説明

電力機器用油調整装置

【課題】ベローズ槽によって構成される油量調整装置において、外形寸法や油量調整能力を変えることなく、油導管による圧力損失が低減するこができるようにすること。
【解決手段】内部に電力用機器本体を収納して絶縁油を充填してなる密封タンクに設置され、前記密封タンクの内部の絶縁油の膨張収縮に対する圧力を調整する複数のベローズ槽からなる油量調整装置であって、前記ベローズ槽2を、蛇腹を有する薄板2枚1a、1bを下部に平滑面1cを形成して合わせて溶接密閉するとともに、その溶接位置をベローズ槽2の中心に対して偏芯して一方の薄板1aで形成される下端平滑面1cを広くし、その広くした平滑面1cに大径の油導管3を挿通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力機器用油量調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力用コンデンサ、リアクトル、変圧器などの電力用機器本体をタンク内に収納し絶縁油を充填して、そのタンクを密封することが行われている。この場合、絶縁油は外気温や電力用機器本体が発生する熱などに対応して膨張収縮するので、この膨張や収縮によるタンク内の圧力変動を緩和するために油量調整装置が設けられている。
【0003】
このような油量調整装置は、図2(a)に示すように、蛇腹を有する薄板2枚1a、1bを合わせ、その周縁を溶接してベローズ槽2を形成し、このベローズ槽2の下端平滑面に内部と連通する油導管3を取り付けて構成し、この油導管3を取り付けたベローズ槽2の複数を、リング4を挟んで配列してタンクの外側上面に設置し、各ベローズ槽2の油導管3をタンク内から伸びる油導管5に接続するようにされている。
【0004】
このように構成した油量調整装置では、タンク内の絶縁油が膨張して増加したときは、油導管5および3を経て各ベローズ槽2内に収容し、各ベローズ槽2は図2(c)に示すように膨張する。また、絶縁油が収縮して減少したときは、各ベローズ槽2内の絶縁油を油導管3および5を経てタンク内へ補給し、各ベローズ槽2は図2(b)に示すように収縮する。これによりタンク内の圧力は、絶縁油の膨張収縮にかかわらずほぼ1気圧の状態が維持される。
【特許文献1】実開昭61−153331号公報
【特許文献2】実開昭64−52214号公報
【特許文献3】特開昭53−145024号公報
【特許文献4】実公昭35−12151号公報
【0005】
図3は、従来のベローズ槽2の油導管3の引出し部の構造を示す図で、蛇腹を有する薄板2枚1a、1bは下部に平滑面1cを形成して互いに合わせて溶接され、油導管3は薄板1a側の平滑面1cを貫通してベローズ槽2内に挿入され、油導管3の外周と平滑面1cとは溶接により密閉固着されている。
【0006】
このような油導管3の引出し部の構造では、薄板1aの平滑面1cと薄板1bの平滑面1cとがベローズ槽2の中心位置(ベローズ槽2の厚み幅CとしてそのC/2となる位置)で溶接されているため、油導管3の外径φが小さく油導管による圧力損失(流体が細管などを通過する場合、流体のもつ粘性により管壁との摩擦がおき流体のもつエネルギーの一部が熱となって失われ、失われたエネルギーは流体の圧力の低下となって表れ、この圧力低下を圧力損失という。)が大きく、絶縁油の膨張収縮に伴う応答性が悪いといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ベローズ槽によって構成される油量調整装置において、外形寸法や油量調整能力を変えることなく、油導管による圧力損失が低減するこができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部に電力用機器本体を収納して絶縁油を充填してなる密封タンクと、前記密封タンクの外側上面に設置された複数のベローズ槽と、前記密封タンクの内部と連通する油導管と、前記油導管の内部と前記各ベローズ槽の内部と連通する油導管とを備え、前記タンク内の絶縁油の膨張収縮を前記複数のベローズ槽で調整してなる電力機器用油量調整装置において、前記ベローズ槽を、蛇腹を有する薄板2枚を下部に平滑面を形成して合わせて密閉するとともに、前記合わせ目をベローズ槽の中心よりも片側に寄せて一方の薄板で形成される下端平滑面を広くし、その広くした平滑面に大径の油導管を挿通してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ベローズ槽による油量調整能力(調整量)を変えることなく、すなわちベローズ槽の幅を大きくする(油量調整に寄与しない無効油量が増大する。)ことなく、ベローズ槽内へ連通する油導管を太くするので、油導管による圧力損失を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ベローズ槽によって構成される油量調整装置において、外形寸法や油量調整能力を変えることなく、油導管による圧力損失が低減することができるようにする目的を、蛇腹を有する薄板2枚の下部溶接位置をベローズ槽の中心から片側に寄せて片側の薄板で形成する下部平滑面を広げ、広げた下部平滑面に大径の油導管を挿通することにより実現した。
【実施例】
【0011】
図1は本発明の実施例に係る油量調整装置におけるベローズ槽の油導管の引出し部の構造を示す断面図である。なお、図1において、図3に示す従来の油量調整装置におけるベローズ槽の油導管の引出し部の構造と同一および対応する部分には同一の符号を付している。
【0012】
本発明にしたがい、一方の薄板1aで形成する下部平滑面1cを広く(C1)、他方の薄板1bで形成する下部平滑面1cを狭く(C2)して(C1>C2、C1+C2=C(図3))蛇腹を有する2枚の薄板1a、1bの下部の溶接位置をベローズ槽2の厚み幅の中心から薄板1b側によせて溶接密閉する。その後、広げた薄板1aで形成する下部平滑面1cに大径φ1(φ1>φ(図3))の油導管3を挿通し、油導管3の外周面と薄板1aで形成する下部平滑面1cとを溶接して封止する。
【0013】
このように構成したベローズ槽2を、図2(a)に示すようにその複数を、リング4を挟んで配列してタンクの外側上面に設置し、各ベローズ槽2の油導管3をタンク内から伸びる油導管5に接続してタンク内の油量を調整する。この場合、2枚の薄板1a、1bの下部の溶接位置をベローズ槽2の厚み幅の中心から薄板1b側によせて溶接しているが、各ベローズ槽2は、タンク内の絶縁油が膨張して増加したときは、油導管5および3を経て各ベローズ槽2内に収容し、各ベローズ槽2は図2(c)に示すように膨張する。また、絶縁油が収縮して減少したときは、各ベローズ槽2内の絶縁油を油導管3および5を経てタンク内へ補給し、各ベローズ槽2は図2(b)に示すように収縮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る油量調整装置におけるベローズ槽の油導管の引出し部の構造を示す断面図である。
【図2】油量調整装置の構成を示す説明図である。
【図3】従来の油量調整装置におけるベローズ槽の油導管の引出し部の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1a、1b 蛇腹を有する薄板
1c 下端平滑面
2 ベローズ槽
3 油導管
4 リング
5 油導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電力用機器本体を収納して絶縁油を充填してなる密封タンクと、前記密封タンクの外側上面に設置された複数のベローズ槽と、前記密封タンクの内部と連通する油導管と、前記油導管の内部と前記各ベローズ槽の内部と連通する油導管とを備え、前記タンク内の絶縁油の膨張収縮を前記複数のベローズ槽で調整してなる電力機器用油量調整装置において、前記ベローズ槽を、蛇腹を有する薄板2枚を下部に平滑面を形成して合わせて密閉するとともに、前記合わせ目をベローズ槽の中心よりも片側に寄せて一方の薄板で形成される下端平滑面を広くし、その広くした平滑面に大径の油導管を挿通してなることを特徴とする電力機器用油量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−70937(P2009−70937A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236135(P2007−236135)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】