説明

離隔距離判断方法及び離隔距離判断方法に用いる立設体

【課題】簡易な構成によって、架空送電線と樹木との離隔距離を樹木が超えたか否かを容易に把握することができる樹木高さ把握方法及び樹木高さ把握方法に用いる立設体を提供する。
【解決手段】架空送電線102の下方に植生する樹木110の高さを把握して架空送電線102と樹木110の頂上部との離隔距離Dの確保の有無を判断する離隔距離判断方法において、所定の高さを有する立設体10を架空送電線102の下方の樹木110の植生領域に設置する立設体設置工程、立設体設置工程で設置された立設体10の高さ位置と樹木110の高さとを対比して樹木110の高さを把握する樹木高さ把握工程を備える。これにより、樹木110の高さ位置を一見して容易に把握することができ、架空送電線102と樹木110の頂上部との離隔距離Dの確保の有無を容易に判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離隔距離判断方法及び離隔距離判断方法に用いる立設体、特に、架空送電線の下方に植生する樹木の高さを把握して架空送電線と樹木の頂上部との離隔距離を判断する離隔距離判断方法及び離隔距離判断方法に用いる立設体に関する。
【背景技術】
【0002】
山林地帯に架設される架空送電線では、この架空送電線の下方に植生する樹木が成長するに従って、架空送電線と樹木との離隔距離が小さくなって絶縁クリアランスが確保できなくなることがある。従って、樹木の成長によって、電気設備技術基準で予め定められた架空送電線と物体との離隔距離を超えることのないように、樹木を伐採して架空送電線と樹木との離隔距離を確保している。
【0003】
この離隔距離が確保されているか否かを判断すべく、日常業務として行われる山林地帯の巡視の際に作業員がトランシット等の測定器を用いて定期的に離隔距離を測定したり、ヘリコプタによって上空から離隔距離を目測したりすることが行われている。しかし、樹木が繁茂する山林地帯では、トランシット等の測定器を用いて離隔距離を測定することは煩雑である。また、測定器を用いた作業員による離隔距離の測定では、個々の作業者の熟練度の相違等によって誤差が生じる場合がある。ヘリコプタによる目視でも、作業者の熟練度によって測定精度が左右される場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、撮影装置を搭載した自走式の測定装置を架空送電線上で走行させて走行距離を検出するとともに、撮影装置によって任意の地点で撮影された測定対象となる樹木の画像に基づいて、架空送電線と樹木との水平夾角を検出し、これら検出した値に基づいて架空送電線から樹木までの離隔距離を演算によって算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−228019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1は、架空送電線と樹木との離隔距離を測定するものであって、電気設備技術基準で定める離隔距離が確保されているか否かについては、離隔距離を演算した後でなければ判断することができない。すなわち、所定の離隔距離が確保されているか否かについて、現場で即座に判断することができない。しかも、離隔距離を測定するにしても、測定のために測定装置を架空送電線に設置する必要があることから、日常業務における山林地帯の巡視の際に簡易に測定することはできず、離隔距離調査の目的をもって山林地帯を巡視する場合に限って測定することができるに過ぎない。また、高所に架設された架空送電線に測定装置を設置することによる作業負担の増大の可能性も生じる。
【0007】
更に、測定装置に自走式の構造を組み込むことによって測定装置の構造が複雑化し、構造の複雑化に伴って製造コストが増大することとなる。また、架空送電線と樹木との水平夾角及び走行距離の検出値に基づく演算処理を要することから、かかる演算処理に伴う作業負担の増大が予想される。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、架空送電線と樹木の頂上部との離隔距離を一見して容易に判断することのできる離隔距離判断方法及び離隔距離判断方法に用いる立設体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明による離隔距離判断方法は、架空送電線の下方に植生する樹木の高さを把握して前記架空送電線と前記樹木の頂上部との離隔距離の確保の有無を判断する離隔距離判断方法において、所定の高さを有する立設体を前記架空送電線の下方の樹木の植生領域に設置する立設体設置工程と、該立設体設置工程で設置された前記立設体の高さ位置と前記樹木の高さとを対比して該樹木の高さを把握する樹木高さ把握工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、架空送電線の下方の樹木の植生領域に設置した立設体を視認するという簡易な動作によって、この領域に植生する樹木の高さを一見して容易に把握することができる。従って、特別な測定機器を用いる必要がないことから、樹木の高さを即座に把握することによって、離隔距離調査の目的をもって山林地帯を巡視する場合に限らず、日常業務における山林地帯の巡視の際に、架空送電線と樹木の頂上部との離隔距離の確保の必要性の有無を簡便に判断することができる。一方、立設体の上方からヘリコプタ等で立設体を視認することによっても、立設体が設置された領域に植生する樹木の高さを一見して容易に把握することができる。
【0011】
請求項2に記載の離隔距離判断方法は、請求項1に記載の離隔距離判断方法において、前記立設体の所定の高さは、前記架空送電線の下方に植生する樹木の成長の許容高さ限度と同じ高さに設定されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、樹木の高さが立設体の高さと同じ高さに達することによって、樹木の成長の許容高さ限度に到達したことを即座に判断することができる。従って、架空送電線と樹木の頂上部との離隔距離の確保の有無の判断を容易化することができる。
【0013】
請求項3に記載の立設体は、請求項1又は2に記載の離隔距離判断方法に用いられる立設体であって、立設された状態における先端部が他の部分に対して識別可能な立体形状に形成されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、立設体の先端部が立体形状に形成されていることから、遠方からであっても立設体の視認性に優れる。従って、例えばヘリコプタ等で立設体の上方から巡視を行う際であっても、立設体を容易に識別することができる。更に、地上からの視認の際に、樹木の頂上部が立体形状に形成された先端部の一部を覆い始めると、視覚的に把握できる立体形状部分の変化によって、架空送電線と樹木の頂上部との離隔距離を確保する必要があることを視覚的に即座に判断することができる。
【0015】
請求項4に記載の立設体は、請求項3に記載の立設体において、前記立体形状部分が前記樹木の色相に対して反対色となる色相に着色されていることを特徴とする。この構成によれば、遠方からの立設体の視認性が更に向上する。しかも、着色する際に、設置される領域に植生する樹木の色相に対して反対色となる色相に着色を施すことで、立設体の先端部と立設体の設置された領域に植生する樹木とを明りょうに識別することができ、離隔距離の確保の必要性の有無の判断の更なる容易化を図ることができる。なお、ここで反対色とは、相対する色を含んだ所定範囲の色相を含む概念のことをいう。
【0016】
請求項5に記載の立設体は、請求項3または4に記載の立設体において、前記樹木の高さを示す目盛が外方から視覚的に認識可能に形成されたことを特徴とする。この構成によれば、外方から視覚的に認識可能な目盛が立設体の本体部に形成されていることから、架空送電線と樹木の頂上部との離隔距離の確保の有無について、目盛を読むだけで容易に判断することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、簡易な構成の立設体を用いることによって、樹木と架空送電線との間の離隔距離を特別な測定装置を使用して実際に測定しなくとも、架空送電線と樹木の頂上部との離隔距離の確保の有無を一見して容易に判断することができる。従って、必要なときに迅速に樹木の伐採の準備に着手することができる。その結果、樹木の伐採管理を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る離隔距離判断方法の概略を説明する図である。
【図2】同じく、本実施の形態に係る離隔距離判断方法の概略を説明する図である。
【図3】立設体を用いて、樹木の高さが最大許容高さ位置を超えているか否かを把握し、樹木の高さが最大許容高さ位置に到達するまでの距離を数値的に把握する手順を説明する図である。
【図4】立設体の上方から樹木高さ把握工程を実行する場合の概略を説明する図である。
【図5】同じく、立設体を用いて、樹木の高さが最大許容高さ位置を超えているか否かを把握し、樹木の高さが最大許容高さ位置に到達するまでの距離を数値的に把握する手順を説明する図である。
【図6】本発明の他の実施の形態における立設体の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図1〜図5に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る離隔距離判断方法に用いられる立設体10の概略を説明する図である。図示のように、立設体10は、送電鉄塔100−1及び100−2の間に架設された架空送電線102の下方の樹木110の植生領域に設置されている。この立設体10が植生領域に設置された状態において、立設体10の所定の高さは、架空送電線102の下方に植生する樹木110の成長の許容限度高さ限度と同じ高さに設定されている。本実施の形態では、架空送電線102と架空送電線102の下方に植生する樹木110との間で予め設定された離隔距離Dを確保するために必要な樹木110の最大許容高さ位置Rに設定され、立設体10の高さ位置と樹木110の高さとを対比すると、樹木110の高さが立設体10の高さ位置、すなわち樹木110の最大許容高さ位置Rを超えたか否かが一見して把握可能に構成されている。
【0021】
ここで、架空送電線102とこの架空送電線102の下方に存在する物体との間の離隔距離は、電圧が22万V程度の架空送電線では架空送電線から3.92mを離隔距離として設けるべきことが電気設備技術基準で定められている。架空送電線102は、通電によって膨張して伸張することから、本実施の形態では、離隔距離Dは、架空送電線102が通電によって伸張して緊張度Tから最大弛度Lに到達した位置から4.92m下方の地点までが離隔距離Dとして設定されている。
【0022】
この離隔距離Dは、電気設備技術基準で定められた基準距離d1(3.92m)及びかかる基準距離d1から更に安全性を確保するための安全距離d2(1m)を有しており、架空送電線102の架設方向の全域に沿っておよそ4.92mの帯域を有している。架空送電線102からこの4.92m離間した位置が、樹木110の最大許容高さ位置Rに設定される。
【0023】
次に、本実施の形態に係る立設体10の各部の具体的構成について、図2に基づいて説明する。図示のように、立設体10は、樹木110の植生領域にワイヤ18によって補強的に支持されて設置された棒状の本体部12を備え、本体部12が設置された状態の先端部が立体形状、本実施の形態では球状の識別部14として構成されている。識別部14は、立設体10の上方から、例えばヘリコプタ等で立設体10を視認した際に、本体部12と樹木110とを明確に識別できるように、樹木110の色相と反対色の関係にある色相に着色されて形成されている。
【0024】
なお、本実施の形態では、識別部14は球状に形成されている場合を例として説明したが、球状に限定されず、一般によく知られており識別しやすい立体形状であればよく、例えば星形に形成された識別部14であってもよい。
【0025】
本体部12には、地上において視覚的に認識可能な目盛16が形成されている。本実施の形態では、本体部12の立設方向上方から立設方向下方に向かうに従って、樹木110の最大許容高さ位置Rからの離間が増大する状態を表示するように設定されている。この目盛16は、本実施の形態では、識別部14から本体部12の立設方向下方に向かうに従って、1mの間隔で4mまで設定されている。
【0026】
次に、本実施の形態に係る離隔距離判断方法について、図1及び図2に基づいて説明する。
【0027】
まず、上記構成を有する立設体10を、送電鉄塔100−1及び100−2の径間において、架空送電線102の架設方向に沿って、架空送電線102のほぼ真下の樹木110の植生領域に架空送電線102の架設方向に沿って複数本を設置する(立設体設置工程)。立設体10の設置は、設置する樹木110の植生領域に基礎を形成したうえで立設させ、その後、2本のワイヤ18を、立設体10を介して対向する位置に張設する。これにより、立設体10がワイヤ18によって補強支持されて設置される。なお、立設体10の設置本数は、送電鉄塔100−1及び100−2の径間長に応じて適宜調整される。本実施の形態では、立設体10は、送電鉄塔100−1及び100−2の径長間において3本設置されている。
【0028】
その後、立設体設置工程で設置された立設体10の高さ位置、本実施の形態では最大許容高さ位置Rと植生領域に植生する樹木110の高さとを対比する(樹木高さ把握工程)。
【0029】
この樹木高さ把握工程について、図2及び図3〜図5を用いて具体的に説明する。図2で示すように、樹木高さ把握工程では、まず、立設体10の識別部14の高さ位置と樹木110の高さとを対比して、樹木110の高さを把握する。すなわち、本実施の形態では、樹木110の高さが立設体10の高さ位置(最大許容高さ位置R)を超えているか否かを把握する。このとき、樹木110の高さが識別部14の一部を覆い始めると、識別部14の立体形状の変化を視覚的に認識できることから、架空送電線102と樹木110との離隔距離Dを確保する必要があることを視覚的に即座に判断することができる。
【0030】
立設体10の識別部14の高さ位置と樹木110aの高さとを対比すると、樹木110は識別部14の高さ位置を超えていないと一見して把握することができる。一方、立設体10の識別部14の高さ位置と樹木110bの高さとを対比すると、樹木110bは識別部14の高さ位置を超えていると一見して把握することができる。
【0031】
この樹木高さ把握工程は、地上からの目視によって樹木110の高さを把握する場合と、ヘリコプタ等によって立設体10の上方から樹木110の高さを把握する場合とがある。
【0032】
まず、地上からの目視によって樹木110の高さを把握する場合を、図3に基づいて説明する。図3は、立設体10を用いて、樹木110の高さが最大許容高さ位置Rを超えているか否かを把握し、樹木110の高さが最大許容高さ位置Rに到達するまでの距離を数値的に把握する手順を説明する図である。本実施の形態では、立設体10が設置された領域に植生する樹木110が、110c〜110eの3本である場合を例として説明する。
【0033】
立設体10の識別部14の高さ位置と樹木110cの高さとを対比すると、樹木110cは識別部14の高さ位置を超えていないと一見して把握することができる。それと共に、樹木110cの頂上部の高さが立設体10の目盛16において2mの地点に位置することから、樹木110cの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離は2mであると数値的に一見して把握することができる。
【0034】
同様の測定手法によって、樹木110dは識別部14の高さ位置を超えていないと一見して把握することができ、樹木110dの頂上部の高さが立設体10の目盛16において1mの地点に位置することから、樹木110dの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離は1mであると数値的に一見して把握することができる。同様に、樹木110eは識別部14と同位置であると一見して把握することができ、樹木110eにおける最大許容高さ位置Rからの距離は0mであると数値的に一見して把握することができる。
【0035】
このように、識別部14の高さ位置が樹木の最大許容高さ位置Rに設定された立設体10が、樹木110c〜110eの植生領域に設置されていることから、ポール本体部12の先端部に形成された識別部14の高さ位置と樹木110の高さとの対比を行うという簡易な構成によって、樹木110c〜110eの高さが、立設体10の先端部に形成された識別部14の高さ位置を超えた場合は、予め設定された最大許容高さ位置Rを超えたものと、一見して把握することができる。
【0036】
また、本体部12に設定された目盛16によって、樹木110c〜110eが最大許容高さ位置Rに到達するまでの距離を一見して数値化して把握することができることから、離隔距離Dの管理を容易に行うことができる。
【0037】
次に、ヘリコプタ等によって立設体10の上方から樹木110の高さを把握する場合を、図4に基づいて説明する
【0038】
図4は、立設体10の上方から樹木高さ把握工程を実行する場合の概略を説明する図である。図示のように、立設体10の上方から、図示しないヘリコプタによって、立設体10と樹木110とを識別する。このとき、立設体10は、先端部が球状の識別部14として構成され、かつ樹木110と反対色となる色相で着色されていることから、立設体10の視認性に優れ、立設体10と樹木110とを明りょうに識別することができる。樹木110が繁茂して識別部14を覆っており、上方から立設体10を識別できない場合は、立設体10が本来立設されている場所において識別できないことから、その領域において樹木110の高さが立設体10の高さ位置を超えて成長していると判断することができる。
【0039】
立設体10と樹木110とを識別した後、個々の立設体10について、ヘリコプタ上から、立設体10が設置された領域に植生する樹木110の高さが、最大許容高さ位置Rを超えているか否かを把握する。
【0040】
なお、ヘリコプタ上から、立設体10が設置された領域に植生する樹木110の高さが、最大許容高さ位置Rを超えているか否かを把握することができたとしても、樹木110の高さが最大許容高さ位置Rに到達するまでの距離を数値的に把握することが困難である場合は、立設体10が設置された領域に植生する樹木110のうち最大許容高さ位置Rの臨界領域まで成長した樹木110を予め目測しておき、後日の山林調査において地上から数値的に把握する。
【0041】
樹木110c〜eの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離を数値的に把握した後、この数値を管理用パソコンに入力する。管理用パソコンでは、入力された数値に基づいて、この数値が小さい順、すなわち樹木110c〜eの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離が短い順に高い順位が割り当てられるように設定されている。
【0042】
本実施の形態では、図3で示したように、樹木110eの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離は0mであり、最も小さいので、優先順位1位が割り当てられる。その次に、樹木110dの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離は1mであり、優先順位2位が割り当てられる。最後に、樹木110cから最大許容高さ位置Rまでの距離は2mであり、優先順位3位が割り当てられる。このように、樹木110c〜110eにおける最大許容高さ位置Rからの距離が小さい順に、優先順位が割り当てられる。
【0043】
この優先順位に基づいて、樹木の伐採のための交渉あるいは樹木の伐採が行われる。樹木の伐採のための交渉では、伐採対象となる樹木110の所有権を有する地主と伐採のための交渉を行う。この交渉は、高い優先順位の設定された樹木を所有する地主から優先して行われる。すなわち、樹木110のうち、その高さ位置が、最大許容高さ位置Rまでの距離が最も小さい樹木が、最も成長が早く、架空送電線102に接触して短絡事故を誘発する可能性が高いことから、この樹木を所有する地主に対して優先的に交渉を行う。本実施の形態では、樹木110eの地主に対して、樹木110eの伐採交渉を行う。樹木110eの地主との伐採交渉が成立した後、樹木110eを伐採する。
【0044】
樹木110eの地主と伐採の交渉を開始すると同時に、優先順位2位に割り当てられた樹木110dの地主とも伐採の交渉を開始する。すなわち、樹木110dが最大許容高さ位置Rに到達した際には直ちに伐採できるように、樹木110dの地主と伐採許可の交渉を予めまとめておくことができる。
【0045】
このように、樹木110c〜110eまでの地主が異なる場合に、優先順位の最も高い樹木110eの地主に対して伐採許可の交渉をスムーズに行うことができ、樹木110の伐採管理において最も時間を要する地主との伐採交渉について、十分に時間を確保して臨むことができる。従って、伐採管理を円滑に実行することができる。
【0046】
樹木110eを伐採して所定期間が経過した後、例えば1年後に、日常業務として行われる山林地帯の巡視の際に、図5で示すように、樹木110cが樹木110dの成長速度を追い抜いて樹木110dよりも大きく成長したとする。このとき、樹木110cの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離は50cmであると一見して把握することができ、樹木110dの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離は依然として1mであると一見して把握することができる。すなわち、1年前の樹木高さ把握の実施の結果と異なって、樹木110cが樹木110dを追い越して成長したこととなる。
【0047】
このような場合には優先順位の見直しを図るべく、再度、樹木110c、110dの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離を管理用パソコンに入力する。この入力結果に基づき、上記と同様に、距離が小さい順に高い順位が割り当てられる。すなわち、本実施の形態では、樹木110cの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離は50cmであり、最も小さいので、優先順位が見直されて、1位が割り当てられる。樹木110dの頂上部から最大許容高さ位置Rまでの距離は1mであることから、優先順位2位が割り当てられる。このように、樹木高さ把握工程で把握された距離の変化に基づいて、優先順位の割り当ての見直しが図られ、架空送電線102と樹木110との間の適切な離隔距離Dの管理を実行することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、目盛16は、本体部12の立設方向下方に向かうに従って、1mの間隔で4mまで設定されている場合を説明したが、これに限定されるものではなく、立設体10の設置箇所の状況に応じて種々変更可能である。
【0049】
上記実施の形態では、識別部14の高さ位置が最大許容高さ位置Rとなるように立設体10の高さが設定されている場合を例として説明したが、図6で示すように、識別部14が離隔距離Dの安全距離d2内に到達する高さとなるように立設体10の高さを設定することができる。この場合も、樹木110の高さが識別部14の一部を覆い始めると、識別部14の立体形状の変化を視覚的に認識できることから、架空送電線102と樹木110との離隔距離Dを確保する必要があることを視覚的に即座に判断することができる。
【0050】
上記実施の形態では、立設体10の本体部12が棒状に形成された場合について説明したが、棒状に限定されるものではなく、架空送電線102と樹木110との離隔距離Dの確保の有無を判断できる所定の高さを有する部材であればよい。
【符号の説明】
【0051】
10 立設体
12 本体部
14 識別部
16 目盛
D 離隔距離
R 最大許容高さ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空送電線の下方に植生する樹木の高さを把握して前記架空送電線と前記樹木の頂上部との離隔距離の確保の有無を判断する離隔距離判断方法において、
所定の高さを有する立設体を前記架空送電線の下方の樹木の植生領域に設置する立設体設置工程と、
該立設体設置工程で設置された前記立設体の高さ位置と前記樹木の高さとを対比して該樹木の高さを把握する樹木高さ把握工程と、
を備えることを特徴とする離隔距離判断方法。
【請求項2】
前記立設体の所定の高さは、
前記架空送電線の下方に植生する樹木の成長の許容高さ限度と同じ高さに設定されたことを特徴とする請求項1に記載の離隔距離判断方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の離隔距離判断方法に用いられる立設体であって、
立設された状態における先端部が他の部分に対して識別可能な立体形状に形成されたことを特徴とする立設体。
【請求項4】
前記立体形状部分が前記樹木の色相に対して反対色となる色相に着色されていることを特徴とする請求項3に記載の立設体。
【請求項5】
前記樹木の高さを示す目盛が外方から視覚的に認識可能に形成されたことを特徴とする請求項3または4に記載の立設体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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