス吸収性能は長期間期待でき、ガス遮断隔膜4−2の酸素ガス遮断性能の長期信頼性を向上させるとともに、それを経済的に実現できる。
【0041】
本実施の形態1による隔膜式コンサベータは、以上述べたように耐油性隔膜4−1とガス遮断隔膜4−2との2重構造とし、しかもそれぞれの隔膜4−1および4−2は独立して気密に固定されるように構成してあるので、耐油性隔膜4−1でコンサベータ内の絶縁油を空気から遮断した状態でガス遮断隔膜4−2の取り外しや交換が可能となる。
【0042】
したがって、ガス遮断隔膜4−2が経年劣化等でそのガス遮断性能が低下した場合でも、容易に交換保守が可能となる。なお、交換の際、絶縁油は空気に触れることがないので、交換保守作業によって絶縁油が劣化することも防ぐことができる。
【0043】
また、ガス遮断隔膜4−2のガス遮断性能が低下したか否かの判断は、定期的に実施される絶縁油中のガス分析によって、油中の酸素や窒素の濃度を知ることができるので、そのガス成分の増加によって判断することが可能である。
【0044】
また、耐油性隔膜4−1とガス遮断隔膜4−2との間は密閉空間となっているので、もし、酸素ガスがガス遮断隔膜4−2から洩れた場合、酸素ガス吸収物15によって微少量吸収され、外気空気中の酸素濃度よりも通常低下している。
【0045】
絶縁油中のガス分析の際にのみ連通するように、ブリーザ接続配管フランジ5−2に開けた破線で示す測定用小穴5−2hから耐油性隔膜4−1と、ガス遮断隔膜4−2との空間内部に図示しないガス分析器の測定端子やセンサーを挿入することによって、その空間に存在する酸素ガスの濃度検出を行い、酸度ガスの濃度評価を行うことができる。この酸素濃度が外気空気のそれと同等になれば、ガス遮断隔膜4−2のガス遮断性能が低下したものと判断でき、ガス遮断性能の信頼性の維持と経済的な交換・保守を行うことができる。
【0046】
なお、ガス分析器の代わりに、測定用小穴5−2hに酸素ガスの濃度を大まかな値を変色で示すインジケータを接続するようにしても耐油性隔膜4−1とガス遮断隔膜4−2の間の酸素ガス濃度を評価することができる。
【0047】
なお、上記の説明では、酸素ガス吸収物15を介在する状態で酸度ガス濃度の検出を行うようにしたが、酸度ガス濃度検出をする場合、特に、酸素ガス吸収物15の有無には関係ない。
【0048】
また、本実施の形態1によれば、耐油性隔膜4−1には外気の遮断を担う必要性がないことから、耐油性隔膜4−1として従来使用されてきたニトリルゴムよりも耐寒性能に優れた低ニトリルの材料を適用することが可能となる効果も発生する。
【0049】
(第2の実施の形態)
図3を参照して本発明の第2の実施の形態に係る隔膜式コンサベータについて説明する。
図3は、耐油性隔膜に対してガス遮断膜をコーティングすることによって構成した袋状の隔膜4Aの断面構成を示す。
【0050】
本実施の形態2による隔膜4Aは、第1の実施の形態の隔膜4のように耐油性隔膜4−1と、ガス遮断隔膜4−2とを独立して設ける替わりに、耐油性隔膜4−1の両表面にガス遮断膜20をコーティングしてラミネート構造に形成したものである。
【0051】
図3の隔膜4Aは、ナイロン布18の両面にそれぞれ耐油性ゴムであるニトリルゴム19a、19bを貼り合わせて3層積層構造の耐油性隔膜4−1を構成し、さらに、ニトリルゴム19a、19bの外側面にそれぞれガス遮断膜20a、20bを設けて5層積層構造としたものである。
なお、ガス遮断膜20a、20bは、ニトリルゴム19a、19bの表面に直接ポリ塩化ビニリデンやダイヤモンドライクカーボンあるいはアルミ等のガスバリヤー性に優れた材質をコーティングして形成したものが適用可能である。
【0052】
以上のように構成した実施の形態2によれば、ガス遮断膜20は耐油性隔膜4−1の外気と接触する側にコーティングすればガス遮断膜自体の耐油性は考慮する必要はなく、従来の耐油性隔膜4−1単体よりも高いガス遮断性能が得られる。
【0053】
なお、ガス遮断膜20として、ポリ塩化ビニリデンやダイヤモンドライクカーボン被覆した材料は耐油性にも優れているので、耐油性隔膜4−1の両表面のうち、少なくともいずれか一方だけにコーティングすることも可能であるが、両面をコーティングすることによって隔膜のガス遮断性能を更に高めることができる。
【0054】
さらに、本実施の形態2は、耐油性隔膜4−1とガス遮断膜4−2とをラミネート構造にしたことにより、第1の実施の形態の隔膜に比べて隔膜自体をコンパクトにすることができる。この結果、既存の隔膜式コンサベータに対して構造の変更を行わず、耐油性隔膜4−1の交換のみでガス遮断性能の向上を図ることができ、しかも経済的である。
【0055】
以上述べた第1および第2の実施の形態では、袋状に形成した隔膜4の使用例を説明したが、隔膜4の形状を袋状に限定することは必須ではなく、平面状に形成されたものでもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る隔膜式コンサベータの概念図。
【図2】図1のガス遮断膜の一部を示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る隔膜式コンサベータの隔膜の断面図。
【図4】従来の隔膜式コンサベータの概念図。
【符号の説明】
【0057】
1…変圧器タンク、2…コンサベータ、3…配管、4,4A…隔膜、5…フランジ、5−1…通気フランジ、5−2…ブリーザ接続配管フランジ、5−2h…測定用小穴、6…ブリーザ接続管、7…ブリーザ、8…通気穴、9…固定ネジ、10…リング状金具、11…ガスケット、12…通しボルト、15…酸素ガス吸収物、16、17…ガス遮断膜、18…ナイロン布、19a,19b…ニトリルゴム、20,20a,20b…ガス遮断膜コーティング層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器タンク内に密封した絶縁油と外気との接触を防ぐとともに、前記絶縁油の膨脹油量を吸収するために設置された隔膜式コンサベータにおいて、
隔膜を2重構造にしてコンサベータに気密に取り付けるように構成するとともに、絶縁油に接する隔膜を耐油性を有する材質で形成し、外気に接する隔膜をガス遮断性能を有する材質で形成したことを特徴とする隔膜式コンサベータ。
【請求項2】
前記耐油性を有する材質で形成された隔膜と、前記ガス遮断性能を有する材質で形成された隔膜との間に密閉空間を設け、当該密閉空間に存在する酸素ガスの濃度検出を可能にしたことを特徴とする請求項1記載の隔膜式コンサベータ。
【請求項3】
前記ガス遮断性能を有する材質で形成された隔膜は、前記耐油性を有する材質で形成された隔膜側に酸素ガス吸収物を設け、外気側にガス遮断膜を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の隔膜式コンサベータ。
【請求項4】
前記ガス遮断性能を有する材質で形成された隔膜は、前記酸素ガス吸収物の両側面にガス遮断膜を設けたことを特徴とする請求項3記載の隔膜式コンサベータ。
【請求項5】
前記ガス遮断性能を有する材質で形成された隔膜の取り付け部を、前記耐油性を有する材質で形成された隔膜の取り付け部から独立して設け、前記耐油性を有する材質で形成された隔膜を取り外すことなく前記ガス遮断隔膜を取り外し可能とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の隔膜式コンサベータ。
【請求項6】
前記ガス遮断性能を有する材質で形成された隔膜は、前記ガス遮断膜と前記酸素ガス吸収物とをラミネート構造として一体化したフィルム状膜としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の隔膜式コンサベータ。
【請求項7】
変圧器タンク内に密封した絶縁油と外気との接触を防ぐとともに、前記絶縁油の膨脹油量を吸収するために設置された隔膜式コンサベータにおいて、
耐油性を有する材質で形成した耐油性隔膜の両側の面のうち、少なくとも外気に接触する側の面に対して貼り合わせあるいはコーティングによりガス遮断膜を形成することを特徴とする隔膜式コンサベータ。
【請求項8】
前記ガス遮断膜は、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートあるいは2軸延伸ポリプロピレン等で構成された基体に対してポリ塩化ビニリデン、ダイヤモンドライクカーボンあるいはアルミ等の材質のうちのいずれか1つをコーティングして形成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の隔膜式コンサベータ。
【請求項9】
前記ガス遮断膜は、耐油性を有する隔膜の表面に直接、ポリ塩化ビニリデン、ダイヤモンドライクカーボンあるいはアルミ等の材質のうちのいずれか1つをコーティングして形成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の隔膜式コンサベータ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の隔膜式コンサベータを有することを特徴とする油入変圧器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−227268(P2008−227268A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65185(P2007−65185)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】