説明

隣接足場板間の離間規制用具

【課題】簡単な構成によって、隣接する足場板同士の離間を的確に規制することができ、しかもその足場板側への装着や取外しのための操作が簡便であり、さらに用具同士の絡み付きが防止され保管上の取扱いも簡便で、携帯上の利便性もよい、使い勝手のきわめて良好な足場板間の離間規制用具を提供する。
【解決手段】隣接足場板間の離間規制用具を中間辺部3とその両端部に折曲げ形成された側辺部4,5とによって略コ字状に形成された弾性変形可能な棒状部材2から構成し、各側辺部4,5のそれぞれの端部にはリング状部6,7を折曲げ形成して、それらのリング状部6,7相互間の最小間隔Laを各側辺部4,5相互間の間隔Lbより小さく設定するとともに、各リング状部6,7のそれぞれの端部と前記棒状部材2との間の間隙Sをその棒状部材2が通過できない寸法に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠組足場における隣接する足場板同士の離間を規制するための隣接足場板間の離間規制用具に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場などで作業用に使用される枠組足場に関しては、門型補剛式や、方杖型補剛式、あるいは逆U字型補剛式などを採用した建て枠間に足場板を掛渡すことにより作業用の床板を形成する従来技術が広く知られている。また、その場合に、複数の足場板を平行に並べて掛渡すことにより、所定幅の床板を形成することも広く知られている。ところで、複数の足場板を平行に並べて掛渡す形態の場合には、隣接する足場板間が離間して隙間が大きくなると、その隙間からものが落下したり、作業者の歩行の安全性を害するといった問題があった。このため、隣接する足場板の端部に設けられた建て枠の横架材に掛止するためのフック部同士を番線等で結束したり、隣接する足場板の布枠間に金具を渡してボルトなどにより足場板間の離間量を規制する従来技術が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−120021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来技術に伴う、隣接する足場板の掛止用のフック部同士を番線等を用いて結束する結束作業は面倒であり、その作業性には大きな問題があった。さらに、枠組足場を解体する場合に番線等を解く作業も面倒であり、その使用済みの番線の転用も困難であった。また、隣接する足場板の布枠間に金具を渡してボルトなどにより足場板間の離間量を規制する操作も面倒であり、その作業性には大きな問題があった。
【0004】
本発明は、以上のように従来技術に伴う技術的な問題点に鑑み、簡単な構成によって、隣接する足場板同士の離間を的確に規制することができ、しかもその足場板側への装着や取外しのための操作が簡便であり、さらに用具同士の絡み付きが防止され保管上の取扱いも簡便で、携帯上の利便性もよい、使い勝手のきわめて良好な足場板間の離間規制用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明では、足場板間の離間規制用具を中間辺部とその中間辺部の両端部に折曲げ形成された側辺部とによって略コ字状に形成された弾性変形可能な棒状部材からなり、前記各側辺部のそれぞれの端部にはリング状部を折曲げ形成し、それらのリング状部相互間の最小間隔を前記各側辺部相互間の間隔より小さく設定するとともに、前記各リング状部のそれぞれの端部と前記棒状部材との間の間隙をその棒状部材が通過できない寸法に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)本発明によれば、離間規制用具を略コ字状に形成された弾性変形可能な棒状部材から構成し、その各側辺部の端部にリング状部を折曲げ形成するという簡単な構成により、隣接する足場板に対して離間規制用具を装着したり取外したりする際には、前記リング状部によって各側辺部間の拡開動作がスムーズに誘導され、その用具の装着時や取外し時の操作がきわめて簡便であるとともに、隣接する足場板同士の離間を的確に規制することができる。
(2)各側辺部の端部にリング状部を形成したので、隣接する足場板に対して用具を装着する場合だけでなく、用具の取外し時にも前記リング状部によって各側辺部間の拡開動作がスムーズに誘導されることから、足場の解体時にもきわめて有効である。
(3)リング状部の端部と棒状部材との間の間隙をその棒状部材が通過できない寸法に設定したので、用具同士の絡み付きが防止されることから、用具の保管上の取扱いがきわめて容易である。
(4)リング状部がほぼ環状に形成されることから、他のものへ引っ掛かりが防止され、また用具の落下時における他部への損傷が軽減される。
(5)リング状部の内部に番線や紐などを挿通することにより多数の用具の携帯が可能であり、携帯上の利便性の向上にも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る隣接足場板間の離間規制用具は、建設現場などで使用される種々の形態の枠組足場に広く適用することができる。離間規制用具を構成する棒状部材は、隣接する足場板に対する着脱が可能で、かつそれらの足場板の離間を有効に規制し得る弾性を備えるものであれば、ピアノ線などの金属製のものでも、他の合成材製のものでもよい。因みに、離間規制用具を装着した状態において、足場板間に支障のない程度の多少の隙間が残存しても特段の問題はなく、それ以上の離間を規制し得るものであれば十分である。離間規制用具を構成する棒状部材の断面形状は、円形に限らず、角形や楕円形のものも可能である。また、その棒状体の形状は、中間辺部と両側辺部とによって略コ字状に形成されるものであればよく、それらの各辺部の具体的な寸法や、中間辺部に対する両側辺部の折曲げ角度などは、用具が装着される足場板側の状況に応じて適合し得るように適宜設定されることになる。さらに、両側辺部の端部に形成するリング状部の具体的な形状に関しても、ほぼ環状に形成されるものであれば、円形状の環状に限らず、後述の実施例のように楕円状や、足場板側と接触する部分をくの字状に部分的に屈曲したものでもよい。因みに、用具の取外し時の便のために、棒状体を構成する中間辺部の途中に山形状などのツマミ部を折曲げ形成することも可能である。
【実施例】
【0008】
図1は本発明の一実施例を示した正面図である。本実施例に係る隣接足場板間の離間規制用具1は、断面形状が円形からなる弾性変形可能な棒状部材2から構成した場合を例示したもので、図示のように中間辺部3とその中間辺部3の両端部に折曲げ形成された側辺部4,5とによって略コ字状に形成されている。また、前記各側辺部4,5のそれぞれの端部にはリング状部6,7を折曲げ形成し、それらのリング状部6,7相互間の最小間隔Laを側辺部4,5相互間の間隔Lbより小さく設定することにより、足場板側へ装着した離間規制用具1が簡単には離脱しないように構成している。さらに、各リング状部6,7のそれぞれの端部と棒状部材2との間の間隙Sをその棒状部材2が通過できない寸法に設定している。すなわち、本実施例に係る離間規制用具1のように、断面形状が円形からなる棒状部材2を採用した場合には、前記間隙Sは、棒状部材2の直径以下に設定されることになる。この結果、多数の離間規制用具1が混在する場合にも、リング状部6,7の内部へ他の離間規制用具1の棒状部材2が入り込んで絡み付く不具合は的確に解消される。なお、本実施例では、リング状部6,7を互いに内側から外側へ向けてほぼ環状に折曲げ形成する場合を示したが、逆に外側から内側へ向けて折曲げ形成することも可能である。そして、このようにリング状部6,7を外側から内側へ向けて折曲げ形成した場合には、棒状部材2との間の間隙Sが内側に位置することから、他の離間規制用具1との絡み付きや他部との引っ掛かりが更に効果的に防止されるとともに、リング状部6,7自体の弾性変形を離間規制用具1の足場板側への装着時や取外し時の弾性変形として活用することも可能である。
【0009】
図2は本発明の他の実施例を示した正面図である。本実施例に係る隣接足場板間の離間規制用具8は、前記離間規制用具1の変形例であり、足場板側の装着部の状況の変化に対応すべく、中間辺部9の長さ、すなわち側辺部10,11相互間の間隔Lcを拡大したもので、他の構成において異なるところはない。以上のように、本発明に係る離間規制用具は、足場板側の装着部の状況の変化に応じて各部の寸法が設定されることから、結果として全体としての略コ字状の具体的形状に変化が生じることはいうまでもない。
【0010】
図3は前記離間規制用具1,8が適用される枠組足場を例示した斜視図である。図中12,13は門型補剛式を採用した建て枠を示したもので、図示のようにそれらの建て枠12,13に設けた横架材14,15に対してフック部を掛止することによって、足場板16,17が平行に並べた状態に掛渡される。なお、図示は省略しているが、建て枠12,13には必要に応じてブレースなどの補剛材が付設され、また下部にはベースや敷板などが更に付設される。図4及び図5は足場板16,17の具体的形態を例示したもので、図4は平面図、図5はフック部の部分拡大正面図である。図示のように、本実施例に係る足場板16,17としては、布板a及び梁材bを備えた床板cから構成され、両側の梁材bに建て枠12,13の横架材14,15に掛止させるためのフック部dを設けた形態の場合を例示したが、他の形態の足場板にも適用し得ることはいうまでもない。また、本実施例では、フック部dを梁材bの端部に合わせて設置した場合を示したが、フック部dの設置位置は場合に応じて変更が可能である。例えば後述の図8のように、横架材14を跨いで両側に足場板を長手方向に並べて設置する形態において、両側の足場板のフック部dを交互に配置するように構成する場合には、それに合わせてフック部dの設置位置も変更されることになる。
【0011】
図6及び図7は前記離間規制用具1を足場板側に装着した状態を例示したもので、図6はその部分拡大平面図、図7は装着部の縦断面図である。図示のように、離間規制用具1は、隣接する足場板16,17のフック部16d,17dの根元側を跨ぐように上方から装着される。その離間規制用具1の装着の際には、リング状部6,7が足場板16,17のフック部16d,17dに当接した状態で離間規制用具1を押込むと、両側の側辺部4,5が弾性変形して間隔Laが拡大される。更に離間規制用具1を押込むと、リング状部6,7がフック部16d,17dを通過し、側辺部4,5が弾性に基づく復元力により間隔Laが縮小する方向に変形して図7に示した装着状態に至る。以上のように、離間規制用具1を単に押込むだけで、きわめて簡便かつ的確にフック部16d,17dを跨いだ状態に装着することができ、以後、隣接する足場板16,17間の離間が規制されることになる。因みに、枠組足場の解体時には、離間規制用具1を引抜くことにより、簡便に他の現場に転用することができる。
【0012】
図8及び図9は前記離間規制用具8を足場板側に装着した状態を例示したもので、図8はその部分拡大平面図、図9は装着部の縦断面図である。図示のように、本実施例では、横架材14,15の一方又は双方に対してそれらの横架材14,15を跨いで両側に足場板を長手方向に並べて設置する形態に離間規制用具8を適用した場合を例示した。図示のように、本実施例の場合には、例えば横架材14に対して、その一側に足場板16,17、他側に足場板18,19が、それらのフック部16d〜19dを交互に配置しながら掛止される。そして、それらのフック部16d,17d間、あるいはフック部18d,19d間に対して、それぞれ離間規制用具8が装着されることになる。この場合には、図9に示したように、離間規制用具8の両側の側辺部相互間には、足場板16,17側のフック部16d,17dと足場板18,19側のフック部18d,19dとが交互に計3個の配置されることになる。
【0013】
以上のように、本発明に係る離間規制用具の具体的形状や各寸法は、足場板側の装着部の具体的な状況に応じた設定のために変化することになる。その場合の重要な共通点は、中間辺部3と側辺部4,5とによって略コ字状に形成された弾性変形可能な棒状部材2からなり、各側辺部4,5のそれぞれの端部にはリング状部6,7を折曲げ形成し、それらのリング状部6,7相互間の最小間隔Laを各側辺部4,5相互間の間隔Lbより小さく設定するとともに、各リング状部6,7のそれぞれの端部と棒状部材2との間の間隙Sをその棒状部材2が通過できない寸法に設定することである。そして、本発明に係る離間規制用具は、その共通点に基づいて、簡単な構成に拘らず、離間規制用具の装着や取外し操作がきわめて簡便であるとともに、隣接する足場板同士の離間を的確に規制することができる。さらにまた、離間規制用具同士の絡み付きや、他のものへの引っ掛かりを防止したり、その離間規制用具の落下時における他部への損傷を軽減したり、リング状部の内部に番線や紐などを挿通することにより多数の離間規制用具の携帯が可能であるといった、種々の効果を奏する使い勝手のきわめて良好な隣接足場板間の離間規制用具を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示した正面図である。
【図2】本発明の他の実施例を示した正面図である。
【図3】本発明に係る離間規制用具が適用される枠組足場を例示した斜視図である。
【図4】足場板の具体的形態を例示した平面図である。
【図5】同足場板のフック部を示した部分拡大正面図である。
【図6】離間規制用具1を足場板側に装着した状態を例示した部分拡大平面図である。
【図7】同離間規制用具1の装着部を示した縦断面図である。
【図8】離間規制用具8を足場板側に装着した状態を例示した部分拡大平面図である。
【図9】同離間規制用具8の装着部を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1…離間規制用具、2…棒状部材、3…中間辺部、4,5…側辺部、6,7…リング状部、8…離間規制用具、9…中間辺部、10,11…側辺部、12,13…建て枠、14,15…横架材、16〜19…足場板、16d〜19d…フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間辺部とその中間辺部の両端部に折曲げ形成された側辺部とによって略コ字状に形成された弾性変形可能な棒状部材からなり、前記各側辺部のそれぞれの端部にはリング状部を折曲げ形成し、それらのリング状部相互間の最小間隔を前記各側辺部相互間の間隔より小さく設定するとともに、前記各リング状部のそれぞれの端部と前記棒状部材との間の間隙をその棒状部材が通過できない寸法に設定したことを特徴とする隣接足場板間の離間規制用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−133631(P2008−133631A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319381(P2006−319381)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)