説明

難燃性シートおよび原子力発電所養生シート

【課題】難燃性および透視性に優れ、焼却時に有害ガスが発生せず、かつ焼却後の灰分が少ない難燃性シートを提供する。
【解決手段】難燃性シートは、ハロゲン元素を含有しない基材フィルムの片面又は両面に、難燃剤および合成樹脂結着剤を含有する難燃層が設けられ、前記基材フィルム上における難燃層の面積比率が2〜60%であり、かつ基材フィルムのJISK7105に従って測定される曇価が40%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透過視認性(以下、「透視性」と称する場合がある)に優れた難燃性シートに関する。さらに詳しくは、難燃性および透視性に優れ、焼却時に有害ガスが発生せず、かつ焼却後の灰分が少ない難燃性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築・工事用に用いられる養生シート(いわゆる、機械類、棚・天井・壁・床等を被覆するためのシート)として、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン等のプラスチックフィルムなどの繊維を含まない樹脂シートが用いられている。
【0003】
このようなシートは、建築・工事用養生シートのみならず、原子力発電所養生シートとしても用いられる。例えば、原子力発電所等放射性物質の取扱施設で、放射線取扱装置の工事、点検等を行なう場合に、該施設における装置や周辺部などが放射性物質によって汚染されることを防止するために、装置及び周辺部を該シートで覆って保護する。該シートは、工事、点検の終了後には撤去される。
【0004】
原子力発電所養生シートには、UL−94規格に準拠する難燃性試験(薄手材料垂直燃焼試験)においてVTM−0(以下、V−0ともいう)に相当する難燃性が要望されている。さらに、上記のシートには、良好な焼却性が求められ、焼却後に残る灰分を少なくすることが求められている。なぜなら、使用後のシートは放射性物質に汚染されており、焼却後に残る灰分にも多量の放射性物質が含有されているため、該灰分を処理する際に環境負荷が非常に高くなるという問題があるからである。
【0005】
そのため、難燃性を有する樹脂シートが求められており、塩化ビニルなどのハロゲン含有樹脂を用いた難燃性樹脂シートや、樹脂シートを構成する樹脂に難燃剤を練り込んだ難燃性樹脂シートが販売されている。
【0006】
しかし、塩化ビニルなどのハロゲン含有樹脂を用いた難燃性樹脂シートは、塩化ビニル樹脂に起因して、火災時や焼却時には塩素ガスや塩化水素ガスなどの有害なガスが発生する。そのため、火災発生時にはその毒性によって健康を害する場合があり、焼却時には焼却炉を傷める原因となるとともにダイオキシンの発生が懸念される。従って、該シートを最終処分する場合には、焼却によって処分されるだけではなく、埋め立てによっても処分されている。このような状況のなかで、近年、最終処分場である埋め立て地が減少しており、該シートを埋却廃棄するスペースを確保し難い環境となりつつある。
【0007】
さらに、樹脂に難燃剤を練り込んだ難燃性樹脂シートには、難燃剤などに起因して、シート全体が白色、白濁色、褐色又は黒色となるため透明性に劣り、シートの向こう側を観ることができないという問題があった。透明性に劣るシートで機器や床などを被覆した場合には、以下のような問題が発生する。すなわち、作業者には機器の大きさが認識しにくく、作業中に工具をぶつけてしまう等の不都合が起きやすい。床を被覆した場合には、床面の凹凸が分かり難く作業者が躓きやすい。工具などの上にシートを被せた場合には、工具などがどこにあるのかわからなくなる。特に放射性物質取扱施設では、放射性物質による汚染度の高い管理区域エリアを仕切るためにシートを用いる場合に、中の作業の様子が分かり難く、万一の事故や作業者の急病などの発見が遅れてしまう。
【0008】
したがって、このようなシートとしては、難燃性を有すること、透過視認性を有すること、ハロゲン化ガスなどの有害ガスの発生がないこと、および焼却後の灰分が少ないこと、という条件を兼ね備えることが求められている。
【0009】
上記の条件を兼ね備えたシートを得るために、様々な検討が行われている。たとえば、塩化水素ガスなどのハロゲン化ガスの発生を回避しつつ、焼却後の灰分を低減するために、基布の片面または両面に、ウレタン系樹脂と(イソ)シアヌル酸誘導体化合物とを含有した難燃性樹脂組成物を含む難燃層が形成された難燃シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、V−0レベルの難燃性を達成する難燃シートとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体、赤燐および硫酸メラミンを配合した組成物で形成された難燃性プラスチックシート(例えば、特許文献2参照)や、ポリオレフィン系樹脂水性ディスパージョンおよび/またはポリウレタン系樹脂水性ディスパージョンからなる樹脂水性ディスパージョンにジシアンジアミドを配合した組成物で形成されたシートと、熱可塑性樹脂フィルムを積層した自己消化性難燃シート(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0011】
特許文献1から特許文献3に記載されたシートは、難燃性を有するだけではなく、ハロゲン化合物を含有しないために火災時や焼却時における有害ガスの発生が抑制され、安全性が高いものである。また、特許文献1から特許文献3に記載されたシートは窒素、酸素、炭素、水素からなる化合物からなるものであり、焼却後に灰分がほとんど残存しないため、有益である。
【0012】
上記の他にも、環境への負荷が低減された難着火シートとして、乳酸−脂肪族エステル共重合体と、この共重合体とは異種の加水分解性ポリエステル樹脂とからなる可撓性難着火性シートや、該可撓性難着火性シートに、ポリ乳酸繊維からなる粗目織物を積層したシートが提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4に記載されたシートは、特に透明または半透明であるため透過視認性が高く、且つ焼却後の灰分が少なく、環境負荷が低減されているため、放射性物質取扱施設の機械類、棚・天井・壁・床等を被覆するのに好適なものである。
【0013】
さらに、難燃剤を含有する芯鞘型複層モノフィラメントが編織成されてなり、該フィラメント間に透孔が形成されたメッシュシートが提案されている(例えば、特許文献5参照)。特許文献5のメッシュシートは、通気性を有し、さらに焼却後の灰分が些少である点において有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−049367号公報
【特許文献2】特開平10−182895号公報
【特許文献3】特開2001−047567号公報
【特許文献4】特開2008−222789号公報
【特許文献5】特開2002−327353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の特許文献1〜5で得られたシートには、以下のような問題点がある。
特許文献1〜3で得られたハロゲン元素を含まないシートは、難燃性、火災時や焼却時の有害燃焼ガスの発生抑制、焼却後の灰分の低減の観点からは有益である。しかしながら、難燃剤を多量に含むために、可視光透過性に劣るものであり、たとえ多少の可視光透過性が確保されたとしても、その透視性は非常に乏しいものであった。
【0016】
また、特許文献4の場合は、透視性が確保されているが、加水分解するため、材料の強度や耐久性が著しく悪く、長期に渡り利用できないという問題点があった。また、材料が特殊であるため高価であった。
【0017】
また、特許文献5で得られたメッシュシートは、工事現場から工事用資材が落下するのを防止するために用いられるものであり、工事現場内の通風性を確保するための細かい網目を有している。しかしながら、該メッシュシートは網目部が開孔部になっているので、施設の工事場所の機械類、棚・天井・壁・床等を被覆・防護する用途には不向きである。
【0018】
本発明は、これらの問題を鑑み、透視性および難燃性に優れ、焼却時の有害ガスの発生が抑制され、焼却後の灰分が少ない難燃性シートおよび原子力発電所養生シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、透明性を有する基材フィルムの片面又は両面において、基材フィルム表面の一部分に難燃層を設けてなる難燃性シートが、強度、透視性および難燃性に優れ、焼却時の有害ガスと焼却時の灰分残渣を低減できることを見出し、本発明に到達した。
【0020】
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ハロゲン元素を含有しない基材フィルムの片面又は両面に、難燃剤および合成樹脂結着剤を含有する難燃層が設けられ、前記基材フィルム上における難燃層の面積比率が2〜60%であり、かつ基材フィルムのJIS K7105(1981年)に従って測定される曇価が40%以下であることを特徴とする難燃性シート。
(2)難燃剤が、窒素系難燃剤、リン系難燃剤および硫黄系難燃剤から選ばれた一種以上であることを特徴とする(1)の難燃性シート。
(3)難燃性シート全体に対する難燃剤の割合が、3〜40質量%であることを特徴とする(1)または(2)の難燃性シート。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性シートを用いた原子力発電所養生シート。
【発明の効果】
【0021】
本発明の難燃性シートは、難燃性に優れ、燃焼時の有害ガスの発生が抑制され、焼却後の灰分が低減され、且つ透視性が高いものである。従って、作業者が安全に作業でき、工事用シート、養生シート、防風シート、間仕切りシートなどに好適に使用でき、特に原子力発電所や放射性物質取扱施設における点検、修理などの作業に用いる養生シートとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】難燃層が基材フィルム上に格子柄に設けられてなる本発明の難燃性シートの概略図である。
【図2】難燃層が基材フィルム上に縦横配列の多数の十字柄に設けられてなる本発明の難燃性シートの概略図である。
【図3】難燃層が基材フィルム上に千鳥状の多数の十字柄に設けられてなる本発明の難燃性シートの概略図である。
【図4】難燃層が互いに繋がった多数の六角形を描くように設けられてなる本発明の難燃性シートの概略図である。
【図5】難燃層が基材フィルム上に格子柄が斜めになるように設けられてなる本発明の難燃性シートの概略図である。
【図6】難燃層が基材フィルム上に多数の菱形の輪郭を形成するように設けられてなる本発明の難燃性シートの概略図である。
【図7】難燃層が基材フィルム上に水玉柄となるように設けられてなる本発明の難燃性シートの概略図である。
【図8】難燃層が基材フィルム上に市松模様柄となるように設けられてなる本発明の難燃性シートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の難燃性シートは、透明性を有する基材フィルムの片面又は両面において、基材フィルムの一部分に難燃層を設けてなるものである。
【0024】
本発明の難燃性シートは、難燃性シートの表面からみて、可視光透過部と難燃性可視光不透過部(以下、単に可視光不透過部ともいう)からなることが好ましい。なお、可視光透過部は後述の曇価が40%以下である部分をいい、可視光不透過部は後述の曇価が40%を超える部分をいう。かかる構成であると、可視光透過部により透過視認性を得ることができ、難燃性可視光不透過部で難燃性を得ることができる。そのため、高水準の透過視認性と難燃性を両立することができる。詳細には、難燃性可視光不透過部に比較的高い濃度の難燃剤を配置することが可能になり、フィルムを構成する樹脂成分に難燃剤が練り込まれシート全体が難燃性を有してなるシートと比較すると、シート全体に含まれる難燃剤量が同量であっても、部分的に高濃度の難燃剤を配置することができるため、優れた難燃性を得ることができる。また、可視光透過部は、シート全体に含まれる難燃剤量の平均値よりも少ない難燃剤量である構成、又は難燃剤を含まない構成にすることができるため、透過視認性も非常に良好である。
【0025】
前記可視光不透過部は、難燃性シートの断面からみて、基材フィルムと難燃層とを含む積層構成であることが好ましい。かかる構成であると、基材フィルムが難燃層を保持することができる。
【0026】
前記可視光透過部は少なくとも基材フィルムを含む構成であればよく、可視光透過部は基材フィルムのみで構成されていることがより好ましい。かかる構成であると、難燃性シートが炎に曝されたときに、熱により可視光透過部を構成する基材フィルムが収縮して、可視光透過部の周囲に存在する難燃性可視光不透過部(即ち、難燃層)が凝集する。それにより、炎に曝された部分の難燃剤量が一時的に高くなり、消火される現象が起こる。また、特に優れた透過視認性を有する難燃性シートを得ることができる。
【0027】
本発明の難燃性シートは、基材フィルムの一部分に難燃層を有する。すなわち、難燃性を有する部分が層として存在する。かかる構成であると、基材フィルムの難燃性と難燃層の難燃性とに差があることに起因して、難燃層よりも基材フィルムが燃焼しやすくなるため、可視光不透過部の基材フィルムが燃え尽き、難燃性シートの一部が切り離されて消火される現象が起こる。かかる効果をより顕著に得る観点から、可視光不透過部は、基材フィルムの片面又は両面に難燃層が印刷又は塗布されてなることがより好ましい。
【0028】
基材フィルムは、焼却時に有害ガスの発生を抑制する観点から、ハロゲン元素を含有しないものであることが必要である。基材フィルムの具体例としては、6ナイロン、66ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムなどが挙げられる。なかでも、難燃性に優れる観点から、ポリアミドフィルムが好ましく用いられる。特に、66ナイロンを用いると、限界酸素指数が高く難燃性に優れる。
【0029】
基材フィルムとしてポリアミドフィルムを用いると、ポリアミドの難燃性に起因して、難燃性シート全体として十分な難燃性を得やすくなり、後述の難燃剤の量を少なくすることができる。即ち、透過視認性を阻害する難燃剤の量を少なくしても所望の難燃性を維持することができるため、可視光透過部の面積を広くすることが可能となる。
【0030】
基材フィルムとしては、透明性を確保する観点から、透明度の指標であるJIS K7105(1981年)で測定される曇価が40%以下であるフィルムであることが必要であり、該曇価が30%以下であるフィルムであることが好ましい。このような曇価を有するフィルムであれば、機器や床等の汚染を防ぐための被覆に用いたり、特別なエリアを仕切るために用いたりする際に、フィルムの背面側を遠くまでも見ることができ、作業中の転倒等の防止や万一の場合の早急な対応が可能となる。中でも、本発明の難燃性シートを間仕切りなどに用いる場合には、該曇価は20%以下であることがより好ましい。
【0031】
基材フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、10〜500μmであることが好ましく、15〜200μmであることがより好ましく、50〜100μmであることが最も好ましい。基材フィルムの厚みが10μm以上であると、引裂強度に優れた難燃性シートを得ることができ、一方、500μm以下であると、屈曲時に破断することのない柔軟性に優れた難燃性シートを得ることができる。
【0032】
基材フィルムの目付けは、特に限定されるものではないが、引裂強度、柔軟性の観点から、5〜500g/mであることが好ましく、10〜100g/mであることがより好ましい。
【0033】
基材フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリマーをアロイ化したり、あるいはブレンドしたりしてもよく、積層フィルムを用いてもよい。また、取扱い容易性、耐久性、加工性を向上させるために、スリップ剤、耐候助剤、帯電防止剤などの各種添加剤が添加されていてもよい。
【0034】
難燃層は、難燃剤を含有するものである。難燃剤としては、有機系難燃剤又は無機系難燃剤を用いることができ、例えば、発泡性難燃剤、窒素系難燃剤、燐系難燃剤、硫黄系難燃剤などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上組み合わせて用いられてもよい。なかでも、焼却後の灰分を少なくする観点から、難燃剤は有機系難燃剤であることが好ましく、また、燃焼ガスの安全性の観点から、ヒドラゾジカルボンアミドなどの発泡性難燃剤、メラミンシアヌレートなどの窒素系難燃剤が好ましい。
【0035】
難燃剤は、ハロゲン系難燃剤でないことが好ましい。ハロゲン系難燃剤を用いた場合は、火災時や焼却時に難燃性シートからハロゲン化ガスが発生するため、健康や環境に悪影響があり、また、このような悪影響を回避するため、焼却せずに埋却廃棄すると、廃棄物量が焼却廃棄時より多くなる。ただし、ハロゲン系難燃剤の量が少量である場合にはこの限りではない。例えば、難燃性シート全体に対するハロゲン系難燃剤の割合が1質量%以下である場合には、ハロゲン系難燃剤を用いてもよい。
【0036】
難燃層には、さらに、合成樹脂結着剤が含有されている。合成樹脂結着剤は、難燃剤を固着させて層を形成する役割を担うと共に、基材フィルムと難燃剤層を接着させる役割を担う。合成樹脂結着剤としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上組み合わせて用いられてもよい。なかでも、比較的難燃性が良好である観点から、ウレタン樹脂がとくに好ましい。
【0037】
難燃層における難燃剤の濃度は、5〜99質量%であることが好ましく、20〜95質量%であることがより好ましく、30〜90質量%であることが最も好ましい。濃度が5質量%以上であると、合成樹脂結着剤の割合が多くなりすぎず難燃性を効率よく得ることができ、99質量%以下であると、合成樹脂結着剤の割合が少なくなりすぎず基材フィルムと難燃層との接着性が良好である。
【0038】
難燃層における合成樹脂結着剤の濃度は、1〜95質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることが最も好ましい。濃度が1質量%以上であると、基材フィルムと難燃剤層との接着性がより良好であり、95質量%以下であると、難燃剤の割合が少なくなりすぎず難燃性を効率よく得ることができる。
【0039】
難燃層の厚みは、基材フィルムの厚みに応じて、適宜選択することができ、基材フィルムの厚さに対して、0.5倍〜10倍の範囲であることが好ましく、1〜8倍の範囲であることがより好ましく、2〜5倍の範囲であることが最も好ましい。難燃層の厚みが基材フィルムの厚さに対して、上記の範囲に満たず薄すぎると十分な難燃性を得られない場合があり、一方、上記の範囲を超えて厚すぎると巻き取り時にシワなどが発生する場合がある。
【0040】
難燃層の厚みは、10〜500μmであることが好ましく、20〜300μmであることがより好ましく、50〜200μmであることが最も好ましい。難燃層の厚みが10μm未満であると、十分な難燃性が得られない場合があり、一方、500μmを超えると、巻き取り時にシワなどが発生する場合がある。
【0041】
難燃層は、有機顔料や無機顔料などの着色剤を含んでよい。本発明において、難燃層は、難燃剤の影響で白くなる場合がある。それにより、強い光が照射された部分が白くぼやけ(すなわち、ハレーションを起こす)、難燃層が存在しない部分(すなわち、可視光透過部)の透視性を損なう場合がある。このような場合には、難燃層に濃色の有機顔料やカーボンブラックを含有させて難燃層を暗くすることで、ハレーションを抑制して難燃性シート全体の透視性を向上させることができる。
【0042】
難燃層には、その他にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、酸化防止剤、耐候助剤、帯電防止剤などの各種添加剤が含有されていてもよい。
【0043】
難燃層は、透明性を有する基材フィルムの両面または片面に設けられる。工程数を少なくし、製造コストを低くする観点からは、片面に設けられることが好ましく、高水準の難燃性を得る観点からは、両面に設けられることが好ましい。また、両面に難燃層を設けると難燃性シートがカールすることを抑制することもできる。
【0044】
難燃層を両面に設ける場合には、各面で異なる難燃層の柄、幅寸法、ピッチなどを採用してもよく、又は、各面で同じ難燃層の柄、幅寸法、ピッチなどを採用してもよい。また、一方の表面に難燃層を設けた後に、他方の表面に難燃層を設ける方法で難燃層を両面に設ける場合、難燃層を各面で同じ位置(即ち、一方の面からみたときに他方の面の難燃層が一方の面の難燃層に隠れて見えない位置)に設けることが困難な場合がある。このような場合には、各面で異なる難燃層の柄、幅寸法、ピッチなどを採用することで、見栄えをよくすることが出来る。
【0045】
難燃層は、例えば、上記難燃剤、合成樹脂結着剤、および必要に応じて他の成分を含有する難燃性樹脂組成物をインクとして、シルクスクリーン印刷、ローターリースクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷などの公知慣用の方法により基材フィルム上に印刷することで、難燃層を基材フィルム上に設けることができる。
【0046】
基材フィルム上の難燃層の面積比率は、2〜60%であることが必要であり、5〜40%であることが好ましく、10〜30%であることがより好ましい。難燃層の面積比率が2%を未満であると、十分な難燃性が得られないという問題が発生する。一方、60%を超えると、十分な透視性が得られない。
【0047】
難燃層は、難燃性シートの任意の2箇所において、難燃性シートの面積に対する難燃層の面積比率の差が20%以内であることが好ましく、10%以内であることが好ましい。かかる構成であると、全面にわたってムラのない難燃性を有する難燃性シートを得ることができる。なお、任意の2箇所の面積は、難燃性シートの表面において10cm×10cmの正方形サイズとして選択する。
【0048】
難燃層は、難燃性シートの表面方向に、規則的に設けられてもよいし、ランダムに設けられてもよいし、又は文字や絵柄を構成して設けられてもよい。なかでも、難燃層は規則的に設けられることが好ましい。かかる構成であると、全面にわたってムラのない難燃性を有する難燃性シートを得ることができる。
【0049】
難燃剤の基材フィルムへの付着量は、1〜40g/mであることが好ましく、2〜20g/mであることがより好ましい。40g/mを超えると、難燃性シートの柔軟性が阻害される場合があり、シートを屈曲させたときに基材フィルムから難燃層が剥離する場合があり、一方、1g/m未満であると、十分な難燃性を得られない場合がある。
【0050】
難燃性シート全体に対する難燃剤の質量比率は、3〜40質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが最も好ましい。難燃性シート全体に対する難燃剤の質量比率が3質量%以上であると、より優れた難燃性を得ることができる。一方、40質量%以下であると、難燃剤の量が多すぎず、経済的である。
【0051】
図1〜図8は、基材フィルム上に設けられた難燃層の柄の例示である。
図1においては、難燃層が、基材フィルム上に格子柄に設けられている。図2においては、難燃層が、基材フィルム上に縦横配列の多数の十字柄に設けられている。図3においては、難燃層が、基材フィルム上に千鳥状の多数の十字柄に設けられている。図4においては、難燃層が互いに繋がった多数の六角形を描くように設けられている。図5においては、難燃層が、基材フィルム上に、格子柄が斜めになるように設けられている。図6においては、難燃層が、基材フィルム上に、多数の菱形の輪郭を形成するように設けられている。図7においては、難燃層が、基材フィルム上に、水玉柄となるように設けられている。図8は、難燃層が、基材フィルム上に、市松模様柄となるように設けられている。なお、図7および図8においては、黒く塗られている部分が、難燃層が設けられている部分を示す。
【0052】
難燃層による印刷柄としては、連続柄であってもよいし、独立柄であってもよい。連続柄とは、図1、図4、図5で示されたように、難燃層が連続している(難燃層どうしがある部分で繋がっており、独立していない)柄を意味する。独立柄とは、図2、図3、図6、図7および図8で示されたように、難燃層が繋がっておらず、独立している柄を意味する。また、独立柄と連続柄とを組み合わせてもよい。本発明においては、着炎した炎が分断されて消火しやすい観点から、連続柄を単独で用いることが好ましく、なかでも、かかる効果を顕著に得る観点から、図1又は図5に示すような格子柄であることがより好ましい。
【0053】
本発明の難燃シートにおいては、基材フィルム表面に、難燃層が設けられた部分と、難燃層が設けられていない部分が存在する。そのため、両者の厚みは相違しており、すなわち、難燃層が設けられた部分は、設けられていない部分より厚くなっている。そのため、難燃性シートを得た後、該難燃性シートを巻き取る際に、ロールの巻き長が増加するにしたがって、難燃層が設けられている部分どうし、および難燃層が設けられていない部分どうしが重なることに起因し、部分的な巻き径の大小が生じて、ロール表面が凹凸形状となる場合がある。その結果、巻取性が低下するとともに、ロールの芯に近い部分においてシワが発生し易く、シワが発生した部分の透視性が低下する場合がある。
【0054】
難燃性シートを巻き取る際の凹凸を低減させるためには、難燃性シートの巻取り時に難燃層が設けられた部分どうし、および難燃層が設けられていない部分どうしがなるべく重ならないような図柄で、難燃層を基材フィルム上に設けることが好ましい。つまり、難燃性シートの巻取り時に、難燃層が設けられた部分と難燃層が設けられていない部分とが、なるべく重なるように、難燃層を設けることが好ましい。このような場合には、上記の凹凸が低減するため、得られた難燃性シートをロール状に巻き取った場合に、その巻取性が良好となる。さらに、巻き取った難燃性シートを放置した後に巻き広げた場合におけるシワの発生が防止されるため、難燃層が設けられた直後と比較しても透視性が低下せず、好ましい。例えば、難燃層を、図3〜8のような模様柄で基材フィルム上に設けると、難燃性シートの巻取り時に、難燃層が設けられた部分と設けられていない部分との凹凸が発現し難く、巻取性が良好となるとともに、巻き取った難燃性シートを放置した後に巻き広げた場合におけるシワの発生が防止されるため最も好ましいものである。
【0055】
図1、図2、図3、図4、図5および図6で示されるように、難燃層を、所定の幅寸法を有する線の組み合わせにより設けた場合、その難燃層の幅寸法は、0.5〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましく、1.5〜8mmであることが最も好ましい。難燃層の幅寸法が0.5mm以上であると、燃え広がりを抑えて消火する効果に優れ、一方、20mm以下であると、50cm以下の近距離から難燃性シートを見た場合でも透過視認性が阻害されることがない。
【0056】
難燃層を独立柄で基材フィルム上に設けた場合、難燃層の面積は、1〜1000mmであることが好ましく、3〜500mmであることがより好ましく、20〜200mmであることが最も好ましい。
【0057】
図7で示されるように難燃層を水玉柄で基材フィルム上に設けた場合、難燃層が形成する各々の水玉柄の直径は、1〜30mmであることが好ましく、2〜20mmであることがより好ましく、5〜15mmであることが最も好ましい。直径が1mm以上であると、燃え広がりを抑えて消火する効果に優れ、一方、30mm以下であると、50cm以下の近距離から難燃性シートを見た場合でも透過視認性が阻害されることがない。
【0058】
基材フィルム上に設けられた難燃層のピッチ(柄、もしくは柄を形成する線の最大間隙)は、2〜60mmが好ましく、5〜40mmであることがより好ましく、8〜30mmであることが最も好ましい。ピッチが2mm未満であると、透視性が低くなる場合があり、一方60mmを超えると、難燃性が低くなる場合がある。
【0059】
基材フィルムと難燃層からなる本発明の難燃性シートの総目付けは、10〜500g/mであることが好ましく、20〜300g/mであることがより好ましい。難燃性シートの総目付けが10g/m未満であると、強度が低くなる場合があり、一方、500g/mを超えると、廃棄時の焼却量が多くなる場合がある。
【0060】
難燃性シートのJIS K7128−1(トラウザー引裂法)で測定される引裂力は、十分な強力の難燃性シートを得る観点から、0.05N以上であることが好ましく、0.1N以上であることがより好ましい。なお、好ましい上限は10N以下である。
【0061】
本発明の難燃性シートは、繊維製メッシュ(ネット)などの、繊維同士の隙間に起因する透視性を有する材料の片面若しくは両面に積層されてもよい。繊維製メッシュ(ネット)などの材料と積層することで、透視性を維持しつつ、シートの寸法安定性が改善されるという効果を奏する。加えて、シートの引裂き強力と引っ張り強力が増し、耐久性が高まるとともに取り扱い性を改善することができる。
【0062】
繊維製メッシュ(ネット)に用いる繊維は、特に限定されるものではなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸、スリットヤーンなどが挙げられる。また、天然繊維、合成繊維のいずれも用いることができる。また、繊維製メッシュ(ネット)は、透明であっても不透明であってもよいが、透明である場合には、難燃性シートの透視性を阻害しないという利点がある。
【0063】
上記の繊維製メッシュには、染色、難燃加工、撥水加工、接着加工などの公知慣用の加工が施されていてもよい。特に、該繊維へハロゲン元素を含まない難燃加工を行なうことで、基材フィルムへ設けられる難燃層の濃度、印刷線幅、印刷ピッチ等を適宜変更できる範囲を広げることができ、透視性の改善や難燃性の改善に効果的である。
【0064】
本発明の難燃性シートは、工事用、建築用のシートとして用いられる場合には、UL−94規格に準拠する難燃性試験において、V−2レベル以上の難燃性を達成することが好ましい。また、原子力発電所の養生シートとして用いられる場合には、V−0を達成することが好ましい。
【0065】
なお、本発明でいう原子力発電所の養生シートとは、原子力発電所等放射性物質の取扱施設で、放射線取扱装置の工事、点検等を行なう場合に、該施設における装置や周辺部などが放射性物質によって汚染されることを防止するために、装置及び周辺部を覆って保護するためのシートである。
【0066】
本発明の難燃性シートは、保護材料や建材などの用途に、好適に用いられる。特に、本発明の難燃性シートは、難燃性と透視性に優れるため、原子力発電所の点検、修理、工事に特に有用な養生シートに好適に用いられる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0068】
・測定または評価方法
(1)難燃性評価
UL−94規格にて規定される薄手材料垂直燃焼試験方法に従って評価し、試料がVTM−0、VTM−1、VTM−2に適合した場合に、それぞれV−0、V−1、V−2とした。
本発明においては、通常の工業用途や建築用途の実用に耐えうるには、V−2以上の難燃性が必要である。原子力発電所の養生用シートとして用いるためには、V−0の難燃性が必要である。
【0069】
(2)透過視認性評価
市販の白紙(サイズ:幅30cm×30cm、厚み0.18mm)の表面に、最大長が20cmの金属製のスパナを固定した試験体を作成した。該試験体を垂直に配置して、試験体から2m離れた場所を目視位置とした。その後、目視位置と前記試験体の間に、実施例および比較例で得られたシートを試験片として(サイズ:幅30cm×30cm)配置した。試験片の位置を、目視位置から試験体へ向かって5cmずつ移動させながら、目視位置から試験片を通して試験体を目視にて観察した。すべてのモニターがスパナの存在を観察できたときの試験片と試験体との距離を測定し、以下の基準で評価した。なお、モニターは、本評価方法において、試験片のみがない状態に置いて、スパナの存在を観察することができた10人を対象に行った。
○:試験片と試験体との距離が20cm以上であった。
△:試験片と試験体との距離が10cm以上20cm未満であった。
×:試験片と試験体との距離が10cm未満であった。
本発明においては、○であるものを実用に耐えうるものであるとした。
【0070】
実施例および比較例にて用いた原料を以下に示す。
(1)透明性を有する基材フィルム
・6ナイロンフィルム(ユニチカ社製、厚さ:25μm、曇価:4.2%)(以下、「Ny25」と称する場合がある)
・6ナイロンフィルム(ユニチカ社製、厚さ:50μm、曇価:8.6%)(以下、「Ny50」と称する場合がある)
・6ナイロンフィルム(ユニチカ社製、厚さ:15μm、曇価:2.9%)(以下、「Ny15」と称する場合がある)
・ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、厚さ:25μm、曇価:1.3%)(以下、「PET」と称する場合がある)
【0071】
(2)難燃剤
・発泡性難燃剤
ヒドラゾジカルボンアミド(大塚化学社製、商品名「KBH−30」)(以下、「KBH−30」と称する場合がある)
・窒素系難燃剤
メラミンシアヌレート(日産化学社製、商品名「MC−6000」)(以下、「MC−6000」と称する場合がある)
【0072】
(3)合成樹脂結着剤
・ウレタン樹脂(DIC社製、商品名「クリスボン7367SL」)(固形分濃度:35%)(以下、「7367SL」と称する場合がある)
【0073】
(難燃層を形成する難燃性樹脂組成物の調製)
表1に示す割合で、合成樹脂結着剤7367SL、窒素系難燃剤MC−6000および発泡性難燃剤KBH−30を混合し、難燃層を形成する難燃性樹脂組成物(A−1)〜(A−8)を得た。
【0074】
【表1】

【0075】
なお、表1において、難燃性樹脂組成物の組成は合成樹脂結着剤7367SLの固形分100質量部に対する窒素系難燃剤MC−6000および発泡性難燃剤KBH−30の部数(質量部)により表示されるものである。また、表1に、(A−1)〜(A−8)中の難燃剤(KBH−30およびMC−6000)の濃度(質量%)を示す。
【0076】
(実施例1)
(A−1)を、2mm幅、25mmピッチで図1に示すような格子柄に、Ny25(サイズ:30cm×30cm)の片面に、シルクスクリーン印刷して、実施例1の難燃性シートを得、評価に付した。得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
(実施例2)
(A−1)に代えて(A−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の難燃性シートを得、評価に付した。得られたシートの評価結果を表2に示す。
(実施例3)
(A−1)に代えて(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の難燃性シートを得、評価に付した。
(実施例4)
(A−1)に代えて(A−4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の難燃性シートを得、評価に付した。
【0079】
(実施例5)
(A−1)に代えて(A−5)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の難燃性シートを得、評価に付した。
(実施例6)
(A−1)に代えて(A−6)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の難燃性シートを得、評価に付した。
(実施例7)
(A−1)に代えて(A−7)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の難燃性シートを得、評価に付した。
【0080】
(実施例8)
ピッチを15mmに変え、難燃層付着量および難燃剤付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の難燃性シートを得、評価に付した。
(実施例9)
ピッチを15mmに変え、難燃層付着量および難燃剤付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例9の難燃性シートを得、評価に付した。
(実施例10)
ピッチを15mmに変え、難燃層付着量および難燃剤付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例10の難燃性シートを得、評価に付した。
【0081】
(実施例11)
Ny25に代えてNy50を用いた以外は、実施例7と同様にして、実施例11の難燃性シートを得、評価に付した。
(実施例12)
Ny25に代えてNy15を用い、難燃層付着量および難燃剤付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例12の難燃性シートを得、評価に付した。
(実施例13)
Ny25に代えてNy15を用い、難燃層付着量および難燃剤付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例12の難燃性シートを得、評価に付した。
【0082】
(実施例14)
格子柄に代えて、図7に示されるような水玉柄(直径10mm)を縦横ともにピッチ25mmで印刷し、難燃層付着量および難燃剤付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例7と同様にして、実施例14の難燃性シートを得、評価に付した。
(実施例15)
格子柄に代えて図2で示されるような十字柄(幅2mm)をタテヨコ共に25mmピッチで印刷し、難燃層付着量および難燃剤付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例7と同様にして、実施例15の難燃性シートを得、評価に付した。
【0083】
(実施例16)
Ny25をPETフィルムに代え、難燃層付着量および難燃剤付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例7と同様にして、実施例16の難燃性シートを得、評価に付した。
【0084】
実施例1〜16で得られた難燃性シートの評価結果を表2に示す。
【0085】
(比較例1)
Ny25の全面に難燃層を設け、難燃層付着量および難燃剤付着量を表3に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のシートを得、評価に付した。
【0086】
【表3】

【0087】
(比較例2)〜(比較例5)
難燃層付着量および難燃剤付着量を表3に示したように変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例1〜5のシートを得、評価に付した。
(比較例6)
Ny25の全面に難燃層を設け、難燃層付着量および難燃剤付着量を表3に示したように変更した以外は、実施例7と同様にして、比較例6のシートを得、評価に付した。
【0088】
(比較例7)〜(比較例9)
難燃層付着量および難燃剤付着量を表3に示したように変更した以外は、比較例6と同様にして、比較例7〜9のシートを得、評価に付した。
(比較例10)
(A−7)に代えて、(A−8)を用い、難燃層付着量および難燃剤付着量を表3に示したように変更した以外は、比較例6と同様にして、比較例10のシートを得、評価に付した。
比較例1〜10で得られた難燃性シートの評価結果を表3に示す。
【0089】
(比較例11)
基材フィルムとして用いたNy25を単独で用い、比較例11のシートとして、評価に付した。比較例11のシートの評価結果を表3に示す。
【0090】
表2から明らかなように、実施例1〜16で得られた本発明の難燃性シートは、透視性および難燃性に優れており、難燃層の柄を変えても、その透視性は維持されていた。
また、実施例1〜16で得られたシートは、ハロゲンを含有していないため、焼却後の有害ガスが発生せず、さらに灰分が殆ど残らなかった。
【0091】
比較例1〜10のシートは、難燃層を基材フィルム全面に設けたため、透過視認性に劣るものであった。
【0092】
比較例11のシートは、透過視認性は良好であったが、難燃層が設けられていないことに起因して、難燃性評価時に全焼し、難燃性のないシートであった。
【0093】
比較例4と比較例6とを比較すると、両者の難燃剤付着量はほぼ同じ値であるが(比較例4は7.2g/m、比較例6は7.0g/m)、難燃性評価においては、比較例4がV−2レベル、比較例6がV−0レベルであり、比較例6のほうが優れるものであった。その理由は、比較例6で用いた(A−7)の難燃剤濃度は、比較例4で用いた(A−1)の難燃剤濃度よりも高いこと、つまり、可燃性を有する合成樹脂結着剤濃度が低いことに起因すると推測できる。すなわち、難燃性は難燃剤の量のみに起因するものではなく、難燃性シート全体に対する難燃剤の質量比率にも起因することがわかった。
【0094】
実施例8と比較例3を比較すると、両者の難燃剤の単位面積あたりの付着量はほぼ同じ値であるが(実施例8は5.1g/m、比較例3は5.6g/m)、難燃性評価においては、実施例8はV−0レベル、比較例3はV−2レベルであり、実施例8のほうが優れるものであった。この結果より、難燃性の観点からは、単位面積あたり同質量の難燃剤を付着させた場合、基材フィルム上に部分的に難燃層を設けることが有利であることがわかった。すなわち、難燃性を付与するための難燃剤の使用量を低減させることができ、コストの面からも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン元素を含有しない基材フィルムの片面又は両面に、難燃剤および合成樹脂結着剤を含有する難燃層が設けられ、前記基材フィルム上における難燃層の面積比率が2〜60%であり、かつ基材フィルムのJIS K7105に従って測定される曇価が40%以下であることを特徴とする難燃性シート。
【請求項2】
難燃剤が、窒素系難燃剤、リン系難燃剤および硫黄系難燃剤から選ばれた一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性シート。
【請求項3】
難燃性シート全体に対する難燃剤の割合が、3〜40質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性シートを用いた原子力発電所養生シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−45932(P2012−45932A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162675(P2011−162675)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000104412)カンボウプラス株式会社 (15)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】