説明

難燃性樹脂組成物

【目的】 ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂とのブレンド物の難燃性の改良。
【構成】 (a)ポリフェニレンエーテル樹脂10〜90重量部及び(b)ポリアミド樹脂90〜10重量部の合計100重量部に対して、(c)同一分子内に不飽和基と極性基とを合わせもつ化合物(例えば、無水マレイン酸)を0.01〜10重量部、(d)臭素化ポリスチレンを1〜40重量部、(e)臭素化ベンジルポリアクリレートを1〜40重量部、(f)アンチモン化合物を1〜30重量部、及び(g)耐衝撃改良剤を0〜30重量部含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性、機械的性質、成形性、及び難燃性に優れた樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】ポリフェニレンエーテル樹脂は耐熱性、機械的性質、電気的性質、および難燃性に優れ、しかも吸水性が小さく、寸法安定性が良い等の特性を有している。しかしポリフェニレンエーテル樹脂は成形性に劣り、それ単独で使用することは難しく、各種樹脂とのブレンドが行われている。中でもポリアミド樹脂とのブレンド物は成型性、耐熱性、機械的性質に優れた樹脂であり、各種用途に使われている。
【0003】しかしながら、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂とのブレンド物はポリフェニレンエーテル樹脂の持つ自消性を失い、難燃性を付与するためには難燃剤を添加する必要がある。その際に、従来のポリアミド用やポリフェニレンエーテル用の難燃剤を単独で用いた場合には、このようなブレンド物を難燃化するために多量の難燃剤を必要とし、そのため樹脂の持つ耐熱性、機械的性質、成形性を損なうといった問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者はこの問題に対し鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテル樹脂に有効な臭素化ポリスチレンと、ポリアミド樹脂に有効な臭素化ベンジルポリアクリレートを併用することにより、単独では得られない難燃性と優れた機械的性質が得られることを見いだし、本発明に到達した。即ち、本発明は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂10〜90重量部及び(b)ポリアミド樹脂90〜10重量部の合計100重量部に対して、(c)同一分子内に不飽和基と極性基とを合わせもつ化合物を0.1〜10重量部、(d)臭素化ポリスチレンを1〜40重量部、(e)臭素化ベンジルポリアクリレートを1〜40重量部、(f)アンチモン化合物を1〜30重量部、及び(g)耐衝撃改良剤を0〜30重量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物である。
【0005】[構成成分]本発明において用いられる成分(a)のポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記一般式(1):
【0006】
【化1】


【0007】で示される構造単位を有し、式中、nは少なくとも50であり、R1,R2,R3及びR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、三級α−炭素原子を含有しない炭化水素基、ハロゲン原子が少なくとも2個の炭素原子を介して置換したハロ炭化水素基、炭化水素オキシ基及びハロゲン原子が少なくとも2個の炭素原子を介して置換したハロ炭化水素オキシ基からなる群より選択した一価の置換基を表す。
【0008】上記の三級α−炭素原子を含有しない炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等の低級アルキル基:ビニル、アリル、ブテニル、シクロブテニル等のアルケニル基:フェニル、トリル、キシレニル、2,4,6−トリメチルフェニル等のアリール基:ベンジル、フェニルエテル、フェニルプロピル等のアラルキル基等が挙げられる。
【0009】ハロゲン原子が少なくとも2個の炭素原子を介して置換したハロ炭化水素基としては、例えば、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2−フルオロエチル、2,2−ジクロロエチル、2−又は3−ブロモプロピル、2,2−ジフルオロー3−ヨードプロピル、2−,3−,4−又は5−フルオロアミル、2−クロロビニル、クロロエチルフェニル、エチルクロロフェニル、フルオロキシリル、クロロナフチル、ブロモベンジル等が挙げられる。
【0010】また、炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、フェノキシ、エチルフェノキシ、ナフトキシ、メチルナフトキシ、ベンジルオキシ、フェニルエトキシ、トリルエトキシ等が挙げられる。ハロゲン原子を少なくとも2個の炭素原子を介して置換したハロ炭化水素オキシ基としては、例えば、2−クロロエトキシ、2−ブロモエトキシ、2−フルオロエトキシ、2,2−ジプロモエトキシ、2−及び3−プロモプロポキシ、クロロエチルフェノキシ、エチルクロロフェノキシ、ヨードキシロキシ、クロロナフトキシ、ブロモベンジルオキシ、クロロトリルエトキシ等が挙げられる。
【0011】本発明に用いるポリフェニルエーテル樹脂には、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,5,6−テトラメチルフェノールの共重合体、2,6−ジエチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールの共重合体等の共重合体も含む。また、上記一般式(I)のポリフェニレンエーテルに、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等)をグラフト化したもの等、変性されたポリフェニレンエーテルを使用してもよい。上記に相当するポリフェニレンエーテルの製造方法は公知であり、例えば、米国特許第3306874号、第3306875号、第3257357号及び第3257358号各明細書ならびに特公昭52−17880号公報及び特開昭50−51197号公報に開示されている。
【0012】本発明の目的のために好ましくはポリフェニレンエーテル樹脂は、エーテル酸素原子に対する2つのオルソ位にアルキル置換基を有するもの及び2,6−ジアルキルフェノールと2,3,6−トリアルキルフェノールの共重合体である。また、本発明に用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、30℃、クロロホルム中で測定した固有粘度が0.2〜0.8であることが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.7である。0.2未満では機械的強度に劣り、0.8を超えると成型性に劣るため好ましくない。
【0013】次に、成分(b)のポリアミドとは、主鎖に−CONH−結合を有し、加熱溶融できるものである。その代表的なものとしては、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−12、ナイロン−6,10、その他公知の芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸等のモノマー成分を含む結晶性又は非晶性のポリアミドを用いることができる。ここでいう非晶性ポリアミドとは、示査走査熱量計(DSC)により測定した結晶化度が実質的に存在しないものをいう。好ましいポリアミド樹脂(b)はナイロン−6、ナイロン6,6でありこれらと非晶性ポリアミドを併用することも可能である。また、25℃、98%濃硫酸中で測定した相対粘度が2.0〜7.0であることが好ましい。2.0未満であると機械的強度が不足し、7.0を越えると成型性に劣るため、好ましくない。
【0014】次に成分(c)の同一分子内に不飽和基と極性基を合わせもつ化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、不飽和エポキシ化合物、不飽和アルコール、不飽和アミン、不飽和イソシアン酸エステル等が主に用いられる。具体的には、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、マレインイミド、マレイン酸とヒドラジド、無水マレイン酸とジアミンとの反応物、例えば、下記式
【0015】
【化2】


【0016】(式中、Rは脂肪族基又は芳香族基を表す)で示される構造を有するもの、無水メチルナジック酸、無水ジクロロマレイン酸、マレイン酸アミド、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びその誘導体:大豆油、キリ油、ヒマシ油、アマニ油、麻実油、綿実油、ゴマ油、菜種油、落花生油、椿油、オリーブ油、ヤシ油、イワシ油などの天然油脂類:エポキシ化大豆油等のエポキシ化天然油脂類:
【0017】アクリル酸、ブテン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、アンゲリカ酸、チブリン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、α−エチルアクリル酸、β−メチルクロトン酸、4−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、3−メチル−2−ペンテン酸、α−エチルクロトン酸、2,2−ジメチル−3−ブテン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、4−デセン酸、9−ウンデセン酸、10−ウンデセン酸、4−ドデセン酸、5−ドデセン酸、4−テトラデセン酸、9−テトラデセン酸、9−ヘキサデセン酸、2−オクタデセン酸、9−オクタデセン酸、アイコセン酸、ドコセン酸、エルカ酸、テトラコセン酸、マイコリペン酸、2,4−ペンタジエン酸、2,4−ヘキサジエン酸、ジアリル酢酸、ゲラニウム酸、2,4−デカジエン酸、2,4−ドデカジエン酸、9,12−ヘキサデカジエン酸、9,12−オクタデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、リノール酸、リノレン酸、オクタデカトリエン酸、アイコサジエン酸、アイコサトリエン酸、アイコサテトラエン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、アイコサペンタエン酸、エルシン酸、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘキサコジエン酸、オクタコセン酸、トラアコンテン酸等の不飽和カルボン酸:あるいはこれらの不飽和カルボン酸のエステル、酸アミド、無水物:
【0018】アリルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、アリルカルビノール、メチルプロペニルカルビノール、4−ペンテン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、プロパルギルアルコール、1,4−ペンタジエン−3−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、3,5−ヘキサジエン−2−オール、2,4−ヘキサジエン−1−オール、Cn2n-5OH、Cn2n-7OH、又はCn2n-9OH(ただし、nは正の整数)で示されるアルコール、3−ブテン−1,2−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、2,6−オクタジエン−4,5−ジオール等の不飽和アルコール:あるいはこのような不飽和アルコールのOH基が、NH2基で置き換えられた不飽和アミン:あるいはブタジエン、イソプレン等の低重合体(例えば平均分子量が500から10,000ぐらいのもの):あるいは高分子量体(例えば平均分子量が、10,000以上のもの)に無水マレイン酸、フェノール類を付加したもの又はアミノ基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等を導入したもの:イソシアン酸アリル等が挙げられる。
【0019】また、不飽和基と極性基を併せ持つ化合物の定義には、不飽和基を2個以上、極性基を2個以上(同種又は異種)含んだ化合物も含まれることはいうまでもなく、また、成分(c)として2種以上の化合物を用いることも可能である。これらのうちでより好ましくは、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びその無水物、オレインアルコール等の不飽和アルコール、エポキシ化天然油脂類であり、さらに好ましくは無水マレイン酸、マレイン酸、オレイルアルコール、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油であり、とりわけ好ましくは無水マレイン酸、及び無水マレイン酸とマレイン酸との混合物である。
【0020】本発明に用いる成分(d)の臭素化ポリスチレンは下記一般式(2)の構造単位を有するものである。
【0021】
【化3】


【0022】上記一般式(2)中のR1,R2,R3,R4およびR5は水素原子、臭素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の臭素化アルキル基であり、R1〜R5のうち少なくとも一つは臭素原子である。nは単量体単位の総数を表し、約50以上の整数であり、好ましくは約150以上、更に好ましくは約250以上である。本発明で用いるこの化合物の臭素含有量は、難燃性の点から40重量%以上のものが好ましい。本発明で用いる臭素化ポリスチレンは、あらかじめ臭素化されたスチレンを重合してもよく、スチレンを重合させた後臭素化したものでもよく、一種または二種以上を用いることができる。本発明に使用しうる臭素化ポリスチレンの具体例としては、ポリ(2,6−ジブロモ)スチレン、ポリ(2,4,6−トリブロモ)スチレン、ポリ(ペンタブロモ)スチレンなどがあげられる。
【0023】本発明に用いる成分(e)の臭素化ベンジルポリアクリレートは下記一般式(3)の構造単位を有するものである。
【0024】
【化4】


【0025】一般式(3)中のR1,R2,R3,R4およびR5は水素原子、臭素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の臭素化アルキル基であり、R1〜R5のうち少なくとも一つは臭素原子である。nは単量体単位の総数を表し、約50以上の整数であり、好ましくは約150以上更に好ましくは約250以上である。本発明で用いるこの化合物の臭素含量は、難燃性の点から40重量%以上のものが好ましい。
【0026】本発明で用いる臭素化ベンジルポリアクリレートは、あらかじめ臭素化されたベンジルアクリレートを重合してもよく、ベンジルアクリレートを重合させた後臭素化したものでもよく、一種または二種以上を用いることができる。本発明に使用しうる臭素化ベンジルポリアクリレートの具体例としては、ポリ(2,6−ジブロモベンジル)アクリレート、ポリ(2,4,6−トリブロモベンジル)アクリレート、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレートなどがあげられる。
【0027】本発明で用いる成分(f)アンチモン化合物は無機でも有機でも使用できる。例えば、酸化アンチモン、塩化アンチモン、リン酸アンチモン、トリフェニルアンチモン、アンチモン酸ナトリウム等があり、特に好ましいのは酸化アンチモンである。
【0028】本発明で必要に応じて使用される成分(g)耐衝撃性改良剤は、天然または合成のゴム状物質を用いることができる。本発明に使用するためのゴムの例としては、天然ゴムおよび合成ゴム例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、またはこのようなジエン類とビニル単量体例えばスチレンのようなビニル芳香族単量体との共重合体がある。ゴムまたはゴム状重合体として好適なものの例には、天然ゴム、SBR型ゴム、ブタジエンとアクリロニトリルを含有する合成GR−N型ゴム、およびブタジエン、ブタジエン−スチレンまたはイソプレンから作られた合成ゴム、ポリクロロブタジエン例えばネオプレン:ポリイソブチレンおよびイソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体:ポリイソプレン:エチレンとプロピレンの共重合体およびこれらとブタジエンの共重合体:サイオコールゴム:アクリルゴム:ポリウレタンゴム:ジエン例えばブタジエンおよびイソプレンと各種の単量体例えばアルキル不飽和エステル(例えばメチルメタクリレート)、不飽和ケトン例えばメチルイソプロペニルケトン、ビニル複素環例えばビニルピリジンとの共重合体:ポリエーテルゴム:エピクロロヒドリンゴム等がある。好ましいゴムはポリブタジエンおよびブタジエンとスチレンのゴム状共重合体である。
【0029】特に好ましくは、スチレン含有が10重量%以上のスチレン−ブチレン−スチレントリブロック共重合体あるいは、その水素化物。または、α,β−不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴムである。また、架橋アクリルゴムをコアにアルケニル芳香族高分子をシェルに有するコアシェルエラストマー及び/又はそのα,β−不飽和カルボン酸変性ゴム等も用いることができ、これらを2種類以上組み合わせて用いることも可能である。
【0030】[構成成分の組成比]本発明における各成分の配合割合は以下の通りである。成分(a)の変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、成分(a)と成分(b)の合計100重量部に対して10〜90重量部、好ましくは20〜80重量部である。10重量部未満では耐熱剛性が不足し90重量部を超過すると衝撃強度が不足する。成分(b)のポリアミド樹脂は、成分(a)と成分(b)の合計100重量部に対して90〜10重量部、好ましくは80〜20重量部である。10重量部未満では衝撃強度が不足し90重量部を超過すると耐熱剛性が不足する。成分(c)の同一分子内に不飽和基と極性基を合わせもつ化合物は、成分(a)と成分(b)の合計100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部である。0.01重量部未満だと耐衝撃性が不足し、10重量部を超過するとだと製品外観が悪くなる。
【0031】成分(d)の臭素化ポリスチレンは、(a)+(b)合計100重量部に対して1〜40重量部であることが好ましく、更に好ましくは3〜30重量部、とりわけ好ましくは3〜25重量部である。1重量部未満であると難燃化効果が薄く、40重量部を超過すると製品外観が悪く、機械的強度が劣る。
成分(e)の臭素化ベンジルポリアクリレートは、(a)+(b)合計100重量部に対して1〜40重量部であることが好ましく、更に好ましくは3〜30重量部、とりわけ好ましくは3〜25重量部である。1重量部未満であると難燃化効果が薄く、40重量部を超過すると製品外観が悪く、機械的強度が劣る。また、成分(d)と成分(e)の合計は、(a)+(b)合計100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましく、更に好ましくは10〜40重量部である。5重量部未満であると難燃化効果が薄く、50重量部を超過すると製品外観が悪く、機械的強度が劣る。成分(d)と成分(e)の比は、重量比で(d)/(e)が1/9〜9/1であることが好ましく、更に好ましくは2/8〜8/2である。この範囲外であると難燃化効果が薄い。
【0032】成分(f)のアンチモン化合物は、(a)+(b)合計100重量部に対して1〜30重量部であることが好ましく、更に好ましくは2〜20重量部である。1重量部未満であると難燃化効果が薄く、30重量部を超過すると製品外観が悪く、機械的強度が劣る。成分(g)の耐衝撃改良材は、(a)+(b)合計100重量部に対して0〜30重量部であることが好ましく、更に好ましくは3〜30重量部である。30重量部を超過すると剛性、耐熱性、難燃性等が低下するため好ましくない。
【0033】また、本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、酸化防止剤、耐侯性改良剤、造核剤、スリップ剤、各種着色剤、帯電防止剤、離型剤等の補助成分を添加することも可能である。また、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ウイスカー等の他の無機充填剤も配合することができる。
【0034】[ブレンド方法]本発明による樹脂組成物を得るためのブレンド方法としては、一般に樹脂同士あるいは樹脂と安定剤や着色剤、さらには樹脂と充填剤とをブレンドする種々の方法を適用することができる。例えば、粉体状あるいは粒状の各成分を、ヘキシェルミキサー、リボンミキサー、Vブレンダー、ナウターミキサーなどの機械的混合手法により均一に分散した混合物とし、ついで、この混合物を一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ニーダー、等の通常の溶融混練機能のある混練機により混練される。溶融混練温度は通常180〜370℃の範囲があげられる。以上のようにして得られた樹脂組成物は、溶融混練後の押出しペレット状とすることができる。
【0035】また、本組成物を溶融混練するにあたっては、全組成物を一括混練する方法、押出機の途中にフィード口を設け2箇所以上からフィードを行う方法、あるいは成分のうち幾つかを予め溶融混練し中間組成物を得、その中間組成物と残りの成分を溶融混練する方法等があるが、押出機の途中にフィード口を設け2箇所以上からフィードを行う方法、あるいは成分のうち幾つかを予め溶融混練し中間組成物を得、その中間組成物と残りの成分を溶融混練する方法が好ましい。
【0036】[本発明の応用]本発明組成物は樹脂成型品の材料として有用であり、その成型加工法としては、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂一般に適用される成型法、すなわち押出成形、中空成形、射出成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形法により容易に成形することができるが、中でも、射出成形が最も好ましい。
【0037】
【実施例】以下に、本発明を実施例によって説明するが、以下の記載において「部」とあるのはすべて重量部を意味する。表−1に示す各成分のうち中間組成物となるものを所定の割合で配合し、窒素雰囲気下、ヘンシェルミキサーにて十分混合した後、異方向回転二軸押出機(日本製鋼所(株)製、口径44mmφ、L/D=30)を用いて、シリンダー温度250℃にて溶融混練し、冷却後ペレット化し、中間組成物を得た。この中間組成物を110℃で8時間乾燥し冷却した後、表−1の他の成分と所定の割合で配合し、窒素雰囲気下、ヘンシェルミキサーにて十分混合した後、異方向回転二軸押出機(日本製鋼所(株)製、口径44mmφ、L/D=30)を用いて、シリンダー温度230℃にて溶融混練し、冷却後ペレット化し、組成物を得た。この組成物を110℃で8時間乾燥後、シリンダー温度280℃に設定した日本製鋼所(株)製射出成形機(型締力100T)を用いて射出成形し、物性測定用試験片を作成し、評価を行った。
【0038】
【表1】


【0039】各実施例、比較例での諸物性の測定は次の方法による。
1) Izod(アイゾット)衝撃JIS K−7110に準拠して測定した。
2) 曲げ弾性率、強度JIS K−7203に準拠して測定した。
3) 引張強度JIS K−7207に準拠して測定した。
4) 熱変形温度JIS K−7207に準拠して、4.6kg荷重にて測定した。
5) 燃焼性射出成形試験片を使用し、UL94垂直燃焼試験を行った。
【0040】使用した材料は以下の通りである。
ポリフェニレンエーテル樹脂(a)
a−1:日本ポリエーテル(株)製、固有粘度0.30dl/g(30℃、クロロホルム中)
a−2:日本ポリエーテル(株)製、固有粘度0.51dl/g(30℃、クロロホルム中)
ポリアミド樹脂(b)
b−1:カネボウ(株)製MC112L[結晶性ポリアミド:相対粘度2.7(25℃、98%濃硫酸中)]
b−2:カネボウ(株)製MC100L[結晶性ポリアミド:相対粘度2.3(25℃、98%濃硫酸中)]
無水マレイン酸(c)
:市販の試薬一級品
【0041】臭素化ポリスチレン(d):フェロ社製パイロチェック68PB(臭素含量:66%)
臭素化ベンジルポリアクリレート(e):デッドシーブロム社製PBB−PA(臭素含量:72%)
酸化アンチモン(f):住友金属鉱山(株)製 三酸化アンチモン耐衝撃改良剤(g)
g−1:日本合成ゴム(株)製、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴムT7771Yg−2:シェル化学社製、水添スチレン−ブタジエン−スチレンゴムクレイトンG1651その他の難燃剤1) :トリフェニルフォスフェート2) :デカブロモジフェニルエーテル3) :赤隣
【0042】図1は実施例−1,2,3及び比較例−1,2の樹脂組成物からなる5種類の成形試験片の難燃性評価結果をプロットしたものである。この図から明らかなように、難燃剤として臭素化ポリスチレンと臭素化ポリベンジルポリアクリレートを併用することにより、それぞれ単独では得られなかった高い難燃性を得ることができる。
【0043】
【発明の効果】以上の説明及び実施例で明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、樹脂が持つ耐熱性、機械的性質を損なうことなく、かつ高い難燃性を有している。本発明の組成物は、電気部品、一般機器等の外装部品、構造部品、機械部品等に用いられる。その具体的な使用例を示せば、オーディオ、ビデオテープレコーダー、ステレオ、テレビ等のハウジングや構造部品として、また、ギヤ、カム、レバー、等の機構部品として有用な物である。また、コネクター、スイッチ、リレー等の電気、電子部品、その他カメラ、ラジオ、ファクシミリ、コンピューター等の各種OA機器のハウジングとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例−1,2,3及び比較例−1,2の樹脂組成物からなる成形試験片の難燃性評価結果を示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)ポリフェニレンエーテル樹脂10〜90重量部及び(b)ポリアミド樹脂90〜10重量部の合計100重量部に対して、(c)同一分子内に不飽和基と極性基とを合わせもつ化合物を0.01〜10重量部、(d)臭素化ポリスチレンを1〜40重量部、(e)臭素化ベンジルポリアクリレートを1〜40重量部、(f)アンチモン化合物を1〜30重量部、及び(g)耐衝撃改良剤を0〜30重量部含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開平5−230360
【公開日】平成5年(1993)9月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−29483
【出願日】平成4年(1992)2月17日
【出願人】(000006057)三菱油化株式会社 (9)