説明

電力制御装置および電力システム

【課題】自然エネルギーを利用した分散電源システムが使用される場合であっても、電力系統の擾乱をより適切に抑えることが容易となる電力制御装置を提供する。
【解決手段】自然エネルギーを利用した分散電源システムとともに共通の連系点において電力系統に連系された、コジェネレーションシステムの出力電力を制御する電力制御装置であって、前記連系点における潮流量の変動を抑制するように、前記出力電力の調節を行う電力制御装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御装置およびこれを備えた電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各需要家において、分散電源システムを電力系統に連系させて利用するケースが増えている。分散電源システムの種類としては、コジェネレーションシステム(分散電源として燃料電池やガスエンジン等が用いられている)などの他、自然エネルギーを利用するものが挙げられる。
【0003】
自然エネルギーを利用する分散電源システムとしては、太陽電池システム(分散電源として太陽電池が用いられている)や、風力発電によって電力を得るシステム等が挙げられる。このような自然エネルギーを利用する分散電源システムは、地球環境への負荷が小さいこと等から、今後の更なる普及が期待される。なお需要家は、太陽電池システム等の出力電力を電力系統へ逆潮流させ、電力会社への売電を行うことが可能である。
【0004】
しかし自然エネルギーを利用する分散電源システムは、一般的に、発電量が変動し易くなっている。例えば太陽電池システムの場合、日射量の変化等によって発電量が変動する。そのため、自然エネルギーを利用する分散電源システムが電力系統へ大量に連系されると、これらの分散電源システムにおける発電量の変動が、電力系統における意図しない電圧変化や周波数変動等(以下、「電力系統の擾乱」と称することがある)を引き起こすことが危惧される。
【0005】
このことは、自然エネルギーを利用する分散電源システムの更なる普及に伴い、より深刻な問題になると考えられる。なお特許文献1には、過剰に発電された電力をヒートポンプ等の負荷に消費させ、発電量の変動を吸収させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−194485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した問題に対応するため、電力会社側では、各需要家における分散電源システムの発電量や負荷の急変等に応じ、電力系統の擾乱が抑えられるように、揚水発電や火力発電の発電調整を行うことがある。しかし今後、自然エネルギーを利用する分散電源システムの増加に伴い、このような方法では、上述した問題に十分には対応出来なくなると想定される。また揚水発電所や火力発電所を十分に増やすことは、立地の問題等から、容易であるとは言えない。
【0008】
また電力系統の擾乱が抑えられるように、各需要家における太陽電池システム等の出力を、適宜抑制させることも考えられる。しかしこのような対応方法は、自然エネルギーの有効利用の観点から、望ましいとは言えない。
【0009】
また電力系統の擾乱が抑えられるように、各需要家において負荷調整(特許文献1に開示されているような、ヒートポンプ等による調整)が行われるようにすることも考えられる。しかしこのような対応方法では、消費側(負荷の機能しかない)の対応しか出来ず、自然エネルギーを利用した分散電源システムの発電量の減少に対しては、適切に対応することが難しい。
【0010】
本発明は上述した問題に鑑み、自然エネルギーを利用した分散電源システムが使用される場合であっても、電力系統の擾乱をより適切に抑えることが容易となる電力制御装置、および電力システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る電力制御装置は、自然エネルギーを利用した分散電源システムとともに共通の連系点において電力系統に連系された、コジェネレーションシステムの出力電力を制御する電力制御装置であって、前記連系点における潮流量の変動を抑制するように、前記出力電力の調節を行う構成とする。
【0012】
本構成によれば、自然エネルギーを利用した分散電源システムが使用される場合であっても、電力系統の擾乱をより適切に抑えることが容易となる。一例を挙げれば、コジェネレーションシステムに所定の消費電力を定常的に消費させておき、この消費電力を大小何れの方向にも調節可能としておけば、潮流量が増大側と減少側の何れに変動したときにも、この変動を抑制するように消費電力が調節され得る。なおここでの潮流量は、順潮流量と逆潮流量の何れをも含む概念である。
【0013】
また上記構成としてより具体的には、前記コジェネレーションシステムは電力消費装置を有し、発電した電力の一部を該電力消費装置に消費させ、残りを前記出力電力として出力するものであり、前記電力消費装置の消費電力を、前記潮流量が増大側に変動するときには小さくし、前記潮流量が減少側に変動するときには大きくすることにより、前記出力電力の調節を行う構成としてもよい。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、前記コジェネレーションシステムは、発電に伴う排熱を利用して水の加熱を行う設備を備えており、前記電力消費装置は、電力の消費によって熱を発生させ、前記水の加熱を補助する装置である構成としてもよい。
【0015】
また上記構成としてより具体的には、前記出力電力についての逆潮流が生じない範囲において、前記出力電力の調節を行う構成としてもよい。
【0016】
また上記構成において、基準時間における前記潮流量の変動の大きさを監視し、前記変動の大きさが基準値を上回ったときに、前記出力電力の調節を行う構成としてもよい。本構成によれば、潮流量の比較的急激な変動のみを抑制対象とし、効率良く出力電力の調節を行うことが可能となる。
【0017】
また上記構成としてより具体的には、前記出力電力の調節を、前記コジェネレーションシステムにおける発電電力の制御によっても行う構成としてもよい。
【0018】
また本発明に係る電力システムは、上記構成に係る電力制御装置、前記コジェネレーションシステム、および前記自然エネルギーを利用した分散電源システムを有する構成とする。本構成によれば、上記構成に係る電力制御装置の利点を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
上述した通り、本発明に係る電力制御装置によれば、自然エネルギーを利用した分散電源システムが使用される場合であっても、電力系統の擾乱をより適切に抑えることが容易となる。また本発明に係る電力システムによれば、当該電力制御装置の利点を享受することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る電力システムの形態を示す説明図である。
【図2】電力P1等の変動の様子に関する説明図である。
【図3】電力P1等の変動の様子に関する説明図である。
【図4】一日の主な時間帯における、各電力値の変動の様子に関する説明図である。
【図5】電力システムの別の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0022】
[電力システムの構成等について]
図1は、本実施形態に係る電力システムの形態を示している。図1において、点線の左側および右側が、それぞれ、電力系統側(電力会社が提供している電力系統)および需要家側(一需要家において形成された電力システム9)を表している。なお需要家は、電力会社との電力売買契約を結んでいる家庭や事業体などである。電力会社との電力売買は、需要家ごとに別個に行われることになる。
【0023】
図1に示すように電力システム9は、電力系統に接続されている電力伝送ラインL(図1に太線で示す部分)を有している。電力伝送ラインLには、一または複数の負荷LD(例えばその需要家において利用される電気機器)が接続される。これらの負荷LDは、電力伝送ラインLを通じて供給される電力、つまり電力伝送ラインLに接続された電力系統や分散電源システムから供給される電力を、電源として用いて動作する。なお以下の説明において、各負荷LDの消費電力の総和を、電力PLOADと表すことがある。
【0024】
また電力システム9は、分散電源システム(分散電源を用いて電力を出力するシステム)として、太陽電池システム1、およびコジェネレーションシステム(以下、「コジェネシステム」と略記することがある)2を有している。これらの分散電源システム(1、2)は、それぞれ電力伝送ラインLに接続され、共通の連系点において電力系統に連系している。当該連系点においては、順潮流(電力系統側から電力システム9側へ向かう電力の流れ)或いは逆潮流(電力システム9側から電力系統側へ向かう電力の流れ)が生じることになる。
【0025】
太陽電池システム1は、分散電源の一つである太陽電池11によって得られる電力を、電力伝送ラインLへ出力する。太陽電池11は、太陽電池パネルなどから形成されており、受光した太陽光を光電変換することにより発電を行う装置である。また太陽電池システム1には、太陽電池用パワコン12が設けられている。太陽電池用パワコン12は電力伝送ラインLに接続されており、太陽電池11の発電によって得られた直流電力を交流に変換し、出力電力PSOLARとして電力伝送ラインLに向けて出力する。
【0026】
コジェネシステム2は、燃料電池21、排熱利用設備22、コジェネ用パワコン23、給湯補助設備24などを有している。燃料電池21は、予め供給されている燃料を用いて発電を行い、出力電力PFCをコジェネ用パワコン23に出力する。
【0027】
排熱利用設備22は、燃料電池21の発電に伴う排熱を利用して、給湯や空調などの熱需要をまかなうことを可能とする。排熱利用設備22よれば、例えば燃料電池21の排熱によって加熱した水(湯)を、当該設備の一つとして設けられている貯湯槽22aに貯めることが可能となっている。
【0028】
コジェネ用パワコン23は、燃料電池21の出力電力PFC(直流電力)の電圧等を変換するDC/DC変換部23a、および当該変換済みの電力を交流に変換するDC/AC変換部23bを有しており、DC/AC変換器23bによる変換済みの電力を出力する。コジェネ用パワコン23は、出力側が電力伝送ラインLおよび給湯補助設備24に接続されており、これらに向けて電力を出力する。
【0029】
給湯補助設備24は、AC/DC変換部24a、DC/DC変換部24b、およびヒータ24cを有しており、コジェネ用パワコン23等から電力PHEAT(交流電力)が入力される。給湯補助設備24は、AC/DC変換部24aにおいて、電力PHEATを直流に変換し、DC/DC変換部24bにおいて、直流に変換された電力の電圧等を変換する。DC/DC変換部24bによる変換済みの電力はヒータ24cに供給される。
【0030】
ヒータ24cは、供給された電力を消費して熱を発生させ、貯湯槽22a内の水を加熱する。ヒータ24cによれば、供給される電力を用いて、貯湯槽22a内の水を補助的に加熱することが可能となっている。
【0031】
このような構成によりコジェネシステム2は、燃料電池21が発電した電力の一部をヒータ24cに消費させ、残りを出力電力として、電力伝送ラインLに向けて出力する。なおヒータ24cにおける消費電力は、上述した通り、水の加熱という目的に有効利用され、無駄にはならない。またヒータ24cは、燃料電池21の発電量が過剰であるときにその電力の一部を消費し、コジェネシステム2の出力電力を適正値に抑えるための、余剰電力消費手段(負荷)としての役割も兼ねている。
【0032】
またコジェネ用パワコン23は、ヒータ24cにおける消費電力を制御する機能を備えている。当該消費電力が増減する分だけ、給湯補助設備24に入力される電力PHEATも増減することになる。またコジェネ用パワコン23は、燃料電池21の発電電力を制御する機能をも備えている。これらの制御がどのように行われるかについては、改めて説明する。
【0033】
また各分散電源システム(1、2)の電力伝送ラインLとの接続点に関し、コジェネシステム2における接続点(図1に示すB点)は、太陽電池システム1の接続点(図1に示すA点)より下流側(電力系統から遠い側)に設けられている。そして電力伝送ラインLにおいて、A点より上流側の位置には電力検出ポイント4aが、A点とB点の間には電力検出ポイント4bが、それぞれ設けられている。なお負荷LDは、B点より更に下流側に接続されている。
【0034】
そして電力検出ポイント4aにおいて検出される電力P1、および電力検出ポイント4bにおいて検出される電力P2の情報(何れも、上流から下流に向かう方向を正とする)は、コジェネ用パワコン23に伝送される。これによりコジェネ用パワコン23は、これらの情報を監視し、ヒータ24cにおける消費電力や、燃料電池21の発電電力の制御に利用することが可能となっている。なお電力P1は、各分散電源システム(1、2)の共通の連系点における潮流量(順潮流量もしくは逆潮流量)と同視することができる。
【0035】
[電力システムの動作等について]
上述した構成の電力システム9において、電力系統から供給される電力(順潮流した電力)および各分散電源システム(1、2)の出力電力は、電力伝送ラインLを通じて、負荷LDやヒータ24cに供給される。また各分散電源システム(1、2)の出力電力の総和が、負荷LDやヒータ24cに対して過剰である場合には、余剰分が電力系統へ逆潮流することになる。
【0036】
これにより、太陽電池システム1の出力電力の余剰分を逆潮流させ、需要家は電力会社への売電を行うことが可能となっている。但し電力売買に関する運用上、コジェネシステム2については、出力電力の逆潮流(売電)が禁止されている。このような事情が考慮され、コジェネ用パワコン23は、以下に説明する動作を行うよう設定されている。
【0037】
コジェネ用パワコン23は、電力P2が予め決められた買電閾値(ゼロ以上の値)を下回らない範囲、つまりコジェネシステム2による売電が行われない範囲において、ヒータ24cにおける消費電力および燃料電池21の発電電力を制御する。つまりコジェネ用パワコン23は、次の(1)式で表される条件を満たすように、当該制御を行う。
P2>買電閾値 ・・・(1)
【0038】
なおコジェネ用パワコン23は、(1)式の代わりに、例えば次の(2)式で表される条件を満たすように、当該制御を行うようになっていても良い。
LOAD≧PFC−PHEAT ・・・(2)
このような条件が満たされるようにすることで、コジェネシステム2については、出力電力の逆潮流を回避させることが可能である。
【0039】
コジェネ用パワコン23は、ヒータ24cにおける消費電力および燃料電池21の発電電力の各々を、上述した条件が満たされる範囲内で、例えば予め設定された目標値に近づくように制御する。そして例えば負荷LDの消費電力PLOADが急に減少し、上述した条件が満たされなくなったときには、コジェネ用パワコン23はヒータ24cにおける消費電力を大きくし、当該条件が再び満たされるようにする。
【0040】
なお既に説明した通り、潮流量の急激な変動は、電力系統の擾乱の原因となる。そこでコジェネ用パワコン23は、上述した条件が満たされるようにしつつも(つまり、コジェネ用パワコン23の出力電力についての逆潮流が生じない範囲において)、電力P1の急激な変動が抑えられるように、ヒータ24cの消費電力を制御するようになっている。すなわちコジェネ用パワコン23は、ヒータ24cの消費電力の制御を通じて、潮流量の急激な変動を抑制するように、コジェネシステム2の出力電力を調節する。
【0041】
ここで電力P1は次の(3)式で表されるため、電力PSOLARや電力PLOAD等が変動すれば、電力P1は変動することになる。
P1=PLOAD+PHEAT−(PSOLAR+PFC) ・・・(3)
なお、例えば雲の発生や移動によって日射量が急変すれば、太陽電池11の発電量は急激に変動する。このような事情もあり、特に太陽電池システム1の出力電力PSOLARについては、急激な変動が発生し易いといえる。
【0042】
コジェネ用パワコン23は、所定の基準時間(サンプリング間隔)における電力P1の変動の大きさΔP1を監視し、この大きさが、所定の基準値を上回っているかを監視するようになっている。なおこの変動の大きさΔP1は、現時点での電力P1と、現時点から基準時間だけ前の時点における電力P1との、差分の大きさとして求められる。電力P1の変動が急激であるほど、ΔP1は大きい値となる。
【0043】
そしてコジェネ用パワコン23は、変動の大きさΔP1が基準値を上回っていた場合、ヒータ24cにおける消費電力の制御することで、この変動を抑制するように、コジェネシステム2の出力電力を調節する。なおこの基準値は、電力系統の擾乱の原因となる可能性等を考慮して、予め設定された値である。
【0044】
すなわちコジェネ用パワコン23は、電力P1が増大するときは、増大した分だけヒータ24cにおける消費電力を小さくし、コジェネシステム2の出力電力を大きくすることで、電力P1の変動を抑制する。一方、コジェネ用パワコン23は、電力P1が減少するときは、減少した分だけヒータ24cにおける消費電力を大きくし、コジェネシステム2の出力電力を小さくすることで、電力P1の変動を抑制する。
【0045】
なお通常、電力P1の急激な変動は、太陽電池システム1の出力電力PSOLARの変動に起因することが多い。そのためΔP1の代わりに、所定の基準時間における出力電力PSOLARの変動の大きさΔPSOLARが監視されるようにし、このΔPSOLARに基づく制御によって、電力P1の急激な変動が抑えられるようになっていても良い。
【0046】
この場合、コジェネ用パワコン23は、電力PSOLARが増大する(電力P1は減少する)ときは、増大した分だけヒータ24cにおける消費電力を大きくし、コジェネシステム2の出力電力を小さくすることで、電力P1の変動を抑制する。一方、コジェネ用パワコン23は、電力PSOLARが減少する(電力P1は増大する)ときは、減少した分だけヒータ24cにおける消費電力を小さくし、コジェネシステム2の出力電力を大きくすることで、電力P1の変動を抑制する。
【0047】
ここで、太陽電池11の発電量が急激に変動する状況における、電力P1等の変動の様子を表すグラフの一例を、図2および図3に示す。図2は、潮流量の変動が考慮されずに、ヒータ24cの消費電力が制御されると仮定した場合(従来通りの制御がなされる場合)のグラフを示したものである。また図3は、本実施形態(潮流量を考慮した制御がなされる場合)に関するグラフを示したものである。
【0048】
なおここでは、期間Tαにおいて、太陽電池11の発電量が急激に変動(減少)した場合を想定する。また説明の簡略化のため、電力PFCおよび電力PLOADは一定であるとする。図2に示すように、従来通りの制御がなされる場合、期間Tαにおける電力PSOLARの急激な減少に伴い、電力P1は大きく変動(増大)している。
【0049】
しかし図3に示すように本実施形態によれば、期間TαにおいてΔP1(或いはΔPSOLAR)は基準値を上回るため、コジェネ用パワコン23は電力PSOLARが変動した分だけ、ヒータ24cの消費電力を小さくしていく。その結果、電力P1の変動が抑えられるように電力PHEATは小さくされていき、電力P1の変動は抑制されている。なお電力P1の変動の抑制は、電力P1がほぼ一定となるように行われることが望ましい。しかしこのようにすることが難しい場合であっても、電力P1の変動がより緩やかとなるよう、変動の抑制が行われるようにしてもよい。
【0050】
なお通常時、ヒータ24cの消費電力は、ゼロから最大値までの間のある目標値に制御されている。そのためヒータ24cの消費電力は、この状態から大小何れの方向にも変化させることが可能となっている。これにより、電力P1が減少側と増大側の何れの方向に変動しても、ヒータ24cの消費電力の制御を通じて、上述したように電力P1の変動を抑えることが可能であり、ひいては、電力系統の擾乱をより適切に抑えることが可能となっている。
【0051】
また図4に示すグラフは、一日の主な時間帯(朝から夜まで)における、各電力値の変動の様子の一例を示している。なお図4において、上側のグラフは電力PSOLAR、電力PLOAD、および電力PFCの状態を、下側のグラフは、ヒータ24cの消費電力の状態を表している。また下側のグラフにおいて、破線は従来通りの制御がなされる場合の状態を、実線は本実施形態に関する状態を、それぞれ示している。
【0052】
燃料電池21の出力電力PFCは、その出力最大値を超えない範囲で制御される。図4に示す例では、出力電力PFCは、概ね、その出力最大値に維持されるよう制御されている。但し、コジェネシステム2の出力電力の逆潮流が生じないように、朝や夜の一部の時間帯において、出力電力PFCは適宜抑えられている。なお太陽電池11の発電電力は売電可能であるため、太陽電池11は、電力PLOAD等に左右されず最大限に発電を行う。電力PSOLARは、太陽電池11の発電量に応じて増減している。
【0053】
またヒータ24cの消費電力の制御については、従来通りの制御がなされる場合、電力PSOLARの変動は考慮されていない。一方、本実施形態の場合は、電力PSOLARの変動が考慮され、この変動が抑制されるように、ヒータ24cの消費電力が制御されている。本実施形態のようにヒータ24cの消費電力が制御されることで、潮流量の変動が抑制されることは、既に説明した通りである。
【0054】
[その他]
以上までに説明した通り、コジェネ用パワコン23は、コジェネシステム2の出力電力を制御する電力制御装置としての機能を有している。なおコジェネシステム2は、太陽電池システム1とともに、共通の連系点において電力系統に連系された形態で使用されている。
【0055】
そしてコジェネ用パワコン23は、当該連系点における潮流量の変動を抑制するように、コジェネシステム2の出力電力の調節を行うようになっている。そのためコジェネ用パワコン23によれば、自然エネルギーを利用した分散電源システムが使用される場合であっても、電力系統の擾乱をより適切に抑えることが可能となっている。
【0056】
なおコジェネシステム2は、ヒータ24c(電力消費装置の一形態)を有し、発電した電力の一部をヒータ24cに消費させ、残りを出力電力として出力するようになっている。そしてコジェネシステム2は、ヒータ24cの消費電力を、電力P1が増大するとき(潮流量が増大側に変動するとき)には小さくし、逆に電力P1が減少するとき(潮流量が減少側に変動するとき)には大きくすることにより、出力電力の調節を行うようになっている。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。本発明はその主旨を逸脱しない限り、種々の変形を加えた形態で実施され得る。以下に、本発明の実施形態に関する変形例の幾つかについて言及する。
【0058】
本実施形態における太陽電池システムは、自然エネルギーを利用した分散電源システムの一例である。自然エネルギーを利用した分散電源システムとしては、太陽電池システムの他、例えば、風力発電によって電力を得るシステム等が採用されても構わない。
【0059】
またコジェネシステム2が有する電源として、本実施形態では燃料電池を例に挙げたが、これに限られるものではなく、ガスエンジン等が採用されていても構わない。また本実施形態では、潮流量の変動抑制を達成するためのコジェネシステム2の出力電力の調節は、ヒータ24cの消費電力の制御という手段によって実現されているが、これに代えて(或いはこれに加えて)、他の手段が採用されても構わない。
【0060】
例えば当該調節は、燃料電池21の発電電力の制御(電力PFCの制御)という手段によって、実現されるようになっていても構わない。なおコジェネシステム2において、ヒータ24cの消費電力については、急激な変化を伴う制御も比較的容易であるのに対し、燃料電池21の発電電力については、燃料電池セルに過度の負担が生じること等から、急激な変化を伴う制御は難しい。
【0061】
そのため、潮流量の変動抑制を達成するためのコジェネシステム2の出力電力の調節について、潮流量の比較的急激な変動(先述したように、ΔP1(或いはΔPSOLAR)が基準値を上回る場合)に対しては、ヒータ24cの消費電力の制御によって対応することが好ましい。その一方で、潮流量の比較的緩やかな変動に対しては、燃料電池21の発電電力の制御によって対応すれば良い。
【0062】
また本実施形態のコジェネシステム2は、例えば図5に示すように二次電池システム3(二次電池を備えた電源システム)が設けられた電力システム90においても、潮流量の変動抑制手段として有効に機能する。なお電力システム90は、二次電池システム3が電力伝送ラインLのC点に接続された点を除いて、電力システム9(図1を参照)と同等である。
【0063】
すなわち電力システム90では、二次電池システム3における二次電池の充放電制御によって、潮流量の変動をある程度抑制することは可能である。しかし二次電池の充電量が上限に達しているとき(二次電池の充電が不可であるとき)には、潮流量の減少側への変動を抑制することができない。また二次電池の充電量が下限に達しているとき(二次電池の放電が不可であるとき)には、潮流量の増大側への変動を抑制することができない。このように、二次電池システム3では潮流量の変動抑制ができない状況であっても、本実施形態のコジェネシステム2により、潮流量の変動を抑制することが可能である。
【0064】
また、電力伝送ラインLに、充放電の制御が可能である二次電池を接続させておき、この充放電量の制御を通じて、潮流量の変動抑制が実現されるようにしても構わない。例えば、潮流量が減少したときは、その分だけ、コジェネシステム2の出力電力が二次電池に充電されるようにする。充電された電力は事後的に利用可能であるため、当該手法によれば電力を無駄にすることなく、潮流量の変動抑制を達成することが可能である。
【0065】
また本実施形態では、潮流量の比較的急激な変動(先述したように、ΔP1(或いはΔPSOLAR)が基準値を上回る場合)に対してだけ、コジェネシステム2の出力電力の調節により、抑制が行われるようになっている。この点、潮流量の緩やかな変動(電力系統の擾乱の原因にならないと考えられる程度の変動)に対しても、抑制が行われるようにすることが可能である。
【0066】
この場合、例えば太陽電池11の発電量の変動が落ち着いてから、一定時間(例えば30分程度)の経過後に、当該変動が打ち消されるよう、コジェネシステム2の出力電力が徐々に調節されるようにしても良い。また潮流量の変動量が僅かである場合は、電力系統の擾乱の原因とはならないため、コジェネシステム2の出力電力の調整が行われないようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、分散電源システムを有する電力システム等に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 太陽電池システム
2 コジェネレーションシステム
3 二次電池システム
4a、4b 電力検出ポイント
9、90 電力システム
11 太陽電池
12 太陽電池用パワコン
21 燃料電池
22 排熱利用設備
22a 貯湯槽
23 コジェネ用パワコン(電力制御装置)
23a DC/DC変換部
23b DC/AC変換部
24 給湯補助設備
24a AC/DC変換部
24b DC/DC変換部
24c ヒータ(電力消費装置)
L 電力伝送ライン
LD 負荷
FC 燃料電池の出力電力
LOAD 負荷の消費電力の総和
SOLAR 太陽電池システムの出力電力
HEAT 給湯補助設備の入力電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用した分散電源システムとともに共通の連系点において電力系統に連系された、コジェネレーションシステムの出力電力を制御する電力制御装置であって、
前記連系点における潮流量の変動を抑制するように、前記出力電力の調節を行うことを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
前記コジェネレーションシステムは電力消費装置を有し、発電した電力の一部を該電力消費装置に消費させ、残りを前記出力電力として出力するものであり、
前記電力消費装置の消費電力を、前記潮流量が増大側に変動するときには小さくし、前記潮流量が減少側に変動するときには大きくすることにより、前記出力電力の調節を行うことを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記コジェネレーションシステムは、発電に伴う排熱を利用して水の加熱を行う設備を備えており、
前記電力消費装置は、
電力の消費によって熱を発生させ、前記水の加熱を補助する装置であることを特徴とする請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記出力電力についての逆潮流が生じない範囲において、前記出力電力の調節を行うことを特徴とする請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
基準時間における前記潮流量の変動の大きさを監視し、
前記変動の大きさが基準値を上回ったときに、前記出力電力の調節を行うことを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記出力電力の調節を、
前記コジェネレーションシステムにおける発電電力の制御によっても行うことを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の電力制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の電力制御装置、前記コジェネレーションシステム、および前記自然エネルギーを利用した分散電源システムを有することを特徴とする電力システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157106(P2012−157106A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12252(P2011−12252)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】