説明

電力制御方法および電力制御装置

【課題】高調波の発生を抑制し、高精度な制御を可能としながら、負荷の過電流や断線などの異常の検出精度を高めた三相交流電源の電力制御方法および電力制御装置を提供する。
【解決手段】三相のいずれか一つの相R−Sを、負荷電源としてゼロクロスタイミングを検出して、1サイクル以上の所定周期、例えば、2サイクルでゼロクロス制御を行なうので、この2サイクル内に、他の相S−T,R−Tの電流のピークが含まれることになり、各相のピーク電流値を計測し、その計測値に基づいて、負荷の過電流や断線等の異常を高い精度で検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に対する三相交流の電力を制御する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒータ等の負荷の電力を制御する方法としては、交流負荷の場合では、交流電源のゼロクロスタイミングでスイッチングするサイクル制御や交流電流が流れる位相角を制御して電力を調整する位相制御がある。
【0003】
サイクル制御では、制御周期が固定であり、かつ1サイクルを単位としてON/OFF制御するので、出力分解能が低く、制御精度が悪く、出力応答も遅い。また、ON状態が時間的に偏るため、制御対象の寿命に悪影響、例えば制御対象がヒータの場合、熱ストレスが大きいという問題がある。
【0004】
一方、位相制御では、高精度の制御が可能であるが位相角を制御するものであるから、基本波成分以外に高調波が発生するという問題がある。さらに高速処理が必要であるため、装置全体が高価になるという問題がある。
【0005】
そこで、本件出願人は、高調波の発生を抑制し、しかも従来のサイクル制御に比べて、高精度な制御が可能なサイクル制御装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−265446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に提案している上述のサイクル制御装置では、例えば、半波を周期としてゼロクロス制御を行なうものであり、ノイズの発生を抑えながら、従来のサイクル制御に比べて、応答の速い高精度な制御を可能とするものである。
【0007】
かかるサイクル制御装置では、負荷の過電流、負荷であるヒータの断線、あるいは、SSR等のスイッチング手段の短絡などの異常を検出するために、電流のピーク値を計測する必要がある。
【0008】
しかしながら、半波を周期としてゼロクロス制御を行なう上述のサイクル制御装置を、三相交流電源の電力制御に適用しようとすると、電流のピーク値を正確に計測できず、過電流やヒータ断線等の異常を誤検出する場合があるという課題がある。
【0009】
図9は、かかる課題を説明するための波形図であり、同図において、(a)は、三相のいずれかの相に対応する負荷電源、(b)は各相に対する電力の供給遮断を行うSSR等のスイッチング手段に対するトリガ信号、(c)〜(e)は、各相の電流をそれぞれ示しており、この図9では、(c)に示されるR−S相を負荷電源としている。
【0010】
上述のサイクル制御装置では、(a)に示される負荷電源のゼロクロスタイミングを検出して、半波を周期(半サイクル)としてON/OFF制御を行ない、半波毎に負荷に流れる電流のピーク値を計測し、過電流等の異常を検出することになる。
【0011】
したがって、(c)に示される負荷電源と同一のR−S相では、例えば、(b)に示されるトリガ信号が、ONしている半サイクルの期間T2内に、電流のピーク値が含まれるけれども、他の相では、位相が120度ずつずれているために、例えば、(d)に示されるS−T相では、同一の半サイクルの期間T2内には、電流のピーク値が存在しないことになり、電流のピーク値を正確に計測できず、その結果、負荷の過電流や負荷であるヒータの断線などの異常の検出を正確に行えず、誤検出する場合があるという課題がある。
【0012】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、高調波の発生を抑制し、高精度な制御を可能としながら、負荷の過電流や断線などの異常の検出精度を高めた三相交流電源の電力制御方法および電力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の電力制御方法は、入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、三相交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って前記負荷への電力を制御する方法において、前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、閾値と比較して閾値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記閾値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクルのn(nは2以上の自然数)倍以上の所定周期で行うものである。
【0014】
「入力電力指令値」とは、負荷に供給する電力を制御するために与えられる指令値をいい、例えば、調節計やPLC(プログラマブルロジックコントローラ)などから与えられる操作量などをいい、例えば、0%〜100%の値をとる。
【0015】
「出力電力指令値」とは、入力電力指令値に基づいて得られる指令値であって、スイッチング手段をONまたはOFFに制御するのに用いられる指令値をいい、ONまたはOFFに対応して、例えば、100%または0%の値をとる。
【0016】
「スイッチング手段」とは、ON/OFFして負荷への電力の供給/遮断を行う手段をいい、例えば、ゼロクロス機能付きのSSRなどで構成されるのが好ましい。
【0017】
「所定周期」とは、電力制御を行うために定めた周期をいい、応答速度を高めるためには、短い周期であるのが好ましいが、少なくとも半サイクルの2倍以上のサイクルである。
【0018】
「閾値」は、0%以上100%以下の範囲にあるのが好ましく、速応性の観点からは小さいのが好ましい。
【0019】
本発明の電力制御方法によると、半サイクルのn(nは2以上の自然数)倍以上の所定周期で制御するので、三相の内のいずれか一つの相を、負荷電源としてゼロクロスタイミングを検出して制御を行なっても、所定周期内に、他の相の負荷に流れる電流のピークが含まれることになり、各相のピーク電流値を計測することが可能となる。これによって、高調波の発生を抑制し、高精度な制御を可能としながら、各相のピーク電流値を計測して、負荷の過電流や断線といった異常の検出精度を高めて、誤検出を有効に防止することができる。
【0020】
(2)本発明の電力制御方法の一つの実施形態では、前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を、出力誤差値として演算する演算ステップと、前記出力誤差値を累積して出力誤差累積値とする出力誤差累積ステップと、前記出力誤差累積値と前記入力電力指令値とを加算して判定値とする加算ステップと、前記判定値と前記閾値とを比較して、前記判定値が前記閾値を上回るときに、前記ON制御する一方、前記判定値が前記閾値を下回るときには、前記OFF制御する制御ステップとを含むものとしてもよい。
【0021】
この実施形態によると、上記演算ステップ、上記出力誤差累積ステップ、上記加算ステップおよび上記制御ステップを、所定周期毎に行なうことにより、高調波の発生を抑制し、高精度な制御を可能としながら、各相のピーク電流値を計測して、負荷の過電流や断線といった異常の誤検出を有効に防止することができる。
【0022】
(3)本発明の電力制御方法の他の実施形態では、前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差である出力誤差値を累積した出力誤差累積値に、新たな前記入力電力指令値を加算して判定値とする加算ステップと、前記判定値と前記閾値とを比較して、前記判定値が前記閾値を上回るときに、前記ON制御する一方、前記判定値が前記閾値を下回るときには、前記OFF制御する制御ステップと、前記判定値から前記ON制御または前記OFF制御に対応する出力電力指令値を減算して新たな出力誤差累積値とする減算ステップとを含むものとしてもよい。
【0023】
この実施形態によると、上記加算ステップ、上記制御ステップおよび上記減算ステップを、所定周期毎に行うことにより、高調波の発生を抑制し、高精度な制御を可能としながら、各相のピーク電流値を計測して、負荷の過電流や断線といった異常の誤検出を有効に防止することができる。
【0024】
(4)本発明の電力制御方法の好ましい実施形態では、前記所定周期が、2サイクルである。
【0025】
所定周期を1サイクルとすることによって、1サイクル内に、各相の負荷に流れる電流のピークが含まれることになるが、ノイズなどの影響によって位相がずれる場合があり、この実施形態では、所定周期を2サイクルとしているので、位相のずれが生じても、各相の電流のピーク値を計測することができる。
【0026】
(5)上記(4)の実施形態では、前記所定周期の後半で前記負荷に流れる電流を計測するようにしてもよい。
【0027】
この電流の計測は、交流電流検出器を用いて各相の電流を検出し、全波整流し、そのピークをホールドするのが好ましく、ホールドされたピーク値を、所定周期の後半のタイミングで読み込むのが好ましい。
【0028】
この実施形態によると、所定周期の前半で、各相の電流が安定するのを待った後、所定周期の後半で電流を計測するので、より正確に電流のピーク値を計測することができる。
【0029】
(6)本発明の電力制御装置は、入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、三相交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って前記負荷への電力を制御する装置において、前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、閾値と比較して閾値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記閾値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクルのn(nは2以上の自然数)倍以上の所定周期で行う制御手段を備えている。
【0030】
本発明の電力制御装置によると、半サイクルのn(nは2以上の自然数)倍以上の所定周期で制御するので、三相の内のいずれか一つの相を、負荷電源としてゼロクロスタイミングを検出して制御を行なっても、所定周期内に、他の相の負荷に流れる電流のピークが含まれることになり、各相のピーク電流値を計測することが可能となる。これによって、高調波の発生を抑制し、高精度な制御を可能としながら、各相のピーク電流値を計測して、負荷の過電流や断線といった異常の検出精度を高めて、誤検出を有効に防止することができる。
【0031】
(7)本発明の電力制御装置の一つの実施形態では、前記制御手段は、前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値とする演算を行う演算部と、前記出力誤差値を累積して出力誤差累積値とする累積処理を行う出力誤差累積部と、前記出力誤差累積値と前記入力電力指令値とを加算して判定値とする加算処理を行う加算部と、前記判定値と閾値とを比較し、前記判定値が前記閾値を上回るときに、前記ONに対応する前記出力電力指令値を設定する一方、前記出力誤差累積値が前記閾値を下回るときには、前記OFFに対応する前記出力電力指令値を設定する処理を制御部とを備えている。
【0032】
この実施形態によれば、高調波の発生を抑制し、高精度な制御を可能としながら、各相のピーク電流値を計測して、負荷の過電流や断線といった異常の誤検出を防止することができる。
【0033】
(8)本発明の電力制御装置の好ましい実施形態では、前記所定周期が、2サイクルである。
【0034】
この実施形態では、ノイズなどの影響によって位相がずれても、各相のピーク電流値を計測することができる。
【0035】
(9)上記(8)の実施形態では、前記所定周期の後半で前記負荷に流れる電流を計測するようにしてもよい。
【0036】
この実施形態によると、所定周期の前半で、各相の電流が安定するのを待った後、所定周期の後半で電流を計測するので、より正確に電流のピーク値を計測することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、三相交流電源のゼロクロス制御を、半サイクルのn(nは2以上の自然数)倍以上の所定周期で行なうので、三相の内のいずれか一つの相を、負荷電源としてゼロクロスタイミングを検出して制御を行なっても、所定周期内に他の相の電流のピークが含まれることになり、各相のピーク電流値を計測することが可能となる。これによって、高調波の発生を抑制し、高精度な制御を可能としながら、各相のピーク電流値を計測して、負荷の過電流や断線といった異常の誤検出を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面によって、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る電力制御装置を備えるシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0040】
このシステムは、温度調節器、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)あるいはPC(パーソナルコンピュータ)などの上位機器1と、本発明に係る電力制御装置2と、三相交流電源とヒータなどの負荷3との間に設けられて、前記電力制御装置2からのトリガ信号によってON/OFF制御されるスイッチング手段4と、負荷3に流れる電流を検出する電流検出器(CT)5とを備えている。
【0041】
この実施形態の電力制御装置2は、上位機器1から与えられる入力電力指令値(入力操作量)に基づく出力電力指令値(出力操作量)を用いて、スイッチング手段4に対するトリガ信号を生成してスイッチング手段のON/OFF制御を行なうとともに、電流検出器5の出力に基づいて、後述するタイミングでピーク電流値を読み込んで計測し、過電流やヒータ断線等の異常を検出して警報を出力するものである。
【0042】
電力制御装置2には、負荷電源として、三相交流電源のいずれか一つの相、例えば、R−S相が接続されており、この負荷電源のゼロクロスタイミングを検出して後述の所定周期で、スイッチング手段4のON/OFF制御を行なうものである。
【0043】
スイッチング手段4は、ゼロクロス機能を有する三相用のSSR(ソリッドステートリレー)で構成され、電力制御装置2からのトリガ信号によって、ON/OFF制御されて負荷3に対する電力の供給遮断を行う。
【0044】
図2は、電力制御装置2の要部のブロック図である。
【0045】
電力制御装置2は、上位機器1から与えられる0%〜100%の入力電力指令値(入力操作量)と、スイッチング手段4に対するONまたはOFFに対応する100%または0%の出力電力指令値(出力操作量)との出力誤差を算出する出力誤差演算部6と、出力誤差演算部6で求めた出力誤差を累積する出力誤差累積部7と、入力電力指令値(入力操作量)と出力誤差累積値とを加算して判定値とする加算部8と、判定値と閾値とを比較し、閾値以上のときに、ONに対応する100%の出力電力指令値(出力操作量)を設定してスイッチング手段4をON制御する一方、閾値未満ときに、OFFに対応する0%出力電力指令値(出力操作量)を設定してスイッチング手段4をOFF制御する制御部9とを備えており、所定周期、例えば、2サイクル(4半波)毎に処理を行うものである。
【0046】
以上の構成は、例えば、マイクロコンピュータによって実現され、このマイクロコンピュータによって、負荷電源のゼロクロスタイミングが検出されてON/OFF制御が行なわれるとともに、後述の各相の電流の計測が行われる。
【0047】
次に、この実施の形態の動作を、図3のフローチャートに基づいて詳細に説明する。この図3は、所定周期である2サイクルにおける処理を示している。
【0048】
先ず、前回までの出力誤差累積値から前回の出力操作量を減算して、今回の出力誤差累積値を算出し(ステップn1)、この出力誤差累積値に、今回の入力操作量を加算して判定値とし(ステップn2)、判定値が、閾値、例えば、50%以上であるか否かを判断する(ステップn3)。
【0049】
判定値が、閾値以上であるときには、今回の出力操作量(出力電力指令値)として100%を設定し、出力をONするためのトリガ信号を出力する(ステップn4)。また、判定値が、閾値以上でないときには、今回の出力操作量(出力電力指令値)として0%を設定し、出力をOFFする(ステップn5)。
【0050】
この実施形態では、以上の処理を、2サイクル毎に行なうものである。なお、複数チャンネルの制御を行なう場合には、2サイクル内で、上記の処理を各チャンネルについて行う。
【0051】
また、図3の処理に代えて、図4のフローチャートに示す処理としてもよい。
【0052】
すなわち、図4に示すように、それまでに累積されている出力誤差累積値である積算操作量に、今回の入力操作量(入力電力指令値)を加算して判定値とし(ステップn1)、判定値が閾値、例えば、50%以上であるか否かを判断する(ステップn2)。
【0053】
判定値が、閾値以上であるときには、今回の出力操作量(出力電力指令値)として100%を設定し、出力をONするためのトリガ信号を出力する(ステップn3)。また、判定値が、閾値以上でないときには、今回の出力操作量(出力電力指令値)として0%を設定し、出力をOFFする(ステップn4)。
【0054】
次に、判定値から、今回のONまたはOFFに対応する出力操作量である100%または0%を減算して新たな出力誤差累積値である積算操作量を算出して終了する(ステップn5)。
【0055】
以上の処理を、2サイクル毎に行なうものである。
【0056】
図5および図6は、入力される操作量(入力電力指令値)が20%および60%の場合の例をそれぞれ示すものであり、各図(a)は負荷電源、各図(b)は出力誤差累積値(積算操作量)の変化をそれぞれ示しており、各図(a)において、斜線を施した部分が、出力ONの状態を示している。
【0057】
なお、図5および図6の下欄には、出力誤差累積値(積算操作量)が、閾値50%以上となって、100%の出力操作量を設定して出力をONした場合に、出力誤差累積値から100%の出力操作量が減算された値が示されている。また、出力誤差累積値が、閾値50%未満で、0%の出力操作量を設定して出力をOFFし、出力誤差累積値から0%の出力操作量を減算した場合には、出力誤差累積値の値に変化がないので、省略している。
【0058】
図5に示すように、入力操作量20%と出力される出力操作量である0%または100%との差である出力誤差が、累積されて出力誤差累積値とされ、この出力誤差累積値が、閾値である50%以上になると、出力操作量を100%に設定して出力をONし、閾値未満であるときには、出力操作量0%に設定して出力をOFFするものである。
【0059】
この実施形態では、2サイクルを所定の周期として処理を行なうので、入力される操作量が20%の場合には、20サイクルの内の4サイクルでONすることになる。
【0060】
また、同様に、入力される操作量が、60%である場合には、図6に示すように、20サイクルの内の12サイクルでONすることになる。
【0061】
図7は、各相の電流波形を示すものであり、同図(a)は負荷電源、同図(b)はトリガ信号、同図(c)〜(e)は、各相の電流波形を示す図である。
【0062】
半サイクル毎に処理を行なってピーク電流を計測しようとすると、上述の図9のように、各相の位相が、120度ずつずれるために、負荷電源とは異なる他の相のピーク電流を正確に計測できない場合があるのに対して、この実施形態では、2サイクル毎に処理を行なっているので、各相の位相がずれていても、(b)に示すトリガ信号がONしている2サイクル内に、(c)〜(e)に示すように、各相の電流のピーク値が存在することになる。
【0063】
しかも、この実施形態では、他の相の電流が安定するための待ち時間をとって、2サイクルの内の後半の1サイクルの期間T1で各相のピーク電流を計測するようにしている。
【0064】
図8は、このピーク電流値の計測のタイミングを説明するための波形図であり、同図において、(a)は負荷電源、(b)はゼロクロス信号、(c)は半波を計数する半波カウンタの計数値、(d)はCTリフレッシュ信号、(e)はトリガ信号、(f)は全波整流波形、(g)ピーク電流値を示している。
【0065】
半波カウンタは、上述のマイクロコンピュータに内蔵されており、所定周期である2サイクルに対応する1〜4の半波の計数を繰り返すものである。
【0066】
この実施形態では、上述の図1に示される電流検出器(CT)5で検出された電流を、(f)に示すように全波整流し、(g)に示すようにピーク値をホールドするものである。
(d)に示されるCTリフレッシュ信号は、ホールドしたピーク電流値をリフレッシュするものであり、(c)に示される半波カウンタの計数値が、1,2のとき、すなわち、所定周期である2サイクルの前半の1サイクルでピーク電流値をリフレッシュする。
【0067】
そして、後半の1サイクルでは、(f),(g)に示すように、ピーク電流値を保持し、(c)に示す半波カウンタの計数値が4のときに、(g)に示すピーク電流値に対応するA/D値を取得するものである。
【0068】
このように、2サイクルの後半の1サイクルで各相のピーク電流値を保持し、最後の半波のタイミングでピーク電流値を取り込むので、ノイズなどによって位相にずれが生じても各相のピーク電流値を精度よく計測することができる。
【0069】
以上のようにして計測した各相のピーク電流値を用いて、次のようにしてヒータ断線や過電流等の異常を検出する。
【0070】
負荷3であるヒータの断線の検出は、制御出力がONしているとき、負荷3に流れる電流のピーク値が、ヒータ断線検出値以下になっているかどうかを判定することで行われる。
【0071】
また、過電流の検出は、制御出力がONしているとき、負荷3に流れる電流のピーク値が過電流検出値以上であるかを判定することで行われる。
【0072】
スイッチング手段4を構成するSSRの短絡の検出は、制御出力がOFFしているとき、負荷3に流れる電流のピーク値がSSR短絡検出値以上に流れているかを判定することで行われる。
【0073】
このように所定周期である2サイクルの後半の1サイクルで各相の電流のピーク値を計測して、ヒータ断線、過電流、あるいは、SSR短絡を精度よく検出できることになる。
【0074】
なお、所定周期は、2サイクルに限らず、1サイクル以上であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、三相交流電源の電力制御に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明に係る電力制御装置を備えるシステムの概略構成図である。
【図2】図2は、図1の電力制御装置の要部のブロック図である。
【図3】図3は、動作説明に供するフローチャートである。
【図4】図4は、他の実施形態の動作説明に供するフローチャートである。
【図5】図5は、入力操作量が20%の場合の出力波形および出力誤差累積値(積算操作量)の変化を示す図である。
【図6】図6は、入力操作量が60%の場合の出力波形および出力誤差累積値(積算操作量)の変化を示す図である。
【図7】図7は、負荷電源、トリガ信号および各相の電流波形を示す図である。
【図8】図8は、ピーク電流値の取り込みタイミングを説明するための図である。
【図9】図9は、課題を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0077】
1 上位機器
2 電力制御装置
3 負荷
4 スイッチング手段
5 電流検出器(CT)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、三相交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って前記負荷への電力を制御する方法において、
前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、閾値と比較して閾値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記閾値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクルのn(nは2以上の自然数)倍以上の所定周期で行うことを特徴とする電力制御方法。
【請求項2】
前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を、出力誤差値として演算する演算ステップと、
前記出力誤差値を累積して出力誤差累積値とする出力誤差累積ステップと、
前記出力誤差累積値と前記入力電力指令値とを加算して判定値とする加算ステップと、
前記判定値と前記閾値とを比較して、前記判定値が前記閾値を上回るときに、前記ON制御する一方、前記判定値が前記閾値を下回るときには、前記OFF制御する制御ステップとを含む請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項3】
前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差である出力誤差値を累積した出力誤差累積値に、新たな前記入力電力指令値を加算して判定値とする加算ステップと、
前記判定値と前記閾値とを比較して、前記判定値が前記閾値を上回るときに、前記ON制御する一方、前記判定値が前記閾値を下回るときには、前記OFF制御する制御ステップと、
前記判定値から前記ON制御または前記OFF制御に対応する出力電力指令値を減算して新たな出力誤差累積値とする減算ステップとを含む請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項4】
前記所定周期が、2サイクルである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【請求項5】
前記所定周期の後半で前記負荷に流れる電流を計測する請求項4に記載の電力制御方法。
【請求項6】
入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、三相交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って前記負荷への電力を制御する装置において、
前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、閾値と比較して閾値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記閾値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクルのn(nは2以上の自然数)倍以上の所定周期で行う制御手段を備えることを特徴とする電力制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値とする演算を行う演算部と、前記出力誤差値を累積して出力誤差累積値とする累積処理を行う出力誤差累積部と、前記出力誤差累積値と前記入力電力指令値とを加算して判定値とする加算処理を行う加算部と、前記判定値と閾値とを比較し、前記判定値が前記閾値を上回るときに、前記ONに対応する前記出力電力指令値を設定する一方、前記出力誤差累積値が前記閾値を下回るときには、前記OFFに対応する前記出力電力指令値を設定する処理を制御部とを備える請求項6に記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記所定周期が、2サイクルである請求項6または7に記載の電力制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記所定周期の後半で前記負荷に流れる電流を計測する請求項8に記載の電力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−152354(P2008−152354A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337189(P2006−337189)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】