説明

雲台カメラ装置

【課題】雲台カメラ装置に安価なポテンションメータを使用して、エンドレスで撮像装置の回転の位置検出をおこなうことができ、しかも、位置検出の分解能を高くする。
【解決手段】ポテンションメータで撮像装置の回転位置の検出をおこなうようにしたものであり、低分解能用の抵抗帯と高分解能用の抵抗帯を有している。ポテンションメータでは、同心円上に低分解能用の抵抗帯を1本以上、高分解能用の抵抗帯を2本以上配置し、高分解能用の抵抗帯は、同一円上で2本以上分離されている。そして、抵抗帯に同一電圧を印加することにより、低分解能と高分解能からなるポテンションメータの出力電圧の可変範囲を同一とし、回転角度対出力電圧の関係について、低分解能より高分解能の方が回転角度に対する出力電圧変化を大きくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雲台カメラ装置に係り、被写体の撮像方向が水平回転および垂直回転により設定される撮像装置の停止時の精度が優れる雲台カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、図6を用いて従来技術に係る雲台カメラ装置の構成と動作について説明する。
図6は、従来技術に係る雲台カメラ装置の正面図である。
【0003】
従来技術に係る雲台カメラ装置は、図6に示されるように、カメラケース3、水平回転部2、固定部1からなっている。水平回転部2は、左右に回転するようになっており、固定部1は、水平回転部2を固定している。カメラケース3は、カメラおよびカメラレンズから成る撮像装置が収納されており、水平回転部2の回転軸の外側で垂直回転する。
【0004】
水平回転部2の内部には、垂直回転用モータ5、垂直回転用ベルト13、カメラケース3に固定された垂直回転用シャフト8、水平回転用モータ4、水平回転用ベルト7、固定部1に固定された水平回転用シャフト6、コントロール回路10、垂直回転用モータドライバ47、水平回転用モータドライバ46、モータコントロール回路用の電源ユニット40、原点位置の読み取り用のセンサ44、45、ロータリーエンコーダ20、21、ロータリーエンコーダの読み取り回路22が納さめられている。
【0005】
垂直回転用モータ5への制御は、コントロール回路10と垂直回転用モータドライバ47および垂直回転用モータケーブル12を介しておこなう。同様に水平回転用モータ4への制御は、コントロール回路10と水平回転用モータドライバ46および水平回転用モータケーブル11を介しておこなう。
【0006】
映像出力/コントロール信号は、映像出力/コントロールケーブル9を介してコントロール回路10へ入力され、コントロール回路10へ入力された映像出力/コントロール信号は、カメラコントロールケーブル14を介してカメラケース3へ供給される。また、AC電源ケーブル43により、モータコントロール回路用の電源ユニット40に電力を供給する。電源ユニット40の出力は、コントロール回路10および水平回転用モータドライバ46、垂直回転用モータドライバ47を介して、水平回転用モータ4、垂直回転用モータ5に供給される。
【0007】
センサ44、45は、イニシャル動作時の原点位置を読み取るためのセンサであり、原点位置を把握した後、ロータリーエンコーダ20、21により、高分解能で現在の位置を検出する。検出信号は、読み取り回路22により、グリッチやチャタリングを除去し、読み取られる。
【0008】
次に、従来技術に係る雲台カメラ装置の動作について説明する。
【0009】
始めに、電源が投入されるとイニシャル動作をおこない、原点をセンサ44、45によって把握する。イニシャル動作後、指定位置に回転させるプリセット動作をさせる場合、映像出力/コントロール信号入出力ケーブル9によって水平回転角度または水平回転時間の情報が含まれた水平回転指令が、コントロール回路10に入力される。この水平回転指令の入力により、コントロール回路10はパルスを発生させ、それによって、水平回転用モータ4、垂直回転用モータ5がパルス数分回転する。
【0010】
プリセット動作においてベルト7、13は、若干たわむため毎回同じ位置で停止することがなく、例えば、水平回転において右側からプリセット動作した場合と左側からでは、たわみにより異なった位置で停止してしまう。また、風などの外的負荷が加わった場合、ベルト駆動では、モータの回転軸にこの負荷が加わるため、モータが回転させられ位置ずれが発生することもある。
【0011】
ロータリーエンコーダ20、21は、軸の最終段でこのずれを検出し、読み取り回路22によりグリッチやチャタリングを除去し読取った後、コントロール回路10において、常時現在位置を読み取り、現在位置との読取りずれがあった場合には、水平回転用モータ4、垂直回転用モータ5を回転させ正規の位置に回転させる。
【0012】
特許文献1には、上記のような構成で、水平回転用モータ、垂直回転用モータに、それぞれロータリーエンコーダを設け、モータ回転の位置検出をおこなう雲台カメラ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平2008−147886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
雲台カメラ装置での撮像装置の回転位置検出は、例えば、ズーム比35倍、水平画角2°のレンズの場合0.2°のずれでも画面上約10%のずれとして見えてしまう。
【0015】
上述の従来技術に係る雲台カメラ装置では、ロータリーエンコーダを使用した場合、例えば、分解能が0.2°で1回転1800パルスを出力するような高分解能のものはコストが高いという問題点がある。
【0016】
また若干安価な磁気式では、例えば、分解能を0.2°とするため出力電圧5VをAD変換した場合、1LSBは、5V/1800=2.8mvと微小電圧となるため、ノイズなどの影響により現実的には読み取ることが困難である。
【0017】
抵抗帯を利用した通常の安価なポテンションメータを使用した場合、前記の磁気式と同様に分解能が高くできない問題点があり、また、抵抗帯は、始まりと終わりがあり、電極を接続する必要があるため、回転の一部で抵抗帯が無い部分があり、連続的にエンドレスで検出することができない問題点がある。
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、雲台カメラ装置に安価なポテンションメータを使用して、エンドレスで撮像装置の回転の位置検出をおこなうことができ、しかも、位置検出の分解能を高くすることのできる雲台カメラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の雲台カメラ装置では、ポテンションメータで撮像装置の回転位置の検出をおこなうようにしたものであり、低分解能用の抵抗帯と高分解能用の抵抗帯を有している。そして、低分解能の検出における不感部分を別の低分解能または高分解能の検出手段で補い、高分解能の検出における不感部分を別の高分解能の検出手段で補うことようにしている。
【0020】
ポテンションメータでは、同心円上に低分解能用の抵抗帯を1本以上、高分解能用の抵抗帯を2本以上配置し、高分解能用の抵抗帯は、同一円上で2本以上分離されている。
【0021】
抵抗帯に同一電圧を印加することにより、低分解能と高分解能からなるポテンションメータの出力電圧の可変範囲を同一とし、回転角度対出力電圧の関係が低分解能より高分解能の方が回転角度に対する出力電圧変化を大きくしている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、雲台カメラ装置に安価なポテンションメータを使用して、エンドレスで撮像装置の回転の位置検出をおこなうことができ、しかも、位置検出の分解能を高くすることのできる雲台カメラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る雲台カメラ装置の正面図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係るポテンションメータの構造を示す図で、ケース50a、回転体50b、抵抗帯配置板50cに分解したときの様子を示す斜視図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係るポテンションメータの構造を示す図で、ケース50a、回転体50b、抵抗帯配置板50cを組み立てるときの側面図である。
【図2C】本発明の一実施形態に係るポテンションメータの構造を示す図で、ケース50a、回転体50b、抵抗帯配置板50cを組み立てた後の側面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るポテンションメータの抵抗帯配置板の構造の例を示す図である。
【図4】ポテンションメータの電圧出力の波形を示したグラフである。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るポテンションメータの抵抗帯配置板の構造の例を示す図である。
【図6】従来技術に係る雲台カメラ装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る各実施形態を、図1ないし図5を用いて説明する。
【0025】
〔実施形態1〕
先ず、図1ないし図2Cを用いて本発明の第一の実施形態に係る雲台カメラ装置の構成について説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る雲台カメラ装置の正面図である。
図2Aないし図2Cは、本発明の第一の実施形態に係るポテンションメータの構造を示す図である。
【0026】
本実施形態の雲台カメラ装置は、従来技術の雲台カメラ装置に比べて異なる所は、ロータリーエンコーダ20、21が、ポテンションメータ50、51となりロータリーエンコーダの読み取り回路22が、ポテンションメータ読み取り回路52になったことである。以下では、ポテンションメータ50を例として説明するが、ポテンションメータ51についても、構成と動作は同様である。
【0027】
ポテンションメータ50の構造は、図2Aないし図2Cに示されるように、ケース50a、回転体50b、抵抗帯配置板50cからなる。
【0028】
ここで、図2Aは、ポテンションメータ50を、ケース50a、回転体50b、抵抗帯配置板50cに分解したときの様子を示す斜視図、図2Bは、ケース50a、回転体50b、抵抗帯配置板50cを組み立てるときの側面図、図2Cは、ケース50a、回転体50b、抵抗帯配置板50cを組み立てた後の側面図である。
【0029】
回転体50bには、後に詳説するようなパターンの抵抗帯と、VCC端子、GND端子が配されている。
【0030】
図2Aおよび図2Bに示されるように、機器本体に固定されるケース50aの中心に設けられた穴に、回転体50bの軸を挿入して、回転体50bは、回転自在に取り付けられており、水平回転用モータ4による水平方向の回転に従って回転する。抵抗帯配置板50cは、ケース50aの四隅にねじ止めに取り付けられて固定される。回転体50bには、外側から見て、ブラシA、B、Cがあり、図2Cに示されるように、抵抗帯配置板50cに配置されている抵抗帯と接触するようになっている。
【0031】
ポテンションメータ読み取り回路52と、ブラシA、B、Cと、VCC端子、GND端子とは、配線されており、その配線間の電圧を読み取れるようになっている。
【0032】
次に、図3および図4を用いて本発明の第一の実施形態に係る雲台カメラ装置の位置検出に関する構造と原理について説明する。
図3は、本発明の第一の実施形態に係るポテンションメータの抵抗帯配置板の構造の例を示す図である。
図4は、ポテンションメータの電圧出力の波形を示したグラフである。
【0033】
本実施形態の雲台カメラ装置のポテンションメータ50の抵抗帯配置板50cの内部は、図3に示されるように、一平面上かつ同心円上に抵抗帯A、抵抗帯B、抵抗帯Cが配置されている。抵抗帯Aの切れ目は、1箇所であり、抵抗帯Bと抵抗帯Cは、それぞれ同一円状にそれぞれB1〜B5、C1〜C5と5本の抵抗帯となっており、各々の切れ目を包含する様に配置している。また抵抗帯Aの切れ目を包含する様に抵抗帯Bを配置している。これら3種の抵抗帯は、各々の抵抗帯の要素の端から端までの抵抗は等しくなっている。また、それぞれの抵抗帯の両端には、VCC(電源)とGND(0V)の端子を接続している。ポテンションメータとしてはこの抵抗帯にブラシ等を接触させ回転することにより、ブラシが接触する抵抗帯の位置によって電圧が変化することにより、ポテンションメータ読み取り回路52によって、回転位置を検出することができる。
【0034】
図4は、図3に示した構造を有するポテンションメータの電圧出力の波形を示したものである。これによれば、回転と共に抵抗帯Aによって出力される電圧は、VCCまで徐々にあがり、抵抗帯Aの切れ目では出力がなくなる。同様に抵抗帯B、抵抗帯Cも回転により電圧がVCCまで徐々にあがるが、5本の抵抗帯からなっているため、それぞれ1回転(360°)の中に5回変化が現れる。また、抵抗帯B、抵抗帯Cも同様に切れ目では出力がなくなる。ここで、上記の様に各々の切れ目を包含するように別の抵抗帯を配置しているため、例えば、抵抗帯Bの出力が無い場合でも抵抗帯Cの出力を検出すればよい。
【0035】
例えば、図2の位置Pに、それぞれの抵抗帯A、B、CのブラシA、B、Cが来ているときには、図3に示されるように、ブラシA、B、Cから出ている配線を利用して、ポテンションメータ読み取り回路52は、位置Pの縦線とグラフの交点に示す電圧を読み取る。
【0036】
抵抗帯Aは切れ目を無視した場合360°を0V〜VCCまでで出力されるため、例えば、分解能10ビットのAD変換器を使用した場合、分解能は約0.35°となる。抵抗帯B、Cで切れ目を無視した場合360°/5を0V〜VCCまでで出力されるため約0.07°となる。このように抵抗帯Aによって360°中のおおよその位置と抵抗帯B、Cによる高分解能検出が同一の電源電圧によって可能になる。
【0037】
また、抵抗帯B、Cの切れ目の数を増やすことにより、さらに分解能を上げることができる。
【0038】
〔実施形態2〕
以下、図5を用いて本発明の第二の実施形態を説明する。
図5は、本発明の第二の実施形態に係るポテンションメータの抵抗帯配置板の構造の例を示す図である。
【0039】
本実施形態のポテンションメータの抵抗帯配置板では、図5に示されるように、各抵抗帯に接続するVCCとGNDの端子が接続された非抵抗帯D、Eが、図4に示した抵抗帯A、B、Cに同心円上に配置されたものである。ここで、非抵抗帯は、抵抗が0に近い導体からなっている。
【0040】
そして、回転体50bには、ブラシA、B、Cの外側に、非抵抗帯Dと接するブラシDと、非抵抗帯Eと接するブラシEが配されており、ブラシA、B、Cと、ブラシD、Eに配線して、ポテンションメータ読み取り回路52は、これらの間の電圧を検知する。これにより、エンドレスで電源を抵抗帯に供給することができる。
【符号の説明】
【0041】
A…抵抗帯A、B1〜B5…抵抗帯B、C1〜C5…抵抗帯C、C1〜C5…抵抗帯C、D…非抵抗帯D、E…非抵抗帯E、
1…固定部、2…水平回転部、3…カメラケース、4…水平回転用モータ、5…垂直回転用モータ、6…水平回転用シャフト、7…水平回転用ベルト、8…垂直回転用シャフト、9…映像出力、コントロール信号入出力ケーブル、10…コントロール回路、13…垂直回転用ベルト、14…映像出力、カメラコントロールケーブル、40…モータ用電源ユニット、41…コントロール回路用電源ユニット、44、45…原点位置の読み取り用のセンサ、46…水平回転用モータドライバ、47…垂直回転用モータドライバ、33…垂直回転用センサ、、31…水平回転用センサ、20…水平回転用ポテンションメータ、21…垂直回転用ポテンションメータ、22…読み取り回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の撮像方向が水平回転および垂直回転によって設定され、回転位置の検出手段を備えてなる雲台カメラ装置において、
低分解能と高分解能の検出手段を有し、
ポテンションメータの各々の抵抗帯に電圧を印加することにより、低分解能と高分解能からなるポテンションメータの出力電圧の可変範囲を同一とし、低分解能より高分解能の方が回転角度に対する出力電圧変化を大きくすることを特徴とする雲台カメラ装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−139384(P2011−139384A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299139(P2009−299139)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】