説明

集合住宅等のバルコニーに敷設する立体庭園

【課題】集合住宅のバルコニー等に、建築に負担をかけず高木も植栽可能で持続可能な立体庭園を敷設する。
【解決手段】集合住宅等のバルコニー(75)の先端部に縁(80)を設け、この縁(80)を一辺として他にも縁(80)を床(32)上に設けて縁(80)で囲まれた庭園スペース(81)を造り、前記縁(80)の内側または天端にアンカーボルト(82)を取り付け、前記庭園スペース(81)内にネット(83)を置き、ネットを床(32)より所定の間隔を空けて前記アンカーボルト(82)に取り付け、ネット(83)に植樹の根(36)を絡ませることにより植樹を支持する。庭園スペース(81)内に有孔給水管を埋設して(自動)潅水し、その排水をバルコニー(75)に設けられた竪樋(84)へ排水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等のバルコニーに敷設する立体庭園に関するものである。立体庭園の諸システムは、潅水、栄養、薬剤補給、泥の回収、日照、樹木の支持、管理及び立体庭園の形態によって構成される。ここでいう用土とは、通気性や排水性に優れ、しかも保水性に富むという培養面に適している赤玉土、鹿沼土、腐葉土、砂類、粒状軽石等の総称である。用土の粒の大きさも培養面、潅水面、管理面において大きな要素になる。潅水スペースとは、根にあまねく潅水し、余分な水は流れて排水口に至らしめるスペースである。従って、根が用土と共に給排水性のある容器に入っている場合潅水スペースは、容器回りの空隙でよく、根が容器に入らずに露出している場合潅水スペースは、根回りの用土がくずれないようにし、かつ水が根に潅水した後排水口へ流れるようにするために用土間に空隙が必要であり、所定の粒の大きさが望まれる。根回りにおける管理スペースとは、伸びすぎた根を切断または植え替えを容易にするためのスペースである。従って、根が用土と共に根が伸出できる容器に入っている場合管理スペースは、容器回りの空隙でよく、根が容器に入らずに露出している場合管理スペースは、根回りの用土がくずれないようにしかつ用土を容易に撤去、復旧できることが望まれる。潅水スペースと管理スペースは兼ねることができる。樹木の支持方法については、高木を植えるにしても用土による建築物への荷重負担を最小限にすること、建築躯体への水の浸入を防ぐことがポイントになる。立体庭園の形態については、都市景観に緑を生むヴァーチカルガーデンであること、高層階であっても居室から緑が見えることが望まれる。
【背景技術】
【0002】
従来建築物に敷設する立体庭園の形態と管理についての技術があった。(特許文献1参照)
【0003】
建造物に敷設する庭園の潅水を含む屋上緑化システムの技術があった。(特許文献2参照)
【0004】
屋上庭園の建築の防水と関係付けた施工方法の技術があった。(特許文献3、4参照)
【0005】
潅水設備を持った壁面緑化装置の技術があった。(特許文献5参照)
【0006】
屋上及び地上緑化システム用潅水制御装置の技術があった。(特許文献6参照)
【0007】
植物の倒伏防止装置及び自動潅水装置を備えた分割ユニット式庭園の技術があった。(特許文献7参照)
【0008】
構造物上の庭園に使用される植樹ポットの技術があった。(特許文献8参照)潅水装置を備えた組合せ式庭園の技術があった。(特許文献9参照)
【0009】
人口地盤上での樹木の支持方法の技術があった。(特許文献10参照)
【特許文献1】特公平7−113278
【特許文献2】特許第3699428号
【特許文献3】特開2002−84875
【特許文献4】特開2004−293031
【特許文献5】特許第2822290号
【特許文献6】特許第3992939号
【特許文献7】特開2004−49156
【特許文献8】特開2001−27550
【特許文献9】特開平6−98636
【特許文献10】特開平10−14419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
都市はますます高層化し、緑が少なくなってきている。高層ビル群の中では地上の緑だけでは十分ではない。ヒートアイランドの公害も発生している。二酸化炭素削減の課題もある。建築物に敷設した立体庭園(ヴァーチカルガーデン)が望まれる。
【0011】
建築物に敷設した人工庭園の場合、植樹に対して地植えの場合よりもはるかに潅水と、管理が必要である。潅水においては、複数階のバルコニー部、屋上部、吹き抜け部に敷設した立体庭園に対し、その乾きに応じた潅水が自動的に行われること、または、庭園の潅水状況がフイードバックされて適切な潅水になるよう調整されることである。潅水の時間は、何分でなければならないというほど厳格なものではなく、十分潅水して後、底に水を残さないことである。水を残すと根腐れの原因となる。また、潅水した後の余分な水は捨てられるのではなく、他の立体庭園へ導入されるかまたは貯留槽に蓄えられて再利用されること即ち潅水の循環が、省エネルギー面から望まれる。潅水の循環が、持続するためには、泥等の回収設備と管理が必要である。植樹の管理においては、根の発育のスペースが限られているので、約1年〜5年に一度ほど根を切断しなければならない。その期間は、樹木の種類と根の回りの発育スペースによって決まる。状況によって植え替えの必要性も出てくる。高層階の高木の植え替えを行うとなると建造物にクレーン等の設備を付設しておかなければならない。
【0012】
日本には古来より盆栽の技術がある。適度な潅水と肥料を継続し、一定の期間で植替え、伸び過ぎた根、下方へ伸びる根を切断し、剪定を行っておれば、鉢の大きさを変えることなく同じ鉢に何十年も生き続ける。良い管理を行えば樹格は向上する。
【0013】
建築物に庭園を敷設しても、十分な日照、潅水、管理がなければ植樹は枯れてしまって、かえって見苦しいスペースを見せることになる。潅水と管理を居住者等に全面的にゆだねてしまうのも個人差があって庭園を維持していく上で問題を残す。特に潅水は、用土の上から潅水しても土の上を流れるだけで下の根まで浸透していない場合が多い。植樹の管理を専門家にゆだねるには、専門家が、道具、用土、肥料、殺虫剤、植樹等を運搬できるように専用の動線が必要である。植樹管理の労力を最小限にし、樹木を健康に維持するために、自動潅水システム、自動栄養、薬剤補給システム及び泥の自動回収システム並びに自動日照システムが望まれる。
【0014】
立体庭園の樹木の支持方法においては、外観上の配慮から支柱を使わず、なおかつ用土の荷重を減らして建築物への荷重負担を減らすことが望まれる。また、高木を植栽する場合、強風に対して転倒しないようにするためには、高木を容器に入れて置くだけでなく建築躯体と連結して支持することが必要となる。その場合建築物への防水性を図りながらどのように高木を建築躯体で支持するのかが課題になる。これについては、別途出願をする。
【0015】
住宅も高層化し、暮しから自然が遠ざかってきている。各住戸に庭園が望まれる。現在の高層住宅の階高では中高木を植えた庭園を造るには低過ぎる。そのために階高を高くするのも不経済である。また、都市環境、景観上、都市に緑を生むヴァーチカルガーデンが望まれる。
以上の如く、複層建築物に持続可能な立体庭園を敷設するには、適切な潅水、栄養、薬剤の補給、泥の回収、日照、樹木の支持方法、管理及び形態の要件が必要である。これらの要件は、相互に関連しており一つが欠けても持続的な立体庭園は成立しない。従ってこれらの要件を分離せずに統合された立体庭園のためのシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
集合住宅等の複層建築物のバルコニーの先端部に縁を設け、この縁を一辺として他にも縁を床上に設けて縁で囲まれた庭園スペースを造り、前記縁の内側または天端にアンカーボルトを取り付け、前記庭園スペース内にネットを置き、前記ネットを床より所定の間隔を空けて前記アンカーボルトに取り付け、ネットに植樹の根を絡ませることにより植樹を支持することを特徴とする立体庭園である。
【発明の効果】
【0017】
バルコニーに取り付けたネットに植樹の根を絡ませることにより植樹を支持するので、高木を植えても少量の用土で済み、建築に荷重の負担がかからない。庭園スペース内に有孔給水管を入れ、自動潅水することによって、持続可能な庭園を敷設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1の(1)は、立体庭園実施例の断面図である。図1の(2)は、その平面図である。集合住宅等のバルコニー(75)の先端部に縁(80)を設け、この縁(80)を一辺として他にも縁(80)を床(32)上に設けて縁(80)で囲まれた庭園スペース(81)を造り、前記縁(80)の内側または天端にアンカーボルト(82)を取り付け、前記庭園スペース(81)内にネット(83)を置き、ネット(83)を床(32)より所定の間隔を空けて前記アンカーボルト(82)に取り付け、ネット(83)に植樹の根(36)を絡ませることにより植樹を支持する。庭園への潅水の排水をバルコニー(75)に設けられた竪樋(84)へ排水する。
【0019】
前記庭園スペース内(81)の水上に有孔給水管(83)を埋め、前記有孔給水管(28)に給水することによって庭園スペース(81)内に潅水し、その排水を竪樋(84)へ流し、竪樋(84)の排水を貯留槽へ流し、貯留槽の水を揚水して給水槽へ給水し、給水槽より庭園スペース内へ給水することによって潅水を循環させる。
【0020】
バルコニーに設けられた非難梯子を管理のための縦動線とすることもできる。
【0021】
前記アンカーボルト(82)を前記縁(80)の内側とし、アンカーボルト(82)を内側下へ向けて勾配を取り、アンカーボルトと前記縁(80)との接点を庭園スペース(81)内用土(16)の上面より高くしてアンカーボルト(82)周りから建築躯体(64)への水の浸入を防ぐ。
【0022】
前記縁(80)と床(32)の替りに水盤状の容器を用い、ネット(83)を前記容器内に取り付ける。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(1)は、立体庭園実施例の断面図。(2)は、(1)の平面図。
【符号の説明】
【0024】
16 用土
20 潅水スペース
28 有孔給水管
32 床(スラブ)
36 根
40 管理スペース
75 バルコニー
80 縁
81 庭園スペース
82 アンカーボルト
83 ネット
84 竪樋
85 隔板
86 手摺
87 排水溝
88 排水溝点検蓋
89、91 用土止ネット
90 ドレン
120 給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅等の複層建築物のバルコニーの先端部に縁を設け、この縁を一辺として他にも縁を床上に設けて縁で囲まれた庭園スペースを造り、前記縁の内側または天端にアンカーボルトを取り付け、前記庭園スペース内にネットを置き、前記ネットを床より所定の間隔を空けて前記アンカーボルトに取り付け、ネットに植樹の根を絡ませることにより植樹を支持することを特徴とする立体庭園。
【請求項2】
前記庭園スペース内の水上に有孔給水管を埋め、前記有孔給水管に給水することによって庭園スペース内に潅水し、その排水を竪樋へ流すことを特徴とする請求項1記載の立体庭園。
【請求項3】
前記竪樋の排水を貯留槽へ流し、貯留槽の水を揚水して給水槽へ給水し、給水槽より前記庭園スペース内へ給水することによって潅水を循環させることを特徴とする請求項2記載の立体庭園。
【請求項4】
前記アンカーボルトを前記縁の内側に取り付け下へ向けて勾配を取り、アンカーボルトと前記縁との接点を庭園スペース内用土の上面より高くして、アンカーボルト周りから建築躯体へ水の浸入を防ぐことを特徴とする請求項1〜3までのいずれか一つに記載の立体庭園。
【請求項5】
前記縁と床の替りに水盤状の容器を用い、前記容器内に前記ネットを取り付けることを特徴とする請求項1〜3までのいずれか一つに記載の立体庭園。














【図1】
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【公開番号】特開2010−99059(P2010−99059A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170066(P2009−170066)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【分割の表示】特願2008−275720(P2008−275720)の分割
【原出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(301041450)株式会社小笠原設計 (21)
【Fターム(参考)】