説明

集積回路装置、増幅器および通信機モジュール

【課題】小型で高性能で、設計が容易な集積回路装置、増幅器および通信機モジュールを提供する。
【解決手段】集積回路装置、増幅器または通信機モジュールは、基材71と、基材71の上方に設けられ、集積回路11および集積回路に接続される伝送線路22,32,42,52,62を含む回路ユニット21,31,51,61と、回路ユニットを覆う封止部72,77,85,88と、伝送線路に電気的に接続され、基材と封止部との間に設けられるフィールドスルー配線74,82と、回路ユニットに含まれ、フィールドスルー配線の上方に設けられ、フィールドスルー配線と伝送線路との間に接続されるキャパシタ26,66とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路装置、増幅器および通信機モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ用増幅器や基地局用増幅器などの通信機モジュールに用いられる高出力の集積回路装置では、高出力化を図るために、複数の集積回路を並列に接続して集積回路のトランジスタのゲート幅を増やすことが行われている。
【0003】
さらに、集積回路からの出力を最大限に引き出すために、並列に接続した複数の集積回路の入力側と出力側にそれぞれインピーダンス変換器を接続し、インピーダンス変換器の整合回路(伝送線路)によりインピーダンスを整合させている。
【0004】
上述の集積回路装置の信号をパッケージの外部に取り出すための外部接続端子として、例えば、入力側、出力側ともにフィールドスルー配線と呼ばれる引き出し配線が用いられている。そして、入力側の伝送線路と入力側のフィールドスルー配線との間、および出力側の伝送線路と出力側のフィールドスルー配線との間には、それぞれ直流カット用のキャパシタを接続することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−288846号公報
【特許文献2】特開2000−332190号公報
【特許文献3】実開昭61−90256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直流カット用のキャパシタとして、例えば上部と下部に電極を備えたキャパシタが用いられており、下部電極と伝送線路とが電気的に接続されるように伝送線路上にキャパシタを搭載し、上部電極とフィールドスルー配線とをワイヤで接続することが行われている。ところが、上述の構成の場合、伝送線路上にキャパシタの搭載領域を確保する必要があるため、伝送線路の長さが増大してパッケージサイズが大きくなるという問題や、キャパシタが搭載できるように伝送線路の一部の幅を増やすことにより、伝送線路を流れる信号の伝送損失が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の一観点によれば、基材と、基材の上方に設けられ、集積回路および前記集積回路に接続される伝送線路を含む回路ユニットと、回路ユニットを覆う封止部と、伝送線路に電気的に接続され、基材と封止部との間に設けられるフィールドスルー配線と、回路ユニットに含まれ、フィールドスルー配線の上方に設けられ、フィールドスルー配線と伝送線路との間に接続されるキャパシタとを有する集積回路装置が提供される。
【0008】
発明の別の一観点によれば、基材と、基材の上方に設けられた集積回路チップと、基材の上方に設けられ、集積回路チップに電気的に接続される伝送線路と、集積回路チップと伝送線路とを覆う封止部と、伝送線路に電気的に接続され、封止部から引き出されるフィールドスルー配線とフィールドスルー配線の上方に設けられ、フィールドスルー配線と伝送線路との間に接続されるキャパシタとを有する増幅器が提供される。
【0009】
発明の別の一観点によれば、基材と、基材の上方に設けられた集積回路チップと、基材の上方に設けられ、集積回路チップに電気的に接続される伝送線路と、集積回路チップと伝送線路とを覆う封止部と、伝送線路に電気的に接続され、封止部から引き出されるフィールドスルー配線とフィールドスルー配線の上方に設けられ、フィールドスルー配線と伝送線路との間に接続されるキャパシタとを有する通信機モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0010】
上述の観点によれば、小型で高性能で、設計が容易な集積回路装置、増幅器および通信機モジュールが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1における、集積回路装置の上面図および断面図である。
【図2】図2は、実施例1における、ボンディングツールで、出力側のチップ容量の上面とフィールドスルー配線とを接続する動作を示す図である。
【図3】図3は、実施例2における、集積回路装置の平面図および断面図である。
【図4】図4は、実施例3における、集積回路装置の平面図および断面図である。
【図5】図5は、実施例4における、集積回路装置の平面図および断面図である。
【図6】図6は、実施例1から実施例4における、集積回路装置を有する増幅器を使用した通信機モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1について、図1および図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施例1の集積回路装置の平面図および断面図である。実施例1の集積回路装置は、集積回路チップ11と、図1において集積回路チップ11の左側に設けられた入力整合回路15と、集積回路チップ11の右側に設けられた出力整合回路16と、を含む。入力整合回路15は、基板21上に形成された高インピーダンスの第1伝送線路22と、基板31上に形成された低インピーダンスの第2伝送線路32と、を含む。出力整合回路は、基板41上に形成されたテーパー形状の電極42と、基板51上に形成された低インピーダンスの第3伝送線路52と、基板61に形成された高インピーダンスの第4伝送線路62と、を含む。
【0015】
集積回路チップ11は、複数のGaNパワートランジスタを搭載している。
【0016】
基板21および61は、例えば比誘電率が9.8で、厚さが0.38mm程度で、裏面にAuメッキが施されている。基板31および51は、例えば比誘電率が140で、厚さが0.25mm程度で、裏面にAuメッキが施されている。
【0017】
第1伝送線路22および第4伝送線路62は、基板21および61上に直線のマイクロストリップラインとしてそれぞれ形成される。基板21上にはさらに電力供給パターン25が形成され、基板61上にはさらに電力供給パターン65が形成される。
【0018】
基板31上に形成された第2伝送線路32は、マイクロストリップラインとして形成され、基板31の上面全体に設けられたパターンである。第3伝送線路52は、基板51上に直線のマイクロストリップラインとして形成される。
【0019】
基材(パッケージベース)71には、金属製のフレーム72と、入力用フィールドスルー基板73と、入力用フィールドスルー配線74と、フィールドスルー絶縁部77と、入力用フィールドスルー配線74上のフレーム72の外側部分に設けられた入力リード75と、が設けられる。パッケージベース71には、出力用フィールドスルー基板81と、出力用フィールドスルー配線82と、フィールドスルー絶縁部85と、出力用フィールドスルー配線82上のフレーム72の外側部分に設けられた出力リード83と、がさらに設けられる。パッケージベース71には、2本の電源端子(リード)93と、電源用フィールドスルー配線92と、フィールドスルー絶縁部91と、基板21に隣接して設けられた第1電源キャパシタ94と、基板61に隣接して設けられた第2電源キャパシタ96と、がさらに設けられる。
【0020】
集積回路チップ11、基板21、31、41、51、61、および第1および第2電源キャパシタ94および96は、パッケージベース71に上に、例えばAuSnはんだを用いて300℃の窒素雰囲気で実装される。
【0021】
第1伝送線路22と、基板31上に形成された第2伝送線路32との間、第2伝送線路32と集積回路チップ11との間、集積回路チップ11と電極42との間、電極42と第3伝送線路52との間、第3伝送線路52と第4伝送線路62との間は、それぞれ、例えばワイヤ径25μm程度の金ワイヤを用いたワイヤボンディングにより接続される。なお、ワイヤボンディングの代わりに、リボンボンディングを使用することも可能である。
【0022】
さらに、2つの電源用フィールドスルー配線92上のフレーム72の内側部分と、第1電源キャパシタ94および第2電源キャパシタ96の上面間も、上記と同様に、ワイヤ95および97でそれぞれ接続される。第1電源キャパシタ94の上面は、図示していないワイヤで電力供給パターン25に接続され、第2電源キャパシタ96の上面は、図示していないワイヤで電力供給パターン65に接続される。2本の電源端子(リード)93からの電力は、2つの電源用フィールドスルー配線92、第1電源キャパシタ94、第2電源キャパシタ96、電力供給パターン25、65、基板31上の伝送線路、伝送線路22、42、52、62を介して集積回路チップ11に供給される。電力は直流であり、基板31上の伝送線路、伝送線路22、42、52、62を伝送する信号は高周波なので、このような形での電力供給が可能である。第1電源キャパシタ94、第2電源キャパシタ96は、動作周波数でショートとなり、この第1電源キャパシタ94および第2電源キャパシタ96から電源までの配線が、集積回路装置内の高周波回路に影響を与えないようにする。
【0023】
キャパシタ26および66は、下部電極と、下部電極の上方に設けられた誘電体層と、誘電体層の上方に設けられた上部電極とを有している。キャパシタ26は、入力用フィールドスルー配線74上のフレーム72の内側部分に設けられ、キャパシタ66は、出力用フィールドスルー配線82上のフレーム72の内側部分に設けられる。
【0024】
キャパシタ26および66は、下部電極を入力用フィールドスルー配線74および出力用フィールドスルー配線82上に、AuSnはんだなどで、上記と同様に電気的に接続して実装される。入力用フィールドスルー配線74および出力用フィールドスルー配線82の、フレーム72の内側部分は、キャパシタ26および66が実装できるように、平面視における延在方向および幅方向の寸法が、キャパシタ26および66の平面視における寸法より0.2mm程度大きく設定されている。具体的には、キャパシタ26および66が例えば0.76mm×0.76mmのサイズであるため、フィールドスルー配線74および82は、それぞれ配線幅が1mm程度で、フレーム72の内側部分の長さが1mm程度である。このように設定することで、キャパシタ26および66をフィールドスルー配線74および82の上に実装する場合のAuSnはんだなどの濡れ性や、実装後のはんだフィレットの様子を観察することができる。
【0025】
キャパシタ26の上面は、ワイヤ76で、基板21上の第1伝送線路22に接続される。これにより、入力リード75は、キャパシタ26を介して、入力整合回路の第1伝送線路22に接続されることになる。
【0026】
同様に、キャパシタ66の上面は、ワイヤボンディング84で、基板61上の第4伝送線路62に接続される。これにより、出力リード83は、キャパシタ66を介して、出力整合回路の第4伝送線路62に接続されることになる。
【0027】
以上のように実装した後、フレーム72にふた88を設けて、集積回路チップ11は気密封止される。したがって、パッケージベース71、フレーム72、ふた88、およびフィードスルー機構により、集積回路チップ11および伝送線路を含む回路ユニットを覆う封止部が形成される。
【0028】
なお、フィードスルー配線基板73および81の厚さは例えば1mm程度で、フィードスルー配線74および82は50オームの特性インピーダンスを有するように設計されている。この構成により、キャパシタ26および66の実装に伴う配線幅の変更をすることなく、損失低減と設計性向上とを達成することができる。また、キャパシタ26および56をそれぞれ入力用フィードスルー配線76、出力用フィードスルー配線82の上方に配置することにより、第1伝送線路22および第4伝送線路62の配線長の増大を抑えることができるとともに、第1伝送線路22および第4伝送線路62の特性インピーダンスが低下して伝送損失が増大するのを抑制することができる。本実施例によれば、第1伝送線路22および第4伝送線路62上にキャパシタを実装していた場合と比べ回路長さは20%低減できた。
【0029】
図2は、実施例1において、ボンディングツールを用いて、出力側のキャパシタ66の上面とフィールドスルー配線82とを接続する動作を示す図である。図2に示すように、フィールドスルー配線82に実装されたキャパシタ66の上面の方が、基板61上の第4伝送線路62の面より高いので、キャパシタ66の上面にファーストボンディングした後、基板61上の第4伝送線路62の上面にセカンドボンディングを行うことができる。ボンディングツール1は、フレーム72またはフィールドスルー絶縁部85と干渉しないため、容易に直流カット用キャパシタ66と出力整合回路の基板61上の高インピーダンス伝送線路62との間をワイヤボンディング接続できるようになった。ワイヤボンディングが、キャパシタから整合回路の基板へとワイヤボンディングできるようになったことから、キャパシタの上部電極の損傷やはがれが無くなり、製造歩留まりを向上させることができる。
【0030】
パッケージ端子を外部と接続するためのリード75、83は無くてもよく、その場合は、例えばリボンまたはワイヤを用いて外部と入力用フィールドスルー配線72または出力用フィールドスルー配線82とを電気的に接続することができる。この場合、金属フレーム外のフィードスルー配線長はワイヤやリボンボンディングができればよいので、リードを用いた場合よりも集積回路装置の全体サイズを短くすることができる。
【0031】
実施例1では、金属フレーム72用いたパッケージの例を示したが、例えばセラミクスで形成したフレームを使用することもできる。
【0032】
また、実施例1では、パッケージベース71は、比較的高出力の集積回路チップ11を想定し、放熱性のよい金属で、集積回路チップ11や入力および出力整合回路○○(符号)の基板との熱膨張係数差を考慮した材料を選んでいる。例えば、パッケージベース71の材料として、CuWやCuMoなどの材料を用いることができる。発熱の小さな回路の場合は、パッケージベースとしてコバール等を用いることができ、また誘電体基板を使用することもできる。この場合、放熱性を重視する場合は、AlNやBeOなどの材料のパッケージベースを用いるのが好ましい。その他、アルミナセラミクスやFR−4などの有機基板を用いることもできる。この場合、特にチップ搭載領域にビアホール(サーマルビアともいう)を形成することにより、放熱性の向上を図ることができる。
【0033】
以上説明したように、実施例1では、キャパシタをフィードスルー配線上に適切に実装することが可能となり、整合回路基板上に直流カット用キャパシタを実装する場合と比べ回路長さを低減でき、集積回路装置の小型化と伝送損失低減による性能の向上を図ることができる。さらに、パッケージフレームとワイヤボンディングツールとの干渉がなく、直流カット用キャパシタと内部に設けられる整合基板との間のワイヤボンデシング接続が容易に行えるようになった。また、キャパシタの実装に伴う配線幅の変更が不要で、電気的不連続部を削減し伝送損失低減と設計性向上を達成することができる。
【実施例2】
【0034】
実施例2について、図3を参照して説明する。
【0035】
図3は、実施例2における、集積回路装置の上面図および断面図である。実施例2の集積回路装置は、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)やHTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)などの多層の誘電体配線層を有するパッケージに集積回路チップおよび整合回路を搭載した集積回路装置である。
【0036】
図3に示すように、実施例2の集積回路装置は、2段増幅のための2個の集積回路チップ111Aおよび111Bと、入力整合回路が形成される基板121と、2個の集積回路チップ111Aおよび111Bの間の接続回路が形成される基板131と、出力整合回路が形成される基板141と、を含む。
【0037】
実施例2の集積回路装置は、グランドとして機能する金属製のベース101を含む。金属製のベース101の上には、多層の誘電体配線層103が設けられている。2個の集積回路チップ111A、111B、基板121、131および141は、誘電体配線層103の上に実装されている。実施例1と同様に、誘電体配線層103の上には、金属フレーム102、入力用フィードスルー基板151、入力用フィードスルー配線152、フィードスルー絶縁153、出力用フィードスルー基板161、出力用フィードスルー配線162、およびフィードスルー絶縁163などが設けられている。
【0038】
入力用フィードスルー配線152上の金属フレーム102の内側部分には、直流カット用のキャパシタ126が、裏面が入力用フィードスルー配線152と電気的に接続するように実装されている。キャパシタ126の上面は、ワイヤ176により、基板121上に形成された入力整合回路の伝送線路に接続されている。
【0039】
出力用フィードスルー配線162上の金属フレーム102の内側部分には、直流カット用のキャパシタ166が、裏面が入力用フィードスルー配線162と電気的に接続するように実装されている。キャパシタ166の上面は、ワイヤ184により、基板141上に形成された出力整合回路の伝送線路に接続されている。
【0040】
また、基板121に形成された入力整合回路と集積回路チップ111Aとの間、集積回路チップ111Aと、基板131に形成された接続回路131との間、接続回路131と集積回路チップ111Bとの間、集積回路チップ111Bと、基板141に形成された出力整合回路との間は、同様にそれぞれワイヤボンディングにより接続されている。別途電源回路なども設けられるが、ここでは省略する。
【0041】
2個の集積回路チップ、基板、キャパシタなどが実装された後、フレーム102にふた105が設けられて、集積回路チップ111A、111Bは気密封止される。
【0042】
多層の誘電体配線層103は、HTCCの場合には、アルミナセラミックを材料として形成され、LTCCの場合には、ガラスセラミックを材料として形成される。多層誘電体配線構造103の内部には、封止用の金属層と、集積回路チップ111A、111Bの裏面および封止用の金属層とベース101とを接続するサーマルビア104が設けられる。これにより、集積回路チップ111A、111Bで発生する熱は、サーマルビア104を通ってベース101から放熱される。
【0043】
実施例2において、パッケージ内の整合回路、接続回路および電源回路などが、例えばLTCCやHTCC等の多層配線で形成されてもよい。言い換えれば、フレーム(壁)を有するパッケージ内に回路が構成され、直流カット用のキャパシタが信号端子に実装される場合であれば、フィールドスルー配線上にキャパシタを実装する形で、実施例1および実施例2の構成を適用できる。
【0044】
実施例2では、多層配線による集積回路の小型化、電源回路の設計自由度拡大、高集積、高機能化、実装時間短縮を実現しながら、直流カット用キャパシタの実装が可能となる。
【実施例3】
【0045】
実施例3について、図4を参照して説明する。
【0046】
図4は、実施例3の集積回路装置の平面図および断面図である。実施例3の集積回路装置は、電力供給パターン65が、基板61のエッジに沿って形成され、高インピーダンス伝送線路62の端部に接続されることが、実施例1と異なり、ほかの部分は実施例1と同じである。言い換えれば、出力側のフィードスルー配線82上に搭載したキャパシタ66と出力整合回路上のT分岐部分とを接続したものである。
【0047】
この出力整合回路の基板61上の第4伝送線路62の部分は、電源回路だけでなく、高調波を短絡、あるいはオープンにする高調波処理機能を有しており、集積回路による増幅器の高効率化やフィルターの役割をするものである。分岐部分にキャパシタを搭載した場合、その分岐部分の設計が困難で、所望の性能のものを得ることが困難であった。これに対して、実施例3では、分岐部分の設計が容易になり、高調波処理回路など、周波数の高い成分まで精度よく設計できるようになり、高性能な回路が実現できるようになる。
【実施例4】
【0048】
実施例4について、図5を参照して説明する。
【0049】
図5は、実施例4の集積回路装置の平面図および断面図である。実施例4の集積回路装置は、2個の集積回路チップ11Aおよび11Bを搭載し、並列に動作させるトランジスタの個数を増加させて、より一層の高出力が得られるようにしたことが、実施例1と異なる。このような構成を実現するため、実施例4の集積回路装置では、基板31上に形成される第2伝送線路の幅を、2個の集積回路チップ11Aおよび11Bの入力端子が配置される範囲に広げる。さらに、基板41上に、2個のテーパー形状の電極42Aおよび42Bを形成し、基板51上に、2個の低インピーダンスの伝送線路である第5伝送線路52Aおよび第6伝送線路52Bを形成する。そして、基板61上に、2個の折れ曲がった高インピーダンスの伝送線路である第7伝送線路62Aおよび第8伝送線路62Bを形成する。第7伝送線路62Aおよび第8伝送線路62Bは、逆方向に伸びた後折れ曲がり、他方の端が一体に接続されている。
【0050】
第1伝送線路22は、基板31上のパターンの一方の端に、ワイヤボンディングなどで接続されている。第1伝送線路22からの入力信号は、基板31上のパターンの他方の端全体に伝送される。基板31上のパターンの他方の端は、2個の集積回路チップ11Aおよび11Bの入力端子と、ワイヤボンディングなどで接続され、入力信号が2個の集積回路チップ11Aおよび11Bのトランジスタに並列に入力する。これにより、2個の集積回路チップ11Aおよび11Bの出力端子は、入力信号を並列に増幅した信号を出力する。
【0051】
2個の集積回路チップ11Aおよび11Bの出力端子は、2個のテーパー形状の電極42とAおよび42Bの広い側の端部に、ワイヤボンディングなどで接続される。2個のテーパー形状の電極42Aおよび42Bの狭い側の端部は、2個の低インピーダンスの第5伝送線路52Aおよび第6伝送線路52Bに、ワイヤボンディングなどで接続される。さらに、2個の低インピーダンスの第5伝送線路52Aおよび第6伝送線路52Bは、2個の高インピーダンスの第7伝送線路62Aおよび第8伝送線路62Bに、それぞれワイヤボンディングなどで接続される。さらに、2個の高インピーダンスの第7伝送線路62Aおよび第8伝送線路62Bの接続部分は、キャパシタ66の上面に、ワイヤボンディングなどで接続される。
【0052】
以上の接続により、2個の集積回路チップ11Aおよび11Bの出力は、電極42とAおよび42B、第5伝送線路52Aおよび第6伝送線路52B、および第7伝送線路62Aおよび第8伝送線路62Bを通ってそれぞれ伝送され、接続部分で合成されてキャパシタ66を介して出力リード83から出力される。
【0053】
基板61の両側に第2電源キャパシタ96Aおよび96Bが設けられる。第2電源キャパシタ96Aは、電源フィードスルー配線92にワイヤボンディングなどで接続され、第2電源キャパシタ96Aと第2電源キャパシタ96Bは、図示していない配線で接続される。第2電源キャパシタ96Aおよび第2電源キャパシタ96Bは、それぞれ電力供給パターン65Aおよび65Bを介して、低インピーダンスの第5伝送線路52Aおよび第6伝送線路52Bに接続される。電源端子93、電源フィードスルー配線92、ワイヤ97、第2電源キャパシタ96Aおよび96B、電力供給パターン65Aおよび65B、低インピーダンスの第5伝送線路52Aおよび第6伝送線路52B、テーパー形状の電極42Aおよび42Bは、2個の集積回路チップ11Aおよび11Bへの電力供給経路を形成する。
【0054】
実施例4でも、直流カット用のキャパシタ66は、フィードスルー配線82上に実装され、このキャパシタ66と合成回路の合成部分(十字分岐部分)をワイヤボンディングにより接続している。出力合成回路にキャパシタを実装した場合、キャパシタを搭載する領域を確保するため、配線幅を部分的に広げる必要があり、設計性が劣化するとともに電気的に不連続になることにより伝送損失が増大するという問題があった。実施例4によれば、出力合成回路の分岐部の設計が容易となり、電気的な不連続部を削減できるため、より高性能な集積回路装置を実現することができる。
【0055】
以上実施例1から実施例4を説明したが、記載された実施形態に限られることなく、多くの変形例が可能である。例えば、実施形態ではGaNトランジスタを用いたが、例えばSi、GaAsSi、GaAsやInPを用いたトランジスタを使用することも可能である。また、集積回路チップと整合回路基板で回路を形成したが、チップ内に抵抗やキャパシタおよび整合回路を一部集積化してMMICとしたチップを使用し、その外部に整合回路基板を構成したハイブリッドICとすることも可能である。また、チップ内に抵抗やキャパシタおよび整合回路集積化したMMICを使用してもよい。実施形態は、チップや整合回路基板をAuSnはんだを用いて実装したが、導電性接着剤で実装してもよい。この場合、200℃以下で実装できるので、パッケージとチップならびに整合回路基板、コンデンサの熱膨張係数差による割れが抑制でき、製造歩留まりの向上を図ることができる。また、耐熱性が比較的劣るInP等のデバイスも特性を劣化させることなく実装することができる。さらには、パッケージ材料の熱膨張係数差の大きい放熱性の優れた材料(銅)等の適用も可能となり、より高出力な回路が実現できる。
【0056】
図6は、実施例1から実施例4の集積回路装置を使用した通信機モジュール100の構成を示す図である。
【0057】
図6に示すように、通信機モジュール100は、アンテナに接続される入出力端子90と、入出力端子90と接続された送受切替器91と、低雑音増幅器92と、制御回路93と、前段増幅器94と、高出力増幅器95と、フィルタ96と、を含む。
【0058】
図6の右手前の列が送信系を構成し、左奥側が受信系を構成する。入出力端子90からの入力信号は、送受切替91で選択的に低雑音増幅器92に送られ、受信処理が行われる。一方、送信信号は、前段増幅器94で増幅された送信信号は、高出力増幅器95でさらに増幅され、フィルタ96を経て送受切替器91で選択的に入出力端子90に送られ、アンテナから送信される。高出力増幅器95として、実施例1から実施例4の集積回路装置が使用される。なお、実施例1から実施例4の集積回路装置は、送受信用通信機モジュールでなく、送信用通信機モジュールに使用できるのは言うまでもない。
【0059】
図6の通信機モジュール100は、通信システム、レーダー装置、センサー、電波妨害器等のシステム機器の一部として使用される。実施例1または実施例2の高性能で小型の集積回路装置を各種システム機器に搭載することで、機器の高性能化と小型化に寄与することができる。
【0060】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0061】
11 集積回路チップ
21、31、41、51、61 基板
22、52、62 伝送線路
26、66 キャパシタ
71 パッケージベース
72 フレーム(壁)
73、81 フィードスルー基板
74、82 フィードスルー配線
76、84 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上方に設けられ、集積回路および前記集積回路に接続される伝送線路を含む回路ユニットと、
前記回路ユニットを覆う封止部と、
前記伝送線路に電気的に接続され、前記基材と前記封止部との間に設けられる配線と、
前記回路ユニットに含まれ、前記配線の上方に設けられ、前記配線と前記伝送線路との間に接続されるキャパシタと
を有することを特徴とする集積回路装置。
【請求項2】
前記配線は、
前記封止部に覆われる部分の長手方向の長さが、前記封止部から引き出される部分の長手方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1記載の集積回路装置。
【請求項3】
前記キャパシタの上面と前記配線とはワイヤによって接続され、
前記キャパシタの上面の位置は、前記配線の表面の位置よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の集積回路装置。
【請求項4】
前記配線の幅は、前記キャパシタの前記配線の幅方向の寸法よりも広いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集積回路装置。
【請求項5】
基材と、
前記基材の上方に設けられた集積回路チップと、
前記基材の上方に設けられ、前記集積回路チップに電気的に接続される伝送線路と、
前記集積回路チップと前記伝送線路とを覆う封止部と、
前記伝送線路に電気的に接続され、前記封止部から引き出されるフィールドスルー配線と
前記フィールドスルー配線の上方に設けられ、前記フィールドスルー配線と前記伝送線路との間に接続されるキャパシタと
を有することを特徴とする増幅器。
【請求項6】
基材と、
前記基材の上方に設けられた集積回路チップと、
前記基材の上方に設けられ、前記集積回路チップに電気的に接続される伝送線路と、
前記集積回路チップと前記伝送線路とを覆う封止部と、
前記伝送線路に電気的に接続され、前記封止部から引き出されるフィールドスルー配線と
前記フィールドスルー配線の上方に設けられ、前記フィールドスルー配線と前記伝送線路との間に接続されるキャパシタと
を有することを特徴とする通信機モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−171576(P2011−171576A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34934(P2010−34934)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)