説明

雨水排水装置

【課題】逆梁工法による屋上部の梁の一方側から他方側へ雨水を良好に流通させることができると共に、その屋上部のコンクリートスラブへの雨水の浸透を確実に防止して屋上部の防水性を長期に渡って良好に保持することができる雨水排水装置を提供する。
【解決手段】屋上部1に突出する梁3の下部に排水パイプ5を設け、この排水パイプ5の両端部にルーフドレイン6を設ける。ルーフドレイン6は、ベース部10と直立部11とを有する断面ほぼL形状の受皿体9を備える。屋上部1の床面2及び梁3の起立側面にはそれぞれ防水層23,24を貼り付け、これら防水層23,24の縁をベース部10及び直立部11の所定の領域の防水層受け部17,20にそれぞれ重ね合わせ、この状態で受皿体9の上に防水層押え26を締結固定し、その締結力で各防水層23,24を防水層押え26を介して各防水層受け部17,20に圧着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート建屋の屋上部に設置される雨水排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建屋の屋上部には、雨水排水用のいわゆる横引きタイプのルールドレインが設置される。このルーフドレインは屋上部の床面とその周縁の起立壁面とが交わるコーナー部に据え付けられ、屋上部に降った雨水がそのルーフドレインを通して所定の排水部に排出される。このようなルーフドレインは、例えば特開2006−144377公報などに開示されており、断面ほぼL形状の受皿体と、この受皿体の背面に一体に形成された排水口部とを有し、受皿体から排水口部を通して雨水が排水される。
【特許文献1】特開2006−144377公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、コンクリート建屋の建設に当り、室内に対する採光性向上や居住スペースの有効活用を目的として、建屋の梁を住戸の外に出して向きを逆さにする逆梁工法が採用される場合がある。この場合、建屋の屋上部では逆さに向いた梁が屋上面に突出する。
【0004】
屋上部の床面の全体が平面状であれば、その屋上部に降った雨水は屋上部のコーナー部に設置されたルーフドレインを通して順次屋上部から排出される。しかしながら、逆梁工法の場合、屋上部に梁が突出し、このためその梁が堰となって雨水が屋上部のコーナー部のルーフドレインにまで流通することができなくなり、梁の内側に雨水が滞留してしまうという問題が生じる。
【0005】
このため、梁の下部に貫通孔を設け、その貫通孔を通して雨水をコーナー部のルーフドレインに導くことが考えられる。通常、屋上部には防水層が貼り付けられ、その防水層により屋上部のコンクリートスラブへの雨水の浸透を防止するようにしているが、梁の下部に単に貫通孔を設けるだけでは、屋上部の防水層とその貫通孔との境の部分から防水層の下側に雨水が浸透し、屋上部の防水性が不十分となってしまう。
【0006】
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、逆梁工法による梁が屋上部に突出する場合において、その梁の一方側から他方側へ雨水を良好に流通させることができると共に、その屋上部のコンクリートスラブへの雨水の浸透を確実に防止して屋上部の防水性を長期に渡って良好に保持することができる雨水排水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、コンクリート建屋の屋上部に逆梁工法による梁が突出し、その梁の一方側から他方側への雨水の流通を可能にする雨水排水装置であって、前記梁の下部にその梁を貫通するように設けられる排水パイプと、この排水パイプの両端部に設けられるルーフドレインとを備え、前記各ルーフドレインは、前記屋上部の床面に沿って配置されるベース部と、前記梁の起立側面に沿って配置される直立部とを有する断面ほぼL形状の受皿体を備え、前記直立部に前記排水パイプの端部が結合されて排水パイプが受皿体の内側に通じ、前記屋上部の床面及び前記梁の起立側面にそれぞれ防水層が貼り付けられ、これら防水層の縁が前記ベース部の所定の領域の防水層受け部及び直立部の所定の領域の防水層受け部にそれぞれ重ね合わされ、この状態で前記受皿体の上に防水層押えが締結固定され、その締結力で前記各防水層が防水層押えを介して前記各防水層受け部に圧着されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明の雨水排水装置によれば、逆梁工法による屋上部の梁の一方側から他方側へ雨水を良好に流通させることができると共に、その屋上部のコンクリートスラブへの雨水の浸透を確実に防止して屋上部の防水性を長期に渡って良好に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1にはこの発明の第1の実施形態に係る雨水排水装置の断面図を示してある。この排水装置は逆梁工法で建設されたコンクリート建屋の屋上部1に据え付けられている。屋上部1の床面2には逆梁工法による梁3がその床面2から突出するように起立し、この梁3を境とする図の左側が屋上部1におけるコーナー部のルーフドレイン(図示せず)に通じる排水可能領域Aで、右側がその梁3で堰き止められた遮断領域Bである。
【0011】
梁3の下部には、前記排水可能領域Aと遮断領域Bとを互いに連通させる鋼管製の排水パイプ5が埋め込まれている。この排水パイプ5には遮断領域Bから排水可能領域Aに向かって下方に傾斜する例えば2%程度の勾配がつけられている。そしてこの排水パイプ5の両端部にそれぞれ鋳物製のルーフドレイン6が取り付けられている。ルーフドレイン6の正面図を図2に示してある。
【0012】
これらルーフドレイン6は、受皿体9を有し、この受皿体9はベース部10と直立部11とからなる断面ほぼL形状をなし、その直立部11に排水口部12が一体に形成されている。この排水口部12は直立部11の背面側に突出する筒体13を一体に有し、この筒体13の内周部にねじが14が形成され、このねじ14が前記排水パイプ5の端部外周に形成されたねじ15にねじ込まれ、これにより排水パイプ5にルーフドレイン6の受皿体9が一体的に結合されている。
【0013】
受皿体9におけるベース部10は、周縁側部分の一定の領域の防水層受け部17と、その内側の窪み部18とからなり、窪み部18が排水口部12の下側内周面に連なっている。直立部11は周縁側部分の一定の領域が防水層受け部20となっており、この防水層受け部20の内側の部分に排水口部12が形成されている。ベース部10における防水層受け部17と直立部11における防水層受け部20は互いに連続して連なり、その内側に防水層受け部17,20に沿って延びる位置決め用の突起21が一体に形成されている。
【0014】
排水パイプ5及びその両端部のルーフドレイン6の受皿体9は、屋上部1の構築の際にその構築用型枠(図示せず)に支持され、その型枠内にコンクリートを打設することで屋上部1の梁3の下部に据え付けられる。この際、受皿体9は、防水層受け部17が屋上部1の床面2と面一となり、直立部11の防水層受け部20が梁3の起立側面と面一になるように施工される。
【0015】
受皿体9の据え付け後には、屋上部1の床面2と梁3の起立側面とにそれぞれ例えばアスファルト防水による防水層23,24が貼り付けられる。床面2の上の防水層23の縁は受皿体9におけるベース部10の防水層受け部17の上に重ね合わされ、梁3の側面の防水層24の縁は直立部11の防水層受け部20の上に重ね合わされる。各防水層23,24の縁は突起21に突き合わされて位置決めされ、これにより各防水層23,24の縁が受皿体9の適正な領域に重ね合わされ、防水層23,24と受皿体9との間の水密性が確保される。特に、床面2の防水層23と受皿体9との間の水密性はより確実とすることが重要であり、このため防水層23と防水層受け部17との重なり代Lは100mm以上の幅に確保されている。
【0016】
防水層23,24の施工後には、受皿体9の上にL形に屈曲する枠形状の防水層押え26が配置される。この防水層押え26はボルト27を介して受皿体9に締結され、その締結力で防水層23,24が防水層受け部17,20に圧着される。さらに防水層押え26の上には目皿状のストレーナ28が配置され、ねじ29を介して防水層押え26に締結される。
【0017】
このような雨水排水装置によれば、梁3で遮断された遮断領域B内に降った雨水はその遮断領域B側の一方のルーフドレイン6を通して排水パイプ5内に順次流入すると共に、その排水パイプ5内を流通して他方のルールドレイン6から排水可能領域Aに流出し、その排水可能領域Aから屋上部1のコーナー部のルーフドレインを通して所定の排水部に排出され、したがって遮断領域Bに雨水が溜まって滞留するようなことがない。
【0018】
屋上部1の床面2及び梁3の側面に対する防水性は、各ルーフドレイン6の受皿体9と防水層23,24とが重なり合って圧着することで確実に保持され、したがって雨水が屋上部1のコンクリートスラブに浸透するようなことがなく、高い防水性を長期に渡って保持することができる。
【0019】
ところで、この第1の実施形態としての雨水排水装置においては、排水パイプ5の両端部にルーフドレイン6の受皿体9をねじ14,15の螺合によるねじ込みによりそれぞれ取り付けている。排水パイプ5は水平に対して僅かな勾配で傾斜しており、このため各受皿体9をねじ込みで取り付ける構造であると、その勾配に応じた角度だけルーフドレイン6が傾いてしまう。すなわち、受皿体6のベース部10が水平面に対して僅かに傾き、直立部11が垂直面に対して僅かに傾き、その傾きでベース部10及び直立部11と屋上部1の床面2及びを梁3の起立側面との間に僅かであるがずれが生じてしまう。また、鋳物製の受皿体6にあっては、防水層受け部17の内側に窪み部18があり、このためその窪み部18内に僅かであるが水が滞留してしまう。
【0020】
このような点を考慮したこの発明の第2の実施形態に係る雨水排水装置を図3及び図4に示してある。この第2の実施形態では梁3の下部にステンレス管からなる排水パイプ32が埋め込まれ、この排水パイプ32の両端部にステンレス板からなるルーフドレイン33が設けられている。各ルーフドレイン33は受皿体34を有し、これら受皿体34が排水パイプ32の両端部に溶接されている。受皿体34の正面図を図4に示してある。
【0021】
各受皿体34はステンレス板によりベース部35と直立部36とを有するL形状に形成されている。ベース部35及び直立部36は共に平板状で、直立部36の下部に円形の排水口37が形成され、この排水口37の周縁に排水パイプ32の周縁が溶接されている。
【0022】
排水パイプ32は、屋上部1の遮断領域Bから排水可能領域Aに向かって下方に例えば2%程度の勾配で傾斜するように梁3の下部に据え付けられているが、この排水パイプ32の両端の開口端面は、排水パイプ32の軸方向と直角ではなく、その勾配に応じた角度だけ傾いて垂直に起立する面となっており、この垂直な端面に受皿体34の直立部36が溶接により取り付けられている。したがって各受皿体34の直立部36は排水パイプ32の勾配に関わらず垂直に起立して拡がり、ベース部35は水平に延びて拡がる状態にある。そして、ベース部35の上面はその周縁から内側に向く一定の領域が防水層受け部38で、
直立部36の表面はその周縁から内側に向く一定の領域が防止層受け部39となっている。
【0023】
排水パイプ32及びその両端部の受皿体34は、屋上部1を構築するための型枠の上に高さ調整可能な支持部材40を介して支持され、その型枠内にコンクリートを打設することで屋上部1の梁3の下部に据え付けられる。この際、受皿体34のベース部35が屋上部1の床面2と面一となり、直立部36が梁3の起立側面と面一になるように施工される。
【0024】
受皿体34の据え付け後には、屋上部1の床面2と梁3の起立側面とにそれぞれ例えばアスファルト防水による防水層23,24が貼り付けられる。床面2の上の防水層23の縁は受皿体34におけるベース部35の防水層受け部38の上に重ね合わされ、梁3の側面の防水層24の縁は直立部36の防水層受け部39の上に重ね合わされる。
【0025】
防水層23,24の施工後には、受皿体34の上にステンレス製の防水層押え43が配置される。この防水層押え43はL形に屈曲する枠形状に形成され、ボルト44を介して受皿体34に締結され、その締結力で防水層23,24が防水層受け部38,39に圧着される。さらに防水層押え43の上には目皿状をなすステンレス製のストレーナ46が配置され、ねじ47を介して防水層押え43に締結される。
【0026】
このような雨水排水装置によれば、第1の実施形態の場合と同様に、梁3で遮断された遮断領域B内に降った雨水がその遮断領域B側の一方のルーフドレイン33を通して排水パイプ32内に順次流入すると共に、その排水パイプ32内を流通して他方のルールドレイン33から排水可能領域Aに流出し、その排水可能領域Aから所定の排水部に排出され、したがって遮断領域Bに雨水が溜まって滞留するようなことがない。
【0027】
屋上部1の床面2及び梁3の側面に対する防水性は、各ルーフドレイン33の受皿体34と防水層23,24とが重なり合って圧着することで確実に保持され、したがって雨水が屋上部1のコンクリートスラブに浸透するようなことがなく、高い防水性を長期に渡って保持することができる。
【0028】
さらにこの第2の実施形態では、排水パイプ32の勾配に関わらず、各受皿体34の直立部36が垂直で、ベース部35が水平となるように支持されるため、その直立部36を梁3の起立側面と面一に的確に位置を合わせ、ベース部35を床面2と面一に的確に位置を合わせることができる。そして各受皿体34のベース部35の全体が平板状であるから、受皿体34の内側に水が溜まるようなこともない。
【0029】
また、排水パイプ32と各ルーフドレイン33の受皿体34とが溶接されており、このためその排水パイプ32と受皿体34との間での水密性も高めることができる。そして、排水パイプ32がステンレス管で、ルーフドレイン33の受皿体34、防水層押え43、ストレーナ46がステンレス板であるため、雨水排水装置の全体の重量が軽量で、施工時の際の取り扱いが容易となり、作業能率が向上する。
【0030】
なお、前記第2の実施形態では、排水パイプ32,ルーフドレイン33の受皿体34、防水層押え43及びストレーナ46のすべての部材をステンレス製としたが、そのすべての部材あるいは一部の部材を他の耐食性に優れる金属材料とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る雨水排水装置を示す断面図。
【図2】その雨水排水装置のルーフドレインを示す正面図。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る雨水排水装置を示す断面図。
【図4】その雨水排水装置のルーフドレインの受皿体を示す正面図。
【符号の説明】
【0032】
1…屋上部
2…床面
3…梁
5…排水パイプ
6…ルーフドレイン
9…受皿体
10…ベース部
11…直立部
12…排水口部
13…筒体
18…窪み部
21…突起
23.24…防水層
26…防水層押え
28…ストレーナ
32…排水パイプ
33…ルーフドレイン
34…受皿体
35…ベース部
36…直立部
37…排水口
43…防水層押え
46…ストレーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート建屋の屋上部に逆梁工法による梁が突出し、その梁の一方側から他方側への雨水の流通を可能にする雨水排水装置であって、
前記梁の下部にその梁を貫通するように設けられる排水パイプと、この排水パイプの両端部に設けられるルーフドレインとを備え、
前記各ルーフドレインは、前記屋上部の床面に沿って配置されるベース部と、前記梁の起立側面に沿って配置される直立部とを有する断面ほぼL形状の受皿体を備え、前記直立部に前記排水パイプの端部が結合されて排水パイプが受皿体の内側に通じ、前記屋上部の床面及び前記梁の起立側面にそれぞれ防水層が貼り付けられ、これら防水層の縁が前記ベース部の所定の領域の防水層受け部及び直立部の所定の領域の防水層受け部にそれぞれ重ね合わされ、この状態で前記受皿体の上に防水層押えが締結固定され、その締結力で前記各防水層が防水層押えを介して前記各防水層受け部に圧着されることを特徴とする雨水排水装置。
【請求項2】
排水パイプが水平に対して所定の勾配で傾斜し、各ルーフドレインの受皿体がそれぞれ断面ほぼL字形の金属板からなり、これら受皿体の直立部が前記傾斜する排水パイプの両端部に垂直に取り付けられ、これら受皿体のベース部が屋上部の床面と面一に、直立部が梁の起立側面と面一に配置されることを特徴とする請求項1に記載の雨水排水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−169671(P2008−169671A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6022(P2007−6022)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000208651)第一機材株式会社 (18)