説明

難燃性材料から作られた糸、繊維又はフィラメント

本発明は、熱可塑性プラスチックから作られた糸、繊維又はフィラメント並びにそれらの製造に関する。特に、本発明は、良好な耐火性を示す糸、繊維又はフィラメント並びにこれらの物品の製造方法に関する。重合体から作られるこれらの糸又は繊維は、難燃性化合物を吸着させてなる固体基材の少なくとも粒子からなる難燃性を持つ添加剤を含む重合体を紡糸することによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性プラスチックから作られた糸、繊維又はフィラメント並びにそれらの製造に関する。
特に、本発明は、良好な耐火性を示す糸、繊維又はフィラメント並びにこれらの物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料品の分野又は例えば壁、床、天井若しくはその他の被覆のような表面被覆材の分野においては、熱可塑性プラスチックから作られた糸、繊維又はフィラメントが、織物製品、ニット製品、不織製品、タフテッド表面などのような物品の製造に大いに使用されている。
ある種の用途のためには、これらの製品は、一層良好な耐火性又は難燃性を示すことが要求される。
【0003】
用語“耐火性”とは、主に、物品の燃焼を消火させ且つ拡大させない性質を意味するものと解されたい。この性質は、特に、標準化された試験、例えば、成形物品についてこの性質を測定するための“UL94”(アンダーライターズ・ラボラトリーズ)試験、又は繊維製品、即ち、織物、ニット製品、タフテッド表面、フロック表面若しくは不織表面のための試験、例えば、標準規格EN533;1978年12月版の標準規格NF G07−128;2001年2月22日発行の標準規格ADB0031;標準規格AITM 2.0007B;標準規格AITM 2.0003;若しくは標準規格NF P92.504/501/503/507(これらは特に建築部門に適用できる。)によって例示される。
【0004】
合成材料から作られた糸、繊維又はフィラメントから難燃性物品を生産するための多くの技術が提供された。
しかして、熱可塑性プラスチックを糸又は繊維に変換する前にそれに有機燐化合物を添加することが提案された。
しかし、熱可塑性プラスチックの変換のための温度が非常に高く、一般的に250℃以上であるので、このような化合物を添加することは困難である。更に、これらの添加剤を粘稠な媒体に高温で添加することは、好適な添加剤の選定を大きく制約させる。
【0005】
また、物品又は物品表面を構成する糸若しくは繊維の表面に付着し又はこれらの物品内に捕捉される難燃性化合物又は添加剤を含む組成物又は仕上げ材によって該物品又は表面を処理することも提案された。
しかし、この解決法は、該表面について特別の処理を要求し、特に、そのように付着し又は捕捉された化合物が該物品又は表面上で洗浄中に除去できることを要求する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一つは、良好で永久的な耐火性を示す熱可塑性プラスチックから作られた糸、繊維又はフィラメントを提供することによって前記のような欠点を克服することである。更に、これらの糸、繊維又はフィラメントを生産するための方法は、慣用のものであるから、従来技術において使用することができなかった多くの難燃性添加剤を使用することを可能ならしめるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一目的の一つは、難燃性化合物を吸着させてなる固体基材の少なくとも粒子からなる難燃性を持つ添加剤を含む重合体から作られた糸、繊維又はフィラメントを提供することである。
【0008】
用語“吸着”とは、難燃性化合物が、固体基材に任意の種類の結合によって、例えば、粒子の多孔質構造内への吸着(この構造が存在する場合)、難燃性化合物の少なくとも一層による粒子表面での難燃性化合物の湿潤若しくは吸着、又は化学的若しくは物理化学的結合による物品表面への難燃性化合物の固定化若しくはグラフト化によって、少なくとも一時的に結合されることを意味するものと解されたい。
【0009】
しかして、難燃性化合物の性質と適合する表面特性を示す固体基材を選定することによって前記のような吸着又は固定化が容易にされる。例えば、親水性表面特性を持つ基材が親水性を持つ難燃性化合物と有利に混合され、また疎水性を持つ化合物についてはこの逆のことが言える。
【0010】
更に、固体基材の粒子は、物品表面での難燃性化合物の吸着を促進させる元素又は基を有利に含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい特徴によれば、難燃性添加剤の重量濃度は、最終組成物に対して0.5%〜25%、好ましくは1%〜10%である。
【0012】
用語“固体基材”とは、好ましくは、重合体を変換させるための温度で固体である無機質基材を意味するものと解されたい。
無機質基材としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化チタン又はこれらの2種以上の混合物、或いは珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム及びアルミノ珪酸アルカリのような無機化合物が挙げられる。
【0013】
これらの基材のうちで、好ましいのは、熱可塑性プラスチック内に、小さい粒子の形で、有利には5μm未満の直径を示す分散された粒子を得るように、更に有利には数量で該分散粒子の少なくとも80%が1μm未満の直径を示すように、分散できるものである。
【0014】
このような分散は、上記のような寸法特性を既に示す粒子を重合体に混合することによって、又は更に有利には、重合体に添加した後に且つ分散をもたらすために加えられた剪断力の作用下で個々の凝結体若しくは粒子までに破壊する基材の顆粒若しくは凝集体を使用することによって達成することができる。
【0015】
後者の具体例では、凝集体又は顆粒は、好ましくは、難燃性化合物を凝結体又は粒子の少なくとも表面に吸着させるようにするために高い比表面積及び個々の凝結体又は粒子の間の高い多孔性を示す。また、凝結体又は粒子は、難燃性化合物を吸着させるようにする多孔性を示すことができる。
【0016】
この具体例では、顆粒又は凝集体の平均直径は、臨界的ではなくて、難燃性を持つ添加剤を特に重合体への添加中に容易に取扱いできるように有利に選定される。更に、これらの顆粒の平均直径は、例えば異なった粒子の間の粘着を防止するために、難燃性化合物の添加及び吸着を容易にするように選定される。
【0017】
例示すれば、60μm以上、有利には80μm〜300μmの平均直径D50を有する顆粒が好ましい。
上に挙げた無機質基材のうちで、いくつかのシリカがこれらの特徴を示し、しかして特に好ましい。
しかして、本発明を実施するにあたっては、0.01μm〜1μmの直径又は寸法の粒子又は凝結体の形で分散する性質を示すいくつかのシリカが好ましい。
【0018】
更に、本発明にとって特に好適である無機質基材は、その顆粒又は凝集体が高い多孔性及び高い比表面積を示すものである。
【0019】
しかして、好ましい基材は、少なくとも0.5mL/g、好ましくは少なくとも2mL/gの総細孔容積を示す顆粒を有するものである。この細孔容積は、水銀ポロシメーター法により、ミクロメリチックス・オートポア III 9420ポロシメーターを使用して、下記の手順で測定される。
試料を予めオーブンにおいて200℃で2時間乾燥する。次に、製造者により提供された案内書に記載された手順に従って測定を実施する。
細孔の直径又は寸法を140°に等しい接触角θと485ダイン/cmに等しい表面張力γとのウオッシュバーン関係式により計算する。
有利には、1μm以下の直径を有する細孔について少なくとも0.50mL/gの細孔容積を示す無機質基材が好ましい。
【0020】
本発明の好ましい具体例によれば、無機質基材はシリカ、有利には非晶質シリカである。このようなシリカは種々の方法によって得られるが、これには沈降法シリカ及びヒュームドシリカと称されるシリカをもたらす二つの主な方法がある。また、シリカはゲル形態で製造することができる。
【0021】
50m2/g以上の比表面積(TBAC法により測定して)を示すシリカが好ましい。
沈降法シリカは、少なくとも50μm以上〜150μmの寸法の顆粒を形成する凝集粒子の形で提供できるので、好ましい。
【0022】
これらは、例えば、ヨーロッパ特許No.0018866に記載のように、微粉化により得られるビーズ又は実質的に球形状の顆粒の形で提供できる。このシリカは、ミクロパールの一般名で販売されている。流動性及び分散性という顕著な性質並びに高い含浸容量を示すこのようなシリカは、特に、ヨーロッパ特許No.966207;984773及び520862並びに国際出願WO95/09187及びWO95/09128に記載されている。
【0023】
他のタイプのシリカ、例えば、フランス特許出願No.01/16881に記載されたものも本発明に好適である。これらは、熱分解法シリカ又は仮焼若しくは表面処理により部分的に脱水されたシリカである。
【0024】
固体無機質基材として使用されるこれらのシリカの例は、例示として及び好ましい具体例としてのみ記載するものである。また、他の方法により得られた本発明を実施するのに好適である多孔性及び分散性を示す他のシリカも使用することができる。
【0025】
本発明によれば、難燃性添加剤は、無機質基材の粒子上に吸着された難燃性化合物を含む。本発明の好ましい具体例では、この吸着は、顆粒又は凝集体の含浸によって達成される。
この含浸は、任意の慣用の手段によって、例えば、基材を液体状態の又は溶媒に分散若しくは溶解した形態の難燃性化合物と混合することによって実施される。後者の場合には、基材の含浸後に、溶媒は蒸発によって除去される。
【0026】
用語“難燃性化合物”とは、難燃性を示す系を形成する1種以上の難燃性化合物又は化合物の混合物を意味するものと解されたい。
【0027】
本発明に好適である難燃性化合物として挙げられるのは、例えば、メチルホスホン酸のビス((5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル)エステルの単独又はメチルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル、レゾルシンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジエチルホスフェート)若しくはポリ燐酸エステルとの混合物としてのものである。
【0028】
例示すれば、ロディア社より商品名:Antiblaze CU若しくはAntiblaze CTとして販売されている化合物若しくは組成物、又はアクゾ社より商品名:Fyrolflex若しくはグレートレークス・ケミカル社より商品名:Rheophos DPとして販売されている燐酸ジフェニルエステル誘導体が挙げられる。最後に、第八化学工業は、ポリ燐酸エステルを商品名:CR741、CR733及びCR741Sとして販売している。
【0029】
上で示したように、これらの化合物は、例えばシリカのような基材に直接含浸させることができ、或いは、例えば水のような溶媒又はケトン、アルコール、エーテル、炭化水素若しくはハロゲン化溶媒のような有機溶媒に溶解させることができる。
【0030】
好ましくは、液状の難燃剤が使用される。しかし、例えば、加熱含浸を回避するために、難燃剤を溶媒に溶解させることが好ましい。次いで、得られた溶液によって固体基材が含浸される。この場合には、溶媒を乾燥により除去することが可能である。
【0031】
好ましくは、含浸は、乾燥条件下で、即ち、完全な含浸又は吸着を可能ならしめるために難燃性化合物が固体基材に徐々に添加されるように実施される。このためには、難燃性化合物又は難燃性化合物の溶液が満足できる流動性を示すことが必要である。しかして、このレベルの流動性を得るためには、この含浸又は吸着は、周囲温度よりも高く、且つ、20℃〜200℃の範囲内の、好ましくは100℃以下の温度で実施することができる。
【0032】
また、固体基材は、含浸を容易にするために同じ温度範囲に予熱することができる。
乾燥は、当業者に知られた任意の慣用の技術によって実施することができる。
含浸は、単一工程で又はいくつかの連続工程で実施することができる。
【0033】
含浸又は吸着される難燃剤の量は大きく変動できる。しかし、多孔性を示す顆粒又は凝集体の含浸の場合には、それは制限され、そして無機質基材の総細孔容積を満たすのに必要な量に多くとも等しい。これは、重合体に添加しなければならない難燃性添加剤が好ましくは粉末か又はこの添加を可能ならしめるのに良好な流動性を示す顆粒の形の固体であるべきであるためである。粒子又は凝結体の含浸の場合には、難燃性化合物の添加量は、取り扱うことができ且つ重合体に添加することができる含浸された固体生成物を得るように決定される。好ましくは、難燃性添加剤中の難燃性化合物の重量濃度は、難燃性添加剤に対して20%〜70%、有利には20%〜50%である。
【0034】
本発明によれば、該難燃性添加剤が重合体に添加される。この添加は、熱可塑性プラスチックから作られた顆粒又は粉末と難燃性添加剤の粒子又は顆粒を混合し、次いでこの混合物を、難燃性添加剤の分散を可能にさせるように、そして好ましい具体例では難燃性添加剤の顆粒の解凝集を可能にさせるように、撹拌し又は剪断力を適用しながら溶融させることによって実施することができる。
しかし、難燃性添加剤の添加の好ましい方式は、該添加剤を溶融状態の重合体に添加し、この混合を剪断力を適用することによって実施することからなる。この混合は、単軸エンドレススクリュー又は二軸エンドレススクリューを備えた装置において有利に実施される。
【0035】
上記の混合物には、他の添加剤、例えばマット化(mattifying)剤、光又は熱安定剤、顔料などを添加することができる。
【0036】
該添加剤を含む重合体の混合物は、エンドレススクリューの出口に、フィルター及び1個以上の孔を含む紡糸口金を有する紡糸装置(一般に、紡糸用パックと称される。)に供給される。糸が紡糸口金の出口で冷却され、次いで、随意であるが、フィラメントの慣用の生産法に従って延伸を受けた後に、ボビンに巻き取られる。
巻き取り速度又は紡糸速度は、有利には300m/分以上、更に有利には1000m/分以上である。
【0037】
また、本発明の糸を、他の紡糸方法、例えば、難燃性添加剤を含有する重合体組成物の溶液を紡糸口金に供給し、紡糸口金の出口で溶媒を蒸発又は凝固のいずれかによって除くことからなる湿式紡糸により生産することが可能である。
糸を生産するために使用される方法は、重合体の特性と適合できるものである。
【0038】
本発明のために好適である重合体は、合成繊維製品用の糸若しくは繊維又は工業用途の糸、繊維若しくはフィラメントの生産のために一般に使用されるもの、特に熱可塑性重合体である。
好適な熱可塑性プラスチックとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリオキシアルキレン、ポリハロアルキレン、ポリ(アルキレンフタレート又はテレフタレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ハロゲン化ビニル)、ポリ(ハロゲン化ビニリデン)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル酸若しくはメタクリル酸の重合体、ポリアクリ酸エステル若しくはポリメタクリル酸エステル、又は前記の重合体に含まれる単量体のいずれか一つと同等の少なくとも1種の単量体を含む熱可塑性共重合体、共重合体及び(又は)ブレンドが挙げられる。好ましくは、マトリックスは、次の重合体又は共重合体:ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリル酸)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、同類の重合体:ポリオレフィン、例えば低密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、塩素化低密度ポリ(エチレン)、ポリ(スチレン)及び同類の重合体の少なくとも1種からなっていてよい。
【0039】
重合体マトリックスを形成するのに特に好ましい重合体は、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、例えば少なくとも80%のエチレンテレフタレート単位を含むポリ(エチレンテレフタレート)、エチレンテレフタレートとイソフタル酸−5−スルホン酸との共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、脂肪族ポリアミド及びセミ芳香族ポリアミドよりなる群から選ばれる。
【0040】
本発明の特に好ましい重合体としては、半結晶質又は非晶質のポリアミド、例えば、脂肪族ポリアミド、セミ芳香族ポリアミド、より一般的には、飽和脂肪族若しくは芳香族二酸と飽和脂肪族若しくは芳香族第一アミンとの重縮合により得られる線状ポリアミド、ラクタム若しくはアミノ酸の縮合により得られるポリアミド、又はこれらの種々の単量体の混合物の縮合により得られる線状ポリアミドが挙げられる。更に詳しくは、これらの(コー)ポリアミドは、例えば、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリカプロラクタム、テレフタル酸及び(又は)イソフタル酸から得られるポリ(ヘキサメチレンジアミンフタルアミド)、例えば商品名:Amodelとして販売されているポリアミド、或いは星形若しくはH型巨大分子鎖及び適当ならば線状巨大分子鎖からなる重合体である。このような星形若しくはH型巨大分子鎖からなるポリアミドは、例えば特許:FR3743077;FR2779730;US5959069;EP0682057及びEP0832149に記載されている。
【0041】
好ましくは、熱可塑性重合体は、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン4,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6,36、ナイロン12,12からなる(コー)ポリアミド、それらの共重合体及びブレンド並びにポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)及びポリ(プロピレンテレフタレート)の群から選ばれる。また、熱可塑性マトリックスは、添加剤、例えば顔料、艶消し剤、マット化剤、触媒、熱及び(又は)光安定剤、殺細菌剤、殺菌剤及び(又は)殺だに剤を含むことができる。
【0042】
本発明の生成物は、広い範囲の番手を有することができる糸、フィラメント又は繊維である。従って、これらの生成物は、数百μm程度の直径までは、低い番手、例えば1dtex程度又はそれ以下の番手を有することができる。
【0043】
得られた糸、繊維又はフィラメントは任意の用途に使用することができる。特に、それらは、織物、ニット製品若しくはタフテッド繊維製品の表面又は不織製品の表面を、難燃性でない糸、繊維又はフィラメントと組み合わせて又はそうしないで生産するのを可能にさせる。
これらの繊維表面は、当業者に知られた通常の技術に従って生産される。
本発明の糸、繊維又はフィラメントを使用して得られた繊維表面は、改善された難燃特性を示す。
【0044】
更に、本発明の糸、繊維又はフィラメント並びにこれらの糸、繊維又はフィラメントから得られた繊維表面は、難燃性添加剤を含まないものと類似して処理することができる。
【実施例】
【0045】
例示としてのみ示す下記の実施例を参照して、本発明をさらに例示する。
【0046】
例1:難燃性添加剤(Aと称する)の製造
使用する高い多孔性のシリカは、3.6mL/gの総細孔容積と2.0mL/gの有効細孔容積を有するロディア社より商品名:Tixosil 38Xとして販売されているシリカである。これは、優秀な流動性を有し且つ粉塵を生じさせない微小真珠様のシリカである。
3.5kgの上記のシリカをレーデジ型の20Lジャケット付ミキサーに導入する。シリカを95℃に加熱する。
Antiblaze 1045として知られる有機燐化合物をその流動性を増大させるようにオーブンで加熱した。これをシリカに99℃の温度で導入する。所定量のAntiblaze 1045をシリカに導入して、後記する表Iに示す所定の濃度の難燃剤を得る。
続いて、最終生成物を1.25mmの篩で篩い分けする。
それは、粉塵となることなく、出発物質の微小真珠様シリカTixosil 38Xと類似する優秀な流動性を有する粉末として存在する。
【0047】
例2:難燃性添加剤Aを含むポリアミド組成物の紡糸
140mL/gの粘度数(90%ぎ酸中で25℃の温度で測定)を示すポリカプロラクタムから作られた粉末を一定量の難燃性添加剤Aと混合する。この粉末の混合物をオーブンで乾燥した後に、直径18mmの二軸スクリュー押出機に供給する。この混合物を押出機内で溶融させ、直径が0.4mmで長さが1.6mmの10個の孔を有する紡糸口金に加圧下に供給する。紡糸口金における物質の押出量はほぼ1.0kg/時間である。紡糸口金ヘッドから出るフィラメントを収束させ、得られた糸を300回転/分の速度のボビン巻取り機に巻き取る。
種々の濃度の添加剤Aを使用して実施した種々の試験の結果を以下の表にまとめる。
【0048】
【表1】

【0049】
例4:難燃性添加剤Aを含むポリアミド組成物の紡糸
140mL/gの粘度数(90%ぎ酸中で25℃の温度で測定)を示すポリ(ヘキサメチレンジアミンアジパミド)から作られた粉末を一定量の難燃性添加剤Aと混合する。この粉末の混合物をオーブンで乾燥した後に、直径18mmの二軸スクリュー押出機に供給する。この混合物を押出機内で溶融させ、直径が0.4mmで長さが1.6mmの10個の孔を有する紡糸口金に加圧下に供給する。紡糸口金における物質の押出量はほぼ1kg/時間である。紡糸口金ヘッドから出るフィラメントを収束させ、得られた糸を300回転/分の速度のボビン巻取り機に巻き取る。
種々の濃度の添加剤Aを使用して実施した種々の試験の結果を以下の表IIにまとめる。
【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体から作られた糸又は繊維であって、該重合体が難燃性化合物を吸着させてなる固体基材の少なくとも粒子からなる難燃性を持つ添加剤を含むことを特徴とする糸又は繊維。
【請求項2】
難燃性添加剤の重量濃度が重合体の重量に対して0.5%〜25%であることを特徴とする請求項1に記載の糸又は繊維。
【請求項3】
難燃性添加剤の重量濃度が重合体の重量に対して1%〜10%であることを特徴とする請求項2に記載の糸又は繊維。
【請求項4】
固体基材がシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化チタン又はこれらの2種以上の混合物、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム及びアルミノ珪酸アルカリよりなる群から選ばれる無機質基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の糸又は繊維。
【請求項5】
糸又は繊維中の難燃性添加剤が、粒子又は凝結体からなっていて、数量でその少なくとも80%が1μm未満の寸法を示すことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の糸又は繊維。
【請求項6】
固体基材が、重合体に添加する前に、多孔質の顆粒又は凝集体の形態にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の糸又は繊維。
【請求項7】
顆粒又は凝集体が少なくとも0.5mL/gの細孔容積を示すことを特徴とする請求項6に記載の糸又は繊維。
【請求項8】
顆粒又は凝集体が60μm以上の平均直径(D50)を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の糸又は繊維。
【請求項9】
固体基材がシリカであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の糸又は繊維。
【請求項10】
顆粒又は凝集体が50m2/g以上の比表面積を示すことを特徴とする請求項9に記載の糸又は繊維。
【請求項11】
シリカ顆粒又は凝集体が、水銀ポロシメーター法により測定して、少なくとも約0.5mL/gの細孔容積を示すことを特徴とする請求項9又は10に記載の糸又は繊維。
【請求項12】
難燃性化合物が有機燐化合物、メラミン及びメラミン誘導体よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の糸又は繊維。
【請求項13】
有機燐化合物がポリ燐酸エステル、燐酸エステル又はホスホン酸エステルから選ばれることを特徴とする請求項12に記載の糸又は繊維。
【請求項14】
重合体がポリオレフィン、ポリエステル、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリオキシアルキレン、ポリハロアルキレン、ポリ(アルキレンフタレート又はテレフタレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ハロゲン化ビニル)、ポリ(ハロゲン化ビニリデン)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル酸若しくはメタクリル酸の重合体、ポリアクリル酸エステル若しくはポリメタクリル酸エステル、又は前記の重合体に含まれる単量体のいずれか一つに等しい少なくとも1種の単量体を含む熱可塑性共重合体、共重合体及び(又は)ブレンドよりなる熱可塑性プラスチックから選ばれることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の糸又は繊維。
【請求項15】
熱可塑性プラスチックがポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリル酸)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、同類の重合体:ポリオレフィン、例えば低密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、塩素化低密度ポリ(エチレン)又はポリ(スチレン)から選ばれることを特徴とする請求項14に記載の糸又は繊維。
【請求項16】
熱可塑性プラスチックが、少なくとも80%のエチレンテレフタレート単位を含むポリ(エチレンテレフタレート)及びエチレンテレフタレートとイソ−5−スルホン酸との共重合体よりなる群から選ばれる請求項14に記載の糸又は繊維。
【請求項17】
熱可塑性プラスチックがナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン4,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6,36、ナイロン12,12、それらの共重合体及びブレンドよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項14に記載の糸又は繊維。
【請求項18】
顔料、染料、熱及び(又は)光安定剤、親水性付与剤、疎水性付与剤及びマット化剤よりなる群から選ばれる添加剤を含む請求項1〜17のいずれかに記載の糸又は繊維。
【請求項19】
難燃性を持つ添加剤を溶融状態の熱可塑性プラスチックに添加し、該混合物を紡糸口金に通し紡糸し、300m/分以上の紡糸速度又は巻き取り速度を適用することからなる請求項1〜18のいずれかに記載の糸又は繊維の製造方法。
【請求項20】
紡糸速度が300m/分よりも大きいことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
難燃性添加剤が、無機質基材の顆粒又は凝集体に液体状又は溶液状の難燃性化合物を含浸させることによって得られることを特徴とする請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
難燃性添加剤中の難燃性化合物の重量濃度が無機質基材の重量に対して重量で20%〜70%であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
難燃性化合物の重量濃度が20%〜50%である請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2007−527470(P2007−527470A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516323(P2006−516323)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001612
【国際公開番号】WO2005/001173
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】