説明

雑草発育抑制方法及びそれに用いる土中埋設体

【課題】天然由来成分から成る土中埋設体とこれを用いた雑草発育抑制方法を提供する。
【解決手段】天然由来成分から成る雑草発育抑制剤を混入した生分解性プラスチックから成る埋設体10を所定間隔に土中に埋設し、経時的に埋設体10内から雑草発育抑制剤が溶出して雑草の発育を長期間抑制できる。雑草発育抑制剤が唐辛子抽出成分とカイワレ抽出成分を主成分とする。唐辛子抽出成分の内の約40重量%がカプサイシンであり、カイワレ抽出成分の内の約95重量%がルチンである。その他の成分として水酸化カルシウム及び米粉を含む。埋設体10は先端部が先細に形成された杭形状に成形され、その周側面部が外側に膨出する突条部15を有し、且つその適宜位置には外側方向に突出する突出部18を複数設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅地や造成地、その他公園や広場等々一定の広がりのある土地に各種雑草が繁茂しないようにするための雑草発育抑制方法と、この方法に用いる土中埋設体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より雑草の処理は、各種化学薬品から成る除草剤を散布して枯らしてしまうか、抜き取ったり、草刈をして管理する方法が一般的である。
下記特許文献には、除草剤及び徐芳剤の開示があるが、特許文献1に記載の除草剤は、化学薬品による土壌汚染や人体への悪影響をなくするために、天然由来成分を主成分とした安全性を担保したものであって、クラゲを乾燥粉砕して得たクラゲ由来成分を主成分とするものである。
他方、特許文献2に記載のものは、除草剤ではなく、徐芳剤ではあるが、生分解性プラスチックからなるフィルムを使用したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−234979号公報
【特許文献2】特開2008−37858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明においては、上記特許文献1に記載の除草剤と同様に、化学薬品又は化学物質による土壌汚染を避けるため、また人体への悪影響をなくするために、天然由来成分を主成分とした雑草の発育を抑制する発育抑制剤を利用した雑草発育抑制方法と、その方法において使用する土中埋設体を提供することをその目的としている。
また、本発明では、除草を目的とするのではなく、雑草の発育を抑制することを主眼とし、つまり、雑草の生育自体を抑制し、或いは雑草の根の成長の抑制、種からの発芽を阻害する効果を有する天然由来成分を用いて雑草の発育を抑制する方法の創案を課題としている。
【0005】
更に、この方法において、その発育抑制効果が数年、好ましくは3年程度持続し得るような長期間持続効果のある発育抑制方法を創案し、提供することもその課題とする。
この課題から、本願発明者は、適宜形状を有し、且つ天然由来成分を利用した土中埋設体を創案し、提案することが出来たのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1のものは、生分解性プラスチックから成る埋設体であって、この埋設体に天然由来成分から成る雑草発育抑制剤を混入し、この埋設体を所定間隔にて土中に埋設することによって、経時的に埋設体内から前記雑草発育抑制剤が溶出して雑草の発育を長期間抑制することができることを特徴とする雑草発育抑制方法である。
ここで使用する生分解性プラスチックは、完全生分解性プラスチック又は部分生分解性プラスチックの何れのものでもよい。
完全生分解性プラスチックには、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、変性ポリビニールアルコール(PVA)、カゼイン、或いはPET共重合体などがある。
部分生分解性プラスチックとは、でんぷん、セルロース、PVA等の生分解性材料と通常のプラスチックとの混合物から成るものである。
【0007】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、雑草発育抑制剤が、唐辛子抽出成分とカイワレ抽出成分を主成分とすることを特徴とする雑草発育抑制方法である。
【0008】
本発明の第3のものは、上記第2の発明において、唐辛子抽出成分の内の約30重量%乃至約50重量%がカプサイシンであり、カイワレ抽出成分の内の約80重量%乃至約95重量%がルチンであることを特徴とする請求項2に記載の雑草発育抑制方法である。
【0009】
本発明の第4のものは、上記第1乃至第3の発明において、前記埋設体の成分が、唐辛子抽出成分と、カイワレ抽出成分と、水酸化カルシウムと、米粉及び生分解性プラスチックであることを特徴とする雑草発育抑制方法である。
【0010】
本発明の第5のものは、天然由来成分から成る雑草発育抑制剤が混入された生分解性合成樹脂製の埋設体を所定間隔にて土中に埋設して雑草の発育を抑制する雑草発育抑制方法に使用する埋設体であって、この埋設体の先端部が先細に形成された杭形状に成形されていることを特徴とする雑草発育抑制方法に用いる土中埋設体である。
【0011】
本発明の第6のものは、上記第5の発明において、土中埋設体の横断面形状が、その外表面積を大きくするために、その周側面部が外側に膨出する突条部を有し、且つその適宜位置には外側方向に突出する突出部を複数設けたことを特徴とする土中埋設体である。
【0012】
本発明の第7のものは、上記第5又は第6の発明において、前記雑草発育抑制剤が、唐辛子抽出成分と、カイワレ抽出成分を主成分とすることを特徴とする土中埋設体である。
【0013】
本発明の第8のものは、上記第7の発明において、唐辛子抽出成分の内の約30重量%乃至約50重量%がカプサイシンであり、カイワレ抽出成分の内の約80重量%乃至約95重量%がルチンであることを特徴とする土中埋設体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、まず生分解性プラスチックから成る埋設体を使用しているために、この土中埋設体が一定時間経過後には土中のバクテリアや菌類によって分解され、何ら有害な物質が土中に残らないこととなる。
また必要に応じて適時にこの埋設体を土中に打ち込むことにより半永久的に雑草の発育抑制効果を持続させることも可能となる。
【0015】
上記埋設体には、天然由来成分から成る雑草発育抑制剤が混入されており、この発育抑制剤が徐々に埋設体から土中に溶出して長期間雑草発育抑制効果を持続させることができる。
この発育抑制剤の溶出は、適宜の降雨等により促進されることとなる。
このように本発明の埋設体は、土中に埋め込まれるために、単に薬剤等を噴霧したり或いは薬剤等を土中に混合することと比較すれば、格段にその効果が持続するものとなる。
埋設体を土中に埋め込む際には、その埋設体の体積に応じて、埋設体同士の間隔を適宜決定することができる。
【0016】
本発明の第2のものにおいては、雑草発育抑制剤として唐辛子抽出成分とカイワレ抽出成分とを用いたものである。
唐辛子にはカプサイシンが含まれ、カイワレにはルチンが含まれている。
カプサイシンは、雑草の地上部の成長を抑制する効果を有している。
またルチンに関しては、その効果が全く知られていなかったが、本願発明者が鋭意研究した結果、雑草の発育抑制効果を発見し、ここに本発明が生まれたものである。
【0017】
本発明の第3のものは、上記唐辛子中のカプサイシンの分量及びカイワレ中のルチンの分量を限定したものであり、上記発明と同様の効果を発揮する。
【0018】
本発明の第4のものにおいても、上記土中埋設体中の成分を限定したものである。
ここでは、上記発明と異なり、更に水酸化カルシウムを混入している。
これは、各種の実験の結果、カプサイシン及びルチンと水酸化カルシウムとの融合によって雑草の発育抑制がより効果的であることが判明したからである。
カルシウムは、根の成長点に作用して根の細胞分裂を抑える働きがあり、水酸化カルシウムは、土壌をアルカリ性にするために従来から植物の成長を抑制するという効果を有するため、これを融合して用いることによりより発育抑制効果が発揮されることが判明したからである。
【0019】
本発明の第5のものは、上記各発明において使用する土中埋設体の形態を特定したものであり、この埋設体は、杭のようにその先端部が尖った形状を有するものである。
これにより、杭を土中に打ち込むようにして埋設体を土中に容易に埋設する事ができることとなる。
【0020】
本発明の第6のものにおいては、上記第5の発明に係る杭形状の埋設体の外周面に外側に膨出する突条部を設け、また更に外側方向に突出する突出部を複数設けたものである。
これにより埋設体の表面積を出来る限り大きなものとして、埋設体から雑草発育抑制剤が効率よく土中に溶出し得るようにしたものである。
【0021】
本発明の第7のものにおいては、上記方法の発明と同様に、埋設体に混入する雑草発育抑制剤を特定したものであって、その抑制剤として唐辛子抽出成分とカイワレ抽出成分を利用することを限定したものである。
【0022】
本発明の第8のものにおいても、その唐辛子抽出成分の内の主要成分がカプサイシンであること、またカイワレ抽出成分の主要成分がルチンであることを限定したものである。
これにより本発明に係る埋設体から雑草発育抑制効果を発揮する成分が徐々にかつ効果的に土中に溶出して雑草発育抑制効果を持続的に且つ適切に発揮することとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の雑草発育抑制方法に使用する土中埋設体の一実施形態を示し、その(A)が斜視図、その(B)が(A)図のS−S断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る上記土中埋設体の埋設方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1が本発明の雑草発育抑制方法に使用する土中埋設体の一実施形態を示し、その(A)が斜視図、その(B)が(A)図のS−S断面図である。
本発明に係る土中埋設体10は、その先端部11が先細に形成された杭形状のもので、基端部12は略円柱形状に形成されている。
【0025】
その外周の周側面には、縦方向(上下方向)に伸びる突条部15が4本形成されており、更に対向する2本の前記突条部15、15の中間部と先端部側には突起部18、18が設けられている。
突起部18は、それぞれの突条部15の適宜位置に設けてもよいことは勿論である。
このような突条部15及び突起部18の存在は、埋設体10の外表面をより大きくして埋設体10内に混入されている雑草発育抑制剤の溶出をより効果的にするためである。
基端部12を円柱形状としているのは、この埋設体10をハンマー等により土中に打ち込み易くするためである。
【0026】
この埋設体10は、生分解性プラスチックに天然由来成分から成る雑草発育抑制剤を混入したものである。
より詳しくは、この埋設体10の組成材料は、生分解性プラスチック、米粉、唐辛子抽出成分、カイワレ抽出成分及び水酸化カルシウムから構成される。
これらの最適な成分比率の一実施例は以下の通りである。
【0027】
(1)唐辛子抽出成分…7.2重量パーセント
(2)カイワレ抽出成分…0.7重量パーセント
(3)水酸化カルシウム…3.6重量パーセント
(4)米粉…71.8重量パーセント
(5)生分解性プラスチック…16.7重量パーセント
【0028】
上記成分中、唐辛子抽出成分と、カイワレ抽出成分と、水酸化カルシウムとが雑草発育抑制効果を有する成分となる。
そして、上記の唐辛子抽出成分中の約40パーセントがカプサイシンであり、上記カイワレ抽出成分の約95重量パーセントがルチンである。
これらカプサイシンとルチンの成分比率は、カプサイシンが唐辛子抽出成分中の約30重量%から約50重量%程度の範囲内にあればよく、またルチンについてはカイワレ抽出成分中の約80重量%から約95重量%程度の範囲内にあればよい。
即ち、これらカプサイシン、ルチン、及び水酸化カルシウムが本発明に係る土中埋設体10中の雑草発育抑制剤を構成するものである。
【0029】
カプサイシンは雑草の地上部の成長を抑える効果を有するものである。
カルシウムは、雑草の根の成長点に作用して、根の細胞分裂を抑える効果を有しており、水酸化カルシウムによって土壌をアルカリ性とすることで、植物の成長は抑制されるのである。
そして、上記カプサイシン及びルチンにこの水酸化カルシウムを混合することにより雑草の発育抑制の効果が発揮されることが判明した。
【0030】
ルチンに関しては、当初その効果が未知のものであったが、蕎麦の育成地に雑草が生えないということにヒントを得て、各種のビーカー試験を行った結果、上記カプサイシン、水酸化カルシウム及びルチンとの混合により雑草の発育抑制が最も顕著に現れたため、本発明の創作に至ったのである。
尚、雑草発育抑制剤としては、上記天然由来成分に加えて天草(テングサ)の粉末を土中埋設体に混入することもできる。この天草成分も雑草発育抑制効果が認められたためである。
【0031】
図2は、上記土中埋設体を用いた雑草発育抑制方法の施工例を示す説明図である。
図では約1mの土地を示しており、例えばこの1mの土地に上記図1で示した埋設体10(図中○で示している。)を14本打ち込んでいる。
より詳しくは、上下4列に所定の約40cm間隔で菱形の頂点の部位に順次打ち込んで行くのである。
【0032】
埋設体を適宜間隔で打ち込んだ後は、水撒きを行う。
その後、加重用ローラーを用いて転圧を掛けて施工が完了する。
このようにして本発明に係る土中埋設体を適宜間隔で打ち込んだ土地は長期間、例えば3年間程そのままの状態で雑草の発育や成育を抑制することができる。
土中埋設体の体積(大きさ)は、要求される発育抑制の期間によって決定すればよく、短期間の発育抑制の場合であれば、より小さいサイズの埋設体で間に合うこととなる。
【0033】
尚、埋設体10の相互の施工間隔は、埋設体10のサイズに応じて決定することができる。
埋設体の体積を大きくすることによって、その間隔を大きくすることができるが、混入成分の溶出速度をも考慮すれば、その施工間隔は適宜適切なものとする必要がある。
勿論、土中埋設体は、図1に示した形状、形態に限られものではない。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通りその形態を変更して実施することができる。
上記した通り、本発明に係る土中埋設体は、図1に図示したものに限られず、その混入成分が適切に効果的に土中に溶出する形態であればどのようなものであってもよい。
例えば、単なる円柱形状で先細形状のものでもよく、突起部がなくともよいが、好ましくはその外表面積がより大きいものが適切である。
【0035】
他方、この埋設体は、球体形状のものであってもよいが、この場合には土中のある程度の深さの部分に埋設する必要があり、その場合には事前に穴部を形成する必要があり、その施工に手間が掛かるという問題が残る。
土中埋設体は所定間隔で相互に埋設施工をするのであるが、その間隔はそれぞれ完全に同一である必要は無く、おおよそ略同一間隔であればよい。埋設体内の成分の土壌内への溶出速度や、土壌内での浸透速度はその土壌の状態等により異なるからである。
以上、本発明においては、天然由来成分を混入させた土中埋設体を使用した雑草の発育を抑制できる有効な方法と、当該方法に用いる最適な土中埋設体を提案することができたものである。
【符号の説明】
【0036】
10 土中埋設体
11 先端部
12 基端部
15 突条部
18 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性プラスチックから成る埋設体であって、
この埋設体に天然由来成分から成る雑草発育抑制剤を混入し、
この埋設体を所定間隔にて土中に埋設することによって、
経時的に埋設体内から前記雑草発育抑制剤が溶出して雑草の発育を長期間抑制することができることを特徴とする雑草発育抑制方法。
【請求項2】
雑草発育抑制剤が、唐辛子抽出成分とカイワレ抽出成分を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の雑草発育抑制方法。
【請求項3】
唐辛子抽出成分の内の約30重量%乃至約50重量%がカプサイシンであり、カイワレ抽出成分の内の約80重量%乃至約95重量%がルチンであることを特徴とする請求項2に記載の雑草発育抑制方法。
【請求項4】
前記埋設体の成分が、唐辛子抽出成分と、カイワレ抽出成分と、水酸化カルシウムと、米粉及び生分解性プラスチックであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の雑草発育抑制方法。
【請求項5】
天然由来成分から成る雑草発育抑制剤が混入された生分解性合成樹脂製の埋設体を所定間隔にて土中に埋設して雑草の発育を抑制する雑草発育抑制方法に使用する埋設体であって、
この埋設体の先端部が先細に形成された杭形状に成形されていることを特徴とする雑草発育抑制方法に用いる土中埋設体。
【請求項6】
土中埋設体の横断面形状が、その外表面積を大きくするために、その周側面部が外側に膨出する突条部を有し、且つその適宜位置には外側方向に突出する突出部を複数設けたことを特徴とする請求項5に記載の土中埋設体。
【請求項7】
前記雑草発育抑制剤が、唐辛子抽出成分と、カイワレ抽出成分を主成分とすることを特徴とする請求項5又は6に記載の土中埋設体。
【請求項8】
唐辛子抽出成分の内の約30重量%乃至約50重量%がカプサイシンであり、カイワレ抽出成分の内の約80重量%乃至約95重量%がルチンであることを特徴とする請求項7に記載の土中埋設体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−213691(P2011−213691A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85753(P2010−85753)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(510092889)株式会社関住 (1)
【Fターム(参考)】