説明

集合住宅の排水設備の更新方法、及びその方法に使用される排水管継手

【課題】本発明は、排水設備の更新が大掛かりにならないことを目的とする。
【解決手段】本発明に係る集合住宅の排水設備の更新方法は、コンクリートスラブCの貫通孔CHに対してクリアランスを確保した状態で挿入できるように、外径寸法がクリアランス分だけ既存の排水立て管の外径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法がコンクリートスラブの厚み寸法よりも大きく設定されている直管状胴部24を備える排水管継手20を準備する工程と、既存の排水立て管をコンクリートスラブCの上側と下側とで切断し、その既存の排水立て管と既存の排水管継手とを撤去する工程と、コンクリートスラブCの貫通孔CH内に残された直管切断残部102zを貫通孔CHから引き抜く工程と、直管切断残部102zを引き抜いた後の貫通孔CHに対し、準備した排水管継手20の直管状胴部24を挿通させる工程と、排水管継手20に排水立て管を接続する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブの貫通孔に挿通されている既存の排水立て管と、上下の既存の排水立て管を同軸に接続するための既存の排水管継手とを備える集合住宅の排水設備の更新方法、及びその方法に使用される排水管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅における排水設備の一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の排水設備は、高層集合住宅の排水設備であり、高さ方向に延びる排水立て管102と、各住宅の排水を排水立て管102まで導く排水横枝管104と、上下の排水立て管102を接続するとともに、前記排水横枝管104を排水立て管102に接続する排水管継手120とを備えている。特許文献1の排水設備では、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCの上側に前記排水管継手120が設置されている。しかし、低層の古い集合住宅では、図13(A)に示すように、コンクリートスラブCの下側(天井部分)に排水管継手120が設置されるのが一般的である。このため、前記コンクリートスラブCの貫通孔CHには上階の排水立て管102が挿通されている。なお、前記貫通孔CHは、排水立て管102の挿通後、モルタル等で埋め戻されている。
【0003】
上記した排水設備を更新する場合には、コンクリートスラブCの上側と下側とで既存の排水立て管102を切断(K部参照)し、切断後の既存の排水立て管102と既存の排水管継手120とを撤去する(図13(B参照))。次に、図14に示す新たな排水管継手130の胴部131の外径寸法に合わせ、既存の貫通孔CHの位置に新たな大径の貫通孔CRを形成し、既存の貫通孔CHの周縁と、その既存の貫通孔CH内に残された既存の排水立て管102の直管切断残部102zを撤去する(図13(C)参照)。この状態で、図14に示すように、新たな排水管継手130を新たな大径の貫通孔CRにセットし、新たな排水立て管112及び排水横枝管114をその排水管継手130に接続する。なお、貫通孔CRは、排水管継手130の胴部131を通した後、モルタルMにより埋め戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−306472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した排水設備の更新方法では、コンクリートスラブCの既存の貫通孔CHの位置に新たな大径の貫通孔CRを形成する必要があるため、更新工事が大掛かりになるとともに、振動、騒音、粉塵が発生するとともに、開口時の泥水等の対策が必要である。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的課題は、排水設備の更新が大掛かりにならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブの貫通孔に挿通されている既存の排水立て管と、上下の既存の排水立て管を同軸に接続するための既存の排水管継手とを備える集合住宅の排水設備の更新方法であって、前記コンクリートスラブの貫通孔に対してクリアランスを確保した状態で挿入できるように、外径寸法が前記クリアランス分だけ前記既存の排水立て管の外径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法が前記コンクリートスラブの厚み寸法よりも大きく設定されている直管状胴部を備える排水管継手を準備する工程と、前記既存の排水立て管を前記コンクリートスラブの上側と下側とで切断し、その切断後の既存の排水立て管と前記既存の排水管継手とを撤去する撤去工程と、前記コンクリートスラブの貫通孔内に残された前記既存の排水立て管の直管切断残部を前記貫通孔から引き抜く引き抜き工程と、前記直管切断残部を引き抜いた後の前記貫通孔に対し、準備した前記排水管継手の直管状胴部を挿通させる継手セット工程と、 前記排水管継手に新たな排水立て管を接続する接続工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によると、既存の排水立て管の直管切断残部をコンクリートスラブの貫通孔から引き抜いた後、その貫通孔に新たな排水管継手の直管状胴部を挿入して設置することができる。即ち、従来のように、新たな排水管継手を設置するために既存の貫通孔の位置に大径の貫通孔を空け直す必要がないため、その分だけ更新作業工数を削減できるとともに、振動や騒音が小さく、粉塵や開口時の泥水の養生が不要となる。
【0009】
請求項2の発明によると、コンクリートスラブの貫通孔に対してクリアランスを確保した状態で挿入できるように、外径寸法が前記クリアランス分だけ前記既存の排水立て管の外径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法が前記貫通孔の長さ寸法よりも大きく設定されている直管状胴部を有しており、前記直管状胴部を備える胴部の上端部、あるいは前記直管状胴部の上端部に上階の排水立て管が挿入接続される上部受け口が形成されており、前記直管状胴部の下端部に下階の排水立て管の受け口に挿入接続される挿し口が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブの貫通孔に挿通されている既存の排水立て管と、上下の既存の排水立て管を同軸に接続するための既存の排水管継手とを備える集合住宅の排水設備の更新方法であって、外径寸法が前記既存の排水立て管の内径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法が前記コンクリートスラブの厚み寸法よりも大きく設定されている直管状胴部を備える排水管継手を準備する工程と、前記既存の排水立て管を前記コンクリートスラブの上側と下側とで切断する切断工程と、前記コンクリートスラブの貫通孔内に残された前記既存の排水立て管の直管切断残部に対し、準備した前記排水管継手の直管状胴部を挿通させる継手セット工程と、前記排水管継手に新たな排水立て管を接続する接続工程とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明によると、既存の排水立て管の直管切断残部をコンクリートスラブに残したまま、その直管切断残部内に排水管継手の直管状胴部を挿入して設置することができる。即ち、従来のように、新たな排水管継手を設置するために既存の貫通孔の位置に大径の貫通孔を空け直す必要がないため、その分だけ更新作業工数を削減できるとともに、振動や騒音が小さく、粉塵や開口時の泥水の養生が不要となる。
【0012】
請求項4の発明は、外径寸法がコンクリートスラブの貫通孔内に残された既存の排水立て管の内径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法が前記コンクリートスラブの厚み寸法よりも大きく設定されている直管状胴部を有しており、前記直管状胴部を備える胴部の上端部、あるいは前記直管状胴部の上端部に上階の排水立て管が挿入接続される上部受け口が形成されており、 前記直管状胴部の下端部に下階の排水立て管の受け口に挿入接続される挿し口が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来のように、既存の貫通孔の位置に新排水管継手を挿通させるための新たな大径の貫通孔を空け直す必要がないため、排水設備の更新が従来と比べて容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る集合住宅の排水設備の更新方法において使用される排水管継手の平面図(A図)、及び側面図(B図)である。
【図2】本発明の実施形態1に係る集合住宅の排水設備の更新方法を表す側面図(A図、B図)である。
【図3】更新後の集合住宅の排水設備を表す側面図である。
【図4】前記集合住宅の排水設備の更新方法において使用される排水立て管を表す平面図(A図)、縦断面図(B図)である。
【図5】変更例に係る排水管継手の平面図(A図)、及びその排水管継手をコンクリートスラブの貫通孔にセットした状態を表す縦断面図(B図)である。
【図6】変更例に係る排水管継手(A図)、及びその排水管継手をコンクリートスラブの貫通孔にセットした状態を表す縦断面図(B図)である。
【図7】変更例に係る排水管継手の平面図(A図)、及びその排水管継手をコンクリートスラブの貫通孔にセットした状態を表す縦断面図(B図)である。
【図8】変更例に係る排水管継手の平面図(A図)、及びその排水管継手をコンクリートスラブの貫通孔にセットした状態を表す縦断面図(B図)である。
【図9】変更例に係る排水管継手の平面図(A図)、及びその排水管継手をコンクリートスラブの貫通孔にセットした状態を表す縦断面図(B図)である。
【図10】本発明の実施形態2に係る集合住宅の排水設備の更新方法を表す側面図(A図〜D図)である。
【図11】変更例に係る集合住宅の排水設備の更新方法を表す側面図(A図〜C図)である。
【図12】変更例に係る集合住宅の排水設備の更新方法を表す側面図(A図、B図)である。
【図13】従来の排水設備の更新方法を表す側面図(A図、B図、C図)である。
【図14】従来の排水設備の更新後の排水設備を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、図1〜図9に基づいて本発明の実施形態1に係る集合住宅の排水設備の更新方法を説明する。
<排水管継手20について>
前記排水設備の更新方法を説明する前に、その更新方法において使用される排水管継手20と排水立て管10について説明する。
排水管継手20の胴部は、図1(A)(B)に示すように、上部に設けられた主胴部22と、その主胴部22の下側で同軸に形成された直管状胴部24を備えている。前記主胴部22は、上階の排水立て管10(図3参照)から流下する排水と上階の排水横枝管16(図3参照)によって導かれた排水とを合流させる部分であり、前記直管状胴部24よりも大径に形成されている。前記主胴部22には、その主胴部22の上部に排水立て管10が挿入接続される上部受け口22uが上向きに形成されており、その主胴部22の下部に排水横枝管16が挿入接続される横枝管受け口22yが横向きに突出形成されている。上部受け口22uには、その上部受け口22uと排水立て管10間を水密な状態でシールするシール材21が装着されている。同様に、横枝管受け口22yにも、その横枝管受け口22yと排水横枝管16間を水密な状態でシールするシール材(図示省略)が装着されている。
また、主胴部22の下部には、その主胴部22に流入した排水をスムーズに直管状胴部24まで導くためのテーパ状の縮径部22tが設けられている。
【0016】
排水管継手20の直管状胴部24は、図3に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCの貫通孔CHに挿通される部分であり、その先端側(下端側)が前記コンクリートスラブCの下側に突出するように、前記直管状胴部24の長さ寸法L1が前記コンクリートスラブCの厚み寸法Tよりも大きく設定されている。さらに、直管状胴部24の先端には、下階の排水立て管10の上部受け口14u(図3等参照)に挿入される下端挿し口25が設けられている。
本実施形態に係る排水管継手20は、呼び径100mm(外径寸法D0=114mm)の排水立て管10と呼び径65mmの排水横枝管16が接続される継手であり、前記直管状胴部24の外径寸法D1が110mm、下端挿し口25の外径寸法109mmに設定されている。なお、下端挿し口25の軸長寸法L2は80mmに設定されている。即ち、排水管継手20の直管状胴部24の外径寸法D1は排水立て管10の外径寸法D0よりも4mm程度小さく設定されている。
本実施形態に係る排水管継手20は鋳鉄製であり、下端挿し口25の部分が切削されて、表面が滑らかになるように仕上げられている。
【0017】
<排水立て管10について>
排水立て管10は、樹脂製の直管12と、その直管12の上部に接続される樹脂製のソケット14とから構成されている。ここで、樹脂製の直管12とソケット14との外周面は、例えば、耐火性の外管122,144によって覆われている。なお、外管122,144の代わりに耐火遮音カバー等を使用することも可能である。
前記ソケット14は、図4(A)(B)に示すように、排水管継手20の下端挿し口25が挿入される上部受け口14uと、直管12の一端(上端)が挿入される下部受け口14dとを備えており、両受け口14u,14dが同軸に形成されている。そして、上部受け口14uと下部受け口14dとの間に、挿入ストッパとして機能するリング状の内フランジ部14fが形成されている。また、上部受け口14uの開口近傍には、円周方向に延びる断面角形の溝14mがリング状に形成されており、その溝14mに上部受け口14uと排水管継手20の下端挿し口25との間をシールする環状のシール材15が嵌め込まれている。
排水立て管10を組み立てる場合には、図4(B)に示すように、ソケット14の下部受け口14dに対して直管12の端部を内フランジ部14fの位置まで挿入して接着剤により接着する。これにより、ソケット14と直管12とが一体化されて上部受け口14u付きの排水立て管10が構成される。
【0018】
<排水設備100の更新方法について>
次に、図13(A)に示す排水設備100を上記した排水管継手20及び排水立て管10を利用して更新する手順について説明する。
先ず、コンクリートスラブCの上側と下側とで既存の排水立て管102を切断(図13(A) K部参照)し、その切断した既存の排水立て管102と既存の排水管継手120とを撤去する。これにより、コンクリートスラブCの貫通孔CHの位置には、図2(A)に示すように、既存の排水立て管102の直管切断残部102zが残される。次に、直管切断残部102zの上端部をクランプ部材(図示省略)によりクランプし、前記クランプ部材を油圧ジャッキ等でジャッキアップすることにより、前記直管切断残部102zをコンクリートスラブCの貫通孔CHから引き抜くようにする。前述のように、呼び径100mmの既存の排水立て管102の外径寸法D0は114mmであるため、直管切断残部102zを引き抜いた後の貫通孔CHの内径寸法もD0=114mmにほぼ等しくなる。
次に、図2(B)に示すように、コンクリートスラブCの貫通孔CHに排水管継手20の直管状胴部24を挿入する。ここで、排水管継手20の直管状胴部24の外径寸法D1は、前述のように、D1=110mmに設定されて、既存の排水立て管102の外径寸法D0よりも4mm小さいため、排水管継手20の直管状胴部24とコンクリートスラブCの貫通孔CH間にはその直管状胴部24の挿入に必要なクリアランス(4mm)が確保される。このため、コンクリートスラブCの貫通孔CHに排水管継手20の直管状胴部24を容易に挿入できるようになる。そして、前記貫通孔CHに排水管継手20の直管状胴部24を挿入するときに、その排水管継手20の下端挿し口25を、図3に示すように、先に設置されている下階の排水立て管10の上部受け口14uに挿入接続する。
次に、上階の排水立て管10の直管12を排水管継手20の上部受け口22uに挿入接続し、上階の排水横枝管16を排水管継手20の横枝管受け口22yに挿入接続することで、排水設備100のその階の部分の更新が完了する。
【0019】
<本実施形態に係る排水設備の更新方法の長所について>
本実施形態に係る排水設備の更新方法によると、既存の排水立て管102の直管切断残部102zをコンクリートスラブCの貫通孔CHから引き抜いた後、その貫通孔CHに新たな排水管継手20の直管状胴部24を挿入するようにしている。即ち、従来のように、新たな排水管継手をセットするために既存の貫通孔CHの位置に大径の貫通孔を空け直す必要がないため、その分だけ更新作業工数を削減できるとともに、振動や騒音、粉塵等が発生することがない。したがって、排水設備の更新が従来と比べて容易になる。
【0020】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、上部受け口22u、下端挿し口25、及び横枝管受け口22yを備える排水管継手20の直管状胴部24の外径寸法を直管切断残部102zの引き抜き後の貫通孔CHに挿入可能な寸法に設定する例を示した。しかし、図5(A)(B)に示すように、上部受け口22uと下端挿し口25とを備え、横枝管受け口22yを有しない排水管継手30の直管状胴部24の外径寸法を前記貫通孔CHに挿入可能な寸法に設定することも可能である。このため、排水管継手30を利用して排水設備の更新を行うことが可能になる。
また、本実施形態では、鋳鉄製の排水管継手20を例示したが、図6(A)(B)に示すように、排水管継手20を樹脂製とし、その排水管継手20の露出部分を耐火遮音カバー35等で覆うようにすることも可能である。
また、本実施形態では、図1に示すように、呼び径100mmの排水立て管10と呼び径65mmの排水横枝管16が接続される排水管継手20を使用して排水設備を更新する例を示したが、図7(A)(B)に示すように、横枝管受け口22yに、例えば、65mm×50mmの異径ブッシュ40を装着することで、呼び径50mmの排水横枝管を接続することも可能である。さらに、図8(A)(B)に示すように、排水管継手20に横枝管受け口22y(65mm)を二方向に設け、いずれか一方の横枝管受け口22yに前記異径ブッシュ40を装着することも可能である。
【0021】
また、図9(A)(B)に示すように、排水管継手20を上胴部210と、直管状胴部24を備える下胴部220とから構成し、上胴部210に、例えば、80mmの横枝管受け口22yを設け、下胴部220に65mmの横枝管受け口22yを設けて、その下胴部220の横枝管受け口22yに前記異径ブッシュ40を装着することも可能である。
また、本実施形態では、呼び径100mmの排水管継手20、排水立て管10を使用して呼び径100mmの既存の排水管継手120、既存の排水立て管102等からなる排水設備を更新する例を示したが、排水管継手20、排水立て管10のサイズは呼び径100mmに限定されることはない。さらに、排水横枝管16のサイズ、排水管継手20の横枝管受け口22y及び異径ブッシュ40のサイズも適宜変更可能である。
また、既存の排水立て管102の直管切断残部102zを油圧ジャッキ等で引き抜く例を示したが、直管切断残部102zを木ハンマ等で軸方向に叩いて直管切断残部102zを引き抜くようにすることも可能である。
また、排水立て管10を直管12とソケット14とから構成する例を示したが、前記直管12の端部を拡開させて上部受け口14uを形成することも可能である。
【0022】
[実施形態2]
以下、図10〜図12に基づいて本発明の実施形態2に係る集合住宅の排水設備の更新方法を説明する。
実施形態1では、既存の排水立て管102の直管切断残部102zをコンクリートスラブCの貫通孔CHから引き抜いた後、排水設備の更新を行う例を示したが、本実施形態では直管切断残部102zをそのまま使用して排水設備の更新を行うようにしている。
即ち、本実施形態に係る排水設備の更新方法では、図10(A)(B)に示すように、既存の排水立て管102をコンクリートスラブCの上面ぎりぎりの位置で切断し(図10(A)点線参照)、さらにコンクリートスラブCの下側では天井面から若干離した位置で切断する。そして、切断した既存の排水立て管102と既存の排水管継手120とを撤去する。これにより、コンクリートスラブCの貫通孔CHの位置には、図10(B)に示すように、既存の排水立て管102の直管切断残部102zが残される。次に、直管切断残部102zの内側を洗浄した後、その直管切断残部102zに対して既存の排水立て管102よりもワンサイズ下の排水管継手20の直管状胴部24を挿入する(図10(C)参照)。
【0023】
ここで、既存の排水立て管102に、例えば、呼び径100mmの立て管が使用されている場合には、排水管継手20には、呼び径80mmの管継手が使用される。呼び径80mmの排水管継手20の直管状胴部24は、呼び径80mmの排水立て管102の外径寸法約90mmに設定されている。また、呼び径100mmの既存の排水立て管102の内径寸法は約105mmに設定されている。
このように、排水管継手20の直管状胴部24の外径寸法(呼び径80mm)は、既存の排水立て管102の内径寸法(呼び径100mm)よりも約15mm小さいため、コンクリートスラブCの貫通孔CH内に残された直管切断残部102zに対して排水管継手20の直管状胴部24をスムーズに挿入できるようになる。
そして、前記直管切断残部102zに対して排水管継手20の直管状胴部24を挿入するときに、その排水管継手20の下端挿し口25を、実施形態1の図3に示すように、先に設置されている下階の排水立て管10(呼び径80mm)の上部受け口14uに挿入接続する。
次に、上階の排水立て管10の直管12(呼び径80mm)を排水管継手20の上部受け口22uに挿入接続し、上階の排水横枝管16を排水管継手20の横枝管受け口22yに挿入接続することで、排水設備100のその階の更新が完了する。
ここで、直管切断残部102zと排水管継手20の直管状胴部24との隙間には、図10(D)に示すように、埋め戻しモルタルMが充填される。
【0024】
<変更例>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、既存の排水立て管102をコンクリートスラブCの上面ぎりぎりの位置で切断し、図10(D)に示すように、排水管継手20の横枝管受け口22yがコンクリートスラブCの上面にほぼ当接する位置まで直管状胴部24を直管切断残部102zに挿入する例を示した。しかし、図11(A)に示すように、直管状胴部24の長さ寸法をコンクリートスラブCの厚み寸法よりも十分大きく設定し、排水横枝管(図示省略)の高さ位置に合わせて排水管継手20の横枝管受け口22yをコンクリートスラブCの上方に配置することも可能である。
また、本実施形態では、図11(A)等に示すように、主胴部22と直管状胴部24とが一体の排水管継手20を例示した。しかし、直管状胴部24を長く形成する必要がある場合には、図11(B)に示すように、直管状胴部24を直管により構成し、その直管24の上部挿し口24uを排水管継手20の主胴部22の下端に形成された受け口接続部20fに挿入接続するような構成でも可能である。これにより、コンクリートスラブCの厚み寸法が様々な場合であっても、その対応が容易になる。
さらに、排水横枝管の接続を考慮しなくても良い場合には、図11(C)に示すように、上端部に受け口22u、下端部に下端挿し口25を備える直管状胴部24からなる排水管継手30を使用することも可能である。
また、本実施形態では、鋳鉄製の排水管継手20を例示したが、図12(A)(B)に示すように、排水管継手20を樹脂製とし、その排水管継手20の露出部分を耐火遮音カバー35等で覆うようにすることも可能である。ここで、図12(B)に示すように、排水管継手20を主胴部22と直管24とから構成し、主胴部22の下端受け口22dに直管24の上端挿し口24sを挿入し、接着により固定する構成でも可能である。
【符号の説明】
【0025】
10・・・・排水立て管
14u・・・上部受け口
20・・・・排水管継手
24・・・・直管状胴部
30・・・・排水管継手
102z・・直管切断残部
102・・・既存の排水立て管
120・・・既存の排水管継手
C・・・・・コンクリートスラブ
CH・・・・貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブの貫通孔に挿通されている既存の排水立て管と、上下の既存の排水立て管を同軸に接続するための既存の排水管継手とを備える集合住宅の排水設備の更新方法であって、
前記コンクリートスラブの貫通孔に対してクリアランスを確保した状態で挿入できるように、外径寸法が前記クリアランス分だけ前記既存の排水立て管の外径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法が前記コンクリートスラブの厚み寸法よりも大きく設定されている直管状胴部を備える排水管継手を準備する工程と、
前記既存の排水立て管を前記コンクリートスラブの上側と下側とで切断し、その切断後の既存の排水立て管と前記既存の排水管継手とを撤去する撤去工程と、
前記コンクリートスラブの貫通孔内に残された前記既存の排水立て管の直管切断残部を前記貫通孔から引き抜く引き抜き工程と、
前記直管切断残部を引き抜いた後の前記貫通孔に対し、準備した前記排水管継手の直管状胴部を挿通させる継手セット工程と、
前記排水管継手に新たな排水立て管を接続する接続工程と、
を有することを特徴とする集合住宅の排水設備の更新方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水設備の更新方法において使用される排水管継手であって、
前記コンクリートスラブの貫通孔に対してクリアランスを確保した状態で挿入できるように、外径寸法が前記クリアランス分だけ前記既存の排水立て管の外径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法が前記貫通孔の長さ寸法よりも大きく設定されている直管状胴部を有しており、
前記直管状胴部を備える胴部の上端部、あるいは前記直管状胴部の上端部に上階の排水立て管が挿入接続される上部受け口が形成されており、
前記直管状胴部の下端部に下階の排水立て管の受け口に挿入接続される挿し口が形成されていることを特徴とする排水管継手。
【請求項3】
集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブの貫通孔に挿通されている既存の排水立て管と、上下の既存の排水立て管を同軸に接続するための既存の排水管継手とを備える集合住宅の排水設備の更新方法であって、
外径寸法が前記既存の排水立て管の内径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法が前記コンクリートスラブの厚み寸法よりも大きく設定されている直管状胴部を備える排水管継手を準備する工程と、
前記既存の排水立て管を前記コンクリートスラブの上側と下側とで切断する切断工程と、
前記コンクリートスラブの貫通孔内に残された前記既存の排水立て管の直管切断残部に対し、準備した前記排水管継手の直管状胴部を挿通させる継手セット工程と、
前記排水管継手に新たな排水立て管を接続する接続工程と、
を有することを特徴とする集合住宅の排水設備の更新方法。
【請求項4】
請求項3に記載の排水設備の更新方法において使用される排水管継手であって、
外径寸法がコンクリートスラブの貫通孔内に残された既存の排水立て管の内径寸法よりも小さく設定されており、長さ寸法が前記コンクリートスラブの厚み寸法よりも大きく設定されている直管状胴部を有しており、
前記直管状胴部を備える胴部の上端部、あるいは前記直管状胴部の上端部に上階の排水立て管が挿入接続される上部受け口が形成されており、
前記直管状胴部の下端部に下階の排水立て管の受け口に挿入接続される挿し口が形成されていることを特徴とする排水管継手。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate