説明

雨水貯留浸透システム

【課題】構成が簡易で、且つ保守点検を容易に行うことのできる雨水貯留浸透システムを提供する。
【解決手段】地中に埋設される貯留浸透槽3と、該貯留浸透槽3内の雨水を流入可能な流入口31を有し、前記貯留浸透槽3に設けられて上下方向に延びる立管5と、該立管5の側面に接続される流出管6と、該流出管6から前記立管5を経て前記貯留浸透槽3に向かう雨水の逆流を防止するための逆流防止手段とを備えている。前記立管5の上端部には、前記貯留浸透槽3及び逆流防止手段を点検するための点検口30が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を適切に処理することのできる雨水貯留浸透システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の雨水貯留浸透システムとしては、例えば次のようなものが存在する。この従来のものは、点検口を有して雨水等を貯留する貯留タンクと、貯留タンクからオーバーフローした余剰水を地下に浸透させる浸透ますと、浸透ますからオーバーフローした余剰水を雨水ますを介して雨水管に排出する排出管と、雨水管から排出管への下水の逆流を防止するための逆流防止弁とを備えている。しかるに、この雨水貯留浸透システムに於いては、逆流防止弁が地中に深く埋設されるために、その保守点検を行うことができないという難点を有していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−268608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、本発明者は、図5に示すように、前記貯留タンクを浸透槽100に変更すると共に、雨水ます101に点検口102と逆流防止弁103とを備えさせ、これを前記排水管104の途中に設けるという手段を考案した。しかしながら、浸透槽100の点検用に設けられる点検口105とは別に、雨水ます101にも点検口102を設けることは、システム構成を複雑化させるという問題がある。また、一連の保守点検作業も煩雑なものとなるために、管理者にかかる負担を増大させる不都合もあった。
【0005】
それ故に、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構成が簡易で、且つ保守点検を容易に行うことのできる雨水貯留浸透システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る雨水貯留浸透システムは、地中に埋設される貯留浸透槽と、該貯留浸透槽内の雨水を流入可能な流入口を有し、前記貯留浸透槽に設けられて上下方向に延びる立管と、該立管の側面に接続される流出管と、該流出管から前記立管を経て前記貯留浸透槽に向かう雨水の逆流を防止するための逆流防止手段とを備え、前記立管の上端部には、前記貯留浸透槽及び逆流防止手段を点検するための点検口が設けられたものである。
【0007】
このような雨水貯留浸透システムにあっては、立管の上端部に設けられた点検口により、貯留浸透槽及び逆流防止手段を点検することができる。これにより、貯留浸透槽と逆流防止手段とを点検するための点検口を各別に設ける必要がなくなるために、システム全体の簡略化を図れる。また、保守点検作業を効率的に行えることになる。
【0008】
また、前記点検口には、立管内の空気を外部へ排出する空気抜き機構を備えた蓋体を着脱自在に設けてもよい。
【0009】
これによると、点検口は蓋体により閉塞されるために、その安全性が確保されると共に、立管内への異物の落下等を適切に防止することができる。また、空気抜き機構を介して貯留浸透槽及び立管と外部とが連通されているために、水位の上昇時等に発生する貯留浸透槽や立管の圧力上昇が適切に処理されることになる。従って、蓋体が点検口から不用意に離脱するようなこともなくなる。
【0010】
更に、前記逆流防止手段は、逆流防止弁を備え、前記流出管に着脱自在に接続されるエルボで構成してもよい。
【0011】
これによれば、エルボを適宜流出管から取外すことにより、その逆流防止弁の保守点検を簡易に且つ確実に行うことができる。また、立管内に配されるエルボを取外すことにより、点検口からの立管及び貯留浸透槽の保守点検が容易に行えることになる。
【0012】
また、前記立管の下端部は、前記貯留浸透槽が設置される地面で支持するのが好ましい。
【0013】
これによると、立管を介して作用する重量は全て地面が受けることになるために、貯留浸透槽に陥没が生じたり、損傷を受けるような事態も良好に回避できる。
【0014】
更に、前記流入口は立管の下部側に形成するのが望ましい。
【0015】
これによれば、貯留浸透槽内に流入した泥や土砂等の異物が流入口を介して、立管の底部に流動し易くなる。よって、点検口から異物を良好に除去することが可能になる。尚、ここで「立管の下部側」とは、立管の中央位置よりも下側を意味している。流入口が複数形成される場合は、少なくとも1つの流入口が立管の中央位置よりも下側に形成されればよい。但し、流入口は、立管の全長の1/4以下の高さに位置する領域内に設けるのが好ましい。
【0016】
また、立管の流入口の総開口面積を、前記貯留浸透槽内に接続され雨水を流入させる流入管流路断面積と同一又は大きくなるように設定してもよい。
【0017】
これによると、流入管から貯留浸透槽に流入した雨水を、立管の流入口を介して無理なく流出管に流出させることが可能になる。また、貯留浸透槽から流入管への雨水の逆流も防止することができる。
【0018】
更に、前記エルボには落下防止手段を備えさせることが可能である。
【0019】
これによると、エルボを流出管から取外して行う、貯留浸透槽や立管等の保守点検時に於いて、エルボが不用意に立管内に落下するような事態を適切に防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、構成が簡易で、且つ保守点検を容易に行うことのできる雨水貯留浸透システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示す雨水貯留浸透システムを示し、(a)は正面図で、(b)は平面図である。
【図2】(a)〜(d)は立管の正面図である。
【図3】流出管とエルボとの接続状態を示す断面図である。
【図4】(a)及び(b)は立管の点検口に蓋体を取付けた状態を示す断面図である。
【図5】雨水貯留浸透システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る雨水貯留浸透システム1は全体が地中に埋設される。この雨水貯留浸透システム1は、周囲が透水シート2に覆われた貯留浸透槽3と、雨水を流入させるために貯留浸透槽3の一端側天面に接続される流入管4と、貯留浸透槽3の他端側に上下方向に設けられる立管5と、雨水の一部を外部に流出させるために立管5の側面に接続される流出管6と、流出管6に着脱自在に接続され、立管5の上部側に内装されるエルボ7とを備えている。
【0023】
貯留浸透槽3は、多数の通孔を有する中空状の貯留材10が、上下に段積みされると共に、左右に連結されたものである。上部側の貯留材10上には、上部から作用する荷重を均一化するために、透水性を備えた保護ボード11が敷設されている。流入管4は、一端部がます20に接続される直管4aと、保護ボード11を介して貯留浸透槽3に接続されるエルボ4bとからなっている。ます20の上流側には排水管21が接続されており、雨水は排水管21からます20に流入する。ます20の流出口(図示せず)には、雨水に含まれる異物を捕捉するフィルター22が設けられている。
【0024】
円筒状の立管5は、上端部に点検口30を有しており、その下端部は貯留浸透槽3が設置される地面に直接又は透水シート2を介して支持される。このようにすると、立管5を介して作用する重量は全て地面が受けることになるために、貯留浸透槽3に陥没が生じたり、損傷を受けるような事態も良好に回避できる。
【0025】
立管5は、上下二部材5a、5bを連結して形成されている。この下部材5bの下部側面には、図2(a)に示すように、多数の小孔からなる流入口31が形成されており、その総開口面積は前記流入管4の流路断面積と同一又は大きくなるように設定されている。このように構成すると、流入管4から貯留浸透槽3に流入した雨水を、立管5の流入口31を介して無理なく流出管6に流出させることが可能になる。また、貯留浸透槽3の雨水は流入管4よりも立管5へ流れ易いので、流入管4への逆流防止を図ることもできる。更に、立管5について、上記のような二部材構成とすることにより、コンパクトな形態で現場へ搬送することできる。また、現場ではその接続作業を行うだけでよく、孔あけ作業は不要であるために、施工上大変利便である。
【0026】
尚、流入口31の形状は小孔に限定されるものではなく、同図(b)のように大径の円形状としたり、同図(c)のように半長楕円形状としたり、同図(d)のようにスリット状としても構わない。同図(b)〜(d)に示すように、流入口31を立管5の下部側に形成すると、貯留浸透槽3内の泥や土砂等の異物が立管5に流入し易くなる。特に、同図(c)のものは、立管5の下端部から流入口31が形成されているために、異物を立管5内に良好に流入させることができる。これにより、異物の回収率が向上するために、雨水貯留浸透システム1が有する雨水の貯留浸透機能を長期にわたり良好に維持することが可能になる。立管5の点検口30には、図4に示すように、円筒状の蓋枠33を介して蓋体32が着脱自在に取付けられている。蓋体32は、空気抜き機構34を備えている。この空気抜き機構34は、立管5内の圧力に応じて蓋体32を上下動させるものであり、立管5内の圧力が高圧になると、同図(b)に示すように蓋体32が上昇して点検口30が開放される。これによると、点検口30は蓋体32により閉塞されるために、その安全性が確保されると共に、立管5内への異物の落下等を適切に防止することができる。また、空気抜き機構34を介して貯留浸透槽3及び立管5と外部とが連通されるために、水位の上昇時等に発生する貯留浸透槽3や立管5の圧力上昇が適切に防止されることになる。従って、蓋体32が点検口30から不用意に離脱するようなこともなくなる。
【0027】
流出管6は、図3に示すような継手40を備えている。継手40は、一端部が立管5の側面に形成された取付孔5cに挿着される円筒状の継手本体40aと、継手本体40aが挿通される中間リング40b及び固定リング40cとからなっている。固定リング40cの内周面に形成した雌ネジ部41を、継手本体40aの他端部側外周面に形成した雄ネジ部42に螺合すると、固定リング40cにより中間リング40bが立管5側に押圧される。これにより、立管5が継手本体40aと中間リング40bとで挟持されて、継手40が立管5に固定される。
【0028】
継手本体40aの一端部には、図3に示すように、エルボ7の一端部を保持する半円状の受部43が突設されている。受部43は継手本体40aの下半分に設けられており、その内周面には凹溝44が周方向に形成されている。この凹溝44に上方から嵌入可能な半円状の凸状部50がエルボ7の外周面に形成されている。エルボ7の他端部側には、逆流防止弁51が内装されている。また、エルボ7の上部には把手52が上向きに設けられると共に、把手52にはチェーン53が接続されている。チェーン53の他端部は、前記蓋体32の裏面に余裕をもって接続される。これにより、エルボ7を流出管6に着脱する際に、エルボ7の不用意な落下を防止できる。尚、この場合、チェーン53に代えて、例えばネットを立管5に配するようにしてもよい。但し、このようなエルボ7の落下防止手段は、特に必要がなければ、省略しても構わない。尚、流出管6の他端部は、図1に示すように、地中に埋設された側溝60に接続されている。
【0029】
本実施形態に係る雨水貯留浸透システム1は以上のように構成されている。かかる雨水貯留浸透システム1に於いて、雨水は排水管21、ます20及び流入管4を介して、或いは地中から透水シート2及び保護ボード11を介して貯留浸透槽3に流入する。通常、貯留浸透槽3に流入した雨水は透水シート2を介して地中に浸透することになる。
【0030】
しかしながら、貯留浸透槽3に流入する雨水の量が一定限度を超えると、雨水は立管5の流入口31から内部に流入することになる。更に、水位が高まると、雨水はエルボ7及び流出管6を介して側溝60に排出される。
【0031】
次に、貯留浸透槽3、立管5及びエルボ7等の保守点検等を行う場合について説明する。先ず、立管5の点検口30から蓋体32を取外す。この状態で、点検口30からエルボ7の接続状態や立管5の内部の状態を目視により確認することができる。更に、エルボ7の逆流防止弁51等について保守点検を行いたい場合は、その把手52を把持しつつ上方に引き上げて、エルボ7を流出管6の継手40から取外す。これにより、エルボ7の保守点検を簡易に且つ確実に行うことができる。また、立管5内に配されるエルボ7を取外すことにより、点検口30からの立管5及び貯留浸透槽3の保守点検作業が容易に行えることになる。例えば、貯留浸透槽3の保守作業時には、点検口30から吸引装置を挿入し、底部に貯まった泥や土砂等を吸引することが可能となる。
【0032】
このようにして、本実施形態では、立管5の上端部に設けられた点検口30により、貯留浸透槽3、立管5及びエルボ7を点検することができる。これにより、各部材の保守点検のために複数の点検口を各別に設ける必要がなくなるために、システム全体の簡略化を図れる。その結果、保守点検作業ばかりではなく、一連の施工作業が効率的に行えることになる。
【0033】
尚、上記実施形態に於いては、逆流防止手段を、逆流防止弁51を備えたエルボ7で構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、流出管6の上流側に逆流防止弁を内装するようにしてもよい。この場合も、逆流防止弁の保守点検作業は、立管5の点検口30を介して行うことができる。
【0034】
また、上記実施形態では、流出管6に備えさせた継手40を介してエルボ7を着脱自在に取付けている。しかるに、エルボ7を流出管6に着脱自在に取付ける具体的な手段は決してこれに限定されない。
【0035】
更に、上記実施形態に於ける蓋体32は空気抜き機構34を備えているが、これは必要に応じて設ければよいものであり、不要であれば省略することも可能である。
【0036】
また、上記実施形態では、立管5の下端部を貯留浸透槽が設置される地面により支持させているが、必ずしもこのように構成する必要はない。
【0037】
更に、必ずしも上記実施形態のように、立管5の流入口31の総開口面積を、流入管4の流路断面積と同一又は大きくなるように設定する必要はない。
【0038】
その他、立管5の配する位置や貯留浸透槽3の形状等の雨水貯留浸透システム1を構成する各部の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0039】
1 雨水貯留浸透システム
3 貯留浸透槽
4 流入管
5 立管
6 流出管
7 エルボ
30 点検口
31 流入口
34 空気抜き機構
51 逆流防止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される貯留浸透槽と、
該貯留浸透槽内の雨水を流入可能な流入口を有し、前記貯留浸透槽に設けられて上下方向に延びる立管と、
該立管の側面に接続される流出管と、
該流出管から前記立管を経て前記貯留浸透槽に向かう雨水の逆流を防止するための逆流防止手段と、を備え、
前記立管の上端部には、前記貯留浸透槽及び逆流防止手段を点検するための点検口が設けられた雨水貯留浸透システム。
【請求項2】
前記点検口に、前記立管内の空気を外部へ排出する空気抜き機構を備えた蓋体が着脱自在に設けられた請求項1記載の雨水貯留浸透システム。
【請求項3】
前記逆流防止手段が、逆流防止弁を備え、前記流出管に着脱自在に接続されるエルボである請求項1又は2記載の雨水貯留浸透システム。
【請求項4】
前記立管の下端部が、前記貯留浸透槽が設置される地面により支持される請求項1〜3の何れかに一つ記載の雨水貯留浸透システム。
【請求項5】
前記流入口は、前記立管の下部側に形成されている請求項1〜4の何れか一つに記載の雨水貯留浸透システム。
【請求項6】
前記貯留浸透槽に雨水を流入させる流入管が接続され、前記立管の流入口の総開口面積が、前記流入管の流路断面積と同一又は大きくなるように設定された請求項1〜5の何れか一つに記載の雨水貯留浸透システム。
【請求項7】
前記エルボが落下防止手段を備えている請求項1〜6の何れか一つに記載の雨水貯留浸透システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−1789(P2011−1789A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147300(P2009−147300)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】