説明

集塵装置

【課題】整流板の正面視で当該整流板の水平方向における中央部の含塵空気の通流速度の最高速度を抑制し、通流速度を均一化できる集塵装置を提供する。
【解決手段】含塵空気DAの導入口110が形成されたダクト室100と、含塵空気DAを濾過するフィルタ210を配設したフィルタ室200とが、複数の貫通孔301が形成された整流板300を介在させて隣接して配置された集塵装置1において、含塵空気DAが、ダクト室内の上部から下部に向かって整流板300に沿う方向に導入され、複数の貫通孔301を通じてダクト室100からフィルタ室200に通流される構成で、整流板300の正面視で、整流板300の水平方向における中央部に、貫通孔301を有さない無孔部帯306A、306Bが上下方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含塵空気が導入される導入口が形成された有底の上下筒状のダクト室と、含塵空気を濾過するフィルタを配設したフィルタ室とが、複数の貫通孔が形成された整流板を介在させた状態で側方に隣接して配置され、複数の貫通孔を通じてダクト室からフィルタ室に通流した含塵空気をフィルタにより濾過して、濾過により得られた清浄空気をフィルタ室内から排出する集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような集塵装置では、特定箇所に含塵空気の気流が集中し、特定箇所近傍のフィルタが集中的に磨耗するのを抑制するための構成を採用していることがある。例えば、特許文献1では、含塵空気の導入口をダクト室の側面に配設し、ダクト室とフィルタ室との間に介在する整流板に沿って水平方向に、ダクト室内へと含塵空気を通流させている。そして、含塵空気の通流方向に対して所定の角度傾斜させた状態で複数の仕切板を相互に間隔を置いて配設し、含塵空気の気流を複数の貫通孔を備えた仕切板に衝突させて、仕切板に衝突した気流の一部をフィルタ室に向かう気流として分流することで、フィルタ室内に通流させる含塵空気の流量の分布を調整している。
【0003】
また、特許文献1に開示の集塵装置では、ダクト室とフィルタ室との間に介在する整流板について、上部と下部とで単位面積当たりの貫通孔の個数を増減させることで開口率を変化させて、これらの貫通孔を介してフィルタ室内に通流する整流板の単位面積当たりにおける含塵空気の流量の均一化を図っている。これにより、フィルタ室内に配置されたフィルタへのダスト負荷の分布を均一にすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−215607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の集塵装置では、ダクト室の側面に導入口を配設しているが、このようにダクト室とフィルタ室とが整流板を介在させた状態で側方に隣接して配置される構成の集塵装置において、例えば、導入口をダクト室の上側に配設して、含塵空気をダクト室内の上部から下部に向かって通流させる構成を採用する場合がある。この構成の集塵装置では、ダクト室内を上部から下部に向かって通流する含塵空気は、整流板の正面視で、整流板の水平方向における中央部の通流速度が、当該水平方向における他部の通流速度よりも速くなる。
この場合、ダクト室に導入する含塵空気の通流速度を上昇させると、複数の貫通孔を介してフィルタ室に通流する含塵空気の通流速度も上昇するため、当該ダクト室内を通流する含塵空気のうち、整流板の水平方向における中央部を通流する比較的通流速度の速い含塵空気は、フィルタ室内に配設されたフィルタに比較的速い速度(水平方向における最高速度)で直接衝突して、当該フィルタを摩耗又は破損する虞があった。
【0006】
また、整流板の水平方向における中央部と他部とで通流速度が均一化されていないことから、フィルタ室内におけるフィルタの配設位置の違いによりダスト負荷に偏りを生じるとともに、フィルタの磨耗を偏在させていた。その結果、ダスト負荷の小さいフィルタについては払い落し処理を行わなくても十分な集塵能力を発揮できる場合でも、ダスト負荷の大きいフィルタのために払い落し処理を行う必要が生じるなど、集塵装置の運用性を低下させていた。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、整流板の正面視で当該整流板の水平方向における中央部の含塵空気の通流速度を抑制し、水平方向の通流速度を均一化できる集塵装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る集塵装置は、含塵空気が導入される導入口が形成された有底の上下筒状のダクト室と、前記含塵空気を濾過するフィルタを配設したフィルタ室とが、複数の貫通孔が形成された整流板を介在させた状態で側方に隣接して配置され、前記複数の貫通孔を通じて前記ダクト室から前記フィルタ室に通流した前記含塵空気を前記フィルタにより濾過して、濾過により得られた清浄空気を前記フィルタ室内から排出する集塵装置において、前記導入口が前記ダクト室の上側に配設されて、前記含塵空気が、前記ダクト室内の上部から下部に向かって前記整流板に沿う方向に導入されるとともに、前記複数の貫通孔を通じて前記ダクト室から前記フィルタ室に向かって側方に通流される構成で、前記整流板の正面視で、前記整流板の水平方向における中央部に、前記複数の貫通孔を有さない無孔部帯が上下方向に沿って形成されている点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、整流板の貫通孔を通流する含塵空気の通流速度について、水平方向における通流速度の最高速度を抑制して、当該通流速度の均一化を図ることができる。すなわち、ダクト室を上部から下部に通流する含塵空気のうち、整流板の水平方向における中央部の含塵空気の通流速度が最大となるが、前記整流板の正面視で、整流板の水平方向における中央部に、複数の貫通孔を有さない無孔部帯が上下方向に沿って形成されているため、当該中央部においてダクト室からフィルタ室への含塵空気の通流が制限される。これにより、含塵空気の通流速度について、水平方向における最高速度を抑制して、当該通流速度の均一化を図ることができる。よって、フィルタの破損を防止するとともに、磨耗を偏在させることなく分散させることができるため、フィルタの耐用期間の向上に寄与するとともに、フィルタの集塵能力を効率よく発揮させ続けることができ、集塵装置の集塵能力の向上に寄与する。
【0010】
本発明に係る集塵装置の更なる特徴構成は、前記フィルタが、複数の筒状濾布により構成され、前記フィルタ室内の上部から下部に向かって吊り下げ配設されて、前記フィルタ室内において、前記整流板の正面視で前記フィルタ室の水平方向における中央部に、前記複数の筒状濾布が配設されないフィルタ無配設部を備える点にある。
【0011】
本特徴構成は、フィルタの集塵能力を効率よく発揮させるために、フィルタ室のフィルタの配置に関して採り得る構成である。本特徴構成によれば、フィルタ室内において、整流板の正面視でフィルタ室の水平方向における中央部に、複数の筒状濾布が配設されないフィルタ無配設部を備えるため、フィルタ無配設部は、フィルタ室内において、最も流路抵抗の小さい通流空間となる。従って、フィルタ無配設部は、フィルタ室内において最も気体が通流しやすい空間であり、フィルタ室内に通流された含塵空気が整流板側から奥側まで通流することを促進する流路となる。このような流路をフィルタ室内中央部に形成することで、フィルタ室内での含塵空気の拡散を促すことができ、整流板に近いフィルタだけでなく、フィルタ室内に配設されたフィルタ全体を有効に機能させることができる。これにより、フィルタの集塵能力を効率よく発揮させることができる。また、フィルタの磨耗を偏在させることなく、分散させることができるので、設備の耐用期間の向上に寄与する。
【0012】
本発明に係る集塵装置の更なる特徴構成は、前記整流板が、間隔をあけて並行配置された複数の整流板で構成され、前記フィルタ室に近い側の前記整流板に形成された無孔部帯が、前記ダクト室に近い側の前記整流板に形成された無孔部帯より幅広に形成される点にある。
【0013】
本特徴構成は、フィルタの集塵能力を効率よく発揮させるために、整流板に関して採り得る構成である。本特徴構成によれば、含塵空気は、ダクト室からフィルタ室への通流に際し、複数の整流板の貫通孔を通過する必要が生じる。これにより、ダクト室からフィルタ室への含塵空気の通流速度を一層抑えることができる。
また、フィルタ室に近い側の整流板の無孔部帯が、ダクト室に近い側の整流板の無孔部帯より幅広に形成されているので、ダクト室からフィルタ室に向かう含塵空気の通流において、通流速度が最大となる整流板の水平方向中央部の通流をより効果的に制限して、整流板の水平方向の気流速度の均一化を図ることができる。その結果、フィルタの磨耗を偏在させることなく、分散させることができるため、フィルタの集塵能力を効率よく発揮させ続けることができ、集塵装置の集塵能力の向上に寄与する。また、設備の耐用期間の向上に寄与する。
【0014】
本発明に係る集塵装置の更なる特徴構成は、前記複数の整流板の正面視で、隣り合う整流板の一方に形成された前記複数の貫通孔が、隣り合う整流板の他方に形成された前記複数の貫通孔と重ならない位置に配置される点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、複数の整流板の正面視で、隣り合う整流板の一方に形成された複数の貫通孔が隣り合う整流板の他方に形成された複数の貫通孔と重ならない位置に配置されることから、含塵空気は、複数の整流板の正面視方向の直進だけでは複数の整流板の貫通孔を通過することができない。すなわち、ダクト室からフィルタ室への含塵空気の通流に際し、整流板への衝突と、整流板に沿っての迂回(屈曲)が生じやすくなる。
従って、含塵空気は、ダクト室からフィルタ室への通流に際し、整流板への衝突による屈曲により、より長い流路長が要求されることになるため、一層の通流速度の抑制と、整流板におけるダスト捕捉率の向上を図ることができる。これにより、フィルタ室のフィルタの磨耗及び破損を抑制して、設備の耐用期間の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る集塵装置の概略構成図
【図2】第1実施形態に係る集塵装置の整流板の正面視図
【図3】第1実施形態に係る集塵装置の整流板の配置を説明する拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
本発明に係る集塵装置の第1実施形態を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、集塵装置の概略構成図であり、(a)は(c)のIa−Ia矢視線に沿った縦断面図、(b)は(c)のIb−Ib矢視線に沿った横断面図、(c)は集塵装置の正面図である。
【0018】
図1に示すように、集塵装置の機体1は、横断面視で概略長方形の矩形に形成され、正面視で概略有底筒状に形成されており、その下部は、概略四角錘形状のホッパー500として形成されている。また、機体1の内部には、上側に含塵空気DAを導入する導入口110を形成したダクト室100と、含塵空気DAを濾過し清浄空気CAとする多数のフィルタ210を配設したフィルタ室200とを、多数の貫通孔301が形成された2枚のパンチングメタル製の整流板300(フィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300B)を介在させた状態で側方に隣接配置して構成されている。
【0019】
上記構成に基づき、本実施形態に係る集塵装置は、含塵空気DAを導入口110からダクト室100の上部から下部への下降流としてダクト室100に導入し、ダクト室100に導入した含塵空気DAを、主として、整流板300に形成された貫通孔301を通じてダクト室100からフィルタ室200に通流し、フィルタ210により濾過して、濾過により得られた清浄空気CAを、フィルタ210内の下部から上部への上昇流としてフィルタ室200の上部に設けられたクリーン室400に通流し、クリーン室400が備える排出口410から排出することで、濾過処理を実行する。
【0020】
以下では、含塵空気DAの通流順に、ダクト室100、整流板300、フィルタ室200の順に、構成を説明する。
【0021】
〔ダクト室〕
図1(a)に示すように、ダクト室100は、集塵装置の機体1の内部を、フィルタ室200側に隣接する側壁としての整流板300により区画して形成され、上下方向に縦長の有底筒状の空間として形成されている。また、ダクト室100の上側には、ダクト室100内に含塵空気DAを導入する導入口110が配設されている。
【0022】
また、ダクト室100の下部に、上部から下部に向かうにつれてフィルタ室200側に向かって先細になる斜面形状部分101(テーパー形状部分)を備えており(図1(a)参照)、斜面形状部分101の先細部分102からフィルタ室200に含塵空気DAが通流可能に、ダクト室100とフィルタ室200とが連接されている。
【0023】
ダクト室100は、このように、下部に斜面形状部分101を備えることにより、斜面形状部分101に沿って通流する含塵空気DAの気流を生じさせている。そして、ダクト室100の底部のダストを、当該気流により先細部分102を通じてフィルタ室200(ホッパー500)に吐出し、ダクト室100の底部にダストが堆積するのを防止している。
【0024】
〔整流板〕
図1(a)に示すように、本実施形態では、整流板300として、図2(a)、(b)に示すパンチングメタル製で平板状の2枚の整流板(フィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300B)を、ダクト室100とフィルタ室200との間に、間隔をあけて並行配置している。整流板300は、板状に形成され、上下方向に縦長の長方形状に構成されている。また、整流板300は、その平面部分が、ダクト室100内を上部から下部へ向かう方向に通流する含塵空気DAの通流方向に沿うように配設されている。なお、図2(a)は、フィルタ室側整流板300A、図2(b)は、ダクト室側整流板300Bの正面図である。また、図3(a)は、2枚の整流板300A、300Bを並行配置して構成した整流板300を、ダクト室側整流板300B側からみた拡大正面視図、図3(b)は、(a)のIIIb−IIIb矢視線に沿った縦断面図である。
【0025】
フィルタ室側整流板300Aには、円形で多数の貫通孔301Aが、整流板の水平方向及び上下方向に後述する所定のピッチで形成され、同様に、ダクト室側整流板300Bには、円形で多数の貫通孔301Bが、整流板の水平方向及び上下方向に後述する所定のピッチで形成されている。これらの貫通孔301A及び301Bを通じて、ダクト室100からフィルタ室200に、含塵空気DAが通流可能に形成されている。そして、多数の貫通孔301A、301Bのうち、フィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bの下部に形成された各下部貫通孔301Ab、301Bbの開口面積が、フィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bの上部に形成された各上部貫通孔301Aa、301Baの開口面積より小さく形成されている。
【0026】
例えば、図2(a)、(b)では、上部41列に形成された上部貫通孔301Aa、301Baが、70mmの穴径で円形に形成され、下部20列に形成された下部貫通孔301Ab、301Bbは、60mmの穴径で円形に形成されている。
【0027】
このように、各下部貫通孔301Ab、301Bbの開口面積を、各上部貫通孔301Aa、301Baの開口面積より小さく形成することで、各下部貫通孔301Ab、301Bbでは、各上部貫通孔301Aa、301Baに比べて、フィルタ室200に通流する含塵空気DAの通流速度の抑制割合を増大させることができる。
【0028】
なお、図1(a)に示すように、開口面積の小さい下部貫通孔301Ab、301Bbは、上下方向において、ダクト室100の斜面形状部分101と同程度の高さからダクト室100の下部に向かって形成するのが好適である。なぜなら、ダクト室100の上部に配設された導入口110からダクト室100内の上部から下部に向かってダクト室側整流板300Bに沿う方向に導入された含塵空気DAは、特に、ダクト室100の斜面形状部分101に衝突することで、フィルタ室200の方向にスムーズに通流方向を変化させられる。従って、含塵空気DAのフィルタ室200の方向への通流速度成分は、特に斜面形状部分101と同程度の高さからダクト室100の下部において増大する。これに対応する位置に開口面積の小さい下部貫通孔301Ab、301Bbを配設することが、含塵空気DAのフィルタ室200の方向への通流速度を抑制する上で、特に効果的だからである。
【0029】
また、フィルタ室側整流板300Aの水平方向における複数の貫通孔301Aは、一定のピッチで形成された中央部のピッチ(センターピッチ)302Aと、一定のピッチで形成された他部のピッチ303Aとを備えるように配置され、中央部のピッチ(センターピッチ)302Aが他部のピッチ303Aよりも幅広となるように構成されている。これにより、中央部のピッチ302Aで配設される貫通孔301Aの隣接間に、貫通孔301Aを有さない無孔部帯306Aが上下方向に沿って形成されるとともに、無孔部帯306A以外の他部に、貫通孔301Aがピッチ303Aで配設される有孔部帯307Aが上下方向に沿って形成されることになる。同様に、ダクト室側整流板300Bの水平方向における複数の貫通孔301Bは、一定のピッチで形成された中央部のピッチ(センターピッチ)302Bと、一定のピッチで形成された他部のピッチ303Bとを備えるように配置され、中央部のピッチ(センターピッチ)302Bが他部のピッチ303Bよりも幅広となるように構成されている。これにより、中央部のピッチ302Bで配設される貫通孔301Bの隣接間に、貫通孔301Bを有さない無孔部帯306Bが上下方向に沿って形成されるとともに、無孔部帯306B以外の他部に、貫通孔301Bがピッチ303Bで配設される有孔部帯307Bが上下方向に沿って形成されることになる。なお、ピッチとは、隣接する貫通孔301A同士、或いは隣接する貫通孔301B同士の水平方向又は上下方向における中心間の距離をいう。
例えば、図2(a)、(b)では、センターピッチ302A、302Bを夫々250mm、150mm、他部のピッチ303A、303Bを100mmとして、整流板300A、300Bの上部、下部によらず、一定のピッチで形成されている。
また、上下方向のピッチ304A、304Bは、整流板300A、300Bの上部、下部及び水平方向の位置によらず、100mmで一定に形成されている。
上記により形成される無孔部帯306A、306B及び有孔部帯307A、307Bは夫々、フィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bの上下方向に長い帯状に形成されることになる。
【0030】
このように、水平方向の中央部のセンターピッチ302A、302Bを、他部のピッチ303A、303Bより幅広に形成することで、貫通孔301A、301Bを有さない無孔部帯306A、306Bが上下方向に沿って形成され、当該無孔部帯306A、306Bによりフィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bの中央部における含塵空気DAの通流を制限し、貫通孔301A、301Bを通流する含塵空気DAの通流速度について、水平方向の通流速度の最高速度を抑制し、均一化を図ることができる。
【0031】
また、フィルタ室側整流板300Aのセンターピッチ302Aが、ダクト室側整流板300Bのセンターピッチ302Bに比べて幅広に構成されており、無孔部帯306Aが無孔部帯306Bよりも幅広に構成されている。これにより、ダクト室100側からフィルタ室200側に通流する含塵空気DAの通流について、通流速度が最も速くなるフィルタ室200内の水平方向中央部の通流を、より確実に制限することができる。従って、ダクト室100側からフィルタ室200側へ向かう含塵空気DAの気流の通流速度の最高速度を抑制することが可能となる。
【0032】
続いて、2枚のフィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bを並行配置する場合の配置関係について説明する。
図3(a)に示すように、2枚のフィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bを並行配置する場合には、フィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bの正面視で、フィルタ室側整流板300Aに形成された複数の貫通孔301Aが、ダクト室側整流板300Bに形成された複数の貫通孔301Bと重ならない位置に配置されるように構成する。
【0033】
図3(b)に示すように、含塵空気DAは、ダクト室100からフィルタ室200への通流に際し、フィルタ室側整流板300Aの貫通孔301A及びダクト室側整流板300Bの貫通孔301Bを通過する必要が生じ、含塵空気DAは、フィルタ室側整流板300A及びダクト室側整流板300Bの正面視方向の直進だけでは、貫通孔301A及び貫通孔301Bを通過することができない。すなわち、ダクト室100からフィルタ室200への含塵空気DAの通流に際し、フィルタ室側整流板300Aへの衝突と、フィルタ室側整流板300Aに沿っての迂回(屈曲)が生じやすくなる。従って、フィルタ室側整流板300A及びダクト室側整流板300Bにおいて、一層の通流速度の抑制と、ダスト捕捉率の向上を図ることができる。これにより、フィルタ室200のフィルタ210の磨耗及び破損を抑制して、設備の耐用期間を向上させることができる。
【0034】
さらに、図2(a)(b)におけるフィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bの最下部の貫通孔を有さない金属部305A、305Bの長さの調整や、フィルタ室側整流板300Aの下端から下方に先細部分102の内壁に沿うように延伸連接されるガイド310の形状や大きさの調整により、集塵装置の機体1(先細部分102)と、ダクト室側整流板300Bの下端と、ガイド310の下端との間に形成される隙間の形状及び大きさを調整できる。これにより、フィルタ室200の下部に連接されたホッパー500に通流する含塵空気DAの通流速度を抑制することができる。
【0035】
〔フィルタ室〕
図1(a)に示すように、フィルタ室200は、集塵装置の機体1の内部を、ダクト室100側に隣接する側壁としての整流板300により区画して形成され、上下方向に縦長の有底筒状の空間として形成されている。なお、フィルタ室200は、ダクト室100と集塵装置の機体1を共有している。ダクト室100とフィルタ室200とは、主として、フィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bに形成されている貫通孔301A、301Bを介して、含塵空気DAが通流可能に形成されている。また、ダクト室100の斜面形状部分101の先細部分102と、フィルタ室側整流板300Aの下端から下方に先細部分102の内壁に沿うように延伸連接されたガイド310と、ダクト室側整流板300Bの下端との隙間からも通流可能に形成されている。
【0036】
図1(a)、(b)に示すように、フィルタ室200の内部には、含塵空気DAを濾過する多数のフィルタ210が、フィルタ室200内の上部から下部に向かって吊り下げ配設されている。フィルタ210は、直線棒状の支持バーと平面視円形状の支持リングとを溶接して得られる、空気が流通可能な円筒形のかご状に形成された支持体(図示せず)に、集塵の目的に応じた所定の集塵能力を備える濾布(図示せず)を覆設させて構成されている。
【0037】
また、フィルタ210は、図1(a)に示すように、フィルタ室200の天井部201に開口されている吊り下げ孔202を通して、天井部201からフィルタ室200の内部に、上下方向にフィルタ室側整流板300Aの上端及び下端より長く、また、ガイド310の下端よりは短く、濾布が覆設されて多数吊り下げられている。これにより、斜面形状部分101の先細部分102からガイド310により案内されて、フィルタ室200のホッパー500に通流する含塵空気DAが、フィルタ210の下端には直接吹付けられない構成とされている。
【0038】
さらに、フィルタ210は、図1(b)に示すように、整流板300の正面視で水平方向におけるフィルタ室200の中央部のピッチ(例えば、330mm)が、他部のピッチ(例えば、180mm)より幅広に形成される状態で配設される。
すなわち、フィルタ室200内における整流板300の正面視でフィルタ室200の水平方向の中央部において、フィルタ210が配設されないフィルタ無配設部220が形成されるとともに、フィルタ無配設部220以外の他部に、フィルタ210が他部のピッチで配設されるフィルタ配設部230が形成されている。このように、中央部にフィルタが配設されない領域(整流板300の正面視で、上下方向に沿う帯状の領域)を形成し、中央部を他部より通流しやすく形成することで、含塵空気DAの通流を、フィルタ室200の奥側まで促進することができる。
なお、フィルタ室側整流板300Aの無孔部帯306Aとフィルタ室内のフィルタ210が配設されない領域(フィルタ無配設部220)とは、整流板300の正面視で、上下方向及び水平方向において略同程度に、重なるように配設されている。
【0039】
フィルタ室200の上部には、天井部201を区画壁として、クリーン室400が形成されている。また、クリーン室400の側面には、濾過により得られた清浄空気CAを集塵装置の機体1外に排出する排出口410が形成されている。さらに、フィルタ室200(クリーン室400)の上方は閉鎖されている。また、フィルタ室200の底部には、ホッパー500が連設され、フィルタ210から払い落とされたダストを堆積可能に構成されている。なお、ホッパー500の下部には、図示しないが、堆積したダストを排出可能な排出弁が配設されている。
【0040】
〔濾過処理〕
次に、上記のように構成された集塵装置の運転による濾過処理について説明する。まず、濾過対象とされる含塵空気DAは、導入口110を介してダクト室100内の上部から下部に向かって、ダクト室側整流板300Bに沿う方向に導入される。
【0041】
導入口110からダクト室100内に導入された含塵空気DAは、ダクト室100内の上部から下部に向かう速度成分が大きく、当該含塵空気DAの多くはダクト室100の下部方向に向かって通流するが、一部は、隣接するフィルタ室200からの吸引作用を受けて、ダクト室100からフィルタ室200に向かって通流する。このダクト室100からフィルタ室200に向かう気流は、ダクト室100の側壁を形成しているダクト室側整流板300B、フィルタ室側整流板300Aの上部に形成された各上部貫通孔301Ba、301Aaを通じて、フィルタ室200に通流する。この際には、ダクト室100を上部から下部に通流する含塵空気DAのうち、フィルタ室側整流板300A及びダクト室側整流板300Bの水平方向における中央部の含塵空気DAの通流速度が最大となるが、フィルタ室側整流板300A及びダクト室側整流板300Bの水平方向の中央部に無孔部帯306A及び無孔部帯306Bが形成されているため、当該中央部においてダクト室100からフィルタ室200への含塵空気DAの通流が制限される。
また、各上部貫通孔301Ba、301Aaは、整流板300B、300Aの下部に形成された各下部貫通孔301Bb、301Abに比べて開口面積が大きいことから、比較的、通流速度を抑制されることなく、フィルタ室200に向かって通流する。
【0042】
一方、導入口110からダクト室100に導入された含塵空気DAの気流の多くは、ダクト室100の下部方向に向かって通流し、ダクト室100の下部に形成された斜面形状部分101に衝突してフィルタ室200の方向にスムーズに通流方向を変化させられるため、ダクト室100からフィルタ室200に向かって側方に通流される含塵空気DAの通流速度は、ダクト室100の下部に対応する部分で最高速度となる。
そして、最高速度となった、ダクト室100の下部でフィルタ室200に向かって側方に通流される含塵空気DAの気流は、ダクト室100の下部の側壁を形成しているダクト室側整流板300B、フィルタ室側整流板300Aの下部に形成された開口面積の小さい各下部貫通孔301Bb、301Abにより通流速度を抑制された上で、フィルタ室200に通流する。
【0043】
以上のように、本実施形態の集塵装置によれば、フィルタの磨耗及び破損の原因となる、最高速度を生じるダクト室100の下部に対応する部分における含塵空気DAの気流については通流速度を抑制した上で、フィルタ室側整流板300A、ダクト室側整流板300Bの各貫通孔301A、301Bを介してダクト室100からフィルタ室200に通流する。よって、フィルタ室200に通流する含塵空気DAの通流速度の最高速度を抑制して、フィルタ210の摩耗及び破損を防止してフィルタ寿命を延ばすことができる。
【0044】
次に、フィルタ室200に通流された含塵空気DAは、フィルタ室200の内部において、上部から下部に向かって吊り下げ配設された複数の筒状濾布により構成されるフィルタ210により濾過される。
すなわち、フィルタ室200内の含塵空気DAは、フィルタ室200の下流側に配設されたブロア(図示せず)の吸引作用により、フィルタ210内に吸引される。含塵空気DAは、フィルタ210内への吸引の際に、濾布を通過することにより濾過されて、フィルタ210内では清浄空気CAとなっている。濾過により得られたフィルタ210内の清浄空気CAは、円筒形に形成されたフィルタ210内を上部に向かって通流し、吊り下げ孔202からクリーン室400に排出され、排出口410を通じてクリーン室400の内部から排出される。
【0045】
以上の濾過処理により、導入口110から集塵装置内に導入された含塵空気DAは、濾過により得られた清浄空気CAとなって、排出口410から集塵装置外に排出される。
よって、ダクト室100に導入する含塵空気DAの通流速度を上昇させて、集塵装置の単位時間当たりの濾過量を増加させつつ、フィルタ室200に通流する含塵空気DAの通流速度の最高速度(水平方向における最高速度も含む)を抑制して、フィルタ210の摩耗及び破損を防止してフィルタ寿命を延ばすことができる。
【0046】
〔払い落し処理〕
なお、以上の濾過処理によりフィルタ210の濾布に付着したダストは、クリーン室400内において各フィルタ210の上部から圧縮空気を噴出可能な圧縮空気噴出手段(図示せず)により、適切なタイミングでクリーン室400側からフィルタ210内に圧縮空気を噴出させる払い落し処理を行うことでフィルタ210から払い落され、フィルタ室200の底部のホッパー500に堆積される。このような払い落し処理により、フィルタ210の繰り返し使用が可能となる。
【0047】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る集塵装置は、第1実施形態において、2枚の整流板300A、300Bで構成される整流板300を、いずれか1枚で構成する。
【0048】
本実施形態によれば、第1実施形態に比べ、ダクト室100からフィルタ室200への含塵空気DAの通流速度の抑制力は低下するが、ダクト室100内において整流板300の水平方向における最高速度、及びダクト室100の下部から各下部貫通孔301Abを介してフィルタ室200に通流する通流速度の最高速度をある程度抑制することができる。また、整流板300の配設等のメンテナンスが容易となるとともに、ダクト室100からフィルタ室200に通流する際の含塵空気DAの圧損も小さく済む。従って、本実施形態により、ダクト室100からフィルタ室200へ通流する含塵空気DAの通流速度(最高速度)を許容し得る範囲まで低下できる場合は、本実施形態の採用により、保守性の向上や圧損の低下を図ることができる。
【0049】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る集塵装置は、上記第2実施形態に係るフィルタ室側整流板300Aに代えて、整流板300の上部と下部で同一の穴径で貫通孔を形成した整流板(図示しない)を配設するものである。本実施形態によれば、ダクト室100の下部からフィルタ室200に通流する含塵空気DAの通流速度の最高速度の抑制力は小さくなるが、整流板300がシンプルな構造になるので、廉価に集塵装置1を構成することができる。
【0050】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、整流板に形成される貫通孔の形状が円形のものを例示したが、貫通孔の形状は、例えば、正方形、長方形、楕円形等の他の形状であってもよい。
【0051】
(2)上記実施形態では、整流板の上部と下部の各貫通孔を、穴径が70mmと60mmの円形として、開口面積が2種類に異なるものを例示したが、下部の各貫通孔の開口面積が上部の各貫通孔の開口面積より小さければ、穴径の具体的な数値は適宜変更することができる。また、整流板の上部から下部に向かって開口面積が小さくなるように、開口面積を3種類以上に変更して各貫通孔を形成してもよい。
【0052】
(3)上記実施形態では、2枚の整流板の夫々に形成される各貫通孔を整流板の正面視で重ならない位置となるように並行配置させたが、含塵空気がフィルタ室内のフィルタにある程度直接送風されてもよい場合には、ダスト捕捉率や圧損の程度、通流速度の抑制の程度を変更するため、各貫通孔を整流板の平面視で一部或いは全部が重なるように、2枚の整流板を並行配置させてもよい。同様に、2枚ではなく、3枚以上の整流板を並行配置させてもよい。
【0053】
(4)上記実施形態では、センターピッチ(各ピッチは一定)を他部のピッチ(各ピッチは一定)よりも幅広に形成して、整流板に無孔部帯及び有孔部帯を形成したが、有孔部帯に形成される貫通孔のピッチ(他部のピッチ)を一定にせずに、有孔部帯を形成してもよい。
また、整流板に形成される貫通孔の水平方向のピッチを、図2のように、センターピッチと他の部分のピッチの2種類とするものを例示したが、水平方向のピッチを3種類以上として、水平方向における風速のより一層の均一化を図ってもよい。
さらに、2枚の整流板のそれぞれに、無孔部帯と有孔部帯とを形成するように構成したが、何れか一方にのみ無孔部帯を構成するように構成してもよい。
【0054】
(5)上記実施形態では、整流板に形成される貫通孔の上下方向のピッチを、図2のように、整流板の上部、下部によらず、一定に形成するものを例示したが、上下方向のピッチを、下部において、上部より大きく形成することで、含塵空気の通流速度の抑制性能を調整してもよい。
【0055】
(6)上記実施形態では、フィルタとして円筒形状のものを例示したが、フィルタの形状は円筒形状に限定されるものでなく、例えば、断面が三角形以上である多角形筒状や楕円形状等に構成されていてもよい。また、1つ或いはそれ以上の角部の内角が180度以上であるような断面形状、例えば星型や多数のひだ部を備える形状であってもよい。
【0056】
(7)上記実施形態では、上下方向にフィルタ室側整流板の上端及び下端より長く濾布が覆設されたフィルタを例示したが、濾布の長さはこれに限定されるものでなく、例えば、フィルタ室側整流板の上端又は下端の少なくともいずれか一方より短く覆設されたフィルタであってもよい。
【0057】
(8)上記実施形態では、フィルタがフィルタ室内の上部から下部に向かって吊り下げ配設される構成を例示したが、フィルタの配設は吊り下げに限定されるものでなく、フィルタ室内にフィルタを配設できる構成であればよい。例えば、フィルタが、フィルタ室の側壁に固着可能な取付板に取り付けられてフィルタ室内に配設される構成であってもよい。
【0058】
(9)上記実施形態では、フィルタ室内に配設されるフィルタについて、フィルタ室の整流板の正面視で水平方向の中央部のピッチが、他部のピッチより幅広に形成される構成を例示したが、フィルタ室の整流板の正面視で水平方向の中央部のピッチを他部のピッチと同一の幅で形成する構成であってもよい。すなわち、フィルタ室内にフィルタが配設されない領域(フィルタ無配設部)を形成せずに、フィルタを配設してもよい。当該構成によれば、フィルタ室内に配設されるフィルタの体積割合が増加するため、フィルタ室の単位体積当たりの集塵処理量を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、整流板の正面視で当該整流板の水平方向における中央部の含塵空気の通流速度の最高速度を抑制し、水平方向の通流速度を均一化できる集塵装置として有用に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 ダクト室
110 導入口
200 フィルタ室
210 フィルタ
220 フィルタ無配設部
300 整流板
300A フィルタ室側整流板(整流板)
300B ダクト室側整流板(整流板)
301 貫通孔
302A、302B、302C センターピッチ(中央部のピッチ)
303A、303B、303C ピッチ(他部のピッチ)
306A、306B 無孔部帯
410 排出口
CA 清浄空気
DA 含塵空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塵空気が導入される導入口が形成された有底の上下筒状のダクト室と、前記含塵空気を濾過するフィルタを配設したフィルタ室とが、複数の貫通孔が形成された整流板を介在させた状態で側方に隣接して配置され、
前記複数の貫通孔を通じて前記ダクト室から前記フィルタ室に通流した前記含塵空気を前記フィルタにより濾過して、濾過により得られた清浄空気を前記フィルタ室内から排出する集塵装置において、
前記導入口が前記ダクト室の上側に配設されて、前記含塵空気が、前記ダクト室内の上部から下部に向かって前記整流板に沿う方向に導入されるとともに、前記複数の貫通孔を通じて前記ダクト室から前記フィルタ室に向かって側方に通流される構成で、
前記整流板の正面視で、前記整流板の水平方向における中央部に、前記複数の貫通孔を有さない無孔部帯が上下方向に沿って形成されている集塵装置。
【請求項2】
前記フィルタが、複数の筒状濾布により構成され、前記フィルタ室内の上部から下部に向かって吊り下げ配設されて、
前記フィルタ室内において、前記整流板の正面視で前記フィルタ室の水平方向における中央部に、前記複数の筒状濾布が配設されないフィルタ無配設部を備える請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記整流板が、間隔をあけて並行配置された複数の整流板で構成され、
前記フィルタ室に近い側の前記整流板に形成された無孔部帯が、前記ダクト室に近い側の前記整流板に形成された無孔部帯より幅広に形成される請求項1又は2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記複数の整流板の正面視で、隣り合う整流板の一方に形成された前記複数の貫通孔が、隣り合う整流板の他方に形成された前記複数の貫通孔と重ならない位置に配置される請求項3に記載の集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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