説明

雨水ます

【課題】本発明は、長期にわたって泥溜め容器の浮き上がりを確実に防止することができ、また、該泥溜め容器の出し入れが容易であって、更に、該泥溜め容器を偏ることなく挿入することができる雨水ますを提供することを課題とする。
【解決手段】ます本体3の底部を開口して開口底部2を設け、該開口底部2の下側に泥溜め部4を取り付け、該泥溜め部4内に泥溜め容器5を挿入した雨水ます1であって、該開口底部2の周縁下部には、弾性材料からなり内側に複数個の係止突片16が差し出された浮上防止リング15を配置し、該浮上防止リング15の係止突片16によって該泥溜め部4内に挿入されている泥溜め容器5の上縁を係止して、該泥溜め容器5が浮き上がるのを防止した雨水ます1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥溜め容器の浮き上がりを防止した雨水ますに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水桝本体に溜まった水によって泥溜め容器が浮き上がるのを防止した雨水桝として、雨水桝本体の下部に泥溜め部を形成し、該泥溜め部に泥溜め容器を挿脱自在に設け、泥溜め容器の最下部に設けた脚部が泥溜め部の底面に当接したときに、該雨水桝本体の内周面に圧接する複数の突起部を該泥溜め容器の外周面に突設したものが提供されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−41474号公報(第5−7頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の構成では、泥溜め容器の外周面の突起部が該雨水桝本体の内周面に圧接することによって、該泥溜め容器が該雨水桝本体内に保持されているため、長期にわたって保持力を維持することができず、長期にわたって該泥溜め容器の浮き上がりを確実に防止することが困難であるという問題があった。
また、複数の突起部が泥溜め容器の外周面に一体的に突設されているので、泥溜め容器を雨水桝本体の内部に挿着したときに、該雨水桝本体の内部を目視することができず、該泥溜め容器が完全に挿入されたかどうかを目視によって確認することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、ます本体3の底部を開口して開口底部2を設け、該開口底部2の下側に泥溜め部4を取り付け、該泥溜め部4内に泥溜め容器5を挿入した雨水ます1であって、該開口底部2の周縁下部には、弾性材料からなり内側に複数個の係止突片16が差し出された浮上防止リング15を配置し、該浮上防止リング15の係止突片16によって該泥溜め部4内に挿入されている泥溜め容器5の上縁を係止して、該泥溜め容器5が浮き上がるのを防止した雨水ます1を提供するものである。
該ます本体3の開口底部2の周縁にはフランジ8が形成されており、該フランジ8の下側からは短筒部9が垂設されており、該泥溜め部4の上部は該短筒部9内に嵌着されており、該浮上防止リング15は該ます本体3底部のフランジ8と該泥溜め部4の上縁との間に挟持されていることが望ましい。
また、該泥溜め容器5の上縁部にはフランジ部12が設けられており、該浮上防止リング15の係止突片16は該泥溜め容器5のフランジ部12に当接することが望ましい。
更に、該浮上防止リング15は少なくとも係止突片16の部分が鮮色に着色されており、該雨水ます1を上側から目視したときに該浮上防止リング15の係止突片16が該ます本体3の開口底部2の周縁から臨出して目視されることが望ましい。
また更に、該浮上防止リング15の弾性材料は熱可塑性エラストマーであることが望ましい。
また、該浮上防止リング15は断面L字状であることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の雨水ます1では、泥溜め部4内に挿入されている泥溜め容器5の上縁が浮上防止リング15の係止突片16によって係止され、長期にわたって該泥溜め容器5の浮き上がりを確実に防止することができる。
また、該浮上防止リング15の係止突片16は弾性変形容易であり、該浮上防止リング15を装着したまま該泥溜め容器5の出し入れができる。
更に、浮上防止リング15の複数の係止突片16を泥溜め容器5の外周面に等間隔に位置させることによって、該泥溜め容器5を挿着したときのがたつきを解消するとともに、該泥溜め容器5の挿入位置のセンター出しを行うことができ、ます本体3の泥溜め部4に該泥溜め容器5を偏ることなく挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を図1〜図3に示す一実施例によって説明する。
図1に示すように、雨水ます1は、底部を開口して開口底部2を設けたます本体3と、該開口底部2の下側に取り付けられる泥溜め部4と、該泥溜め部4内に挿入される泥溜め容器5とを有している。
該ます本体3の上部には点検筒(図示せず)を接続するための点検筒接続部6が設けられており、該ます本体3の左右両側部からは排水管(図示せず)を接続するための排水管接続部7がそれぞれ差し出されている。
【0008】
図2に示すように、該ます本体3の開口底部2の周縁にはフランジ8が形成されており、該フランジ8の下側からは短筒部9が垂設されており、該短筒部9の下端部には内側に向けて突出する係止爪10が周設されている。
また、該泥溜め部4の上部には突環部11が突設されており、該泥溜め部4の上部を該短筒部9内に嵌着したときに、該短筒部9の係止爪10が該泥溜め部4の突環部11に係合するようにされている。
一方、該泥溜め容器5の上縁部にはフランジ部12が周設されており、該泥溜め容器5の上部左右両側からはコの字状の把手13が差し出されており、更に、該泥溜め容器5の下部には複数個の水抜き孔14が設けられている。
【0009】
該ます本体3の開口底部2の周縁下部には弾性材料からなる断面L字状の浮上防止リング15が配置されており、該浮上防止リング15は該ます本体3底部のフランジ8と該泥溜め部4の上縁との間に挟持されている。
該浮上防止リング15の内側からは四個の係止突片16が差し出されており、該係止突片16の部分は例えば赤色、黄色、橙色、ピンク色等の鮮色に着色されている。
そして、図3に示すように、該浮上防止リング15の係止突片16は、該雨水ます1を上側から目視したときに、該ます本体3の開口底部2の周縁から臨出して目視されるようにされている。
【0010】
該浮上防止リング15の弾性材料としては、硬質プラスチック、ゴム、熱可塑性エラストマーが使用される。
該熱可塑性エラストマーとしては、例えば部分水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(αメチルスチレン)(α−MeSBα−MeS)、ポリ(αメチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体(EP),ブタジエン−スチレン共重合体(EP)、エチレン−プロピレン−エチリデン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体、スチレン−水素添加ポリオレフィン−スチレン(SEBS)共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーやブタジエン−スチレンブロック共重合体等が使用される。
この場合、該熱可塑性エラストマーは、着色のしやすさの観点から、JISK6253Aの硬度が60〜90のものが好ましく、更に、押込み抵抗および保持力の観点(適度な弾性変形の観点)から、JISK6253Aの硬度が70〜80のものが特に好ましい。
【0011】
上記の雨水ます1を組み立てる場合には、まず、泥溜め部4の上に浮上防止リング15を載置して、該泥溜め部4の上部をます本体3の短筒部9内に挿入し、該浮上防止リング15を該ます本体3のフランジ8と該泥溜め部4の上縁との間に挟持した状態で、該短筒部9の係止爪10を該泥溜め部4の突環部11に係合させる。
【0012】
そして、泥溜め容器5を、ます本体3の点検筒接続部6からます本体3の内部に挿入し、該泥溜め部4内に押込み挿着する。このとき、該浮上防止リング15の係止突片16は弾性変形して、該泥溜め容器5のフランジ部12は該係止突片16を乗り越えることができる。
一方、該泥溜め容器5を取り出す場合には、泥溜め容器5の把手13をつかんで、ます本体3の泥溜め部4から点検筒接続部6を介して泥溜め容器5を引き上げる。このときも、該浮上防止リング15の係止突片16は弾性変形して、該泥溜め容器5のフランジ部12は該係止突片16を乗り越えることができる。
【0013】
上記の雨水ます1では、ます本体3の内部に溜まった雨水等によって、該泥溜め容器5は浮き上がろうとした場合に、該泥溜め容器5のフランジ部12の上面が該浮上防止リング15の係止突片16の下面に当接し、該泥溜め容器5の上縁が該係止突片16に係止されて、該泥溜め容器5の浮き上がりが防止される。
【0014】
上記のように、泥溜め部4内に挿入されている泥溜め容器5の上縁が浮上防止リング15の係止突片16によって係止され、長期にわたって該泥溜め容器5の浮き上がりを確実に防止することができる。
また、該浮上防止リング15の係止突片16は弾性変形容易であり、該浮上防止リング15を装着したまま泥溜め容器5の出し入れができる。
更に、浮上防止リング15の複数の係止突片16を泥溜め容器5の外周面に等間隔に位置させることによって、該泥溜め容器5を挿着したときのがたつきを解消するとともに、該泥溜め容器5の挿入位置のセンター出しを行うことができ、ます本体3の泥溜め部4に該泥溜め容器5を偏ることなく挿入することができる。
【0015】
その上、該ます本体3の開口底部2の周縁にフランジ8が形成され、該フランジ8の下側から短筒部9が垂設され、該泥溜め部4の上部が該短筒部9内に嵌着されており、該浮上防止リング15が該ます本体3底部のフランジ8と該泥溜め部4の上縁との間に挟持されているので、該浮上防止リング15の着脱を容易に行うことができる。
この場合、該浮上防止リング15によって、ます本体3と泥溜め部4の接続部分をシールすることができる。したがって、Oリング等のシール部材が不要になり、製造コストの削減を図ることができる。
また、該浮上防止リング15が断面L字状であるので、該浮上防止リング15の内周面と下面の二つの面が該泥溜め部4の上縁の外周面と上面の二つの面に上下方向および左右方向に圧着するとともに、該浮上防止リング15の外周面と上面の二つの面がます本体3の短筒部9の内周面とフランジ8の下面の二つの面に上下方向および左右方向に圧着し、ます本体3と泥溜め部4の接続部分をより確実にシールすることができる。
【0016】
また、該泥溜め容器5の上縁部にフランジ部12が設けられており、該浮上防止リング15の係止突片16が該泥溜め容器5のフランジ部12に当接するので、泥溜め部4内に挿入されている泥溜め容器5のフランジ部12が該浮上防止リング15の係止突片16によって係止され、長期にわたって該泥溜め容器5の浮き上がりを確実に防止することができるとともに、該泥溜め容器5を出し入れするときには、該浮上防止リング15の係止突片16は弾性変形してフランジ部12を乗り越えるため、該泥溜め容器5の出し入れを容易に行うことができる。
【0017】
更に、該浮上防止リング15の係止突片16の部分が、ます本体3や泥溜め容器5と異なる色彩でかつ鮮色に着色されており、該雨水ます1を上側から目視したときに該浮上防止リング15の係止突片16が該ます本体3の開口底部2の周縁から臨出して目視されるので、該ます本体3の上側から該係止突片16の臨出した部分が見やすく、該泥溜め容器5が該泥溜め部4内に完全に挿入されたかどうかを目視で容易に確認することができる。
【0018】
また更に、該浮上防止リング15の弾性材料が上記のような熱可塑性エラストマーであれば、該熱可塑性エラストマーは弾性変形しやすく、着色するのが容易である。
すなわち、該熱可塑性エラストマーが、JISK6253Aの硬度が60〜90のものである場合には、特に鮮色に着色するのが容易であり、また、該熱可塑性エラストマーが、JISK6253Aの硬度が70〜80のものである場合には、該泥溜め容器5の出し入れの際には、該浮上防止リング15の係止突片16が適度に弾性変形して、該泥溜め容器5のフランジ部12が該係止突片16を容易に乗り越えることができるとともに、ます本体3の内部に溜まった雨水等によって、該泥溜め容器5は浮き上がろうとしたときには、該係止突片16によって該泥溜め容器5の上縁を係止保持して、該泥溜め容器5の浮き上がりを確実に防止することができる。
【0019】
以上、本発明の実施の形態を実施例により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
例えば、本実施例では、浮上防止リング15が断面L字状である場合を例示したが、本実施例以外、浮上防止リング15は平板リング状のものであってもよい。
また、浮上防止リング15の係止突片16は、泥溜め容器5のフランジ部12の乗り越えが容易であれば、例えば突起状であってもよく、特に形状にこだわるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、長期にわたって泥溜め容器の浮き上がりを確実に防止することができ、また、該泥溜め容器の出し入れが容易であって、更に、該泥溜め容器を偏ることなく挿入することができる雨水ますとして、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】雨水ますの分解斜視図である。
【図2】雨水ますの説明側断面図である。
【図3】雨水ますの説明平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 雨水ます
2 開口底部
3 ます本体
4 泥溜め部
5 泥溜め容器
8 フランジ
9 短筒部
12 フランジ部
15 浮上防止リング
16 係止突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ます本体の底部を開口して開口底部を設け、該開口底部の下側に泥溜め部を取り付け、該泥溜め部内に泥溜め容器を挿入した雨水ますであって、
該開口底部の周縁下部には、弾性材料からなり内側に複数個の係止突片が差し出された浮上防止リングを配置し、該浮上防止リングの係止突片によって該泥溜め部内に挿入されている泥溜め容器の上縁を係止して、該泥溜め容器が浮き上がるのを防止したことを特徴とする雨水ます。
【請求項2】
該ます本体の開口底部の周縁にはフランジが形成されており、該フランジの下側からは短筒部が垂設されており、該泥溜め部の上部は該短筒部内に嵌着されており、該浮上防止リングは該ます本体底部のフランジと該泥溜め部の上縁との間に挟持されている請求項1に記載の雨水ます。
【請求項3】
該泥溜め容器の上縁部にはフランジ部が設けられており、該浮上防止リングの係止突片は該泥溜め容器のフランジ部に当接する請求項1または請求項2に記載の雨水ます。
【請求項4】
該浮上防止リングは少なくとも係止突片の部分が鮮色に着色されており、該雨水ますを上側から目視したときに該浮上防止リングの係止突片が該ます本体の開口底部の周縁から臨出して目視される請求項1〜請求項3のいずれかに記載の雨水ます。
【請求項5】
該浮上防止リングの弾性材料は熱可塑性エラストマーである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の雨水ます。
【請求項6】
該浮上防止リングは断面L字状である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の雨水ます。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−22555(P2006−22555A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201478(P2004−201478)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】