説明

隙間調整装置と該装置で調整した昇降アクチュエータ

【課題】隙間調整が容易にできるようにし、昇降アクチュエータのガタツキを簡単に解消した医療台用の昇降工アクチュエータを提供する。
【解決手段】長方形の板状を呈する固定部材2と可動部材3とを面合わせ状態に係合部を介して合体させてなり、該面合わせする面は双方が所定の角度を持って傾斜した状態に形成され、固定部材2の一方の端部に固定用の張出部4を設けると共に両側面に先端部に凸部8を有する壁部6を設け、可動部材3の両側面に基部側にテーパー面を有する壁部を形成し、固定部材2の壁部6の内側に可動部材3を装着しテーパー面に先端部の凸部8が当接して合体状態を維持する構成にした隙間調整装置1と、径が異なる複数個のコラムを同径状に順次収容して伸縮できるようにした昇降アクチュエータであって、収容したコラム間に隙間調整装置1を介在させて隙間を調整して相互間のガタツキを無くした構成にした昇降アクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として病院で使用される検診台、診療台または分娩台などの医療台の昇降アクチュエータにおけるガタツキの原因となる隙間を調整する隙間調整装置及び該装置で調整した昇降アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の隙間調整具や昇降アクチュエータを備えた医療台は複数の技術が公知になっている。昇降アクチュエータ及び医療台に関するものではないが、隙間調整具としては、例えば、それぞれ長手方向の一面が傾斜し、該傾斜面を相互に当接させた状態では他面が相互に略平衡となる略くさび状の第1及び第2調整片から成り、長手方向における前記第1及び第2調整片相互の位置を変更することにより、前記他面側の幅を調整可能とされた隙間調整具において、前記第1及び第2調整片は、一面の端部に長手方向に渡る凸部が形成され、該凸部の内側に平行して長手方向に渡る凹部が形成された同一形状を呈し、該一面を相互に当接させた状態で、前記第1調整片の凸部は前記第2調整片の凹部内に進入し、前記第2調整片の凸部は前記第1調整片の外側に位置すると共に、前記凸部が前記凹部内に進入した状態を保持する保持構造を備える構成の隙間調整具である(特許文献1参照)。
【0003】
この隙間調整具は、第1調整片或いは第2調整片の内の何れか一方の調整片を製作するだけで、第1又は第2調整片として使用することができる。これにより第1及び第2調整片の何れか一方だけでも隙間調整具を構成することが可能となる。従って、隙間調整具の生産性を大幅に向上させることが可能となり、隙間調整具の生産コストを極めて低減させることができるというものである。
【0004】
また、昇降アクチュエータを備えた医療台の第1の公知例として、人体が乗せられる移乗台と、人体が乗せられているシートの端部を当接させるシート当接部、及び該シート当接部との間でシートを挟持する挟持アクチュエータを有するシート挟持部と、該シート挟持部が上記移乗台の長手方向、又は長手方向と交叉する方向に移動する力を付与する移動アクチュエータとを備え、上記移動台に昇降力を付与する昇降アクチュエータを備える人体移動装置である(特許文献2参照)。
【0005】
この人体移動装置における昇降アクチュエータは、天板部と、脚部載置部と、ボルトと、2本の支持部とモータとから構成されており、具体的には、移動台自体は4本の脚部で支持されると共に、長さ方向の前後に所要間隔をもって取り付けたアクチュエータの2本の脚部で支持され、該2本の脚部は脚部載置部に取り付けられ、該脚部載置部はモータに連結したボルトに係合しており、さらに、2本の支持部によって上下の昇降移動がガイドされる構成になっており、モータを任意に駆動することによりボルトを介して脚部載置部を昇降させることにより移乗台が昇降するというものである。
【0006】
さらに、第2の公知例として、床側のベッド基台と人が仰臥する側のベッド本体とのあいだに昇降リンク機構を配し、該昇降リンク機構にベッド本体の昇降をするためのリニアアクチュエータを設けてなるベッドにおいて、前記リニアアクチュエータは、駆動源からの駆動力が伝達されて軸回り方向に回転する作動杆と、該作動杆の先端が回動自在に軸支され、かつ昇降リンク機構の第一脚部に支持される第一支持部と、作動杆に刻設の螺子に螺合し、かつ第二脚部に支持される第二支持部とからなり、第一支持部に、前記駆動力によらない力により両支持部が離間してベッド本体を下降させる方向の負荷を受けたことに伴う作動杆の下降側への回動に制動を与える制動手段を設けるにあたり、該制動手段と第一指示部とのあいだには、前記駆動力によらない力により両支持部が近接してベッド本体を上昇させる方向の負荷を受けたことに伴う作動杆のスラスト方向の移動により互いに当接して作動杆の上昇側への回動を規制する規制空間を設けたベッド昇降用のリニアアクチュエータである(特許文献3参照)。
【0007】
このベッド昇降用のリニアアクチュエータは、例えば、ベッド本体を無理に持ち上げた場合に、ベッド本体が不用意に下降しないよう作動杆の該側への回動に制動を与えるための制動手段と第一支持部とのあいだの規制空間が閉じて互いに当接することで作動杆が該側に回動することの規制がなされ、これによって、下降用の制動手段に上昇用の制動機能を付与できることになって上昇用制動手段を不要にでき、もってベッド本体の不用意な上下昇降の規制ができながら、構造簡単で部品点数の少ないものにできるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4305666号公報
【特許文献2】特開2006−223716号公報
【特許文献3】特開平10−118132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記隙間調整具においては、第1及び第2調整片は常にバラバラの状態であって、使用時にのみ合体させて隙間に設置するものであるが、その合体状態は第1及び第2調整片の外側から設置による所要の押圧力が付与され続けていないと維持されないし、設置または取り付け位置においても押圧力がないと保持されないのである。そうすると、アクチュエータのようなスライドする器具または摺動部材間における微細な隙間調整については実質的に使用できないという問題点を有している。
【0010】
特に、医療台用の昇降アクチュエータで、例えば、アルミダイカスト製の径の異なる複数の角筒体を嵌合合体させてなる複数段に伸縮するスライド脚部は、ダイカストで造られても離型時及び冷却時に一部に変形が生じたり、または収縮度合いが違ったりして寸法誤差が生ずることが多く、角筒体を嵌合合体させる時にその誤差分を削ったりまたは所要厚みの多種類の板材を用意して置いて、挟み込んだり抜き取ったり取り替えたりして、スライドするための隙間を確保するように調整しているが、その隙間はガタツキが生ずるような隙間であってはならないのであり、その隙間の調整は極めて微細なものであるため、各嵌合合体する角筒体間毎に個別に調整する必要があり、作業性が著しく悪いので生産性が悪いという解決すべき問題点を有している。
【0011】
前記昇降アクチュエータを備えた医療台の第1の公知例においては、4つの車輪が付いた台座と移動台との間の四隅に設けたスライド可能な4本の棒状の脚部と、台座上に設けられ昇降アクチュエータを構成する昇降用の2本の脚部と、該2本の脚部が取り付けられた脚部載置部と、該脚部載置部の昇降をガイドする棒状の2本の支持部と、脚部載置部を昇降させるボルトとで支持されているため、全体としてガタツキがあまり生じない構成になっているが、四隅に設けられた4本の脚部に医療具のコードが引っ掛かったりして支障を来たすばかりでなく、患者が乗せられる移動台は、四隅の4本の脚部によって水平状態に維持されているので、昇降アクチュエータによる上下動ができても、患者の姿勢変更、例えば、寝た状態から少し上体を起こす姿勢とか椅子に腰掛けた姿勢などに変更することができない構造であり、それによって種々の医療行為に不都合を生じさせるという問題点も有する。
【0012】
さらに、前記昇降アクチュエータを備えた医療台の第2の公知例においては、ベッド基台の上部に棒状の第1脚部と第2脚部を介してベッド本体が取り付けらており、昇降リンク機構によって前記第1脚部の傾倒位置を変えることによってベッド本体の高さが調整できるようになっているが、この医療台(ベッド)も前記第1の公知例と同様に、水平状態に維持されて上下動できるが、ベッド本体上の患者の姿勢変更、例えば、寝た状態から少し上体を起こす姿勢とか椅子に腰掛けた姿勢などに、ベッド自体の形状変化をさせることができない構造であり、それによって種々の医療行為に不都合を生じさせるという問題点も有する。
【0013】
ところで、昇降アクチュエータを備えた医療台においては、支持用の脚部を少なくして且つガタツキを生じないで昇降がスムーズに行われ安定した状態に維持されること、医療台自体の形状変化ができるようにすることが望まれているのである。
【0014】
従って、隙間調整装置としてスライドまたは摺動する昇降アクチュエータのような器具に適用できるようにすると共に、ガタツキによる不安を無くしスムーズな昇降で安定した状態に隙間調整できるようにすること、また、昇降アクチュエータとしてベッド本体の四隅を棒状の脚部で支持している従来の医療台自体が有する不都合を解消して、医療台自体の形状変化を任意に行えるようにして種々の医療行為が合理的に行えるようにすることに解決課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記課題を解決する具体的手段として、第1の発明は、長方形の板状を呈する固定部材と可動部材とを面合わせ状態に係合部を介して合体させてなり、該面合わせする面は双方が所定の角度を持って傾斜した状態に形成され、該傾斜した双方の内側面に形成した係合部は一方向に摺動可能な鋸歯状の凹凸部であり、前記固定部材の一方の端部に固定用の張出部を設けると共に両側面に先端部に凸部を有する壁部を設け、前記可動部材の両側面に基部側にテーパー面を有する壁部を形成し、前記固定部材の壁部の内側に前記可動部材を装着し前記テーパー面に前記先端部の凸部が当接して合体状態を維持する構成にしたことを特徴とする隙間調整装置を提供するものである。
【0016】
第2の発明は、径が異なる複数個のコラムを同径状に順次収容して伸縮できるようにした昇降アクチュエータであって、該収容したコラム間に前記請求項1に記載の隙間調整装置を介在させて隙間を調整して相互間のガタツキを無くした構成にしたことを特徴とする昇降アクチュエータを提供することである。
【0017】
本発明に係る第1の発明において、前記固定部材の張出部に前記可動部材を冶具で押して摺動させるための孔または切欠部を設けたこと;及び前記固定部材の壁部は、複数に分割されていることを付加的な要件として含むものである。
【0018】
本発明に係る第2の発明において、前記コラムはアルミダイカスト製であることを付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る隙間調整装置によれば、固定部材と可動部材とが常に合体状態にあって、固定部材の張出部を隙間調整しようとする対象物に取り付けることができるので、スライドまたは摺動部材の隙間に装着して取り付け、可動部材を少しづつ移動または摺動させて隙間調整装置自体の厚みを増やして隙間を埋めてガタツキを完全に無くすことができるし、使用時において対象物の材料の変形または伸びによってガタツキが生じたにしても、その時点でさらに可動部材を移動または摺動させてそのガタツキを直ちに解消できるという優れた効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る昇降アクチュエータは、軽量で堅固なアルミダイカスト製の複数のコラムを使用して伸縮するように構成したものであっても、前記した隙間調整装置を使用してコラム間の隙間をほとんどなくしてスムーズで速やかな伸縮ができるので、例えば、医療台の昇降アクチュエータとして適用すれば、治療台の周囲をスッキリさせることができると共に、ガタツキが全くないので患者の不安感をなくし、医療行為における不都合を全面的に解消させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る好ましい実施の形態に係る昇降アクチュエータ用の隙間調整装置を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態に係る隙間調整装置を構成する2つの部材を分離して示した一方の方向から見た斜視図である。
【図3】同実施の形態に係る隙間調整装置を構成する2つの部材を分離して示した他の方向から見た斜視図である。
【図4】同実施の形態に係る隙間調整装置における(A)図は側面図であり、(B)図は2つの部材を分離して示した側面図である。
【図5】同実施の形態に係る隙間調整装置を構成する2つの部材が係合する鋸歯状の凹凸部を拡大して示した要部のみの断面図である。
【図6】同隙間調整装置における2つの部材が係合した状態における鋸歯状の凹凸部を拡大して示した要部のみの断面図である。
【図7】図4(A)のD−D線に沿う拡大断面図である。
【図8】同隙間調整装置を適用した本発明の好ましい実施の形態に係る昇降アクチュエータの一部を切り欠いて示した斜視図である。
【図9】同昇降アクチュエータの伸長状態において一部を切り欠いて示した斜視図である。
【図10】同昇降アクチュエータに本発明の隙間調整装置を取り付ける状況を示した要部のみの拡大斜視図である。
【図11】同昇降アクチュエータに隙間調整装置を取り付ける状況の上面側を示した斜視図である。
【図12】同昇降アクチュエータに隙間調整装置を取り付けた状況を説明するために3つのコラムを分離して示した斜視図である。
【図13】同昇降アクチュエータに隙間調整装置を取り付けて伸長状態における隙間調整装置の位置関係を理解するために透過状態で示した説明図である。
【図14】同昇降アクチュエータを装備した医療台を略示的に示した斜視図である。
【図15】同昇降アクチュエータを装備した医療台を略示的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。図1〜6において、好ましい形態の隙間調整装置1は、長方形の板状を呈する固定部材2と可動部材3とから構成されており、両者は面合わせ重ね合わせ状に内側面の係合部で合体した状態で使用される。固定部材2は、上端側に内側へ張り出した張出部4が一体に形成され、該張出部4の略中央部に可動部材3を棒状部材で押して摺動させるための孔または切欠部5が設けられている。また、両側面には、可動部材3を抱えて合体を維持するための壁部6が内側に突出させて一体に形成され、該壁部6は、等間隔に複数の切り込み7を入れて複数に分割され、該分割された壁部6の一つ置きの壁部の先端部に内側への凸部8が形成されている。
【0023】
この場合の壁部6の分割については、図示の実施例では、4本の切り込み7を入れて5つの壁部6に分割し、その内の上下両端の壁部と中央の壁部とに凸部8を形成するのである。このように壁部6を複数に分割することによって、分割された壁部はそれぞれが弾性を発揮できるのであり、特に、凸部8を形成した壁部6は、可動部材3を着脱させるため、および摺動可能に抱えて合体状態を維持させる上で、ある程度の弾性が必要なのである。但し、分割した全部の壁部6に凸部8を形成する必要はないのである。
【0024】
また、固定部材2の内側面は、上端側が薄く下端側が徐々に厚くなるように厚みを変えて形成すると共に、その内側面の係合部は全体に断面鋸歯状の凹凸部9が均等に連続的に形成され、背面側には摩擦を軽減させるための複数の溝部10が上下方向に設けられている。
【0025】
可動部材3は、前記固定部材2の壁部6の内側に嵌り込む大きさであって、両側面に壁部11が内側に突出させて一体に形成され、該壁部11の基部側の外側は上下方向に沿ってテーパー面12に形成されている。また、可動部材3の内側面の係合部は、前記固定部材2の内側面とは逆に、上端側が厚く下端側が徐々に薄くなるように厚みを変えて形成すると共に、その内側面全体に断面鋸歯状の凹凸部13が均等に連続的に形成され、下端側に内側へ張り出した張出部14が一体に形成され、さらに、背面側には摩擦を軽減させるための複数の溝部15が上下方向に設けられている。
【0026】
隙間調整装置1においては、図4(A)に示したように、固定部材2と可動部材3とを合体させた時の全体の厚みaが略5.5mmで、固定部材2と可動部材3の本体部の厚みbが略1.5mmで、両者の内側面は傾斜させて形成してあるので、その傾斜部分の最大厚みc(固定部材2は下端部側、可動部材3は上端部側)は本体部の厚みbも含めて略4mmに形成してある。
【0027】
そして、固定部材2と可動部材3との内側面における係合部の構成については、図5に示したように、内側面の傾斜角度θ1を略3°に形成し、傾斜部分の最小厚みd(固定部材2は上端部側、可動部材3は下端部側)は本体部の厚みbも含めて略2mmに形成し、固定部材2と可動部材3とに形成された鋸歯状の凹凸部9、13については、その凹凸部の山と谷との高低差eが略0.1mmで、傾斜角度θ2を略69°にし、傾斜の稜線の長さfを略0.3mmに形成して、凹凸部の山を全体的に一方向に傾斜させたので、その傾斜方向への摺動移動を容易にしてある。
【0028】
このように、固定部材2と可動部材3との内側面を同じ形状、即ち、傾斜した内面の厚みの小さい方から大きい方に向かって全体的に傾斜した鋸歯状の凹凸部9、13を形成することで、両凹凸部9、13を噛み合わせて固定部材2と可動部材3とを合体させた状態において、図6に示したように、可動部材3は、固定部材2に対して下端側の方向にしか移動させることができないのであり、一旦移動させると逆方向には戻せないのである。
【0029】
また、図7に示したように、前記隙間調整装置1の固定部材2と可動部材3とを合体させた時に、固定部材2の壁部6に設けた凸部8が可動部材3の壁部11に設けたテーパー面12に当接して合体状態が維持されると共に、固定部材2に対して可動部材3が一方向にスライド可能になっているのである。
【0030】
このように構成された隙間調整装置1が適用できる伸縮部材として、代表的な昇降アクチュエータ20を図8〜図13に示してある。この昇降アクチュエータ20は、任意の高さにスライドさせて設定できる、例えば、3個のアルミダイカスト製の角筒体(コラム)で構成されたものであり、基部コラム21に中間部コラム22をスライド自在に嵌合させて納め、該中間部コラム22に上部コラム23をスライド自在に嵌合させて納めたものである。
【0031】
隙間調整装置1は、同径状に嵌合して納めた3個のコラムにおいて、全体的にガタツキが生じないように上下端の四隅近傍に取り付けてコラム間の隙間を調整するのである。例えば、基礎コラム21においては、図10と図11に示したように、上端部の内側で四隅近傍の両側の各辺にそれぞれ隙間調整装置1を取り付けるのである。この取り付けにおいては、隙間調整装置1は最小の厚みにして使用するのであり、基礎コラム21と中間コラム22との間に差し込み、張出部4を基礎コラム21の上端部に引っ掛けて装着状態を維持し、隙間調整が終了した時点で、例えば、ビス等の適宜の固定手段24により隙間調整装置1の上端部の隅部を押さえ込むようにして固定するのである。従って、基礎コラム21には、四隅近傍にそれぞれ2個づつ取り付けられるのであるから、全部で8個の隙間調整装置1が取り付けられることになる。
【0032】
そして、装着した全ての隙間調整装置1は、張出部4に設けた孔または切欠部5に、例えば、ドライバーなどの棒状の治具を差し込み、可動部材3を少しづつ押し下げて隙間調整装置1の厚みを増やすことによって、基礎コラム21と中間コラム22との間に差し込んだ隙間調整装置1が両者間の隙間を限りなく埋めてガタツキが生じないようになるのである。
【0033】
前記と同様にして中間コラム22と上部コラム23との間においても、隙間調整装置1を中間コラム22の上端部の内側で四隅近傍の両側の各辺にそれぞれ取り付け、隙間調整をしてから同様に固定手段24で固定するのである。このようにして、各コラムの上端側においては隙間調整ができるが、下端側においてもガタツキを生ずる隙間があるのであるから、下端側においても隙間調整のために隙間調整装置1が取り付けられる。
【0034】
下端側に隙間調整装置1を取り付ける場合には、スライド摺動に支障を来たさないようにしなければならないので、中間コラム22と上部コラム23との各下端側の外側で四隅近傍の両側の各辺にそれぞれ取り付けるのである。
【0035】
この取り付けにおいては、隙間調整装置1の方向と向きは、前記上部側の取り付けとは逆になるのである。即ち、昇降アクチュエータ20の天地を逆にしてセットし、基部コラム21と中間コラム22との間に差し込まれる隙間調整装置1の張出部4を中間コラム22側に向け、中間コラム22と上部コラム23との間に差し込まれる隙間調整装置1の張出部4は上部コラム23側に向けてそれぞれ差し込み、前記同様に隙間調整を行った後に、隙間調整装置1は、それぞれ中間コラム22と上部コラム23とに固定されるのである。
【0036】
このように中間コラム22と上部コラム23とには、図12に示したように、コラム下端の外側の四隅近傍に隙間調整装置1が取り付けられるのであり、結果として、基部コラム21には上端部の内側に、中間コラム22には上端部の内側と下端部の外側に、上部コラム23には下端部の外側にそれぞれ隙間調整装置1が取り付けられるのであり、全体としてガタツキの全く生じない昇降アクチュエータ20が得られるのである。
【0037】
そして、昇降アクチュエータ20としては、各コラム21、22、23の内側と外側とにそれぞれ取り付けられた隙間調整装置1は、図13に示したように、上下と内外との差はあるけれども、位置的には略同じであるが、伸びた時でも縮んだ時でも隙間調整装置1はぶつからないようにしてある。例えば、コラムの内部に複数のリミットスイッチが設けてある。その1つとして、昇降アクチュエータ20の内部に組み込んだモータを含む駆動機構(図示せず)により最初に上部コラム23が上昇し、設定された上昇位置にくると上部コラム23の上昇をストップさせると共に中間コラム22の上昇を連続させて行うリミットスイッチと、該中間コラム22が設定された上昇位置にくると該中間コラム22の上昇をストップさせるリミットスイッチが設けてあり、これらスイッチは連動しているので上昇動作が一定の速度で連続的に行われるのであり、メインスイッチをオフにした時点の位置でソフトに停止するのである。また、逆に下降させる場合でも同様に連動して一定の速度で下降動作が連続して行われるのである。要するに、複数のスイッチを装備して上昇と下降との動作を制御できればよいのである。なお、昇降アクチュエータ20は所要の機器またはベッド等への取り付けのために、各コラム21には底板25が、上部コラム23には天板26が取り付けられることは当然のことである。
【0038】
各コラム21〜23は、軽量で堅固なアルミニウムを材料としてダイカストで造られるのであり、離型時及び冷却時に一部に変形が生じたり、または収縮度合いが違ったりして寸法誤差が生ずることが多いのであるが、前記した隙間調整装置1を適用することで、極めて簡単に隙間調整ができるのであるから、アルミニウム製のコラム(角筒体)を昇降アクチュエータ20として使用し、該昇降アクチュエータ20を医療台用に適用すれば、種々の医療行為が安心して行えるのである。
【0039】
前記昇降アクチュエータ20を装備した一例の医療台30を図14〜15に示してある。
この医療台は、例えば、分娩用のベッドであって、基本的には上部シャーシ31と下部シャーシ32とからなるものであり、上部シャーシ31には背当部33、座部34、一対の支脚部35、補助台36等が取り付けられ、背当部33はリクライニングできるように取り付けられ、支脚部35も位置変更ができるように取り付けられ、その他に背当部33の両側に手摺37等が設けられている。また、下部シャーシ32には移動のための複数のキャスター38が取り付けられている。なお、これらの構成部分は、従来のものが適用できる。
【0040】
そこで、本願発明の昇降アクチュエータ20を、上部シャーシ31と下部シャーシ32との連結または取り付けのために適用するものであり、前側と後側との2箇所に配設装備したものである。そして、昇降アクチュエータ20を操作するペダル型スイッチ39が配設されている。
【0041】
このように昇降アクチュエータ20を医療台に取り付けることによって、上部シャーシ31が安定した状態で昇降されると共に、ガタツキが全く生じないので患者の不安感がなくなると共に、前後の昇降アクチュエータ20を個別に制御することで上部シャーシ31を水平または傾斜状態にすることができ、医療行為を行う上で種々の不都合を全面的に解消できるのである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る隙間調整装置は、固定部材と可動部材とが鋸歯状の凹凸部を形成した内側面の係合部で一方向に摺動可能に合体されているため、スライドまたは摺動部材の動的な隙間調整として広く使用できるのである。また、前記隙間調整装置は、特に、安定感が要求されるコラム(角筒体)を使用した昇降アクチュエータの隙間調整に適しているのであり、該昇降アクチュエータは種々の医療行為が行われる医療台に適用することで、ガタツキが全く生じないので患者に不安を与えないし、医療行為上の種々の事故または不都合を解消できるのであり、その分野で広く利用できるのである。
【符号の説明】
【0043】
1 隙間調整装置
2 固定部材
3 可動部材
4、14 張出部
5 孔または切欠部
6、11 壁部
7 切り込み
8 凸部
9、13 鋸歯状の凹凸部
10、15 溝部
12 テーパー面
20 昇降アクチュエータ
21 基部コラム
22 中間コラム
23 上部コラム
24 固定手段
25 底板
26 天板
30 医療台
31 上部シャーシ
32 下部シャーシ
33 背当部
34 座部
35 支脚部
36 補助台
37 手摺
38 キャスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の板状を呈する固定部材と可動部材とを面合わせ状態に係合部を介して合体させてなり、
該面合わせする面は双方が所定の角度を持って傾斜した状態に形成され、
該傾斜した双方の内側面に形成した係合部は一方向に摺動可能な鋸歯状の凹凸部であり、
前記固定部材の一方の端部に固定用の張出部を設けると共に両側面に先端部に凸部を有する壁部を設け、
前記可動部材の両側面に基部側にテーパー面を有する壁部を形成し、
前記固定部材の壁部の内側に前記可動部材を装着し前記テーパー面に前記先端部の凸部が当接して合体状態を維持する構成にしたこと
を特徴とする隙間調整装置。
【請求項2】
前記固定部材の張出部に前記可動部材を冶具で押して摺動させるための孔または切欠部を設けたこと
を特徴とする請求項1に記載の隙間調整装置。
【請求項3】
前記固定部材の壁部は、複数に分割されていること
を特徴とする請求項1に記載の隙間調整装置。
【請求項4】
径が異なる複数個のコラムを同径状に順次収容して伸縮できるようにした昇降アクチュエータであって、
該収容したコラム間に前記請求項1に記載の隙間調整装置を介在させて隙間を調整して相互間のガタツキを無くした構成にしたこと
を特徴とする昇降アクチュエータ。
【請求項5】
前記コラムはアルミダイカスト製であること
を特徴とする請求項4に記載の昇降アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−90674(P2012−90674A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238576(P2010−238576)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(390022541)アトムメディカル株式会社 (38)
【Fターム(参考)】