説明

雨水利用の融雪・散水システム

【課題】融雪水や雨水と一緒にゴミや砂等が貯水タンクに流入しても、何の問題もなく散水でき、一年を通して有効利用できる雨水利用システムを提供する。
【解決手段】屋根に降った雨水を利用する融雪・散水システムであって、屋根に降った雨水を樋、配管等を介して集水貯溜する貯水タンク1と、前記貯水タンクの水を屋根、庭等に散水する散水手段2と、前記散水手段に前記貯水タンク内の水を汲み上げ供給するポンプ3と、を備え、前記貯水タンク1は内部が複数の槽に区画され、雨水が流入する最初の槽は沈殿槽6で砂、ゴミ等を分離し、沈殿槽6より下流側の雨水が貯留される貯留槽8に前記ポンプ3が収容配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雨水利用の融雪・散水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
雨水を貯水槽に溜め、この水を揚水ポンプにより屋根上の散水管に導き、その散水管より散水して屋根に積もった雪を溶かし、融雪水及び雨水を樋により集めて貯水槽に戻す雨水による循環式消雪装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の融雪水及び雨水を溜める貯水槽は単一の水槽(タンク)で構成されているため、融雪水及び雨水と一緒にゴミや砂が貯水槽に流入した場合、そのゴミや砂が揚水ポンプの働きを阻害し、屋根上の散水管に十分に揚水できず、所期の効果が得られなくなるという問題点を有する。
また、一般家庭で利用される前記消雪装置の貯水槽は容量が80リットルから500リットル程度と小さいため、冬期の消雪目的以外に利用したいと思っても他に活用できないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-83180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、融雪水や雨水と一緒にゴミや砂等が貯水タンクに流入しても、何の問題もなく散水でき、一年を通して有効利用できる雨水利用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に本発明の雨水利用の融雪・散水システムは、屋根に降った雨水を利用する融雪・散水システムであって、屋根に降った雨水を樋、配管等を介して集水貯溜する貯水タンクと、前記貯水タンクの水を屋根、庭等に散水する散水手段と、前記散水手段に前記貯水タンク内の水を汲み上げ供給するポンプと、を備え、前記貯水タンクは内部が複数の槽に区画され、雨水が流入する最初の槽は沈殿槽で砂、ゴミ等を分離し、沈殿槽より下流側の雨水が貯留される貯留槽に前記ポンプが収容配置されていることを特徴とする。
前記貯水タンクは、内部が複数の槽に区画され沈殿槽と貯留槽を有するが、貯留槽は1個又は2個備えていてもよく、2個備える場合は最初の貯留槽で更に細かな砂やゴミを分離し、次の貯留槽にポンプを配置する。また、前記貯水タンクは地上に設置してもよいが、地下に埋設することで、地上の有効活用が可能となる。また、前記貯水タンクは雨水の通年利用を考慮し、容量は2000リットル以上が好ましい。
【0007】
また、前記散水手段としては屋根用散水管、庭用散水栓、玄関用散水管等が挙げられる。
又、前記貯水タンクに貯留した雨水を前記散水手段に供給するポンプとしては、水中ポンプ、揚水ポンプ等が挙げられる。
【0008】
上記手段によれば、屋根に降った雨水を雨樋によって集め、配管、雨水枡を経て貯水タンクに導き、砂・ゴミ等の固形物を分離除去した処理水を貯留槽に溜め、その処理水をポンプで汲み上げ、夏は屋根に散水(打水)することで冷房効果が期待でき、冬は屋根や玄関等に散水することで屋根、玄関口の融雪に、また、春・秋には草花への水やり、洗車用など、一年を通して有効利用することができる。また、集中豪雨時は貯水タンクが雨水調整池として役割を発揮する。
【0009】
そして、前記貯水タンクを地下に埋設した場合は、地上における該貯水タンク分のスペースを他の用途に有効活用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の雨水利用の融雪・散水システムは、雨水、融雪水を貯留する貯水タンクとして内部が複数の槽に区画され、雨水が流入する最初の槽は沈殿槽で砂、ゴミ等を分離し、沈殿槽より下流側の雨水が貯留される貯留槽にポンプを配置したことで、雨水や融雪水と一緒にゴミや砂等が貯水タンクに流入しても、沈殿槽で砂、ゴミ等が分離され、砂、ゴミ等が除去された処理水をポンプで汲み上げ散水することができる。従って、砂、ゴミ等が詰まって散水できなくなるということはなく、夏は屋根に散水(打水)することで冷房効果が期待でき、冬は屋根や玄関等に散水することで屋根、玄関口の融雪に、また、春・秋には草花への水やり、洗車用など、一年を通して有効利用することができる。また、集中豪雨時は貯水タンクが雨水調整池として役割を発揮し、被害の拡大を防止できる。
更に、前記貯水タンクを地下に埋設した場合は、地上における該貯水タンク分のスペースを他の用途に有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る融雪・散水システムの概要を示すシステム図。
【図2】貯水タンクの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る融雪・散水システムの実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
本システムは、一般住宅の屋根に降った雨水を雨樋、雨水枡・配管を経て地下に設置した貯水タンクに導き、砂やゴミ等の固形物を分離除去し、処理水をポンプで汲み上げ、屋根上の散水管や玄関口の散水管、或いは庭の散水栓などの散水手段より散水するシステムである。
【0013】
その実施の形態を、図1、図2に基づいて説明する。
本システムAは、図1に示すように、住宅Bの屋根に降った雨水を、樋4、配管5等を介して集水貯溜する地下埋設の貯水タンク1と、前記貯水タンク1の水を屋根、庭等に散水する散水手段2と、前記散水手段2に前記貯水タンク1内の水を汲み上げ供給する水中ポンプ3とで構成されている。
【0014】
前記貯水タンク1は、図2に示すように、ガラス繊維強化樹脂材(FRP)で形成した上タンク部材1aと下タンク部材1bを、それぞれの接合部に設けたフランジを接合一体化して構成され、タンクの内部は3槽に区画されている。その3槽は雨水が流入する側から沈殿槽6、第1貯留槽7、第2貯留槽8に形成され、沈殿槽6で雨水、融雪水と一緒に流入した大きな砂やゴミ等が分離されるようになっている。そして、雨水は沈殿槽6から第1貯留槽7に入り、さらに細かい砂・ゴミ等が分離され、処理された雨水は第2貯留槽8に貯留される。
また、前記貯水タンク1の総容量は多目的の通年利用のために2000リットル以上が好ましい。
【0015】
前記沈殿槽6の周壁上部(上タンク部材1a)には流入口9が開設され、その流入口9と前記樋4は配管5で接続され、且つ前記配管5の途中には雨水枡10が取り付けられている。尚、雨水枡10は、屋根面より、落ち葉、鳥糞、埃等が樋を経由して流れ込む可能性があるので、清掃が容易にできるものを使用し、雨水枡の蓋には土砂の流入する穴などの無いものを使用する。また、前記流入口9を囲むように流入バッフル11が取り付けられ、雨水が整流されて沈殿槽6に流入するようしてある。
また、沈殿槽6と第1貯留槽7とを仕切る仕切り板12の上部には沈殿槽6から第1貯留槽7に雨水が流れる流出口13が開設されている。
【0016】
前記第1貯留槽7は、前段の沈殿槽6で大きな砂やゴミ等が分離された雨水に混じっている細かな砂・ゴミ等を分離する槽で、第1貯留槽7と第2貯留槽8とを仕切る仕切り板14の下部に流出口15が開設されている。
【0017】
前記第2貯留槽8は沈殿槽6及び第1貯留槽7を経て大きな砂やゴミ、及び細かな砂・ゴミ等が分離された雨水(処理水)を貯留する槽で、内部には水中ポンプ3が配置され、その水中ポンプ3の吐出側は送水管16を介して散水手段2に接続されている。それにより、第2貯留槽8に貯留された雨水(処理水)は水中ポンプ3の稼働で汲み上げられ、送水管16を通って散水手段2に供給され、散水される。尚、大量の降雨の場合は、余分な雨水は第2貯留槽8の上部周壁に開設したオーバーフロー口17からシステム外(例えば、下水道)に排水されるようになっている。そのため、貯水タンク1の設置場所は必要配管勾配のとれる場所とする。
また、前記オーバーフロー口17は前記沈殿槽6の流入口9の位置に対して低い位置に形成されている。
【0018】
また、前記貯水タンク1を構成する上タンク部材1aの上部には、前記沈殿槽6と第1貯留槽7の上方、第1貯留槽7と第2貯留槽8の上方に位置させて清掃孔として供するマンホール18,18’が形成され、蓋が取り付けられている。
【0019】
前記散水手段2は、屋根に散水する屋根用散水管2a、玄関先への打ち水を行う玄関用散水管2b、庭への打ち水、散水を行う水栓柱、庭用散水管(スプリンクラー)2c等で、前記送水管16にバルブを介して接続され、目的に応じて適宜選択して使用できるようになっている。即ち、夏は屋根用散水管2aより屋根に散水(打ち水)し、更に玄関用散水管2bより玄関先に散水(打ち水)することで冷房効果が期待でき、また、庭用散水管(スプリンクラー)2cより庭に散水することで草木への水やりができる。冬期は屋根用散水管2a、玄関用散水管2bより散水することで屋根に積もった雪や玄関先の雪を融雪することができる。また、春、秋は水栓柱、庭用散水管2cによって草木への水やり、洗車等に利用することができる。
【0020】
前記屋根用散水管2aは、屋根の長さに相当する長さを有した樹脂製パイプの周面に、長さ方向に間隔をおいて吐出口を開口、又は散水ノズルが取り付けられた垂れ流しタイプ、或いはスプリンクラータイプ等、何れのタイプでもよく、その形態は自由である。
また、住宅Bの屋外には前記水中ポンプ3の電源コードを接続する防水コンセント19が設けられている。
また、前記貯水タンク1は地下に埋設することで地上の有効活用に繋がるが、地下に埋設する場合、例えば、カースペース(車庫)の地下等、利用価値の低い場所を選択すると更に有効である。
【0021】
本発明の融雪・散水システムは上記構成により、降った雨を屋根から集め、雨水枡、配管を経て地下に設置した貯水タンクに貯留し、散水手段2によって散水を行い、屋根へ散水した水は樋で集められ、再び配管を経て貯水タンクに貯留されるので、雨水を循環させて繰り返し利用が可能となる。また、都市の防災用として本システムを地域ぐるみで活用することで、雨水調整池としての役割を発揮することができる。
【0022】
本発明に係る融雪・散水システムは図示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
(1)実施の形態では、貯水タンクを地下に設置した例を示したが、地上に設置してもよいものである。
(2)実施の形態では、貯水タンクは内部が3槽に区画された例を示したが、内部が2槽に区画され、貯留槽が1槽の貯水タンクでもよく、要は貯水タンク内に砂やゴミ等を分離する部屋(沈殿槽)が区画形成されていればよい。
(3)実施の形態では、貯水タンクはガラス繊維強化樹脂材(FRP)からなる上下二部材の接合によって構成された形態を示したがこれに限らず、例えば、金属製のタンク等でもよいものである。
【符号の説明】
【0023】
A…融雪・散水システム B…住宅
b…屋根 1…貯水タンク
2…散水手段 2a…屋根用散水管
2b…玄関用散水管 2c…庭用散水管
3…水中ポンプ(ポンプ) 6…沈殿槽
7,8…貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根に降った雨水を利用する融雪・散水システムであって、
屋根に降った雨水を樋、配管等を介して集水貯溜する貯水タンクと、
前記貯水タンクの水を屋根、庭等に散水する散水手段と、
前記散水手段に前記貯水タンク内の水を汲み上げ供給するポンプと、
を備え、前記貯水タンクは内部が複数の槽に区画され、雨水が流入する最初の槽は沈殿槽で砂、ゴミ等を分離し、沈殿槽より下流側の雨水が貯留される貯留槽に前記ポンプが収容配置されていることを特徴とする雨水利用の融雪・散水システム。
【請求項2】
前記貯水タンクは、地下に埋設されていることを特徴とする請求項1記載の雨水利用の融雪・散水システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−220016(P2011−220016A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91471(P2010−91471)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(510101974)株式会社和倉 (1)
【出願人】(390010216)ニッコー株式会社 (49)
【Fターム(参考)】