説明

雨筋防止剤

【課題】簡易な操作により製造することができ、かつ、良好な雨筋防止性を有し、速乾性に優れるとともに、塗膜の白化、クラックなどが抑制され、良好な外観を得ることができ、さらには、貯蔵安定性にも優れる雨筋防止剤を提供すること。
【解決手段】雨筋防止剤を、テトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物を含む湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、有機アルミニウム化合物を含む硬化触媒とを、硬化触媒の配合割合が、湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、20〜100重量部となるように配合して、調製する。この雨筋防止剤によれば、簡易な操作により製造することができ、かつ、良好な雨筋防止性を有し、速乾性に優れ、タックフリーとなるまでの時間が短縮されるとともに、白化、クラックなどが抑制された塗膜を得ることができ、さらには、貯蔵安定性に優れ、安定した保存を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨筋防止剤に関し、詳しくは、屋外設備や車両などの金属面、樹脂面、塗装面などに好適に用いられる雨筋防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋外設備や車両などは、その外観が雨曝しとなっているため、長期に放置すると、水垢の雨筋などが付着して、その雨筋がよく目立ち、屋外設備や車両などの外観を、顕著に損ねている。
このような屋外設備や車両などは、通常、定期的に洗浄して、その水垢を除去することにより、かかる雨筋の付着を防止しているが、定期的に洗浄することは煩雑であり、また、コストもかかるという不具合がある。
【0003】
そのため、アルコキシシランを外観表面に処方して、経時的に加水分解させることによってその表面を親水化させることが、よく知られている。これにより、外観表面における雨筋汚染を防止することができる。
しかし、このような方法によっては、アルコキシシランの塗膜形成直後から1ヶ月程度の間は、気象条件によって加水分解の程度が左右されるため、とりわけ、乾燥した気象条件が継続することにより、加水分解が遅れ、アルコキシシランの塗膜が汚染される場合がある。
【0004】
また、アルコキシシランの塗膜の硬化速度が遅いと、タックフリーになるまでの時間が長く、作業性が低下する場合がある。さらには、アルコキシシランの塗膜の硬化が低速度で進行すると、架橋密度が過度に上昇し、塗膜の白化やクラック(ひび割れ)などが生じ、外観を損ねる場合がある。
このような不具合を解決するため、例えば、ポリヒドラジン化合物および親水性化合物の混合物からなる水系ヒドラジン誘導体組成物と、加水分解性シラン、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体およびエチレン性不飽和単量体からなるポリカルボニル化合物とを含有する雨筋防止被覆組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−3004号公報(実施例3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載される雨筋防止被覆組成物では、水系ヒドラジン誘導体組成物の合成や、懸濁重合によるポリカルボニル化合物の調製など行う必要があるため、その製造工程が煩雑である。
そこで、本発明の目的は、簡易な操作により製造することができ、かつ、良好な雨筋防止性を有し、速乾性に優れるとともに、白化、クラックなどが抑制され、良好な外観を有する塗膜を得ることができ、さらには、貯蔵安定性にも優れる雨筋防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の雨筋防止剤は、テトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物を含む湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、有機アルミニウム化合物を含む硬化触媒とを含有し、前記硬化触媒の配合割合が、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、20〜100重量部であることを特徴としている。
また、本発明の雨筋防止剤では、前記硬化触媒の配合割合が、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、40〜60重量部であることが好適である。
【0008】
また、本発明の雨筋防止剤では、さらに、脂肪族炭化水素系溶剤を含む希釈剤を含有することが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の雨筋防止剤によれば、簡易な操作により製造することができ、かつ、良好な雨筋防止性を有し、速乾性に優れ、タックフリーとなるまでの時間が短縮されるとともに、白化、クラックなどが抑制された塗膜を得ることができ、さらには、貯蔵安定性に優れ、安定した保存を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の雨筋防止剤は、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと硬化触媒とを含有する。
本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、例えば、分子末端にアルコキシシリル基を有する低分子量のシリコーンアルコキシオリゴマーであって、後述する硬化触媒の存在下で、アルコキシシリル基の架橋により、常温で硬化するものが挙げられる。
本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、テトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物(以下、それらを有機置換基不含有シリコーンオリゴマーとする。)を含んでいる。
【0011】
テトラアルコキシシランは、Si原子にアルコキシ基が4つ結合した化合物であって、Si原子に結合するアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられる。Si原子に結合する4つのアルコキシ基は、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。アルコキシ基として、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、より好ましくは、メトキシ基が挙げられる。
【0012】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラtert−ブトキシシラン、モノメトキシトリエトキシシラン、モノメトキシトリプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノエトキシトリメトキシシラン、モノエトキシトリプロポキシシラン、モノエトキシトリブトキシシラン、モノプロポキシトリメトキシシラン、モノプロポキシトリエトキシシラン、モノプロポキシトリブトキシシラン、モノブトキシトリメトキシシラン、モノブトキシトリエトキシシラン、モノブトキシトリプロポキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、ジエトキシジブトキシシラン、ジプロポキシジブトキシシラン、または、これらの混合物などが挙げられる。
【0013】
テトラアルコキシシランとして、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、より好ましくは、テトラメトキシシランが挙げられる。
テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物とは、テトラアルコキシシランに水を加えて、触媒の存在下で撹拌しながら昇温することにより、部分的に加水分解を生じさせるとともに、縮合させることにより得られるものである。
【0014】
また、有機置換基不含有シリコーンオリゴマーは、市販品として入手可能であり、例えば、X−40−2308(テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物、信越化学社製)、X−40−9238(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物、信越化学社製)などが用いられる。これら有機置換基不含有シリコーンオリゴマーは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0015】
また、本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物(以下、それらを有機置換基含有シリコーンオリゴマーとする。)を含むこともできる。
Si(OR4−n (1)
(一般式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を、Rはアルキル基を、nは1〜3の整数を示す。また、RおよびRは、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。)
としては、例えば、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0016】
において、非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
【0017】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの炭素数3〜8のシクロアルキル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリルなどの炭素数6〜8のアリール基が挙げられる。
【0018】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、o、mまたはp−メチルベンジルなどの炭素数7または8のアラルキル基が挙げられる。
において、置換の1価の炭化水素基としては、上記した非置換の1価の炭化水素基を、置換基で置換したものが挙げられ、このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシルなどが挙げられる。これらの置換基は、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、また、例えば、1〜3個置換していてもよい。
【0019】
としては、例えば、アルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
また、RとRとは、各々独立し、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。
nは、例えば、1〜3の整数を示し、好ましくは、1または2を示す。
【0020】
このようなアルコキシシラン化合物としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、または、これらの混合物などが挙げられる。
【0021】
有機置換基含有シリコーンオリゴマーにおける、アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物とは、上記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物に水を加えて、触媒の存在下で撹拌しながら昇温することにより、部分的に加水分解を生じさせるとともに、縮合させることにより得られるものである。
また、本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーの動粘度は、例えば、20mm/s〈25℃〉以下であり、好ましくは、15mm/s〈25℃〉以下である。湿気硬化性シリコーンオリゴマーの動粘度が、20mm/s〈25℃〉以下であれば、架橋密度とともに、表面硬度が上がり、十分な防汚性を得ることができる。湿気硬化性シリコーンオリゴマーの動粘度が、20mm/s〈25℃〉を超えると、架橋密度とともに、表面硬度が下がり、十分な雨筋防止性を得られない場合があり、作業性、仕上がりに困難を生じる場合がある。
【0022】
また、湿気硬化性シリコーンオリゴマーが、有機置換基含有シリコーンオリゴマーを含む場合には、有機置換基含有シリコーンオリゴマーは、有機置換基不含有シリコーンオリゴマー100重量部に対して、例えば、10重量部以下、好ましくは、5重量部以下となるように配合される。
有機置換基不含有シリコーンオリゴマー100重量部に対して、有機置換基含有シリコーンオリゴマーの配合割合が、10重量部以上では、十分な雨筋防止性が得られない場合がある。
【0023】
湿気硬化性シリコーンオリゴマーの配合割合は、本発明の雨筋防止剤の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜85重量部、好ましくは、0.5〜50重量部、より好ましくは、1〜30重量部である。本発明の雨筋防止剤の総量100重量部に対して、湿気硬化性シリコーンオリゴマーの配合割合が0.1重量部未満では、均一な皮膜を得ることができず、また、85重量部を超えると、皮膜形成は良好である一方、作業性、仕上がりに困難を生じる場合がある。
【0024】
本発明において、硬化触媒は、必須成分として、有機アルミニウム化合物を含んでいる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトン)、アルミニウムトリス(アセトアセテートエチル)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセトアセテートエチル)などが挙げられる。
【0025】
硬化触媒として、有機アルミニウム化合物を用いることにより、十分な雨筋防止性を得ることができ、さらに、本発明の雨筋防止剤の貯蔵安定性を、より向上させることができる。
また、本発明において、硬化触媒は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、任意成分として、その他の硬化触媒を併用することもできる。
【0026】
その他の硬化触媒としては、湿気硬化性シリコーンオリゴマーを硬化させ得る触媒であれば、特に制限されないが、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクチレート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、例えば、ジルコニウム(アセチルアセトン)、ジルコニウムトリス(アセチルアセトン)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)などの有機ジルコニウム化合物、例えば、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)などの有機チタニウム化合物などの有機金属化合物、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの鉱酸類や、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸類などの酸類、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基や、エチレンジアミン、アルカノールアミンなどの有機塩基などのアルカリ、例えば、アミノ変性シリコーン、アミノシラン、シラザン、アミン類などのアミノ化合物などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、有機錫化合物、有機チタニウム化合物、鉱酸類が挙げられる。
【0027】
また、有機アルミニウム化合物は、市販品として入手可能であり、例えば、DX−9740(信越化学社製)、CAT−AC(固形分50重量%、信越化学社製)などが用いられる。これら硬化触媒は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
また、硬化触媒の配合割合は、湿気硬化性シリコーンオリゴマーの総量100重量部に対して、例えば、20〜100重量部、好ましくは、40〜60重量部である。硬化触媒の配合割合が、上記の範囲内であれば、十分に硬化反応を進行させ、良好な雨筋防止性を得ることができ、さらには、架橋密度が過度に上昇することがないため、塗膜の白化やクラック(ひび割れ)などを防止することができ、優れた外観を得ることができる。
【0028】
また、硬化触媒の配合割合は、本発明の雨筋防止剤の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは、0.5〜15重量部である。本発明の雨筋防止剤の総量100重量部に対して、硬化触媒の配合割合が0.1重量部未満では、均一な皮膜を得ることができず、また、30重量部を超えると、作業性が低下する場合や、仕上がりの外観が損なわれる場合がある。
【0029】
また、硬化触媒が、その他の硬化触媒(有機アルミニウム化合物を除く硬化触媒)を含む場合には、その他の硬化触媒は、硬化触媒の総量100重量部に対して、例えば、10重量部以下、好ましくは、5重量部以下となるように配合される。なお、このような場合には、その他の硬化触媒は、本発明の雨筋防止剤の総量100重量部に対して、例えば、3重量部以下、好ましくは、0.5重量部以下となるように、配合される。
【0030】
硬化触媒の総量100重量部に対して、その他の硬化触媒の配合割合が、3重量部以上では、十分な雨筋防止性を得ることができない場合がある。
また、本発明の雨筋防止剤は、さらに、希釈剤を含有することができる。
希釈剤としては、湿気硬化性シリコーンオリゴマーおよび硬化触媒を溶解または分散できるものであれば、特に制限されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、エチルグリコールアセテート、酢酸アミルなどのエステル系溶剤、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン系溶剤、例えば、ミネラルスピリットなどの石油系溶剤、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのナフテン系溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、例えば、揮発性シリコーン(例えば、揮発性ジメチルポリシロキサンなど)などのシリコーン系溶剤などが挙げられる。これら希釈剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0031】
希釈剤として、好ましくは、脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
希釈剤として、脂肪族炭化水素系溶剤を用いることにより、本発明の雨筋防止剤の貯蔵安定性を、より向上させることができる。
また、希釈剤の配合割合は、本発明の雨筋防止剤の総量100重量部に対して、各成分が配合された残余の重量部でよく、例えば、5〜95重量部、好ましくは、40〜90重量部である。希釈剤の配合割合が、上記の範囲内であれば、雨筋防止剤の性能を有効に発揮させるとともに、良好な作業性、仕上がりを得ることができる。
【0032】
そして、本発明の雨筋防止剤は、上記した各成分を配合することにより、適宜調製することができる。
また、本発明の雨筋防止剤には、その他に、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、艶出し剤または保護剤として一般に慣用されている、例えば、粘度調整剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、一般の顔料または染料および蛍光顔料などの着色剤、香料、界面活性剤などの添加剤を、必要に応じて適宜、配合することができる。
【0033】
そして、このようにして得られた本発明の雨筋防止剤の用途は、特に制限されないが、例えば、室外設備や車両の金属面、塗装面、樹脂面の雨筋防止剤として用いられる。金属面、塗装面、樹脂面に対する塗布は、特に制限されず、例えば、本発明の雨筋防止剤をスポンジに含浸させて、そのスポンジで、金属面、塗装面、樹脂面を擦るなど、適宜公知の方法が用いられる。なお、塗布方法は、上記したスポンジを用いて擦る方法の他、例えば、刷毛塗り、スプレーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、フローコーティングなど、その目的および用途により適宜選択することができる。なお、塗布後は所定時間後に、必要により拭き取ればよい。
【0034】
このようにして、金属面、塗装面、樹脂面に塗布された雨筋防止剤は、希釈剤などの溶剤成分が揮発するに伴って、硬化触媒および空気中の水分が作用して湿気硬化性シリコーンオリゴマーが硬化し、金属面、塗装面、樹脂面に硬化皮膜が形成される。そして、この硬化皮膜が、金属面、塗装面、樹脂面に、良好な雨筋防止性を付与する。そのため、この硬化皮膜は、塗布直後、さらには、長時間経過後においても、金属面、塗装面、樹脂面に良好な雨筋防止性を与えることができ、かつ、その表面を保護することができる。
【0035】
そして、本発明の雨筋防止剤によれば、良好に雨筋を防止することができる。
また、本発明の雨筋防止剤は、速乾性に優れ、タックフリーとなるまでの時間が短縮されるとともに、架橋密度が過度に上昇することが抑制されるため、白化、クラックなどが抑制された塗膜を得ることができる。
また、本発明の雨筋防止剤は、簡易な操作により製造され、さらには、貯蔵安定性に優れる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 2重量部
(商品名:DX−9740、信越化学社製)
上記の成分を、88重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0037】
実施例2
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 8重量部
(商品名:CAT−AC(固形分濃度50重量%)、信越化学社製)
上記の成分を、82重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0038】
実施例3
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 12重量部
(商品名:CAT−AC(固形分濃度50重量%)、信越化学社製)
上記の成分を、78重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0039】
実施例4
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 8重量部
(商品名:DX−9740、信越化学社製)
上記の成分を、82重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0040】
実施例5
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 10重量部
(商品名:DX−9740、信越化学社製)
上記の成分を、80重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0041】
実施例6
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:70重量%、動粘度:13mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−9238、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 8重量部
(商品名:CAT−AC(固形分濃度50重量%)、信越化学社製)
上記の成分を、82重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0042】
実施例7
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 4重量部
(商品名:DX−9740、信越化学社製)
上記の成分を、86重量部のイソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0043】
実施例8
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 4重量部
(商品名:DX−9740、信越化学社製)
上記の成分を、86重量部のトルエン(芳香族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0044】
実施例9
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 4重量部
(商品名:DX−9740、信越化学社製)
上記の成分を、86重量部の揮発性シリコーン(シリコーン系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0045】
比較例1
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 1重量部
(商品名:DX−9740、信越化学社製)
上記の成分を、89重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0046】
比較例2
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 15重量部
(商品名:DX−9740、信越化学社製)
上記の成分を、75重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0047】
比較例3
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機チタニウム化合物タイプ) 4重量部
(商品名:D−20、信越化学社製)
上記の成分を、86重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0048】
比較例4
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(リン酸タイプ) 4重量部
(商品名:X−40−2309A、信越化学社製)
上記の成分を、86重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0049】
比較例5
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:65重量%、動粘度:4mm/s〈25℃〉、超高硬度タイプ、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)
(商品名:X−40−2308、信越化学社製)
硬化触媒(有機錫化合物タイプ) 8重量部
(商品名:SH3170K(固形分濃度50重量%)、東レダウコーニング社製)
上記の成分を、82重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0050】
比較例6
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:28重量%、動粘度:25mm/s〈25℃〉、中重合体タイプ、メチル基を含有するメトキシシラン化合物の部分加水分解縮合物)
(商品名:KR−500、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 8重量部
(商品名:CAT−AC(固形分濃度50重量%)、信越化学社製)
上記の成分を、82重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0051】
比較例7
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 10重量部
(アルコキシ基含量:20重量%、動粘度:16mm/s〈25℃〉、高フェニル含有タイプ、メチル基およびフェニル基を含有するメトキシシラン化合物の部分加水分解縮合物)
(商品名:KR−213、信越化学社製)
硬化触媒(有機アルミニウム化合物タイプ) 8重量部
(商品名:CAT−AC(固形分濃度50重量%)、信越化学社製)
上記の成分を、82重量部のヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)に順次添加し、撹拌しながら完全に溶解させて、雨筋防止剤を得た。
【0052】
評価
(1)表面タック性
70mm×150mm、厚さ1.5mmの白色塗装板に、各実施例および各比較例で得られた雨筋防止剤を、刷毛塗りにより、均一に塗布した。
塗布後、温度25℃、湿度70%の条件下において、1時間乾燥させた。
【0053】
その後、その表面を指触して、表面のべたつきの有無を確認した。
なお、表面タック性は、下記の通り評価した。
◎:全くべたつきがなく、指紋跡も残らない。
○:僅かにべたつきが有り指紋跡が残る。
△:顕著なべたつきが有り指紋跡が残る。
×:完全にべたつく状態のもの。
(試験例)
70mm×150mm、厚さ1.5mmの白色塗装板に、各実施例および各比較例で得られた雨筋防止剤を、刷毛塗りにより、均一に塗布した。
【0054】
塗布後、温度25℃、湿度70%の条件下において、2日間乾燥させた。
その後、下記の(2)および(3)の各試験を実施し、評価した。その結果を表1に示す。
(2)外観
各実施例および各比較例の雨筋防止剤が塗布された白色塗装板の表面の外観を、目視により確認した。
【0055】
なお、外観は、下記の通り評価した。
○:白化が認められない。
△:白化もしくはクラックが僅かに認められる。
×:白化もしくはクラックがはっきりと認められる。
(3)雨筋防止性
各実施例および各比較例の雨筋防止剤が塗布された白色塗装板を、屋外にて、地面に塗膜面が垂直に、かつ、北方を向き、降雨時には雨水が塗膜面を流れるように固定した。
【0056】
その後、屋外暴露し、90日後における、各実施例および各比較例の雨筋防止剤が塗布された白色塗装板の表面の外観を、目視により確認した。
なお、雨筋防止性は、下記の通り評価した。
◎:雨筋が全く見られない。
○:わずかに汚れはあるが、雨筋はほとんど見られない。
△:汚れの付着があり、雨筋がうっすらと見られる。
×:雨筋がはっきりと見られる。
(4)貯蔵安定性
各実施例および各比較例で得られた雨筋防止剤80mLを100mL容量のガラス瓶に入れ、窒素置換した後、密閉状態とし、50℃の雰囲気下、1ヶ月間放置し、雨筋防止剤の「容器中での状態」、「硬化性」および「塗膜性能」の変化を評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
なお、貯蔵安定性は、下記の通り評価した。
◎:貯蔵前と変化なし
○:硬化性はやや低下している。もしくは、液中に結晶物が見られるものの、塗膜性能上は問題なし。
△:硬化性、塗膜性能共に低下している。もしくは、液中に結晶物が多量に見られ、塗膜性能も低下している。
×:雨筋防止剤の状態が著しく変化し、使用不可。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物を含む湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、有機アルミニウム化合物を含む硬化触媒とを含有し、
前記硬化触媒の配合割合が、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、20〜100重量部であることを特徴とする、雨筋防止剤。
【請求項2】
前記硬化触媒の配合割合が、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、40〜60重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の雨筋防止剤。
【請求項3】
さらに、脂肪族炭化水素系溶剤を含む希釈剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の雨筋防止剤。

【公開番号】特開2010−209217(P2010−209217A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56879(P2009−56879)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】