説明

電力制御装置および電力制御方法

【課題】出力電圧が大きく変化した場合でも、インダクタでの損失が大きくならず、また、追従にも時間を要しない電力制御装置および電力制御方法を提供する。
【解決手段】機器に供給する電力を制御する電力制御装置1Aは、所定の電圧が供給される電源入力部10と、機器の送信期間に、機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号Vcntを受信する信号入力部40と、機器の状態に応じて選択した出力電圧指令信号Vcntに基づいて複数の電圧制御信号VP1〜VP4を生成するデジタル制御処理部50Aと、複数の電圧制御信号VP1〜VP4に基づいて上記所定の電圧を調整し、出力電圧をそれぞれ出力する、並列に配置された複数のパワーアナログ部20a〜20dと、複数のパワーアナログ部20a〜20dから出力される複数の出力電圧を合成して上記電力を生成する出力フィルター60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力制御装置および電力制御方法に関し、より特定的には、無線通信機器に電力を供給する電力制御装置および電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信における電力の削減を目的とした種々の研究が行なわれている。特に、無線基地局など、送信アンプの駆動において高い電圧を必要とする機器においては、その需要が高くなっている。
【0003】
通常、無線送信する際、送信アンプには、1つの無線送信区間において必要とされるピーク電圧が印加される。しかし、その通信区間内において常にピーク電圧が必要とされるわけではない。その結果、通信区間内において電力消費に無駄が生じている。このような問題を解決する方法がいくつか考案されている。
【0004】
特許文献1に記載の無線通信機器は、変調波追従制御とフィードバック制御とを、無線送信を実行するか否かによって切り替える。具体的には、無線信号を送信する場合、デジタル制御部は、割込開始信号を受け付けて、送信信号に追随する電力を増幅回路に供給する。無線信号を送信していない場合、デジタル制御部は、フィードバック制御により、安定した電力を増幅回路に供給する。演算処理部は、発振周波数およびディーティ比を決定し、PWM(Pulse Width Modulation)信号を生成する。
【0005】
特許文献2に記載の電力制御装置は、送信用信号に応じて増幅回路から出力されるべき送信信号の単位時間ごとの最大電圧値に基づいてPWM信号を生成する生成部と、当該最大電圧値を反映した値を取得し、当該値と予め設定されている一以上のしきい値とを比較し、比較結果に応じてインダクタを選択する選択部と、選択されたインダクタが用いられたチョッパ回路により、上記PWM信号に基づいて、増幅回路を駆動するための電力を生成する電力生成部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−225186号公報
【特許文献2】特開2009−225592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の無線通信機器では、電源部での制御がデューティ比制御となっているので、動作周波数が固定されている。そのため、電圧変化時間すなわち追従速度が一定になる傾向がある。したがって、電圧の変化量に基づいて、電圧変化にかかる時間を予測しやすい。しかし、特許文献1に記載の無線通信機器は、出力電圧を大きく変化させる場合にインダクタでの損失が大きくなるという問題がある。
【0008】
特許文献2に記載の電力制御装置は、パワー回路系のインダクタを高出力電圧用と低出力電圧用とで並列に設けている。出力電圧指令値に基づいてこの中から1つのパワー回路を選択することで、インダクタでの損失を減少させている。しかしながら、特許文献2に記載の電力制御装置は、出力電圧の変化量が大きければ大きいほど追従に時間がかかるため、無線制御に時間がかかるという問題がある。
【0009】
それゆえに、この発明の目的は、出力電圧が大きく変化した場合でも、インダクタでの損失が大きくならず、また、追従にも時間を要しない電力制御装置および電力制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面によれば、機器に供給する電力を制御する電力制御装置であって、所定の電圧が供給される電源入力部と、機器の送信期間に、機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を受信する信号入力部と、機器の状態に応じて電圧制御信号を生成するデジタル制御処理部と、電圧制御信号に基づいて所定の電圧を調整し、電力を生成するパワーアナログ部とを備え、デジタル制御処理部は、機器の受信期間に、パワーアナログ部の出力電圧に基づいて、パワーアナログ部の出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための出力電圧指令信号を生成するフィードバック部と、機器の受信期間にはフィードバック部からの出力電圧指令信号に基づいて、機器の送信期間には信号入力部からの出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数およびデューティ比を調整することにより、電圧制御信号を生成する演算処理部とを含む。
【0011】
機器に供給する電力を制御する電力制御装置であって、所定の電圧が供給される電源入力部と、機器の送信期間に、機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を受信する信号入力部と、機器の状態に応じて複数の電圧制御信号を生成するデジタル制御処理部と、複数の電圧制御信号に基づいて所定の電圧を調整し、出力電圧をそれぞれ出力する、並列に配置された複数のパワーアナログ部と、複数のパワーアナログ部から出力される複数の出力電圧を合成して電力を生成する出力フィルターとを備え、デジタル制御処理部は、機器の受信期間に、出力フィルターの出力電圧に基づいて、出力フィルターの出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための出力電圧指令信号を生成するフィードバック部と、機器の受信期間にはフィードバック部からの出力電圧指令信号に基づいて、機器の送信期間には信号入力部からの出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数、デューティ比および位相を調整することにより、複数の電圧制御信号を生成する演算処理部とを含む。
【0012】
好ましくは、電圧制御信号は、出力電圧指令信号の電圧値の高低に応じて周波数が増減する。
【0013】
好ましくは、電圧制御信号は、パワーアナログ部におけるインダクタの値と出力電圧指令信号とに基づいて発振周波数を最適化させることにより、パワーアナログ部の出力電圧を変化させる。
【0014】
好ましくは、信号入力部は、機器が受信期間か送信期間かを示す割込み信号を受信し、フィードバック部は、割込み信号が受信期間を示すときは、出力電圧指令信号を演算処理部に出力し、割込み信号が送信期間を示すときは、送信期間であることを演算処理部に通知するとともに、出力電圧指令信号の生成を中止する。
【0015】
好ましくは、パワーアナログ部は、FETを含んで構成され、電流をオン/オフするパワースイッチング部と、電圧制御信号に基づいて、パワースイッチング部をオン/オフするドライブ回路部と、パワースイッチング部からの出力電圧を平滑化する平滑部とを含む。
【0016】
この発明の他の局面によれば、機器に供給する電力を制御する電力制御装置であって、所定の電圧が供給される電源入力部と、機器の送信期間に、機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を受信する信号入力部と、機器の状態に応じて低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号を生成するデジタル制御処理部と、低圧電圧制御信号に基づいて所定の電圧を調整し、低圧出力電圧を出力する低圧パワーアナログ部と、高圧電圧制御信号に基づいて所定の電圧を調整し、高圧出力電圧を出力する高圧パワーアナログ部と、低圧出力電圧および高圧出力電圧を合成して電力を生成する出力フィルターとを備え、デジタル制御処理部は、機器の受信期間に、出力フィルターの出力電圧に基づいて、出力フィルターの出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための出力電圧指令信号を生成するフィードバック部と、機器の受信期間にはフィードバック部からの出力電圧指令信号に基づいて、機器の送信期間には信号入力部からの出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数、デューティ比および位相を調整することにより、低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号を生成する演算処理部とを含む。
【0017】
好ましくは、低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号は、出力電圧指令信号の電圧値の高低に応じて周波数が増減する。
【0018】
好ましくは、低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号は、低圧パワーアナログ部および高圧パワーアナログ部におけるインダクタの値と出力電圧指令信号とに基づいて発振周波数を最適化させることにより、低圧パワーアナログ部および高圧パワーアナログ部の出力電圧をそれぞれ変化させる。
【0019】
好ましくは、低圧パワーアナログ部は、複数の低圧パワーアナログ要素が並列に配置されて構成され、高圧パワーアナログ部は、複数の高圧パワーアナログ要素が並列に配置されて構成される。
【0020】
好ましくは、信号入力部は、機器が受信期間か送信期間かを示す割込み信号を受信し、フィードバック部は、割込み信号が受信期間を示すときは、出力電圧指令信号を演算処理部に出力し、割込み信号が送信期間を示すときは、送信期間であることを演算処理部に通知するとともに、出力電圧指令信号の生成を中止する。
【0021】
好ましくは、低圧パワーアナログ部および高圧パワーアナログ部の各々は、FETを含んで構成される。
【0022】
この発明の他の局面によれば、機器に供給する電力を制御する電力制御方法であって、所定の電圧を受けるステップと、機器の送信期間に、機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を信号入力部において受信するステップと、機器の状態に応じて電圧制御信号を生成するステップと、電圧制御信号に基づいて所定の電圧を調整し、電力を生成するステップとを備え、電圧制御信号を生成するステップは、機器の受信期間に、出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための出力電圧指令信号をフィードバック部において生成するステップと、機器の受信期間にはフィードバック部からの出力電圧指令信号に基づいて、機器の送信期間には信号入力部からの出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数およびデューティ比を調整することにより、電圧制御信号を生成するステップとを含む。
【0023】
この発明の他の局面によれば、機器に供給する電力を制御する電力制御方法であって、所定の電圧を受けるステップと、機器の送信期間に、機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を信号入力部において受信するステップと、機器の状態に応じて複数の電圧制御信号を生成するステップと、複数の電圧制御信号に基づいて所定の電圧を調整し、それぞれ出力電圧を出力するステップと、複数の出力電圧を合成して電力を生成するステップとを備え、複数の電圧制御信号を生成するステップは、機器の受信期間に、合成された出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための出力電圧指令信号をフィードバック部において生成し、機器の受信期間にはフィードバック部からの出力電圧指令信号に基づいて、機器の送信期間には信号入力部からの出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数、デューティ比および位相を調整することにより、複数の電圧制御信号を生成する。
【0024】
この発明の他の局面によれば、機器に供給する電力を制御する電力制御方法であって、所定の電圧を受けるステップと、機器の送信期間に、機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を信号入力部において受信するステップと、機器の状態に応じて低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号を生成するステップと、低圧電圧制御信号に基づいて所定の電圧を調整し、低圧出力電圧を出力するステップと、高圧電圧制御信号に基づいて所定の電圧を調整し、高圧出力電圧を出力するステップと、低圧出力電圧および高圧出力電圧を合成して電力を生成するステップとを備え、低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号を生成するステップは、機器の受信期間に、合成された出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための出力電圧指令信号をフィードバック部において生成し、機器の受信期間にはフィードバック部からの出力電圧指令信号に基づいて、機器の送信期間には信号入力部からの出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数、デューティ比および位相を調整することにより、低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号を生成する。
【発明の効果】
【0025】
この発明の実施の形態によれば、出力電圧が大きく変化した場合でも、インダクタでの損失が大きくならず、また、追従にも時間を要しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1による電力制御装置100の構成を示した回路ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電力制御装置100の動作を説明するためのタイミング図である。
【図3】この発明の実施の形態2による電力制御装置1Aの構成を示した回路ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2による電力制御装置1Aの動作を説明するためのタイミング図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるデジタル制御処理部50Aの動作を説明するためのフロー図である。
【図6】この発明の実施の形態3による電力制御装置1Bの構成を示した回路ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態3による電力制御装置1Bの動作を説明するためのタイミング図である。
【図8】この発明の実施の形態3によるデジタル制御処理部50Bの動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0028】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電力制御装置100の構成を示した回路ブロック図である。
【0029】
図1を参照して、実施の形態1の電力制御装置100は、電源入力部10と、入力フィルター11と、補助電源12と、電流検出センサー13と、電流検出部14と、パワーアナログ部20と、電圧検出部30と、信号入力部40と、デジタル制御処理部50と、出力フィルター60と、電源出力部70とを備える。パワーアナログ部20は、パワースイッチング部21と、ドライブ回路部22と、平滑部23とを含む。デジタル制御処理部50は、通信I/F(Interface)部51と、外部割込み処理部52と、演算処理部53と、フィードバック部54とを含む。
【0030】
電源入力部10には、通常、直流電圧が供給される。入力フィルター11は、パワーアナログ部20等から発生し、電源入力部10へ帰還するノイズを抑制する機能を有する。補助電源12は、デジタル制御処理部50に含まれるCPU、メモリ等を動作させるために必要な電圧Vccを生成する。電流検出センサー13は、抵抗、カレントトランス等で構成され、パワーアナログ部20に流れ込む電流をモニターする。電流検出部14は、電流検出センサー13に流れる電流が急変した場合にそれを検知する。これにより、電源出力部70に接続される増幅回路等の破損を防止する。
【0031】
パワースイッチング部21は、たとえばクールMOSFET(Cool Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のFETを含むように構成され、ドライブ回路部22からの指令に応じて電流をオン/オフする。ドライブ回路部22は、演算処理部53から出力される電圧制御信号VPに基づいて、パワースイッチング部21をオン/オフする。パワースイッチング部21およびドライブ回路部22は、電源入力部10から印加される電圧に対する降圧チョッパ回路を構成する。平滑部23は、パワースイッチング部21からの出力電圧を平滑化する。電圧検出部30は、平滑部23における出力電圧を検出してデジタル制御処理部50に出力する。また、電圧検出部30は、平滑部23における電圧が急変した場合にそれを検知する。これにより、電流検出部14と同様に、電源出力部70に接続される増幅回路等の破損を防止する。
【0032】
信号入力部40には、割込み信号Int、出力電圧指令信号Vcntなどの各種信号が入力される。通信I/F部51は、信号入力部40からの割込み信号Intおよび出力電圧指令信号Vcnt(割込みデータ)を外部割込み処理部52に出力する。外部割込み処理部52は、通信I/F部51から入力される出力電圧指令信号Vcntを演算処理部53へ出力するとともに、割込みがあった旨(受信期間から送信期間に切り替わったこと)を示す信号をフィードバック部54に出力する。ここで、「受信期間」および「送信期間」とは、電力制御装置100によって電力が供給される無線通信機器が受信状態にあるか送信状態にあるかを意味する。
【0033】
演算処理部53は、電圧制御信号VPの基礎となる基本波Fwを生成する。フィードバック部54は、電圧検出部30から出力される電圧を予め定められている定電圧に保つように、出力電圧指令信号Vcntを生成する。フィードバック部54は、受信期間には、当該生成された出力電圧指令信号Vcntを演算処理部53に出力する。一方、フィードバック部54は、外部割込み処理部52から割り込みがあった旨の信号を受信している間(送信期間)には、出力電圧指令信号Vcntの生成を中止する。
【0034】
上記のように、出力電圧指令信号Vcntは、受信期間にはフィードバック部54から演算処理部53に出力され、送信期間には外部割込み処理部52から演算処理部53に出力される。演算処理部53は、基本波Fwおよび出力電圧指令信号Vcntに基づいて発振周波数およびデューティ比を調整し、電圧制御信号VPを生成する。出力フィルター60は、パワーアナログ部20で発生するスイッチングノイズを抑制する機能を有する。電源出力部70は、出力フィルター60からの出力電圧を、電源出力部70に接続された増幅回路等に供給する。
【0035】
図2は、この発明の実施の形態1による電力制御装置100の動作を説明するためのタイミング図である。
【0036】
図2に示すように、割込み信号Intは、時刻t1以前には受信期間を示す低レベルRLとなっており、時刻t1以後には送信期間を示す高レベルTHとなっている。基本波Fwは、送信期間に入ってから時刻t1,t2,・・・の3msごとに、短い矩形波が立ち上がる。なお、3ms等の数値は一例である。
【0037】
出力電圧指令信号Vcntは、受信期間である時刻t1以前には、5Vに固定されている。出力電圧指令信号Vcntは、送信期間である時刻t1以後には、時刻t1,t2,・・・ごとに8.0V,6.5V,・・・と変化する。電圧制御信号VPは、受信期間である時刻t1以前には、初期設定の一定周波数で電圧が変化する。電圧制御信号VPは、送信期間である時刻t1以後には、時刻t1,t2,・・・ごとに出力電圧指令信号Vcntの高低に応じて周波数が変化する。ここでは、出力電圧指令信号Vcntの電圧値が高ければ電圧制御信号VPの周波数が下がり、出力電圧指令信号Vcntの電圧値が低ければ電圧制御信号VPの周波数が上がる。
【0038】
以上のように、実施の形態1の電力制御装置100は、演算処理部53によるパワーアナログ部20の制御を周波数制御(PFM:Pulse Frequency Modulation)により行なっている。周波数制御では、パワーアナログ部20におけるインダクタLの値を算出条件に入れ、出力電圧指令信号Vcntの電圧値を変化させることにより、電圧制御信号VPの発振周波数を最適化している。具体的には、たとえば、以下の式によりインダクタL[H]の値が算出される。
【0039】
L=Vo(Vi−Vo)/(ΔI・fsw・Vi)
ここで、Vi[V]は電源入力部10に印加される入力電圧、Vo[V]は電源出力部70から出力される出力電圧、ΔI[A]はインダクタのリプル電流、fsw[Hz]は電圧制御信号VPの周波数(スイッチング周波数)をそれぞれ示す。上記の式を展開すると、スイッチング周波数fswについて解くことができる。インダクタLが固定であり、入力電圧Viがほぼ一定である条件から、任意の出力電圧を作り出すのに必要となる発振周波数が求まる。このように電圧制御信号VPの発振周波数を最適化することで、電源出力部70に接続される増幅回路等での損失を低減させることが可能となる。
【0040】
[実施の形態2]
実施の形態1の電力制御装置100は、パワーアナログ部20が一回路構成であった。一回路構成の場合、出力電圧の変化スピードに対応するには、基本的に動作周波数を上げるしか手法がない。動作周波数を上げると、損失が大きくなる傾向にある。
【0041】
実施の形態1では、パワーアナログ部20に含まれるインダクタを仮に120μHとした場合、8.0Vを出力するのに417kHzの発振周波数が必要となり、1.5Vを出力するのに911kHzの発振周波数が必要となる。このように、パワーアナログ部20における一連の動作内だけでも電圧制御信号VPの発振周波数が約3倍変化する。そのため、電力制御装置の特性上、出力電圧および発振周波数に対する追従スピードを考慮した場合、損失が増大するモードが生じる可能性がある。このような問題を解決する手法の1つとして、パラレル型の電力制御装置がある。
【0042】
図3は、この発明の実施の形態2による電力制御装置1Aの構成を示した回路ブロック図である。
【0043】
図3を参照して、実施の形態2の電力制御装置1Aは、電源入力部10と、入力フィルター11と、補助電源12と、電流検出センサー13と、電流検出部14と、パワーアナログ部20a〜20dと、電圧検出部30ABと、信号入力部40と、デジタル制御処理部50Aと、出力フィルター60と、電源出力部70とを備える。電力制御装置1Aでは、パワーアナログ部を4回路構成としているが、回路構成数は最小で2回路構成から可能であり、制御可能な範囲であれば最大構成数に制限はない。デジタル制御処理部50Aは、図3では1ブロックとして記載されているが、実施の形態1のデジタル制御処理部50と同様に、通信I/F部51と、外部割込み処理部52と、演算処理部53と、フィードバック部54とを含む構成であってもよい。
【0044】
電源入力部10、入力フィルター11、補助電源12、電流検出センサー13および電流検出部14は、実施の形態1と同様なので、ここでは説明を繰り返さない。パワーアナログ部20a〜20dは、基本的には、実施の形態1のパワーアナログ部20を並列に複数配置したものである。パワーアナログ部20a〜20dは、デジタル制御処理部50Aから出力される電圧制御信号VP1〜VP4に基づいて電圧をそれぞれチョッピングし、その後に平滑化して出力フィルター60に出力する。電圧検出部30ABは、出力フィルター60における出力電圧を検出してデジタル制御処理部50Aに出力する。
【0045】
信号入力部40には、割込み信号Int、出力電圧指令信号Vcntなどの各種信号が入力される。デジタル制御処理部50Aは、受信期間には、電圧検出部30ABから出力される電圧を予め定められている定電圧に保つように、出力電圧指令信号Vcntを生成する。デジタル制御処理部50Aは、送信期間には、信号入力部40から入力される出力電圧指令信号Vcnt(割込みデータ)を受信する。デジタル制御処理部50Aは、基本波Fwを生成するとともに、基本波Fwおよび出力電圧指令信号Vcntに基づいて発振周波数、デューティ比および位相を調整し、パワーアナログ部20a〜20dに対する電圧制御信号VP1〜VP4をそれぞれ生成する。
【0046】
出力フィルター60は、パワーアナログ部20a〜20dで発生するスイッチングノイズを抑制するとともに、パワーアナログ部20a〜20dの各々から出力される電圧を合成する。パワーアナログ部20a〜20dは、電圧制御信号VP1〜VP4により、位相を等間隔にずらして電源動作を行なう。したがって、出力フィルター60の当該電圧合成により、実施の形態1の一回路構成の場合に比べて、出力電圧および発振周波数に対する追従速度を上げることができる。電源出力部70は、出力フィルター60からの出力電圧を、電源出力部70に接続された増幅回路等に供給する。
【0047】
上記のように、パラレルに配置されたパワーアナログ部20a〜20dを用いてフェーズ動作処理を行なうことによって、発振周波数以上の追従特性を得ることができる。たとえば、動作周波数が500kHzで、2つのパワーアナログ回路が位相を180度ずらして動作し、その出力を合成する場合を考える。この場合、単一のパワーアナログ回路で換算すると、1MHzで動作したのと同等の追従効果を得られる。
【0048】
同様に、動作周波数が500kHzで、4つのパワーアナログ回路が位相を90度ずらして動作し、その出力を合成する場合を考える。この場合、単一のパワーアナログ回路で換算すると、2MHzで動作したのと同等の追従効果を得られる。なお、いずれの場合も、個々のパワーアナログ回路の動作は500kHzであることから、回路損失自体は、1つのパワーアナログ回路を500kHzで動作させる場合とほぼ同じである。現状では、発振周波数を高くすれば回路損失が増大する。そのため、発振周波数を上げずに追従特性を改善する方法として、パラレルのフェーズ処理動作が有効である。
【0049】
図4は、この発明の実施の形態2による電力制御装置1Aの動作を説明するためのタイミング図である。
【0050】
図4に示すように、割込み信号Intは、時刻t1以前には受信期間を示す低レベルRLとなっており、時刻t1以後には送信期間を示す高レベルTHとなっている。基本波Fwは、送信期間に入ってから時刻t1,t2,・・・の3msごとに、短い矩形波が立ち上がる。なお、3ms等の数値は一例である。
【0051】
出力電圧指令信号Vcntは、受信期間である時刻t1以前には、5Vに固定されている。出力電圧指令信号Vcntは、送信期間である時刻t1以後には、時刻t1,t2,・・・ごとに8.0V,6.5V,・・・と変化する。電圧制御信号VP1〜VP4は、受信期間である時刻t1以前には、初期設定の一定周波数で電圧が変化する。電圧制御信号VP1〜VP4は、送信期間である時刻t1以後には、時刻t1,t2,・・・ごとに出力電圧指令信号Vcntの高低に応じて周波数が変化する。ここでは、出力電圧指令信号Vcntの電圧値が高ければ電圧制御信号VP1〜VP4の周波数が下がり、出力電圧指令信号Vcntの電圧値が低ければ電圧制御信号VP1〜VP4の周波数が上がるように設定されている。
【0052】
電圧制御信号VP1〜VP4は、時刻t1以前の区間では、VP1,VP2,VP3,VP4の順で90度ずつ位相がずれている。また、時刻t1〜t2の区間では、VP4,VP1,VP2,VP3の順で90度ずつ位相がずれている。また、時刻t2〜t3の区間では、VP3,VP4,VP1,VP2の順で90度ずつ位相がずれている。このように、デジタル制御処理部50Aは、電圧制御信号VP1〜VP4の位相をたとえば90度ずつ等間隔にずらした上で周波数変調することにより、パワーアナログ部20a〜20dの電源動作を順々に切り替える。
【0053】
上記のように、電力制御装置1Aは、パラレル構成のパワーアナログ部20a〜20dに対して動作位相をずらすフェーズ処理を順々に行ない、それらの結果を出力フィルター60にて加算する。その結果、パラレル回路数にもよるが、一回路構成の場合と比較して、同一の動作周波数であっても倍以上の変化スピードを得ることができる。このように、実施の形態2の電力制御装置1Aは、動作周波数を上げていないことから損失が増えることなく、出力電圧の変化スピードのみを上げることができる。よって、一回路構成の場合に比べて特性が向上する。
【0054】
図5は、この発明の実施の形態2によるデジタル制御処理部50Aの動作を説明するためのフロー図である。
【0055】
図5を参照して、ステップS10において、信号入力部40から割込み信号Intを受信しているかどうかを確認する。割込み信号Intを受信していなければ、ステップS12において、電圧検出部30ABから出力フィルター60における出力電圧が送出されているかどうかを確認する。出力電圧が送出されていなければ、ステップS14において、初期設定の出力電圧指令信号Vcntを採用する。その後、ステップS16において、パワーアナログ部20a〜20dにおけるインダクタ値および初期設定の出力電圧指令信号Vcntにより、発振周波数を算出する。
【0056】
また、ステップS12で出力電圧が送出されていれば、ステップS18において、現在の出力電圧と、初期設定の出力電圧指令信号Vcntとを比較する。その後、ステップS20において、当該比較によるフィードバック処理に基づいて、電圧制御信号VP1〜VP4のデューティ比を最適化する。
【0057】
一方、ステップS10で割込み信号Intを受信していれば、ステップS22において、その区間での出力電圧指令信号Vcntの電圧値を確認する。さらに、ステップS24において、1つ前の区間における出力電圧指令信号Vcntの電圧値との差分を確認する。また、ステップS26において、内部メモリのテーブルに予め記憶された複数のディーティ比の中から、出力フィルター60での遅れ等を考慮した最適なデューティ比を取得する。なお、出力電圧指令信号Vcntに当該遅れ等の影響が織り込まれていれば、ステップS26は不要となる。その後、ステップS28で、パワーアナログ部20a〜20dにおけるインダクタ値により発振周波数を算出する。
【0058】
ステップS16、S20およびS28に続き、ステップS30では、周波数およびデューティ比の観点から電圧制御信号VP1〜VP4の発振波形を生成する。ステップS32では、区間ごとに電圧制御信号VP1〜VP4間の位相ずれを設定する。その後、ステップS34では、電圧制御信号VP1をパワーアナログ部20aに出力する。ステップS36では、電圧制御信号VP2をパワーアナログ部20bに出力する。ステップS38では、電圧制御信号VP3をパワーアナログ部20cに出力する。ステップS40では、電圧制御信号VP4をパワーアナログ部20dに出力する。パワーアナログ部20a〜20dへの出力が終わると、再びステップS10からの動作を繰り返す。
【0059】
以上のように、実施の形態2の電力制御装置1Aは、区間ごとに位相ずれが調整された電圧制御信号VP1〜VP4を、パラレルに配置されたパワーアナログ部20a〜20dにそれぞれ出力している。このようなフェーズ動作処理より、パワーアナログ部が一回路構成の場合と比較して、ダイナミックな出力電圧の変化時におけるパワーアナログ部での損失を低減することができる。また、電力制御装置1Aは、パラレル回路構成からのフェーズ動作処理の後、複数の出力電圧を加算する。これにより、同じ動作周波数の一回路構成の場合に比べて、出力電圧の変化をスムーズにすることができる。その結果、一回路構成の場合と比較して、損失および特性面で同等以上の効果が得られる。
【0060】
パワーアナログ部(スイッチング部)の動作周波数を上げることは、現状の電力制御装置の部品特性から損失が大きくなる傾向にある。この部品損失を抑えるために、電力制御装置1Aは、パワーアナログ部を並列構成とし、フェーズ動作処理によりパワーアナログ部の動作損失をさらに低減することを特徴としている。また、デジタル制御処理部50Aの演算処理機能によりフェーズ動作処理が可能となることから、複数のパワーアナログ部20a〜20dであっても1つの制御部で複雑な動作が可能となる。
【0061】
[実施の形態3]
図6は、この発明の実施の形態3による電力制御装置1Bの構成を示した回路ブロック図である。
【0062】
図6を参照して、実施の形態3の電力制御装置1Bは、電源入力部10と、入力フィルター11と、補助電源12と、電流検出センサー13と、電流検出部14と、低圧パワーアナログ部20v,20wと、高圧パワーアナログ部20x,20yと、電圧検出部30ABと、信号入力部40と、デジタル制御処理部50Bと、出力フィルター60と、電源出力部70とを備える。デジタル制御処理部50Bは、低圧ドライブ出力部55vwと、高圧ドライブ出力部55xyとを含む。デジタル制御処理部50Bは、図6では低圧ドライブ出力部55vwおよび高圧ドライブ出力部55xyのみブロック化しているが、実施の形態1のデジタル制御処理部50と同様に、通信I/F部51と、外部割込み処理部52と、演算処理部53と、フィードバック部54とを含む構成であってもよい。
【0063】
電源入力部10、入力フィルター11、補助電源12、電流検出センサー13および電流検出部14は、実施の形態1と同様なので、ここでは説明を繰り返さない。低圧パワーアナログ部20v,20wは、低圧ドライブ出力部55vwから出力される電圧制御信号VLP1,VLP2に基づいて電圧をそれぞれチョッピングし、その後に平滑化して出力フィルター60に出力する。高圧パワーアナログ部20x,20yは、高圧ドライブ出力部55xyから出力される電圧制御信号VHP1,VHP2に基づいて電圧をそれぞれチョッピングし、その後に平滑化して出力フィルター60に出力する。
【0064】
電圧検出部30ABは、出力フィルター60における出力電圧を検出してデジタル制御処理部50Bに出力する。信号入力部40には、割込み信号Int、出力電圧指令信号Vcntなどの各種信号が入力される。デジタル制御処理部50Bは、受信期間には、電圧検出部30ABから出力される電圧を予め定められている定電圧に保つように、出力電圧指令信号Vcntを生成する。デジタル制御処理部50Bは、送信期間には、信号入力部40から入力される出力電圧指令信号Vcnt(割込みデータ)を受信する。
【0065】
デジタル制御処理部50Bは、基本波Fwを生成するとともに、低圧ドライブ出力部55vwと高圧ドライブ出力部55xyとのいずれかを選択するドライブ選択信号VSを生成する。ドライブ選択信号VSは、出力電圧指令信号Vcntに基づいて生成される。デジタル制御処理部50Bは、基本波Fwおよび出力電圧指令信号Vcntに基づいて発振周波数、デューティ比および位相を調整し、低圧パワーアナログ部20v,20wに対して電圧制御信号VLP1,VLP2を生成し、高圧パワーアナログ部20x,20yに対して電圧制御信号VHP1,VHP2を生成する。
【0066】
出力フィルター60は、低圧パワーアナログ部20v,20wおよび高圧パワーアナログ部20x,20yで発生するスイッチングノイズを抑制するとともに、これらパワーアナログ部の各々から出力される電圧を合成する。電源出力部70は、出力フィルター60からの出力電圧を、電源出力部70に接続された増幅回路等に供給する。
【0067】
上記のように、電力制御装置1Bは、パワーアナログ部をパラレルに配置し、低圧パワーアナログ部20v,20wのインダクタを低出力電圧用とし、高圧パワーアナログ部20x,20yのインダクタを高出力電圧用としている。電力制御装置1Bは、ドライブ選択信号VSに基づいて、低圧パワーアナログ部20v,20wか高圧パワーアナログ部20x,20yかを選択する。これにより、パワーアナログ部におけるインダクタでの損失を減少させることができる。
【0068】
上記のように、電力制御装置1Bは、パワーアナログ部をパラレルに配置し、低圧パワーアナログ部20v,20wと高圧パワーアナログ部20x,20yとで、含まれるインダクタの値を変えている。また、ドライブ選択信号VSにより、低圧パワーアナログ部20v,20wと高圧パワーアナログ部20x,20yとを切り替える。これにより、必要以上に発振周波数を下げずに動作を行なうことが可能となる。その結果、追従速度が速くなり、単一のパワーアナログ部の場合と比べて性能が向上する。また、パラレル構成のパワーアナログ部によるフェーズ処理は維持されているため、単一のパワーアナログ部の場合と比べて追従速度もさらに向上する。
【0069】
図7は、この発明の実施の形態3による電力制御装置1Bの動作を説明するためのタイミング図である。
【0070】
図7に示すように、割込み信号Intは、時刻t1以前には受信期間を示す低レベルRLとなっており、時刻t1以後には送信期間を示す高レベルTHとなっている。基本波Fwは、送信期間に入ってから時刻t1,t2,・・・の3msごとに、短い矩形波が立ち上がる。なお、3ms等の数値は一例である。
【0071】
出力電圧指令信号Vcntは、受信期間である時刻t1以前には、5Vに固定されている。出力電圧指令信号Vcntは、送信期間である時刻t1以後には、時刻t1,t2,・・・ごとに8.0V,6.5V,・・・と変化する。ドライブ選択信号VSは、低圧パワーアナログ部20v,20wを選択する場合には低レベルVLとなり、高圧パワーアナログ部20x,20yを選択する場合には高レベルVHとなる。
【0072】
電圧制御信号VLP1,VLP2は、受信期間である時刻t1以前には、初期設定の一定周波数で電圧が変化する。電圧制御信号VHP1,VHP2は、受信期間である時刻t1以前には、低レベルのまま一定である。電圧制御信号VLP1,VLP2は、送信期間である時刻t1以後には、ドライブ選択信号VSが低レベルVLの期間だけ、時刻t1,t2,・・・ごとに出力電圧指令信号Vcntの高低に応じて周波数が変化する。電圧制御信号VHP1,VHP2は、送信期間である時刻t1以後には、ドライブ選択信号VSが高レベルVHの期間だけ、時刻t1,t2,・・・ごとに出力電圧指令信号Vcntの高低に応じて周波数が変化する。
【0073】
ここでは、実施の形態2と同様に、出力電圧指令信号Vcntの電圧値が高ければ電圧制御信号VLP1,VLP2,VHP1,VHP2の周波数が下がり、出力電圧指令信号Vcntの電圧値が低ければ電圧制御信号VLP1,VLP2,VHP1,VHP2の周波数が上がるように設定されている。
【0074】
電圧制御信号VLP1,VLP2は、互いに180度ずつ位相がずれている。電圧制御信号VHP1,VHP2もまた、互いに180度ずつ位相がずれている。このように、デジタル制御処理部50Bは、まず、電圧制御信号VLP1,VLP2と電圧制御信号VHP1,VHP2とで切り替える。低圧パワーアナログ部20v,20wに対しては、電圧制御信号VLP1,VLP2の位相をたとえば180度ずらした上で周波数変調することにより、低圧パワーアナログ部20v,20wの電源動作を順々に切り替える。高圧パワーアナログ部20x,20yに対しては、電圧制御信号VHP1,VHP2の位相をたとえば180度ずらした上で周波数変調することにより、高圧パワーアナログ部20x,20yの電源動作を順々に切り替える。
【0075】
電力制御装置1Bは、低圧パワーアナログ部20v,20wと高圧パワーアナログ部20x,20yとで分けて構成し、それぞれをさらに並列に配置して位相をずらしている。これにより、実施の形態1の場合に比べて追従速度が上がるとともに、実施の形態2の場合と比べても発振周波数の変化幅を小さくすることができる。
【0076】
低圧パワーアナログ部20v,20wでは、1.5Vの出力を生成するのに、たとえば729kHzの発振周波数が必要となる。高圧パワーアナログ部20x,20yでは、8Vの出力を生成するのに、たとえば417kHzの発振周波数が必要となる。この場合、低圧側と高圧側とで発振周波数の違いは、約2倍までの範囲となる。
【0077】
上記の例から、高圧パワーアナログ部20x,20yで発振周波数を750kHzに設定した場合でも、低圧パワーアナログ部20v,20wでの発振周波数は1.5MHz以下に抑えられる。その結果、電力制御装置1Bは、追従速度を上げた場合でも、損失を低くすることができる。
【0078】
図8は、この発明の実施の形態3によるデジタル制御処理部50Bの動作を説明するためのフロー図である。
【0079】
図8を参照して、ステップS10において、信号入力部40から割込み信号Intを受信しているかどうかを確認する。割込み信号Intを受信していなければ、ステップS12において、電圧検出部30ABから出力フィルター60における出力電圧が送出されているかどうかを確認する。出力電圧が送出されていなければ、ステップS14において、初期設定の出力電圧指令信号Vcntを採用する。出力電圧が送出されていれば、ステップS18において、現在の出力電圧と、初期設定の出力電圧指令信号Vcntとを比較する。その後、ステップS21において、当該比較によるフィードバック処理に基づいて、電圧制御信号VLP1,VLP2のデューティ比を最適化する。
【0080】
一方、ステップS10で割込み信号Intを受信していれば、ステップS22において、その区間での出力電圧指令信号Vcntの電圧値を確認する。その後、ステップS23において、ドライブ選択信号VSが低レベルVLかどうかを確認する。ドライブ選択信号VSが低レベルVLであれば、ステップS24において、1つ前の区間における出力電圧指令信号Vcntの電圧値との差分を確認する。また、ステップS26において、内部メモリのテーブルに予め記憶された複数のディーティ比の中から、出力フィルター60での遅れ等を考慮した最適なデューティ比を取得する。
【0081】
ステップS14またはS26における処理の後、ステップS17において、低圧パワーアナログ部20v,20wにおけるインダクタ値および出力電圧指令信号Vcntにより、発振周波数を算出する。また、ステップS23において、ドライブ選択信号VSが低レベルVLでなければ、ステップS25において、1つ前の区間における出力電圧指令信号Vcntの電圧値との差分を確認する。また、ステップS27において、内部メモリのテーブルに予め記憶された複数のディーティ比の中から、出力フィルター60での遅れ等を考慮した最適なデューティ比を取得する。その後、ステップS29で、高圧パワーアナログ部20x,20yにおけるインダクタ値により発振周波数を算出する。
【0082】
ステップS17およびS21に続き、ステップS30では、周波数およびデューティ比の観点から電圧制御信号VLP1,VLP2の発振波形を生成する。ステップS32では、区間ごとに電圧制御信号VLP1,VLP2間の位相ずれを設定する。その後、ステップS35では、電圧制御信号VLP1を低圧パワーアナログ部20vに出力する。ステップS37では、電圧制御信号VLP2を低圧パワーアナログ部20wに出力する。
【0083】
ステップS29に続き、ステップS31では、周波数およびデューティ比の観点から電圧制御信号VHP1,VHP2の発振波形を生成する。ステップS33では、区間ごとに電圧制御信号VHP1,VHP2間の位相ずれを設定する。その後、ステップS39では、電圧制御信号VHP1を高圧パワーアナログ部20xに出力する。ステップS41では、電圧制御信号VHP2を高圧パワーアナログ部20yに出力する。
【0084】
低圧パワーアナログ部20v,20wおよび高圧パワーアナログ部20x,20yへの出力が終わると、再びステップS10からの動作を繰り返す。
【0085】
以上のように、実施の形態3の電力制御装置1Bは、出力電圧の変動範囲が大きい場合の対応として、パラレル構成のパワーアナログ部を低圧パワーアナログ部20v,20wおよび高圧パワーアナログ部20x,20yに分けて構成している。これにより、パワーアナログ部のインダクタなど固定定数の部品での損失を低減させることができる。低圧パワーアナログ部20v,20wと高圧パワーアナログ部20x,20yとの切り替えは、ドライブ選択信号VSにより行なわれる。
【0086】
電力制御装置1Bは、位相ずれが調整された電圧制御信号VLP1,VLP2をパラレル配置の低圧パワーアナログ部20v,20wにそれぞれ出力し、位相ずれが調整された電圧制御信号VHP1,VHP2をパラレル配置の高圧パワーアナログ部20x,20yにそれぞれ出力している。このようなフェーズ動作処理より、パワーアナログ部が低圧用と高圧用とに分かれていない場合と比較して、出力電圧の変化スピードが上がり、かつ、パワーアナログ部での損失を最小限に抑えることができる。
【0087】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1A,1B,100 電力制御装置、10 電源入力部、11 入力フィルター、12 補助電源、13 電流検出センサー、14 電流検出部、20,20a〜20d パワーアナログ部、20v,20w 低圧パワーアナログ部、20x,20y 高圧パワーアナログ部、21 パワースイッチング部、22 ドライブ回路部、23 平滑部、30,30AB 電圧検出部、40 信号入力部、50,50A,50B デジタル制御処理部、51 通信I/F部、52 外部割込み処理部、53 演算処理部、54 フィードバック部、55vw 低圧ドライブ出力部、55xy 高圧ドライブ出力部、60 出力フィルター、70 電源出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に供給する電力を制御する電力制御装置であって、
所定の電圧が供給される電源入力部と、
前記機器の送信期間に、前記機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を受信する信号入力部と、
前記機器の状態に応じて電圧制御信号を生成するデジタル制御処理部と、
前記電圧制御信号に基づいて前記所定の電圧を調整し、前記電力を生成するパワーアナログ部とを備え、
前記デジタル制御処理部は、
前記機器の受信期間に、前記パワーアナログ部の出力電圧に基づいて、前記パワーアナログ部の出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための前記出力電圧指令信号を生成するフィードバック部と、
前記機器の受信期間には前記フィードバック部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、前記機器の送信期間には前記信号入力部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数およびデューティ比を調整することにより、前記電圧制御信号を生成する演算処理部とを含む、電力制御装置。
【請求項2】
機器に供給する電力を制御する電力制御装置であって、
所定の電圧が供給される電源入力部と、
前記機器の送信期間に、前記機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を受信する信号入力部と、
前記機器の状態に応じて複数の前記電圧制御信号を生成するデジタル制御処理部と、
前記複数の電圧制御信号に基づいて前記所定の電圧を調整し、出力電圧をそれぞれ出力する、並列に配置された複数のパワーアナログ部と、
前記複数のパワーアナログ部から出力される複数の前記出力電圧を合成して前記電力を生成する出力フィルターとを備え、
前記デジタル制御処理部は、
前記機器の受信期間に、前記出力フィルターの出力電圧に基づいて、前記出力フィルターの出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための前記出力電圧指令信号を生成するフィードバック部と、
前記機器の受信期間には前記フィードバック部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、前記機器の送信期間には前記信号入力部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数、デューティ比および位相を調整することにより、前記複数の電圧制御信号を生成する演算処理部とを含む、電力制御装置。
【請求項3】
前記電圧制御信号は、前記出力電圧指令信号の電圧値の高低に応じて周波数が増減する、請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記電圧制御信号は、前記パワーアナログ部におけるインダクタの値と前記出力電圧指令信号とに基づいて発振周波数を最適化させることにより、前記パワーアナログ部の出力電圧を変化させる、請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記信号入力部は、前記機器が受信期間か送信期間かを示す割込み信号を受信し、
前記フィードバック部は、前記割込み信号が受信期間を示すときは、前記出力電圧指令信号を前記演算処理部に出力し、前記割込み信号が送信期間を示すときは、送信期間であることを前記演算処理部に通知するとともに、前記出力電圧指令信号の生成を中止する、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記パワーアナログ部は、
FETを含んで構成され、電流をオン/オフするパワースイッチング部と、
前記電圧制御信号に基づいて、前記パワースイッチング部をオン/オフするドライブ回路部と、
前記パワースイッチング部からの出力電圧を平滑化する平滑部とを含む、請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項7】
機器に供給する電力を制御する電力制御装置であって、
所定の電圧が供給される電源入力部と、
前記機器の送信期間に、前記機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を受信する信号入力部と、
前記機器の状態に応じて低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号を生成するデジタル制御処理部と、
前記低圧電圧制御信号に基づいて前記所定の電圧を調整し、低圧出力電圧を出力する低圧パワーアナログ部と、
前記高圧電圧制御信号に基づいて前記所定の電圧を調整し、高圧出力電圧を出力する高圧パワーアナログ部と、
前記低圧出力電圧および前記高圧出力電圧を合成して前記電力を生成する出力フィルターとを備え、
前記デジタル制御処理部は、
前記機器の受信期間に、前記出力フィルターの出力電圧に基づいて、前記出力フィルターの出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための前記出力電圧指令信号を生成するフィードバック部と、
前記機器の受信期間には前記フィードバック部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、前記機器の送信期間には前記信号入力部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数、デューティ比および位相を調整することにより、前記低圧電圧制御信号および前記高圧電圧制御信号を生成する演算処理部とを含む、電力制御装置。
【請求項8】
前記低圧電圧制御信号および前記高圧電圧制御信号は、前記出力電圧指令信号の電圧値の高低に応じて周波数が増減する、請求項7に記載の電力制御装置。
【請求項9】
前記低圧電圧制御信号および前記高圧電圧制御信号は、前記低圧パワーアナログ部および前記高圧パワーアナログ部におけるインダクタの値と前記出力電圧指令信号とに基づいて発振周波数を最適化させることにより、前記低圧パワーアナログ部および前記高圧パワーアナログ部の出力電圧をそれぞれ変化させる、請求項8に記載の電力制御装置。
【請求項10】
前記低圧パワーアナログ部は、複数の低圧パワーアナログ要素が並列に配置されて構成され、前記高圧パワーアナログ部は、複数の高圧パワーアナログ要素が並列に配置されて構成される、請求項7に記載の電力制御装置。
【請求項11】
前記信号入力部は、前記機器が受信期間か送信期間かを示す割込み信号を受信し、
前記フィードバック部は、前記割込み信号が受信期間を示すときは、前記出力電圧指令信号を前記演算処理部に出力し、前記割込み信号が送信期間を示すときは、送信期間であることを前記演算処理部に通知するとともに、前記出力電圧指令信号の生成を中止する、請求項2または7に記載の電力制御装置。
【請求項12】
前記低圧パワーアナログ部および前記高圧パワーアナログ部の各々は、FETを含んで構成される、請求項7に記載の電力制御装置。
【請求項13】
機器に供給する電力を制御する電力制御方法であって、
所定の電圧を受けるステップと、
前記機器の送信期間に、前記機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を信号入力部において受信するステップと、
前記機器の状態に応じて電圧制御信号を生成するステップと、
前記電圧制御信号に基づいて前記所定の電圧を調整し、前記電力を生成するステップとを備え、
前記電圧制御信号を生成するステップは、
前記機器の受信期間に、出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための前記出力電圧指令信号をフィードバック部において生成するステップと、
前記機器の受信期間には前記フィードバック部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、前記機器の送信期間には前記信号入力部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数およびデューティ比を調整することにより、前記電圧制御信号を生成するステップとを含む、電力制御方法。
【請求項14】
機器に供給する電力を制御する電力制御方法であって、
所定の電圧を受けるステップと、
前記機器の送信期間に、前記機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を信号入力部において受信するステップと、
前記機器の状態に応じて複数の前記電圧制御信号を生成するステップと、
前記複数の電圧制御信号に基づいて前記所定の電圧を調整し、それぞれ出力電圧を出力するステップと、
複数の前記出力電圧を合成して前記電力を生成するステップとを備え、
前記複数の電圧制御信号を生成するステップは、
前記機器の受信期間に、前記合成された出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための前記出力電圧指令信号をフィードバック部において生成し、
前記機器の受信期間には前記フィードバック部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、前記機器の送信期間には前記信号入力部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数、デューティ比および位相を調整することにより、前記複数の電圧制御信号を生成する、電力制御方法。
【請求項15】
機器に供給する電力を制御する電力制御方法であって、
所定の電圧を受けるステップと、
前記機器の送信期間に、前記機器に供給される電力に応じて調整された出力電圧指令信号を信号入力部において受信するステップと、
前記機器の状態に応じて低圧電圧制御信号および高圧電圧制御信号を生成するステップと、
前記低圧電圧制御信号に基づいて前記所定の電圧を調整し、低圧出力電圧を出力するステップと、
前記高圧電圧制御信号に基づいて前記所定の電圧を調整し、高圧出力電圧を出力するステップと、
前記低圧出力電圧および前記高圧出力電圧を合成して前記電力を生成するステップとを備え、
前記低圧電圧制御信号および前記高圧電圧制御信号を生成するステップは、
前記機器の受信期間に、前記合成された出力電圧が定電圧に保たれるように調整するための出力電圧指令信号をフィードバック部において生成し、
前記機器の受信期間には前記フィードバック部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、前記機器の送信期間には前記信号入力部からの前記出力電圧指令信号に基づいて、それぞれ発振周波数、デューティ比および位相を調整することにより、前記低圧電圧制御信号および前記高圧電圧制御信号を生成する、電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−182490(P2011−182490A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41605(P2010−41605)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】