説明

電力供給補助装置

【課題】電源交換作業にミスがあった場合にも電力供給を継続可能にして、不用意に負荷装置が停止してしまうことを回避することができる電力供給補助装置を提供すること。
【解決手段】負荷装置200に電源MCCB120を介して電力供給する新旧電源100A、100Bの交換時の電力供給を補助する電力供給補助装置10であって、電源MCCBの上流側と下流側の電圧を測定するデジタル電圧計23と、電源からの電力供給を可能にする電源MCCBのバイパス経路を導通または遮断する電子SW21と、デジタル電圧計の測定電圧に基づいて電子SWのON/OFFを制御するMPU27と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給補助装置に関し、詳しくは、停電等のない電源の交換作業を確実に行い得るようにするものに関する。
【背景技術】
【0002】
直流または交流の電力供給を受けて稼働する負荷装置には、常時稼働させているものがあり、このような負荷装置は、電圧降下により適正動作しなくなる場合もあることから、無停電電源装置を利用することが行われている(例えば、特許文献1〜4)。
【0003】
この種の無停電電源装置は、商用電力を電圧変換して利用する場合には、個別に準備する必要があり、その電源装置は、定期的に交換等して信頼性の高い電力供給を確保する必要がある。特に、商用電力は交流であることから、直流電源で稼働する負荷装置の場合には、商用電力を直流に変換する直流電源装置が設置されており、その直流電源装置も定期的に無停電に交換する必要がある場合がある。
【0004】
このような直流電源装置は、負荷装置と直流電源との間に遮断器(開閉器)が介在されており、無停電交換作業を行う際には、負荷装置に対して直流電源を並列接続して電力供給を継続しつつ、その遮断器を接続または遮断することにより新旧電源を入れ替えることができる。例えば、発変電所などに設置されている直流電源装置の場合には、潮流回路を全停電できないケースが多いことから、無停電に新旧電源装置を交換(更新)する作業を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−218674号公報
【特許文献2】特開2004−48964号公報
【特許文献3】特開2006−246616号公報
【特許文献4】特開2011−72068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような無停電交換作業時には、新たに直流電力を供給する新電源側の遮断器を接続状態にする前に、交換する旧電源側の遮断器を遮断してしまう可能性がある。また、交換作業においては、接続不良の状態があったり、あるいは、接続電線の選定ミスによる電圧降下が発生して適正電圧で電力供給することができなくなったり、遮断器の容量の選定ミスにより電源投入と同時に遮断動作をしてしまい電力供給できなくなるなど、作業ミスに起因する負荷装置の停止を発生させてしまう可能性がある。
【0007】
なお、負荷装置には、新電源側の操作ミスがあった場合でも、遮断前には旧電源側からの電圧が掛かっているので、新電源側の遮断器の操作ミスを検知(判断)することはできない。また、旧電源側の遮断器が遮断動作不能な場合には、遮断したつもりで活線状態のまま旧電源の取外作業を開始してしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、まずは、電源交換作業にミスがあった場合にも電力供給を継続可能にして、不用意に負荷装置が停止してしまうことを回避することができる電力供給補助装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する電力供給補助装置の発明の一態様は、負荷に開閉器を介して接続されている電源の該負荷への電力供給を補助する電力供給補助装置であって、前記開閉器の下流に位置する前記負荷への供給電圧を検出する電圧検出部と、前記開閉器をバイパスして前記電源から前記負荷に電力供給可能に接続または該接続を遮断するバイパス接続部と、前記電圧検出部が検出する前記負荷への供給電圧に基づいて前記バイパス接続部の接続または遮断を制御する接断制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
この発明の態様では、開閉器の下流側で検出する負荷装置側への供給電圧に基づいてその開閉器をバイパスして上流側に接続されている電源から電力供給することができる。したがって、電源に接続されている開閉器の下流側の電圧を検出するように電圧検出部をセットして、その開閉器をバイパスようにバイパス接続部をセットするだけで、負荷装置に電力供給する電源側に不都合が、例えば、接続投入の失念や接続容量不足による遮断などが生じた場合にも、別電源から電力供給を継続させることができる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明の一態様によれば、負荷装置に電力供給する電源電圧が低いなど不適切であるときには、開閉器をバイパスして電力供給を再開(継続)させることができる。したがって、電力供給すべき電源側が不調である場合にも電力供給を継続することができ、負荷装置が不用意に停止してしまうことを回避することができる。この結果、停電等のない確実かつ信頼性の高い電力供給を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電力供給補助装置の一実施形態の外観を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその底面図、(c)はその側面図である。
【図2】その内部構成を示すブロック図である。
【図3】その接続対象である交換電源の一例を示すブロック図である。
【図4】その交換電源に接続した状態を示すブロック図である。
【図5】その判断機能を説明するフロー図である。
【図6】その接続対象である交換電源の他の例を示すブロック図である。
【図7】その他の接続例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の一態様としては、負荷に開閉器を介して接続されている電源の該負荷への電力供給を補助する電力供給補助装置であって、前記開閉器の下流に位置する前記負荷への供給電圧を検出する電圧検出部と、前記開閉器をバイパスして前記電源から前記負荷に電力供給可能に接続または該接続を遮断するバイパス接続部と、前記電圧検出部が検出する前記負荷への供給電圧に基づいて前記バイパス接続部の接続または遮断を制御する接断制御部と、を備えるのに加えて、次の構成を備えてもよい。
【0014】
第1の他の態様としては、前記開閉器の上流側の前記電源に接続されている電力供給電線に導通接続されて前記負荷への電力供給可能な容量を有する第1接続電線と、前記開閉器の下流側の前記負荷に接続されている電力供給電線に導通接続されて前記負荷への電力供給可能な容量を有する第2接続電線と、を備えて、前記電圧検出部および前記バイパス接続部は、前記第1、第2接続電線に接続されており、前記バイパス接続部は、前記第1、第2接続電線の間に導通接続または該導通接続を遮断するスイッチ部を備えるとともに、前記電圧検出部は、前記第1、第2接続電線に接続されて前記負荷への供給電圧として前記開閉器の上流側と下流側の電圧を検出するように構成されていてもよい。
【0015】
この態様では、開閉器の上流側と下流側に第1、第2接続電線を接続するだけでセットすることができ、少なくとも下流側の供給電圧に基づいてその開閉器をバイパスすることができる。
【0016】
第2の他の態様としては、前記バイパス接続部は、前記第1、第2接続電線の間に、過電圧または過電流の導通時に当該導通状態を遮断する遮断器を介在させていてもよい。
【0017】
この態様では、開閉器のバイパス時に過電圧や過電流が異常発生した場合に機能して、下流側の負荷装置に異常電力が流れ込まないように制限することができ、負荷装置を損傷させてしまうことを回避することができる。
【0018】
第3の他の態様としては、前記接断制御部は、前記電圧検出部が検出する前記負荷への供給電圧が予め設定されている電圧値以下になった場合に、前記バイパス接続部の接続制御を実行して前記開閉器をバイパスさせて前記電源から前記負荷に電力供給させるように構成されていてもよい。
【0019】
この態様では、負荷装置の稼働に必要な電圧値を考慮して設定しておくことにより、その負荷装置が電源の接続不良や電線容量不足などの作業ミスなどに起因する電圧降下により停止してしまうことを回避することができ、負荷装置の継続稼働を確保することができる。
【0020】
第4の他の態様としては、前記バイパス接続部は、前記電源の新旧交換作業時に、当該旧電源が接続されている前記開閉器をバイパスするように設置されていてもよい。
【0021】
この態様では、電源の交換作業時に、交換前の電源に接続されている開閉器の下流側の電圧を検出するように電圧検出部をセットして、その開閉器をバイパスようにバイパス接続部をセットするだけで、旧電源以外(新電源または仮電源)から負荷装置に電力供給する場合に、その供給電圧が低いなど不適切であるときには、旧電源の開閉器をバイパスして電力供給を再開(継続)させることができる。したがって、電源交換作業にミスがあった場合にも電力供給を継続することができる。
【0022】
第5の他の態様としては、前記バイパス接続部は、定常時に電力供給する電源に、前記開閉器を介して並列接続されている別電源の当該開閉器をバイパスするように設置されていてもよい。
【0023】
この態様では、定常時に電力供給する電源に、開閉器を介して並列接続されている別電源の当該開閉器の下流側(定常電源側)の電圧を検出するように電圧検出部をセットして、その開閉器をバイパスようにバイパス接続部をセットするだけで、その定常電源の供給電圧が低くなったときに、別電源の開閉器をバイパスして定常電源に代わって電力供給を継続させることができる。したがって、電源の故障や予備の蓄電池が放電した後などの場合にも電力供給を継続(バックアップ)することができる。
【0024】
第6の他の態様としては、前記電圧検出部を前記開閉器の前記負荷側の下流側に加えて、前記開閉器の前記電源側の上流側の電圧も検出するように構成して、当該電圧検出部が検出する前記開閉器の上流側と下流側の間の電圧差に基づいて該開閉器の健全性を判定する動作判定部と、該動作判定部の判定結果を報知する報知部と、を備えていてもよい。
【0025】
この態様では、開閉器の遮断動作後の電圧差に基づいて、その開閉器の健全性を判定することができ、開閉器の遮断動作が完全でないことを検知して報知することができる。したがって、負荷装置と同様に電圧が掛かった活線状態のままの電線を電源から外す作業を行ってしまうことを回避することができ、活線状態のままアークを引くなどして火傷等を負ってしまうことを回避することができる。
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図7は本発明に係る電力供給補助装置の一実施形態を示す図である。
【0027】
図1および図2において、電力供給補助装置10は、負荷装置に開閉器を介して電力供給して稼働させる電源装置と並列接続可能に構築されており、例えば、図3に示す直流電源装置100に並列接続して何らかの事故があったときにも負荷装置200の稼働を維持する補助機能を備えている。
【0028】
この電力供給補助装置10は、直流電源装置100と負荷装置200の間に配電線用の開閉器として介在されている電源MCCB(配線用遮断開閉器:Molded Case Circuit Breaker)120の各一対の上流側配電線111(111a、111b)と下流側配電線112(112a、112b)にそれぞれ接続する接続ケーブル11(11a、11b)、12(12a、12b)と、この接続ケーブル(第1、第2接続電線)11、12の間に介在されて異常電圧や異常電流が上流側から下流側へと流れ込むのを遮断する電気回路用の補助CB(Circuit Breaker)14と、各種情報を表示出力する液晶表示器(報知部)16と、後述する各種モードや液晶表示器に表示出力する情報の切替操作をする操作ボタンSW(switch)18と、が外装ケース10aの正面に配置されている。
【0029】
ここで、電力供給補助装置10は、相手側導体を挟み込むようにして導通接続する挟持クリップ、所謂、ワニ口クリップ(弱電の場合には、みの虫クリップでもよい)が絶縁性を確保可能に、接続ケーブル11、12の先端側に備えられており、そのワニ口クリップを電源MCCB120の上流側と下流側の配電線111、112の接続端子部に導通接続させることにより直流電源装置100と負荷装置200の間に並列接続させることができる。また、接続対象の電源MCCB側が、配電線111、112の接続端子部として、雄ネジにナットをネジ止めして締め付けることにより導通接続する形態を採用していてその雄ネジの先端が余っている場合には、接続ケーブル11、12の先端側に丸端子またはU字端子を圧着接続することにより、既存のナットなどを緩めることなく、その雄ネジ先端に別個のナットをネジ止めして同様に導通接続させ、より大容量電流を導通可能に接続可能にすることもできる。
【0030】
この電力供給補助装置10は、上流側配電線111a、111bと下流側配電線112a、112bがそれぞれの間の導通を遮断可能に電源MCCB120(120a、120b)を介在させているのと同様に、その接続ケーブル11a、11b、12a、12bのそれぞれの間の導通を遮断可能に補助CB14(14a、14b)を介在させており、また、この補助CB14a、14bと直列にバイパス接続部のスイッチ部を構成する電子SW21(21a、21b)が介在されている。補助CB14は、1つのレバー14rを上下させることで2つの補助CB14a、14bを同時に遮断または導通させることができようになっており、上流側からの異常電圧や異常電流の流入を検知した場合に、上側に位置するレバー14rが直ちに下側に移動してその導通を遮断し、電源MCCB120と同様に、下流側の負荷装置200が故障や異常動作してしまうことを回避する。電子SW21は、例えば、放熱器付きのFET(Field Effect Transistor)などの大容量の半導体スイッチであり、機械的スイッチよりも高速に回路を開閉可能な半導体素子が採用されている。この電子SW21の故障時には、補助CB14が機能して強制的に導通を遮断する。ところで、電子SW21は、電流の流れる方向に制限なく、接続電線11、12の接続極性に規制がないようにするのが好適であり、この場合には、双方向から電流を流して流通させることができ、制御するMPU27との結線ミスで短絡事故となる心配もなくすことができる。
【0031】
また、電力供給補助装置10は、補助CB14、液晶表示器16、操作ボタンSW18および電子SW21と共に、デジタル電圧計(電圧検出部)23、IF(interface)25、MPU(microprocessor unit)27および記憶装置29が外装ケース10a内に収容されており、デジタル電圧計23は電源MCCB120(120a、120b)毎の上流側および下流側のそれぞれのアース間電位を測定して電源装置100からの供給電圧と負荷装置200側への供給電圧とをそれぞれ測定するように、接続ケーブル11a、11b、12a、12bに接続されている。このデジタル電圧計23は、IF25を介してMPU27に接続されており、このIF25は各種信号をやり取り可能にMPU27と共に、補助CB14、液晶表示器16、操作ボタンスイッチ18、電子SW21が接続されている。なお、電力供給補助装置10は、直流電源100が供給する直流電力を所望の直流電圧値に変換する変換器(不図示)を備えることにより、専用の電源機能を内蔵することを不要に作製されている。
【0032】
MPU27は、記憶装置29を備えて(接続されて)、予め格納されている制御プログラムに従ってIF25を介して取得した情報を記憶保持しつつ各種制御処理を実行するようになっており、操作ボタンSW18(18a〜18d)の各種モードの選択操作に応じて、電子SW21のON(導通)/OFF(開放遮断)を手動切換または自動切換に設定したり、その設定情報と共に電子SW21および補助CB14のON/OFFと、デジタル電圧計23が測定する電源MCCB120の上流側と下流側の測定電圧と、を液晶表示器16に表示出力することができる。すなわち、MPU27が接断制御部を構成している。なお、デジタル電圧計23は電源MCCB120の上流側と下流側の双方で電圧測定をしているが、これに限るものではなく、下流側のみで負荷装置200側への供給電力の電圧を測定確認するようにしてもよい。
【0033】
このMPU27は、操作ボタンSW18で電源交換補助モードが選択されている場合には、デジタル電圧計23の測定する電圧値が記憶装置29内に予め設定されているバイパス電圧値よりも低くなったときに、電子SW21を遮断状態から導通状態に切り換えて電源MCCB120をバイパスさせるようになっている。
【0034】
具体的に、図3に示すように、負荷装置200A、200Bに電力供給する直流電源装置100A(以下では旧電源100Aともいう)を直流電源装置100B(以下では新電源100Bともいう)に交換する場合を一例にして、電力供給補助装置10の機能を説明する。
【0035】
ここで、その新旧電源100A、100Bは、商用電源に接続されて交流電力を直流電力に変換する整流器101と、この整流器101から直流電力を受けて蓄電する蓄電池102と、を備えており、定常時には、整流器101を介して直流電力を負荷装置200A、200Bに供給するとともに、何らかの要因により電力供給の一時停止や電圧低下などの、所謂、瞬低が発生した場合に、蓄電池102から直流電力を負荷装置200A、200B側に供給して安定稼働を確保する安定化電源としても機能する。この新旧電源100A、100Bは、負荷装置200A、200Bの接続口毎に、電源MCCB120が準備されており、その電源MCCB120を介して、接続電線113で接続されている負荷装置200A、200Bに直流電力を供給する。
【0036】
そして、この新旧電源100A、100Bの交換は、旧電源100Aが接続されている負荷装置200A、200Bに新電源100Bを並列接続して、その新電源100Bの電源MCCB120を投入して並列運転状態にした後に、旧電源100Aの電源MCCB120を遮断して接続電線113を外すことにより、電力供給を継続したまま交換作業を完了することができる。なお、図中には、新電源100Bを負荷装置200Aに接続した状態を図示している。
【0037】
このとき、電力供給補助装置10は、図4に示すように、新電源100Bの接続作業と一緒に、接続ケーブル11、12を旧電源100Aの電源MCCB120の上流側配電線111と下流側配電線112にそれぞれ接続してセッティングする。
【0038】
この後に、新電源100Bの電源MCCB120の投入後に旧電源100Aの電源MCCB120が遮断されると、適正に新電源100Bが接続されて正常に稼働している場合には、新旧電源100A、100Bが同電圧の直流電力を供給(出力)している。
【0039】
このため、電力供給補助装置10は、MPU27がデジタル電圧計23からバイパス電圧値を下回る測定電圧値を受け取ることはなく、そのまま旧電源100AをOFFして取り外すなど、新旧電源100A、100Bの交換作業を完了することができ、負荷装置200Aへの電力供給を継続することができる。
【0040】
一方、旧電源100Aの電源MCCB120が遮断されたときに、例えば、新電源100Bの負荷装置200Aへの接続が不十分で電圧降下などが発生している場合や、新電源100Bの電源MCCB120の投入を失念したままである場合には、旧電源100Bからの適正稼働可能な電圧の直流電力供給が中断する。この場合には、負荷装置200Aが安定化用のコンデンサを備えていたとしても徐々に、例えば、定常時のDC110Vから稼働限界のDC95Vを切るような電圧低下をする。なお、以下の電圧値表記ではDCを省略する。
【0041】
このため、電力供給補助装置10は、MPU27がデジタル電圧計23から、例えば、95Vなどに設定されているバイパス電圧値を下回る測定電圧値を受け取ることになり、電子SW21のON/OFFを高速に切り換えて遮断状態から導通状態にすることにより、旧電源100Aからの電力供給を再開することができ、負荷装置200Aへの電力供給を途切れることなく継続することができる。この負荷装置200の稼動電圧としては、JEM規格等では電源電圧の変動範囲として85〜110%と規定されており、電源電圧110Vである場合には下限値93.5Vであることから、稼動下限限界値として、安全を考慮して95Vが設定されている。
【0042】
このとき、MPU27は、新電源100Bの故障または接続不良などによる供給電力の電圧異常発生を不図示の警報ブザーの鳴動や液晶表示器16への警報メッセージの出力表示により報知するようになっている。
【0043】
なお、新電源100Bの負荷装置200Aへの接続が不十分な場合の接触抵抗による電圧降下としては、端子部における接触抵抗による電圧降下が発生するとともに、接続電線113の選定ミスによる電圧降下も発生する。この接続電線113の選定ミスとは、例えば、本来、撚線断面積が5.5mmの電線Aを選定する必要があるところを、1.25mmの電線Bを選定して、電圧110V・電流10Aで100mの直流電力供給をしようとする場合には、電線Aが3.4Ω/km、電線Bが16.8Ω/kmであることから、次の電圧降下A、Bが生じる。
電線A:電圧降下A=3.4Ω×0.1km×10A×2(往復分)=6.8V
電線B:電圧降下B=16.8Ω×0.1km×10A×2(往復分)=33.6V
【0044】
このことから、電源100側の直流電力の供給点では110Vであるのに対して負荷装置200側の受電点では次の受電電圧A、Bに電圧降下している。
電線A:受電電圧A=110V-6.8V=103.2V
電線B:受電電圧B=110V-33.6V=76.4V
【0045】
このため、適正に電線Aが選定されている場合には、負荷装置200での受電電圧Aは、95V以上であることから、負荷装置200を正常に稼動させることができる一方、ミスで電線Bが選定されている場合には、負荷装置200での受電電圧Bは、95V未満であることから、負荷装置200を正常に稼動させることができないが、電力供給補助装置10をセットしておくだけで、負荷装置200の稼働を継続維持することができる。
【0046】
この電力供給補助装置10は、例えば、図4に示すようにセッティングされて電源投入後に操作ボタンSW18で電源交換補助モードが選択されている場合、図5に示すように、MPU27がデジタル電圧計23による電圧測定を確認したときに(ステップS11)、旧電源100Aの電源MCCB120の上流側と下流側の差電圧値に応じたメッセージを液晶表示器16に表示出力するようになっている(ステップS12〜S32)。すなわち、MPU27は、電源MCCB120の遮断状態などの健全性を確認する動作判定部をも構成している。
【0047】
このとき、電力供給補助装置10は、旧電源100Aの電源MCCB120を遮断する前には新電源100B側と導通状態であることから、デジタル電圧計23は同電位を測定するが、その電源MCCB120を遮断した後には、デジタル電圧計23は旧電源100Aと新電源100Bの電源電圧をそれぞれ測定することになる。
【0048】
このため、MPU27は、旧電源100Aの電源MCCB120の遮断操作をした後に、デジタル電圧計23が測定する電圧値の差が0.5V以上で10V未満の範囲内である場合には(ステップS12)、異なる新旧電源100A、100Bの電源電圧値に起因する差電圧で旧電源100Aの電源MCCB120は正常動作していると判断して(ステップS13)、旧電源100Aの切離完了および新電源100Bからの直流電力の供給中である旨を示す正常メッセージを液晶表示器16に表示出力する(ステップS14)。
【0049】
また、MPU27は、旧電源100Aの電源MCCB120の遮断操作をした後に、デジタル電圧計23が測定する電圧値の差が10V以上である場合には(ステップS12)、電子SW21が導通状態に変移(バイパス)して旧電源100Aからの直流電力の供給を再開するとともに(ステップS21)、新電源100Bの電源MCCB120が投入されていないなどの動作不良と判断して(ステップS22)、新電源100Bの電源MCCB120の投入不良などの供給電圧異常発生の旨を示す警告Aメッセージを液晶表示器16に表示出力する(ステップS23)。
【0050】
また、MPU27は、旧電源100Aの電源MCCB120の遮断操作をした後に、デジタル電圧計23が測定する電圧値の差が0.5V未満である場合には(ステップS12)、その電源MCCB120が導通状態にあって動作不良と判断して(ステップS31)、旧電源100Aの電源をオフした後にもその旧電源100A側に新電源100Bの電源電圧が流れ込んでいる旨を示す警告Bメッセージを液晶表示器16に表示出力する(ステップS32)。
【0051】
したがって、作業者は、旧電源100Aの電源MCCB120の遮断操作後に液晶表示器16の表示メッセージを確認することにより、新電源100Bからの直流電力の供給が継続維持されているか否かを把握することができるとともに、新旧電源100A、100Bの電源MCCB120の動作不良や操作ミスなどの不具合発生を把握することができ、適切かつ迅速に処置することができる。なお、警告Bメッセージは、旧電源100Aの電源MCCB120の遮断操作前(同電位状態)にも液晶表示器16に表示出力されることから、その電源MCCB120の遮断操作を未だしていないことを把握することができ、不注意で旧電源100の電源MCCB120の遮断操作をすることなく、旧電源100を電源オフして取り外す作業をしてしまうことを未然に防止することができる。
【0052】
ところで、電力供給補助装置10は、図3に示すように、新旧電源100A、100Bを並列接続して旧電源100Bにそのまま交換することができないために、図6に示すように、旧電源100Aの設置場所に新電源100Bを設置する交換作業を行う場合にも利用することができる。この場合には、新旧電源100A、100Bに仮設蓄電池100Cを一時的に並列接続して直流電力の供給を継続しつつ、その新旧電源100A、100Bを入れ替える作業を行う。
【0053】
このとき、電力供給補助装置10は、仮設蓄電池100Cを旧電源100Aと並列にして負荷装置200A、200Bに接続する際には、上述したように旧電源100Aの電源MCCB120の配電線111、112に接続ケーブル11、12をそれぞれ接続して旧電源100Aから仮設蓄電池100Cに交換する作業を行う。この後には、新電源100Bを仮設蓄電池100Cと並列にして負荷装置200A、200Bに接続する際には、その仮設蓄電池100Cを旧電源100Aと同様に扱って仮設蓄電池100Cの電源MCCB120の配電線111、112に接続ケーブル11、12をそれぞれ接続して仮設蓄電池100Cから新電源100Bに交換する作業を行えばよい。電力供給補助装置10は、それぞれで負荷装置200A、200Bに電力供給を継続維持するように機能する。
【0054】
また、電力供給補助装置10(MPU27)は、操作ボタンSW18で電源バックアップ補助モードが選択されている場合にも、デジタル電圧計23が測定する電圧値が記憶装置29内に予め設定されているバイパス電圧値よりも低くなったときに、電子SW21を遮断状態から導通状態に切り換えるようになっている。
【0055】
具体的に、図7に示すように、常時電力供給を維持する必要がある重要な負荷装置200Aとして、接続電線113を電源100Aに接続して電力供給をするとともに、コストを掛けてまで電力供給を維持する必要のない一般的な負荷装置200Bとして、接続電線113を電源100Bに接続して電力供給をする電源回路に、電力供給補助装置10を有効に機能させるようにセッティングする場合を一例にして説明する。
【0056】
このとき、電力供給補助装置10は、電源100A、100Bの空いている電線接続箇所同士を、電源MCCB120を介して互いに電力供給可能に接続電線114で導通接続するとともに、その電源100Bの電源MCCB120を遮断状態にして、その上流側配電線111と下流側配電線112に接続ケーブル11、12をそれぞれ接続する。
【0057】
この後に、電源100Aの整流器101が故障などして電力供給不能になった後に、蓄電池102からの補充電力が放電し切って、重要な負荷装置200Aへの供給電力の電圧値が低下したときには、電力供給補助装置10のMPU27がデジタル電圧計23からバイパス電圧値95Vを下回る測定電圧値を受け取る。この場合、MPU27は、電子SW21のON/OFFを切り換えて遮断状態から導通状態にすることにより、電源100Bからの電力供給を開始して負荷装置200Aへの電力供給を継続維持(バックアップ)する。なお、電源100Aを点検等するために整流器101を切り離す場合でも同様に機能させることができ、また、負荷装置200Bのための電源100Bがない場合でも、バックアップ用の蓄電池を設置しておいて異常発生時に機能させるようにセットすることもできる。
【0058】
したがって、電力供給補助装置10は、新旧電源100A、100Bの交換だけでなく、重要な負荷装置200Aへの電力供給をする電源100Aのバックアップ電源を確保することができるように機能させることもできる。
【0059】
このように本実施形態においては、旧電源100Aから新電源100Bに切り換えたのにも拘わらず、負荷装置200に電力供給する電源電圧が低くなるときには、電源MCCB120をバイパスして旧電源100Aからの電力供給を再開して負荷装置200の稼動を継続することができる。したがって、新電源100Bが不調であったり、接続作業に不備がある場合などにも適正な電源電圧の電力供給を維持することができ、負荷装置200が不用意に停止してしまうことを回避することができる。この結果、電源100からの停電等のない確実かつ信頼性の高い電力供給を実現することができる。
【0060】
ここで、本実施形態の他の態様としては、上述実施形態では直流電源に対してセットする場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、交流電源に対してセットして交換作業などを補助するようにすることもできる。
【0061】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
10 電力供給補助装置
11、12 接続ケーブル
16 液晶表示器
18 操作ボタンスイッチ
21 電子SW
23 デジタル電圧計
100、100A、100B 直流電源装置
100C 仮設蓄電池
101 整流器
102 蓄電池
111 上流側配電線
112 下流側配電線
113、114 接続電線
120 電源MCCB
200、200A、200B 負荷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に開閉器を介して接続されている電源の該負荷への電力供給を補助する電力供給補助装置であって、
前記開閉器の下流に位置する前記負荷への供給電圧を検出する電圧検出部と、前記開閉器をバイパスして前記電源から前記負荷に電力供給可能に接続または該接続を遮断するバイパス接続部と、前記電圧検出部が検出する前記負荷への供給電圧に基づいて前記バイパス接続部の接続または遮断を制御する接断制御部と、を備えることを特徴とする電力供給補助装置。
【請求項2】
前記開閉器の上流側の前記電源に接続されている電力供給電線に導通接続されて前記負荷への電力供給可能な容量を有する第1接続電線と、前記開閉器の下流側の前記負荷に接続されている電力供給電線に導通接続されて前記負荷への電力供給可能な容量を有する第2接続電線と、を備えて、
前記電圧検出部および前記バイパス接続部は、前記第1、第2接続電線に接続されており、
前記バイパス接続部は、前記第1、第2接続電線の間に導通接続または該導通接続を遮断するスイッチ部を備えるとともに、
前記電圧検出部は、前記第1、第2接続電線に接続されて前記負荷への供給電圧として前記開閉器の上流側と下流側の電圧を検出することを特徴とする請求項1に記載の電力供給補助装置。
【請求項3】
前記バイパス接続部は、前記第1、第2接続電線の間に、過電圧または過電流の導通時に当該導通状態を遮断する遮断器を介在させていることを特徴とする請求項2に記載の電力供給補助装置。
【請求項4】
前記接断制御部は、前記電圧検出部が検出する前記負荷への供給電圧が予め設定されている電圧値以下になった場合に、前記バイパス接続部の接続制御を実行して前記開閉器をバイパスさせて前記電源から前記負荷に電力供給させるように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力供給補助装置。
【請求項5】
前記バイパス接続部は、前記電源の新旧交換作業時に、当該旧電源が接続されている前記開閉器をバイパスするように設置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電力供給補助装置。
【請求項6】
前記バイパス接続部は、定常時に電力供給する電源に、前記開閉器を介して並列接続されている別電源の当該開閉器をバイパスするように設置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電力供給補助装置。
【請求項7】
前記電圧検出部を前記開閉器の前記負荷側の下流側に加えて、前記開閉器の前記電源側の上流側の電圧も検出するように構成して、
当該電圧検出部が検出する前記開閉器の上流側と下流側の間の電圧差に基づいて該開閉器の健全性を判定する動作判定部と、該動作判定部の判定結果を報知する報知部と、を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電力供給補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90409(P2013−90409A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227879(P2011−227879)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】