説明

電力供給システム

【課題】異常発生時の安全性が高い電力供給システムを提供する。
【解決手段】電力供給システムは、PCS2と、PCS管理制御部3と、BSU4と、BMU5と、蓄電池7とを有する系統を複数備え、マスタコントローラ1と、マスタBMU6とを備える。当該電力供給システムにおいて、各系列の蓄電池7が並列に接続されるように各系列同士が接続される。また、当該電力供給システムにおいて、マスタコントローラ1が自己の状態を含む情報をマスタBMU6に周期的に送信し、マスタBMU6が自己の状態を含む情報をマスタコントローラ1に周期的に送信することで、マスタコントローラ1及びマスタBMU6がそれぞれ相手の異常を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電池を備える電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電池の大容量化が進み、ビルや工場、店舗、家庭などで消費される電力を貯蔵する電力供給システムの導入が進められている。このような電力供給システムは、事前に蓄電池を充電する(電力を消費する)ことで、任意のタイミングで蓄電池を放電する(電力を供給する)ことができる。すなわち、蓄電池の充電及び放電のタイミングを制御することで、系統電力(電力会社から供給される電力)を消費するタイミングを制御することが可能になる。
【0003】
一般的に、系統電力の電力料金には、固定制の基本料金と、従量制の使用料金とが含まれる。そして、電力会社は、単位時間に消費する系統電力の電力量の最大値が小さくなるほど、基本料金が安くなるように基本料金を設定している。また、電力消費が大きい日中よりも電力消費が小さい夜間の方が、使用料金の単位電力当りの価格が安くなるように使用料金を設定している。そのため、系統電力を利用する利用者は、系統電力の消費を平準化するほど、系統電力の電力料金を安くすることができる。
【0004】
したがって、電力供給システムにおいて、系統電力を利用する利用者の電力需要が小さい時間帯や夜間電気料金が適用される時間帯に系統電力を利用して蓄電池を充電し、系統電力を利用する利用者の電力需要が所定の閾値を越えているときに所定の閾値を越えている分の電力(図1に示す斜線部分)を蓄電池の放電で補うことによって、系統電力の電力料金を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−143604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力供給システムでは複数の蓄電池を並列接続する構成によって、システム全体の充放電電流を大きくしている。しかしながら、システム全体の充放電電流が大きくなればなるほど、異常発生時の安全性に対する要求が厳しくなる。
【0007】
尚、特許文献1で開示されている技術では、複数のマイクロプロセッサが相互に動作状態を監視して故障の有無を検知し、故障したマイクロプロセッサがある場合には正常なマイクロプロセッサが故障したマイクロプロセッサを補完することで、信頼性を向上させているが、当該技術は同一種類の複数の構成部品に対してのみ適用可能であり、電力供給システムにおける異なる種類の複数の構成部品に対しては適用することができない。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑み、異常発生時の安全性が高い電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る電力供給システムは、電力変換器と、前記電力変換器を制御する電力変換器制御部と、蓄電池と、前記電力変換器と前記蓄電池との電気的接続をON/OFFするスイッチと、前記スイッチを制御するスイッチ制御部とを有する系列を複数備え、複数の前記電力変換器制御部を統括的に制御するマスタ制御部を備え、複数の前記スイッチ制御部を統括的に制御するマスタスイッチ制御部を備え、各系列の前記蓄電池が並列に接続されるように各系列同士が接続されている電力供給システムであって、前記マスタ制御部が自己の状態を含む情報を前記マスタスイッチ制御部に周期的に送信し、前記マスタスイッチ制御部が自己の状態を含む情報を前記マスタ制御部に周期的に送信することで、前記マスタ制御部及び前記マスタスイッチ制御部がそれぞれ相手の異常を検知する構成(第1の構成)とする。ここで、前記マスタ制御部における自己の状態には、前記マスタ制御部の制御対象の状態が含まれるものとする。同様に、前記マスタ制御部における自己の状態には、前記マスタ制御部の制御対象の状態が含まれるものとする。
【0010】
また、上記第1の構成の電力供給システムにおいて、前記マスタ制御部は、前記マスタスイッチ制御部の状態を含む情報が前記マスタスイッチ制御部から一定期間届かなかった場合、前記マスタスイッチ制御部が異常であると判断し、前記マスタスイッチ制御部は、前記マスタ制御部の状態を含む情報が前記マスタ制御部から一定期間届かなかった場合、前記マスタ制御部が異常であると判断する構成(第2の構成)としてもよい。
【0011】
また、上記第2の構成の電力供給システムにおいて、前記マスタ制御部は、前記マスタスイッチ制御部が異常であると判断した場合、各系列における電流の流れを遮断するように各系列の前記電力変換器制御部を制御し、前記マスタスイッチ制御部は、前記マスタ制御部が異常であると判断した場合、各系列における電流の流れを遮断するように各系列の前記スイッチ制御部を制御する構成(第3の構成)としてもよい。
【0012】
また、上記第1〜第3のいずれかの構成の電力供給システムにおいて、前記マスタ制御部が前記マスタスイッチ制御部に周期的に送信する情報に、各系列の前記電力変換器の状態が含まれている構成(第4の構成)としてもよい。
【0013】
また、上記第4の構成の電力供給システムにおいて、前記マスタスイッチ制御部が、前記電力変換器、前記蓄電池、前記スイッチ、及び前記スイッチ制御部の各状態を含むログ情報を前記マスタ制御部及び各系列の前記スイッチ制御部から収集して保存する構成(第5の構成)としてもよい。
【0014】
また、上記第5の構成の電力供給システムにおいて、前記マスタ制御部が前記マスタスイッチ制御部に周期的に送信する情報に、各系列の前記電力変換器制御部の状態が含まれており、前記ログ情報に、前記電力変換器制御部の状態が含まれる構成(第6の構成)としてもよい。
【0015】
また、上記第1〜第6のいずれかの構成の電力供給システムにおいて、前記マスタスイッチ制御部は、前記スイッチ制御部の異常を検出すると、前記マスタ制御部に対して、異常があることを示す信号を送信し、前記異常があることを示す信号に対する応答信号を前記マスタ制御部から受信すると、前記異常があることを示す信号及び前記応答信号に関する通信履歴をタイムスタンプとともに保存する構成としてもよい。
【0016】
また、不具合が生じた場合に後の不具合解析を容易にするために本発明に係る他の電力供給システムは、電力変換器と、前記電力変換器を制御する電力変換器制御部と、蓄電池と、前記電力変換器と前記蓄電池との電気的接続をON/OFFするスイッチと、前記スイッチを制御するスイッチ制御部とを有する系列を複数備え、複数の前記電力変換器制御部を統括的に制御するマスタ制御部を備え、複数の前記スイッチ制御部を統括的に制御するマスタスイッチ制御部を備える電力供給システムであって、前記マスタスイッチ制御部は、前記スイッチ制御部の異常を検出すると、前記マスタ制御部に対して、異常があることを示す信号を送信し、前記異常があることを示す信号に対する応答信号を前記マスタ制御部から受信すると、前記異常があることを示す信号及び前記応答信号に関する通信履歴をタイムスタンプとともに保存する構成とする。このような構成によると、不具合が生じた場合、その状況をいつマスタ制御部が認識したかを明確にすることができるため、後から不具合解析を行うことが容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電力供給システムによると、マスタ制御部及びマスタスイッチ制御部が通信を利用した相互監視を行っているので、異常発生時の安全性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】系統電力を利用する利用者の電力需要の典型例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電力供給システムの概略構成を示す図である。
【図3】マスタBMUとBMU間の通信内容例を示す図である。
【図4】マスタコントローラとマスタBMU間の通信内容例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。尚、図2において、各ブロック間をつなぐ太線は電力線を示しており、各ブロック間をつなぐ細線は通信線を示している。尚、本実施形態では、各通信線は信頼性を重視する観点から有線通信で実現しているが、無線通信で実現することも可能である。また、通信は例えばTCP(Transmission Control Protocol)によって行うとよい。
【0021】
図2に示す本発明の一実施形態に係る電力供給システムは、マスタコントローラ1と、PCS(Power Conditioning System)2と、PCS管理制御部3と、BSU(Battery Switching Unit)4と、BMU(Battery Management Unit)5と、マスタBMU6と、蓄電池7とを備えている。図2に示す本発明の一実施形態に係る電力供給システムでは、PCS2、PCS管理制御部3、BSU4、BMU5、及び蓄電池7によって構成される系列が複数設けられており、各系列の蓄電池7が並列に接続されるようにマスタコントローラ1に各系列が接続されている。マスタコントローラ1が請求項に記載されている「マスタ制御部」の一例に相当し、PCS2が請求項に記載されている「電力変換器」の一例に相当し、PCS管理制御部3が請求項に記載されている「電力変換器制御部」の一例に相当し、BSU4が請求項に記載されている「スイッチ」の一例に相当し、BMU5が請求項に記載されている「スイッチ制御部」の一例に相当し、マスタBMU6が請求項に記載されている「マスタスイッチ制御部」の一例に相当する。
【0022】
<マスタコントローラの概要>
マスタコントローラ1は、外部の負荷100及び電力系統200に接続されている。負荷100はAC電源入力端子を有する負荷であり、電力系統200はAC電力を供給する電力系統である。マスタコントローラ1は、各系列のPCS管理制御部3を統合的に監視・制御する。すなわち、マスタコントローラ1は、通常時には系列毎に充放電量を決定しその決定に応じた充放電制御指令を各系列のPCS管理制御部3にそれぞれ送信し、異常時には異常が発生した系列のPCS管理制御部3に対してPCS2の停止指令、PCS2の待機指令、又はPCS2側に設置されているブレーカ(不図示)の遮断指令を送信する。
【0023】
また、マスタコントローラ1は、マスタBMU6と周期的に通信することでマスタBMU6の異常を検知する。マスタBMU6の異常を検知した場合も、上記の異常時に含まれるので、マスタコントローラ1は、マスタBMU6の異常を検知した場合に、各系列のPCS管理制御部3に対してPCS2の停止指令、PCS2の待機指令、又はPCS2側に設置されているブレーカ(不図示)の遮断指令を送信する。なお、マスタコントローラ1とマスタBMU6との周期的な通信の詳細については後述する。さらに、マスタコントローラ1は、マスタBMU6から送信されるインディケーション信号を受信すると、マスタBMU6に対して確認信号を送信する。なお、インディケーション信号及び確認信号の詳細については後述する。
【0024】
<PCSの概要>
PCS2は、双方向AC/DC電力変換器であり、充電時に電力系統200からマスタコントローラ1を経由して供給されるAC電力をDC電力に変換し、放電時に同一系列に属する蓄電池7から同一系列に属するBSU4を経由して供給されるDC電力をAC電力に変換する。尚、本実施形態とは異なり、マスタコントローラ1が外部のDC負荷(DC電源入力端子を有する負荷)及びDC電源(例えば太陽電池)に接続される場合には、PCS2を双方向DC/DC電力変換器に変更すればよい。
【0025】
<PCS管理制御部の概要>
PCS管理制御部3は、マスタコントローラ1から送られてくる充放電制御指令に基づいて同一系列に属するPCS2の動作を制御するとともに、同一系列に属するPCS2の状態を監視している。また、PCS管理制御部3は、異常時には同一系列に属するPCS2の停止、同一系列に属するPCS2の待機、又は同一系列に属するPCS2側に設置されているブレーカ(不図示)の遮断を実行する。
【0026】
<BSUの概要>
BSU4は、同一系列に属するPSC2と同一系列に属する蓄電池7との電気的接続をON/OFFするスイッチであり、同一系列に属するBMU5によって制御される。本実施形態では、BSU4は、パワーFET(Field Effect Transistor)、コンタクタ、及びブレーカが直列接続されている構成である。PSC2と蓄電池7との電気的接続をONからOFFに切り替える際には、まず電気スイッチであるパワーFETをONからOFFに切り替え、その後機械スイッチであるコンタクタ及びブレーカをONからOFFに切り替えるようにする。一方、PSC2と蓄電池7との電気的接続をOFFからONに切り替える際には、まず機械スイッチであるコンタクタ及びブレーカをOFFからONに切り替え、その後電気スイッチであるパワーFETをOFFからONに切り替えるようにする。
【0027】
<BMUの概要>
BMU5は、同一系列に属するBSU4を制御するとともに、同一系列に属するBSU4の状態及び同一系列に属する蓄電池7の状態を監視している。
【0028】
また、BMU5は、同一系列に属する蓄電池7の状態、同一系列に属するBSU4の状態、自己(BMU5)の状態、及び同一系列に属するPCS2の状態などに関するログ情報をマスタBMU6に送信する。
【0029】
また、BMU5は、異常時にはBSU4内のパワーFET、コンタクタ、及びブレーカをOFFにする指令を同一系列に属するBSU4に送信するとともにアラート信号をマスタBMU6に送信する。
【0030】
<マスタBMUの概要>
マスタBMU6は、各系列の蓄電池7、BSU4、及びBMU5を統合的に監視・制御する。すなわち、マスタBMU6は、各系列のBMU5から送られてくる蓄電池7の状態、BSU4の状態、及びBMU5の状態などに関するログ情報を収集して保存するとともに、必要に応じて任意のBMU5に向けて、その任意のBMU5と同一系列に属するBSU4内のパワーFET、コンタクタ、及びブレーカをOFFにする指令を送信する。例えば、マスタBMU6は、上記のログ情報に基づいて、異常が発生している系列が所定数以上あると判断した場合に、安全のため異常が発生していない系列の各BMU5に向けて、その各BMU5と同一系列に属するBSU4内のパワーFET、コンタクタ、及びブレーカをOFFにする指令を送信することが考えられる。また、マスタBMU6は、マスタコントローラ1から送られてくるPCS2の状態及びPCS管理制御部3の状態に関するログ情報も収集して保存する。さらに、マスタBMU6は、BMU5からアラート信号を受信すると、異常があることを示すインディケーション信号をマスタコントローラ1に送信し、マスタコントローラ1から送信される確認信号を受信すると、インディケーション信号及び確認信号に関する通信履歴をタイムスタンプとともにログとして保存する。当該通信履歴の保存により、不具合が生じた場合、その状況をいつマスタコントローラ1が認識したかを明確にすることができるため、後から不具合解析を行うことが容易になる。そして、マスタコントローラ1とマスタBMU6との周期的な通信による異常検知以外に、インディケーション信号によってマスタコントローラ1に異常を遅滞なく知らせることができるので、マスタコントローラ1がより迅速に確実に異常を検出することができる。尚、マスタコントローラ1とマスタBMU6との周期的な通信による異常検知を取りやめ、上記通信履歴の保存及びインディケーション信号によるマスタコントローラ1への異常通知のみを実施することも可能である。
【0031】
また、マスタBMU6は、マスタコントローラ1が各蓄電池7の劣化状態(state of health:SOH)を考慮して系列毎の充放電量を割り当てることができるように、充放電量割り当て関連情報を各系列のBMU5に送信する。なお、充放電量割り当て関連情報の詳細については後述する。
【0032】
さらにマスタBMU6は、マスタコントローラ1と周期的に通信することでマスタコントローラ1の異常を検知する。マスタBMU6は、マスタコントローラ1の異常を検知した場合に、各BMU5に向けて、その各BMU5と同一系列に属するBSU4内のパワーFET、コンタクタ、及びブレーカをOFFにする指令を送信する。また、マスタBMU6は、PCS2の状態及びPCS管理制御部3を直接取得することができないので、上述したマスタコントローラ1との周期的な通信によって、PCS2の状態及びPCS管理制御部3を取得し、PCS2の状態及びPCS管理制御部3もログ情報に含めて保存する。
【0033】
<蓄電池の概要>
蓄電池7の形態は特に限定されず、例えば、単一のバッテリセルであってもよく、複数のバッテリセルの集合体である電池パックであってもよく、また、当該電池パックを複数接続したものであってもよい。蓄電池7の電圧を高くする場合には、電池パックを複数直列接続した形態にするとよい。
【0034】
<充放電量割り当て関連情報>
ここで、上述した充放電量割り当て関連情報について図3を参照して説明する。
【0035】
各系列のBMU5はマスタBMU6に所定周期の周期信号を送信する。BMU5からマスタBMU6に送信される周期信号は、蓄電池7の状態、BSU4の状態、及びBMU5の状態などに関するログ情報であり、その一例として図3に示す下記[1]〜[12]の項目からなる信号が挙げられる。
[1]送信元系列のID
[2]送信元系列のBMU5の状態(停止、稼働、準備中、待機、軽故障、重故障など)
[3]送信元系列の蓄電池7の充電状態(state of charge:SOC)及びSOH
[4]送信元系列の電圧および電流
[5]送信元系列の充電電流制限値および放電電流制限値
[6]送信元系列の状態(充電状態、放電状態、充電も放電もしていない状態等)
[7]送信元系列の各電池パックからの生データ(警報、エラー等の各種状態フラグ、電圧、電流、温度)
[8]送信元系列の予備充電(蓄電池7のSOCが小さく空状態又は空状態に近いときに実施される小電流での充電)切替、定電圧充電(蓄電池7のSOCが大きく満充電に近いときに実施される定電圧での充電)切替
[9]送信元系列のBSU4からの電流、電圧、温度などのデータ
[10]送信元系列のBSU4のパワーFET、コンタクタ、ブレーカの各状態
[11]その他(停電、地絡、地震、災害発生時の消火用NE1ガス、災害発生時の消火用N2ガスなど)
[12]送信元系列のBMU5側タイムスタンプ
【0036】
マスタBMU6はBMU5に所定周期の周期信号を送信する。マスタBMU6からBMU5に送信される周期信号は、充放電量割り当て関連情報であり、その一例として図3に示す下記(1)〜(6)の項目からなる信号が挙げられる。
(1)送信先系列のSOC加工パラメータ(例:乗算係数の値)
(2)送信先系列のSOH加工パラメータ(例:乗算係数の値)
(3)送信先系列の充電電流制限値加工パラメータ(例:乗算係数の値)
(4)送信先系列の放電電流制限値加工パラメータ(例:乗算係数の値)
(5)マスタBMU6側タイムスタンプ
(6)上記(1)〜(4)の代わりに送信先系列の充放電量推奨値も可能
【0037】
マスタBMU6は、マスタコントローラ1からの充放電要求を受け取らない場合、各系列の蓄電池7のSOHを考慮して、上記(1)〜(4)の値を系列毎に設定する。
【0038】
一方、マスタBMU6は、マスタコントローラ1からの充放電要求を受け取る場合、マスタコントローラ1からの充放電要求と各系列の蓄電池7のSOHとを考慮して、上記(6)の値を系列毎に設定する。この場合、マスタコントローラ1からマスタBMU6への充放電要求の受け渡し及びマスタBMU6からマスタコントローラ1への各系列の充放電量推奨値の受け渡しは、マスタコントローラ1とマスタBMU6との間の直接通信によって行われることが望ましいが、PCS管理制御部3及びBMU5を介したマスタコントローラ1とマスタBMU6との間の通信によって行われてもよい。PCS管理制御部3及びBMU5を介したマスタコントローラ1とマスタBMU6との間の通信では、同一の通信内容が複数の系列によって伝達されることになるので、どれか一つの系列が遮断されても問題は生じない。
【0039】
<マスタコントローラとマスタBMUとの周期的な通信>
マスタコントローラ1はマスタBMU6に所定周期の周期信号を送信する。マスタコントローラ1からマスタBMU6に送信される周期信号は、マスタコントローラ1の状態を含む信号であり、その一例として図4に示す下記(1)〜(10)の項目からなる信号が挙げられる。さらに、下記(11)の項目が含まれていてもよい。尚、マスタコントローラ1の状態には、マスタコントローラ1の制御対象の状態が含まれるものとする。
(1)PCS2の系列数と各系列のID
(2)各系列のPCS管理制御部3の状態(停止、稼働、準備中、待機、軽故障、重故障など)
(3)各系列のPCS2の状態(停止、稼働、準備中、待機、軽故障、重故障など)
(4)各系列の交流電圧および交流電流
(5)各系列の交流有効電力および無効電力
(6)各系列の交流周波数数
(7)各系列のPCS2の温度
(8)各系列の直流電圧および直流電流
(9)各系列の直流電力
(10)マスタコントローラ1側タイムスタンプ
(11)マスタコントローラ1からの充放電要求
【0040】
マスタBMU6は、マスタコントローラ1からの周期信号を一定期間受信できなかった場合、マスタコントローラ1が異常であると判断する。ここで、上記一定期間は上記所定周期より長い期間に設定される。
【0041】
マスタBMU6はマスタコントローラ1に所定周期の周期信号を送信する。マスタBMU6からマスタコントローラ1に送信される周期信号は、マスタBMU6の状態を含む信号であり、その一例として図4に示す下記[1]〜[12]の項目からなる信号が挙げられる。尚、マスタBMU6の状態には、マスタBMU6の制御対象の状態が含まれるものとする。
[1]BSU4の系列数と各系列のID
[2]各系列のBMU5の状態(停止、稼働、準備中、待機、軽故障、重故障など)
[3]各系列の蓄電池7のSOC及びSOH(SOC及びSOHは蓄電池7からの生データではなく、BMU5側で加工したもの)
[4]各系列の電圧および電流
[5]各系列の充電電流制限値および放電電流制限値
[6]各系列の状態(充電、放電、充電も放電もしていない等)
[7]各系列の系列内の電池パックの最低温度、最高温度、平均温度
[8]各系列の系列内の電池パックの最小電圧、最大電圧、平均電圧
[9]各系列の電池パックからの警報、エラー(過充電、過放電、過電流、その他)
[10]各系列の予備充電切替、定電圧充電切替
[11]マスタBMU6側タイムスタンプ
[12]上記[3]、[5]の代わりに系列の充放電量推奨値も可能
【0042】
マスタコントローラ1は、マスタBMU6からの周期信号を一定期間受信できなかった場合、マスタBMU6が異常であると判断する。ここで、上記一定期間は上記所定周期より長い期間に設定される。
【0043】
尚、本実施形態のように、マスタコントローラ1及びマスタBMU6がそれぞれ一方的に周期信号を送信するのではなく、マスタコントローラ1からの周期的な要求信号を応答して、マスタBMU6がマスタBMU6の状態を含む応答信号をマスタコントローラ1に返信し、マスタBMU6からの周期的な要求信号を応答して、マスタコントローラ1がマスタコントローラ1の状態を含む応答信号をマスタBMU6に返信するようにしてもよい。この場合、マスタコントローラ1は、一定期間マスタBMU6から応答信号が返ってこない場合、マスタBMU6が異常であると判断し、マスタBMU6は、一定期間マスタコントローラ1から応答信号が返ってこない場合、マスタコントローラ1が異常であると判断するようにすればよい。
【0044】
また、本実施形態では、マスタコントローラ1とマスタBMU6とが直接通信する構成であるが、BMU5とPCS管理制御部3の間の直接通信も行われるようにした場合には、何らかの不具合によりマスタコントローラ1とマスタBMU6との直接通信が不通であるときに、BMU5及びPCS管理制御部3を介したマスタコントローラ1とマスタBMU6との通信を試みるようにしてもよい。
【0045】
図2に示す本発明の一実施形態に係る電力供給システムでは、上述した通り、マスタコントローラ1とマスタBMU6とが通信を利用した相互監視を行っているので、異常発生時の安全性が高くなる。
【0046】
また、図2に示す本発明の一実施形態に係る電力供給システムでは、上述した通り、マスタBMU6が、各系列の蓄電池7の状態、BSU4の状態、及びBMU5の状態に関するログ情報だけでなく、各系列のPCS2の状態及びPCS管理制御部3に関するログ情報も収集して保存するので、異常が発生した場合の異常発生原因の解析が容易になる。
【符号の説明】
【0047】
1 マスタコントローラ
2 PCS
3 PCS管理制御部
4 BSU
5 BMU
6 マスタBMU
7 蓄電池
100 負荷
200 電力系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器と、前記電力変換器を制御する電力変換器制御部と、蓄電池と、前記電力変換器と前記蓄電池との電気的接続をON/OFFするスイッチと、前記スイッチを制御するスイッチ制御部とを有する系列を複数備え、
複数の前記電力変換器制御部を統括的に制御するマスタ制御部を備え、
複数の前記スイッチ制御部を統括的に制御するマスタスイッチ制御部を備え、
各系列の前記蓄電池が並列に接続されるように各系列同士が接続されている電力供給システムであって、
前記マスタ制御部が自己の状態を含む情報を前記マスタスイッチ制御部に周期的に送信し、前記マスタスイッチ制御部が自己の状態を含む情報を前記マスタ制御部に周期的に送信することで、前記マスタ制御部及び前記マスタスイッチ制御部がそれぞれ相手の異常を検知することを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記マスタ制御部は、前記マスタスイッチ制御部の状態を含む情報が前記マスタスイッチ制御部から一定期間届かなかった場合、前記マスタスイッチ制御部が異常であると判断し、
前記マスタスイッチ制御部は、前記マスタ制御部の状態を含む情報が前記マスタ制御部から一定期間届かなかった場合、前記マスタ制御部が異常であると判断する請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記マスタ制御部は、前記マスタスイッチ制御部が異常であると判断した場合、各系列における電流の流れを遮断するように各系列の前記電力変換器制御部を制御し、
前記マスタスイッチ制御部は、前記マスタ制御部が異常であると判断した場合、各系列における電流の流れを遮断するように各系列の前記スイッチ制御部を制御する請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記マスタ制御部が前記マスタスイッチ制御部に周期的に送信する情報に、各系列の前記電力変換器の状態が含まれている請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記マスタスイッチ制御部が、前記電力変換器、前記蓄電池、前記スイッチ、及び前記スイッチ制御部の各状態を含むログ情報を前記マスタ制御部及び各系列の前記スイッチ制御部から収集して保存する請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記マスタ制御部が前記マスタスイッチ制御部に周期的に送信する情報に、各系列の前記電力変換器制御部の状態が含まれており、
前記ログ情報に、前記電力変換器制御部の状態が含まれる請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記マスタスイッチ制御部は、
前記スイッチ制御部の異常を検出すると、前記マスタ制御部に対して、異常があることを示す信号を送信し、
前記異常があることを示す信号に対する応答信号を前記マスタ制御部から受信すると、前記異常があることを示す信号及び前記応答信号に関する通信履歴をタイムスタンプとともに保存する請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項8】
電力変換器と、前記電力変換器を制御する電力変換器制御部と、蓄電池と、前記電力変換器と前記蓄電池との電気的接続をON/OFFするスイッチと、前記スイッチを制御するスイッチ制御部とを有する系列を複数備え、
複数の前記電力変換器制御部を統括的に制御するマスタ制御部を備え、
複数の前記スイッチ制御部を統括的に制御するマスタスイッチ制御部を備える電力供給システムであって、
前記マスタスイッチ制御部は、
前記スイッチ制御部の異常を検出すると、前記マスタ制御部に対して、異常があることを示す信号を送信し、
前記異常があることを示す信号に対する応答信号を前記マスタ制御部から受信すると、前記異常があることを示す信号及び前記応答信号に関する通信履歴をタイムスタンプとともに保存することを特徴とする電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−210081(P2012−210081A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74102(P2011−74102)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】