説明

電力伝送用アンテナ、送電装置および非接触型電力伝送装置

【課題】送電装置に使用された場合に、受電装置側のアンテナの位置に拘わらず、受電装置側に電力を確実に伝送し得る電力伝送用アンテナを提供する。
【解決手段】導線6を1ターンまたは2ターン以上巻回して構成した送信アンテナ12の一部を構成する辺部A1,A5が、送信アンテナ12の残りの部位を構成する他の辺部A2,A3,A4を含む平面PL1と交差する平面PL2内に位置すると共に、全体として非面対称の構造に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送に使用される電力伝送用アンテナ、この電力伝送用アンテナを備えた送電装置、およびこの送電装置と受電装置とを備えた非接触型電力伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の非接触型電力伝送装置として、下記特許文献1に開示された非接触電力伝送装置が知られている。この非接触電力伝送装置では、送電装置に使用される送信アンテナ(電力伝送用アンテナ)、および受電装置に使用される受信アンテナとして、平面状のコイルが使用されている。この平面状のコイルは、導線を複数ターン巻回することにより、ループアンテナとして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−66336号公報(第4頁、第2−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の非接触型電力伝送装置には、以下の解決すべき課題が存在している。すなわち、この非接触型電力伝送装置では、送電装置および受電装置に使用される送信および受信用のアンテナとして、平面状のコイルが使用されているため、それぞれのアンテナが互いに平行な状態で対向して配設されているときには、電力伝送効率が良好な状態で電力が伝送されるが、一方のアンテナに対して他方のアンテナが特定の位置に配設されているとき、具体的には、送電装置側の送信アンテナを面対称となるように2つに分断する平面内に受電装置側の受信アンテナが位置しているときには、両電力用コイル間の結合係数が限りなく零に近くなるため、電力伝送効率が大幅に低下する。すなわち、この非接触型電力伝送装置には、送信アンテナに対する受信アンテナの位置によっては、電力伝送効率が大幅に低下する場合が生じるという解決すべき課題が存在している。この課題は、電磁誘導方式での電力伝送において生じるのは勿論のこと、両コイルの位置ずれに対する許容度の高い磁界共鳴方式での電力伝送においても生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、送電装置に使用された場合に、受電装置側のアンテナの位置に拘わらず、受電装置側に電力を確実に伝送し得る電力伝送用アンテナを提供することを主目的とする。また、この電力伝送用アンテナを備えた送電装置、およびこの送電装置を備えた非接触型電力伝送装置を提供することを他の主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電力伝送用アンテナは、導線を1ターンまたは2ターン以上巻回して構成した環状コイルを構成する1ターン分の前記導線の一部を構成する1以上の辺部が、当該1ターン分の導線の残りの部位を構成する他の辺部を含む平面および曲面のいずれかの第1面と交差する平面および曲面のいずれかの第2面内に位置すると共に、全体として非面対称の構造に構成されている。
【0007】
また、請求項2記載の電力伝送用アンテナは、請求項1記載の電力伝送用アンテナにおいて、前記環状コイルは前記導線を2ターン以上重ねて巻回して構成され、前記環状コイルの一部を構成する1以上の辺部が、当該環状コイルの残りの部位を構成する他の辺部を含む前記第1面と交差する前記第2面内に位置するように構成されている。
【0008】
また、請求項3記載の送電装置は、請求項1または2記載の電力伝送用アンテナと、交流信号を発生して前記電力伝送用アンテナに出力する信号発生部と、前記電力伝送用アンテナと前記信号発生部との間に配設されて当該電力伝送用アンテナおよび当該信号発生部を整合させる整合部とを備えている。
【0009】
また、請求項4記載の非接触型電力伝送装置は、請求項3記載の送電装置と、前記送電装置の前記電力伝送用アンテナと電磁結合して交流電圧を発生させる受電用アンテナ、および当該受電用アンテナに発生した前記交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧を生成する直流電圧生成部を有する受電装置とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の電力伝送用アンテナでは、1ターン分の導線について、互いに交差する第1面および第2面に含まれる辺部を備え、かつ電力伝送用アンテナ全体として非面対称の構造に構成されているため、受電装置の向きや位置に大きな影響を受けることなく、常に一定以上の結合度(中程度以上の結合度)で受電装置の受信アンテナと結合される。したがって、この電力伝送用アンテナによれば、受電装置の向きや位置に起因して、受電装置の受信アンテナとの結合度が極端に小さくなるといった事態の発生を確実に回避することができる。
【0011】
請求項2記載の電力伝送用アンテナでは、導線を2ターン以上重ねて巻回して構成された環状コイルの一部を構成する1以上の辺部が、この環状コイルの残りの部位を構成する他の辺部を含む第1面と交差する第2面内に位置して構成されているため、請求項1記載の電力伝送用アンテナと同様にして、受電装置の向きや位置に大きな影響を受けることなく、常に一定以上の結合度(中程度以上の結合度)で受電装置の受信アンテナと結合されることから、受電装置の向きや位置に起因して、受電装置の受信アンテナとの結合度が極端に小さくなるといった事態の発生を確実に回避することができる。
【0012】
請求項3記載の送電装置、およびこの送電装置を備えた請求項4記載の非接触型電力伝送装置によれば、電力伝送用アンテナを周囲に形成した部屋内において(つまり、電力伝送用アンテナの近傍の空間内において)、受信アンテナを内蔵する携帯端末などの受電装置の向きや位置を変化させたとしても、受電装置によって受電される電力が極端に低下するといった事態の発生を確実に回避しつつ、受電装置に対して送電電力を伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】非接触型電力伝送装置1のブロック図である。
【図2】送信アンテナ12の構成を説明するための説明図である。
【図3】送電装置2の第1整合部13についての回路図である。
【図4】受電装置3の第2整合部22についての回路図である。
【図5】他の送信アンテナ12Aの構成を説明するための説明図である。
【図6】他の送信アンテナ12Bの構成を説明するための説明図である。
【図7】他の送信アンテナ12Cの構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、電力伝送用アンテナ、送電装置および非接触型電力伝送装置の実施の形態について説明する。
【0015】
図1に示す非接触型電力伝送装置(以下、単に「電力伝送装置」ともいう)1は、送電装置2および受電装置3を備え、送電装置2が受電装置3に送電し(送電装置2が送電電力を受電装置3に伝送し)、受電装置3が、送電装置2から伝送された送電電力を非接触で受電すると共に、受電した送電電力を負荷(本例ではバッテリ)4に対して供給可能に構成されている。
【0016】
本例では一例として、送電装置2は、図2に示すように、部屋5内に存在する受電装置3としての携帯端末に送電する構成のため、受電装置3は、受電した送電電力を受電装置3自体に内蔵されている負荷(バッテリ)4に供給する。
【0017】
送電装置2は、図1,2に示すように、信号発生部11、送信アンテナ12および第1整合部13を備えて構成されている。信号発生部11は、交流信号S1を発生して出力する。また、信号発生部11は、交流信号S1の出力電力値を変更可能に構成されている。具体的には、信号発生部11は、交流信号S1を規定電力値W1aで出力する状態、および交流信号S1を規定電力値W1a未満の電力値W1bで出力する状態のうちの任意の一方の状態で動作可能となっている。
【0018】
送信アンテナ12は、電力送電用アンテナであって、一例として、図2において太線で示すように、導線6を部屋5の壁面に沿って1ターンまたは重ねて2ターン以上を巻回(本例では一例として、重ねて2ターン以上を巻回。以下の送信アンテナ12A,12Bも同様)することにより、環状コイルとして構成されている。具体的には、下壁面(床)5a、上壁面(天井)5b、および4つの壁面(側壁)5c,5d,5e,5fで構成される直方体の部屋5に対して、送信アンテナ12は、2つの壁面5cおよび壁面5fの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A1、壁面5cおよび下壁面5aの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A2、この辺部A2の壁面5d側の端部から2つの壁面5dおよび壁面5eの接合部の上端に至る経路(壁面5dの対角線)に沿って配設した導線6で構成される辺部A3、壁面5eおよび上壁面5bの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A4、並びに壁面5fおよび上壁面5bの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A5で構成されている。
【0019】
また、このようにして部屋5を囲むように導線6を巻回して構成した送信アンテナ12は、送信アンテナ12の一部(環状コイルの一部)を構成する辺部A1,A5が、送信アンテナ12の残りの部位を構成する他の辺部A2,A3,A4を含む平面PL1(斜線を付した第1面としての平面)と直線L1(図2中において一点鎖線で示す直線)で交差する平面(第2面としての他の平面)PL2内に位置するように、他の辺部A2,A3,A4に対して直線L1で折曲されて構成されている。また、送信アンテナ12は、辺部A2,A3,A4で構成される部位については面対称であるが、各辺部A1,A5の互いの長さが相違するため、辺部A1,A5で構成される部位については非面対称である。このため、送信アンテナ12は、全体として非面対称の構造に構成されている。
【0020】
また、送信アンテナ12は、受電装置3に配設した後述の受信アンテナ21と電磁結合する。具体的には、送信アンテナ12は、受信アンテナ21と共に一対の共鳴器(一対の自己共振コイル)を構成し、電磁場において共鳴する。
【0021】
第1整合部13は、図1,2に示すように、送電側の整合部であって、信号発生部11と送信アンテナ12との間に配設されて(具体的には、信号発生部11と送信アンテナ12とを接続する伝送路に介装されて)、受信アンテナ21との間の距離に応じて変化する送信アンテナ12のインピーダンス(入力インピーダンス)に信号発生部11側のインピーダンスを整合させる(信号発生部11と送信アンテナ12とを整合状態に移行させる)。
【0022】
本例では、一例として、第1整合部13は、図3に示すように、送信アンテナ12に対して並列に接続した可変コンデンサ13aと、送信アンテナ12に対して直列(具体的には、送信アンテナ12および可変コンデンサ13aからなる並列回路に対して直列)に接続した可変コンデンサ13bとを備えて構成されている。この構成により、第1整合部13は、可変コンデンサ13a,13bの各静電容量が調整されることで、送信アンテナ12(詳しくは、信号発生部11側から見た送信アンテナ12の入力インピーダンス)と信号発生部11(詳しくは、送信アンテナ12側から見た信号発生部11側の出力インピーダンス)とを整合させる。
【0023】
受電装置3は、図1に示すように、受信アンテナ21、第2整合部22および整流部23を備えて構成されている。受信アンテナ21は、受電用アンテナであって、一例として、図2に示すように、円環状の平面コイルで構成されている。なお、図2では、形状が明確になるように受信アンテナ21を実線で示しているが、受信アンテナ21は実際には受電装置3の内部に配設されている。また、受信アンテナ21は、送電装置2の送信アンテナ12と電磁結合して(つまり、送信アンテナ12によって発生させられた電磁場により)、その両端間に誘導電圧V1を発生させる。
【0024】
第2整合部22は、受電側の整合部であって、受信アンテナ21と整流部23との間に配設されて(具体的には、受信アンテナ21と整流部23とを接続する伝送路に介装されて)、受信アンテナ21のインピーダンス(出力インピーダンス)と整流部23側のインピーダンスとを整合させる(受信アンテナ21と整流部23とを整合状態に移行させる)。
【0025】
本例では、一例として、第2整合部22は、図4に示すように、受信アンテナ21に対して並列に接続した可変コンデンサ22aと、受信アンテナ21に対して直列(すなわち、受信アンテナ21および可変コンデンサ22aからなる並列回路に対して直列)に接続した可変コンデンサ22bとを備え、第1整合部13と同一の回路に構成されている。この構成により、第2整合部22は、可変コンデンサ22a,22bの各静電容量が調整されることで、受信アンテナ21(詳しくは、整流部23側から見た受信アンテナ21の出力インピーダンス)と整流部23(詳しくは、受信アンテナ21側から見た整流部23の入力インピーダンス)とを整合させる。この例では、第2整合部22は、受信アンテナ21と整流部23とが整合するように、各可変コンデンサ22a,22bの静電容量が予め設定されているものとする。
【0026】
整流部23は、直流電圧生成部の一例であって、図1に示すように、受信アンテナ21に生じる誘導電圧V1を第2整合部22を介して入力すると共に、この誘導電圧V1に基づいて、バッテリ4に供給する直流電圧Voを生成する。具体的には、整流部23は、整流回路および平滑回路で構成されて、第2整合部22から出力される誘導電圧(交流電圧)V1を整流・平滑して直流電圧Voを生成すると共に、生成した直流電圧Voをバッテリ4に供給(出力)する。また、整流部23に代えて、例えば、AC−DCコンバータで電圧生成部を構成することもできる。
【0027】
次に、電力伝送装置1の電力伝送動作について説明する。
【0028】
まず、電力伝送装置1では、規定電力値W1aでの電力伝送に先立ち、送電装置2に対する整合調整が実施される。
【0029】
この整合調整では、まず、送電装置2の信号発生部11に対して、電力値W1b(例えば、1W)の電力で交流信号S1を出力させる(交流信号S1を小電力で出力させる)。これにより、第1整合部13および送信アンテナ12を介して送電装置2から受電装置3に対して送電電力が出力される。受電装置3では、送信アンテナ12と電磁結合する受信アンテナ21に誘導電圧V1が発生するため、整流部23は、第2整合部22を介して出力されるこの誘導電圧V1を整流することにより、直流電圧Voの生成を開始する。この直流電圧Voは、バッテリ4に供給される。
【0030】
この状態では、第1整合部13が無調整であるため、送電装置2では、信号発生部11と送信アンテナ12との間の整合が取れていない(不整合状態にある)。このため、不整合状態にあることに起因して、送電装置2は、電力損失の発生する状態となっている。しかしながら、信号発生部11から出力される交流信号S1の電力が小電力(電力値W1b)であるため、不整合状態にある送電装置2において発生する損失は、極めて小さい状態に抑えられている。
【0031】
次いで、第1整合部13に対する操作を行うことにより、信号発生部11と送信アンテナ12とを整合させる送電側整合調整を実施する。この送電側整合調整に際しては、例えば、信号発生部11と第1整合部13との間に不図示の反射電力計測器を介装して、この反射電力計測器で計測される第1整合部13からの反射電力値が予め規定したしきい値以下となるように(整合状態となるように)、第1整合部13の各可変コンデンサ13a,13bの静電容量を調整する。
【0032】
この送電側整合調整の実施により、送電装置2では、信号発生部11および送信アンテナ12が整合状態となることから、送電装置2は、送電動作中に発生する電力損失が極めて小さい状態に移行する。これにより、送電装置2から受電装置3に対して、電力値W1bの送電電力が損失の少ない状態で伝送され、受電装置3は、この送電電力に基づいて電力値W1bの直流電圧Voを生成して、バッテリ4に供給する。
【0033】
最後に、送電装置2の信号発生部11に対して、交流信号S1を規定電力値W1a(例えば、100W)で出力させる。この場合、送電装置2では、信号発生部11および送信アンテナ12が既に整合状態にあることから、信号発生部11から出力される交流信号S1の電力がほぼそのまま(損失の極めて少ない状態で)、送信アンテナ12から送電電力として送電される。
【0034】
また、この送電装置2では、部屋5の周囲に配設した送信アンテナ12は、一般的な平面状の環状コイル(1つの平面内にすべての部位が位置する環状コイル)ではなく、送信アンテナ12の一部を構成する辺部A1,A5が送信アンテナ12の残りの部位を構成する他の辺部A2,A3,A4を含む平面PL1と交差する平面PL2内に位置する構成の非平面状の環状コイルであって、かつ各辺部A1,A5の長さが相違することから全体として非面対称の構造に構成されている。
【0035】
このため、一般的な平面状の環状コイルで構成した送信アンテナでは、部屋5の中で受電装置3を回転させたり、移動させたりしたときに、特定の向きや位置において受信アンテナ21との結合度が極めて大きくなるものの、他の特定の向きや特定の位置において受信アンテナ21との結合度が極端に小さくなるといった状況に陥る(つまり、送信アンテナは強い指向性を持つ)。これに対して、上記のように構成した送信アンテナ12では、異なる平面PL1,PL2に含まれる辺部を備え、かつ全体として非面対称の構造に構成されているため、受電装置3の向きや位置に大きな影響を受けることなく、常に一定以上の結合度(中程度以上の結合度)で受電装置3の受信アンテナ21と結合される。つまり、送信アンテナ12は、いわゆる無指向性に近い特性を有する。
【0036】
これにより、この送信アンテナ12によれば、受電装置3の向きや位置に起因して、受電装置3の受信アンテナ21との結合度が極端に小さくなるといった事態の発生を確実に回避することができる。
【0037】
また、この送信アンテナ12を備えた送電装置2、およびこの送電装置2を備えた電力伝送装置1によれば、送信アンテナ12を周囲に形成した部屋5内において(つまり、送信アンテナ12の近傍の空間内において)、受信アンテナ21を内蔵する携帯端末などの受電装置3の向きや位置を変化させたとしても、受電装置3によって受電される電力が極端に低下するといった事態の発生を確実に回避しつつ、受電装置3に対して送電電力を伝送することができる。
【0038】
なお、異なる2つの平面PL1,PL2に含まれる辺部を備えている送信アンテナ12について説明したが、送信アンテナでは、3つ以上の平面に含まれる辺部を備えた構成を採用することもできる。一例として3つの平面に含まれる辺部を備えた送信アンテナ12Aについて図5を参照して説明する。
【0039】
送信アンテナ12Aは、部屋5の2つの壁面5cおよび壁面5fの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A1、壁面5cおよび下壁面5aの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A2、この辺部A2の壁面5d側の端部から2つの壁面5dおよび壁面5eの接合部の上端に至る経路(壁面5dの対角線)に沿って配設した導線6で構成される辺部A3、壁面5dおよび壁面5eの接合部の上端から壁面5eおよび下壁面5aの接合部における壁面5f寄りの部位(点)Bに至る経路に沿って配設した導線6で構成される辺部A4、この部位Bから壁面5eおよび壁面5fの接合部の下端に至る経路に沿って配設した導線6で構成される辺部A5、壁面5eおよび壁面5fの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A6、並びに壁面5fおよび上壁面5bの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A7を備えている。
【0040】
また、このようにして部屋5を囲むように導線6を巻回して構成した送信アンテナ12Aは、送信アンテナ12Aの一部を構成する辺部A1,A6,A7と、別の一部を構成する辺部A3,A4とが、送信アンテナ12Aの残りの部位を構成する他の辺部A2,A5を含む平面PL1(下壁面5aを含む平面。斜線を付した第1面としての平面)と直線L1で交差する平面(第2面としての他の平面)PL2内、および平面PL1と直線L2で交差する平面(他の第2面としての平面)PL3内にそれぞれ位置するように、辺部A1,A6,A7で構成される送信アンテナ12Aの一部については他の辺部A2,A5(他の辺部A2,A5を含む平面PL1)に対して直線L1(壁面5fおよび下壁面5aの接合部)で折曲され、辺部A3,A4で構成される送信アンテナ12Aの一部については他の辺部A2(平面PL1)に対して直線L2(図5中において一点鎖線で示される直線)で折曲されて構成されている。
【0041】
なお、部位(点)Bが、壁面5f方向へ移動して、壁面5eおよび壁面5fの接合部における下端に達したときには、辺部A2と共にこの平面PL1を規定していた辺部A5が消滅する。このため、この構成では、送信アンテナ12Aは、下壁面5aの下方において互いに交差する2つの平面PL2,PL3に含まれる辺部(辺部A1,A6,A7と、辺部A3,A4)を備えた構成となる。
【0042】
また、送信アンテナ12Aは、辺部A1,A5,A6で構成される部位については面対称であるが、各辺部A3,A4は互いの長さが相違するため、辺部A3,A4で構成される部位については非面対称である。このため、送信アンテナ12Aは、全体として非面対称の構造に構成されている。
【0043】
したがって、この送信アンテナ12Aも上記した送信アンテナ12と同様にして、異なる平面PL1,PL2,PL3に含まれる辺部を備え、かつ全体として非面対称の構造に構成されているため、部屋5内に位置している受電装置3の向きや位置に大きな影響を受けることなく、常に一定以上の結合度(中程度以上の結合度)で受電装置3の受信アンテナ21と結合することができる結果、受電装置3の向きや位置に起因して、受電装置3の受信アンテナ21との結合度が極端に小さくなるといった事態の発生を確実に回避することができる。
【0044】
また、異なる平面にそれぞれ含まれる辺部を備えている送信アンテナ12,12Aについて説明したが、送信アンテナでは、平面と曲面にそれぞれ含まれる辺部を備えている構成や、異なる曲面にそれぞれ含まれる辺部を備えている構成を採用することもできる。一例として曲面と平面に含まれる辺部を備えた送信アンテナ12Bについて図6を参照して説明する。
【0045】
送信アンテナ12Bは、上記した部屋5における壁面5fのみを図6に示すように曲面に形成して構成した部屋51の周囲に巻回して構成されており、部屋51の2つの壁面5cおよび壁面5fの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A1、壁面5cおよび下壁面5aの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A2、この辺部A2の壁面5d側の端部から2つの壁面5dおよび壁面5eの接合部の上端に至る経路(壁面5dの対角線)に沿って配設した導線6で構成される辺部A3、壁面5eおよび上壁面5bの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A4、並びに壁面5fおよび上壁面5bの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A5を備えている。
【0046】
また、このようにして部屋51を囲むように導線6を巻回して構成した送信アンテナ12Bは、送信アンテナ12Bの一部を構成する辺部A1,A5が、送信アンテナ12Bの残りの部位を構成する他の辺部A2,A3,A4を含む平面PL1(斜線を付した第1面としての平面)と曲線L1(一点鎖線で示される曲線)で交差する曲面CU1内に位置するように、曲線L1で折曲されて構成されている(なお、曲線L1の両端を結ぶ不図示の直線で折曲されて構成されているともいえる)。また、送信アンテナ12Bは、辺部A2,A3,A4で構成される部位については面対称であるが、各辺部A1,A5は互いの長さが相違すると共に形状も相違する(一方が直線で他方が曲線である)ため、辺部A1,A5で構成される部位については非面対称である。このため、送信アンテナ12Bは、全体として非面対称の構造に構成されている。
【0047】
したがって、この送信アンテナ12Bも上記した送信アンテナ12,12Aと同様にして、平面PL1と異なる平面または曲面(この例では第2面としての曲面CU1)に含まれる辺部を備え、かつ全体として非面対称の構造に構成されているため、部屋51内に位置している受電装置3の向きや位置に大きな影響を受けることなく、常に一定以上の結合度(中程度以上の結合度)で受電装置3の受信アンテナ21と結合することができる結果、受電装置3の向きや位置に起因して、受電装置3の受信アンテナ21との結合度が極端に小さくなるといった事態の発生を確実に回避することができる。
【0048】
また、導線6を1ターンまたは2ターン以上重ねて巻回して構成した送信アンテナ12,12A,12Bについて説明したが、導線6を2ターン以上巻回する構成において、少なくとも1ターン分の導線6を上記した送信アンテナ12,12A,12Bと同様にして、その一部を構成する1以上の辺部と、残りの部位を構成する他の辺部とが、互いに交差する平面内にそれぞれ位置する構成、および互いに交差する平面と曲面にそれぞれ位置する構成、さらには互いに交差する曲面内にそれぞれ位置する構成のいずれかの構成となるようにして、送信アンテナ全体として非面対称の構造とすることもできる。
【0049】
この一例としての送信アンテナ12について、図7を参照して説明する。この送信アンテナ12Cは、図7に示すように、上記した部屋5における下壁面5a、上壁面5bおよび各壁面5c,5d,5e,5fを同形の正方形に形成して構成した部屋52の周囲に導線6を2ターン巻回して構成されており、1ターン分(1ターン目)については、部屋52の壁面5cおよび下壁面5aの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A1、壁面5dおよび下壁面5aの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A2、2つの壁面5dおよび壁面5eの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A3、壁面5eおよび上壁面5bの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A4、2つの壁面5eおよび壁面5fの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A5、並びに壁面5fおよび下壁面5aの接合部に沿って配設した導線6で構成される辺部A6を備えている。
【0050】
また、このようにして構成した送信アンテナ12Cの1ターン分(1ターン目)については、その一部を構成する辺部A3,A4,A5が、この1ターン分についての残りの部位を構成する他の辺部A1,A2,A6を含む平面PL1(下壁面5aを含む第1面としての平面)と直線L1で交差する第2面としての平面PL2内に位置するように、直線L1で折曲されて構成されている。
【0051】
また、残りの1ターン分(2ターン目)については、1ターン目の辺部A1に重ねて配設した導線6で構成される辺部A7、1ターン目の辺部A2に重ねて配設した導線6で構成される辺部A8、この辺部A8の壁面5e側の端部から2つの壁面5e,5fの接合部の上端に至る経路(壁面5eの対角線)に沿って配設した導線6で構成される辺部A9、この辺部9の壁面5f側の端部から2つの壁面5f,5cの接合部の下端に至る経路(壁面5fの対角線)に沿って配設した導線6で構成される辺部A10を備えている。
【0052】
また、このようにして構成した送信アンテナ12Cの残りの1ターン分(2ターン目)については、その一部を構成する辺部A7,A10が、この1ターン分についての残りの部位を構成する他の辺部A8,A9を含む他の第1面としての平面PL4と直線L2(一点鎖線で示される直線)で交差する他の第2面としての平面PL3内に位置するように、直線L2で折曲されて構成されている。
【0053】
また、上記の1ターン目と2ターン目とで構成した送信アンテナ12Cは、その1ターン目も2ターン目もそれぞれ面対称の構造であるが、1ターン目と2ターン目とで形状が相違し、かつそれぞれの対称面同士が交差する構成(つまり、送信アンテナ12C全体の対称面が存在しない構成)のため、全体として非面対称の構造に構成されている。
【0054】
したがって、この送信アンテナ12Cも上記した送信アンテナ12,12A,12Bと同様にして、部屋52内に位置している受電装置3の向きや位置に大きな影響を受けることなく、常に一定以上の結合度(中程度以上の結合度)で受電装置3の受信アンテナ21と結合することができる結果、受電装置3の向きや位置に起因して、受電装置3の受信アンテナ21との結合度が極端に小さくなるといった事態の発生を確実に回避することができる。
【0055】
また、上記したように、送信アンテナでは、異なる曲面にそれぞれ含まれる辺部を備えている構成を採用することもでき、例えば、図6に示す送信アンテナ12Bにおいて、辺部A2,A3,A4を含む平面PL1を、辺部A2,A3a(太線の破線で示す辺部),A4を含む曲面に形成することで、互いに交差するこの曲面と上記の曲面CU1に含まれる辺部を備えて送信アンテナを構成することもできる。
【0056】
また、上記の例では、1つの平面または曲面内に2以上の辺部を含む構成を備えた送信アンテナについて説明したが、図示はしないが、例えば、円環状コイルの弧状の1つの辺部を、残りの1つの弧状の辺部に対して折曲することにより、互いに交差する2つの曲面(第1面と第2面)にそれぞれ含まれる2つの辺部で構成される送信アンテナを構成することもできる。
【0057】
また、各送信アンテナ12,12A,12B,12C、送電装置2および電力伝送装置1は、携帯端末を受電装置3とする場合以外に、非接触で充電を行う様々な電気機器(電気カミソリ、電動歯ブラシ、バッテリ駆動方式の自動車など)を受電装置3とする場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 電力伝送装置
2 送電装置
3 受電装置
4 バッテリ
A1〜A10 辺部
6 導線
11 信号発生部
12 送信アンテナ
13 第1整合部
21 受信アンテナ
22 第2整合部
23 整流部
PL1〜PL4 平面
S1 交流信号
V1 誘導電圧
Vo 直流電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を1ターンまたは2ターン以上巻回して構成した環状コイルを構成する1ターン分の前記導線の一部を構成する1以上の辺部が、当該1ターン分の導線の残りの部位を構成する他の辺部を含む平面および曲面のいずれかの第1面と交差する平面および曲面のいずれかの第2面内に位置すると共に、全体として非面対称の構造に構成されている電力伝送用アンテナ。
【請求項2】
前記環状コイルは前記導線を2ターン以上重ねて巻回して構成され、
前記環状コイルの一部を構成する1以上の辺部が、当該環状コイルの残りの部位を構成する他の辺部を含む前記第1面と交差する前記第2面内に位置するように構成されている請求項1記載の電力伝送用アンテナ。
【請求項3】
請求項1または2記載の電力伝送用アンテナと、交流信号を発生して前記電力伝送用アンテナに出力する信号発生部と、前記電力伝送用アンテナと前記信号発生部との間に配設されて当該電力伝送用アンテナおよび当該信号発生部を整合させる整合部とを備えている送電装置。
【請求項4】
請求項3記載の送電装置と、
前記送電装置の前記電力伝送用アンテナと電磁結合して交流電圧を発生させる受電用アンテナ、および当該受電用アンテナに発生した前記交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧を生成する直流電圧生成部を有する受電装置とを備えている非接触型電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115069(P2013−115069A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256907(P2011−256907)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)