集合配管・配線用建造物取付用フードボックス
【課題】メンテナンスや増設工事などの際のコーキング処理を不要にし、高い防水性を維持する。
【解決手段】集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けられる取付枠30と、取付枠30の上縁に後端部が重なり合うように取付けられる上板60と、取付枠の両側縁に後端部が重なり合うように取り付けられる両側板40A、40Bと、上板60及び両側板40A、40Bの前部に取付けられる前板70と、両側板に取付けられる底板50とに分割構成され、さらに、上板60が、前後方向に重なり合う複数枚の上板構成板61、62によって分割構成され、複数枚の上板構成板61、62のうち、取付枠30の上縁に重なり合う最奥位置の上板構成板61を取り外すことなく、他の上板構成板62の取り外しが可能に構成されている。
【解決手段】集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けられる取付枠30と、取付枠30の上縁に後端部が重なり合うように取付けられる上板60と、取付枠の両側縁に後端部が重なり合うように取り付けられる両側板40A、40Bと、上板60及び両側板40A、40Bの前部に取付けられる前板70と、両側板に取付けられる底板50とに分割構成され、さらに、上板60が、前後方向に重なり合う複数枚の上板構成板61、62によって分割構成され、複数枚の上板構成板61、62のうち、取付枠30の上縁に重なり合う最奥位置の上板構成板61を取り外すことなく、他の上板構成板62の取り外しが可能に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けるためのフードボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの空調設備では、多数の室外機をビルの屋上に設置し、ビルの各フロアの室内機と屋上の対応する各室外機との間を、一対の冷媒管及び一本の制御ケーブルでそれぞれ接続している。また、これら配管の他に、各種ケーブル(電源用、通信用)を屋上から屋内へ引き込んでいる。
【0003】
このため、ビルの屋上に、図16に示すような小屋風の集合配管・配線用建造物(通称ハト小屋、以下単に建造物という)1を屋上に建造し、この建造物1の側壁部1aに設けた管やケーブル通過用の開口部に、その開口部を覆う防水用のフードボックス15を取付ける。
【0004】
そして、例えば、各フロアの室内機からの冷媒管や制御ケーブルを、ビル内を高さ方向に貫通するシャフト内でひとまとめに合流させて屋上の建造物1内まで通し、さらに、側壁部1aの開口部からフードボックス15を通して、屋上に設置したラック2に沿って配管・配線し、ラック2の近傍に多数設置された各個別の室外機(図示せず)に接続している(符号3はラック支持材)。また、電源用ケーブルや通信用ケーブルについてもフードボックス15で覆われた側壁部1aの開口部を通過するようにして、屋上と屋内の間を配線される。
【0005】
このように、建設中のビル等の屋上に設置されるフードボックス15には、施工が容易で、構成材料の運搬が楽で、且つ確実な防水性が要求される。
【0006】
フードボックスに要求される形状は、側壁部1aに固定される背面側と底面側とに、管やケーブル通過のための開口を有する箱型構造であるが、従前のものでは、その箱状の一体型の形状のフードボックスをそのまま側壁部1aに固定するというものであり、材料単体の重量が極めて重く、ビルの屋上などへ運搬するのが大変であり、特にサイズが大きい場合、エレベータで運搬できず、階段を使って運搬しなければならないため、多大な労力を要していた。
【0007】
また、フードボックスの重量が重いため、側壁部1aへの取付作業が、一人では不可能で、人手を要し、且つ取付けに多大な時間を要する等、極めて不便であった。
【0008】
また、建造物1の側壁部1aにフードボックスの取付部が垂直に窪み部分なしに取付けられているため、防水用のコーキング処理を確実に行うことができないとい問題もあった。
【0009】
これらの問題を解決するために本願出願人らは、次の特許文献1において、運搬も容易で、取付け作業も一人ででき、またコーキング処理を確実に行えるフードボックスを提案している。
【0010】
この特許文献1の技術は、建造物側壁の開口部外側に取付けるためのフードボックスが、開口部外側に取付けられる取付枠と、その取付枠に取付けられるフード本体と、そのフード本体に取付けられる前蓋と、そのフード本体に取付けられる底板とに分割構成され、これらを組立てるようにしており、この特徴的構造により上記問題を解決している。
【0011】
また、特許文献1には、フード本体が上板と両側板に分割される構造も提案されており、この分割構造により、フードボックスを構成する全ての部材が概略板状でかさばらないものとすることができ、運搬、取付作業をさらに容易にしている。
【0012】
また、特許文献2には、フード本体の上板と側板が分割される構造をもつフードボックスにおいて、側板の取付作業を容易にする技術も開示されている。
【0013】
この特許文献2の技術は、取付枠に、側板の端部をネジ止めするネジ穴を複数個設け、そのネジ穴の一つを切り欠き状にし、側板の端部のネジ穴のうち、取付枠の切り欠き状のネジ穴に対応する位置のネジ穴に、予めナット付きネジを緩んだ状態で取付ておき、そのナット付きネジの軸部を、取付枠の切り欠き状ネジ穴にスライド挿入することで、側板を取付枠に仮止めした状態でネジ止め固定することで、側板の取付作業を一人でも行えるように簡単化したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3213881号公報
【特許文献2】特開2008−127797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献では、取付枠は、一定幅の帯状板を折り曲げて前後方向に僅かな奥行きのある四角筒状に形成された枠本体と、枠本体の後縁から内方に延びた後縁板(後フランジ)と、枠本体の前縁から外方に延びた前縁板(前フランジ)を有し、後縁板を建造物(ハト小屋)の側壁面に当接させた状態で固定され、前縁板に設けられたネジ穴にフード本体を構成する各板の後端部がネジ止めされる構造であるので、建造物の壁面と前フランジとの間に枠体の奥行き分だけ内方に凹んだ窪み部が全周にわたって連続して形成され、この窪み部にコーキング材を流し込むことで、確実な防水処理が行える。
【0016】
ここで、上記構造のフードボックスは、防水性を高めるために、上板の前後左右の縁には下方に延びた縁板が設けられており、そのうちの後縁板は取付枠の前縁板の背面に接する状態で固定される。つまり、上板の後縁板がコーキング代としての窪み部に進入した状態でコーキング処理されることになる。また、防水のためのコーキング処理は、安全を見て窪み部からはみ出すようにおこなう場合が多く、窪み部に入り込む縁板を持たない上板であってもその後縁部がコーキング材で覆われることになる。
【0017】
ところが、上記工事が一度行われた後に、メンテナンスや機器の増設のためにこの上板を外す必要がある。しかし、上記のように後端部がコーキング材で覆われている上板を外した場合、コーキング材が剥がれてしまうので、メンテナンス等が終了した後にコーキング処理を再度行う必要があるが、最初の施工を行った業者とメンテナンス業者とが異なる場合、コーキング処理を忘れたり、いい加減な作業が行われて、防水性が著しく低下するという問題があった。
【0018】
本発明は、この問題を解決し、メンテナンスや増設工事などの際のコーキング処理を不要にし、高い防水性を維持することができるフードボックスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスは、
集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けるためのフードボックスであって、
前記開口部外側に取付けられる取付枠と、該取付枠の上縁に後端部が重なり合うように取付けられる上板と、前記取付枠の両側縁に後端部が重なり合うように取り付けられる両側板と、該上板及び両側板の前部に取付けられる前板と、該両側板に取付けられる底板とに分割構成され、
さらに、前記上板が、前後方向に重なり合う複数枚の上板構成板によって分割構成され、該複数枚の上板構成板のうち、前記取付枠の上縁に重なり合う最奥位置の上板構成板を取り外すことなく、他の上板構成板の取り外しが可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項2の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスは、請求項1記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスにおいて、
前記取付枠は、一定幅の帯状板がその長さ方向と直交する線に沿って折り曲げられて前記幅に対応した前後方向の奥行きをもつ角筒状に形成された枠本体と、該枠本体の後端から内方に延び、集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けられる後縁板と、前記枠本体の前端から外方に延び、前記上板と前記両側板が取付けられる前縁板とを備え、
前記枠本体の外周に沿って、集合配管・配線用建造物の側壁部と前記前縁板との間に、コーキング材を充填するための窪み部が構成されており、
前記上板構成板のうち、前記最奥位置の上板構成板の後縁には、前記窪み部に進入して前記取付枠の前縁板の背面に接する縁板が設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項3の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスは、請求項1または請求項2記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスにおいて、
前記複数の上板構成板は、前記取付枠から離間する程の低い位置にあり、且つ前記取付枠に近い方の上板構成板の前縁の下面に、前記取付枠から遠い方の上板構成板の後縁の上面が接するように重ね合わされた状態で取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項4の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスは、請求項1〜3のいずれかに記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスにおいて、
前記複数の上板構成板のうち、前記最奥位置以外の上板構成板は、前記側板および前記最奥位置の上板構成板に対して、頭部が六角柱あるいは頭部端面にプラス溝またはマイナス溝が形成された使用頻度の高い第1のネジによって固定され、前記最奥位置の上板構成板は、前記第1のネジと異なる形状の使用頻度の低い第2のネジによって前記側板または前記取付枠に固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
上記のように、本発明の請求項1のフードボックスでは、取付枠の外周にコーキング処理がなされた後に、配管、配線増設作業やメンテナンス作業を行う場合でも、最奥位置の上板構成板を外さずに他の上板構成板を取り外しが行えるので、それらの作業でコーキング材の剥がれによる防水性の低下を招く恐れがない。
【0024】
また、本発明の請求項2では、枠本体の外周に沿って、集合配管・配線用建造物の側壁部と前縁板との間に、コーキング材を充填するための窪み部が構成され、上板構成板のうち、最奥位置の上板構成板の後縁には、窪み部に進入して取付枠の前縁板の背面に接する縁板が設けられているから、最奥部の上板構成材を取り付けた状態で窪み部にコーキング処理を行うことで、上板構成板の縁部と取付枠の上縁の間の高い防水性が維持される。
【0025】
また、本発明の請求項3では、複数の上板構成板は、取付枠から離間する程の低くなるように傾斜し、且つ取付枠に近い方の上板構成板の前縁の下面に、取付枠から遠い方の上板構成板の後縁の上面が接するように重ね合わされた状態で取り付けられているので、その傾斜に沿って降雨を取付枠から離間する方向に流し、ボックス内への浸水を確実に防止する。
【0026】
また、本発明の請求項4では、最奥位置の上板構成板を取付枠あるいは側板に固定するための第2のネジの形状が、他の上板構成板を固定するための使用頻度の高い第1のネジの形状と異なっているので、メンテナンス作業者等が誤って最奥位置の上板構成板を外してしまう可能性が極めて小さくなり、コーキング材の剥がれる可能性をより少なくすることかできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の組み立て後の全体図
【図2】実施形態の分解図
【図3】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図4】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図5】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図6】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図7】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図8】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図9】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図10】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図11】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図12】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図13】実施形態のフードボックスの組み立て後に上板の前部を外した状態を示す図
【図14】スペーサの代わりにエンボス加工を用いた例を示す図
【図15】上板構成板間の固定に、カシメ固定型ナットを用いた例を示す図
【図16】従来のフードボッボックスの全体図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態のフードボックス20の全体図、図2はその分解図を示している。
【0029】
これらの図において、フードボックス20は、建造物1の側壁部1aの開口部の外側に取付けられる取付枠30と、この取付枠30に取付けられる左右の側板40A、40B、底板50、上板60、前板70とに分割されていて、これらの組立てによって、後部および下面側に管やケーブルを通過させるための開口を有する箱型に形成される。
【0030】
取付枠30は、一定幅の帯状板をその長さ方向と直交する線に沿って折り曲げて、その幅に相当する前後方向に僅かな奥行きのある長方形の筒状に形成された枠本体31と、枠本体31の後端に、四辺の全周にわたって枠本体31から垂直に内方へ延びた後縁板32と、枠本体31の前端に、四辺の全周にわたって枠本体31から垂直に外方へ向かって延びた前縁板33とを有している。
【0031】
後縁板32の上辺部32a、下辺部32b、左辺部32c、右辺部32dには、側壁部1aに予め固定されたアンカーボルト(または貫通スリーブに連結するためのボルト)を通過させる穴35が設けられている。
【0032】
また、前縁板33の左辺部33c、右辺部33dには、左右の側板40A、40Bをネジ止め固定するための複数(図では3つ)が穴36、37が上下方向にして間隔で設けられている。この穴のうち、中央の穴37は、横長でエッジ側が切欠かれている。
【0033】
左右対称の側板40A、40Bは、略長方形で前縁が後縁より短く形成され、下縁に対して上縁が前方に向かって下がるように傾斜している横向き台形状の基部40a、基部40aの後縁から一定幅で基部内面を望む方向に直角に延びた後縁板40b、基部40aの前縁から一定幅で基部内面を望む方向に直角に延びた前縁板40c、基部40aの上縁から一定幅で基部内面を望む方向に直角に延びた上縁板40d、基部40aの下縁から一定幅で基部内面を望む方向に直角に延びた下縁板40eとにより構成されている。なお、上縁板40dは、基部40aの上縁の傾斜に沿って後部側から前部側に向かって低くなるように傾斜している。また、前縁板40cの下端と下縁板40eの前端との間には、後述の底板50の後縁板50bの高さより僅かに大きな寸法で開口するスリット45が設けられている。
【0034】
側板40A、40Bの後縁板40bには、取付枠30の穴36、37に対応した位置にネジ止め用の複数の穴41が設けられ、前縁板40cには、前板70をネジ止め固定するための複数の穴42が設けられ、上縁板40dには、上板60をネジ止め固定するための複数の穴43が設けられ、下縁板40eには、底板50をネジ止めするため固定するための複数の穴44が設けられている。
【0035】
底板50は、前部中央が切欠れて凹状に形成された基部50aと、基部50aの後端から上方に延びた後縁板50b、基部50aの切欠かれた縁部からそれぞれ下方に延びたソケット板50c〜50eとにより構成されている。基部50の両側部には側板40A、40Bの下縁板40eにネジ止め固定するための複数の穴51が設けられている。
【0036】
上板60は、複数(ここでは2つ)の上板構成板61、65によって分割構成されている。取付枠30に近い方の奥側(上流側)の上板構成板61は、横長の長方形の基部61aと、その後縁から下方に延びた後縁板61b、基部61aの左右の側縁から下方に延びた側縁板61c、61dとで下面側、前面側が開口した薄い箱型に形成されている。基部61の両側縁には、側板40A、40Bにネジ止め固定するための穴62が設けられ、前縁には上板構成板65にネジ止め固定するための複数の穴63が設けられている。上板構成板61は、上板構成板65の板厚より僅かに厚いスペーサ64を挟んだ状態で側板40A、40Bの上縁板40dにネジ止めされるので、側板40A、40Bの上縁板40dから僅かに浮いた状態となり、その隙間に下流側の上板構成板65の先端が挿入されるようにして固定される。
【0037】
下流側の上板構成板65は、長方形の基部65a、その左右の側縁から下方に延びた側縁板65b、65c、基部65aの前端から下方に延びた前縁板65dとで、後面側と下面側が開口された薄い箱型に形成されている。上板構成板65の横幅は、上流側の上板構成板61の左右の側縁板61c、61d間の内寸より僅かに小さく設定されていて、上板構成板65を、上流側の上板構成板61の側縁板61c、61d間に差し込めるようになっている。上板構成板65の前縁で、上板構成板61の穴63にそれぞれ対応した位置には、上板構成板同士をネジ止め連結するためのネジ溝穴66が設けられ、左右の側縁には側板40A、40Bにネジ止め固定するための穴67が設けられている。ネジ溝穴66は、プレス加工で下方に延びたスリーブを形成し、その内周にネジ溝を設けたもの、下面側からナットを溶接止めあるい後述のようにカシメ止めしたもののいずれでもよい。
【0038】
前板70は、横長の長方形の基部70aと、その上縁から前方に延びた上縁板70b、基部70aの下縁から後方に延びた下縁板70c、左右の側縁から後方に延びた側縁板70c、70dとを有し、両側縁には、側板40A、40Bにネジ止め固定するための穴71が設けられている。
【0039】
次に、このフードボックスの組み立て方法について説明する。
始めに、図3に示すように、建造物の側壁部1aの開口部1bを囲むようにして取付枠30を固定する。
【0040】
この固定は、例えば予め開口部1bの周縁で、取付枠30の後縁板32の各穴35の位置にアンカーボルトを埋設しておき、そのアンカーボルトを穴35に挿通させて取付枠30の後縁板32を側壁部1aに密着させ、アンカーボルトにボルト5を締めつけることによって行う。なお、より大きな開口部内に予め固定された貫通スリーブに取付枠30の後縁板をボルト固定する場合もある。
【0041】
このようにして取付枠30が壁面に固定された状態で、図4のように、一方の側板40Bの後縁板40bの中央の穴41に、内側からボルト6を差し込み、後方に突出したボルト6の先に板ナット7を緩く螺着させ、その後縁板40b部分を、取付枠30の前縁板33の右辺部33dの裏側に重なるように移動する。
【0042】
このとき、図5のように、ボルト6の頭部を前方に引いた状態で、その軸部を切欠かれた穴37に差し込み、ボルト6を仮締めする。この作業によって図6のように、側板40Bは取付枠30に仮止めされ、支えなくても脱落しない状態となり、その後、残りの穴41に対してボルトと板ナットによる固定を行う。
【0043】
この作業を他方の側板40Aについて行うことにより、図7のように左右の側板40A、40Bを取付枠30に固定することができる。
【0044】
そして、図7に示しているように、底板50を、その後縁板50b側から側板40A、40Bのスリット45に差し入れ、奥まで押し込み、基部50aの両側の穴51を側板40A、40Bの下縁板40eの穴44に合わせてボルト固定することで、図8のように、底板50を固定することができる。なお、このボルト固定は、ボルトに螺着可能な穴を有する二つ折りされたバネ板からなるクリップナット(図示せず)を、予め下縁板40eを挟むように取り付けておき、そのクリップナットにボルトを締付ける。
【0045】
この図8の状態で、必要な配管・配線工事を行い、図9のように、冷媒管や各種ケーブルからなる管・ケーブル体10を開口部1bから引き出し、底板50の開口から引き出し、ラック2に沿って配管・配線する。そして、冷媒管関係の管・ケーブル体10についてはラック2から引き出してその近傍に多数設置された各個別の室外機(図示せず)に接続する。また、他のケーブルについてもそれぞれ適当な位置でラック2から引き出して配線する。
【0046】
この配管・配線工事の後に、図9に示しているように、前板70を側板40A、40Bの前縁板にボルト固定する(この固定作業も前記同様にクリップナットを用いる)。
【0047】
次に、図10のように、奥側の上板構成板61を、スペーサ64を挟んだ状態で(予めスペーサ64を上板構成板61に接着固定しておいてもよい)、側板40A、40Bの奥側上部にボルト8と前記クリップナットを用いて固定する。ただし、この固定に使用するボルト8は、他の取付に用いているボルト6とは異なるヘッド形状のものを使用している。
【0048】
例えば、通常使用するボルト6は、頭部が六角柱で端面にプラス溝(マイナス溝でもよい)が設けられている極めて汎用性が高いものであり(第1のネジ)、作業者が頻繁に使用するプラスやマイナスのドライバービットあるいは6角ボックスレンチで締付け作業が行える。これに対し、奥側の上板構成板61を側板40A、40Bに固定するボルト8は、それ以外の汎用性の低いボルト(第2のネジ)、例えば、頭部が円柱で端面に六角穴が設けられ、六角棒レンチを使用しないと締付け作業ができない六角穴付きボルトを用いている。このような六角棒レンチ使用のボルトの屋外配管・配線工事への使用頻度は非常に低く、メンテンナンス作業者が他の一般的なボルトと同じ感覚でむやみに外したりしないので、後述するコーキング材の剥がれを防ぐことができる。なお、ボルト8(第2のネジ)としては、上記の頭部外形円柱で六角穴付きのボルトの他に、頭部が円柱形、半円球形で、端面に星型溝、非対称溝等が設けられ、プラスやマイナス以外の専用ドライバーでしか締付け作業ができないものを用いてもよい。
【0049】
このようにして、上流側の上板構成板61が側板40A、40Bに固定された後、図11のように、下流側の上板構成板65を、その基部65aの後縁と側縁板65b、65cの後縁が、上板構成板61の基部61aの前縁、側縁板61c、61dと側板40A、40Bとの隙間に入り込むように差し込み、各ネジ溝穴66を上流側の上板構成板61の各穴63に合わせ、ボルト6で締め付け、また、上板構成板65の穴67と側板40A、40Bの穴43とを合わせて、ボルト6で固定する(前記クリップナット使用)ことで、図1、図12に示すように、フードボックス20の組み立てが完了する。
【0050】
そして、図12に示しているように、取付枠30の外周に形成された窪み80に対して、コーキング処理を行うことで、高い防水性が得られる。また、上縁が前方に向かって下がるように傾斜している両側板40A、40Bに固定された二つの上板構成板61、65は、取付枠30から離間するほど低くなるように傾斜しており、しかも取付枠30に近い方の上板構成板61の前縁の下面に、取付枠から遠い方の上板構成板65の後縁の上面が接するように重なり合っているから、上板上に降った雨は、その傾斜に沿って取付枠30から離間する方向へ流れるので、上板を分割したことによる防水性の低下は発生しない。
【0051】
なお、メンテナンス作業などで、フードボックス20の上面側を開口したい場合には、上板構成板61、65同士を連結しているボルト6と、下流側の上板構成板65を側板40A、40Bに固定しているボルト6を外し、前方に引き出すことで取り外すことができる。この場合でも、図13のように、上流側の上板構成板61は固定されたままであるから、その後端部を覆うように流し込まれたコーキング材が剥がれることがなく、コーキング処理をやり直しが不要となる。
【0052】
なお、上記実施形態では、スペーサ64を用いて、下流側の上板構成板65の挿入スペースを確保していたが、図14に示すように、上流側の上板構成板61に、エンボス加工等により、下方へ陥没する陥没部64′を設けて、下流側の上板構成板65の挿入スペースを確保してもよい。また、図示しないが、上流側の上板構成板61の前縁を、上方および側方に僅かに膨出するようにプレス加工し、その膨出により内側に形成されたスペースに下流側の上板構成板65の後縁部を差し込むようにしてもよい。
【0053】
また、上板構成板61、65同士の連結に必要なネジ溝穴66は、前記したように、スリーブ加工、ナット溶接止めの他に、例えば、図15のように、下流側の上板構成板65にカシメ止めされたナット68によって形成することができる。このナット68は、上端のフランジ68aと下端のネジ穴部68bとの間の筒部68cが、外側に開くようにして押しつぶされて、フランジ68aとの間で上板構成板65の下穴の周縁を挟み付けて固定される構造のもので、壁材にその一面側からボルト穴を設ける場合に利用される。この場合、上板構成板61、65を密着させるために、上板構成板61の穴63の径をナット68のフランジ68aの外径より大きくする必要があるので、ボルト6に幅広のワッシャー9を挿入して締めつけている。
【0054】
なお、本発明は、これら図示例に限定されるものではなく、取付枠30、側板40A、40B、底板50、上板構成板61、65、前板70の形状、寸法等は、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更できる。
【0055】
また、上記実施形態では、上板60が前後二つの上板構成板61、65で分割される構造であったが、より多くの上板構成板で前後方向に分割される構造であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1……集合配管・配線用建造物、1a……側壁部、1b……開口部、20……フードボックス、30……取付枠、31……枠本体、32……後縁板、33……前縁板、40A、40B……側板、50……底板、60……上板、61、65……上板構成板、64……スペーサ、70……前板
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けるためのフードボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの空調設備では、多数の室外機をビルの屋上に設置し、ビルの各フロアの室内機と屋上の対応する各室外機との間を、一対の冷媒管及び一本の制御ケーブルでそれぞれ接続している。また、これら配管の他に、各種ケーブル(電源用、通信用)を屋上から屋内へ引き込んでいる。
【0003】
このため、ビルの屋上に、図16に示すような小屋風の集合配管・配線用建造物(通称ハト小屋、以下単に建造物という)1を屋上に建造し、この建造物1の側壁部1aに設けた管やケーブル通過用の開口部に、その開口部を覆う防水用のフードボックス15を取付ける。
【0004】
そして、例えば、各フロアの室内機からの冷媒管や制御ケーブルを、ビル内を高さ方向に貫通するシャフト内でひとまとめに合流させて屋上の建造物1内まで通し、さらに、側壁部1aの開口部からフードボックス15を通して、屋上に設置したラック2に沿って配管・配線し、ラック2の近傍に多数設置された各個別の室外機(図示せず)に接続している(符号3はラック支持材)。また、電源用ケーブルや通信用ケーブルについてもフードボックス15で覆われた側壁部1aの開口部を通過するようにして、屋上と屋内の間を配線される。
【0005】
このように、建設中のビル等の屋上に設置されるフードボックス15には、施工が容易で、構成材料の運搬が楽で、且つ確実な防水性が要求される。
【0006】
フードボックスに要求される形状は、側壁部1aに固定される背面側と底面側とに、管やケーブル通過のための開口を有する箱型構造であるが、従前のものでは、その箱状の一体型の形状のフードボックスをそのまま側壁部1aに固定するというものであり、材料単体の重量が極めて重く、ビルの屋上などへ運搬するのが大変であり、特にサイズが大きい場合、エレベータで運搬できず、階段を使って運搬しなければならないため、多大な労力を要していた。
【0007】
また、フードボックスの重量が重いため、側壁部1aへの取付作業が、一人では不可能で、人手を要し、且つ取付けに多大な時間を要する等、極めて不便であった。
【0008】
また、建造物1の側壁部1aにフードボックスの取付部が垂直に窪み部分なしに取付けられているため、防水用のコーキング処理を確実に行うことができないとい問題もあった。
【0009】
これらの問題を解決するために本願出願人らは、次の特許文献1において、運搬も容易で、取付け作業も一人ででき、またコーキング処理を確実に行えるフードボックスを提案している。
【0010】
この特許文献1の技術は、建造物側壁の開口部外側に取付けるためのフードボックスが、開口部外側に取付けられる取付枠と、その取付枠に取付けられるフード本体と、そのフード本体に取付けられる前蓋と、そのフード本体に取付けられる底板とに分割構成され、これらを組立てるようにしており、この特徴的構造により上記問題を解決している。
【0011】
また、特許文献1には、フード本体が上板と両側板に分割される構造も提案されており、この分割構造により、フードボックスを構成する全ての部材が概略板状でかさばらないものとすることができ、運搬、取付作業をさらに容易にしている。
【0012】
また、特許文献2には、フード本体の上板と側板が分割される構造をもつフードボックスにおいて、側板の取付作業を容易にする技術も開示されている。
【0013】
この特許文献2の技術は、取付枠に、側板の端部をネジ止めするネジ穴を複数個設け、そのネジ穴の一つを切り欠き状にし、側板の端部のネジ穴のうち、取付枠の切り欠き状のネジ穴に対応する位置のネジ穴に、予めナット付きネジを緩んだ状態で取付ておき、そのナット付きネジの軸部を、取付枠の切り欠き状ネジ穴にスライド挿入することで、側板を取付枠に仮止めした状態でネジ止め固定することで、側板の取付作業を一人でも行えるように簡単化したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3213881号公報
【特許文献2】特開2008−127797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献では、取付枠は、一定幅の帯状板を折り曲げて前後方向に僅かな奥行きのある四角筒状に形成された枠本体と、枠本体の後縁から内方に延びた後縁板(後フランジ)と、枠本体の前縁から外方に延びた前縁板(前フランジ)を有し、後縁板を建造物(ハト小屋)の側壁面に当接させた状態で固定され、前縁板に設けられたネジ穴にフード本体を構成する各板の後端部がネジ止めされる構造であるので、建造物の壁面と前フランジとの間に枠体の奥行き分だけ内方に凹んだ窪み部が全周にわたって連続して形成され、この窪み部にコーキング材を流し込むことで、確実な防水処理が行える。
【0016】
ここで、上記構造のフードボックスは、防水性を高めるために、上板の前後左右の縁には下方に延びた縁板が設けられており、そのうちの後縁板は取付枠の前縁板の背面に接する状態で固定される。つまり、上板の後縁板がコーキング代としての窪み部に進入した状態でコーキング処理されることになる。また、防水のためのコーキング処理は、安全を見て窪み部からはみ出すようにおこなう場合が多く、窪み部に入り込む縁板を持たない上板であってもその後縁部がコーキング材で覆われることになる。
【0017】
ところが、上記工事が一度行われた後に、メンテナンスや機器の増設のためにこの上板を外す必要がある。しかし、上記のように後端部がコーキング材で覆われている上板を外した場合、コーキング材が剥がれてしまうので、メンテナンス等が終了した後にコーキング処理を再度行う必要があるが、最初の施工を行った業者とメンテナンス業者とが異なる場合、コーキング処理を忘れたり、いい加減な作業が行われて、防水性が著しく低下するという問題があった。
【0018】
本発明は、この問題を解決し、メンテナンスや増設工事などの際のコーキング処理を不要にし、高い防水性を維持することができるフードボックスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスは、
集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けるためのフードボックスであって、
前記開口部外側に取付けられる取付枠と、該取付枠の上縁に後端部が重なり合うように取付けられる上板と、前記取付枠の両側縁に後端部が重なり合うように取り付けられる両側板と、該上板及び両側板の前部に取付けられる前板と、該両側板に取付けられる底板とに分割構成され、
さらに、前記上板が、前後方向に重なり合う複数枚の上板構成板によって分割構成され、該複数枚の上板構成板のうち、前記取付枠の上縁に重なり合う最奥位置の上板構成板を取り外すことなく、他の上板構成板の取り外しが可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項2の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスは、請求項1記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスにおいて、
前記取付枠は、一定幅の帯状板がその長さ方向と直交する線に沿って折り曲げられて前記幅に対応した前後方向の奥行きをもつ角筒状に形成された枠本体と、該枠本体の後端から内方に延び、集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けられる後縁板と、前記枠本体の前端から外方に延び、前記上板と前記両側板が取付けられる前縁板とを備え、
前記枠本体の外周に沿って、集合配管・配線用建造物の側壁部と前記前縁板との間に、コーキング材を充填するための窪み部が構成されており、
前記上板構成板のうち、前記最奥位置の上板構成板の後縁には、前記窪み部に進入して前記取付枠の前縁板の背面に接する縁板が設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項3の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスは、請求項1または請求項2記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスにおいて、
前記複数の上板構成板は、前記取付枠から離間する程の低い位置にあり、且つ前記取付枠に近い方の上板構成板の前縁の下面に、前記取付枠から遠い方の上板構成板の後縁の上面が接するように重ね合わされた状態で取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項4の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスは、請求項1〜3のいずれかに記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックスにおいて、
前記複数の上板構成板のうち、前記最奥位置以外の上板構成板は、前記側板および前記最奥位置の上板構成板に対して、頭部が六角柱あるいは頭部端面にプラス溝またはマイナス溝が形成された使用頻度の高い第1のネジによって固定され、前記最奥位置の上板構成板は、前記第1のネジと異なる形状の使用頻度の低い第2のネジによって前記側板または前記取付枠に固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
上記のように、本発明の請求項1のフードボックスでは、取付枠の外周にコーキング処理がなされた後に、配管、配線増設作業やメンテナンス作業を行う場合でも、最奥位置の上板構成板を外さずに他の上板構成板を取り外しが行えるので、それらの作業でコーキング材の剥がれによる防水性の低下を招く恐れがない。
【0024】
また、本発明の請求項2では、枠本体の外周に沿って、集合配管・配線用建造物の側壁部と前縁板との間に、コーキング材を充填するための窪み部が構成され、上板構成板のうち、最奥位置の上板構成板の後縁には、窪み部に進入して取付枠の前縁板の背面に接する縁板が設けられているから、最奥部の上板構成材を取り付けた状態で窪み部にコーキング処理を行うことで、上板構成板の縁部と取付枠の上縁の間の高い防水性が維持される。
【0025】
また、本発明の請求項3では、複数の上板構成板は、取付枠から離間する程の低くなるように傾斜し、且つ取付枠に近い方の上板構成板の前縁の下面に、取付枠から遠い方の上板構成板の後縁の上面が接するように重ね合わされた状態で取り付けられているので、その傾斜に沿って降雨を取付枠から離間する方向に流し、ボックス内への浸水を確実に防止する。
【0026】
また、本発明の請求項4では、最奥位置の上板構成板を取付枠あるいは側板に固定するための第2のネジの形状が、他の上板構成板を固定するための使用頻度の高い第1のネジの形状と異なっているので、メンテナンス作業者等が誤って最奥位置の上板構成板を外してしまう可能性が極めて小さくなり、コーキング材の剥がれる可能性をより少なくすることかできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の組み立て後の全体図
【図2】実施形態の分解図
【図3】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図4】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図5】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図6】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図7】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図8】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図9】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図10】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図11】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図12】実施形態のフードボックスの組み立て作業を説明するための図
【図13】実施形態のフードボックスの組み立て後に上板の前部を外した状態を示す図
【図14】スペーサの代わりにエンボス加工を用いた例を示す図
【図15】上板構成板間の固定に、カシメ固定型ナットを用いた例を示す図
【図16】従来のフードボッボックスの全体図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態のフードボックス20の全体図、図2はその分解図を示している。
【0029】
これらの図において、フードボックス20は、建造物1の側壁部1aの開口部の外側に取付けられる取付枠30と、この取付枠30に取付けられる左右の側板40A、40B、底板50、上板60、前板70とに分割されていて、これらの組立てによって、後部および下面側に管やケーブルを通過させるための開口を有する箱型に形成される。
【0030】
取付枠30は、一定幅の帯状板をその長さ方向と直交する線に沿って折り曲げて、その幅に相当する前後方向に僅かな奥行きのある長方形の筒状に形成された枠本体31と、枠本体31の後端に、四辺の全周にわたって枠本体31から垂直に内方へ延びた後縁板32と、枠本体31の前端に、四辺の全周にわたって枠本体31から垂直に外方へ向かって延びた前縁板33とを有している。
【0031】
後縁板32の上辺部32a、下辺部32b、左辺部32c、右辺部32dには、側壁部1aに予め固定されたアンカーボルト(または貫通スリーブに連結するためのボルト)を通過させる穴35が設けられている。
【0032】
また、前縁板33の左辺部33c、右辺部33dには、左右の側板40A、40Bをネジ止め固定するための複数(図では3つ)が穴36、37が上下方向にして間隔で設けられている。この穴のうち、中央の穴37は、横長でエッジ側が切欠かれている。
【0033】
左右対称の側板40A、40Bは、略長方形で前縁が後縁より短く形成され、下縁に対して上縁が前方に向かって下がるように傾斜している横向き台形状の基部40a、基部40aの後縁から一定幅で基部内面を望む方向に直角に延びた後縁板40b、基部40aの前縁から一定幅で基部内面を望む方向に直角に延びた前縁板40c、基部40aの上縁から一定幅で基部内面を望む方向に直角に延びた上縁板40d、基部40aの下縁から一定幅で基部内面を望む方向に直角に延びた下縁板40eとにより構成されている。なお、上縁板40dは、基部40aの上縁の傾斜に沿って後部側から前部側に向かって低くなるように傾斜している。また、前縁板40cの下端と下縁板40eの前端との間には、後述の底板50の後縁板50bの高さより僅かに大きな寸法で開口するスリット45が設けられている。
【0034】
側板40A、40Bの後縁板40bには、取付枠30の穴36、37に対応した位置にネジ止め用の複数の穴41が設けられ、前縁板40cには、前板70をネジ止め固定するための複数の穴42が設けられ、上縁板40dには、上板60をネジ止め固定するための複数の穴43が設けられ、下縁板40eには、底板50をネジ止めするため固定するための複数の穴44が設けられている。
【0035】
底板50は、前部中央が切欠れて凹状に形成された基部50aと、基部50aの後端から上方に延びた後縁板50b、基部50aの切欠かれた縁部からそれぞれ下方に延びたソケット板50c〜50eとにより構成されている。基部50の両側部には側板40A、40Bの下縁板40eにネジ止め固定するための複数の穴51が設けられている。
【0036】
上板60は、複数(ここでは2つ)の上板構成板61、65によって分割構成されている。取付枠30に近い方の奥側(上流側)の上板構成板61は、横長の長方形の基部61aと、その後縁から下方に延びた後縁板61b、基部61aの左右の側縁から下方に延びた側縁板61c、61dとで下面側、前面側が開口した薄い箱型に形成されている。基部61の両側縁には、側板40A、40Bにネジ止め固定するための穴62が設けられ、前縁には上板構成板65にネジ止め固定するための複数の穴63が設けられている。上板構成板61は、上板構成板65の板厚より僅かに厚いスペーサ64を挟んだ状態で側板40A、40Bの上縁板40dにネジ止めされるので、側板40A、40Bの上縁板40dから僅かに浮いた状態となり、その隙間に下流側の上板構成板65の先端が挿入されるようにして固定される。
【0037】
下流側の上板構成板65は、長方形の基部65a、その左右の側縁から下方に延びた側縁板65b、65c、基部65aの前端から下方に延びた前縁板65dとで、後面側と下面側が開口された薄い箱型に形成されている。上板構成板65の横幅は、上流側の上板構成板61の左右の側縁板61c、61d間の内寸より僅かに小さく設定されていて、上板構成板65を、上流側の上板構成板61の側縁板61c、61d間に差し込めるようになっている。上板構成板65の前縁で、上板構成板61の穴63にそれぞれ対応した位置には、上板構成板同士をネジ止め連結するためのネジ溝穴66が設けられ、左右の側縁には側板40A、40Bにネジ止め固定するための穴67が設けられている。ネジ溝穴66は、プレス加工で下方に延びたスリーブを形成し、その内周にネジ溝を設けたもの、下面側からナットを溶接止めあるい後述のようにカシメ止めしたもののいずれでもよい。
【0038】
前板70は、横長の長方形の基部70aと、その上縁から前方に延びた上縁板70b、基部70aの下縁から後方に延びた下縁板70c、左右の側縁から後方に延びた側縁板70c、70dとを有し、両側縁には、側板40A、40Bにネジ止め固定するための穴71が設けられている。
【0039】
次に、このフードボックスの組み立て方法について説明する。
始めに、図3に示すように、建造物の側壁部1aの開口部1bを囲むようにして取付枠30を固定する。
【0040】
この固定は、例えば予め開口部1bの周縁で、取付枠30の後縁板32の各穴35の位置にアンカーボルトを埋設しておき、そのアンカーボルトを穴35に挿通させて取付枠30の後縁板32を側壁部1aに密着させ、アンカーボルトにボルト5を締めつけることによって行う。なお、より大きな開口部内に予め固定された貫通スリーブに取付枠30の後縁板をボルト固定する場合もある。
【0041】
このようにして取付枠30が壁面に固定された状態で、図4のように、一方の側板40Bの後縁板40bの中央の穴41に、内側からボルト6を差し込み、後方に突出したボルト6の先に板ナット7を緩く螺着させ、その後縁板40b部分を、取付枠30の前縁板33の右辺部33dの裏側に重なるように移動する。
【0042】
このとき、図5のように、ボルト6の頭部を前方に引いた状態で、その軸部を切欠かれた穴37に差し込み、ボルト6を仮締めする。この作業によって図6のように、側板40Bは取付枠30に仮止めされ、支えなくても脱落しない状態となり、その後、残りの穴41に対してボルトと板ナットによる固定を行う。
【0043】
この作業を他方の側板40Aについて行うことにより、図7のように左右の側板40A、40Bを取付枠30に固定することができる。
【0044】
そして、図7に示しているように、底板50を、その後縁板50b側から側板40A、40Bのスリット45に差し入れ、奥まで押し込み、基部50aの両側の穴51を側板40A、40Bの下縁板40eの穴44に合わせてボルト固定することで、図8のように、底板50を固定することができる。なお、このボルト固定は、ボルトに螺着可能な穴を有する二つ折りされたバネ板からなるクリップナット(図示せず)を、予め下縁板40eを挟むように取り付けておき、そのクリップナットにボルトを締付ける。
【0045】
この図8の状態で、必要な配管・配線工事を行い、図9のように、冷媒管や各種ケーブルからなる管・ケーブル体10を開口部1bから引き出し、底板50の開口から引き出し、ラック2に沿って配管・配線する。そして、冷媒管関係の管・ケーブル体10についてはラック2から引き出してその近傍に多数設置された各個別の室外機(図示せず)に接続する。また、他のケーブルについてもそれぞれ適当な位置でラック2から引き出して配線する。
【0046】
この配管・配線工事の後に、図9に示しているように、前板70を側板40A、40Bの前縁板にボルト固定する(この固定作業も前記同様にクリップナットを用いる)。
【0047】
次に、図10のように、奥側の上板構成板61を、スペーサ64を挟んだ状態で(予めスペーサ64を上板構成板61に接着固定しておいてもよい)、側板40A、40Bの奥側上部にボルト8と前記クリップナットを用いて固定する。ただし、この固定に使用するボルト8は、他の取付に用いているボルト6とは異なるヘッド形状のものを使用している。
【0048】
例えば、通常使用するボルト6は、頭部が六角柱で端面にプラス溝(マイナス溝でもよい)が設けられている極めて汎用性が高いものであり(第1のネジ)、作業者が頻繁に使用するプラスやマイナスのドライバービットあるいは6角ボックスレンチで締付け作業が行える。これに対し、奥側の上板構成板61を側板40A、40Bに固定するボルト8は、それ以外の汎用性の低いボルト(第2のネジ)、例えば、頭部が円柱で端面に六角穴が設けられ、六角棒レンチを使用しないと締付け作業ができない六角穴付きボルトを用いている。このような六角棒レンチ使用のボルトの屋外配管・配線工事への使用頻度は非常に低く、メンテンナンス作業者が他の一般的なボルトと同じ感覚でむやみに外したりしないので、後述するコーキング材の剥がれを防ぐことができる。なお、ボルト8(第2のネジ)としては、上記の頭部外形円柱で六角穴付きのボルトの他に、頭部が円柱形、半円球形で、端面に星型溝、非対称溝等が設けられ、プラスやマイナス以外の専用ドライバーでしか締付け作業ができないものを用いてもよい。
【0049】
このようにして、上流側の上板構成板61が側板40A、40Bに固定された後、図11のように、下流側の上板構成板65を、その基部65aの後縁と側縁板65b、65cの後縁が、上板構成板61の基部61aの前縁、側縁板61c、61dと側板40A、40Bとの隙間に入り込むように差し込み、各ネジ溝穴66を上流側の上板構成板61の各穴63に合わせ、ボルト6で締め付け、また、上板構成板65の穴67と側板40A、40Bの穴43とを合わせて、ボルト6で固定する(前記クリップナット使用)ことで、図1、図12に示すように、フードボックス20の組み立てが完了する。
【0050】
そして、図12に示しているように、取付枠30の外周に形成された窪み80に対して、コーキング処理を行うことで、高い防水性が得られる。また、上縁が前方に向かって下がるように傾斜している両側板40A、40Bに固定された二つの上板構成板61、65は、取付枠30から離間するほど低くなるように傾斜しており、しかも取付枠30に近い方の上板構成板61の前縁の下面に、取付枠から遠い方の上板構成板65の後縁の上面が接するように重なり合っているから、上板上に降った雨は、その傾斜に沿って取付枠30から離間する方向へ流れるので、上板を分割したことによる防水性の低下は発生しない。
【0051】
なお、メンテナンス作業などで、フードボックス20の上面側を開口したい場合には、上板構成板61、65同士を連結しているボルト6と、下流側の上板構成板65を側板40A、40Bに固定しているボルト6を外し、前方に引き出すことで取り外すことができる。この場合でも、図13のように、上流側の上板構成板61は固定されたままであるから、その後端部を覆うように流し込まれたコーキング材が剥がれることがなく、コーキング処理をやり直しが不要となる。
【0052】
なお、上記実施形態では、スペーサ64を用いて、下流側の上板構成板65の挿入スペースを確保していたが、図14に示すように、上流側の上板構成板61に、エンボス加工等により、下方へ陥没する陥没部64′を設けて、下流側の上板構成板65の挿入スペースを確保してもよい。また、図示しないが、上流側の上板構成板61の前縁を、上方および側方に僅かに膨出するようにプレス加工し、その膨出により内側に形成されたスペースに下流側の上板構成板65の後縁部を差し込むようにしてもよい。
【0053】
また、上板構成板61、65同士の連結に必要なネジ溝穴66は、前記したように、スリーブ加工、ナット溶接止めの他に、例えば、図15のように、下流側の上板構成板65にカシメ止めされたナット68によって形成することができる。このナット68は、上端のフランジ68aと下端のネジ穴部68bとの間の筒部68cが、外側に開くようにして押しつぶされて、フランジ68aとの間で上板構成板65の下穴の周縁を挟み付けて固定される構造のもので、壁材にその一面側からボルト穴を設ける場合に利用される。この場合、上板構成板61、65を密着させるために、上板構成板61の穴63の径をナット68のフランジ68aの外径より大きくする必要があるので、ボルト6に幅広のワッシャー9を挿入して締めつけている。
【0054】
なお、本発明は、これら図示例に限定されるものではなく、取付枠30、側板40A、40B、底板50、上板構成板61、65、前板70の形状、寸法等は、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更できる。
【0055】
また、上記実施形態では、上板60が前後二つの上板構成板61、65で分割される構造であったが、より多くの上板構成板で前後方向に分割される構造であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1……集合配管・配線用建造物、1a……側壁部、1b……開口部、20……フードボックス、30……取付枠、31……枠本体、32……後縁板、33……前縁板、40A、40B……側板、50……底板、60……上板、61、65……上板構成板、64……スペーサ、70……前板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けるためのフードボックスであって、
前記開口部外側に取付けられる取付枠と、該取付枠の上縁に後端部が重なり合うように取付けられる上板と、前記取付枠の両側縁に後端部が重なり合うように取り付けられる両側板と、該上板及び両側板の前部に取付けられる前蓋と、該両側板に取付けられる底板とに分割構成され、
さらに、前記上板が、前後方向に重なり合う複数枚の上板構成板によって分割構成され、該複数枚の上板構成板のうち、前記取付枠の上縁に重なり合う最奥位置の上板構成板を取り外すことなく、他の上板構成板の取り外しが可能に構成されていることを特徴とする集合配管・配線用建造物取付用フードボックス。
【請求項2】
前記取付枠は、一定幅の帯状板がその長さ方向と直交する線に沿って折り曲げられて前記幅に対応した前後方向の奥行きをもつ角筒状に形成された枠本体と、該枠本体の後端から内方に延び、集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けられる後縁板と、前記枠本体の前端から外方に延び、前記上板と前記両側板が取付けられる前縁板とを備え、
前記枠本体の外周に沿って、集合配管・配線用建造物の側壁部と前記前縁板との間に、コーキング材を充填するための窪み部が構成されており、
前記上板構成板のうち、前記最奥位置の上板構成板の後縁には、前記窪み部に進入して前記取付枠の前縁板の背面に接する縁板が設けられていることを特徴とする請求項1記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックス。
【請求項3】
前記複数の上板構成板は、前記取付枠から離間する程の低い位置にあり、且つ前記取付枠に近い方の上板構成板の前縁の下面に、前記取付枠から遠い方の上板構成板の後縁の上面が接するように重ね合わされた状態で取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックス。
【請求項4】
前記複数の上板構成板のうち、前記最奥位置以外の上板構成板は、前記側板および前記最奥位置の上板構成板に対して、頭部が六角柱あるいは頭部端面にプラス溝またはマイナス溝が形成された使用頻度の高い第1のネジによって固定され、前記最奥位置の上板構成板は、前記第1のネジと異なる形状の使用頻度の低い第2のネジによって前記側板または前記取付枠に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックス。
【請求項1】
集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けるためのフードボックスであって、
前記開口部外側に取付けられる取付枠と、該取付枠の上縁に後端部が重なり合うように取付けられる上板と、前記取付枠の両側縁に後端部が重なり合うように取り付けられる両側板と、該上板及び両側板の前部に取付けられる前蓋と、該両側板に取付けられる底板とに分割構成され、
さらに、前記上板が、前後方向に重なり合う複数枚の上板構成板によって分割構成され、該複数枚の上板構成板のうち、前記取付枠の上縁に重なり合う最奥位置の上板構成板を取り外すことなく、他の上板構成板の取り外しが可能に構成されていることを特徴とする集合配管・配線用建造物取付用フードボックス。
【請求項2】
前記取付枠は、一定幅の帯状板がその長さ方向と直交する線に沿って折り曲げられて前記幅に対応した前後方向の奥行きをもつ角筒状に形成された枠本体と、該枠本体の後端から内方に延び、集合配管・配線用建造物の側壁部の開口部外側に取付けられる後縁板と、前記枠本体の前端から外方に延び、前記上板と前記両側板が取付けられる前縁板とを備え、
前記枠本体の外周に沿って、集合配管・配線用建造物の側壁部と前記前縁板との間に、コーキング材を充填するための窪み部が構成されており、
前記上板構成板のうち、前記最奥位置の上板構成板の後縁には、前記窪み部に進入して前記取付枠の前縁板の背面に接する縁板が設けられていることを特徴とする請求項1記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックス。
【請求項3】
前記複数の上板構成板は、前記取付枠から離間する程の低い位置にあり、且つ前記取付枠に近い方の上板構成板の前縁の下面に、前記取付枠から遠い方の上板構成板の後縁の上面が接するように重ね合わされた状態で取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックス。
【請求項4】
前記複数の上板構成板のうち、前記最奥位置以外の上板構成板は、前記側板および前記最奥位置の上板構成板に対して、頭部が六角柱あるいは頭部端面にプラス溝またはマイナス溝が形成された使用頻度の高い第1のネジによって固定され、前記最奥位置の上板構成板は、前記第1のネジと異なる形状の使用頻度の低い第2のネジによって前記側板または前記取付枠に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の集合配管・配線用建造物取付用フードボックス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−19111(P2013−19111A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151109(P2011−151109)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
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