説明

集魚灯装置および集魚灯装置を用いた漁具並びに漁法

【課題】長時間に亘り安全に連続的に点灯させることのできる集魚灯装置を提供し、当該集魚灯装置を用いて夜間における魚の集光性に基づいて魚を効率良く捕獲することのできる漁具並びに漁法を提供することを目的とする。
【解決手段】集魚灯11と集魚灯11に電力を供給する電源部9とを備えた集魚灯装置8であって、前記電源部9は気密・水密に開閉自在なケース12内に、前記集魚灯11に電力を供給するバッテリ14と、当該バッテリ14より漏洩する有害ガスを前記ケース12外に排出させるエアポンプ17とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集魚灯装置および集魚灯装置を用いた漁具並びに漁法に係り、特に、夜間における魚の集光性(趨光性)に基づいて魚を捕獲するのに好適な集魚灯装置および集魚灯装置を用いた漁具並びに漁法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚の夜間における集光性に基づいて漁獲するために各種の照明方法が採用されている。例えば、烏賊釣り漁船のように船上に集魚灯を設けたり、釣糸に水中集魚灯を取付けていた(特許文献1参照)。
【0003】
また、魚を捕獲する漁法の一種として定置網漁法が知られている。この定置網漁法においては、沿岸部などの漁場に定置網を敷設し、魚群の来遊・入網をまって魚を捕獲するようになっている。
【0004】
このような定置網においては、垣網によって魚を運動場まで誘導し、最終的に当該運動場から箱網に魚を誘導して捕獲するように形成されている(特許文献2、図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−236220号
【特許文献2】特開平07−203807号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
集魚灯を利用した漁法として集魚灯を水中において長時間点灯させることが要望されている。
【0007】
ところが、集魚灯の電源を陸上の施設や船上の施設より得ることができない沖合に集魚灯を設置する場合には、集魚灯に電力を供給する電源部として気密・水密なケース内にバッテリを内装した構成の電源部が必要とされるが、バッテリから微小ではあるが漏洩する水素ガスがケース内に充満して何らかの原因で爆発する危険性がある。
【0008】
そのため、爆発の危険性のない電源部を備えた集魚灯装置の開発が要望されていた。
【0009】
また、定置網においては、垣網によって魚を運動場まで誘導することにより魚を捕獲するものであるが、魚が垣網を視認できない夜においては十分な作用を発揮することができなかった。
【0010】
そのため海流や潮流に乗って移動している魚を夜間において効率よく捕獲することができなかった。
【0011】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、長時間に亘り安全に連続的に点灯させることのできる集魚灯装置を提供し、当該集魚灯装置を用いて夜間における魚の集光性に基づいて魚を効率良く捕獲することのできる漁具並びに漁法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明の発明者等が鋭意研究した結果、バッテリより漏洩する有害ガスをケース外に強制的に排出することにより安全なん集魚灯装置を得ることができこと、並びに魚が夜に集光性によって集魚灯の光に集光して当該集魚灯の近くに集魚しており、明け方に垣網を認識すると当該垣網によって誘導されて移動するという魚の習性を発見し本発明を完成させた。
【0013】
従って、本発明の集魚灯装置は、集魚灯と集魚灯に電力を供給する電源部とを備えた集魚灯装置であって、前記電源部は気密・水密に開閉自在なケース内に、前記集魚灯に電力を供給するバッテリと、当該バッテリより漏洩する有害ガスを前記ケース外に排出させるエアポンプとを有することを特徴とする。
【0014】
このように形成された集魚灯装置によれば、エアポンプによってバッテリより漏洩する有害ガスをケース外に強制的に排出することができ、爆発等の危険のない集魚灯装置を得ることができる。
【0015】
また、本発明の漁具は、前記集魚灯装置を備えていることを特徴とし、本発明の漁法は、前記集魚灯装置を備えている漁具を用いて漁獲することを特徴とする。
【0016】
このように形成することにより、極めて安全性の高い集魚灯装置を用いて漁具を形成し、当該漁具を用いた漁法によって漁獲することにより漁獲効率の高めることができる。
【0017】
更に、本発明の定置網漁具は、運動場に魚を誘導する垣網を備えている定置網漁具において、前記垣網の近傍に請求項1に記載の集魚灯装置を設置し、当該集魚灯装置の集魚灯を夜に点灯させて魚を集魚させるとともに明け方に魚が前記垣網を認識して誘導されて動き出すまで魚を垣網の近傍に集魚させておくように点灯制御することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の定置網漁法は、運動場に魚を誘導する垣網の近傍に設置した請求項1に記載の集魚灯装置の集魚灯を点灯制御させることにより、前記集魚灯を夜に点灯させて魚を垣網の近傍に集魚させるとともに明け方に魚が当該垣網を認識して誘導されて動き出すまで点灯を継続させて魚を垣網の近傍に集魚させておき、明け方に前記垣網を認識した魚が前記垣網に誘導されて前記運動場に向けて動き出すことにより魚を捕獲することを特徴とする。
【0019】
このように形成されている定置網漁具および定置網漁法によれば、定置網漁具を定置網漁法によって用いることにより魚を効率良く捕獲することができる。
【0020】
更に説明すると、定置網漁具における運動場に魚を誘導する垣網の近傍に設置した集魚灯装置の集魚灯を点灯制御させることにより魚を捕獲することができる。
【0021】
具体的には、前記集魚灯を夜に点灯させて魚を垣網の近傍に集魚させるとともに明け方に魚が当該垣網を認識して誘導されて動き出すまで点灯を継続させて魚を垣網の近傍に集魚させておき、明け方に前記垣網を認識した魚が前記垣網に誘導されて前記運動場に向けて動き出すことにより魚を捕獲することができる。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明の定置網漁具および定置網漁法によれば、長時間に亘り安全に連続的に点灯させることのできる集魚灯装置を得ることができ、当該集魚灯装置を用いて夜間における魚の集光性と垣網による魚の誘導性によって魚を効率よく捕獲することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る定置網漁具の実施形態を示す平面図
【図2】本発明に係る定置網漁具の実施形態を示す斜視図
【図3】本発明に係る集魚灯装置の実施形態を示すブロック図
【図4】本発明に係る集魚灯装置の実施形態を示すケースの一部を省略した状態の斜視図
【図5】本発明に係る定置網漁具と従来例の定置網による鯖の漁獲量を示す比較グラフ
【図6】本発明に係る定置網漁具と従来例の定置網による鰺の漁獲量を示す比較グラフ
【図7】本発明に係る定置網漁具と従来例の定置網によるウルメ鰯の漁獲量を示す比較グラフ
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る定置網漁具および定置網漁法の実施形態について、図1から図7を参照して説明する。
【0025】
図1から図4は本発明の集魚灯装置とその集魚灯装置を用いた漁具の1種である定置網漁具の1実施形態とを示す。
【0026】
図1および図2に示すように、本発明の定置網1は従前から存在する公知の定置網と同様に形成されている。この定置網1は、垣網2、運動場3、箱網6等を備えている。更に説明すると、運動場3は上部開口3aを有する比較的長い複数の直線により平面略矩形形状等に形成されている。一枚の直線上に立てられた垣網2は、その先端部を運動場3の網入り4の途中まで、または、運動場3の内部まで達するようにして形成されている。運動場3より奥部は先細とされ、筒状に形成された昇り5が順に設けられており、この昇り5の先端部には上部開口6aを有する平面略矩形形状等に形成された有底の箱網6が連結されている。この昇り5と箱網6との連結部には、昇り5の先端部が箱網返し7を形成するようにして昇り5の先端部の開口が箱網6内に達するようにして固定されている。昇り5には運動場3側から箱網6側に向けて底面が次第に上昇する昇り口5aが設けられている。さらに、箱網6の先端部には、必要に応じて所望の袋網(図示せず)が配設されている。そして、このように構成された定置網1は、図示しない適宜な綱類、浮子、アンカ等により漁場の所望の位置に敷設されるようになっている。
【0027】
本発明においては、網入口4から例えば約50m離れた網入口4の近傍の垣網2の上端部の両側に集魚灯装置8を設けている。この集魚灯装置8は、水面部分に浮遊可能な電源部9と当該電源部9からケーブル10をもって水中に吊り下げて水深約5〜20m部分に設置される集魚灯11とによって形成されている。集魚灯11としては、ハロゲンランプ、メタルハイドランプ、LED等を用いるとよく、また指向性のないものが好適である。電源部9は、図3および図4に示すように、気密・水密に開閉自在とされる矩形箱状のケース12を有している。当該ケース12は上部に開閉蓋12aを有しており、上部外周に固着した浮子13によって水面に浮遊できるように形成されている。ケース12の内部には、底部に2個のバッテリ14が交換自在に設置されており、バッテリ14からケーブル10をもって集魚灯11に電力が供給される。バッテリ14は、例えば、箱網6内の魚を取り出す際に交換するとよい。2つのバッテリ14は制御部15に設けたタイマ16によってON・OFF制御される。タイマ16の設定時間は、集魚灯11を夜に点灯させて魚を集魚させるとともに明け方に魚が垣網2を認識して誘導されて動き出すまで魚を垣網の近傍に集魚させておく点灯時間とするとよい。例えば、集魚灯11の点灯開始時間は、魚が夜間に接餌する時間である8時から10時位いとするとよく、集魚灯11の消灯時間は、季節に応じて明け方に魚が垣網2を認識して誘導されて動き出す明け方の3時から5時とするとよい。また、光に趨光性を有する魚としては、鯖、鯵、うるめ鰯等を挙げることができる。また、ケース12内にはバッテリ14から極微量漏洩する可能性のある水素ガス等の有害ガスをケース外に排出するためのエアポンプ17が設置されている。エアポンプ17より導出されている排出路18は、開閉蓋12aに固着した4個の排気筒19に途中が分岐して接続されている。各排気筒19には海水の侵入を阻止するためのフィルタ若しくは逆止弁(共に図示せず)が設けられている。また、エアポンプ17は制御部15に接続されており、所定時間毎に稼動させられて有害ガスの排出を行うように運転制御されるようになっている。また、図示していないが、ケース12内の有害ガスを吸着除去するための活性炭、ゼオライト等の吸着剤をケース12内に内蔵するとよい。なお、集魚灯11を垣網2の両側に設置したが、一方のみでもよい。
【0028】
次に、本実施形態の集魚灯装置8とその集魚灯装置8を用いた漁具の1種である定置網漁具を用いて行われる定置網漁法による魚の捕獲方法を説明する。
【0029】
図1から図4に示すように設置されている定置網漁具の垣網2部分に装着されている集魚灯装置8の電源部9内に設置されている制御部15におけるタイマ16が作動することにより、夜になると垣網2の近傍に設置された集魚灯11が点灯を開始する。集魚灯11より指向性なく放射される光により魚が集魚されて、その集魚灯11の近く、即ち垣網2の近傍に魚が徐々に集魚されてその場所に留まる。この集魚灯11の近くにおける集魚状態は、魚の集光性により明け方になるまで継続される。明け方になって垣網2を認識した魚は、垣網2に誘導されて運動場3に向けて動き出し、網入口4から運動場3内に入った魚は運動場3内を回遊している間に昇り5によって箱網6内に誘導される。箱網6内に誘導された魚は、箱網返し7により運動場3に戻ることを阻止される。
【0030】
制御部15内のタイマ16は、明け方に魚が垣網2によって運動場3に向けて誘導される時間になると集魚灯11への電力供給を停止させる。
【0031】
箱網6内の魚は少なくとも1日1回の取り出しによって取り出される。この魚の取り出しの際に、集魚灯装置8の電源部9を形成するケース12内のバッテリ14が必要に応じて交換されて、集魚灯11による魚の捕獲を継続的に実施できるようにされる。バッテリ14の設定から次の交換までの間においては、制御部15によってエアポンプ17が所定時間毎に間欠的に稼動されてケース12内の有害ガスが排出路18および排気筒19を順位通してケース12外へ排出される。また、ケース12内に装填された吸着剤に有害ガスが吸着される。これらのエアポンプ17および吸着剤のガス排除作用によって電源部9が爆発することを確実に防止されるので、安全性が極めて高くなる。
【0032】
また、趨光性のある魚としての鯖、鯵、うるめ鰯に本実施形態の集魚灯装置8とその集魚灯装置8を用いた漁具の1種である定置網漁具を用いた場合の日と従来の定置網の通り集魚灯装置8を用いない場合の日の魚の捕獲量について比較試験を行った結果を図5から図7に示す。図5から図7より、本発明方法の場合の捕獲量が従来方法の捕獲量の2から4倍に達し、本発明によれば漁獲量が大きく向上することがわかった。後日の試験で、浮魚と同様な効果が得られた。これにより本発明によれば、趨光性のある魚に対する捕獲効率を非常に高くすることが判明した。
【0033】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、完全に有害ガスを発生しないバッテリが開発された場合には、当該バッテリを本発明のバッテリ14と置換して用いることもできる。この場合、ケース12を完全密閉できるように形成して、ポンプを省いてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 定置網
2 垣網
3 運動場
8 集魚灯装置
9 電源部
11 集魚灯
12 ケース
14 バッテリ
17 エアポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集魚灯と集魚灯に電力を供給する電源部とを備えた集魚灯装置であって、
前記電源部は気密・水密に開閉自在なケース内に、前記集魚灯に電力を供給するバッテリと、当該バッテリより漏洩する有害ガスを前記ケース外に排出させるエアポンプとを有することを特徴とする集魚灯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の集魚灯装置を備えていることを特徴とする漁具。
【請求項3】
請求項1に記載の集魚灯装置を備えている漁具を用いて漁獲することを特徴とする漁法。
【請求項4】
運動場に魚を誘導する垣網を備えている定置網漁具において、前記垣網の近傍に請求項1に記載の集魚灯装置を設置し、当該集魚灯装置の集魚灯を夜に点灯させて魚を集魚させるとともに明け方に魚が前記垣網を認識して誘導されて動き出すまで魚を垣網の近傍に集魚させておくように点灯制御することを特徴とする定置網漁具。
【請求項5】
運動場に魚を誘導する垣網の近傍に設置した請求項1に記載の集魚灯装置の集魚灯を点灯制御させることにより、前記集魚灯を夜に点灯させて魚を垣網の近傍に集魚させるとともに明け方に魚が当該垣網を認識して誘導されて動き出すまで点灯を継続させて魚を垣網の近傍に集魚させておき、明け方に前記垣網を認識した魚が前記垣網に誘導されて前記運動場に向けて動き出すことにより魚を捕獲することを特徴とする定置網漁法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−178710(P2010−178710A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27133(P2009−27133)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】