説明

雨水貯留施設における雨水誘導部の構造

【課題】 雨水貯水施設内に貯留した雨水を導水溝側に排出するための雨水誘導傾斜面を簡単且つ正確に施工することができる雨水誘導部を提供する。
【解決手段】 地面を掘削することによって形成した貯水槽1の底部に複数個の雨水誘導ユニット部材20を縦横に並設することによって雨水誘導部2を形成し、この雨水誘導部2上に雨水貯留ユニット部材30を積み重ねることによって雨水貯留部3を形成してなる雨水誘導貯水施設において、上記雨水誘導ユニット部材20を、矩形状傾斜板21と、この矩形状傾斜板21の上傾端両側部に螺通している支柱22と、下傾端両側部に挿通している保持支柱23とによって形成して、この雨水誘導ユニット部材20を複数個、上記支柱22、23によって高さを変えながら並設することにより、貯水槽1の一端側から導水溝5側に向かって下方に緩傾斜した一連の雨水誘導緩傾斜面2aを形成するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は公園や駐車場、或いは、道路等の地面下に設けられる雨水貯留施設において、その貯水槽の内底面に敷設される雨水誘導部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、公園や駐車場等の路面下には、大雨による河川や下水道の氾濫を抑制する一方、溜めた雨水を必要に応じて活用可能にするための雨水貯留施設が設けられている。このような雨水貯留施設としては、例えば、特許文献1に記載されているように、地面を掘り下げることによって底面が雨水の誘導傾斜面に形成されている貯水槽を設け、この貯水槽内に雨水を貯留する内部空間を有する充填体を縦横に敷設すると共に複数段に積み重ねることによって雨水貯留部を形成すると共にこの雨水貯留部をシート材や舗装材等の積層被覆材によって被覆し、さらに、上記誘導傾斜面の下傾端側にマンホールの底部に連通する排砂溝を設けてなり、大雨の際には雨水をこの雨水貯留部内に導入して貯留する一方、この貯留部内の雨水を排出する際には、雨水と共に貯留部内に流入した土砂や泥土等(以下、砂とする)を槽底面の上記誘導傾斜面上を流下させて排砂溝を通じてマンホールに導入し、マンホールを通じて雨水を外部に排出すると共に砂をマンホールの底部に沈降、堆積させ、バキューム装置等によってマンホールから排除するように構成した雨水貯留施設が知られている。
【0003】
また、特許文献2には、地面を掘り下げることによって底面中央部にU字側溝を設けてなる貯留槽を形成し、この貯留槽の底面上に、雨水を上記U字側溝に向かって誘導する傾斜板部を有する多数の第1充填部材を多列、多段に積み重ねると共に最上段の第1充填部材上に仕切板を介して雨水を貯留する第2充填部材を他列、多段に積み重ね、この第2充填部材を被覆材によって被覆する一方、上記U字側溝の端部をマンホールの底部に連通させてなり、第2充填部材内の雨水を第1充填部材の傾斜板部によって砂等と共にU字側溝に誘導すると共に、U字側溝に堆積した砂等の堆積物をマンホール内を通じてバキューム装置や噴射ノズルを有する洗浄水噴射管によって排除するように構成した雨水貯留施設が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−342520号公報
【特許文献2】特開2004−52243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の雨水貯留施設によれば、雨水を貯留する多数の充填体からなる雨水貯留部内の雨水を、この雨水に含まれている砂と共にマンホールの底部内に導入する手段として、貯水槽の底面をマンホールに向かって下方に傾斜させてなる誘導傾斜面によって形成しているため、貯水槽の底面をこのような傾斜面に形成するには、著しい手間と労力を要するばかりでなく、縦横に配列している最下段の全ての充填体の厚みを上記傾斜面が低くなるに従って、この低くなる分だけ傾斜面方向に徐々に厚くなるように形成してその上面を水平面とし、この上面に一定厚みを有する上段の充填体を縦横に配列できるようにしなければならず、構造が複雑化してコスト高になると共に施工費も高くつくといった問題点がある。
【0006】
一方、後者の雨水貯留施設によれば、貯留槽の底面を傾斜面に形成することはなく、傾斜板部を有する充填部材によって雨水を貯留槽の底面中央部に設けているU字側溝に誘導することができるが、このU字側溝の両側にU字側溝に向かって雨水を誘導できるように充填部材を並設するには、U字側溝に対してその傾斜板部を直角に向け、且つ、その下傾端をU字側溝に連通させた状態にして配設した最も内側の充填部材に次の充填部材を接続する際に、この充填部材を所定高さ持ち上げた位置に設置してその傾斜板部の下傾端を上記最も内側に配設した充填部材の傾斜板部における上傾端に連なるようにし、同様にして最も外側に配した充填部材に向かって順次その設置位置が高くなるようにして全ての充填部材の傾斜板部をU字側溝に向かって連続的に傾斜させた状態となるように配列しなければならず、構造が複雑化して上記同様に施工に手間を要するといった問題点がある。
【0007】
その上、U字側溝から貯留槽の両側端に向かって充填部材を順次その設置高さが高くなるように配設すると、この充填部材列の上面が水平面に連なることなくU字側溝に向かって段状に配列した状態となるので、この段状の空間部にスペーサ部材等を配して上面が全面に亘り水平面となるように調整したのち、仕切板を介して雨水を貯留する第2充填部材を他列、多段に積み重ねなければならず、施工が煩雑化すると共に施工費等が高くつくといった問題点がある。
【0008】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、導水溝等に向かって雨水を導入する一連に連続した雨水誘導傾斜面を簡単且つ正確に施工することができると共に、この雨水誘導傾斜面上に雨水貯留部の積層施工も能率よく且つ正確に行うことができる雨水貯留施設における雨水誘導部の構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の雨水貯留施設における雨水誘導部の構造は、請求項1に記載したように、地面を掘削することにより形成した貯水槽の底部に複数個の雨水誘導ユニット部材を縦横に並設、設置して雨水誘導部を形成すると共に、この雨水誘導部上に雨水を貯留する内部空間を有する雨水貯留ユニット部材を敷設することによって雨水貯留部を形成し、この雨水貯留部の上面を被覆材によって被覆してなる雨水貯留施設において、上記雨水誘導ユニット部材は、矩形状の傾斜板にこの傾斜板の高さ調整を可能にした一定長さを有する数本の支柱を貫通状態に取り付けてなり、この雨水誘導ユニット部材を、順次、隣接する雨水誘導ユニット部材の傾斜板の傾斜面同士が面一状に連続した傾斜面となるように高さ調整を行った状態で並設、設置することにより上記雨水誘導部を形成していると共に、各傾斜板から上方に突設している支柱上に上記雨水貯留ユニット部材を敷設、支持させていることを特徴とする。
【0010】
このように構成した雨水貯留施設における雨水誘導部の構造において、請求項2に係る発明は、上記雨水誘導ユニット部材の矩形状傾斜板における上傾端側の両側部に上下方向に貫通した螺子孔を設けて、これらの螺子孔に螺子棒からなる一定高さの支柱を螺通させていると共に、上記矩形状傾斜板における下傾端側の両側部に上下方向に貫通したガイド孔を設けて、これらのガイド孔に上記支柱と同一高さの補助支柱を挿通していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、雨水誘導ユニット部材における矩形状傾斜板の上面数カ所に、この傾斜板上面の傾斜面から突出した突部を設けてこの突部に傾斜板を上下方向に貫通した通水孔を穿設していることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項4に係る発明は、雨水誘導ユニット部材における矩形状傾斜板の上傾端部と下傾端部とに互いに係合可能な上向きフック体と下向きフック体を形成していることを特徴とする。
【0013】
一方、請求項5に係る発明は、雨水誘導ユニット部材の矩形状傾斜板における上傾端側の両側部に上下方向に貫通した挿通孔を設けて、これらの挿通孔にこの挿通孔の径よりも小径の螺子棒からなる一定高さの支柱を挿通していると共に、この支柱に受けナットを螺合させてこの受けナットにより上記矩形状傾斜板の下面を受止させてあり、さらに、上記矩形状傾斜板における下傾端側の両側部に上下方向に貫通したガイド孔を設けて、これらのガイド孔に上記支柱と同一高さで且つガイド孔よりも小径の補助支柱を挿通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、貯水槽の底部に設けた雨水誘導部は、矩形状の傾斜板にこの傾斜板の高さ調整を可能にした一定長さを有する数本の支柱を貫通状態に取り付けてなる雨水誘導ユニット部材を、順次、隣接する雨水誘導ユニット部材の傾斜板の傾斜面同士が面一状に連続した傾斜面となるように高さ調整を行った状態で並設、設置してなるものであるから、同一構造に形成されている雨水誘導ユニット部材を複数個、順次、支柱に沿ってその傾斜板の高さを調整することにより、貯水槽の底面に沿って長さ方向に連続的に傾斜した雨水誘導緩傾斜面を有する雨水誘導部を簡単且つ正確に施工することができ、構造の簡素化と共に工事費等の低廉化を図ることができる。
【0015】
さらに、各雨水誘導ユニット部材の傾斜板に設けている支柱の高さを全て同一高さに形成しているので、並設した一連の雨水誘導ユニット部材の傾斜板の高さが異なっているにもかかわらず、これらの支柱上に雨水貯留ユニット部材を簡単且つ強固に水平状に敷設、支持することができ、雨水貯留部の積層施工も能率よく且つ正確に行うことができる。
【0016】
また、請求項2に係る発明によれば、上記雨水誘導ユニット部材の矩形状傾斜板における上傾端側の両側部に上下方向に貫通した螺子孔を設けて、これらの螺子孔に螺子棒からなる一定高さの支柱を螺通させているので、これらの支柱を回転操作することによって矩形状傾斜板の高さ調整が容易に且つ正確に行え、複数個の雨水貯留ユニット部材の傾斜板における傾斜面が互いに一連に連続するように簡単に施工することができると共に、上記矩形状傾斜板における下傾端側の両側部に上下方向に貫通したガイド孔を設けて、これらのガイド孔に上記支柱と同一高さの補助支柱を挿通しているので、各雨水誘導ユニット部材の四隅部に同一高さの補助支柱と螺子棒からなる支柱が挿通状態で配設された構造となっていて、各雨水誘導ユニット部材におけるこれらの支柱上に雨水貯留ユニット部材を安定した状態で強固に支持させることができ、その施工も能率よく行うことができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、上記雨水誘導ユニット部材における矩形状傾斜板の上面数カ所に、この傾斜板上面の傾斜面から突出した突部を設けてこの突部に傾斜板を上下方向に貫通した通水孔を穿設しているので、雨水誘導ユニット部材の下面と貯水槽の内底面間の空間部にこの通水孔を通じて雨水を誘導、貯水することができると共に、上記空間部内の空気を上記通水孔を通じて全面的に排除して雨水誘導ユニット部材が浮き上がる虞れもなく安定した施工が可能となり、その上、通水孔を傾斜板の傾斜面から突出した突部に設けているので、傾斜面を伝う砂等を含んだ雨水がその通水孔を通じて下方に排出されることなく傾斜面によって確実にマンホール等に向かって誘導することができる。
【0018】
また、請求項4に係る発明によれば、雨水誘導ユニット部材における矩形状傾斜板の上傾端部と下傾端部とに互いに係合可能な上向きフック体と下向きフック体を形成しているので、隣接する雨水誘導ユニット部材同士をこれらのフック体の係合によって接続することにより、これらの傾斜板の傾斜面が面一状態に連続した傾斜面となるように簡単且つ正確に施工することができると共に隣接する雨水誘導ユニット部材同士を妄動させることなく強固に連結しておくことができる。
【0019】
一方、請求項5に係る発明によれば、雨水誘導ユニット部材の矩形状傾斜板における上傾端側の両側部に上下方向に貫通した挿通孔を設けて、これらの挿通孔にこの挿通孔の径よりも小径の螺子棒からなる一定高さの支柱を挿通していると共に、この支柱に受けナットを螺合させてこの受けナットにより上記矩形状傾斜板の下面を受止させてあり、さらに、上記矩形状傾斜板における下傾端側の両側部に上下方向に貫通したガイド孔を設けて、これらのガイド孔に上記支柱と同一高さで且つガイド孔よりも小径の補助支柱を挿通しているので、螺子棒からなる支柱に対して受けナットを螺進、螺退させることにより、矩形状傾斜板の高さ調整と、上記上向きフックと下向きフックとによる連結部を支点とする矩形状傾斜板の傾斜角度の調整とが容易に且つ正確に行え、複数個の雨水貯留ユニット部材の傾斜板における傾斜面が互いに所望の傾斜角度でもって一連に連続するように簡単に施工することができると共に、螺子棒からなる支柱と上記補助支柱とによって各雨水誘導ユニット部材におけるこれらの支柱上に雨水貯留ユニット部材を安定した水平状態で確実に支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】雨水貯留施設の簡略縦断側面図。
【図2】雨水誘導部上に雨水貯留部を積み重ねている状態の貯水槽の拡大側面図。
【図3】雨水誘導ユニット部材の斜視図。
【図4】施工状態を示す一部の斜視図。
【図5】その一部の縦断側面図。
【図6】雨水貯留ユニット部材の斜視図。
【図7】雨水貯留ユニット部材を上下に重ねている状態の縦断正面図。
【図8】本発明の別な実施例を示す縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、雨水貯留施設は、公園等の地面を掘り下げることによって形成した貯水槽1の底面に、平面矩形状の複数個の雨水誘導ユニット部材20を互いに対向する端面を接合させながら縦横に並設、設置することによって雨水誘導部2を形成していると共に、この雨水誘導部2上に雨水を貯留する内部空間を有する平面矩形状で一定高さの雨水貯留ユニット部材30を縦横に敷き並べることによって一段目(最下段)の雨水貯留ユニット部材列を形成し、この雨水貯留ユニット部材列上に同じく同大、同形の雨水貯留ユニット部材30を縦横に敷き並べることによって二段目の雨水貯留ユニット部材列を形成し、この雨水貯留ユニット部材列を複数段、積み重ねることによって雨水貯留部3を形成してあり、さらに、この雨水貯留部3を、上面を舗装路面に形成している被覆材4によって被覆していると共に、上記雨水誘導部2の一端側(以下、前端側とする)にこの雨水誘導部2の前端縁に沿って導水溝5を設け、この導水溝5をマンホース6の底部に連通させている。なお、雨水誘導ユニット部材20及び雨水貯留ユニット部材30は合成樹脂からなる成形品である。
【0022】
上記貯水槽1は、地面を一定深さ所定面積に亘って掘削してなる凹窪部の掘削底面から四方の掘削壁面全面に亘って遮水シート11を被覆していると共に必要に応じて掘削底面にコンクリート壁12を造成してあり、底面全面は水平面に形成されている。
【0023】
この貯水槽1の底面上に配設した上記雨水誘導部2を形成している雨水誘導ユニット部材20は、図3に示すように、上面を後端縁から前端縁に向かって一定の角度でもって下方に緩やかに傾斜した雨水誘導傾斜面21a に形成している一定厚みを有する矩形状の傾斜板21の四隅部に一定長さを有する支柱22、23を垂直方向に貫通状態に取り付けてなり、これらの支柱22、23によって傾斜板21の上記雨水誘導傾斜面21a を一定の傾斜角度に保持していると共に、この緩傾斜角度を一定角度に保持した状態で傾斜板21の高さを調整可能に構成している。
【0024】
具体的には、この雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21の上傾端側である後端側の両側部に一定径を有する螺子孔24、24を上下面間に亘って垂直方向に貫通した状態で設けてこれらの螺子孔24、24にそれぞれ螺子棒からなる一定長さの支柱22、22を螺通させていると共に、この矩形状傾斜板21の下傾端側である前端側の両側部に一定径を有するガイド孔25、25を上下面間に亘って垂直方向に貫通した状態で設けてこれらのガイド孔25、25にそれぞれ上記支柱22、22と同一長さを有する補助支柱23、23を挿通して、これらの支柱22、23により矩形状傾斜板21をその上面の雨水誘導傾斜面21a が一定の角度でもって緩やかに傾斜した状態に支持していると共に螺子棒からなる支柱22、22を回転操作することによって傾斜板21をこの支柱22、22と上記補助支柱23、23に沿って上下動させて貯水槽1の内底面からの高さを調整可能に構成している。
【0025】
なお、上記螺子孔24は、合成樹脂成形品である矩形状傾斜板21に直接、形成してもよいが、内周面に雌螺子を刻設している金属製の螺筒をこの矩形状傾斜板21の前端両側部に設けた孔に嵌着させることによって形成してもよい。同様に、上記ガイド孔25も、合成樹脂成形品である矩形状傾斜板21に直接、形成してもよいが、一定の内外径を有する金属製の筒体をこの矩形状傾斜板21の後端両側部に設けた孔に嵌着させることによって形成してもよい。
【0026】
さらに、雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21における雨水誘導傾斜面21a 上の数カ所に截頭円錐形状の突部26を突設してあり、この突部26の上端面から矩形状傾斜板21の下面に亘って通水孔27を貫通状態で穿設している。
【0027】
また、矩形状傾斜板21の上傾端部、即ち、後端部に係合口が上方に向かって開口している上向きフック体28を形成している一方、この矩形状傾斜板21の下傾端部、即ち、前端部に係合口が下方に向かって開口している下向きフック体29を形成してあり、隣接する雨水誘導ユニット部材20、20の前後対向端面をこれらのフック体28、29の係合によって突き合わせ状に接合させた状態で連結させるように構成している。さらに、上記支柱22と補助支柱23との下端にはこれらの支柱よりも大径の円形座板22a 、23a を取り付けていると共に上端には同じくこれらの支柱よりも大径の支持座板22b 、23b を取り付けている。
【0028】
なお、雨水誘導ユニット部材20の後端部に上向きフック体28を、前端部に下向きフック体29を形成しているが、このようなフック体28、29に限らず、その他の適宜な連結手段を採用してもよい。
【0029】
また、雨水誘導ユニット部材20の傾斜板21の高さ調整を、傾斜板21の上傾端(後端)両側部に螺通した2本の螺子棒からなる支柱22、22によって行っているが、傾斜板21の四隅部に垂直なガイド孔を設けてこれらのガイド孔に一定長さを有するガイド支柱を挿通することにより傾斜板21を一定の傾斜角度でもってこれらのガイド支柱に保持させる一方、傾斜板21の中央部にこれらのガイド支柱と同一長さの螺子棒からなる高さ調整支柱を垂直方向に螺通させ、この高さ調整支柱を回転操作することによって傾斜板21を一定の傾斜角度を保持した状態で上記四方のガイド支柱に沿って昇降させ、傾斜板21の高さを調整するように構成しておいてもよく、また、その他の調整手段を採用してもよい。
【0030】
なお、雨水誘導ユニット部材20はその下傾端部に形成している下向きフック体29をこの雨水誘導ユニット部材20の前端側に隣接する雨水誘導ユニット部材20の上傾端部に形成している上向きフック体28に上方から係合させて支持させるように構成しているので、補助支柱23によって雨水誘導ユニット部材20の前端部を支持させることなく、この補助支柱23を挿通させているガイド孔25を補助支柱23よりも大径に形成しておき、このガイド孔25に挿通させておいてもよい。
【0031】
このように構成した雨水誘導ユニット部材20を、多数個、上記貯水槽1の底面上に縦横に組み合わせて並列、設置することにより、貯水槽1の後端側から前端に向かって下方に緩やかに傾斜した雨水誘導緩傾斜面2aを有する雨水誘導部2を形成するには、図2に示すように、貯水槽1の底面前端部に設置される最前部の雨水誘導ユニット部材20をその矩形状傾斜板21の高さが最も低くなるように調整してその雨水誘導傾斜面21a の下傾端を貯水槽1の底部における前端に横幅方向に設けている断面U字状の導水溝部に対して直角に向けてこの導水溝部に臨ませた状態に設置する。
【0032】
次いで、この雨水誘導ユニット部材20に後続する次の雨水誘導ユニット部材20を、その矩形状傾斜板21が最前部の上記雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21よりも高くなるようにその螺子棒からなる支柱22、22を回転操作してこの雨水誘導ユニット部材20の雨水誘導傾斜面21a の下傾端である前端を上記最前部の雨水誘導ユニット部材20の雨水誘導傾斜面21a の上傾端である後端に面一状に連続させる。
【0033】
以下、同様にして先に設置した雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21に対して後続する雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21の高さを順次、前後に隣接する雨水誘導ユニット部材20、20の雨水誘導傾斜面21a 、21a が面一状に連続するように調整して、複数個の雨水誘導ユニット部材20を貯水槽1の前後端間に亘って前後方向に直列状に設置することにより、貯水槽1の前端から後端に向かって下方に緩やかに傾斜した雨水誘導緩傾斜面2aを有する雨水誘導ユニット部材列を形成する。
【0034】
この際、前後に隣接する雨水誘導ユニット部材20、20同士を図5に示すように、前側の雨水誘導ユニット部材20の後端部に形成している上向きフック体28に後側の雨水誘導ユニット部材20の前端部に形成している下向きフック体29を上方から係合させることにより、前側の雨水誘導ユニット部材20の後端部に後側雨水誘導ユニット部材20の前端部を支持させ、且つ、対向する前後端面を突き合わせ状に接続させると共にこれらの前後雨水誘導ユニット部材20、20の雨水誘導傾斜面21a 、21a が互いに面一状に連続させた状態にして連結している。
【0035】
さらに、このように複数個の雨水誘導ユニット部材20を直列状に設置してなる一組の雨水誘導ユニット部材列を複数組、貯水槽1の左右方向(横幅方向)に図4に示すように並列することにより、同一高さの矩形状傾斜板21、21がその対向側端面同士を接合させた状態で左右方向に連続し、且つ、前後に隣接した矩形状傾斜板21、21がその雨水誘導傾斜面21a 、21a を面一状に連通させてなる雨水誘導部2を構成している。この雨水誘導部2の上面全面が縦横に配設している雨水誘導ユニット部材20の雨水誘導傾斜面21a によって貯水槽1の後端から貯水槽1の前端に向かって下方に緩やかに傾斜した傾斜面2aに形成されてあり、この傾斜面の前端が、貯水槽1の前端部に左右方向に設けている上記導水溝5の長さ方向に沿ってこの導水水5の開口端に臨ませている。
【0036】
なお、この雨水誘導部2は、複数個の雨水誘導ユニット部材20を直列状に連結したのち、この雨水誘導ユニット部材列を横方向に並設することによって形成しているが、貯水槽1の横幅方向(左右方向)に複数個の雨水誘導ユニット部材20を設置し、この雨水誘導ユニット部材20列を前後方向に並設することによって形成してもよく、その施工手順に制限を受けることはない。
【0037】
このように構成した雨水誘導部2上に、図1、図2に示すように雨水貯留部3を形成する。この際、雨水誘導部2を構成している全ての雨水誘導ユニット部材20上に、この雨水誘導ユニット部材20と同大、同形で且つ全面に亘って多数の通水孔を有する仕切板7を介して雨水貯留ユニット部材30を積層しているが、仕切板7を設けることなく雨水誘導ユニット部材20上に雨水貯留ユニット部材30を直接、積層してもよい。
【0038】
雨水誘導部2を構成している上記全ての雨水誘導ユニット部材20は、その矩形状傾斜板21の後端両側部に貫通状態で設けている螺子棒からなる支柱22、22と矩形状傾斜板21の前端両側部に貫通状態で設けている補助支柱23、23とを同一長さに形成しているので、矩形状傾斜板21から上方に突出しているこれらの支柱22、22と補助支柱23、23との上端に取付た支持座板22b は全て導水溝5の内底面からの高さが同じであって同一水平面上に設けられているので、各雨水誘導ユニット部材20の四方の支柱22、22と補助支柱23、23の上端支持座板22b 上に仕切板7の下面四隅部が安定した状態で支持され、且つ、全ての仕切板7が水平方向に縦横に配設される。なお、雨水貯留ユニット部材30の下面が上記支柱22、23によって支持される構造であれば、仕切板7は必ずしも設ける必要はない。
【0039】
雨水貯留部3を構成する雨水貯留ユニット部材30は図6、図7に示すように、雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21と平面形状が同大、同形の底板部31に、下端が底板部31から下方に全面的に開口している一定高さの断面等脚台形状の中空突起部32を前後方向又は左右方向に一定間隔毎に略全長(全幅)に亘って突設していると共にこれらの中空突起部32の上端面に中空突起部32内に連通する数個の通孔33を突設している突出頂部34を中空突起部32の長さ方向にこの中空突起部32と同一間隔毎に形成してなるもので、上記突出頂部34は、長さ方向を中空突起部32の長さ方向に向けている平面長方形状に形成してあり、且つ、中空突起部32の狭い間隔を存した対向した両側傾斜壁の下端間の開口幅を、突出頂部34を長さ方向に跨いでこの突出頂部34を被嵌可能な幅寸法に形成している。
【0040】
このように構成した雨水貯留ユニット部材30を図1、図2に示すように、上記雨水誘導部2を形成している全ての雨水誘導ユニット部材20上に上記仕切板7を介して載置して雨水誘導ユニット部材20と同様に縦横に配した雨水貯留ユニット部材列を形成すると共にこの雨水貯留ユニット部材列を一段目として数段の雨水貯留ユニット部材列を積み重ねることにより、雨水貯留部3を構成している。この際、図7に示すように、下段の雨水貯留ユニット部材30とこの雨水貯留ユニット部材列上に設置されている上段の雨水貯留ユニット部材30とは、互いに平面方向に直角に向きを変えて、下段側の雨水貯留ユニット部材30の中空突起部32に上段側の雨水貯留ユニット部材30の中空突起部32を交差させ、且つ、この上段側の中空突起部32の開口下端面を下段側の雨水貯留ユニット部材30の中空突起部32に突設している突出頂部34に被嵌した状態にして下段の雨水貯留ユニット部材30の中空突起部32の上面に上段の雨水貯留ユニット部材30の中空突起部32の開口下端面を受止させている。
【0041】
さらに、この雨水貯留部3における最上段の雨水貯留ユニット部材列の上面全面を仕切板6'を介して被覆材4によって被覆している。被覆材4としては、雨水誘導部3の上面を遮水シート41で被覆すると共にこの遮水シート41上に礫層或いは土砂層42を介してアスファルト舗装層43を設けることによって形成しておいてもよく、或いは、上記遮水シート41に代えて透水シートを使用し、この透水シート上に土砂層等を介して透水性舗装層を設け、降雨時に雨水を上記雨水貯留部3内に浸透させるように構成しておいてもよい。
【0042】
一方、雨水貯留部3の雨水誘導緩傾斜面2aにおける前端、即ち、下傾端に沿って雨水貯留部3の前端部に設けられている上記導水溝5の一端部はマンホール6の底部に連通させてあり、また、このマンホール6の上端部内に道路等に路肩に設けている側溝等からの雨水を供給する導水管8(図1に示す)の開口端を臨ませていると共に、マンホール6の底部にオリフィス等を介して一定量の雨水を外部に排出する導出管9の開口端を臨ませている。
【0043】
このように構成したので、降雨時にマンホール6内に流入した雨水は、マンホール6の底部内に充満し、このマンホール6から導出管9を通じて定量ずつ、外部に排出される雨量よりも多量の雨水がマンホール6内に流入すると、マンホール6の底部に連通している上記導水溝5内に流入してこの導水溝5内に充満したのち、水位が上昇するに従ってこの導水溝5に下傾端が臨んでいる雨水誘導部2の雨水誘導緩傾斜面2a上に浸入し、貯水槽1の内底部に雨水が充満する。
【0044】
さらに水位が上昇すると、雨水誘導部2の空間部が雨水によって充満したのち、水位の上昇に伴って雨水誘導ユニット部材20上に設置している仕切板7に設けている通水孔を通じて雨水が雨水貯留部3における最下段の雨水貯留ユニット部材30列における全ての中空突起部32内に浸入する。こうして、水位の上昇に従って雨水貯留部3における一段目の雨水貯留ユニット部材列内に雨水が充満したのち、さらに水位が上昇すると、上記同様にして2段目以降の雨水貯留ユニット部材列内に順次雨水が充満し、この状態で一時、貯留される。
【0045】
次いで、マンホール5内に流入する雨量が上記導出管8から排出される定量の雨水よりも少量となるか、或いは、降雨が停止すると、この導出管8から定量宛、雨水が排出されるに従って、雨水貯留部3内から雨水貯留部3内に亘って貯留されている雨水が、雨水誘導部2の雨水誘導緩傾斜面2a上を通じて導水溝5内に流下し、この導水溝5からマンホール6の底部内に排出される。
【0046】
マンホール6の内に排出された雨水は上記導出管8を通じて外部に排出され、この排出に従って雨水貯留部3内に貯留されている雨水の水位が低下する。また、雨水に含まれている砂は、雨水と共に雨水誘導部2の上記雨水誘導緩傾斜面2a上を伝って導水溝5に流下すると共にこの導水溝5からマンホール6内に排出された、導水溝5の溝底とマンホール5の内底部上に沈降、堆積する。そして、導水溝5の溝底に堆積した砂は、高圧水噴射ノズル等を使用してマンホール6内に集積し、マンホール6内に堆積している砂と共に地上側からバキューム装置によって排除する。
【0047】
図8は、本発明の 雨水貯留施設における雨水誘導部の別の実施例を示すもので、上記実施例においては、雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21の上傾斜端側の両側部に螺子棒からなる支柱22を螺通させ、この支柱22の回転操作によって矩形状傾斜板21の高さ調整を行っているが、この実施例においては、矩形状傾斜板21の上傾斜端側の両側部に、支柱22よりも大径の挿通孔14を上下方向に垂直に貫設し、この挿通孔14に螺子棒からなる支柱22を挿通している共に、矩形状傾斜板21の下面側においてこの支柱22に受けナット15を進退自在に螺合させ、この受けナット15により矩形状傾斜板21の上傾斜端部下面を受止させてあり、さらに、矩形状傾斜板21における下傾端側の両側部に上下方向に垂直に貫設しているガイド孔25' を補助支柱23よりも大径に形成し、このガイド孔25' に補助支柱23を挿通してなる構造としている。その他の構成については上記実施例と同じであるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
このように構成したので、先に貯水槽1の底面上に設置した雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21の上傾端部に形成している上向きフック28に、次に設置すべき雨水誘導ユニット部材20を後続させてその矩形状傾斜板21の下傾端部に形成している下向きフック29を上側から係合、受止させた状態にし、この後続雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21における上傾端両側部に配設している螺子棒からなる支柱22、22に螺合した上記受けナット15を支柱22の長さ方向に螺進或いは螺退させることにより、上記互いに係合、連結したフック28、29を支点としてこの矩形状傾斜板21の高さ調整を行うと共に先に設置した雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21の傾斜角度と同一角度になるように調整する。
【0049】
以下、同様にして先に設置した雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21に対して後続する雨水誘導ユニット部材20の矩形状傾斜板21の高さと角度を順次、前後に隣接する雨水誘導ユニット部材20、20の雨水誘導傾斜面21a 、21a が面一状に連続するように調整して、複数個の雨水誘導ユニット部材20を貯水槽1の前後端間に亘って前後方向に直列状に設置することにより、貯水槽1の前端から後端に向かって下方に緩やかに傾斜した雨水誘導緩傾斜面2aを有する雨水誘導ユニット部材列を形成すると共にこの雨水誘導ユニット部材列を貯水槽1の幅方向に複数列、並列させて上記実施例と同様に雨水誘導部2を形成し、この雨水誘導2上に上記実施例と同じく雨水貯留部3を形成する。
【0050】
なお、上記いずれの実施例においても雨水貯留部3を構成する雨水貯留ユニット部材30としては、上記構造に限定されることなく、従来から知られている一定高さの筒状部材を縦横に設けてなる雨水誘導ユニット部材や枡目形状に形成してなる雨水誘導ユニット部材等を採用してもよく、また、段状に積み重ねることなく、一段のみによって雨水貯留部3を構成しておいてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 貯水槽
2 雨水誘導部
3 雨水貯留部
4 被覆材
5 マンホール
6 仕切板
20A 中央雨水誘導ユニット部材
20B 側部雨水誘導ユニット部材
21 底面板
22 導水溝
23 側壁部
24 雨水誘導傾斜面
25 仕切板取付用柱状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘削することにより形成した貯水槽の底部に複数個の雨水誘導ユニット部材を縦横に並設、設置して雨水誘導部を形成すると共に、この雨水誘導部上に雨水を貯留する内部空間を有する雨水貯留ユニット部材を敷設することによって雨水貯留部を形成し、この雨水貯留部の上面を被覆材によって被覆してなる雨水貯留施設において、上記雨水誘導ユニット部材は、矩形状の傾斜板にこの傾斜板の高さ調整を可能にした一定長さを有する数本の支柱を貫通状態に取り付けてなり、この雨水誘導ユニット部材を、順次、隣接する雨水誘導ユニット部材の傾斜板の傾斜面同士が面一状に連続した傾斜面となるように高さ調整を行った状態で並設、設置することにより上記雨水誘導部を形成していると共に、各傾斜板から上方に突設している支柱上に上記雨水貯留ユニット部材を敷設、支持させていることを特徴とする雨水貯留施設における雨水誘導部の構造。
【請求項2】
雨水誘導ユニット部材の矩形状傾斜板における上傾端側の両側部に上下方向に貫通した螺子孔を設けて、これらの螺子孔に螺子棒からなる一定高さの支柱を螺通させていると共に、上記矩形状傾斜板における下傾端側の両側部に上下方向に貫通したガイド孔を設けて、これらのガイド孔に上記支柱と同一高さの補助支柱を挿通していることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留施設における雨水誘導部の構造。
【請求項3】
雨水誘導ユニット部材における矩形状傾斜板の上面数カ所に、この傾斜板上面の傾斜面から突出した突部を設けてこの突部る傾斜板を上下方向に貫通した通水孔を穿設していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の雨水貯留施設における雨水誘導部の構造。
【請求項4】
雨水誘導ユニット部材における矩形状傾斜板の上傾端部と下傾端部とに互いに係合可能な上向きフック体と下向きフック体を形成していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の雨水貯留施設における雨水誘導部の構造。
【請求項5】
雨水誘導ユニット部材の矩形状傾斜板における上傾端側の両側部に上下方向に貫通した挿通孔を設けて、これらの挿通孔にこの挿通孔の径よりも小径の螺子棒からなる一定高さの支柱を挿通していると共に、この支柱に受けナットを螺合させてこの受けナットにより上記矩形状傾斜板の下面を受止させてあり、さらに、上記矩形状傾斜板における下傾端側の両側部に上下方向に貫通したガイド孔を設けて、これらのガイド孔に上記支柱と同一高さで且つガイド孔よりも小径の補助支柱を挿通していることを特徴とする請求項1、請求項3又は請求項4に記載の雨水貯留施設における雨水誘導部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−196151(P2011−196151A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66550(P2010−66550)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】