説明

電位制御装置及び電子写真用感光体特性評価装置

【課題】電子写真用感光体の帯電電位を補正することにより、前記電子写真用感光体の全領域における帯電電位偏差を抑制することが可能な電位制御装置を有し、前記電子写真用感光体のドラム振れによる帯電電位偏差を抑制することができ、露光後電位から前記電子写真用感光体の全体の特性を精度よく評価することが可能な電子写真用感光体特性評価装置の提供。
【解決手段】少なくとも帯電手段及び表面電位検出手段を有し、電子写真用感光体における周方向の複数の位置において、前記帯電手段への印加電圧と、前記表面電位検出手段により検出された前記電子写真用感光体における帯電電位との関係から導かれる1次関数を算出し、前記1次関数により、前記複数の各位置において、前記帯電電位の目標値に対応する前記印加電圧を算出し、前記複数の各位置において、前記算出した印加電圧で前記帯電手段により帯電をさせる補正手段を有する電位制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタ、複写機等の画像形成装置、画像形成方法などに備えられた電子写真用感光体の電位制御装置及び該電位制御装置を有する電子写真用感光体特性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、着脱可能な感光体ドラムを回転可能に保持するとともに、該保持された感光体ドラム表面を軸心方向のほぼ全域にわたって帯電させる帯電装置、及び該帯電装置による帯電位置から感光体ドラムの回転方向下流側位置にて、該感光体ドラムの表面を軸心方向のほぼ全域に渡って露光する光源を有する露光ユニットと、該感光体ドラムを所定方向に回転させる感光体ドラム回転手段と、該感光体ドラムの軸心方向に移動可能に配置されており、前記光源による露光位置よりも感光体ドラムの回転方向下流側にて該感光体ドラムの表面の電位を測定する電位センサと、該電位センサを該感光体ドラムの軸方向へ移動させるセンサ移動手段と、該電位センサによる測定位置よりも該感光体ドラムの回転方向下流側位置にて該感光体ドラムの表面を軸方向のほぼ全域にわたって除電する除電装置とを具備する感光体ドラムの感光体特性測定装置が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1のような感光体ドラムの感光体特性測定装置では、同形状の該感光体ドラムは1つのチャック治具で対応しており、該チャック治具は該感光体ドラムの内径公差を考慮して作られる。このため、該感光体ドラムによっては基体の内径と該チャック治具との外径差が大きくなり、実機以上に該感光体ドラムの振れが発生してしまう。該感光体ドラムの振れが大きいと、該帯電装置と該感光体ドラムとの距離が、該感光体ドラム表面内の位置により大きく異なるため、該感光体ドラムの表面内で大きな帯電電位偏差(帯電電位の最大値と最小値の差)が生じる。このような該感光体ドラムの振れの影響により発生した帯電電位偏差は、露光後電位から感光体の特性を評価する際にはノイズとなり、測定精度を低下させる要因となる。したがって、露光後電位から該感光体の特性を精度よく評価できるようにするには、帯電電位偏差を抑制する必要があるが、帯電電位偏差を抑制する手段がない点で問題であった。
【0004】
このような帯電電位偏差を抑制する方法として、特許文献2では、感光体ドラムの帯電電位と、スコロトロン帯電装置のワイヤに印加される電流又は電圧との関係に基づいて、該スコロトロン帯電装置のグリッドに印加する電圧を制御する方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2の技術は、該感光体ドラムの1周内では、導電性支持体上に塗工された各層の膜厚差や、該感光体ドラムの振れによる帯電装置と該感光体ドラムとの距離の違いがあり、これらが原因となり該感光体ドラムに帯電電位偏差が生じることがある。したがって、特許文献2の電子写真画像形成装置では、測定誤差を生じることがあり、これを防ぐためには、該感光体ドラムの1周内の各位置に応じて帯電装置のグリッドに印加する電圧を制御する必要がある。しかし、特許文献2にはその点に関する記載や示唆はなく、該感光体ドラムの1周内の帯電電位偏差を抑制するには不十分である点で問題であった。また、該感光体ドラムの1軸内の帯電電位偏差を抑制する手段に関しても記載や示唆はなく、感光体ドラムの帯電電位偏差を抑制する手段の提供が求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、電子写真用感光体の帯電電位を補正することにより、前記電子写真用感光体の全領域における帯電電位偏差を抑制することが可能な電位制御装置、及び前記電位制御装置を有し、前記電子写真用感光体のドラム振れによる帯電電位偏差を抑制することが可能な電子写真用感光体特性評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明の電位制御装置は、電子写真用感光体の複数の位置において前記電子写真用感光体の帯電電位を補正することができ、前記電子写真用感光体全体の帯電電位偏差を抑制することができること、前記電子写真用感光体において前記補正を行う位置が多い程、前記電子写真用感光体の帯電電位の制御性が向上することを見出した。また、前記電位制御装置を有する本発明の電子写真用感光体特性評価装置は、前記電子写真用感光体の軸方向全ての位置で前記電子写真用感光体ドラムの周方向の帯電電位の補正を行うことで、前記電子写真用感光体全領域の帯電電位偏差を抑制することができること、したがって、従来の評価装置で問題とされていたドラム振れによる帯電電位偏差が原因となり発生する測定誤差を解消することを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも帯電手段及び表面電位検出手段を有し、電子写真用感光体における周方向の複数の位置において、前記帯電手段への印加電圧と、前記表面電位検出手段により検出された前記電子写真用感光体における帯電電位との関係から導かれる1次関数を算出し、前記1次関数により、前記複数の各位置において、前記帯電電位の目標値に対応する印加電圧を算出し、前記複数の各位置において、前記算出した前記印加電圧で前記帯電手段により帯電をさせる補正手段を有することを特徴とする電位制御装置である。
<2> 帯電手段が、コロナ帯電方式であり、ワイヤ印加電圧と、電子写真用感光体の帯電電位との関係から1次関数を算出する前記<1>に記載の電位制御装置である。
<3> 帯電手段が、スコロトロン帯電方式であり、グリッド印加電圧と、電子写真用感光体の帯電電位との関係から1次関数を算出する前記<1>に記載の電位制御装置である。
<4> 補正手段により補正が行われた後、電子写真用感光体の1周内の帯電電位の最大値と最小値との差が目標値を超えた場合、前記電子写真用感光体の周方向で補正を行う位置を増やし、再度前記電子写真用感光体の帯電電位の補正が行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載の電位制御装置である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の電位制御装置を有することを特徴とする電子写真用感光体特性評価装置である。
<6> 帯電手段を電子写真用感光体の軸方向に移動させる移動手段を有し、補正手段が、前記電子写真用感光体の軸方向の任意の位置において、前記電子写真用感光体における周方向の帯電電位の補正を行う前記<5>に記載の電子写真用感光体特性評価装置である。
<7> 電子写真用感光体における周方向の複数の位置において、帯電手段への印加電圧と、表面電位検出手段により検出された前記電子写真用感光体における帯電電位との関係から導かれる1次関数を算出し、前記1次関数により、前記複数の各位置において、前記帯電電位の目標値に対応する印加電圧を算出し、補正手段により、前記複数の各位置において、前記算出した前記印加電圧で前記帯電手段により帯電をさせて補正することを特徴とする電位制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、電子写真用感光体の帯電電位を補正することにより、前記電子写真用感光体の全領域における帯電電位偏差を抑制することが可能な電位制御装置、及び前記電位制御装置を有し、前記電子写真用感光体のドラム振れによる帯電電位偏差を抑制することができ、測定誤差を生じることがなく、露光後電位から前記電子写真用感光体の全体の特性を精度よく評価することが可能な電子写真用感光体特性評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の電子写真用感光体特性評価装置の正面の概略図の一例である。
【図2】図2は、本発明の電子写真用感光体特性評価装置の側面の概略図の一例である。
【図3】図3は、電子写真用感光体のドラム振れ幅と、帯電電位との関係を説明するための一例を表すグラフである。
【図4】図4は、比較例1、実施例1a及び1bの3条件で測定した、電子写真用感光体の周方向の帯電電位分布である。縦軸は、電子写真用感光体の帯電電位を表す。横軸は、電子写真用感光体の周方向の位置(度)を表す。
【図5】図5は、電子写真用感光体の周方向の任意の位置で測定した帯電電位とワイヤ印加電圧との関係の一例を表すグラフ及び該グラフより算出した1次関数である。縦軸は、電子写真用感光体ドラムの帯電電位を表す。横軸は、ワイヤ印加電圧を表す。
【図6】図6は、比較例2、実施例2a及び2bの3条件で測定した、電子写真用感光体の周方向の帯電電位分布である。縦軸は、電子写真用感光体の帯電電位を表す。横軸は、電子写真用感光体の周方向の位置(度)を表す。
【図7】図7は、電子写真用感光体の周方向の任意の位置で測定した帯電電位とグリッド印加電圧との関係の一例を表すグラフ及び該グラフより算出した1次関数である。縦軸は、電子写真用感光体ドラムの帯電電位を表す。横軸は、グリッド印加電圧を表す。
【図8】図8は、比較例3、実施例3a及び3bの3条件で測定した、電子写真用感光体の周方向の帯電電位分布である。縦軸は、電子写真用感光体の帯電電位を表す。横軸は、電子写真用感光体の周方向の位置(度)を表す。
【図9】図9は、比較例4、実施例4a及び4bの3条件で測定した、電子写真用感光体の周方向の帯電電位分布である。縦軸は、電子写真用感光体の帯電電位を表す。横軸は、電子写真用感光体の周方向の位置(度)を表す。
【0011】
(電位制御装置及び電位制御方法)
本発明の電位制御装置は、少なくとも帯電手段、表面電位検出手段、補正手段を有し、必要に応じて、更にその他の構成を有してなる。
【0012】
<帯電手段>
前記帯電手段は、前記電子写真用感光体の表面を帯電する手段である。
前記帯電手段としては、例えば、コロトロン帯電方式、スコロトロン帯電方式等のコロナ帯電方式を利用した非接触帯電手段などが挙げられる。これらの中でも、前記帯電手段は、スコロトロン帯電器が、帯電電位の制御性が高いため好ましい。
前記帯電手段は、前記電子写真用感光体の軸方向に移動可能に設けられている。また、前記帯電手段は、径方向にも単独で進退可能な構造であることが、前記電子写真用感光体との距離を調節でき、様々なドラム径の電子写真用感光体に対応できる点で好ましい。
【0013】
<表面電位検出手段>
前記表面電位検出手段は、露光前の前記電子写真用感光体の帯電電位、及び露光後の前記電子写真用感光体の露光後電位の少なくともいずれかを検出する手段である。
前記表面電位検出手段としては、前記電子写真用感光体の帯電電位及び露光後電位の少なくともいずれかをモニタすることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記表面電位検出手段には、接触型と非接触型があるが、電子写真用感光体を傷つける恐れがあるため、非接触型が好ましい。
前記電子写真用感光体の帯電電位及び露光後電位の少なくともいずれかをモニタする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電子写真用感光体を、前記帯電手段により帯電した後、若しくは後述する露光手段により露光した後、前記電子写真用感光体の帯電電位及び露光後電位の少なくともいずれかを前記表面電位計プローブで測定し、前記表面電位計に信号を送ることにより前記電子写真用感光体の帯電電位及び露光後電位の少なくともいずれかをモニタする方法などが挙げられる。
前記表面電位検出手段の数としては、前記帯電後の表面電位検出手段及び前記露光後の表面電位検出手段を、それぞれ少なくとも1つ有している必要がある。
前記表面電位検出手段は、前記電子写真用感光体の軸方向に移動可能に設けられている。また、前記表面電位検出手段は、径方向にも単独で進退可能な構造であることが、前記電子写真用感光体との距離を調節でき、様々なドラム径の電子写真用感光体に対応できる点で好ましい。
【0014】
<補正手段>
前記補正手段は、前記電子写真用感光体における周方向の複数の位置において、前記帯電手段への印加電圧(第1の印加電圧)と、前記表面電位検出手段により検出された前記電子写真用感光体における帯電電位との関係から導かれる1次関数を算出し、前記1次関数により、前記複数の各位置において、前記帯電電位の目標値に対応する前記印加電圧(第2の印加電圧)を算出し、前記複数の各位置において、前記算出した前記印加電圧で前記帯電手段により帯電をさせる手段である。
前記補正手段により、前記電子写真用感光体は、全領域における帯電電位の最大値と最小値との差(帯電電位偏差)を抑制することができる点で好ましい。
前記帯電手段への印加電圧の値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記帯電手段がスコロトロン帯電方式である場合、前記印加電圧としては、ワイヤ印加電圧及びグリッド印加電圧を利用することができ、いずれか一方の印加電圧を任意の値に固定し、他方の印加電圧を前記補正手段に利用することができる。
前記目標値は、前記電子写真用感光体における所望の帯電電位である。前記目標値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
−1次関数−
前記1次関数は、前記電子写真用感光体における周方向の複数の位置において、前記帯電手段への印加電圧と、前記表面電位検出手段により検出された前記電子写真用感光体における帯電電位との関係から算出される。
具体的には、任意の印加電圧を印加された前記帯電手段により、前記電子写真用感光体が帯電され、前記表面電位検出手段により、前記電子写真用感光体の周方向の任意の位置の帯電電位が測定される。これにより、測定された前記電子写真用感光体における帯電電位と、前記印加電圧とのプロットが得られる。前記印加電圧を変化させ、同様にして得られたプロットより、前記印加電圧と、前記電子写真用感光体における帯電電位との関係を示す1次関数が算出される。なお、前記プロットが直線上にのらない場合は、最小2乗法により前記1次関数が算出されることも可能である。
前記任意の位置の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、多い方が、前記電子写真用感光体の帯電電位の制御性が向上する点で好ましい。
前記1次関数により、前記複数の各位置において、前記帯電電位の目標値に対応する印加電圧を算出することができる。
【0016】
−目標値に対応する印加電圧−
前記目標値に対応する印加電圧は、前記電子写真用感光体の1周内の任意の位置における前記1次関数により、前記電子写真用感光体の前記帯電電位の前記目標値から算出された電圧である。前記目標値に対応する印加電圧は、前記電子写真用感光体における周方向の複数の各位置において算出された前記1次関数より、それぞれの位置に対応する前記目標値に対応する印加電圧が算出されることが好ましい。
前記補正手段において、前記1次関数の算出後、前記電子写真用感光体は、後述する除電手段により除電され、前記目標値に対応する印加電圧により再帯電され、これにより、前記電子写真用感光体の帯電電位が目標値へと補正される。これにより、前記電子写真用感光体の全領域における帯電電位偏差を抑制することができる。
【0017】
前記電子写真用感光体の1周内の帯電電位偏差が目標値の範囲を超えた場合は、再度除電し、前記電子写真用感光体の周方向で補正を行う位置を増やし、再度前記電子写真用感光体の帯電電位の補正を行うことができる。補正を行う位置を増やすことで、前記電子写真用感光体の帯電電位の制御性を向上させることができる点で好ましい。
前記補正を行う回数としては、特に制限はなく、帯電電位偏差が目標範囲内に収まるまで何度でも行うことができる。
【0018】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、例えば、除電手段、露光手段、前記帯電手段に電圧を供給するワイヤ電極及びグリッド電極、前記ワイヤの高圧電源、前記グリッドの電源、前記高圧電源及び前電源の電源スイッチなどが挙げられる。
【0019】
−除電手段−
前記除電手段は、前記電子写真用感光体の帯電電位を除電する手段である。前記除電手段としては、前記電子写真用感光体に対し除電バイアスを印加することができれば、特に制限はなく、公知の除電手段の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
前記除電手段は、前記電子写真用感光体の軸方向に移動可能に設けられている。また、前記除電手段は、径方向にも単独で進退可能な構造であることが、前記電子写真用感光体との距離を調節でき、様々なドラム径の電子写真用感光体に対応できる点で好ましい。
【0020】
−露光手段−
前記露光手段は、前記電子写真用感光体を露光する手段である。前記露光手段は、前記電子写真用感光体を露光することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記露光手段の光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般などが挙げられる。また、前記露光手段は、所望の波長域の光のみを前記電子写真用感光体ドラムに照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもでき、照度を下げるために、ニュートラルデンシティフィルターを用いることもできる。
前記露光手段は、前記電子写真用感光体の軸方向に移動可能に設けられている。また、前記露光手段は、径方向にも単独で進退可能な構造であることが、前記電子写真用感光体との距離を調節でき、様々なドラム径の電子写真用感光体に対応できる点で好ましい。
【0021】
−高圧電源、電源、及び電源スイッチ−
前記高圧電源、電源、及び電源スイッチとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記高圧電源、電源、及び電源スイッチの制御手段としては、特に制限はなく、従来公知のものをそのまま用いることができる。
【0022】
(電子写真用感光体特性評価装置)
本発明の電子写真用感光体特性評価装置は、前記電位制御装置を有する装置であり、必要に応じて、更にその他の構成を有してなる。
【0023】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子写真用感光体、回転角度検出手段、移動手段などが挙げられる。
【0024】
−電子写真用感光体−
前記電子写真用感光体としては、その材質、形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記形状としては、例えば、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状などが挙げられる。これらの中でも、ドラム状が好ましい。
前記材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン、CdS、ZnO等の無機感光体;ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)、などが挙げられる。
前記大きさとしては、前記電子写真用感光体特性評価装置の大きさ、仕様などに応じて適宜選択することができる。
【0025】
前記有機感光体(OPC)は、(1)光吸収波長域の広さ、光吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、などの理由から一般に広く応用されている。このような有機感光体の層構成としては、単層構造と、積層構造とに大別される。
前記単層構造の感光体は、支持体と、該支持体上に単層型感光層を設けてなり、更に必要に応じて、保護層、中間層、その他の層を有してなる。
前記積層構造の感光体は、支持体と、該支持体上に電荷発生層、及び電荷輸送層を少なくともこの順に有する積層型感光層を設けてなり、更に必要に応じて、保護層、中間層、の他の層を有してなる。
【0026】
−回転角度検出手段−
前記回転角度検出手段は、前記電子写真用感光体ドラムの回転角度を測定する手段である。前記回転角度検出手段としては、前記電子写真用感光体ドラムの回転角度を測定することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロータリーエンコーダなどが挙げられる。このロータリーエンコーダで検出された前記電子写真用感光体ドラムの周方向の位置情報などの回転角度に関する情報がコントローラへと送られる。
【0027】
−移動手段−
前記移動手段は、前記帯電手段を前記電子写真用感光体の軸方向に移動させる手段である。前記移動手段は、前記帯電手段の前記電子写真用感光体の軸方向への移動と対応して、前記表面電位検出手段、前記露光手段、及び前記除電手段を、同一軸方向位置に同時に移動させる設計であることが好ましい。これにより、軸方向の所望の計測位置を適宜選択することができる。
前記移動手段としては、特に制限はなく、公知の移動手段の中から適宜選択することができ、例えば、ステッピングモータなどが挙げられる。
【0028】
ここで、本発明における電子写真用感光体特性評価装置について、図面を参照しながら以下に詳しく説明する。図1は、本発明の電子写真用感光体特性評価装置の正面の概略図であり、図2は、本発明の電子写真用感光体特性評価装置の側面の概略図である。なお、これらの概略図は一例であってこれに限定されるものではない。
【0029】
図1の電子写真用感光体特性評価装置は、電子写真用感光体ドラム1を帯電する帯電手段6であるスコロトロン帯電器、スコロトロン帯電器のワイヤ電極へ電圧を供給する為の高圧電源7、スコロトロン帯電器のグリッド電極へ電圧を供給する為の電源12、高圧電源7及び電源12の電源スイッチ15、電子写真用感光体ドラム1の帯電電位を測定する表面電位検出手段である表面電位計プローブ13、電子写真用感光体ドラム1を露光する露光手段2、電子写真用感光体ドラム1の露光後電位を測定する表面電位検出手段である表面電位計プローブ3、及び電子写真用感光体ドラム1を除電する除電手段8である除電用光源を有している。
前記スコロトロン帯電器、表面電位計プローブ13、露光手段2、表面電位計プローブ3、前記除電用光源は、電子写真用感光体ドラム1の径方向及び軸方向に進退可能な構造となっており、径方向に関してはそれぞれを個別に移動することができ、個別の位置に配置できる。ただし、軸方向に関しては、これらの全てが同時に移動し、同一軸方向位置に配置される。
【0030】
この電子写真用感光体特性評価装置において、図2に示す電子写真用感光体ドラム1は、両端にドラムチャック治具20で前記電子写真用感光体特性評価装置内に保持され、主軸18がチャック治具20の中心を通っている。前記電子写真用感光体特性評価装置は、電子写真用感光体ドラム1が、両端においてドラムチャック治具20で保持されているため、電子写真用感光体ドラム1のドラム振れを抑制できる点で好ましい。前記電子写真用感光体特性評価装置の手前側(電子写真用感光体ドラム1の一端側)の面板21と、奥側(電子写真用感光体ドラム1の他端側)の面板22とが主軸18の軸受け機能となっており、主軸18はモータ16に繋がったベルト19によって図1の矢印の方向に回転する機構となっている。電子写真用感光体ドラム1の回転角度は、図2に示す主軸20の端部に取り付けられたロータリーエンコーダ11により測定され、電子写真用感光体ドラム1の周方向の位置情報などの回転角度に関する情報は、図1に示すコントローラ17へと送られる。高圧電源7から前記スコロトロン帯電器のワイヤ電極に、電源12から前記スコロトロン帯電器のグリッド電極に電圧が出力され、前記スコロトロン帯電器によって電子写真用感光体ドラム1が帯電される。
【0031】
また、図1に示すように、電子写真用感光体ドラム1の帯電電位は、表面電位計プローブ13からモニタ部である表面電位計14に送られモニタされ、信号処理回路9に送られる。その後A/D変換器10によってA/D変換され、コントローラ17へと送られ、演算処理され、一次関数が算出される。そして、電子写真用感光体ドラム1の1周内の帯電電位偏差が目標値よりも大きな場合は、高圧電源7から前記スコロトロン帯電器のワイヤ電極への供給電圧、又は電源12から前記スコロトロン帯電器のグリッド電極への供給電圧が、コントローラからの信号により電子写真用感光体ドラム1の周方向の任意の位置で帯電電位が目標値となるように制御され、除電用光源8での除電後に、再帯電が行われることにより補正される。ただし、このようにして再帯電を行っても、電子写真用感光体ドラム1の1周内の帯電電位偏差が目標値よりも大きな場合には、補正を行う任意の位置(箇所)が増加され、除電後に再帯電が行われる。
【0032】
電子写真用感光体ドラム1中の通過電流は、信号処理回路5、A/D変換器10を通じて、コントローラへと送られ、通過電流を把握することも可能である。また、コントローラ17は電子写真用感光体ドラム1を回転させるモータ16内の図示しないモータドライバに接続されている。モータドライバでは、回転数を出力する機能、回転数をリモート制御可能な機能も付加されているため、回転数制御と回転数の認識も可能である。
【0033】
電子写真用感光体ドラム1の周りのユニット(前記スコロトロン帯電器、表面電位計プローブ13、露光手段2、表面電位計プローブ3、前記除電用光源)は、デジタルリレー出力23によってON/OFF制御されている。また、露光手段2を用いて、電子写真用感光体ドラム1の露光が行われ、電子写真用感光体ドラム1の露光後電位は、表面電位計プローブ3及び表面電位計4を使用することによって、帯電手段6によって帯電された後の帯電電位と同様にして測定できる。電子写真用感光体ドラム1の露光後電位を取り除く場合は、除光用光源8を使用し取り除くことが可能であり、電子写真用感光体ドラム1の帯電特性、光減衰特性などの評価が可能である。
【0034】
前記電子写真用感光体特性評価装置は、光を透過しない暗箱あるいは暗幕などで覆われていることが好ましい。前記電子写真用感光体特性評価装置が、暗箱又は暗幕で覆われていないと、試験時に風、光、温度などの外部環境の影響を受け、正確な特性評価が困難となる。ただし、コントローラ及び信号処理回路など、前記電子写真用感光体ドラムの評価に影響のないものに関しては、暗箱あるいは暗幕で覆う必要はない。
【0035】
本発明の電子写真用感光体特性評価装置は、電子写真用感光体ドラムの帯電電位の補正することにより、前記電子写真用感光体ドラムの全領域における帯電電位偏差を抑制することが可能な電位制御装置を有しているので、前記電子写真用感光体のドラム振れによる帯電電位偏差を抑制することができ、測定誤差を生じることがなく、露光後電位から前記電子写真用感光体の全体の特性を精度よく評価することができる。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
以下に示す比較例及び実施例では、図1及び図2のような電子写真用感光体特性評価装置を用いて電子写真用感光体の特性評価を行った。前記電子写真用感光体特性評価装置において、帯電手段6としては、内製したスコロトロン帯電器、前記スコロトロン帯電器のワイヤ電極に電圧を印加する高圧電源7は、TREK社製、前記スコロトロン帯電器のグリッド電極に電圧を印加する電源12は松定プレシジョン株式会社製、露光手段2としての露光用光源はSHARP社製LD(波長:655nm)、表面電位検出手段としての表面電位計14及び表面電位検出手段としての表面電位計4はTREK社製、表面電位検出手段としての表面電位計プローブ13及び表面電位検出手段としての表面電位計プローブ3はTREK社製、除電手段8としての除電用光源はスタンレー電気社製LED(波長:660nm)の加工品、モータ16はオリエンタル株式会社製、コントローラ17は株式会社キーエンス製のシーケンサ及びHP製のPC、A/D変換器10は株式会社キーエンス製A/D変換器、デジタルリレー出力23は株式会社キーエンス製、それ以外の信号処理回路などは、全て内製して製作した電子写真用感光体特性評価装置を使用した。また、使用した電子写真用感光体ドラム1(ドラム直径100mm、ドラム全長360mm)は、株式会社リコー製のimagioMF7070に搭載された感光体と同一処方である。
なお、ここでは補正手段として、コントローラ17、A/D変換器10、デジタルリレー出力23、除電手段8の除電用光源、及び帯電手段6のスコロトロン帯電器が使用されているが、本発明の効果を奏する手段であれば、これらに限定されるものではない。
【0038】
(試験例1:ドラム振れと帯電電位(VD)との関係)
従来技術の問題点である、ドラム振れと、VDとの関係について評価した。
電子写真用感光体ドラム1の端部から軸方向に180mmの位置で、電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)でのVDを測定した。ワイヤ印加電圧(Vc)は−6.7kV、グリッド印加電圧(Vg)は−800V、電子写真用感光体ドラム1の線速は200mm/秒間に設定した。また、mitutoyo社製のテストインジケータは、電子写真用感光体ドラム1の端部から軸方向に180mmの位置、周方向は帯電器と同位置に設置して、前記8位置での電子写真用感光体ドラム1の振れ幅について測定を行った。図3に測定結果を示す。
【0039】
図3の縦軸に示すドラム振れ幅とは、電子写真用感光体ドラム1の1周内でスコロトロン帯電器と、電子写真用感光体ドラム1との距離が最も離れた位置における値を基準値(0)とし、基準値に対して電子写真用感光体ドラム1の径方向に電子写真用感光体ドラム1が変動した距離のことである。したがって、ドラム振れ幅が増大すると、スコロトロン帯電器と電子写真用感光体ドラム1との距離が減少する。図3より、ドラム振れ幅の波形とVDの波形は大変似た変化を示していた。ドラム振れ幅が増大するにつれて、即ち、スコロトロン帯電器と電子写真用感光体ドラム1との距離が減少するにつれて、VDが増加していた。また、ドラム振れ幅の最大値160μmに対して、帯電電位偏差(ΔVD)は24Vであった。このように、ドラム振れは帯電電位に大きく影響を与えることが確認された。
【0040】
(比較例1、実施例1a及び1b:Vcの変化によるΔVDの抑制)
電子写真用感光体ドラム1の1周内のVDの測定は、比較例1、実施例1a及び1bともに、電子写真用感光体ドラム1の端部から軸方向に180mmの位置で行った。また、Vgは−800Vで一定とし、電子写真用感光体ドラム1の線速は200mm/秒間に設定した。電子写真用感光体ドラム1の帯電電位の目標値(VD)は−800Vとした。
【0041】
<比較例1>
比較例1では、印加電圧としてVcを一定にして電子写真用感光体ドラム1を帯電させ、電子写真用感光体ドラム1の1周内のVDを測定した。
具体的には、Vc=−6.7kVの一定条件で電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)でそれぞれのVDを測定した。その結果を図4に示す。
【0042】
<実施例1a>
実施例1aでは、印加電圧(Vc)を変化させて電子写真用感光体ドラム1を帯電させ、電子写真用感光体ドラム1の1周内のVDを測定し、電子写真用感光体ドラム1の1周内の位置に応じて、電子写真用感光体ドラム1の帯電電位の目標値をVD=−800Vとするために最適なVcを求め、算出したVcにより電子写真用感光体ドラム1を再帯電した。
具体的には、Vc=−6kV、−6.5kV、及び−7kVの各条件で電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、電子写真用感光体ドラム1の1周内の4位置(40°、120°、200°、及び280°)でそれぞれのVDを測定した。
図5は40°の位置におけるVcとVDとの関係を表す1次関数を求めるためのグラフである。周方向各位置で同様にして、1次関数を求めてVD=−800VとなるようなVcを算出した。求めた1次関数及びVcを表1に示す。
【0043】
【表1】

表1より、周方向の位置によって、VD=−800Vにするのに必要となるVcの値が異なっていた。
【0044】
除電用光源で除電を行った後、算出したVc用いて、位置に応じてVcを変化させ、以下のように再帯電した。
40°以上120°未満の位置では40°の位置で算出したVc=−6.48kV
120°以上200°未満の位置では120°の位置で算出したVc=−6.94kV
200°以上280°未満の位置では200°の位置で算出したVc=−6.41kV
280°以上320°以下の位置では280°の位置で算出したVc=−6.55kV
前記再帯電後に測定した電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)のVDを図4に示す。
【0045】
<実施例1b>
実施例1bでは、実施例1aと同様の方法で最適なVcを求め、算出したVcにより電子写真用感光体ドラム1を再帯電した。この際、最適なVcを求める位置を実施例1aよりも増やすことで、電子写真用感光体ドラム1のΔVDを更に抑制できるか否かを確認した。
具体的には、Vc=−6kV、−6.5kV、及び−7kVの各条件で電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)でそれぞれのVDを測定した。測定したデータから各位置におけるVcとVDとの関係を表す1次関数を求め、その1次関数からVD=−800VとなるようなVcを算出した。各位置において求めた1次関数及びVcを表2に示す。
【0046】
【表2】

表2より、実施例1aと同様に、周方向の位置によって、VD=−800Vにするのに必要となるVcの値が異なっていた。
【0047】
除電後に、算出したVcを用いて、位置に応じてVcを変化させ、以下のように再帯電した。
40°以上80°未満の位置では40°の位置で算出したVc=−6.48kV
80°以上120°未満の位置では80°の位置で算出したVc=−6.53kV
120°以上160°未満の位置では120°の位置で算出したVc=−6.94kV
160°以上200°未満の位置では160°の位置で算出したVc=−6.56kV
200°以上240°未満の位置では200°の位置で算出したVc=−6.41kV
240°以上280°未満の位置では240°の位置で算出したVc=−6.41kV
280°以上320°未満の位置では280°の位置で算出したVc=−6.55kV
320°の位置では320°の位置で算出したVc=6.42kV
前記再帯電後に測定した電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)のVDを図4に示す。
【0048】
比較例1、実施例1a及び1bの各例について電子写真用感光体ドラム1の1周内のΔVDを算出したものを表3に示す。表3より、実施例1aでは、比較例1に比べてΔVDが6V(約25%)減少していた。この結果から位置毎に適したVcで帯電を行うことで、周方向で生じるΔVDを抑制可能であることが認められた。また、実施例1bでは、実施例1aに比べてΔVDが16V(約89%)減少しており、VcによるVD補正を行う位置を増やすことにより、電子写真用感光体ドラム1の周方向のVDの制御性が向上することが認められた。
【0049】
【表3】

【0050】
(比較例2、実施例2a及び2b:Vgの変化によるΔVDの抑制)
電子写真用感光体ドラム1の1周内のVDの測定は、比較例2、実施例2a及び2bともに、電子写真用感光体ドラム1の端部から軸方向に180mmの位置で行った。また、Vcは−6.5kVで一定とし、電子写真用感光体ドラム1の線速は200mm/秒間に設定した。電子写真用感光体ドラム1の帯電電位の目標値(VD)は−800Vとした。
【0051】
<比較例2>
比較例2では、印加電圧としてVgを一定にして電子写真用感光体ドラム1を帯電させ、電子写真用感光体ドラム1の1周内のVDを測定した。
具体的には、Vg=−807Vの一定条件で電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、電子写真用感光体ドラム1の1周内8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)でそれぞれのVDを測定した。その結果を図6に示す。
【0052】
<実施例2a>
実施例2aでは、Vgを変化させて電子写真用感光体ドラム1を帯電させ、電子写真用感光体ドラム1の1周内のVDを測定し、電子写真用感光体ドラム1の1周内の位置に応じて、電子写真用感光体ドラム1の帯電電位の目標値をVD=−800Vとするために最適なVgを求め、算出したVgにより電子写真用感光体ドラム1を再帯電した。
具体的には、Vg=−750V、−800V、及び−850Vの各条件で電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、1周内の4位置(40°、120°、200°、及び280°)でそれぞれのVDを測定した。
図7は40°の位置におけるVgとVDとの関係を表す1次関数を求めるためのグラフである。周方向各位置で同様にして、1次関数を求めてVD=−800VとなるようなVcを算出した。求めた1次関数及びVgを表4に示す。
【0053】
【表4】

表4より、周方向の位置によって、VD=−800Vにするのに必要となるVgの値が異なっていた。
【0054】
除電用光源で除電を行い、算出したVg用いて、位置ごとにVgを変化させ、以下のように再帯電した。
40°以上120°未満の位置では、40°の位置で算出したVg=−794V
120°以上200°未満の位置では、120°の位置で算出したVg=−799V
200°以上280°未満の位置では、200°の位置で算出したVg=−802V
280°以上320°以下の位置では、280°の位置で算出したVg=−795V
前記再帯電後に測定した電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)のVDを図6に示す。
【0055】
<実施例2b>
実施例2bでは、実施例2aと同様の方法で最適なVgを求め、算出したVgにより電子写真用感光体ドラム1を再帯電した。この際、最適なVgを求める位置を実施例2aよりも増やすことで、電子写真用感光体ドラム1のΔVDを更に抑制できるか否かを確認した。
具体的には、Vg=−750V、−800V、及び−850Vの各条件で電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)でそれぞれのVDを測定した。測定したデータから各位置におけるVgとVDとの関係を表す1次関数を求め、その1次関数からVD=−800VとなるようなVgを算出した。各位置において求めた1次関数及びVgを表5に示す。
【0056】
【表5】

実施例2aと同様に、周方向の位置によって、VD=-800Vにするのに必要となるVgの値が異なっていた。
【0057】
除電後に、算出したVgを用いて、位置に応じてVgを変化させ、以下のように再帯電した。
40°以上80°未満の位置では40°の位置で算出したVg=−794V
80°以上120°未満の位置では80°の位置で算出したVg=−797V
120°以上160°未満の位置では120°の位置で算出したVg=−799V
160°以上200°未満の位置では160°の位置で算出したVg=−822V
200°以上240°未満の位置では200°の位置で算出したVg=−802V
240°以上280°未満の位置では240°の位置で算出したVg=−794V
280°以上320°未満の位置では280°の位置で算出したVg=−795V
320°の位置では320°の位置で算出したVg=−801V
前記再帯電後に測定した電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)のVDを図6に示す。
【0058】
比較例2、実施例2a及び2bの各例について電子写真用感光体ドラム1の1周内のΔVDを算出したものを表6に示す。表6より、実施例2aでは、比較例2に比べてΔVDが4V(約16%)減少していた。この結果から、位置毎に適したVgで帯電を行うことで、周方向で生じるΔVDを抑制可能であることが認められた。また、実施例2bでは、実施例2aに比べてΔVDが19V(約90%)減少しており、VgによるVD補正を行う位置を増やすことにより、電子写真用感光体ドラム1の周方向のVDの制御性が向上することが認められた。
【0059】
【表6】

【0060】
(比較例3、実施例3a及び3b:電子写真用感光体ドラム内の軸方向の位置と、Vcの変化によるΔVDの抑制との関係)
以下の比較例3、実施例3a及び3bは、電子写真用感光体ドラム1の一方の端部から軸方向に50mmの位置で行った以外は、比較例1、実施例1a及び1bと同様の方法でVDの測定を行い、電子写真用感光体ドラム1内の軸方向の位置によっても、VDを目標値にするのに必要なVcの値が異なるか否か、また、電子写真用感光体ドラム1内の軸方向の位置の違いにより、ΔVDの抑制効果に変化があるか否かを確認した。
【0061】
<比較例3>
Vc=−6.7kVの一定条件で電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)でそれぞれのVDを測定した。その結果を図8に示す。
【0062】
<実施例3a>
実施例1aと同様の手順で、電子写真用感光体ドラム1の1周内の4位置(40°、120°、200°、及び280°)でそれぞれのVDを測定し、表7のような1次関数及びVcを算出し、算出したVcを用いて再帯電した。再帯電後に測定した電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)のVDを図8に示す。
【0063】
【表7】

【0064】
(実施例3b)
実施例1bと同様の手順で、電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)でそれぞれのVDを測定し、表8のような1次関数及びVcを算出し、算出したVcを用いて再帯電した。再帯電後に測定した電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)のVDを図8に示す。
【0065】
【表8】

【0066】
表1と表7、及び表2と表8とをそれぞれ比較すると明らかなように、電子写真用感光体ドラム1の1周方向位置が同じでも、軸方向の位置が異なることによって、VDを目標値にするのに必要となるVcの値が異なっていた。したがって、電子写真用感光体ドラム1の全領域を所望のVDとするには、軸方向の位置に応じて、Vcを変化させて帯電を行う必要があることが示唆された。
【0067】
また、比較例3、実施例3a及び3bの各例について電子写真用感光体ドラム1の1周内のΔVDを算出したものを表9に示す。表9より、実施例3aでは、比較例3に比べてΔVDが3V(約20%)減少していた。また、実施例3bでは、実施例3aに比べてΔVDが11V(約92%)減少していた。この結果から、位置毎に適したVcで帯電を行うことで、周方向で生じるΔVDを抑制可能であること、また電子写真用感光体ドラム1の軸方向位置が変化しても、ΔVDの抑制効果は変化しないことが認められた。更に、VcによるVD補正を行う位置を増やすことにより、電子写真用感光体ドラム1の周方向のVD制御性が向上することが認められた。
【0068】
【表9】

【0069】
(比較例4、実施例4a及び4b:電子写真用感光体ドラム内の軸方向の位置と、Vgの変化によるΔVDの抑制との関係)
以下の比較例4、実施例4a及び4bは、電子写真用感光体ドラム1の一方の端部から軸方向に50mmの位置で行った以外は、比較例2、実施例2a及び2bと同様の方法でVDの測定を行い、電子写真用感光体ドラム1内の軸方向の位置によっても、VDを目標値にするのに必要なVgの値が異なるか否か、また、電子写真用感光体ドラム1内の軸方向の位置の違いにより、ΔVDの抑制効果に変化があるか否かを確認した。
【0070】
<比較例4>
Vg=−810Vの一定条件で電子写真用感光体ドラム1の1周分の帯電を行い、電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)でそれぞれのVDを測定した。その結果を図9に示す。
【0071】
(実施例4a)
実施例2aと同様の手順で、電子写真用感光体ドラム1の1周内の4位置(40°、120°、200°、及び280°)それぞれのVDを測定し、表10のような1次関数及びVgを算出し、算出したVgを用いて再帯電した。再帯電後に測定した電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)のVDを図9に示す。
【0072】
【表10】

【0073】
(実施例4b)
実施例2bと同様の手順で、電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)それぞれのVDを測定し、表11のような1次関数及びVgを算出し、算出したVgを用いて再帯電した。再帯電後に測定した電子写真用感光体ドラム1の1周内の8位置(40°、80°、120°、160°、200°、240°、280°、及び320°)のVDを図9に示す。
【0074】
【表11】

【0075】
表4と表10、及び表5と表11とをそれぞれ比較すると明らかなように、電子写真用電子写真用感光体ドラム1の周方向の位置が同じでも、軸方向の位置が異なることによって、VDを目標値にするのに必要となるVgの値が異なっていた。したがって、電子写真用感光体ドラム1の全領域を所望のVDとするには、軸方向の位置に応じて、Vgを変化させて帯電を行う必要があることが示唆された。
【0076】
また、比較例4、実施例4a及び4bの各例について電子写真用感光体ドラム1の1周内のΔVDを算出したものを表12に示す。表12より、実施例4aでは、比較例4に比べてΔVDが4V(約24%)減少していた。また、実施例4bでは、実施例4aに比べてΔVDが10V(約77%)減少していた。この結果から、位置毎に適したVgで帯電を行うことで、周方向で生じるΔVDを抑制可能であること、また電子写真用感光体ドラム1の軸方向位置が変化しても、ΔVDの抑制効果は変化しないことが認められた。更に、VgによるVD補正を行う位置を増やすことにより、電子写真用感光体ドラム1の周方向のVD制御性が向上することが認められた。
【0077】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の電位制御装置は、電子写真用感光体ドラムの帯電電位の補正することにより、前記電子写真用感光体ドラムの全領域における帯電電位偏差を抑制することができるため、前記電子写真用感光体ドラムの特性評価装置に好適に利用可能である。
また、本発明の電子写真用感光体特性評価装置は、前記電位制御装置を有し、前記電子写真用感光体のドラム振れによる帯電電位偏差を抑制することができ、測定誤差を生じることがなく、露光後電位から前記電子写真用感光体の全体の特性を精度よく評価することができるため、レーザプリンタ、複写機等の画像形成装置、画像形成方法などに使用される電子写真用感光体の特性の評価に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 電子写真用感光体ドラム
2 露光手段
3 表面電位計プローブ
4 表面電位計
5 信号処理回路
6 帯電手段
7 高圧電源
8 除電手段
9 信号処理回路
10 AD変換器
11 ロータリーエンコーダ
12 電源
13 表面電位計プローブ
14 表面電位計
15 電源スイッチ
16 モータ
17 コントローラ
18 主軸
19 ベルト
20 ドラムチャック治具
21 手前側(電子写真用感光体ドラム1の一端側)の面板
22 奥側(電子写真用感光体ドラム1の他端側)の面板
23 デジタルリレー出力
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開平4−26852号公報
【特許文献2】特開平11−184215号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも帯電手段及び表面電位検出手段を有し、
電子写真用感光体における周方向の複数の位置において、前記帯電手段への印加電圧と、前記表面電位検出手段により検出された前記電子写真用感光体における帯電電位との関係から導かれる1次関数を算出し、
前記1次関数により、前記複数の各位置において、前記帯電電位の目標値に対応する印加電圧を算出し、
前記複数の各位置において、前記算出した前記印加電圧で前記帯電手段により帯電をさせる補正手段を有することを特徴とする電位制御装置。
【請求項2】
帯電手段が、コロナ帯電方式であり、ワイヤ印加電圧と、電子写真用感光体の帯電電位との関係から1次関数を算出する請求項1に記載の電位制御装置。
【請求項3】
帯電手段が、スコロトロン帯電方式であり、グリッド印加電圧と、電子写真用感光体の帯電電位との関係から1次関数を算出する請求項1に記載の電位制御装置。
【請求項4】
補正手段により補正が行われた後、電子写真用感光体の1周内の帯電電位の最大値と最小値との差が目標値を超えた場合、前記電子写真用感光体の周方向で補正を行う位置を増やし、再度前記電子写真用感光体の帯電電位の補正が行われる請求項1から3のいずれかに記載の電位制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電位制御装置を有することを特徴とする電子写真用感光体特性評価装置。
【請求項6】
帯電手段を電子写真用感光体の軸方向に移動させる移動手段を有し、
補正手段が、前記電子写真用感光体の軸方向の任意の位置において、前記電子写真用感光体における周方向の帯電電位の補正を行う請求項5に記載の電子写真用感光体特性評価装置。
【請求項7】
電子写真用感光体における周方向の複数の位置において、帯電手段の印加電圧と、表面電位検出手段により検出された前記電子写真用感光体における帯電電位との関係から導かれる1次関数を算出し、
前記1次関数により、前記複数の各位置において、前記帯電電位の目標値に対応する印加電圧を算出し、
補正手段により、前記複数の各位置において、前記算出した前記目標値で前記帯電手段により帯電をさせて補正することを特徴とする電位制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−48300(P2011−48300A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198844(P2009−198844)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】