説明

電位治療装置

【目的】 電位治療装置から過電圧等が生じてもすぐにこれらの影響を検知し、人体に過電流を与えないようにする。
【構成】 変圧器4やAC100V電源11等の故障で被検体に過電圧が印加された場合には電床7から被検体を介して接地面に漏洩電流が生じる。この漏洩電流はAC100Vラインを通って抵抗R2により電圧値として検出されて、比較回路9により基準電圧と比較され、この基準電圧よりも越えている場合にはリレー12を作動させて被検体への印加電圧を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電圧を被検体に印加して治療を施す電位治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、電位治療装置は人体の全体に交流電圧を印加したり、または人体の局部に交流電圧を印加して凝りや便秘等の治療を行うものである。
【0003】この電位治療装置は、図2に示すように本体21と電床29、局部導子30、31とからなり、本体21は、操作部22、表示部23、制御部24、変圧器25、26及び保護抵抗27、28等から構成されている。
【0004】電床29はマット状のものであり、この上に人が座った状態や寝た状態で変圧器25からの交流の電圧(約3000V〜約9000V)を電床29を介して人体に与える。
【0005】また、ペン形の局部導子30やローラ形の局部導子31を人体の治療を行いたい部位の形状に合わせて使い分けることにより、人体の局部に変圧器26からの交流の電圧(約200V〜約800V)を局部導子30、31を介して人体に与える。
【0006】人体への印加電圧を変更したい場合には、操作部22から印加電圧を設定することにより制御部24で各変圧器25、26の一次側のタップを切り換え、2次側の出力を可変とすることができる。
【0007】表示部23では、人体への印加電圧の大きさや印加電圧の出力時間の残り時間等が表示される。
【0008】ところで、電位治療においては比較的高電圧が人体に印加されるので、本体21の変圧器25、26等の故障やAC100Vラインの電源ラインの電圧変動等により規定値よりもさらに高い電圧が発生した場合には人体に危険を及ぼすことになる。
【0009】このため、規定値以上の高電圧が発生した場合でも人体に危険を及ぼさないように変圧器25と電床29との間及び変圧器26と局部導子30、31との間に電流制限用の保護抵抗27、28を挿入して、過電流が人体に流れないようにしている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、電流制限用の保護抵抗を設けただけでは電流の増加をある程度までは防ぐことができるが、非常に高い電圧等が印加された場合には電流制限用の抵抗が存在しても過電流を防ぐことができないという問題があった。
【0011】本発明は上記の問題点を解決するために創案されたものであり、装置から過電圧が生じてもすぐにこれらの影響を検知し、人体に過電流を与えないような安全な電位治療装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の電位治療装置は、電圧発生回路の電圧入力側と接地ラインとの間に設けられた抵抗と、前記抵抗で検出される電圧と所定の電圧値とを比較する比較回路と、前記抵抗で検出される電圧が所定の電圧値を越えたときには被検体に印加する電圧を遮断する遮断回路とを設けたことを特徴としている。
【0013】
【作用】電圧発生回路の故障等で被検体に過電圧が印加された場合には被検体に電圧を印加するための電極から被検体を介して接地面に大きな漏洩電流が生じる。この漏洩電流はACラインを通って電圧発生回路の電圧入力側と接地ラインとの間に設けられた抵抗により電圧値として検出され、この電圧値が比較回路により所定の電圧と比較されてこの所定の電圧よりも越えている場合には遮断回路により被検体への印加電圧が遮断される。
【0014】
【実施例】本発明の一実施例を、以下、図1に基づいて説明する。図1は本発明の電位治療装置の主要構成部を示している。1は電位及び局部電位の出力時間の選択を行ったり、電位の大きさの選択を行ったりする操作部、2は時間や電位強度等の表示を行う表示部、3は装置全体の制御を行う制御部、4は電圧発生回路としての変圧器、5は制御部3等にDC電源を供給するための電源、6及び12はリレー、7は電床、8はサージやノイズを除去するためのフィルタ、9は比較器、10は自己保持回路、11はAC100V電源、13はACライン接続部、R1、R2、R3は抵抗である。
【0015】次に動作について説明する。まず電位治療装置を動作させるためAC100V電源11と接続されているコンセント等にACライン接続部13を接続する。
【0016】そして、装置のON/OFFスイッチ等により装置全体にAC100Vが供給されると、動作可能となる。次に、操作部1のタイマーボタン1aにより出力時間を、出力設定ボタン1bにより電位の大きさの設定を行なう。この設定ボタンは一度押す度にパターンが切り換わるようになっており、例えばタイマーボタン1aによって20分、30分、40分、50分、1時間の出力時間を順次変化させることができる。
【0017】また、出力設定ボタン1bを繰り返して押せば、順次3000V、6000V、9000Vの出力電圧を切り換えることができる。
【0018】このような設定が終わり、スタート・ストップボタン1cを押せば、設定されたパラメータに従って制御部3が制御を行い、もう一度このボタンを押せば強制的に出力電圧がOFFとなる。
【0019】リレー6の切り換えタップは上が変圧器4の出力電圧3000Vに、中間が6000Vに、下が9000Vに対応している。
【0020】例えば、6000Vの電位出力が出力設定ボタン1bにより選択されているとすると、制御部3はリレー6のタップを切り換えて(上から2番目のタップがAC100Vラインに接続される)変圧器4の出力電位を6000Vにする。このようにして作り出された電圧が電床7に供給される。
【0021】電床7の上には治療を受ける人間が座った状態か寝た状態で存在しており、この人体に6000Vの高電圧が印加される。そして、設定された高電圧の印加時間の残り時間等が表示部2に表示される。
【0022】ところで、通常装置で設定される電圧が人体に影響を与えない範囲で保たれていればよいが、変圧器4の故障やAC100Vラインの電圧変動等で過電圧が発生し、人体に過電流が流れると危険な状態になるので、電流制限用抵抗R3を設けて過電流が流れないようにしている。しかし、この電流制限用抵抗R3でも過電流を防ぎきれないときには次のようにして人体への危険を防止している。
【0023】人体からの漏洩電流は接地面、AC100V電源11を経由してACライン接続部13の接地ライン側へ戻ってくる。リレー12は通常閉じているので、この漏洩電流は抵抗R1、R2を経由して変圧器4の2次側を通り、電流制限用抵抗R3から電床7に流れ込む。
【0024】この漏洩電流により抵抗R2の両端には電圧が発生する。抵抗R2の両端に発生した電圧はフィルタ8を通して比較器9に入力される。比較器9には制御部3よりあらかじめ設定された基準電圧Vrが入力されており、この基準電圧Vrよりも比較器9に入力された比較電圧Vsのほうが大きければ、リレー12を駆動するためのリレー駆動信号を自己保持回路10へ送出し、自己保持回路10はリレー駆動信号をラッチするとともに、リレー12をOFFにし、AC100Vラインと変圧器4との接続を遮断し人体に対する高電圧出力を停止させる。
【0025】このとき、自己保持回路10は、外部から強制的にリセットされないかぎりはリレー駆動信号をリレー12に対して出し続け、リレー12を再度ONできないようにしているので安全性が高い。強制的にリセットする場合には、操作部1に設けられたリセットボタン1dを押せば制御部3より自己保持回路12に対してリセット信号が出力される。
【0026】フィルタ8は、変圧器4の出力を変更するためリレー6のタップを切り換えたときに発生するサージ電圧や、ACラインに混入するノイズによる比較器9の誤動作を防ぐためのものであり、このフィルタ8によりサージ電圧やノイズが除去される。
【0027】上述の実施例では基準電圧Vrを直流電圧とし、比較器に入力される比較電圧Vsは交流電圧であるので、基準電圧Vrと比較電圧Vsのピーク値を比較して比較電圧Vsのピーク値が基準電圧Vrを越えたときにリレー12をOFFとするようにしているが、比較器9とフィルタ8の間に全波整流回路を設けて比較電圧Vsを直流電圧レベルに変換して基準電圧Vrと比較するようにしても良い。さらに、サージ電圧やノイズを除去した後の定常電圧だけを見るのではなく、ある周期幅のサージ電圧やノイズは通すようにフィルタ8をバンドパスフィルタ等にして、異常状態をすばやく察知するようにしても良い。
【0028】上記実施例ではリレー12を用いて電源を遮断したが、リレー6をOFFにしてを変圧器出力を遮断するようにしても良い。
【0029】また、以上の実施例では電位治療装置に電床が接続されている例を述べたが、その他に局部導子が接続されている場合でも上記と同様な回路構成を用いることによって、人体への危険を防止する安全回路として動作させることができる。
【0030】
【効果】以上説明したように、本発明の電位治療装置によれば装置のアースラインに戻ってくる漏洩電流を電圧に変換して基準電圧と比較し、基準電圧を越えた場合には人体に与える電圧を遮断するようにしているので、電圧発生回路の故障やAC100Vの電源ラインの電圧変動等で過電圧が生じた場合、瞬時に人体への印加電圧を遮断できるので、安全性を高めることができる。
【0031】また、人体への印加電圧は高電圧であるが、この高電圧出力を遮断する回路は検出電圧が低電圧であるので、回路素子に耐圧等の特別な仕様を要求する必要がなく、回路構成が簡単、小型なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の電位治療装置を示す図である。
【図2】従来の電位治療装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電圧発生回路と、被検体に前記電圧発生回路からの電圧を印加するための電極と被検体の全部または局部に電圧を印加して治療を施す電位治療装置において、前記電圧発生回路の電圧入力側と接地ラインとの間に設けられた抵抗と、前記抵抗で検出される電圧と所定の電圧値とを比較する比較回路と、前記抵抗で検出される電圧が所定の電圧値を越えたときには被検体に印加する電圧を遮断する遮断回路とを設けたことを特徴とする電位治療装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平7−67970
【公開日】平成7年(1995)3月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−217833
【出願日】平成5年(1993)9月2日
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)