説明

集じんフィルター

【課題】空気調和機で使用される集じんフィルターに対し、静電フィルターは使用と共にエレクトレット機能が低下し、集じん効率の著しい低下が起こる、一方ガラスフィルターは風量とフィルター容積の関係から、ろ材通過風速が大きくなると圧力損失が高くて装置に適合しないという課題があり、ろ材通過風速が大きい場合でも低圧力損失で集じん効率の低下が小さく長寿命を可能にする集じんフィルターが提供することを目的としている。
【解決手段】目付20〜40g/m2のガラスろ材2をプリーツ1形状に加工し、ホットメルトのビード6で形状を保持させた構成となり、ろ材通過風速に対する圧力損失を低くして、ろ材通過風速が大きい場合でも装置の性能に適合した圧力損失の低く長寿命な集じんフィルターが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の空気流路に設け、主として空気中の浮遊物質を捕集して除去する集じんフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の集じんフィルターの一例として、粒子除去効率と圧力損失とを同時に改良することの出来るメルトブロー不織布によるエレクトレットフィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その集じんフィルターについて説明する。
【0004】
メルトブロー不織布における短繊維の平均繊維径が0.8〜3μmであり、繊維の長手方向に部分的に並列的に融着してなる束状繊維が全繊維中に10〜30%含まれてなることを特徴とするエレクトレット繊維フィルターを構成する。
【特許文献1】特開平5−15717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の集じんフィルターは、ろ材通過風速が大きくても初期集じん効率は高く、初期圧力損失は低いものを可能にするが使用と共にエレクトレット機能が低下し、集じん効率の著しい低下により長期使用は難しいことがわかっている。また、集じん効率低下の小さいものとしてガラスフィルターが知られているが、一般に目付50g/m2以上で使用されており、風量とフィルター容積の関係から、ろ材通過風速が大きくなると装置性能に適合しないという課題があり、そのような場合でも、低圧力損失で長寿命を可能にする集じんフィルターが要求されている。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、目付20〜40g/m2のガラスろ材をプリーツ形状に加工することで、フィルター容積が小さくろ材通過風速が大きくなっても初期集じん効率は高く、初期圧力損失は低く、更に長寿命な集じんフィルターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の集じんフィルターは上記目的を達成するために、目付20〜40g/m2のガラスろ材をプリーツ形状に加工した構成としている。
【0008】
この手段により、ガラスろ材の低圧力損失化を可能にし、ろ材通過風速が大きくても圧力損失の低い集じんフィルターが得られる。
【0009】
また、他の手段は、プリーツにホットメルトのビードを設け、プリーツの形状を維持できる構成とする。
【0010】
この手段により、プリーツの山と山が直接触れることを防ぐことができ、圧力損失上昇を抑制し、プリーツ自体の形状を維持できる集じんフィルターが得られる。
【0011】
また、他の手段は、プリーツの少なくとも片面に不織布を設けプリーツ山形状の先端に当てて折り目を補強した構成とする。
【0012】
この手段により、ろ材に筋をつけた折り目部分が薄くなって集じん効率が低下するのを抑えることが可能となる。
【0013】
また、他の手段は、ガラスろ材には抗アレルゲン剤を塗布した構成とする。
【0014】
この手段により、ろ材に染み込んだ坑アレルゲン剤がろ材繊維を補強し、ろ材に筋をつける際の耐強度性を持たせることを可能にする。
【0015】
また、他の手段は、プリーツしたガラスろ材の山の頂点を鋭角にした構成とする。
【0016】
この手段により、山の頂点の空気抵抗を小さくすることでプリーツ全体の構造圧力損失を低減させることができる。
【0017】
また、他の手段は、プリーツのビードの断面形状を略円形とした構成とする。
【0018】
この手段により、ビードによる空気抵抗を小さくすることができ、プリーツ全体の構造圧力損失を低減させることができる。
【0019】
また、他の手段は、ビードは間欠塗布してプリーツの山部と谷部にビートが来ないようにした構成とする。
【0020】
この手段により、ビードによる空気抵抗を小さくすることができ、プリーツ全体の構造圧力損失を低減させることができると共に、ホットメルト量も低減が可能となる。
【0021】
また、他の手段は、プリーツの折方向と垂直方向の両端は太鼓形状とした構成とする。
【0022】
この手段により、フィルター挿入部にセットする際、フィルター挿入部の壁面と圧接させてリークを防止することを可能にする。
【0023】
また、他の手段は、2つの噛み合う歯車状のローラーの間にガラスろ材を通してプリーツ加工を行う集じんフィルターの製造方法において、ローラーの凹部分に弾性体を貼り付けた構成とする。
【0024】
この手段により、凹部の弾性体に筋付け刃が押し当てられる際に、クッションとなってろ材の破損あるいはろ材の厚みが薄くなりすぎることを防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、処理風量とフィルター容積の関係から、ろ材通過風速が大きくなっても初期圧力損失が低く、使用に伴う集じん効率低下の小さな、即ち長寿命な集じんフィルターが得られる。
【0026】
また、プリーツの山と山が直接触れることを防ぎ、圧力損失上昇を抑制しプリーツ自体の形状を維持できる集じんフィルターを提供できる。
【0027】
また、ろ材に筋をつけた折り目部分が薄くなって集じん効率が低下するのを抑えた集じんフィルターを提供できる。
【0028】
また、ろ材繊維を補強して、ろ材に筋をつける際の耐強度性を持たせた集じんフィルターを提供できる。
【0029】
また、プリーツ全体の構造圧力損失を低減させた集じんフィルターを提供できる。
【0030】
また、プリーツ全体の構造圧力損失を低減させると共にホットメルト量を低減した集じんフィルターを提供できる。
【0031】
また、フィルター挿入部にセットする際、挿入部の壁面と圧接させてリークを防止する集じんフィルターを提供できる。
【0032】
また、ろ材の破損あるいは厚みが薄くなりすぎることを防止できる集じんフィルターの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の請求項1記載の発明は、ガラス繊維とバインダーを配合して目付を20〜40g/m2にしたガラスろ材を指定の山高さの間隔で筋をつけて連続した山形状に折り加工してプリーツにすることで、処理風量とフィルター容積の関係から、ろ材通過風速が大きくなっても初期圧力損失が低く、使用に伴う集じん効率低下の小さな集じんフィルターが得られる。
【0034】
また、請求項2記載の発明は、プリーツの折方向と平行に表面と裏面それぞれ一定の間隔でホットメルトのビードを連続塗布または、間欠塗布して、ビード同士を接触させてプリーツの形状を維持した構成とすることで、プリーツの山と山が直接触れることを防ぎ、またプリーツの山が風を受けて変形することによる圧力損失の上昇を防ぐことができ、プリーツ自体の形状を維持できるという作用を有する。
【0035】
また、請求項3記載の発明は、プリーツの少なくとも片面に不織布を設けプリーツ山形状の先端に接触させる、あるいはバインダー等で貼り付けることにより、筋をつけたろ材の折り目部分をカバーして集じん効率低下を抑える効果を有する。
【0036】
また、請求項4記載の発明は、ガラスろ材にスプレーあるいは転写の方法で抗アレルゲン剤を添着することにより、ろ材に染み込んだ坑アレルゲン剤が、繊維をコーティングして補強し、ろ材に筋をつける際の耐強度性を持たせるという作用を有する。
【0037】
また、請求項5記載の発明は、プリーツしたガラスろ材の山の頂点を鋭角にすることで、山の頂点の空気抵抗を小さくでき、プリーツ全体の構造圧力損失を低減させる効果を有する。
【0038】
また、請求項6記載の発明は、プリーツのビードの断面形状を略円形としてビード同士の接触面積を小さくすることにより、ビードによる空気抵抗を低減させることができ、プリーツ全体の構造圧力損失を低減する効果を有する。
【0039】
また、請求項7記載の発明は、ビードは間欠塗布してプリーツの山部と谷部にビートがないようにすることにより、ビードによる空気抵抗を小さくすることができ、プリーツ全体の構造圧力損失を低減させ、ホットメルト量も低減させるという作用を有する。
【0040】
また、請求項8記載の発明は、プリーツの折方向と垂直方向の両端を太鼓形状にすることで、フィルター挿入部にセットする際、挿入部の壁面と圧接させてリークを防止するという作用を有する。
【0041】
また、請求項9記載の発明は、2つの噛み合う歯車状のローラーの間にガラスろ材を通してプリーツ加工を行う集じんフィルターの製造方法において、ローラーの凹部分に弾性体を貼り付けることにより、凹部の弾性体に筋付け刃が押し当てられる際に、クッションとなって、ろ材の破損あるいは厚みが薄くなりすぎることを防止するという作用を有する。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0043】
(実施の形態1)
図1〜図7に示すように、ガラス繊維とバインダーを配合したガラスろ材2は、目付を20〜40g/m2、厚みを0.1〜0.5mm、圧力損失を20〜65Pa(5.3cm/s)、透過率を8〜25%(0.3μm以上、5.3cm/s)とし、プリーツ加工は山高さ3を10〜50mm、山ピッチ4を2〜5mmで折り加工する。ビード6のホットメルトはオレフィン系を使用し、プリーツ1の折方向5と平行に表面と裏面それぞれ23〜52mmの間隔で連続塗布8または、間欠塗布9して、折加工状態でビード6同士を接触させる。また、プリーツ1の少なくとも片面に不織布7を設け、それはプリーツ1山形状の先端に接触させる、あるいはバインダー等で貼り付けて合わせた状態で使用する。また、ガラスろ材2に付加機能を持たせるために使用する抗アレルゲン剤をガラスろ材2の繊維自体にスプレーあるいは転写の方法で添着して繊維を補強する。また、プリーツ加工したガラスろ材2の山の頂点10を鋭角11にしたり、プリーツ1のビード6の断面形状を略円形12にしてビード6同士の接触面積を小さくしたり、ビード6を間欠塗布9してプリーツ1の山部13と谷部14にビード6が来ないようする。これらは集じんフィルター15の空気抵抗を低減するのによい。また、プリーツ1の折方向5と垂直方向の両端を太鼓形状16にふくらませる。このとき、プリーツ1の折方向5の端部17に枠材18を貼り付けると太鼓形状16を形成させやすい。これはビード6のホットメルトの弾力特性を利用したものである。また、プリーツ加工機において、ガラスろ材2に筋をつけるための2つの噛み合う歯車21、一方は筋付け刃22、もう一方は筋付け刃22を受ける凹部23を有するものであるが、ローラーの凹部23に弾性体24を貼り付けて筋付け刃22を受ける際にクッション性を持たせる。
【0044】
上記構成によって、処理風量とフィルター容積の関係から、ろ材通過風速が大きくなっても圧力損失の低い、集じん効率低下の小さな集じんフィルター15が得られ、制約のある中でも長寿命の集じんフィルター15を実現できる。特にプリーツ1の山高さ3が10〜20mmしかとれない集じんフィルター15に対しては、ろ材面積が少なく、ろ材通過風速も大きくなる傾向になるため、このようなガラスろ材2を使用するのは効果的である。また、プリーツ1の山と山のガラスろ材2同士が直接触れることを防いでプリーツ1自体の形状を維持できると共に、プリーツ1の山が風を受けて変形することによる圧力損失の上昇も防げる。また、低目付けなガラスろ材2であるため、ガラスろ材2の厚みが薄くなる場合もあり、その際、筋付けによって一層ガラスろ材2が薄くなることで折り目部分の集じん効率が低下するが、その部分に不織布7を当ててカバーすることで集じん効率低下を防ぐことができる。同様に繊維自体を坑アレルゲン剤でコーティングして、ガラスろ材2の耐強度性を持たせることができる。また、プリーツ1の山部13あるいはビード6部分で空気抵抗を小さくすることで、プリーツ1全体の構造圧力損失を低減させることができる。更に、ビード6のホットメルトは空気抵抗を減らすだけでなく、使用量が減ることから、コスト合理化にも効果がある。また、太鼓形状16にするとフィルター挿入部19に集じんフィルター15をセットする際、ビード6のホットメルトの弾力性によってプリーツ1の折方向5と垂直方向の両端とフィルター挿入部19の壁面20が圧接されて空気のリークを防げると同時にフィルター挿入部19から勝手に外れないようにできる。また、プリーツマシンのローラーの凹部23の弾性体24に筋付け刃22が押し当てられる際に、クッションとなってガラスろ材2の破損あるいは厚みが薄くなりすぎることを防止できる。
【0045】
なお、ガラスろ材2の圧力損失は20〜65Pa(5.3cm/s)、透過率を8〜25%(0.3μm以上、5.3cm/s)を適用範囲としているが、それ以外でも良いものとする。
【0046】
なお、山高さ3を10〜50mm、山ピッチ4を2〜5mmで折加工するとしているが、折加工ができるものに対してはそれ以外の寸法でも良いものとする。
【0047】
なお、ビード6のホットメルトはオレフィン系を使用するとしているが、ゴム系、EVA系、アクリル系でも適用する。また、23〜52mmの間隔で連続塗布8または、間欠塗布9してとしているが、折山の間隔を保持する役割を果たしているため、必要によっては23mm以下、52mm以上になる場合もある。
【0048】
なお、プリーツ1の少なくとも片面に不織布7を設けとしているが、集じん効率性能が問題ない場合は、不織布7を全く設けなくても良いものとする。また、不織布7としているがネットや、ポアの開いたシートでも適用できる。
【0049】
なお、ガラスろ材2に添着する抗アレルゲン剤は、抗菌、坑ウイルス、防カビの効果を持ったものでも良く、スプレーあるいは転写の方法で添着するとしているがディップ等別の方法でも同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0050】
また、プリーツ1のビード6の断面形状を略円形12にしてとしているが、円形でなくてもビード6同士が接触する面積が小さくなる形状にしたり、塗布量を少なくすることでも集じんフィルター15の構造圧損を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
空気清浄機などの空調機器に対し、処理風量とフィルター容積に制約があり、ろ材通過風速が大きくなる集じんフィルターに対して、初期集じん効率は高く、初期圧力損失は低く、更に長寿命なものが必要な場合に、目付20〜40g/m2のガラスろ材をプリーツ形状に加工するという構成を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態において、集じんフィルターのプリーツの概略図
【図2】同集じんフィルターのプリーツ断面の拡大図
【図3】同集じんフィルターのプリーツ山部の拡大図
【図4】同集じんフィルターのプリーツビード部の断面の拡大図
【図5】同集じんフィルターのプリーツ断面の拡大図
【図6】同集じんフィルターと挿入部の概略図
【図7】同集じんフィルターのプリーツ加工機のガラスろ材筋付けローラーの概略図
【符号の説明】
【0053】
1 プリーツ
2 ガラスろ材
3 山高さ
4 山ピッチ
5 折方向
6 ビード
7 不織布
8 連続塗布
9 間欠塗布
10 頂点
11 鋭角
12 略円形
13 山部
14 谷部
15 集じんフィルター
16 太鼓形状
17 端部
18 枠材
19 フィルター挿入部
20 壁面
21 歯車
22 筋付け刃
23 凹部
24 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付20〜40g/m2のガラスろ材をプリーツ形状に加工した集じんフィルター。
【請求項2】
プリーツはホットメルトのビードを設け、プリーツの形状を維持することを特徴とする請求項1または2記載の集じんフィルター。
【請求項3】
プリーツの少なくとも片面に不織布を設けプリーツ山形状の先端に当てて折り目を補強した請求項1記載の集じんフィルター。
【請求項4】
ガラスろ材には抗アレルゲン剤を塗布してろ材繊維を補強した請求項1記載の集じんフィルター。
【請求項5】
プリーツ加工したガラスろ材の山の頂点を鋭角にした請求項1記載の集じんフィルター。
【請求項6】
プリーツの前記ビードの断面形状が略円形であることを特徴とする請求項2記載の集じんフィルター。
【請求項7】
ビードは間欠塗布してプリーツの山部と谷部にビートが来ないようにして風の抵抗を小さくした請求項2または6記載の集じんフィルター。
【請求項8】
プリーツの折方向と垂直方向の両端は太鼓形状として、フィルター挿入部の壁面に圧接させてリークを防止した請求項1記載の集じんフィルター。
【請求項9】
2つの噛み合う歯車状のローラーの間にガラスろ材を通してプリーツ加工を行う集じんフィルターの製造方法であって、前記ローラーの凹部分に弾性体を貼り付けたことを特徴とする集じんフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−90263(P2009−90263A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266360(P2007−266360)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】