説明

集合住宅等の給電システム

【課題】 戸別の入居者が自らバルコニー等に設置した太陽電池アレイが発生する電力を、各戸の複数の電力負荷に過不足なく、また融通し合いながら安価かつ効率的に分配供給可能にする。
【解決手段】 戸別のバルコニー11上に太陽光を受けて直流電力を発生する太陽電池アレイ11を設置し、この直流電力をインバータ13により交流電力に変換し、このインバータ13が出力する交流電力を戸別ごとの分電盤38によって複数の電力負荷に分配供給し、一方、太陽電池アレイまたはリチュームイオン電池が発生する直流電力と電力負荷で消費される電力との大きさを電力比較器で比較し、この比較結果に応じて、電力切替器が前記直流電力をインバータを介して電力負荷または低圧系統へ供給し、あるいは低圧系統から電力負荷またはリチュームイオン電池に供給する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションなどの集合住宅や複数の企業が入居するビルディング等(以下、集合住宅等という)において、戸別のバルコニーに設置された太陽電池アレイ(太陽電池パネル)から得た電力を、戸別ごとの複数の電力負荷に分配供給する集合住宅等の給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日では、地球環境対策の一環として、太陽電池アレイを利用して太陽エネルギを直流電力に変換し、この直流電力をインバータで交流電力に変換して、家庭の低圧系統に接続された電力負荷に供給可能にする太陽光発電システムが、広く実用されるに至っている。(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この太陽光発電システムでは、太陽電池アレイが住宅の屋根やビルディングの屋上に設置され、太陽光の照射方向に向けるようにして設置される。太陽電池アレイは、複数個の太陽電池モジュールを平面配置状態にて一体化したものである。これらの太陽電池モジュールは直列に接続してストリングとされ、太陽電池アレイの配置枚数に応じてこのストリングを一列にしたり、二列以上にしたりしてサイズや容量などが設定される。
【0004】
また、太陽電池アレイが発電した電力を取り出すための電力ケーブルは、そのストリングの数に応じて設けられ、その発生した電力を電力ケーブルおよび接続箱を介してインバータに送出される。インバータでは、電力ケーブルを介して太陽電池アレイから供給される直流電力を受け、この直流電力を例えば110ボルトに昇圧された商用周波数の交流電力に変換する。
【0005】
この交流電力は、低圧系統に接続された照明灯、冷蔵庫、パソコン、事務機器等の電力負荷に供給される。このような太陽光発電システムは、前述のように住宅の屋根やビルディングの屋上に設置され、商用電源(低圧系統)の電力需要の高い期間などに不足する電力を補う場合等には特に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−045950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる従来の太陽光発電装置は、一戸建ての住宅やビルディングの屋上に設置された太陽電池アレイを中心として構成され、その設備や規模が比較的大掛かりとなっている。特に、集合住宅やビルディングの屋上に太陽電池アレイを設置する太陽光発電装置はその集合住宅やビルディングの管理者によって管理され、その太陽電池アレイが発生する電力をインバータによって交流変換し、その交流電力を全戸に配電するように用いられるため、太陽電池やインバータ等の容量、設備が大掛かりとなり、その設備の維持管理コストや戸別ごとの電力利用料金の負担率が高いものとなっていた。
【0008】
一方、今日では、太陽電池アレイの電力変換効率の向上および大量生産によるコストの大幅な値下げによって、集合住宅等の入居者の中には、太陽電池アレイ等を戸別ごとにつまり独自に設置することにより、各戸で必要とする容量の電力を得て、この電力で消費電力の全部または一部をまかない、商用電力の使用量(電力会社からの買電量)を低減したいという機運が高まりつつある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、集合住宅やビルディングの戸別の入居者がバルコニーに自ら設置した太陽電池アレイが発生する電力を、複数の電力負荷に安価かつ効率的に分配供給することができる集合住宅等の給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る集合住宅等の給電システムは、集合住宅等の戸別のバルコニーに設置され、このバルコニー上で太陽光を受けて直流電力を発生する太陽電池アレイと、該太陽電池アレイが発生する直流電力を充電するリチュームイオン電池と、前記太陽電池アレイが発生する直流電力または前記リチュームイオン電池が放電する直流電力を交流電力に変換するインバータと、該インバータが出力する交流電力を前記戸別ごとの複数の電力負荷に分配供給する分電盤と、太陽電池アレイまたはリチュームイオン電池が発生する直流電力と電力負荷で消費される電力との大きさを比較する電力比較器と、該電力比較器による比較結果に応じて前記直流電力をインバータを介して電力負荷または低圧系統へ供給し、あるいは低圧系統から電力負荷へまたはインバータを介してリチュームイオン電池に供給する電力切替器と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、集合住宅等の全戸を管理する管理者が屋上等に設置した太陽電池アレイからではなく、この集合住宅に入居している各戸の入居者が独自に購入してバルコニー上に設置した太陽電池アレイから、入居者が必要とする電力を入居者の家屋内や事務所内の複数の電力負荷に割安に分配供給することができる。従って、その太陽電池アレイや、充電用のリチュームイオン電池、交流変換用のインバータは入居者の都合、つまり日常の消費電力量や経済的事情に合った容量のものを用意することで、売電を含めて電力利用効率を最大限に高めることができる。
【0012】
また、本発明に係る集合住宅等の給電システムは、前記電力比較器が、太陽電池アレイの最大出力以内での使用を検知した場合に、太陽電池アレイから前記電力切替器を介して電力負荷ヘ自動的に電力供給し、一方、太陽電池アレイの最大出力を超える使用を検知した場合に、低圧系統から電力負荷へ自動的に電力供給する太陽電池アレイの最大出力検知手段を備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、太陽電池アレイ、リチュームイオン電池または低圧系統のいずれかが電力供給不足に陥った場合には、電力供給に余裕がある他のいずれかから引き続き電力負荷に電力を融通することができ、これにより不用意な停電による電子機器のダウンやデータ消失など、電力負荷に対する重大な悪影響を未然に回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集合住宅やビルディングの戸別の入居者が自らバルコニー等に設置した太陽電池アレイが発生する電力を、複数の電力負荷に安価かつ効率的に分配供給することができ、不用意な停電による電子機器のダウンやデータ消失など、電力負荷に対する重大な悪影響を未然に回避可能になる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態による集合住宅等の給電システムを示す概念図である。
【図2】図1に示す給電システムの設置例を示す説明図である。
【図3】図2に示す給電システムの斜視図である。
【図4】図3に示す給電システムの回路図である。
【図5】本実施形態において低圧系統(商用電力系統)から電力負荷への電力の融通を可能にする電力融通回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態にかかる集合住宅等の給電システムを、図1乃至図5を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明の実施形態による集合住宅等の給電システムを示し、図2はその給電システムの設置例を示し、図3は図2に示す給電システムの斜視図である。同図において、符号Hは、マンションなどの集合住宅であり、南側の壁面側には戸別ごとにバルコニー1が水平方向に延設されている。この戸別のバルコニー1には、入居者が自身で購入した太陽電池アレイ(太陽電池パネル)11が設置されている。この太陽電池アレイ11をバルコニー1に設置した入居者の住宅では、電力会社が供給する商用電力と太陽電池アレイ11が発電する電力の一方または両方を使用可能である。太陽電池アレイ11が発生する電力が消費電力量を上回る場合には,その上回った分の発生電力を商用系統側に売電することが可能である。
【0019】
太陽電池アレイ11は、図示のように受光面を太陽光線の入射方向に向けるようにして、バルコニー1上に設置される。この太陽電池アレイ11は小形、軽量であるにも拘らず大容量で発電効率(電力変換効率)の高いものが次々と市場に提供されており、本実施形態で用いる太陽電池アレイ11は軽量で、搬送、取扱いおよび設置が容易で、折り畳みおよび折り畳み解除可能な構成とされている。従って、一般ユーザである集合住宅Hの入居者でも、容易にバルコニー1に搬入して容易に設置および組み付けが可能である。
【0020】
また、バルコニー1上に太陽電池アレイ11を設置するための設置台2の組付けやこの設置台2への太陽電池アレイ11の載置、さらには太陽電池アレイ11とリチュームイオン電池12とインバータ13との電気接続なども、例えば電力ケーブル14、15のプラグをコンセントに挿し込むなどの簡易な方法で、入居者自身が実施できるものとする。その設置台のサイズや重量、電力ケーブル14、15の長さや太さは、太陽電池アレイ11、リチュームイオン電池12、インバータ13の重量、容量、サイズなどに応じて決められる。
【0021】
リチュームイオン電池12は太陽電地アレイ11発生する直流電力を充電するものであり、インバータ13はその直流電力を交流電力に変換して電力負荷に供給可能にするものである。バルコニー1に臨む集合住宅H等の外壁面には集電箱3が設けられ、この集電箱3内には、インバータ13が出力する交流電力を室内系統に給電するコンセント6が設置されている。このコンセント6にはインバータ13に接続された電力ケーブル4端のプラグ5が差し込まれる。
【0022】
太陽電池アレイ11は、例えばシリコンなどの半導体の光電変換素子としての太陽電池モジュールを複数個分並設したものからなる。この太陽電池モジュールは複数個が直列接続および並列接続されて、耐候性の素材で被われている。具体的には、例えば太陽電池素子の受光面にガラス板や合成樹脂板などの光透過板を配置し、その裏面である非受光面にテフロン(登録商標)フィルムやPVF(ポリフッ化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの耐候性フィルムを被着して、これらの光透過板、太陽電池素子および耐候性フィルムの重ね構造としたものである。この重ね構造物は矩形体をなし、この矩形体の周面にはアルミニウムなどの枠体が装着されている。また、太陽電池モジュールの裏側には接続箱が設けられ、ここに太陽電池モジュールの出力電力を取り込むターミナルが設けられている。
【0023】
一方、リチュームイオン電池12は小型、軽量、高耐圧特性で、体積エネルギ率(Wh/L)および重量エネルギ率(Wh/Kg)が高い2次電池で、太陽電池アレイ11に電力ケーブル14を介して接続される。このリチュームイオン電池12は太陽電池アレイ11が出力する電圧を充電し、インバータ13に対し必要かつ安定した直流電力を供給する。さらに、リチュームイオン電池12には電力ケーブル15を介してインバータ13が接続され、このインバータ13はそのリチュームイオン電池12を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。このインバータ13の出力側には、その交流出力波形を正弦波に整える交流コンデンサや交流リアクトル(いずれも、図示しない)が接続されている。
【0024】
ところで、かかる構成になる集合住宅等の給電システムは比較的軽量化かつ小形化されており、太陽電池アレイ11の重量が例えば8kg、これに接続されるリチュームイオン電池12は50kg、リチュームイオン電池12に接続されるインバータ13は4.5kgであり、それぞれを入居者が一人または二人で持ち運びできる重量である。そしてリチュームイオン電池12およびインバータ13は筐体の底部にキャスタ16、17をそれぞれ備えている。これによりリチュームイオン電池12およびインバータ13は、これらの設置作業時には床面上に軽快に移動または走行させることができる。
【0025】
さらに、リチュームイオン電池12は筐体の天部に一対の把手18が取り付けられ、インバータ13は筐体の天部に提手19が取り付けられている。従って、これらの把手18や提手19に手を掛けることで、作業員によるリチュームイオン電池12やインバータ13の揚げ降ろしを容易化できる。インバータ13には低圧系統用負荷の電圧取り出し口であるプラグ挿し込み口20が並設されている。このため、太陽電池アレイ11とともに、リチュームイオン電池12およびインバータ13のそれぞれを別々に運搬可能にしている。
【0026】
前述のように、太陽電池アレイ11およびリチュームイオン電池12は電力ケーブル14により接続され、リチュームイオン電池12およびインバータ13は電力ケーブル15により接続されている。このため、これらの電力ケーブル14、15の接続作業も、キャスタ16、17がリチュームイオン電池12およびインバータ13の移動を軽快に行えるようにしているため、容易である。従って、かかる構成の給電システムは集合住宅Hやビルディングのバルコニー1上に容易に搬入、設置が可能であり、住宅や事務所で使用する低圧系統用の電力負荷に対する給電を簡単かつローコストに実現できる。
【0027】
図4は、本実施形態による集合住宅等の給電システムの電気系統を概念的に示すブロック図である。このブロック図においては、太陽電池アレイ11とリチュームイオン電池12およびインバータ13との間に直流電力検出器31が接続されている。また、インバータ13と電力負荷32との間に電力切替器33、負荷電力検出器34および分電盤38が直列接続されている。電力切替器33は開閉器35を介して低圧系統36に接続されている。分電盤38は図2に示すように戸別の室内側に設置され、この室内側の複数の電力負荷にインバータ13を介して得られる交流電力を分配供給するとともに、前記電力切替器33および開閉器35を収納している。符号37は、各電力検出器31、34が検出した電力値を比較する電力比較器である。
【0028】
この回路では、太陽電池アレイ11が発生する直流電力をリチュームイオン電池12に充電するとともに、このリチュームイオン電池12によって安定化された直流電力がインバータ13に供給される。インバータ13は、その直流電力を商用周波数の交流電力に変換し、図3に示したプラグ差込口20にプラグ(図示しない)が挿し込まれた前記電力ケーブル4、この電力ケーブル4端のプラグ5、コンセント6および分電盤38を通じて低圧系統用の電力負荷32、例えば家庭用の冷蔵庫、照明灯やファックスなどの事務機器に供給可能にしている(図2参照)。
【0029】
一方、直流電力検出器31はリチュームイオン電池12の両端に得られる電力を検出し、負荷電力検出器34は電力負荷32で消費される電力を検出している。これらの各電力検出器31、34で検出された電力は電力比較器37に入力され、電力比較器37はその電力値の差分に応じた切替制御信号を電力切替器33に入力する。
【0030】
電力比較器37は、直流電力検出器31で検出された電力値Aが負荷電力検出器34で検出された電力値Bよりも十分に大きい場合には(A>B)、インバータ13からの交流電力を分電盤38を通して電力負荷32に供給するように電力切替器33を切り替えるとともに、開閉器35を介して低圧系統36へも供給(売電)する。一方、直流電力検出器31で検出した電力値Aが負荷電力検出器34で検出された電力値Bに等しい場合には(A=B)、電力切替器33はインバータ13から低圧系統36への電力供給を遮断し、電力負荷32への電力供給を継続するように切り替える。
【0031】
一方、直流電力検出器31で検出された電力値Aが負荷電力検出器34で検出された電力値Bよりも低下した場合には(A<B)、電力切替器33はインバータ13から電力負荷32への交流電力の供給を停止するとともに、開閉器35を介して低圧系統36からの電力を分電盤38を通して電力負荷32へ供給するように切り替えられる。この場合に、リチュームイオン電池12の充電を継続しながら、低圧系統36の電力を購入して電力負荷32に継続して電力が供給される。これにより、電力負荷32は無停電で動作または駆動が継続される。
【0032】
従って、かかる構成の集合住宅等の給電システムは取扱いが容易で、汎用性が高く、太陽電池アレイ11、リチュームイオン電池12およびインバータ13を集合住宅H等の戸別のバルコニー1に設置するのみで、戸別ごとの電力消費量に合ったクリーンエネルギ給電システムを簡単かつ安価に構築できる。
【0033】
このように、本実施形態による集合住宅等の給電システムは、集合住宅等の戸別ごとのバルコニー1に、このバルコニー1上で太陽光を受けて直流電力を発生する太陽電池アレイ11を設置し、この太陽電池アレイ11が発生する直流電力をリチュームイオン電池12に充電し、太陽電池アレイ11が発生する直流電力またはリチュームイオン電池12が放電する直流電力をインバータ13により交流電力に変換し、このインバータ13が出力する交流電力を戸別ごとの複数の電力負荷に分配供給するように構成されている。
【0034】
従って、この給電システムでは、集合住宅やビルディングの戸別の入居者が自ら購入してバルコニー等に設置した太陽電池アレイが発生する電力を、複数の電力負荷に安価かつ効率的に分配供給することができることとなる。この結果、化石燃料を使用しないクリーンエネルギの利用が戸別ごとに実現可能になる。
【0035】
図5は、図4に示した電力比較器37および電力切替器33を用いて太陽電池アレイ11の最大出力を超えた電力負荷32の接続があった場合に、自動的に低圧系統(商用電力系統)36から電力負荷32への電力の融通を可能にする電力融通回路の一例を示す。この電力融通回路では、低圧系統36に接続された電流制限ブレーカ41、漏電ブレーカ42および第1のスイッチ43が順に直列接続されている。この第1のスイッチ43には第2のスイッチ44を介してインバータ13用の漏電ブレーカ45が接続され、この漏電ブレーカ45にインバータ13が接続されている。
【0036】
インバータ13にはリチュームイオン電池用のスイッチ46を介してリチュームイオン電池12が接続されている。このインバータ13は別系統で逆流防止素子(逆流防止ダイオード)付きのスイッチ47を介して太陽電池アレイ11に接続されている。また、前記第1のスイッチ43および第2のスイッチ44を接続する回路の途中には電力負荷系統、つまり各一の電力負荷スイッチ48を介して複数の電力負荷32が並列接続されている。
【0037】
一方、前記太陽電池アレイ11には、この太陽電池アレイ11の最大電力を検知する最大電力検知手段49が接続されており、この最大電力検知手段49は太陽電池アレイ11の最大出力以下での使用を検知した場合に、第1のスイッチ43をオフ(開)、第2のスイッチ44をオン(閉)にして、太陽電池アレイ11から電力負荷32への電力供給を可能にしている。
【0038】
一方、前記最大電力検知手段49が太陽電池アレイ11の最大出力以上での使用を検知した場合には、第1のスイッチ43をオンにするとともに、第2のスイッチ44をオフにして、低圧系統36から、前記最大電力を超える所定の電力を電力負荷32に供給することができる。この場合において、第1のスイッチ43および第2のスイッチ44は同時にオンとすることで、二次電池としてのリチュームイオン電池12や太陽電池11からの供給電力を併用することができる。これにより、大電力負荷にも容易に対応可能になる。
【0039】
この電力融通回路では、最大電力検知手段49は、太陽電池アレイ11の最大出力電圧を監視しており、この最大出力電圧以下で太陽電池アレイ11が使用されている場合には、第1のスイッチ43を閉じて太陽電池11が発生する直流電力を、インバータ13を通して交流変換し、漏電ブレーカ45および第2のスイッチ44を介して電力負荷32に供給し、この電力供給動作を維持可能にする。
【0040】
一方、前記最大出力電圧以上で太陽電池アレイ11が使用されると、最大電力検知手段49はこれを検知して第1のスイッチ43を閉じるとともに、第2のスイッチ44を開いて商用電力のみを電流制限ブレーカ41、漏電ブレーカ42、第1のスイッチ43を介して電力負荷32に自動的に供給する。従って、インバータ13を通しての交流電力が遮断されても、引き続き商用電力によって電力負荷が継続的に動作可能となる。
【0041】
なお、電力負荷32の使用が前記最大出力の500Wを超えた場合(例えば、1000Wの場合)には、最大電力検知手段49は500Wを超えたことを検知して、第1のスイッチ43および第2のスイッチ44の両方をオン制御することもできる。この場合には、リチュームイオン電池12の容量や太陽電池11の最大電力を超えた分を低圧系統36から補填させるようにして、前記大容量の電力負荷にも対応することができる。
【0042】
また、低圧系統36が交流電力を電力負荷32に供給している場合には、この交流電力を第1のスイッチ43および第2のスイッチ44を通してインバータ13に入力することで、このインバータ13で直流に変換された直流電力をリチュームイオン電池12に充電することができる。この場合には、最大電力検知手段49が第1のスイッチ43および第2のスイッチ44の両方をオンにするモードに切り替えられる。なお、上記の実施形態の電力供給システムは戸建住宅のほか集合住宅の電力供給システムにも採用できる。
【0043】
このように、太陽電池アレイ、リチュームイオン電池または低圧系統のいずれかが電力供給不足に陥った場合には、電力供給に余裕がある他のいずれかから引き続き電力負荷に電力供給することができ、これにより不用意な停電による電子機器のダウンやデータ消失など、電力負荷に対する重大な影響を未然に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にかかる集合住宅等の給電システムは、集合住宅やビルディングの戸別の入居者が自らバルコニー等に設置した太陽電池アレイが発生する電力を、各戸の複数の電力負荷に安価かつ効率的に、しかも低圧系統からの電力の融通により停電なく、分配供給することができるという効果を有し、太陽エネルギから得た電力を戸別の電力負荷に供給可能にする太陽光給電システム等に有用である。
【符号の説明】
【0045】
H 集合住宅
1 バルコニー
2 設置台
3 集電箱
4 電力ケーブル
5 プラグ
6 コンセント
11 太陽電池アレイ
12 リチュームイオン電池
13 インバータ
14、15 電力ケーブル
16、17 キャスタ
18 把手
19 提手
20 プラグ差込口
31 直流電力検出器
32 電力負荷
33 電力切替器
34 負荷電力検出器
35 開閉器
36 低圧系統
37 電力比較器
38 分電盤
43 第1のスイッチ
44 第2のスイッチ
49 最大電力検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅等の戸別のバルコニーに設置され、このバルコニー上で太陽光を受けて直流電力を発生する太陽電池アレイと、
該太陽電池アレイが発生する直流電力を充電するリチュームイオン電池と、
前記太陽電池アレイが発生する直流電力または前記リチュームイオン電池が放電する直流電力を交流電力に変換するインバータと、
該インバータが出力する交流電力を、前記戸別ごとの複数の電力負荷に分配供給する分電盤と、
太陽電池アレイまたはリチュームイオン電池が発生する直流電力と電力負荷で消費される電力との大きさを比較する電力比較器と、
該電力比較器による比較結果に応じて前記直流電力をインバータを介して電力負荷または低圧系統へ供給し、あるいは低圧系統から電力負荷へまたはインバータを介してリチュームイオン電池に供給する電力切替器と、
を備えることを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記電力比較器は、太陽電池アレイの最大出力以内での使用を検知した場合に、太陽電池アレイから前記電力切替器を介して電力負荷ヘ自動的に電力供給し、一方、太陽電池アレイの最大出力を超える使用を検知した場合に、交流電力系統から電力負荷へ自動的に電力供給する太陽電池の最大出力検知手段を備えることを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99215(P2013−99215A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243003(P2011−243003)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(511142604)グローバル・リンク株式会社 (1)
【Fターム(参考)】