説明

集熱システム

【課題】並列に配された集熱部内を流れる流体の流量がばらつくような配管の設置であっても、集熱部内の流体を送水せずにシステムの稼働可否の判断が可能とすることで、コストを低減することができる集熱システムを提供する。
【解決手段】集熱システム1は、流入ヘッダ6と、複数の流入配管7と、流体を太陽熱によって加熱する複数の集熱部2、3、4と、複数の流出配管8と、流体を合流させる流出ヘッダ9と、複数の集熱部のうち、少なくともいずれか1つを除く集熱部について、内部もしくは近傍にある流体の温度を測定する第1温度センサ12と、温度センサによる流体の温度の実測値と、流入配管、集熱部および流出配管によって構成される複数の流路それぞれを流通する流体の流量とに基づいて、流出ヘッダで合流後の流体の温度の合流推定値を導出する演算部15と、合流推定値に基づいて流体の流量を制御する供給制御部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱によって流体を加熱する集熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽熱を利用して温水を生成する装置として、例えば、特許文献1に示されるように、1組の給水用ヘッダ(流入ヘッダ)と温水収集用ヘッダ(流出ヘッダ)それぞれに複数の集熱器を並列接続する構成の集熱システムが特に家庭用として普及している。
【0003】
また、太陽熱によって加熱された温水や水蒸気の熱を空調等に利用する業務用の集熱システムは、直列に接続された複数の集熱器の列(以下「集熱部」と称する)をさらに並列接続することで、屋上面や屋根面の形状に合わせた設置方法としている。
【0004】
こうした業務用の集熱システムでは、日射量が少ないとき等は集熱部内の水の十分な加熱が困難なため、システムを停止し、十分な日射量が確保可能になるとシステムを稼働させるのが一般的である。具体的には、集熱部によって加熱された温水の温度を温度センサによって測定するとともに、測定された温水の温度が要求される温度よりも高い場合には、集熱システムを稼働して集熱部に温水を循環させ、温度センサによって測定された温水の温度が要求される温度よりも低い場合には、集熱システムの稼働を停止するようにしている。
【0005】
空調等で利用されるのは流出ヘッダで合流した後の温水であるため、システムの稼働可否の判断は、本来、各集熱部を流通した温水の合流後の温度に基づいて行われることが望ましい。したがって、各集熱部内の温水の温度を測定し、その測定温度から合流後の温水の温度を推定する構成が考えられるが、すべての集熱部に温度センサを設置することとなれば、コストが上昇してしまう。
【0006】
そこで、温度センサを合流後の配管に設置することが考えられるが、この場合、システムの稼働可否の判断のため、一時的にポンプを駆動して、各集熱部で加熱された温水を、温度センサが設置された合流後の配管まで送水しなければならない。そして、合流後の温水の温度がシステムの稼働条件に対して高い場合には、そのままポンプの駆動を継続してシステムを稼働し、合流後の温水の温度がシステムの稼働条件に対して低い場合には、ポンプの駆動を停止させることとなる。このように、システムの稼働可否の判断のためだけにポンプを駆動させることとなれば、システム全体のエネルギー効率の低下要因となる。
【0007】
上述した理由から、一般に、業務用の集熱システムでは、並列に配された各集熱部に温水を流通させる流路の長さ、配管の太さ、材質等を均一化することで、流量のばらつきを抑える構成が用いられている。このような従来の集熱システムの一例を図5に示す。
【0008】
この図に示す従来の集熱システム100では、集熱器101aを直列に接続した集熱部101を並列に接続し、流体を流通させる流路の長さ、配管の太さ、材質等を均一化している。具体的に、図5におけるアルファベットを用いて流路を示すと、a、b、e、hを通る流路、a、c、f、hを通る流路、a、d、g、hを通る流路は、それぞれ流路の長さ、配管の太さ、材質等が等しい。こうして、流量のばらつきを抑える構成が用いられている。
【0009】
そして、温度センサ102によって、複数の集熱部101のうち、いずれかの集熱部101内の流体の温度T1を測定し、温度センサ103によって、加熱された流体を利用する外部装置104における熱媒体等の温度Taを測定し、温度センサ105によって、集熱部101の上流側の流体の温度Tbを測定する。
【0010】
この構成によれば、各流路の熱量や流通する流体の流量がほとんど等しいため、他の集熱部101の流体の温度もほとんど同じ温度と推定できる。したがって、1つの集熱部101内の流体の温度T1を測定することにより、合流後の流体の温度、すなわち、外部装置104に供給される流体の温度を推定することが可能となる。そして、集熱システム100では、温度センサ102によって測定される温度T1と、温度センサ103、105によって測定される温度Ta、Tbとの温度差がそれぞれ予め定められた値を超えたときに、システムが稼働するように制御されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−219557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記のように流路の長さ、配管の太さ、材質等を均一化して施工することとなると、例えば、a、b間の流量は直列に接続された各集熱部の流量の合計値となり、配管の減肉防止の目的として、配管口径を大きくする必要があるため、配管部材の切断、配管の接合等施工作業が煩雑化してしまい、コストの上昇に繋がるおそれがある。また、この構成では、最も長い流路に合わせて、他の流路も長くしなければならないため、施工する配管が無駄に長くなることもコストの上昇要因であった。
【0013】
そこで、本発明は、施工作業が容易な比較的口径の小さな配管を用いることで低コスト化を図るとともに、並列に配された集熱部内を流れる流体の流量がばらつくような配管の設置であっても、集熱部内の流体を送水せずにシステムの稼働可否の判断を可能とすることで、コストを低減することができる集熱システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の集熱システムは、流体が供給される流入ヘッダと、流入ヘッダに接続され、流体が流通する複数の流入配管と、複数の流入配管のそれぞれに接続され、内部を流通する流体を太陽熱によって加熱する複数の集熱部と、複数の集熱部に接続され、流体が流通する複数の流出配管と、複数の流出配管が接続され、流出配管内を流通する流体を合流させる流出ヘッダと、複数の集熱部のうち、少なくともいずれか1つを除く集熱部について、内部もしくは近傍にある流体の温度を測定する温度測定手段と、温度測定手段によって測定された流体の温度の実測値と、流入配管、集熱部および流出配管によって構成される複数の流路それぞれを流通する流体の流量とに基づいて、流出ヘッダによって合流した流体の温度の合流推定値を導出する演算部と、演算部によって導出された合流推定値に基づいて、流体の流量を制御する供給制御部と、を備える。
【0015】
演算部は、温度測定手段が配されていない流路を流通する流体の温度の推定値を、流路を流通する流体の流量と、温度測定手段が配された流路を流通する流体の温度および流量とに基づいて導出し、各流路を流通する流体の温度の推定値および実測値から合流推定値を導出してもよい。
【0016】
演算部は、以下の数式1に基づいて合流後の流体の温度の合流推定値を導出してもよい。
【数1】

…(数式1)
ただし、
Th:合流推定値
M:集熱部の数
Ti:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の温度
Qi:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の流量
Qt:流出ヘッダで合流した後の流体の流量
【0017】
演算部は、以下の数式2に基づいて合流後の流体の温度の合流推定値を導出してもよい。
【数2】

…(数式2)
ただし、
Th:合流推定値
M:集熱部の数
Ti:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の温度
Vi:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の流速
【0018】
演算部は、以下の数式3に基づいて合流後の流体の温度の合流推定値を導出してもよい。
【数3】

…(数式3)
ただし、
Th:合流推定値
M:集熱部の数
Ti:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の温度
【0019】
複数の流入配管と複数の流出配管のうち、少なくとも一本の配管はフレキシブル管で構成されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、並列に配された集熱部内を流れる流体の流量がばらつくような配管の設置であっても、集熱部内の流体を送水せずにシステムの稼働可否の判断をすることができる。したがって、配管長を短くしたり、口径を小さくしたりして部材コストの低減や、敷設作業の簡素化を実現しつつ、エネルギー効率を低下させることなくシステムの稼働を適切に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態の集熱システムを示す。
【図2】第1の実施形態の集熱システムの制御を説明するためのブロック図である。
【図3】第2の実施形態の集熱システムを示す。
【図4】第2の実施形態の集熱システムの制御を説明するためのブロック図である。
【図5】従来の集熱システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の集熱システム1を示す。本実施形態の集熱システム1は、例えば、建屋の屋上等に設置されるものである。この図に示すように、集熱システム1は、複数の集熱器2a、3a、4aを備える。ここでは、集熱器2a、3a、4aがそれぞれ複数(ここでは4つ)直列に接続されたものを集熱部2、3、4と称する。そして、本実施形態の集熱システム1は、集熱部2、3、4が3列並列に配されている。なお、集熱部2、3、4の数や、集熱部2、3、4の1列当たりの集熱器2a、3a、4aの数は特に限定されるものではない。
【0024】
集熱器2a、3a、4aについては、周知の構成であるため詳細な説明は省略するが、集熱器2a、3a、4aは、太陽からの輻射熱(太陽熱)で流体(水、温水)を加熱する装置である。
【0025】
また、集熱システム1は、太陽熱を利用する外部装置5と接続されている。外部装置5は、例えば、熱を利用して冷却を行うことができる吸収式冷凍機や吸着式冷凍機等であり、空調システム等の一部を構成する。なお、外部装置5は、熱を蓄熱する蓄熱タンクであってもよく、太陽熱によって昇温された流体を利用する装置であれば、その構成や装置の用途等は限定されるものではない。吸収式冷凍機、吸着式冷凍機および蓄熱タンクは、周知の構成であるため詳細な説明は省略する。
【0026】
集熱システム1のうち、外部装置5と接続され、外部装置5で利用(放熱)した後の流体が流入するのが流入ヘッダ6である。流入ヘッダ6には、複数の流入配管7が接続され、流入ヘッダ6から流体が流入配管7に流入する。各流入配管7は、それぞれ集熱部2、3、4に接続されており、流入配管7から集熱部2、3、4に流体が流入するようになっている。
【0027】
集熱部2、3、4を通過して加熱された流体(ここでは、温水)は、各集熱部2、3、4に接続された流出配管8内部を流れる。そして、流出配管8内を流通する流体は、流出配管8が接続された流出ヘッダ9で合流して外部装置5に導かれる。
【0028】
流出ヘッダ9には膨張タンク10が接続されており、日照条件や設置条件、稼働条件等からシステムが停止した場合に、集熱部2、3、4内で滞留した流体が太陽熱によって加熱されて生じる水蒸気を、膨張タンク10側に流入させるようにしている。そして、膨張タンク10側に流入した水蒸気は、当該膨張タンク10および(もしくは)図示しない放熱器によって冷却されて液化することとなる。なお、集熱器2a、3a、4aの種類や、集熱システム1の配管設計によって、蒸気発生の有無や、蒸気の通過する経路は異なる。
【0029】
ここで、本実施形態においては、流入配管7および流出配管8が、フレキシブル管によって構成されており、各流入配管7や各流出配管8の配管長がそれぞれ異なっている。ここでは、各配管7、8の径や材質は同一のものを利用するものとするが、各配管7、8の径や材質が異なるものであってもよい。ただし、流出配管8、流出ヘッダ9および膨張タンク10は、上述したように水蒸気が通過することがあるため、耐熱性の高い部材で構成することが望ましい。以下では、流入ヘッダ6から流出ヘッダ9まで流体が流通する3つの流路を、図示のように、それぞれ流路L1、L2、L3として説明する。
【0030】
また、流出ヘッダ9と外部装置5とを接続する配管には、流出ヘッダ9で合流した流体を外部装置5に送水するポンプ11が設けられている。
【0031】
第1温度センサ12(温度測定手段)は、複数の集熱部2、3、4のうちの1つの集熱部2内にある流体の温度(以下、第1温度センサ12によって測定される温度を「実測値T1」と称す)を測定する。
【0032】
なお、第1温度センサ12は、集熱部2の近傍にある流体の温度を測定してもよい。ここで、集熱部2の近傍とは、流入配管7や流出配管8の内部のうち、集熱部2の出入口近傍であって、これら両配管7、8内部に滞留または流通する流体の温度が、集熱部2内に滞留または流通している流体の温度と許容範囲内の温度差にある位置である。
【0033】
第2温度センサ13は、外部装置5内または外部装置5近傍に配され、集熱システム1から流入した流体と熱交換する媒体やその媒体の容器等の温度Taを測定する。かかる温度Taは、例えば、外部装置5が、吸収式冷凍機であれば吸収溶液温度であり、吸着式冷凍機であれば吸着材温度であり、蓄熱タンクであれば蓄熱タンク温度である。
【0034】
第3温度センサ14は、流入ヘッダ6と外部装置5とを接続する配管6a内の流体の温度Tbを測定する。
【0035】
本実施形態では、集熱システム1は、複数の集熱部2、3、4のうち1つの集熱部2にのみ第1温度センサ12が設けられており、演算部が、その実測値T1から、流出ヘッダ9で合流した後の流体の温度(以下「合流推定値Th」と称す)を推定する。そして、後述する供給制御部が、合流推定値Thと、温度Ta、Tbとに基づいて、システムの稼働の可否を判断する。以下、かかる演算部および供給制御部について、図2を用いて詳述する。
【0036】
図2は、第1の実施形態の集熱システム1の制御を説明するためのブロック図である。この図に示すように、集熱システム1は、演算部15、供給制御部16およびタイマ17を備えている。
【0037】
演算部15には、ポンプ11によって送出される流量Qt、流路を構成する配管長、配管径、配管の材質、集熱部2、3、4等の圧力損失特性等から、各流路L1、L2、L3を流れる流量Q1、Q2、Q3を算出する流量算出式が予め記憶されている。この流量算出式は、例えば、配管長や配管径等が入力可能となっており、各数値の入力によって、流量Q1、Q2、Q3が算出されるように構成されている。そして、設置現場で配管等の敷設が完了した後、集熱システム1の運用を開始する前に、流量Qt、流路を構成する配管長、配管径、配管の材質、集熱部2、3、4等の圧力損失特性等の各数値を入力すると、流量Q1、Q2、Q3が算出されるとともに、当該算出された流量Q1、Q2、Q3および入力された流量Qtが不図示の記憶部に記憶されることとなる。このように、流量Q1、Q2、Q3、Qtが記憶部に記憶されることにより、集熱システム1の運用準備が整う。ここで、Q1、Q2、Q3の算出は、配管設備設計において一般的とされる方法で算出可能であるため、詳細は記載しない。
【0038】
なお、ここでは、流量算出式を演算部15に記憶しておき、配管長等を入力することによって、流量Q1、Q2、Q3が算出されて記憶部に記憶されることとしたが、こうした流量Q1、Q2、Q3の演算を別途に行い、別途算出した流量Q1、Q2、Q3を、単に記憶部に記憶することとしてもよい。いずれにしても、演算部15は、流量Q1、Q2、Q3を特定することができる構成であればよい。ただし、本実施形態のように、演算部15に流量算出式を記憶しておき、配管長等の各種条件を入力することで流量Q1、Q2、Q3を算出するようにすれば、配管を交換した場合等、各種の条件が変更された場合にも、正確な流量Q1、Q2、Q3に即座に変更することが可能となる。
【0039】
そして、演算部15は、集熱システム1の運用中、タイマ17によって所定時間(数ミリ秒〜数分)が計時されるたびに、第1温度センサ12によって測定された流体の温度の実測値T1と、第3温度センサ14によって測定された流体の温度Tbを取得する。そして、取得した実測値T1と温度Tbと、演算部15に記憶された流量Q1、Q2、Q3とから、流出ヘッダ9によって合流した流体の温度である合流推定値Thを以下のように導出する。
【0040】
本実施形態では、それぞれの集熱部2、3、4の日照条件等がほとんど等しく、集熱部2、3、4毎の時間当たりの集熱量Eが等しいものとする。すなわち、集熱部2における時間当たりの集熱量E=集熱部3における時間当たりの集熱量E=集熱部4における時間当たりの集熱量Eとすると、以下の数式4が成立する。
【数4】

…(数式4)
ただし、
E:それぞれの集熱部2、3、4における時間当たりの集熱量[kW]
Q1:第1温度センサ12が配された流路L1の流量[kg/h]
T1:第1温度センサ12によって測定された流体の温度の実測値[℃]
Q2:流路L2を流通する流体の流量[kg/h]
T2:流路L2を流通する流体の温度の推定値[℃]
Q3:流路L3を流通する流体の流量[kg/h]
T3:流路L3を流通する流体の温度の推定値[℃]
Tb:配管6a内の流体の温度[℃]
【0041】
上述した数式4から、数式5が導かれる。演算部15は、以下の数式5を記憶部に記憶している。演算部15は、以下の数式5に示すように、流路L2を流通する流体の流量Q2と、第1温度センサ12が配された流路L1を流通する流体の温度T1および流量Q1とに基づいて、推定値T2を導出する。
【数5】

…(数式5)
【0042】
また、上述した数式4から、数式6が導かれる。演算部15は、同様に、流路L3を流通する流体の温度の推定値T3も、例えば、以下の数式6に基づいて導出する。
【数6】

…(数式6)
【0043】
本実施形態の集熱システム1は、第1温度センサ12の実測値に基づいて、第1温度センサ12を配していない集熱部3、4の内部を流通する流体の温度の推定値を導出できるため、第1温度センサ12を複数配する場合に比べてコストを抑えることができる。
【0044】
続いて、演算部15は、数式5および数式6によって導出された推定値T2、T3と、実測値T1から、以下の数式1に基づいて合流推定値Thを導出する。なお、Qtは設計時にシステム設計者が集熱効率や集熱器設置面積等から決定する、システム毎のある固有値である。
【数7】

…(数式1)
ただし、
Th:合流推定値[℃]
M:集熱部2、3、4の数(本実施形態においては3)
Ti:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の温度(実測値T1、推定値T2、T3)[℃]
Qi:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の流量[kg/h]
Qt:流出ヘッダで合流した後の流体の流量[kg/h]
【0045】
このように、数式1に基づいて合流推定値Thを導出する構成により、演算部15は、合流推定値Thを、それぞれの流出配管8の内部を流通する流体の流量Q1、Q2、Q3の比率に則って、精度よく導出することができる。
【0046】
また、上述した数式1は、流量=流路の断面積×流速であるため、以下の数式2に置き換えて用いることもできる。この場合、流量の代わりに流速を予め導出して記憶しておくこととなる。
【数8】

…(数式2)
ただし、
Vi:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の流速[m/s]
【0047】
また、演算部15は、上述した数式1に代えて、以下の数式3に基づいて合流推定値Thを導出してもよい。
【数9】

…(数式3)
【0048】
この場合、数式1や数式2を用いる方法と比べ、Thを推定する精度は低下するが、数式3に基づいて合流推定値Thを導出する構成により、演算部15は、合流推定値Thを、より簡易な計算処理で導出することができる。
【0049】
供給制御部16は、演算部15によって導出された合流推定値Thに基づいて、集熱システム1内を流れる流体の流量を制御する。具体的には、供給制御部16は、図2に示すように、演算部15から合流推定値Th、第2温度センサ13、第3温度センサ14からそれぞれ温度Ta、Tbを取得する。そして、供給制御部16は、Th>Ta+αかつTh>Tb+βとなった場合にポンプ11を駆動制御し、Th<Ta+γまたはTh<Tb+δとなった場合にポンプ11を停止制御する(ただし、α、β、γ、δは供給制御部16に予め入力される定数とする)。
【0050】
仮に、合流推定値Thではなく、単に実測値T1を用いてシステムの稼働可否の判断を行う場合、T1>Ta+αであっても、温度を測定していない他の集熱部3、4で加熱された流体の温度が低く、実際にはTh<Ta+αとなる場合がある。同様に、T1>Tb+βであっても、Th<Tb+βとなる場合がある。これらの場合、合流後の流体の温度が低過ぎて外部装置5による熱利用ができないまま、集熱システム1が稼働して逆放熱となってしまうこととなる。供給制御部16は、合流推定値Thに基づいてシステムの稼働の可否を判断するため、このような事態を回避できる。
【0051】
上述したように、本実施形態の集熱システム1は、1つの集熱部2に配された第1温度センサ12のみで合流推定値Thを導出でき、第1温度センサ12の数を最小に抑えてコストを低減することができる。また、合流推定値Thを導出するため、ポンプ11を稼働させて集熱部2、3、4内の流体を送水させずとも、集熱システム1の稼働の判断を遂行できる。この合流推定値Thは、複数の流入配管7それぞれの内部を流通する流体の流量Q1、Q2、Q3の比率を勘案して導出されるため、集熱システム1は、流量Q1、Q2、Q3を均一化するために、流量調整用のバルブを設けたり、流入ヘッダ6から流出ヘッダ9への複数の流路L1、L2、L3の長さ、配管の太さ、材質等を均一化する必要がなく、部品の調達コストや施工コストを低減できる。
【0052】
また、長尺(一般に20m程度)のフレキシブル管は、口径が大きくなる(一般に20mm以上)と施工性が低下することから、口径の小さなもののみ販売されているため、従来では流入配管および流出配管にフレキシブル管を用いることができなかった。本実施形態の集熱システム1は、上記のように、複数の流路L1、L2、L3の流量を均一化する必要がなく、さらに、図5のa、b間のように流量が多くなる箇所がないことから、配管の口径を大きくする必要もないため、流入配管7および流出配管8をフレキシブル管で構成することができる。
【0053】
可撓性を有するフレキシブル管を用いれば、配管の配置の自由度が向上し、施工先の環境に応じて変形可能となる。そして、耐熱温度の高い長尺のフレキシブル管を用いることにより、特に、上述した水蒸気が通過する流出配管8等の接合部分に耐熱性の高いシール材を用いる箇所の数を低減でき、また、水蒸気の通過しない箇所についても、熱伸縮吸収部や配管支持金具の設置が不要となること等から、さらなる施工コストの低減が可能となる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態における集熱システム20について説明する。第2の実施形態では、上記第1の実施形態と第1温度センサ12a、12bの数および演算部21の処理が異なるので、ここでは、上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる第1温度センサ12a、12bの数および演算部21についてのみ説明する。
【0055】
図3は、第2の実施形態における集熱システム20を示し、図4は、第2の実施形態の集熱システム20の制御を説明するためのブロック図である。第2の実施形態では、第1温度センサ12a、12bが2つの集熱部2、3にそれぞれ配されている。
【0056】
演算部21は、第1温度センサ12aによって測定された実測値T1および第1温度センサ12bによって測定された実測値T1それぞれに基づいて、上記の式から合流推定値Th、Thを導出し、その平均値から合流推定値Thを導出する。このように、温度センサの数を増やすことで、演算部21は、合流推定値Thをより高精度に導出できる。
【0057】
また、演算部21は、導出した合流推定値Th、Thのうち、いずれか低温の方に基づいて、システムの稼働の可否を判断してもよいし、いずれか高温の方に基づいて、システムの稼働の可否を判断してもよい。
【0058】
また、複数の集熱部2、3、4のいずれかが、季節や時間帯等によっては日陰になり易い等、日照条件にばらつきがある場合もあり得る。この場合、演算部21が、例えば、季節や時間帯等に応じて、第1温度センサ12a、12bのうち、他の集熱部4の日照条件とより等しい集熱部の流体の温度を測定していると考えられる方の実測値を用いて、合流推定値Thを導出するようにしてもよい。かかる構成により、外部環境の変化による影響を排除し、演算部21は、より高精度に合流推定値Thを導出することが可能となる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、3つの流路L1、L2、L3それぞれの流量が異なったが、いずれか1つの流路のみが、他の流路と流量が異なる構成も含まれる。また、上述した実施形態では、流入配管7および流出配管8すべてがフレキシブル管である構成を例に挙げたが、いずれか一本のみがフレキシブル管であってもよいし、流入配管7および流出配管8の全てが固定配管であっても構わない。
【0060】
また、上述した実施形態では、複数の流路L1、L2、L3が3つである例を挙げたが、流路の数は2つであっても4つ以上であってもよい。また、第1温度センサ12は、流路が4つ以上の場合において、複数の流路のうち、少なくともいずれか1つを除く流路に配されればよい。つまり、複数の集熱部が設けられた場合において、1つの集熱部を除く他の全ての集熱部に第1温度センサ12を設けることとしてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、流体として水(温水)を例に挙げたが、水に限らず、熱伝達可能な流体であればよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、第1温度センサ12は、集熱部2内の出口付近(下流側)に配されるが、例えば、入口付近(上流側)に配されてもよい。また、第1温度センサ12は、直接流体の温度を測定する構成に限らず、集熱器2a、3a、4aの集熱パネルや配管の温度を測定して間接的に流体の温度を検出してもよい。
【0063】
なお、上述した実施形態では、集熱部2、3、4それぞれの時間当たりの集熱量Eは等しいものとしたが、実際には、季節や時間帯等によって日陰になる等、集熱部2、3、4ごとに集熱量Eが変化する場合がある。そこで、予め、集熱部2、3、4ごとの時間当たりの集熱量Eの変化を測定したり、予測したりして、季節や時間帯等の条件に応じて所定の補正係数を考慮したうえで合流推定値Thを導出してもよい。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、太陽熱によって流体を加熱する集熱システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、20 集熱システム
2、3、4 集熱部
6 流入ヘッダ
7 流入配管
8 流出配管
9 流出ヘッダ
12、12a、12b 第1温度センサ(温度測定手段)
15、21 演算部
16 供給制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が供給される流入ヘッダと、
前記流入ヘッダに接続され、前記流体が流通する複数の流入配管と、
前記複数の流入配管のそれぞれに接続され、内部を流通する流体を太陽熱によって加熱する複数の集熱部と、
前記複数の集熱部に接続され、前記流体が流通する複数の流出配管と、
前記複数の流出配管が接続され、該流出配管内を流通する前記流体を合流させる流出ヘッダと、
前記複数の集熱部のうち、少なくともいずれか1つを除く該集熱部について、内部もしくは近傍にある前記流体の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段によって測定された流体の温度の実測値と、前記流入配管、前記集熱部および前記流出配管によって構成される複数の流路それぞれを流通する流体の流量とに基づいて、前記流出ヘッダによって合流した流体の温度の合流推定値を導出する演算部と、
前記演算部によって導出された前記合流推定値に基づいて、前記流体の流量を制御する供給制御部と、を備えたことを特徴とする集熱システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記温度測定手段が配されていない流路を流通する前記流体の温度の推定値を、該流路を流通する流体の流量と、前記温度測定手段が配された前記流路を流通する前記流体の温度および流量とに基づいて導出し、各流路を流通する流体の温度の推定値および実測値から前記合流推定値を導出することを特徴とする請求項1に記載の集熱システム。
【請求項3】
前記演算部は、以下の数式1に基づいて前記合流後の流体の温度の合流推定値を導出することを特徴とする請求項2に記載の集熱システム。
【数1】

…(数式1)
ただし、
Th:合流推定値
M:集熱部の数
Ti:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の温度
Qi:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の流量
Qt:流出ヘッダで合流した後の流体の流量
【請求項4】
前記演算部は、以下の数式2に基づいて前記合流後の流体の温度の合流推定値を導出することを特徴とする請求項2に記載の集熱システム。
【数2】

…(数式2)
ただし、
Th:合流推定値
M:集熱部の数
Ti:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の温度
Vi:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の流速
【請求項5】
前記演算部は、以下の数式3に基づいて前記合流後の流体の温度の合流推定値を導出することを特徴とする請求項2に記載の集熱システム。
【数3】

…(数式3)
ただし、
Th:合流推定値
M:集熱部の数
Ti:複数の流路のうちi番目の流路を流通する流体の温度
【請求項6】
前記複数の流入配管と前記複数の流出配管のうち、少なくとも一本の配管はフレキシブル管で構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の集熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−79758(P2013−79758A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219881(P2011−219881)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)