説明

雪庇防止具、雪庇防止具の施工方法、及び標識設置柱

【課題】標識設置柱に雪庇ができてしまうことを防止することができる雪庇防止具、その施工方法、及びそれを備えた標識設置柱を提供する。
【解決手段】標識設置柱は、車道の上に配設され、標識板を車道の上に支持する横支柱部23Aと、車道の両脇に建てられ、横支柱部23Aを支持する縦支柱部とを備える。雪庇防止具10は、横支柱部23Aの上に配設され、横支柱部23Aから上方に向かって互いに接近するように傾斜された一対の傾斜部11を有している。傾斜部11の傾斜角度θは、65度以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪庇ができることを防止する雪庇防止具、その施工方法、及びそれを備えた標識設置柱に関する。
【背景技術】
【0002】
道路標識の設置方式には、路側式、片持式、門型式、及び添架式がある。このうち、門型式は、道路をまたぐ門型支柱により、標識板を車道の上方に設置する方式であり、例えば、鋼製円筒柱により門型支柱を構成したものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このような門型支柱では、冬の間、降雪により雪庇が発生してしまい、落雪、落氷により交通障害が起きてしまう恐れがあった。そこで、従来は、人力により雪落とし作業を行っていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】国土交通省道路局ホームページ 道路標識の設置方法(http://www.mlit.go.jp/road/sign/sign/index.htm)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人力による雪落とし作業は、手間がかかるという問題があった。また、雪落とし作業は本線除雪との平行作業となり、作業時に道路を走行している車両からの視認性も悪く、危険であるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、標識設置柱に雪庇ができてしまうことを防止することができる雪庇防止具、その施工方法、及びそれを備えた標識設置柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の雪庇防止具は、標識板を設置する標識設置柱において、標識板を車道の上に支持する横支柱部の上に配設され、この横支柱部から上方に向かって互いに接近するように傾斜された一対の傾斜部を有し、この一対の傾斜部の傾斜角度は65度以上のものである。
【0007】
本発明の雪庇防止具の施工方法は、標識板を設置する標識設置柱において、標識板を車道の上に支持する横支柱部の上に、上方に向かって互いに接近するように傾斜された一対の傾斜部を有する雪庇防止具を配設するものであって、横支柱部の上に雪庇防止具を固定し、雪庇防止具及び横支柱部にポリウレタン樹脂を吹き付けるものである。
【0008】
本発明の標識設置柱は、標識板を設置する標識設置柱であって、標識板を車道の上に支持する横支柱部を有し、この横支柱部の上に、本発明の雪庇防止具が配設されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の雪庇防止具及び標識設置柱によれば、横支柱部から上方に向かって互いに接近するように傾斜された一対の傾斜部を設け、傾斜部の傾斜角度を65度以上とするようにしたので、傾斜部に着雪しても、着雪の量が少ないうちに落雪させることができる。よって、雪庇ができることを防止することができ、落雪・落氷による交通障害の発生を防止することができる。
【0010】
特に、発泡スチロールにより構成するようにすれば、低温になりにくいので、着雪した雪が溶けて落雪しやすくすることができる。
【0011】
また、本発明の雪庇防止具の施工方法によれば、横支柱部の上に雪庇防止具を固定し、雪庇防止具及び横支柱部にポリウレタン樹脂を吹き付けるようにしたので、既に設置されている標識設置柱においても、簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る雪庇防止具を配設した標識設置柱の全体構成を表す図である。
【図2】図1に示した雪庇防止具のI−I線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る雪庇防止具10を配設した標識設置柱20の全体構成を表すものであり、図2は、雪庇防止具10のI−I線に沿った断面構造を拡大して表すものである。この雪庇防止具10は、標識板21を設置する標識設置柱20に配設されるものである。この標識設置柱20は、例えば、車道22をまたぐ門型支柱23により、標識板21を車道の上方に設置する門型式のものである。門型支柱23は、例えば、車道22の上に配設され、標識板21を車道22の上に支持する横支柱部23Aと、車道22の両脇に建てられ、横支柱部23Aを支持する縦支柱部23Bとを有している。これら横支柱部23A及び縦支柱部23Bは、例えば、鋼製円筒柱により形成されている。
【0015】
雪庇防止具10は、例えば、横支柱部23Aの上に配設され、横支柱部23Aから上方に向かって互いに接近するように傾斜された一対の傾斜部11を有している。傾斜部11は、横支柱部23Aの長さ方向に沿うように伸長されており、一対の傾斜部11の上方側の端部は互いに接合されている。また、横支柱部23Aの長さ方向に対して垂直方向の断面で見た場合に、傾斜部11が横支柱部23Aに対して接線となるように構成されていることが好ましい。
【0016】
傾斜部11の傾斜角度θは、65度以上とすることが好ましい。傾斜角度θを65度以上とすることにより、着雪した雪の量が少ないうちに、自然に落雪させることができるからである。また、傾斜部11の傾斜角度θは、80度以下とすればより好ましく、70度以下とすれば更に好ましい。傾斜角度θがあまり大きいと、風等により傾斜部11が折れてしまう危険性が生じてしまうからである。なお、傾斜部11の傾斜角度θというのは、雪庇防止具10を標識設置柱20に配設した状態において、水平との間の角度である。
【0017】
雪庇防止具10の底部12は、例えば、横支柱部23Aに当接するように、上方向かって円弧状に湾曲して形成されている。雪庇防止具10は、例えば、発泡スチロールにより構成されていることが好ましい。発泡スチロールは断熱材であるので、着雪しても低温になりにくく、着雪した雪が溶けて落雪しやすくなるからである。
【0018】
この雪庇防止具10は、例えば、次のようにして標識設置柱20に配設する。まず、門型支柱23の周りに粉じん及び塗料等の飛散を防止する養生(仮囲い)を行い、次いで、雪庇防止具10を配設する箇所の横支柱部23Aの油脂、汚れ、錆等を除去する。続いて、付着物を取り除き、横支柱部23Aの上に、雪庇防止具10を粘着テープ24により固定する。粘着テープ24、例えば、横支柱部23Aの円周方向において、3か所程度接着することが好ましい。雪庇防止具10を固定したのち、横支柱部23Aにプライマーを塗布し、雪庇防止具10及び横支柱部23Aにポリウレタン樹脂を塗布する。ポリウレタン樹脂の厚さは、例えば、1mmから3mm程度とすることが好ましい。その後、養生を撤去する。
【0019】
この雪庇防止具10による効果を確認するために、既設の門型支柱23と同一の径を有する鋼製円筒柱を横向きに設置し、その上に雪庇防止具10を配設し、カメラにより着雪・落雪状況を撮影した。雪庇防止具10は発泡スチロールにより形成し、鋼製円筒柱の上に粘着テープ24で固定して、ポリウレタン樹脂を塗布した。雪庇防止具10の一対の傾斜部11の傾斜角度θは、共に67.5度としたものと、共に60度としたものとをそれぞれ用意した。また、比較例として、雪庇防止具10を配設しないものについても観察した。その結果、傾斜角度θを67.5度とした雪庇防止具10を配設した場合には、着雪の量が少ないうちに落雪し、雪庇ができなかった。これに対して、傾斜角度θを60度とした場合した場合、及び、雪庇防止具10を配設しなかった場合には、着雪の量が多くなり、雪庇ができた。すなわち、雪庇防止具10を配設するようにすれば、着雪の量を少なくすることができ、雪庇ができることを抑制できることが分かった。
【0020】
このように本実施の形態によれば、横支柱部23Aから上方に向かって互いに接近するように傾斜された一対の傾斜部11を設け、傾斜部11の傾斜角度θを65度以上とするようにしたので、傾斜部11に着雪しても、着雪の量が少ないうちに落雪させることができる。よって、雪庇ができることを防止することができ、落雪・落氷による交通障害の発生を防止することができる。また、傾斜部11の傾斜角度θを80度以下とするようにすれば、風等により傾斜部が折れてしまうことを防止することができ、交通障害の発生を防止することができる。
【0021】
更に、雪庇防止具10を発泡スチロールにより構成するようにすれば、低温になりにくいので、着雪した雪が溶けて落雪しやすくすることができる。
【0022】
加えて、横支柱部23Aの上に雪庇防止具10を固定し、雪庇防止具10及び横支柱部23Aにポリウレタン樹脂を吹き付けるようにしたので、既に設置されている標識設置柱20おいても、簡単に設置することができる。
【0023】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、一対の傾斜部11の傾斜角度θを同一とする場合について説明したが、上述した傾斜角度θの範囲内であれば、異なっていてもよい。また、上記実施の形態では、門型式の標識設置柱20について説明したが、他の方式についても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
標識設置柱に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
10…雪庇防止具、11…傾斜部、12…底部、20…標識設置柱、21…標識板、22…車道、23…門型支柱、23A…横支柱部、23B…縦支柱部、24…粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識板を設置する標識設置柱において、標識板を車道の上に支持する横支柱部の上に配設され、
この横支柱部から上方に向かって互いに接近するように傾斜された一対の傾斜部を有し、
この一対の傾斜部の傾斜角度は65度以上である
ことを特徴とする雪庇防止具。
【請求項2】
発泡スチロールよりなることを特徴とする請求項1記載の雪庇防止具。
【請求項3】
標識板を設置する標識設置柱において、標識板を車道の上に支持する横支柱部の上に、上方に向かって互いに接近するように傾斜された一対の傾斜部を有する雪庇防止具を配設する雪庇防止具の施工方法であって、
前記横支柱部の上に前記雪庇防止具を固定し、前記雪庇防止具及び前記横支柱部にポリウレタン樹脂を吹き付けることを特徴とする雪庇防止具の施工方法。
【請求項4】
標識板を設置する標識設置柱であって、
標識板を車道の上に支持する横支柱部を有し、この横支柱部の上に、請求項1又は請求項2に記載の雪庇防止具が配設されたことを特徴とする標識設置柱。

【図1】
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【図2】
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